説明

金属表面の保護コーティングとしてのナノ構造化材料の使用

本発明はナノ構造化材料の金属表面の保護コーティングとしての使用に関し、そのナノ構造化材料は官能化ナノビルディングブロックおよびポリマーまたは有機/無機複合のマトリクスを含む。
本発明は、マトリクスが少なくとも3種類のケイ素アルコキシドから調製される特定のナノ構造化材料にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1のナノビルディングブロック、および重合体のまたは有機/無機複合タイプのマトリクスを、特に航空工学的および航空宇宙工学的アプリケーションのための、金属表面の保護コーティングの構成要素として含む材料の使用および特定のナノ構造化材料に関する。
【0002】
航空工学分野においては、腐食に対する保護は一般に6価クロム、例えば、クロム陽極処理法に基づく表面処理または化成処理によって提供される。
【0003】
しかし、6価クロムには毒性、発癌性および環境への危険性があることがわかっている。早晩、その使用は禁止されるだろう。
【0004】
したがって、少なくとも既存のものと同程度に高性能の、例えば腐食に対するだけでなくスクラッチまたはその他に対しても保護を提供する別の系を見つける必要性がある。
【背景技術】
【0005】
ゾルーゲル法によって調製される有機/無機複合材料は既に従来技術中に予見されている。
【0006】
例えば、特許文献1は、アルコキシジルコニウム、有機シラン、およびホウ酸、亜鉛もしくはリン酸官能基を有する1または2以上の化合物のような有機金属塩から、酢酸のような有機触媒の存在下で、ゾル−ゲル法によって調製される、耐食性を有するコーティングを記載する。
【0007】
特許文献2および3は、それぞれ、鎖中にいくつかのイオウ原子を含む、多官能性シランに基づく、および二官能性シランに基づく処理溶液の適用を含む、金属の腐食を防止する方法を記載する。
【0008】
しかし、これらの材料は、マイクロ構造またはナノ構造ではない、つまり材料中の有機および無機領域の分散をマイクロメトリックまたはナノメトリックなレベルでコントロールすることができないという欠点を持つ。このランダムな分布は、ある材料から別の材料へ再現不可能な特性となる。
【0009】
ゾル−ゲルプロセスの利点は、穏やかな条件といわれる条件、つまり200℃以下の温度で、およびコンベンショナルな表面処理に使用される環境に対する害がより少ない水または水/溶媒中で、3次元のネットワークを初期の前駆物質から構成することにある。
【0010】
前記ゾル−ゲルプロセスにおいて通常使用される初期の前駆物質は、1または2以上の加水分解性基を持つ金属アルコキシドである。金属アルコキシドの例として、ケイ素またはジルコニウムのアルコキシドが、単独でまたは混合物として、特に言及される。
【0011】
非特許文献1は、テトラメトキシシランおよびグリシドプロピルトリメトキシシランを含む水溶液から穏やかな条件下で得られる、アモルファス材料から作成されたコーティングを記載する。腐食防止剤はその後材料に添加される。
【0012】
特許文献4は、アルコキシシラン、エポキシアルコキシシランおよび水を含む水性組成物で金属表面を処理する方法を記載する。詳細には、この方法は、組成物の成分を混合する、該組成物をエイジングする、クロスリンク剤、界面活性剤および所望により水を加える、それから最終的な組成物を金属表面に適用する、ならびに該基質を乾燥するステップを含む。
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/024432号明細書
【特許文献2】米国特許第6261638号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1097259号明細書
【特許文献4】米国特許第6929826号明細書
【非特許文献1】M.S.Donleyら、「自己組織化ナノ相パーティクル(SNAP)プロセス:コーティングへのナノ科学アプローチ」、Progress in Organic Coatings、2003年、第47巻、p401−415
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
驚くべきことに、出願人は、ナノメトリックなレベルで構造をコントロールすることによって、たとえば任意に調節することができる機械的強度、膜の厚さおよび質、密度、色ならびに疎水性のような構成要素のそれぞれの特性の合計のみでなく、実際に新規な特性である新規な巨視的特性を得られることを見出した。それらは、これらの構成要素のナノメトリックなレベルでのシナジーの結果として生じる。さらに、このナノメトリックなレベルでの構造のコントロールは、特性の再現性をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このコントロールは、ナノ構造化複合材料のおかげで達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
“ナノ構造化材料”という用語は、その構造がナノメトリックなレベルでコントロールされる材料を意味すると理解される。この構造は、特にX線回折および小角X線散乱、透過型電子顕微鏡(TEM)または原子間力顕微鏡(AFM)によって確認されうる。
【0017】
これらの材料は、C.Sanchezら、「官能化ナノビルディングブロックから設計された複合有機−無機ナノ組成物」、2001年、第13巻、p3061−3083という記事から知られ、そして、明確に規定された、好ましくはプレ−またはポスト−官能化がされた、ナノメトリックなサイズのビルディングブロック(またはナノビルディングブロック(NBBs))から、および重合体のまたは有機/無機複合の樹脂から合成される。
【0018】
例えばゾル−ゲル法によって得られるマトリクスのような、これらの物質のある部分は、アモルファスであるが、他の部分はナノメトリックなサイズの結晶領域から形成されてもよい。
【0019】
これらの材料は、金属表面に対する良好な接着性を保証しながら、基質(または表面)、例えば特にアルミニウムまたはチタンの合金に、腐食に対する保護、スクラッチ抵抗性、良好な機械的強度および/または色を付与することを可能にする種々の機能を含んでもよい。
【0020】
さらに、これらの材料は、通常であれば共存しない、いくつかの異なる機能が共存してもよく、また、例えばバス中でのディッピング、スピンコーティング、スプレーまたはラミナーフローコーティングおよびブラシによる塗着のようなコンベンショナルな技術によって適用されてもよい。個々の構成要素は、たとえば12カ月以上の、工業的サイクルに適合するシェルフライフを有するように形成されてもよく、また、それらの適用の直前に混合されてもよい。それらの配合は、環境規制と互換性がある構成要素を使用するという、および特に圧倒的に水性溶媒に溶けているという追加の利点を有する。
【0021】
したがって、本発明の1つの主題は、特に、例えば飛行機の構造コンポーネントのような、航空工学における、および航空宇宙工学における、金属表面に対するそのような材料の、多機能を持つ保護コーティングの構成要素としての使用である。
【0022】
この材料は、ナノビルディングブロックから、および重合体のまたは有機/無機複合のマトリクス、すなわち有機および無機の両方のグループを含むマトリクスから、形成される。
【0023】
これらのナノビルディングブロックは、クラスター形態またはナノパーティクル形態、好ましくは2〜100nmの、より好ましくは2〜50nmの、さらに好ましくは2〜20nmの、いっそう好ましくは2〜10nmの、ことさら好ましくは2〜5nmのサイズを持つナノパーティクルの形態であってよく、これらのナノパーティクルの直径はX線回折および小角X線散乱、透過型電子顕微鏡(TEM)または光散乱によって測定することができる。
【0024】
好ましくは、ナノパーティクルは低い分散度を表すサイズを有する。
【0025】
これらのナノビルディングブロックは、少なくとも1つの金属酸化物に本質的に基づき、その金属酸化物は、例えば、アルミニウム、3価および4価のセリウム、ケイ素、ジルコニウム、チタンならびにスズの酸化物から、好ましくはジルコニウムおよび4価のセリウムの酸化物から選ばれる。いくつかの合成法がそれらを調製するために使用されてもよい。
【0026】
第一の方法は、析出によってそれらを金属塩から合成することにある。形成されるナノビルディングブロックのサイズをコントロールするため、および、ナノブロックの表面の80〜100%を、例えば、カルボン酸、β−ジケトン、β−ケトエステル、α−もしくはβ−ヒドロキシ酸、ホスホン酸、ポリアミンおよびアミノ酸単座または多座の錯化剤で官能化することによって溶媒中でのそれらの分散を確実にするために、錯化剤が反応媒体に添加されてもよい。無機および有機構成要素の間の質量比は、特に20および95%の間である。
【0027】
ナノビルディングブロックは、少なくとも1の金属アルコキシドまたは金属ハロゲン化物から加水分解または非加水分解プロセスを経由して得られてもよい。加水分解プロセスの場合には、少なくとも1の金属アルコキシドまたは金属ハロゲン化物の下記一般式の前駆物質について、コントロールされた加水分解が行われる:
MZ (1);
R’MZn−x (2);または
MZn−mx (3),
【0028】
ただし、式(1)、(2)および(3)において:
Mは、Al(III)、Ce(III)、Ce(IV)、Si(IV)、Zr(IV)、Ti(IV)またはSn(IV)を、好ましくはZr(IV)またはCe(IV)を表す。ここで、括弧内の数字は金属原子の価数である;
【0029】
nはM原子の価数を表す;
xは1からn−1までの整数である;
Zは、例えばF、Cl、BrおよびI、好ましくはClおよびBrのようなハロゲン原子、または−ORを表す;
Rは、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピルまたはブチル基、好ましくはメチルまたはエチル基のような、好ましくは1から4個の炭素原子を含むアルキル基を表す;
【0030】
R’は、アルキル基、特にC1−4アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピルまたはブチル基;アルケニル基、とりわけ、例えばビニル、1−プロペニル、2−プロペニルおよびブテニル基のようなC2−4アルケニル基;アルキニル基、とりわけ、例えばアセチレニルおよびプロパルギル基のようなC2−4アルキニル基;アリール基、とりわけ、例えばフェニルおよびナフチル基のようなC6−10アリール基;例えばメタクリロキシプロピル基のようなメタクリルおよびメタクリロキシ(C1−10アルキル)基、および、例えばグリシジルおよびグリシジルオキシ(C1−10アルキル)基のようなアルキル基が直鎖、分枝または環式かつC1−10アルキル基であり、アルコキシ基が1〜10個の炭素原子を含むエポキシアルキルまたはエポキシアルコキシアルキル基から選ばれる非加水分解性基を表す;
【0031】
Lは単座または多座、好ましくは多座の錯体化リガンドであり、例えば、酢酸のようなカルボン酸、アセチルアセトンのようなβ−ジケトン、メチルアセト酢酸のようなβ−ケトエステル、乳酸のようなα−もしくはβ−ヒドロキシ酸、アラニンのようなアミノ酸、(3−トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン(DETA)のようなポリアミン、またはホスホン酸のようなホスホネートである;および
【0032】
mは、リガンドLのヒドロキシル化の程度を、Lが単座リガンドのときにm=1で、およびLが多座リガンドのときにm≧2で表す。Lが多座リガンドのとき、好ましくは3≧m≧2である。
【0033】
“コントロールされた加水分解”の用語は、媒体に添加される水の量のコントロールによる、および、前駆物質の反応性を弱めるためであるが、所望により中心金属原子に対する錯化剤を添加することによる、化学種の増加の制限を意味すると理解される。
【0034】
好ましくはアモルファスまたは結晶のナノパーティクルの形態で、本発明において使用されるナノビルディングブロックは、表面が官能化されている。前記のナノビルディングブロックの官能化は、その官能基の一方がナノビルディングブロックの表面に対して親和性を持ち、他方の官能基がマトリクスと相互作用をする、二官能性分子である官能化剤の存在下で行われる。
【0035】
それらの官能化は、官能化剤の存在下で、合成行程において直接、またはそれらの合成に続く第二ステップの行程のいずれかにおいて、および好ましくは第二ステップの行程において行われる。それぞれ、プレ−またはポスト−官能化といわれる。
【0036】
ポスト官能化は、その一方の官能基がナノビルディングブロックの表面に対して親和性を持ち、他方の官能基がマトリクスと相互作用することができるがナノビルディングブロックの表面に対して全く親和性を持たない二官能性分子を官能化剤として選択することにより、化学的方法によって行われてもよい。化学的方法による官能化によって、とりわけナノビルディングブロックを含む溶液を、官能化剤を含む溶液と単純に混合することによって、上述のようにナノブロックの表面を修飾することができる。
【0037】
ナノブロック表面に対する親和性を持つ官能基の例として、カルボン酸官能基、ジケトン官能基またはリン酸もしくはホスホン酸官能基、α−もしくはβ−ヒドロキシ酸官能基または遷移金属の多座錯体について、特に言及される。
【0038】
マトリクスと相互作用しうる官能基の例として、例えばC1−8アルキルアミノ基のような第1級、第2級または第3級アミノ基、およびビニル、アクリレートまたはメタクリレート基のような重合可能な官能基について、特に言及される。
【0039】
官能化剤として使用される二官能性分子の例として、6−アミノカプロン酸および2−アミノエチルホスホン酸について、特に言及することができる。
【0040】
本発明によれば、官能化の程度は好ましくは50%よりも大きく、いっそう好ましくは80%よりも大きい。
【0041】
ナノビルディングブロックが合成および官能化されると、それらは重合体のまたは無機/有機複合のマトリクスに、好ましくはゾル−ゲルタイプの、より好ましくは二酸化ケイ素に基づく、とりわけ好ましくは二酸化ケイ素または二酸化ケイ素/酸化ジルコニウムからできた複合体に、添加される。このマトリクスは、ビルディングブロックがそのおかげで3次元のネットワークを形成するコネクターとして提供される。
【0042】
有機/無機複合マトリクスは、典型的には、溶媒および所望により触媒の存在下での、少なくとも2の金属アルコキシドまたは金属ハロゲン化物の縮合重合によって得られる。使用される金属アルコキシドまたは金属ハロゲン化物は下記一般式を持つものから選ばれる:
M’Z´n’ (IV);
R”x’M’Z´n’−x’ (V);
L’m’x’M’Z´m’x’ (VI);および
Z´n’−1M’−Rρ−MZ’n’−1 (VII)、
【0043】
ここで:
n’は、金属原子M’の価数、好ましくは3、4または5を表す;
【0044】
x’は1〜n’−1までの範囲の整数である;
【0045】
M’は、例えばAlのような3価の金属原子;例えばSi、Ce、ZrおよびTiのような4価の金属原子;または例えばNbのような5価の金属原子を表す。好ましくはM’はケイ素(n’=4)、セリウム(n’=4)またはジルコニウム(n’=4)、よりさらに好ましくはケイ素である;
【0046】
Z’は、ハロゲン原子、例えば、F,Cl、BrおよびI、好ましくはClおよびBr;アルコキシ基、好ましくは例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシおよびブトキシ基のようなC1−4アルコキシ基;アリールオキシ基、とりわけ例えばフェノキシ基のようなC6−10アリールオキシ基;アシルオキシ基、とりわけ例えばアセトキシおよびプロピオニルオキシ基のようなC1−4アシルオキシ基;および例えばアセチル基のようなC1−10アルキルカルボニル基から選ばれる加水分解可性基を表す。好ましくは、Z’はアルコキシ基、およびさらに詳細にはエトキシまたはメトキシ基を表す;
【0047】
R”は、アルキル基、好ましくはC1−4アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピルおよびブチル基;アルケニル基、とりわけ例えばビニル、1−プロペニル、2−プロペニルおよびブテニル基のようなC2−4アルケニル基;アルキニル基、とりわけたとえばアセチレニルおよびプロパルギル基のようなC2−4アルキニル基;アリール基、とりわけ例えばフェニルおよびナフチル基のようなC6−10アリール基;例えばメタクリルオキシプロピル基のような(メタ)クリルおよびメタクリルオキシ(C1−10アルキル)基;および、例えばグリシジルおよびグリシジルオキシ(C1−10アルキル)基のような、アルキル基が直鎖、分枝または環式かつC1−10アルキル基であり、アルコキシ基が1〜10個の炭素原子を含むエポキシアルキルまたはエポキシアルコキシアルキル基から選ばれる1価の非加水分解性基を表す。R”は、好ましくはメチル基または例えばグリシジルオキシプロピル基のようなグリシジルオキシ(C1−10アルキル)基を表す;
【0048】
Rρは、アルキレン基、好ましくはC1−4アルキレン基、例えばメチレン、エチレン、プロピレンおよびブチレン基;アルケニレン基、とりわけ例えばビニレン、1−プロペニレン、2−プロペニレンおよびブテニレン基のようなC2−4アルケニレン基;アルキニレン基、とりわけ例えばアセチレニレンおよびプロパルギレンのようなC2−4アルキニレン基;アリーレン基、とりわけ例えばフェニレンおよびナフチレン基のようなC6−10アリーレン基;例えばメタクリルオキシプロピル基のような、メタクリルおよびメタクリルオキシ(C1−10アルキレン)基;および、例えばグリシジルおよびグリシジルオキシ(C1−10アルキル)基のような、アルキル基が直鎖、分枝または環式かつC1−10アルキル基であり、アルコキシ基が1〜10個の炭素原子を含む、エポキシアルキルまたはエポキシアルコキシアルキル基から選ばれる2価の非加水分解性基を表す。Rρは、好ましくは例えばグリシジルオキシプロピル基のようなメチレンまたはグリシジルオキシ(C1−10アルキル)基を表す;および
【0049】
L’は、Lについて上に記載されるように、錯体化リガンドを表す;および
【0050】
m’はリガンドL’のヒドロキシル化の程度を表し、L’が単座リガンドのときm’=1、およびL’が多座のときm’≧2である。
【0051】
ある好適な実施態様では、マトリクスは少なくとも3種類のケイ素アルコキシドの混合物から得られる:
Si(OR
Si(OR;および
Si(OR
【0052】
ここで:
はメチルまたはエチル基を表し、
【0053】
およびRは、アルキル基が直鎖、分枝および/もしくは環式かつC1−10アルキル基であり、アルコキシ基が1〜10個の原子を含む、(メタ)アクリレート、ビニル、エポキシアルキルまたはエポキシアルコキシル基、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、または、例えばグリシジルオキシプロピル基のようなグリシジルオキシ(C1−10アルキル)基を表す;および
【0054】
R4は、例えばメチル基のような、C1−10アルキル基を表す。
【0055】
好ましくは、RSi(OR前駆物質の割合が大きく、一方、RSi(OR前駆物質のそれは小さくて、例えば前駆物質の混合物の全質量に対して5〜30質量%、より好適には約20質量%である
【0056】
溶媒は水を主成分とする。好ましくは、それは溶媒の全質量に対して80〜100質量%の水、および所望によりC1−4アルコール、好ましくはエタノールまたはイソプロパノールを含む。
【0057】
触媒は好ましくは酸、より好適には酢酸、またはCOである。
【0058】
塗着させる溶液は、溶液の全質量に対して、例えば5〜30質量%、好ましくは約20質量%で、シランの混合物を主成分として含む。ケイ素に対する酸のモル比は、好ましくは約1%である。添加される活性化ナノビルディングブロックのケイ素に対するモル比は、20%未満である。例えば、それらは好ましくは、酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムに対して、それぞれ5%および10%である。
【0059】
一方では、本発明のナノ構造化材料は次のように調製される:
ナノビルディングブロックを、とりわけ上述されたような加水分解または非加水分解プロセスにより調製することによって;
ナノビルディングブロックに官能性を付与することによって;
他方では:
マトリクスを調製することによって;
その後
官能化ナノビルディングブロックをマトリクスと混合することによって。
【0060】
少なくとも1の添加物が、ナノビルディングブロックを調製する間、もしくは官能性が付与されたナノビルディングブロックをマトリクスと混合する間のいずれか、またはこれらのステップの両方の最中に、所望により加えられてもよい。
【0061】
添加物がナノビルディングブロックが調製されている最中に加えられる場合、コアが添加物からなり、かつシェルがナノビルディングブロックからなる、コア−シェルタイプの最終的な材料が形成されてもよい。
【0062】
本発明において使用されうる添加物は、特に、例えば、3MによってFC4432およびFC4430の商標の下で販売される非イオン性蛍光ポリマーのようなゾルの金属基質に対する湿潤性を改善するための界面活性剤;着色剤、例えばローダミン、フルオレセイン、メチレンブルーおよびエチルバイオレット;例えば(3−トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミンのようなクロスリンク剤;例えばアミノプロピルトリエトキシシラン(APTS)のようなカップリング剤;ナノピグメント;例えばベンゾトリアゾールのような腐食防止剤、またはこれらの混合物である。
【0063】
上に記載されたナノ構造化材料によってコーティングされるために使用される金属表面の例は、例えばTA6Vチタン、2000ファミリーのアルミニウム、より詳細にはめっきされたもしくはめっきされないAL 2024、7000ファミリーのアルミニウム、より詳細にはAl 7075もしくは7175、および6000もしくは5000ファミリーのアルミニウムのような、チタン、アルミニウムおよびそれらの対応する合金である。
【0064】
上に記載されたようなナノ構造化材料から得られるような、金属表面のコーティングによって、特に、金属基質の表面によく付着しながら、任意に調節可能な、腐食に対する保護、スクラッチ抵抗性、着色および疎水性を得ることができる。
【0065】
さらに、これらのコーティングは、金属表面に行うのに簡単な技術、例えば、バスの中でディッピング、スピンコーティング、吹き付けもしくはラミナーフローコーティング、またはブラシでの塗布によって塗着させられる。そのうえ、これらの技術は環境に優しい製品を使用する。
【0066】
本発明のもうひとつの主題は、上述されたようなナノビルディングブロックおよび次の式に対応する少なくとも3種類の特定の金属アルコキシドから調製される有機/無機複合マトリクスを含む特定のナノ構造化材料である:
Si(OR
Si(OR;および
Si(OR
ここで、R、R、RおよびRは上で定義されたものである。
【0067】
本発明の特定のナノ構造化材料は、特に、次に掲げるステップを含む方法に従って調製されてもよい:
【0068】
一方では
a) ナノビルディングブロックを、加水分解性または非加水分解性プロセスによって、上述されたような少なくとも1種類の金属アルコキシドから調製すること;および
b) ナノビルディングブロックを、上述されたような官能化剤を使用して、官能性を付与すること、
【0069】
他方では
c) 有機/無機複合マトリクスを、ゾル−ゲルプロセスによって、上で規定されるような3種類のケイ素アルコキシドから調製すること。ここで、ゾル−ゲルプロセスによる調製は溶媒、および所望により上述されたような触媒の存在下で行われる;
その後
d) ステップb)で得られる官能化されたナノビルディングブロックを、ステップc)で得られるマトリクスと混合する。
【0070】
上に記載されたような少なくとも1の添加物が、ステップa)の最中もしくはステップd)の最中またはステップa)およびd)の両方の最中に、所望により加えられてもよい。添加物がステップa)の最中に加えられる場合には、ステップd)からの最終的な材料が、コアが添加物によって形成され、かつシェルがナノビルディングブロックによって形成された、コア/シェルタイプを形成してもよい。
【0071】
この方法は、穏やかな条件といわれる条件の下で、すなわち、約20〜25℃の環境温度、および大気圧で行われる。
【0072】
本発明のさらなる主題は、例えばチタン、アルミニウムから、またはそれらの合金のうちの1から作られる金属基質、および上に規定されるような特定のナノ構造化材料を含む物品である。
【0073】
本発明のこの物質は、上で規定されるような少なくとも1の特定のナノ構造化材料を、バス中でディッピング、スピンコーティング、吹き付けもしくはラミナーフローコーティング、またはブラシで塗着させるステップを含むコンベンショナルなコーティング方法によって調製されてもよい。
【0074】
本発明およびそれが提供する利点は、例示する手段として下記に与えられる実施例によってよりよく理解されるだろう。
【実施例1】
【0075】
実施例1: 酸化セリウムのナノパーティクルを6−アミノカプロン酸を用いて官能化することによる、NBB−1溶液の調製。
81mgの6−アミノカプロン酸が、1mlの、RHODIGARD W200の商標の下でRhodiaによって販売される、CeOナノパーティクルの水中コロイド溶液に溶かされた。粉末について官能化の程度 r=nacid/nCeO2=0.5 が得られ、熱重量分析によって測定され、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)によって確認された。
【実施例2】
【0076】
実施例2: 酸化セリウムナノ粒子を6−アミノカプロン酸を用いて官能化することによる、NBB−2溶液の調製。
162mgの6−アミノカプロン酸が1mlの、RhodiaによってRHODIGARD W200の商標の下でRhodiaによって販売される、CeOナノパーティクルの水中コロイド溶液に溶かされた。官能化の程度 r=nacid/nCeO2=1 が得られた。
【実施例3】
【0077】
実施例3: 酸化セリウムナノ粒子を2−アミノエチルホスホン酸を用いて官能化することによる、NBB−3溶液の調製。
48.75mgの2−アミノエチルホスホン酸が1mlの、RHODIGARD W200の商標の下でRhodiaによって販売される溶液に加えられた。官能化の程度 r=nacid/nCeO2=0.3 が得られた。
【実施例4】
【0078】
実施例4: NBB−4溶液の調製。
4.55gのアセチルアセトンおよび13.75gの1−プロパノールを含む溶液に、1−プロパノール中の70質量%溶液として18.67gのジルコニウムテトライソプロポキシドが加えられた。6.01gのパラ−トルエンスルホン酸および7.895gの水を含む溶液が先の混合物に加えられ、室温で撹拌された。溶液は、室温で5分間撹拌され、それから溶液を含むフラスコがシールされ、それが60℃のオーブンの中で24時間放置された。
【実施例5】
【0079】
実施例5: 酸化ジルコニウムナノ粒子を6−アミノカプロン酸を用いて官能化することによる、NBB−5溶液の調製。
524mgの6−アミノカプロン酸が、5mlの上に記載されたNBB−4溶液に加えられた。溶液はアミノ酸が完全に溶けるまで撹拌され続け、それには約12時間を要した。
【0080】
上の実施例1〜5に対して、得られた官能化パーティクルの流体力学的直径が、光散乱によって、2〜10nmの間であると評価された。
【実施例6】
【0081】
実施例6: FC−4432の商標の下で3Mによって販売される界面活性剤を含む溶液の調製。
10質量%の界面活性剤をイソプロパノール中に含む溶液が調製された。
【実施例7】
【0082】
実施例7: NBB−2+GPTMS/TMOS/GMDESマトリクス(モル比=2.5/1/0.5)。
0.93gのテトラメトキシシラン(TMOS)、3.734gの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)および0.77gの3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(GMDES)の混合物が、6.4mlの酢酸溶液(0.05mol/lまたはM)に、室温で撹拌しながら、1滴ずつ加えられた。
【0083】
溶液は、シールされたフラスコの中で、6日間、室温で撹拌され続けた。6日目に、実施例2で調製されたNBB−2が、Ce/Sitotモル比が0.05となるような量で、混合物に加えられた。透明な黄色い溶液(A)がそうして得られ、それは撹拌され続けた。
【0084】
膜を塗着させる数分前に、所定量の実施例6からの湿潤剤溶液が、最終的な混合物中で混合物の全質量に対して湿潤剤が0.04%の質量部を得るように、溶液(A)に加えられた。
【0085】
非めっきのAl 2024 T3合金でできた基質が、125×80×1.6mmの寸法を有し、2dmの全表面積を提供し、塗着直前に、例えば酸エッチング前のアルカリクリーニングのような当業者に知られる方法に従って、環境規制に適合する配合で調製された。
【0086】
後者を最終的な混合物の中に90秒間浸漬し、その後取り出して室温で乾燥することによって、膜が基質上に塗着させられた。
【実施例8】
【0087】
実施例8: NBB−2+GPTMS/TMOS/GMDESマトリクス(モル比=2.5/1/0.5)+着色剤。
溶液(A)が実施例7と同じ方法で調製された。10−3Mの溶液中の着色剤の濃度に対応する所定量のローダミンBが、溶液中に溶かされた。ただちに、溶液は強いピンク色を呈した。
【0088】
最終的な混合物の全質量に対して湿潤剤を0.04質量%の割合で含む最終的な混合物を得られるように、実施例6からの湿潤剤の溶液が、膜を沈着させる数分前に、先の溶液に加えられた。
【0089】
塗着直前に、基質が、実施例7と同じ方法で、調製された。
【0090】
後者を最終的な混合物の中に90秒間浸漬し、その後取り出して室温で乾燥することによって、膜が基質上に塗着させられた。
【実施例9】
【0091】
実施例9: NBB−2+GPTMS/TMOS/GMDESマトリクス(モル比=2.5/1/0.5)。
0.93gのテトラメトキシシラン(TMOS),3.734gの3−グリシドキプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)および0.49gのジメチルジエトキシシラン(DMDES)の混合物が、6.4mlの酢酸溶液(0.05M)に、室温で撹拌しながら、一滴ずつ加えられた。
【0092】
溶液は、シールされたフラスコの中で、1日間、室温で撹拌され続けた。1日間ゾルをエイジングした後、NBB−2の溶液が、Ce/Sitotモル比が0.05となるような量加えられた。溶液(B)を得るために、それは30分間撹拌され続けた。
【0093】
次に、実施例6からの湿潤剤を含む溶液が、最終的な混合物において0.04質量%の湿潤剤濃度を得るように、そこに加えられた。
【0094】
実施例7におけるのと同じ方法で、塗着直前に基質が調製された。
【0095】
後者を最終的な混合物の中に90秒間浸漬し、その後取り出して室温で乾燥することによって、膜が基質上に塗着させられた。
【実施例10】
【0096】
実施例10: NBB−2+NBB−4+GPTMS/TMOS/DMDESマトリクス(モル比=2.5/1/0.5)。
溶液(B)が実施例9と同じ方法で調製され、その後7mlのNBB−4溶液がそこに加えられた。溶液(C)を得るために、数分間撹拌し続けた。
【0097】
次に、実施例6からの湿潤剤溶液が、最終的な混合物中で+0.04%の濃度の湿潤剤を得るように、そこに加えられた。
【0098】
基質は、塗着の直前に、実施例7におけるのと同じ方法で調製された。
【0099】
後者を最終的な混合物の中に90秒間浸漬し、その後取り出して室温で乾燥することによって、膜が基質に塗着させられた。
【0100】
2つの試験片が調製された。それらのうちの1を24時間、室温で乾燥させた後、それは110℃で30分間処理された。
【実施例11】
【0101】
実施例11: NBB−2+NBB−4+GPTMS/TMOS/DMDESマトリクス(モル比=2.5/1/0.5)+ジエチレントリアミン(DETA)クロスリンク剤。
溶液(C)が、実施例10におけるのと同じ方法で調製された。
【0102】
次に、576mgのDETAが溶液(C)に添加され、それから数分後に、実施例6からの湿潤剤が、最終的な混合物において0.04質量%の湿潤剤濃度を得るように加えられた。
【0103】
実施例7におけるのと同じ方法で、基質が塗着直前に調製された。
【0104】
後者を最終的な混合物の中に90秒間浸漬し、その後取り出して室温で乾燥することによって、膜が基質上に塗着させられた。
【0105】
2つの試験片が調製された。それらのうちの1つを24時間、室温で乾燥した後、それは110℃で3時間処理された。
【実施例12】
【0106】
実施例12: NBB−2+NBB−4+GPTMS/TMOS/DMDESマトリクス(モル比=2.5/1/0.5)+アミノプロピルトリエトキシシラン(APTS)カップリング剤。
溶液(C)が、実施例10におけるのと同じ方法で調製された。
【0107】
次に、3.2gのAPTSが添加され、それから数分後に、実施例6からの湿潤剤溶液が、最終的な混合物において0.04質量%の湿潤剤濃度を得るように添加された。
【0108】
塗着の直前に、実施例7におけるのと同じ方法で、基質が調製された。
【0109】
後者を最終的な混合物の中に90秒間浸漬し、その後取り出して室温で乾燥することによって、膜が基質上に塗着させられた。
【0110】
2つの試験片が調製された。それらのうちの1つを室温で24時間乾燥した後、それは110℃で30分間処理された。
【実施例13】
【0111】
実施例13: NBB−3+GPTMS/TMOS/DMDESマトリクス(モル比=2.5/1/0.5)。
0.93gのテトラメトキシシラン(TMOS)、3.734gの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)および0.49gのジメチルジエトキシシラン(DMDES)の混合物が、6.4mlの酢酸溶液(0.05M)に、室温で撹拌しながら、一滴ずつ添加された。
【0112】
30分後、1mlのNBB−3溶液が添加された。室温で24時間撹拌し続けた。それは1500rpmで回転するスピンコーティングによって基質に塗着させられ、室温で乾燥するために放置された。
【実施例14】
【0113】
実施例14: NBB−5+GPTMS/TMOS/DMDESマトリクス(モル比=2.5/1/0.5)。
0.93gのテトラメトキシシラン(TMOS)、3.734gの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)および0.49gのジメチルジエトキシシラン(DMDES)の混合物が、6.4mlの酢酸溶液(0.05M)に、室温で撹拌しながら、一滴ずつ加えられた。
【0114】
溶液が透明で均一になるとすぐ、つまり数分後、3.5mlのNBB−5溶液が添加された。室温で撹拌し続けた。2時間後、それは1500rpmで回転するスピンコーティングによって基質に沈着させられ、室温で乾燥するために放置された。
【実施例15】
【0115】
実施例15: NBB−4+NBB−5+GPTMS/TMOS/DMDESマトリクス(モル比=2.5/1/0.5)。
0.93gのテトラメトキシシラン(TMOS)、3.734gの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)および0.49gのジメチルジエトキシシラン(DMDES)の混合物が、6.4mlの酢酸溶液(0.05M)に、室温で撹拌しながら、一滴ずつ加えられた。
【0116】
30分後、3.5mlのNBB−4溶液が添加された。室温で24時間の間撹拌し続けた。1mlのNBB-5溶液がその後、先の混合物に加えられた。2時間の間撹拌し続けた。次に、1500rpmで回転するスピンコーティングによって基質に塗着させられ、室温で乾燥するために放置された。
【0117】
実施例7から15において、500nmから数μmの、より詳細には2から6μmの間の、そして好ましくは1.5〜3μmの範囲の厚さを持つ膜が得られる。
これらの塗膜は、良好な界面、すなわち塗着層と金属基質との間、および塗着層と塗布剤の最初の塗着との間の安定性を有し、また、たとえば衝撃または曲げストレスのような機械的ストレスに対する抵抗性も有する。腐食抵抗性は、塗布剤があってもなくても、クロメート層のそれに匹敵する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ構造化材料が、表面が官能化されたナノビルディングブロック、および重合体のまたは有機/無機複合のマトリクスを含み、該ナノビルディングブロックの官能化が、官能基の一方がナノビルディングブロックの表面に対する親和性をもち、かつ他方がマトリクスと相互作用する二官能性分子である官能化剤の存在下で行われることを特徴とする、金属表面に対する保護被膜としてのナノ構造化材料の使用。
【請求項2】
ナノブロックがクラスター形態またはナノパーティクル形態であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ナノパーティクルが2〜100nmのサイズを持つことを特徴とする請求項2に記載の使用。
【請求項4】
ナノパーティクルが2〜50nmのサイズを持つことを特徴とする請求項3に記載の使用。
【請求項5】
ナノビルディングブロックが少なくとも1種類の金属酸化物に本質的に基づくことを特徴とする、先の請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
金属酸化物がアルミニウム、セリウムIIIおよびIV、ケイ素、ジルコニウム、チタンならびにスズの酸化物から選ばれることを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
金属酸化物がジルコニウムおよびセリウムIVの酸化物から選ばれることを特徴とする、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
ナノビルディングブロックが析出によって金属塩から合成されることを特徴とする、先の請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
ナノビルディングブロックが少なくとも1種類の金属アルコキシドまたは金属ハロゲン化物から加水分解または非加水分解プロセスを経由して得られることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
加水分解プロセスで使用される金属アルコキシドまたは金属酸化物が下記式の1に対応することを特徴とする、請求項9に記載の使用:
MZ (1);
R’MZn−x (2);または
MZn−mx (3),
ただし、式(1)、(2)および(3)において:
MはAl(III)、Ce(III)、Ce(IV)、Si(IV)、Zr(IV)を表す。ここで、括弧内の数字はM原子の価数である;
nはM原子の価数を表す;
xは1〜1−nの範囲の整数である;
Zはハロゲン原子または−ORを表す;
Rはアルキル基を表し、好ましくは1〜4個の炭素原子を含む;
R’は、アルキル基、特にC1−4アルキル基;アルケニル基、とりわけC2−4アルケニル基;アルキニル基、とりわけC2−4アルキニル基;アリール基、とりわけC6−10アリール基;メタクリルおよびメタクリルオキシ(C1−10アルキル)基;およびアルキル基が直鎖、分枝または環式かつC1−10アルキル基であり、アルコキシ基が1〜10個の炭素原子を含むエポキシアルキルまたはエポキシアルコキシアルキル基から選ばれる非加水分解性基を表す;
Lは単座または多座、好ましくは多座の錯体化リガンドである;および
mはリガンドLのヒドロキシル化の程度を表す。
【請求項11】
MがZr(IV)またはCe(IV)を表すことを特徴とする請求項10に記載の使用。
【請求項12】
Rがメチルまたはエチル基を表し;R’が、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、ブテニル、アセチレニル、プロパルギル、フェニル、ナフチル、メタクリル、メタクリルオキシプロピル、グリシジルおよびグリシジルオキシ(C1−10アルキル)から選ばれる非加水分解性基を表し;ならびにLがカルボン酸、β−ジケトン、β−ケトエステル、α−およびβ−ヒドロキシ酸、アミノ酸ならびにホスホン酸から選ばれる錯体化リガンドであることを特徴とする、請求項10または11に記載の使用。
【請求項13】
ナノビルディングブロックの官能化が、それらの合成の間に同時に官能化剤の存在下で行われることを特徴とする、先の請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
官能化が、合成に続く第二のステップの間に官能化剤の存在下で行われることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の使用。
【請求項15】
ナノブロック表面に対する親和性をもつ官能基が、カルボン酸、ジケトン、リン酸、ホスホン酸およびα−またはβ−ヒドロキシ酸官能基ならびに遷移金属に対する多座配位錯化剤から選ばれることを特徴とする、先の請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項16】
マトリクスと相互作用しうる官能基が、第1級、第2級および第3級アミノ基ならびにビニル、アクリレートまたはメタクリレート基等の重合可能な官能基から選ばれることを特徴とする、先の請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項17】
官能化剤が6−アミノカプロン酸および2−アミノエチルホスホン酸から選ばれることを特徴とする先の請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項18】
マトリクスが、溶媒および所望により触媒の存在下での少なくとも2種類の金属アルコキシドの縮合重合によって得られる有機/無機複合マトリクスであることを特徴とする、先の請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項19】
金属アルコキシドまたは金属塩が下記一般式をもつことを特徴とする請求項18に記載の使用:
M’Z´n’ (IV);
R”x’M’Z´n’−x’ (V);
L’m’x’M’Z´m’x’ (VI);および
Z´n’−1M’−Rρ−MZ´n’−1 (VII),
ただし:
n’は金属原子M’の価数を表し、好ましくは3、4または5である;
x’は1〜n’−1の範囲の整数である;
M’は、例えばAlのような、IIIの価数をもつ;例えばSi、Ce、ZrおよびTiのような、IVの価数をもつ;または、例えばNbのような、Vの価数をもつ金属原子を表す;
Z´は、ハロゲン原子、アルコキシ基、好ましくはC1−4アルコキシ基、アリールオキシ基、とりわけC6−10アリールオキシ基、アシルオキシ基、とりわけC1−4アシルオキシ基およびC1−10アルキルカルボニル基から選ばれる加水分解性基を表す;
R”は、アルキル基、好ましくはC1−4アルキル基;アルケニル基、とりわけC2−4アルケニル基;アルキニル基、とりわけC2−4アルキニル基;アリール基、とりわけC6−10アリール基;(メタ)クリルおよびメタクリルオキシ(C1−10アルキル)基;およびアルキル基が直鎖、分枝または環式かつC1−10アルキル基であり、アルコキシ基が1〜10個の炭素原子を含むエポキシアルキルまたはエポキシアルコキシアルキル基から選ばれる1価の非加水分解性基を表す;
Rρは、アルキレン基、好ましくはC1−4アルキレン基;アルケニレン基、とりわけC2−4アルケニレン基;アルキニレン基、とりわけC2−4アルキニレン基;アリーレン基、とりわけC6−10アリーレン基;メタクリルおよびメタクリルオキシ(C1−10アルキレン)基;およびアルキル基が直鎖、分枝または環式かつC1−10アルキル基であり、アルコキシ基が1〜10個の炭素原子を含むエポキシアルキレンまたはエポキシアルコキシアルキル基から選ばれる2価の非加水分解性基を表す;および
L’は好ましくは多座の錯体化リガンドを表す;および
m’はリガンドL’のヒドロキシル化の程度を表す。
【請求項20】
下記を特徴とする請求項19に記載の使用:
n’が4である;
x’が1〜3の範囲の整数である;
M’はケイ素、セリウムまたはジルコニウム原子を表す;
Z´は、ClおよびBr、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、ブトキシ、フェノキシ、アセトキシ、プロピオニルオキシおよびアセチル基から選ばれる加水分解性基を表す;
R”は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、ブテニル、アセチレニル、プロパルギル、フェニル、ナフチル、メタクリル、メタクリルオキシプロピル、グリシジルおよびグリシジルオキシ(C1−10アルキル)基から選ばれる1価の非加水分解性基を表す;
Rρは、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ビニレン、1−プロペニレン、2−プロペニレン、ブテニレン、アセチレニレン、プロパルギレン、フェニレン、ナフチレン、メタクリル、メタクリルオキシプロピル、グリシジルおよびグリシジルオキシ(C1−10アルキル)基から選ばれる2価の非加水分解性基を表す;および
L’はカルボン酸、β−ジケトン、β−ケトエステル、αもしくはβ−ヒドロキシ酸、アミノ酸、またはホスホン酸を表す。
【請求項21】
溶媒がその大部分が水であることを特徴とする請求項18〜20のいずれかに記載の使用。
【請求項22】
溶媒が溶媒の全質量に対して80〜100質量%の水、および所望によりC1−4アルコールを含むことを特徴とする請求項21に記載の使用。
【請求項23】
触媒が酸、好ましくは酢酸、またはCOであることを特徴とする請求項18〜22のいずれかに記載の使用。
【請求項24】
航空工学および航空宇宙工学における、先の請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項25】
官能化ナノビルディングブロックおよび下記式に対応する少なくとも3種類の金属アルコキシドから調製される有機/無機複合マトリクスを含むことを特徴とするナノ構造化材料:
Si(OR
Si(OR;および
Si(OR
ここで:
はメチルまたはエチル基を表し、
およびRはそれぞれ、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルエチルまたはグリシジルオキシ(C1−10アルキル)のような、アルキル基が直鎖、分枝および/または環式かつC1−10アルキル基であり、アルコキシ基が1〜10個の原子を含む、(メタ)アクリレート、ビニル、エポキシアルキルまたはエポキシアルコキシアルキル基を表し;および
は、例えばメチル基のような、C1−10アルキル基である。
【請求項26】
ナノブロックがクラスター形態またはナノパーティクル形態であることを特徴とする請求項25に記載のナノ構造化材料。
【請求項27】
ナノパーティクルが2〜100nmのサイズを持つことを特徴とする請求項26に記載のナノ構造化材料。
【請求項28】
ナノパーティクルが2〜50nmのサイズを持つことを特徴とする請求項27に記載のナノ構造化材料。
【請求項29】
ナノビルディングブロックが少なくとも1種類の金属酸化物に本質的に基づくことを特徴とする請求項25〜28のいずれかに記載のナノ構造化材料。
【請求項30】
金属酸化物がアルミニウム、セリウムIIIおよびIV、ケイ素、ジルコニウム、チタンならびにスズの酸化物から選ばれることを特徴とする請求項29に記載のナノ構造化材料。
【請求項31】
金属酸化物がジルコニウムおよびセリウムIV酸化物から選ばれることを特徴とする請求項30に記載のナノ構造化材料。
【請求項32】
ナノビルディングブロックが、金属塩から析出によって、または少なくとも1種類の金属アルコキシドもしくは金属ハロゲン化物から加水分解または非加水分解プロセスを経由して、合成されることを特徴とする、請求項25〜31のいずれかに記載のナノ構造化材料。
【請求項33】
ナノビルディングブロックが少なくとも1種類の金属アルコキシドまたは金属ハロゲン化物から加水分解プロセスを経て得られ、その金属アルコキシドが下記式の1に対応することを特徴とする、請求項25〜32のいずれかに記載のナノ構造化材料:
MZ (1);
R’MZn−x (2);または
MZn−mx (3),
式(1)、(2)および(3)において:
MはAl(III)、Ce(III)、Ce(IV)、Si(IV)、Zr(IV)、Ti(IV)またはSn(IV)を表す。ここで、括弧内の数字は金属原子の価数である;
nはM原子の価数を表す;
xは1からn−1の範囲の整数である;
Zはハロゲン原子または−ORを表す;
Rはアルキル基、好ましくは1から4の炭素原子を含む;
R’は、アルキル基、特にC1−4アルキル基;アルケニル基、とりわけC2−4アルケニル基;アルキニル基、とりわけC2−4アルキニル基;アリール基、とりわけC6−10アリール基;メタクリルおよびメタクリルオキシ(C1−10アルキル)基;およびアルキル基が直鎖、分枝または環式かつC1−10アルキル基であり、アルコキシ基が1から10個の炭素原子を含むエポキシアルキルまたはエポキシアルコキシアルキル基から選ばれる非加水分解性基を表す;
Lは単座または多座、好ましくは多座の錯体化リガンドである;および
mはリガンドLのヒドロキシル化の程度を表す。
【請求項34】
M原子がZr(IV)またはCe(IV)を表すことを特徴とする請求項33に記載のナノ構造化材料。
【請求項35】
Rがメチルまたはエチル基を表し;R’がメチル、エチル、プロピル、ブチル、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、ブテニル、アセチレニル、プロパルジル、フェニル、ナフチル、メタクリル、メタクリロキシプロペニル、グリシジルおよびグリシジルオキシ(C1−10アルキル)基から選ばれる非加水分解性基を表し;およびLがカルボン酸、β−ジケトン、β−ケトエステル、α−およびβ−ヒドロキシ酸、アミノ酸ならびにホスホン酸から選ばれる錯体化リガンドを表す請求項33または34に記載のナノ構造化材料。
【請求項36】
ナノビルディングブロックが官能化剤を使用して表面が官能化されることを特徴とする、請求項25〜35のいずれかに記載のナノ構造化材料。
【請求項37】
官能化剤がナノビルディングブロックの表面およびマトリクスと相互作用する他の官能基に対して親和性をもつことを特徴とする、請求項36に記載のナノ構造化材料。
【請求項38】
ナノブロック表面に親和性をもつ官能基がカルボン酸、ジケトン、リン酸、ホスホン酸、およびα−またはβ−ヒドロキシ酸官能基ならびに遷移金属に対する多座錯化剤から選ばれる、請求項37に記載のナノ構造化材料。
【請求項39】
マトリクスと相互作用しうる官能基が第1級、第2級および第3級アミノ基ならびにビニル、アクリレートまたはメタクリレート基等の重合可能な官能基から選ばれることを特徴とする、請求項37または38に記載のナノ構造化材料。
【請求項40】
官能化剤が6−アミノカプロン酸および2−アミノエチルホスホン酸から選ばれることを特徴とする、請求項36〜39のいずれかに記載のナノ構造化材料。
【請求項41】
請求項25〜40のいずれかに記載のナノ構造化材料を調製する方法であって、下記のステップを含む方法:
一方では
a) 請求項33〜35のいずれかに規定される少なくとも1種類の金属アルコキシドまたは金属ハロゲン化物から、加水分解または非加水分解プロセスによって、ナノビルディングブロックを調製する;および
b) 官能化剤を使用してナノビルディングブロックを官能化する、
一方では、
c) 請求項25に規定される3つのシリコンアルコキシドから、ゾル−ゲルプロセスによって、有機/無機複合マトリクスを調製する。ここで、ゾル−ゲルプロセスによる調製は溶媒、および所望により触媒の存在下で行われる;
その後
d) ステップb)で得られた官能化ナノビルディングブロックをステップc)で得られたマトリクスと混合する。
【請求項42】
少なくとも1の添加物がステップa)の間に、またはステップd)の間に、またはステップa)の間およびd)の間の両方において加えられることを特徴とする、請求項41に記載の調製方法。
【請求項43】
添加物がステップa)の間に加えられることおよびステップd)からの最終材料がコア/シェルタイプであり、コアが添加物によって構成され、シェルがナノビルディングブロックによって構成されることを特徴とする、請求項42に記載の調製方法。
【請求項44】
金属基質、着色剤、クロスリンク剤、カップリング剤および腐食防止剤に対するゾルの湿潤性を向上するために添加物が界面活性剤から選ばれることを特徴とする、請求項42または43に記載の調製方法。
【請求項45】
金属基質および請求項25〜40のいずれかに記載のナノ構造化材料を含むことを特徴とする物品。
【請求項46】
金属基質がチタン、アルミニウム、またはそれらの合金の1からできていることを特徴とする請求項45に記載の物品。
【請求項47】
請求項25〜40のいずれかに記載の少なくとも1のナノ構造化材料を、バスの中でディッピング、スピンコーティング、吹き付けもしくはラミナーフローコーティング、またはブラシを用いて塗着するステップを含むことを特徴とする、請求項45または46に記載のパーティクルを調製する方法。

【公表番号】特表2009−533308(P2009−533308A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504796(P2009−504796)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際出願番号】PCT/FR2007/051098
【国際公開番号】WO2007/119023
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(508228164)ユーロピアン エアロノティック ディフェンス アンド スペース カンパニー イーエーディーエス フランス (5)
【出願人】(507416908)ユニヴェルシテ ピエール エ マリ キュリー パリ 6 (5)
【出願人】(508106611)サントル ナシオナル ド ラ ルシェルシュ シアンティフィック (セーエヌエールエス) (10)
【Fターム(参考)】