説明

金属表面コーティング用組成物、導電性高分子の製造方法、金属表面のコーティング方法、ならびに電解コンデンサおよびその製造方法

【課題】 高い容量達成率と高耐圧を有する電解コンデンサおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 イオン性液体と導電性高分子分散溶液とを含む組成物であって、前記イオン性液体が前記分散溶液と少なくとも部分的に相溶していることを特徴とする金属表面のコーティング用組成物、当該組成物における導電性高分子の製造方法、当該組成物を用いた導電性高分子による金属表面のコーティング方法、ならびに、当該組成物を用いた電解コンデンサおよびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属表面コーティング用組成物、導電性高分子の製造方法、金属表面のコーティング方法、ならびに電解コンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、導電性高分子を陰極導電層として用いた電解コンデンサが知られている。このような電解コンデンサにおいては、陽極酸化皮膜で構成される誘電体層に損傷を与え難いドーパントを用いることで、漏れ電流が低く、耐熱・耐湿性の高い電解コンデンサを製造することができることが知られている。このような電解コンデンサを製造する方法として、たとえば特許文献1には、誘電体層に損傷を与えにくい嵩の大きなアルキルナフタレンスルホン酸アニオンを含む遷移金属塩からなる酸化剤を用いて導電性高分子を化学重合させることで、アルキルナフタレンスルホン酸がドープされた導電性高分子で構成された陰極導電層を形成する方法が開示されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1のようにアルキルナフタレンスルホン酸アニオンを含む遷移金属塩を酸化剤として用いて、化学重合により誘電体層上に導電性高分子により構成される陰極導電層を形成した場合、遷移金属塩あるいはドーパントの嵩が大きいために高い容量達成率が得られないという問題があった。
【特許文献1】特開平10−94320号公報
【特許文献2】特開2002−373832号公報
【特許文献3】特開2003−203828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、高い容量達成率と高耐圧を有する電解コンデンサおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究の結果、イオン性液体と導電性高分子分散溶液とを含む組成物であって、前記イオン性液体が前記分散溶液と相溶している組成物を用いることで、上述した高い容量達成率と高耐圧を有する電解コンデンサを製造することができることを見出し、本発明を完成した。また、本発明者らは、当該組成物に用いる導電性高分子の製造方法や、当該組成物を用いた導電性高分子による金属表面のコーティング方法などの発明も新たに見出した。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0006】
本発明の組成物は、金属表面のコーティングに用いられるものであって、イオン性液体と導電性高分子分散溶液とを含む組成物であって、前記イオン性液体が前記分散溶液と少なくとも部分的に相溶していることを特徴とする。ここで導電性高分子分散溶液は、分散媒に導電性高分子を分散した溶液をいう。
【0007】
ここにおいて、導電性高分子は、ポリチオフェンまたはその誘導体、ポリピロールまたはその誘導体、ポリアニリンまたはその誘導体、ポリキノンまたはその誘導体から選ばれる少なくともいずれかであるのが好ましい。
【0008】
また本発明は、少なくとも部分的に相溶するイオン性液体および溶媒の存在下で、導電性高分子のモノマーを化学重合することを特徴とする、導電性高分子の製造方法も提供する。
【0009】
ここにおいて、化学重合に用いる導電性高分子のモノマーは、チオフェンまたはその誘導体、ピロールまたはその誘導体、アニリンまたはその誘導体、キノンまたはその誘導体から選ばれる少なくともいずれかであるのが好ましい。
【0010】
本発明はまた、以下の(1)、(2)の導電性高分子による金属表面のコーティング方法を提供する。
【0011】
(1)上述した本発明の組成物に金属を浸漬した後、該金属を加熱処理することを特徴とする、導電性高分子による金属表面のコーティング方法。
【0012】
(2)イオン性液体、導電性高分子のモノマー、酸化剤を必須成分として含む組成物に金属を浸漬した後、該金属を加熱処理することを特徴とする、導電性高分子による金属表面のコーティング方法。
【0013】
上述した本発明の金属表面のコーティング方法における金属は、表面を酸化膜で被覆された弁金属であるのが好ましい。
【0014】
本発明はさらに、上述した本発明の組成物を少なくとも用いて作製された電解コンデンサを提供する。
【0015】
また本発明は、上述した本発明の導電性高分子の製造方法、または、金属表面のコーティング方法を少なくとも用いた電解コンデンサの製造方法をも提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の金属表面コーティング用組成物、導電性高分子の製造方法、導電性高分子による金属表面のコーティング方法のうちの少なくともいずれかを用いることで、高い導電率の導電性高分子を含み、界面抵抗が減少し、それによって等価直列抵抗(ESR)が減少され、結果として高い容量達成率と高耐圧を有する電解コンデンサおよびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔1〕組成物
本発明の組成物は、少なくともイオン性液体と導電性高分子分散溶液とを含む組成物であって、前記イオン性液体が前記分散溶液と少なくとも部分的に相溶していることを特徴とする。このような組成物は、後述するような導電性高分子による金属表面のコーティングに好適に用いることができるものである。また本発明の組成物は、後述する電解コンデンサの製造方法にも好適に用いることができる。なお、本発明の組成物において、「イオン性液体が前記分散溶液と少なくとも部分的に相溶している」とは、両者が相互に部分的に溶解していることを意味し、分散溶媒の重量(X)とイオン性液体の重量(Y)の比(Y/X)が0.1〜20であることを指す。ここで相溶しているかどうかの確認は、(a)ロ紙によるロ過で残渣のないこと、(b)遠心分離で分離物が検出されないこと、(c)可視・赤外スペクトルにおいて吸収強度が溶解した導電性高分子量に比例していること、などで確認することができる。
【0018】
本発明の組成物に含まれるイオン性液体は、イオンのみから構成されているにもかかわらず常温で液体であるものを指し、イミダゾリウムなどのカチオンと適当なアニオンの組み合わせで構成される。本発明においては、酸化剤や溶媒(水や有機溶媒など)を使用する観点から、親水性、親油性(すなわち水に溶ける、あるいは有機溶媒に溶ける)イオン性液体を用いることが好ましい。
【0019】
本発明に好適に用いられるイオン性液体を構成するカチオンとしては、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリジウムカチオン、アンモニウムカチオン、トリアジン誘導体カチオンなどを例示することができるが、これらに限定されるものではない。中でもイミダゾリウムカチオンは使い易さの観点から好ましく用いられる。
【0020】
イオン性液体を構成するアニオン成分としては、Br-、AlCl-、NO3-、RANO3-、NH2CHRACOO-、SO42-、BF4-、PF6-などを例示することができるが、これに限定されるものではない。ここで、RAは脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、エーテル基、エステル基、アシル基などを含む置換基を示す。
【0021】
さらに、カルボキシラト(−COO−)を含むアニオンである、RBCOO--OOCRBCOOH、-OOCRBCCOO-、NH2CHRBCOO-(ここで、RBは脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、エーテル基、エステル基、アシル基などを含む置換基を示す。)は、本発明に好ましく用いられる。
【0022】
また、スルホン酸アニオン(−SO3-)を含むアニオンである、RCSO3-、RCOSO3-(ここで、RCは脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、エーテル基、エステル基、アシル基などを含む置換基を示す。)、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸などは、本発明に好ましく用いられる。
【0023】
本発明に好ましく用いられるイオン性液体として、具体的には、(メチル・エチルイミダゾリウム)p−トルエンスルホン酸、ブチル・メチルイミダゾリウムp−トルエンスルホン酸、エチル・メチルイミダゾリウム−BF4、ブチル・メチルイミダゾリウム−BF4、ブチル・エチルイミダゾリウム−PF6-、エチル・メチルイミダゾリウム−PF6-などが挙げられる。中でも、キャパシタとして使用した際の陽極酸化性が高いエチル・メチルイミダゾリウム−BF4、が好ましい。
【0024】
本発明の組成物における導電性高分子は、特に制限されるものではないが、導電性が高く、かつ空気中で安定であることから、ポリチオフェンまたはその誘導体、ポリピロールまたはその誘導体、ポリアニリンまたはその誘導体、ポリキノンまたはその誘導体から選ばれることが好ましく用いられる。
【0025】
たとえば、ポリチオフェンの誘導体としては、1,4−ジオキシチオフェンモノマーから合成されるポリチオフェン誘導体や、3−メチルチオフェンモノマーから合成されるポリチオフェン誘導体などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ポリピロールの誘導体としては、ピロール骨格を有し、水酸基、カルボキシル基、アルキル基等の置換基を持つものなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ポリアニリンの誘導体としては、ポリアニリン骨格にアルキル基、シアノ基、スルホン基、カルボキシル基を有するものなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ポリキノンの誘導体としては、置換基を有するベンゾキノンモノマーから合成されるポリベンゾキノン誘導体や、置換基を有するナフトキノンモノマーから合成されるポリナフトキノン誘導体や、置換基を有するアントラキノンモノマーから合成されるポリアントラキノン誘導体などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
本発明に用いられる導電性高分子は、導電率が高い点から、ポリチオフェン誘導体、3,4エチレンジオキシチオフェンポリマーが特に好ましい。
【0027】
本発明において、導電性高分子は適当な分散媒中に分散された分散溶液の形態で組成物中に含まれる。分散媒としては、特に制限されるものではないが、たとえばブタノール、エタノール、メタノール、アセトンを挙げることができる。
【0028】
本発明の組成物において、イオン性液体と導電性高分子の混合比率は特に制限されるものではないが、イオン性液体の重量(Y)と導電性高分子の重量(A)の混合比率(Y/A)は、0.01〜10となるように混合されたものであるのが好ましく、特に0.1〜1となるように混合されたものであるのがより好ましい。イオン性液体と導電性高分子の混合比率(Y/A)が0.01未満の場合、重合反応を進行させる触媒的な効果が小さくなる傾向にあり、一方、混合利率が10を超えると反応場としてのイオン性液体の割合が大きくなりすぎ溶液中でのモノマーの割合が小さくなり反応が進みにくい傾向にある。
【0029】
なお、イオン性液体は、上述した導電性高分子との混合比率として好ましい範囲の中でも、混合比率(Y/A)が0.01〜1と比較的小さい場合、酸化反応が促進され緻密な導電性高分子を作成できる。一方、混合比率(Y/A)が1〜10と比較的大きい場合、短時間で重合が進行する利点がある。
【0030】
また本発明の組成物における導電性高分子の分散溶液は、導電性高分子の重量(A)と分散媒の重量(X)の混合比率(A/X)が5〜50となるように混合されたものであるのが好ましく、10〜20となるように混合されたものであるのがより好ましい。混合比率(A/X)が5未満であると、導電性高分子分散溶液の粘度が高くなり塗工するのが難しくなる虞がある。一方、混合比率(A/X)が50を超えると充分に導電性のある膜の作成が難しくなる虞がある。
【0031】
本発明の組成物は、分散媒に分散する高分子や結着剤などのバインダーをさらに含有していてもよい。バインダーとしては、たとえばポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、水溶性ポリエステル、水溶性アクリル樹脂、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルスルホン酸塩、ポリスチレンスルホン酸塩、アルコキシシランなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
本発明の組成物は、上記イオン性液体および導電性高分子の分散溶液以外に、任意成分として、たとえば酸化剤、界面活性剤などを含有していても勿論よい。
【0033】
〔2〕導電性高分子の製造方法
上述した本発明の組成物における導電性高分子は、電解重合法、有機金属化学的縮重合など、従来公知の適宜の方法で合成することができ、導電性高分子の製造方法について特に制限されるものではないが、少なくとも部分的に相溶するイオン性液体および溶媒の存在下で、導電性高分子を化学重合することを特徴とする本発明の導電性高分子の製造方法によって製造されるのが好ましい。すなわち、本発明は、このような導電性高分子の製造方法も提供するものである。
【0034】
本発明の導電性高分子の製造方法において用いられる導電性高分子のモノマーは、特に制限されるものではないが、本発明の組成物において上述した好適な導電性高分子であるポリチオフェンまたはその誘導体、ポリピロールまたはその誘導体、ポリアニリンまたはその誘導体、または、ポリキノンまたはその誘導体を製造することができることから、チオフェンまたはその誘導体、ピロールまたはその誘導体、アニリンまたはその誘導体、キノンまたはその誘導体から選ばれるいずれかであることが好ましい。
【0035】
本発明の導電性高分子の製造方法に用いるイオン性液体については、本発明の組成物について上述したものを好適に用いることができる。
【0036】
本発明の導電性高分子の製造方法において、化学重合に用いる溶媒としては、イオン性液体と相溶し得る(ここで、「相溶」は上記の定義に従う)ものを用いる。具体的には、本発明の組成物における分散媒として例示したものを好適に用いることができる。
【0037】
化学重合は、通常の条件に従って行うことができるが、たとえば、20〜120℃で0.5〜10時間程度反応させて化学重合を行う条件を挙げることができる。
【0038】
本発明の導電性高分子の製造方法は、イオン性液体と溶媒の存在下で化学重合を行う工程を少なくとも含む方法であればよく、当該工程以外に任意の工程を含んでいても勿論よい。
【0039】
〔3〕導電性高分子による金属表面のコーティング方法
本発明は、上述した本発明の組成物を用いた、導電性高分子による金属表面のコーティング方法も提供する。すなわち、本発明のコーティング方法は、上述した本発明の組成物に金属を浸漬した後、該金属を加熱処理することを特徴とする。
【0040】
ここで、本発明のコーティング方法に用いる金属は、たとえば、弁金属(アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウム、亜鉛など)、金属合金(Al−Ta−Nb)などが用いられる。ここで、酸化膜は、たとえばAl23、Ta25、Nb25、TiO2、などで形成された酸化膜が挙げられる。また高分子膜は、たとえばポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェンとそれらの誘導体などで形成された高分子膜が挙げられる。本発明に用いる金属は、上記中でも、安価でかつ使用電圧範囲の広いアルミニウムを用いることが好ましい。
【0041】
本発明のコーティング方法に用いる金属の形状は、特に制限されるものではなく、箔状、紛末焼結体などを適用することができるが、陽極酸化で簡単に表面処理ができる箔状のものを用いるのが好ましい。
【0042】
加熱処理の条件は、特に制限されるものではないが、20〜120℃の温度で0.5〜10時間処理を行うのが好ましい。温度が20℃未満であると、重合反応が充分進行しない虞がある。また温度が120℃を超えると、溶媒の揮発が速すぎるため反応が完全に進まず緻密な膜が形成できない虞がある。
【0043】
なお、本発明の金属表面のコーティング方法において、用いる組成物は上述した本発明の組成物には限定されず、イオン性液体、導電性高分子のモノマー、酸化剤を必須成分として含む組成物を用いてもよい。すなわち、本発明は、イオン性液体、導電性高分子のモノマー、酸化剤を必須成分として含む組成物に金属を浸漬した後、該金属を加熱処理することを特徴とする、導電性高分子による金属表面のコーティング方法も提供する。
【0044】
上記組成物に必須成分として含有される酸化剤としては、たとえばパラトルエンスルホン酸第二鉄、ナフタレンスルホン酸第二鉄、n−ブチルナフタレンスルホン酸第二鉄、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸第二鉄などが挙げられる。中でも、ドーパントとしての移動度の高いパラトルエンスルホン酸第二鉄を酸化剤として用いるのが好ましい。
【0045】
当該組成物におけるイオン性液体、導電性高分子のモノマーは、上述したのと同様のものを好適に用いることができる。なお、当該組成物は、任意成分として通常、溶媒(分散媒)を含有するが、当該組成物において、イオン性液体と溶媒(分散媒)とは互いに相溶していなくても勿論よい。
【0046】
当該組成物における各成分の混合比率は、特に制限されるものではないが、導電性高分子のモノマー:イオン性液体:酸化剤:溶媒(分散媒)の混合割合は、これらの重量比で1:0.1〜50:5〜50:5〜50の範囲内であるのが好ましく、1:0.1〜1:10〜20:10〜20の範囲内であるのがより好ましい。このような混合比率で組成物を調製することで、特に導電性の高い導電性高分子が得られる。
【0047】
上述したイオン性液体、導電性高分子のモノマー、酸化剤を必須成分として含む組成物を用いる場合における金属は、上述と同様のものを用いることができ、表面を酸化膜で被覆された弁金属が特に好ましく用いられる。
【0048】
上述したイオン性液体、導電性高分子のモノマー、酸化剤を必須成分として含む組成物を用いる場合、加熱処理は、20〜120℃の温度で0.5〜10時間処理を行うのが好ましい。温度が20℃未満であると、重合反応が充分に進行しない虞がある。また温度が120℃を超えると、反応が速く進みすぎ緻密な膜が形成できない虞がある。
【0049】
〔4〕電解コンデンサおよびその製造方法
本発明は、上述した本発明の組成物を用いて作製された電解コンデンサも提供する。このような本発明のコンデンサは、従来の電解コンデンサと比較して、高い容量達成率と高耐圧を有する。さらに、本発明の電解コンデンサは、イオン性液体を含む組成物を用いて形成されることで、高い導電率の導電性高分子を含み、界面抵抗が減少し、それによって等価直列抵抗(ESR)が減少されるという利点を有するものである。
【0050】
本発明の電解コンデンサは、金属と、金属表面をコーティングする導電性高分子層(上述するように導電性高分子およびイオン性液体を少なくとも含む)とが積層された基本構造を有する。好ましくは、金属と導電性高分子層との間に、少なくとも1層の酸化皮膜が介在される。本発明の電解コンデンサにおいて、上記以外の構成要素については特に制限されるものではなく、従来公知のものを適宜適用することができる。
【0051】
このような本発明の電解コンデンサは、上述した本発明の導電性高分子による金属表面のコーティング方法を用いて製造されたものであるのが好ましい。ここで、本発明の電解コンデンサを製造するために用いられる金属表面のコーティング方法は、上述した本発明の組成物、または、イオン性液体、導電性高分子のモノマー、酸化剤を必須成分として含む組成物のいずれを用いた方法であってもよい。すなわち、本発明の組成物に浸漬塗布後、加熱処理することによって導電性高分子層を形成するようにしてもよいし、イオン性液体、導電性高分子のモノマー、酸化剤を必須成分として含む組成物に浸漬後、加熱処理することによって導電性高分子を化学重合して導電性高分子層を形成するようにしてもよい。さらに、本発明の組成物を用いる場合には、当該組成物中の導電性高分子は、上述した本発明の導電性高分子の製造方法を用いて製造されたものであるが好ましい。
【0052】
また、本発明の電解コンデンサは、金属(金属上に酸化皮膜が形成されている場合には酸化皮膜)と導電性高分子層との間に、特許文献2(特開2002−373832号公報)に開示されるような導電性組成物層(ポリ−3,4エチレンジオキシチオフェン)が介在されていてもよい。ここで、金属上に酸化皮膜が形成された構成の場合、化学重合により酸化皮膜上に直接導電性高分子層を形成すると、酸化皮膜が損傷してしまい、結果、製造された電解コンデンサにおいて漏れ電流が大きくなるという不具合が起こることがあるが、導電性組成物層が介在されていることによりこのような酸化皮膜の損傷を防止することができるという利点がある。導電性組成物層は、特許文献2に開示された組成を有するものであればよいが、本発明ではイオン性液体を反応に関与させることで緻密で導電率の高い膜が得られるため下地層なしでコーティングを行うことができるという利点がある。
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
<実施例1>
(金属コーティング用組成物(1))
以下の配合割合で、本発明の金属コーティング用組成物を調製した。
【0055】
・導電性高分子のモノマー 0.3g
・イオン性液体 0.6g
・酸化剤 3.3g
・溶媒 5.1g
導電性高分子のモノマーとしては3,4−エチレンジオキシチオフェンモノマー(H.C.Starck−V TECH社製)を用い、酸化剤としてはパラトルエンスルホン酸鉄を1−ブタノールに40wt%溶解させた溶液を使用した。また、イオン性液体としては、(1−C25−3−CH3−Im)+(BF4-を用い、溶媒には1−ブタノールを用いた。
【0056】
<実施例2>
(金属コーティング用組成物(2))
イオン性液体の配合量を3.0gとした以外は実施例1と同様にして、本発明の金属コーティング用組成物を調製した。
【0057】
<実施例3>
(金属コーティング用組成物(3))
イオン性液体として(1−nC49−3−CH3−Im)+(BF4-を用いた以外は実施例1と同様にして、本発明の金属コーティング用組成物を調製した。
【0058】
<実施例4>
(金属コーティング用組成物(4))
イオン性液体として(1−C25−3−CH3−Im)+(p−TsO)-(ここで、p−TsOとは、パラトルエンスルホン酸イオンを指す。)を用いた以外は実施例1と同様にして、本発明の金属コーティング用組成物を調製した。
【0059】
<実施例5>
(金属コーティング用組成物(5))
イオン性液体として(1−C25−3−CH3−Im)+((CF3SO22N)-(ここで、((CF3SO22N)-とは、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオン(TFSI)を指す。)を用いた以外は実施例1と同様にして、本発明の金属コーティング用組成物を調製した。
【0060】
<実施例6>
(導電性高分子の製造方法)
よく乾燥した30cm3のビーカーに、上述した実施例1〜5の組成物を大気雰囲気下で混合させた。次にその重合溶液を1000rpmで回転するガラス基板上にスピンコートし、100℃で1時間加熱した。加熱後、純水で洗浄し大気雰囲気下で乾燥させ、ガラス基板上に導電性高分子膜(3,4−エチレンジオキシチオフェンポリマー)をそれぞれ得た。
【0061】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性液体と導電性高分子分散溶液とを含む組成物であって、前記イオン性液体が前記分散溶液と少なくとも部分的に相溶していることを特徴とする金属表面のコーティング用組成物。
【請求項2】
導電性高分子がポリチオフェンまたはその誘導体、ポリピロールまたはその誘導体、ポリアニリンまたはその誘導体、ポリキノンまたはその誘導体から選ばれる少なくともいずれかである、請求項1に記載の金属表面のコーティング用組成物。
【請求項3】
少なくとも部分的に相溶するイオン性液体および溶媒の存在下で、導電性高分子のモノマーを化学重合することを特徴とする導電性高分子の製造方法。
【請求項4】
導電性高分子のモノマーがチオフェンまたはその誘導体、ピロールまたはその誘導体、アニリンまたはその誘導体、キノンまたはその誘導体から選ばれる少なくともいずれかである、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の組成物に金属を浸漬した後、該金属を加熱処理することを特徴とする、導電性高分子による金属表面のコーティング方法。
【請求項6】
イオン性液体、導電性高分子のモノマー、酸化剤を必須成分として含む組成物に金属を浸漬した後、該金属を加熱処理することを特徴とする、導電性高分子による金属表面のコーティング方法。
【請求項7】
前記金属が表面を酸化膜で被覆された弁金属である、請求項5または6に記載のコーティング方法。
【請求項8】
請求項1または2に記載の金属表面のコーティング用組成物を少なくとも用いて作製された電解コンデンサ。
【請求項9】
請求項5に記載の方法を少なくとも含む、電解コンデンサの製造方法。
【請求項10】
請求項3、4または6に記載の方法を少なくとも含む、電解コンデンサの製造方法。

【公開番号】特開2006−257288(P2006−257288A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−77440(P2005−77440)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】