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金属表面上の超硬複合体層、及び該超硬複合体層を製造する方法
説明

金属表面上の超硬複合体層、及び該超硬複合体層を製造する方法

本発明は、1つ又は複数の研磨性フィラーを含有する無機ガラス質マトリクスを含む超硬複合体層を有する金属支持体に関する。本発明によれば、該フィラー粒子の直径、又は該フィラー粒子が小板状幾何学形状である場合には該フィラー粒子の厚みが、上記超硬複合体層の厚みよりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ又は複数の研磨性フィラーを含有する無機ガラス質マトリクスを含む超硬複合体層を有する金属支持体であって、該フィラー粒子の直径、又は該フィラー粒子が小板状幾何学形状である場合には該フィラー粒子の厚みが、上記超硬複合体層の厚みよりも小さい、超硬複合体層を有する金属支持体、及び該超硬複合体層でコーティングされるこれらの金属支持体を製造する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
金属表面は一般に、硬金属又は特別に硬化された金属を除けば、セラミック材料に比べて比較的軟質である。このため、金属表面は研磨用メディア又は研磨材による損傷を極めて受けやすい。これは、特に金属表面が研磨される際に、クリーナ、スチールウール、また引っ掻き傷をつけやすい他の物品、例えばジッパー又はオフィスクリップによる損傷を極めて受けやすいことを意味する。それゆえ、金属表面は、極めて速やかにそれらの魅力的な表面を失い、光沢が無くなると共に見た目が悪くなる。
【0003】
しかしながら、硬化された金属表面は他の分野においても重要である。例えば、摩耗しないように又は摩耗を減らすように、それゆえ寿命を延ばすように、例えばピストン又はピストンロッド、シリンダライナ、及び摩耗を受けやすい多くの他の表面を硬化するために、クロムで硬化されたスチール表面が機械構造及び自動車分野において使用されている。他のプロセスでは、例えば表面を窒化又は浸炭によって硬化させる。このように硬化させる場合には、表面中への窒素又は炭素の拡散により、窒化物又は炭化物が生成される。
【0004】
CVD法による窒化物又は炭化物の堆積(例えば、TiN、ZrN、ガラス質炭素)によっても硬い層を表面に適用することができる。これらの層は一般に非常に薄く、関連プロセスは、大領域及び/又は複雑な幾何学形状に対して限定的な適性しか有しない。加えて、CVD法によっては極めて限られた数の色しか生じ得ない。
【0005】
また、表層にはPVD法が用いられている。一般に、これらの層は、通常の柱状成長モードに起因してとりわけ機械的及び化学的に安定というわけではない。
【0006】
セラミック層は、火炎溶射法又はプラズマ溶射法によって金属表面に適用することができる。これらの層は、最大数百μm厚であり、通常、極めて耐摩耗性であるが、通常、透明でなく、また非常に脆性であり、通常、熱衝撃に耐性がない。
【0007】
ゾル−ゲル系及びナノサイズ系に基づく薄く透明な層は、湿式コーティング法によって作製することができる。特許文献1は、数μmの厚みしか有しない層を金属表面上に得ることができるコーティング技術を記載している。この薄い厚みにもかかわらず、層は、極めて耐摩耗性であり、例えば、α−アルミナ含有の研磨スポンジ(scouring sponges)を用いても引っ掻き傷がつくことがない。しかしながら、それらは、α−アルミナ又は炭化ケイ素をベースとした粉砕メディア(milling media)及びたわし(scourers)の長時間の作用を受けた場合に、大きな破損を受けるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第102004001097号明細書(国際公開WO2005/66388号パンフレットに対応)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記の欠陥を有しない透明、半透明又は有色のコーティング系を金属表面に設けることである。該コーティング系は、とりわけ、既知の系に比べて異常に高い耐摩耗性を有し、湿式化学コーティング法によって塗布することができる。加えて、該コーティング系は、超硬保護層を形成するだけでなく、金属支持体に任意の色を与えることを可能にするものとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、驚くべきことに、支持体の金属表面に塗布され且つ熱高密度化(thermally densified)される、無機ガラス質マトリクスの前駆体と微細な高耐摩耗性フィラーとを含み、使用される研磨性フィラーの粒径が得られる層の厚みよりも小さいコーティング組成物によって達成することができた。
【0011】
したがって、本発明は、1つ又は複数の研磨性フィラーを含有する無機ガラス質マトリクスを含む超硬複合体層を有する金属支持体であって、該フィラー粒子の直径、又は該フィラー粒子が小板状幾何学形状である場合には該フィラー粒子の厚みが、上記超硬複合体層の厚みよりも小さい、超硬複合体層を有する金属支持体、及び該超硬複合体層でコーティングされるこれらの金属支持体を製造する方法を提供する。
【0012】
これらの複合体層は驚くべきことに、極めて高い耐引っ掻き性及び耐摩耗性を有するため、超硬層として記載することができる。湿式化学的手段によって複合体層を塗布することができるため、層の作製はまた、簡潔且つ経済的であり、また複雑な幾何学形状を有する金属支持体に複合体層を設けることを可能にする。また複合体層を透明な形態で作製し、中間層を金属支持体と複合体層との間に挿入することができるため、複合体層自体中へ又は中間層中への適切な着色剤の組み込みにより、必要に応じて色効果を生じさせることができる。加えて、層は極めて薄い。
【0013】
無機ガラス質マトリクスの形成に関して特許文献1に記載されているコーティング組成物を使用した場合に、最良の結果が達成された。層の熱高密度化に関してそこに記載されているプロセスも有益であることが見出された。したがって、無機ガラス質マトリクス及び熱高密度化のプロセス工程に関してそこに記載されているコーティング組成物は参照により本明細書に援用される。本発明を以下で詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に従ってコーティングされる金属支持体又は本発明に従ってコーティングされる金属性表面としては、金属又は金属合金から成る全ての表面、又はこれ若しくはこれらを含む全ての表面、例えば、金属層を有する少なくとも1つの表面上に設けられる別の材料から成る支持体を使用することが可能である。本特許出願の目的のために、金属という用語は常に金属合金を包含する。金属支持体は、例えば、プレート、金属シート、チューブ、ロッド若しくはワイヤ等の半完成部品、部材又は完成品であり得る。金属支持体の金属表面全体に複合体層を設けることができる。当然ながら、例えば、特定領域のみが相当する保護を必要とする場合には、金属表面の個別の領域又は部分にのみ複合体層を設けることも可能である。
【0015】
金属支持体に好適な金属の例は、アルミニウム、チタン、スズ、亜鉛、銅、クロム又はニッケル(亜鉛めっき、クロムめっき又はエナメル化面を含む)である。金属合金の例は、とりわけ、スチール又はステンレススチール、アルミニウム合金、マグネシウム合金、並びに黄銅及び青銅等の銅合金である。スチール、ステンレススチール、亜鉛めっきスチール、クロムめっきスチール若しくはエナメル化スチール、又はチタンから構成される金属性表面を使用することが特に好ましい。
【0016】
金属性表面又は金属性支持体は、平らな又は構造化された表面を有し得る。金属支持体の幾何学形状は、単純なもの、例えば単純な金属シートであってもよく、又は例えばエッジ、丸み、隆起領域若しくはくぼみが設けられた複雑なものであってもよい。金属性表面はコーティング組成物の塗布前に、洗浄されて油脂及び塵埃がないことが好ましい。例えばコロナ放電を用いた表面処理をコーティング前に行ってもよい。
【0017】
完全に硬化された複合体層は、1つ又は複数の研磨性フィラーを含有する無機ガラス質マトリクスを含む。それゆえ、層は、マトリクスと、フィラー、好ましくは硬質材料から成るフィラーとから構成される複合体である。
【0018】
フィラーは、研磨性材料、特に高耐摩耗性又は高研磨性材料からなる。かかる材料は、当業者に既知であり、また例えば研削用研磨剤として使用されている。使用される研磨性フィラーは好ましくは、モース硬度計に基づき、少なくとも7、好ましくは7より大きいモース硬度を有する。使用される研磨性フィラー(単数又は複数)は好ましくは、硬質材料から成るフィラーである。硬質材料は一般に当業者に既知であり、市販されており、また例えば超硬合金(cemented carbide)産業及び研磨材産業において使用されている。本発明の目的に好適な研磨性材料又は硬質材料の概括及び例は、例えば、Ullmanns Encyclopaedie der technischen Chemie, 4th edition, vol. 20, "Schleifen und Schleifmittel", pp. 449-455, and vol. 12, "Hartstoffe (Einteilung)", pp. 523-524, Verlag Chemie, Weinheim New York, 1976に見られ得る。
【0019】
研磨性材料、とりわけ硬質材料は、それらの高い硬度を特徴とする。多くの種々の材料が、研磨性材料又は硬質材料として、とりわけ研削用研磨剤として知られており、これらは全て本発明の目的のために使用することができる。金属性又は非金属性の研磨性フィラー又は硬質材料を使用することが可能であり、非金属性材料が好ましい。好ましい実施形態では、透明な研磨性フィラーを使用する。1つの研磨性フィラー又は2つ以上の研磨性フィラーの混合物を使用することが可能である。同じ材料から成るが、例えばサイズ及び/又は粒形の点で異なる研磨性フィラー、当然ながら適切な場合には他の材料から成る研磨性フィラーの混合物を使用することも可能である。
【0020】
硬質材料の例は、遷移金属又は半金属、例えばSi、Ti、Ta、W及びMoの炭化物、窒化物、ホウ化物、オキシカーバイド又はオキシナイトライド、例えばTiC、WC、TiN、TaN、TiB、MoSi、硬質材料の混合結晶、例えばTiC−WC又はTiC−TiN、複炭化物及び錯体炭化物、例えばCoC及びNiC、並びに例えばW−Co系又はMo−Be系由来の中間化合物、天然ダイヤモンド又は合成ダイヤモンド、α−アルミナ(Al)(例えばエメリー、融解アルミナ又は焼結アルミナ)、サファイア、ルビー又はジルコン等の天然貴石又は合成貴石、ホウ素、立方晶窒化ホウ素、炭化ホウ素(BC)、炭化ケイ素(SiC)及び窒化ケイ素(Si)、シリカ、ガラス又はガラス粉末である。使用され得る耐摩耗性フィラーの例は、小板状Al、小板状SiO、TiO等である。
【0021】
好ましく使用される硬質材料は、遷移金属の炭化物、窒化物又はホウ化物、天然ダイヤモンド又は合成ダイヤモンド、α−アルミナ及び小板状α−アルミナ、天然貴石又は合成貴石、ホウ素、窒化ホウ素、炭化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、並びに窒化アルミニウムであり、非金属性材料が好ましい。特に好適な硬質材料はα−アルミナ、炭化ケイ素及び炭化タングステンである。
【0022】
複合体層中に使用される研磨性フィラーの量は、使用目的に応じて広範に変わり得る。しかしながら、複合体層中の研磨性フィラーの割合が、完成複合体層の総重量に基づき、1重量%〜10重量%、好ましくは1重量%〜5重量%、特に好ましくは1.5重量%〜3重量%の範囲内である場合に、概して好ましい結果が達成され得る。
【0023】
フィラーは粒状である。粒子は任意の形状を有し得る。粒子は、例えば、球状、ブロック状又は小板状であってもよい。当業者は、粒子が、例えば凝集体として存在する場合に、往々にして程度の差こそあるが不規則な形状を有することを知っている。優先方向(preferential directions)が存在しない場合には、サイズ決定のために往々にして球状とみなされる。小板状又は片状粒子の場合には、2つの優先方向が存在する。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1つの研磨性フィラー、好ましくは1つの研磨性フィラーが小板状幾何学形状を有し、一例は小板状α−アルミナである。本発明のさらなる好ましい実施形態では、小板状幾何学形状を有する少なくとも1つの研磨性フィラー、及び小板状幾何学形状を有しない研磨性フィラー(例えば優先方向がない粒子)、例えば小板状α−アルミナとブラスト処理用(abrasive-blasting)アルミナとの混合物を利用する。小板状研磨性フィラー及び小板状でない研磨性フィラーを使用する場合、層中の、小板状研磨性フィラーと、小板状でない研磨性フィラーとの重量比は、好ましくは1〜10、より好ましくは1.5〜5、より好ましくは2〜3の範囲内である。
【0025】
熱高密度化後の完成複合体層は、例えば、乾燥中及び高密度化中にクラック形成を起こさない、20μmまで、好ましくは10μmまで、特に好ましくは4μmまでの厚みを有し得る。概して、層厚は、少なくとも1μm、好ましくは少なくとも2μmである。複合体層の厚みは、例えば、3μm〜8μmの範囲内であり得る。
【0026】
適切な効果を達成するために、使用される硬質材料から成るフィラーの粒径は、熱高密度化後に得られる複合体層の厚みよりも小さい。粒径は好ましくは複合体層の厚みよりも有意に小さく、例えば粒径は少なくとも2分の1よりも小さく、好ましくは少なくとも5分の1よりも小さい(すなわち、粒径は好ましくは、層厚の1/2未満、好ましくは1/5未満である)。
【0027】
小板状でない粒子、すなわち、とりわけ優先方向がない粒子の場合、粒径は直径である。ここで、直径は、体積平均(d50)に基づく平均粒子直径である。この値は、例えば、動的レーザ光散乱によって、例えばUPA(超微粒子分析機(Leeds Northrup))を用いて求めることができる。
【0028】
驚くべきことに、小板状研磨性フィラー、とりわけ硬質材料から成るものを使用する場合、これらの小板状粒子の場合では、該当する粒径が粒子の直径ではなく、小板の厚みとなることが見出された。この理由から、小板状フィラー粒子の場合には、小板の厚みだけは、複合体層の厚みよりも小さくなければならず、好ましくは有意に小さくなければならない。2つの優先方向に基づく直径は重要でなく、層厚よりも大きくてもよい。小板の厚みは本質的に直径よりも有意に小さいことから、よって比較的大きな直径を有する小板を使用することができる。
【0029】
小板状粒子の粒径、すなわち厚み及び直径は、例えば、光学画像解析を用いた光学顕微鏡検査によって求めることができる。粒子が小板状粒子であるため、この直径は、横径、又は安定な粒子位置において投影される相当面積の円の相当径である。ここでも、厚み及び直径は、体積平均(d50)に基づく平均厚み又は平均直径である。
【0030】
小板状研磨性フィラー、例えば小板状α−アルミナが、特に良好な結果を与えるため、少なくとも1つの小板状研磨性フィラー、とりわけ硬質材料から成るものの使用が好ましい。小板の厚みは好ましくは1μm未満である。厚みが0.100μm〜0.3μmであり、直径が約3μm〜10μmであり得る小板状フィラーを使用することが好ましい。特に好ましい小板状フィラーは、約0.2ミクロンの範囲の厚み、及び約3μm〜7μmの範囲の小板直径を有する。それゆえ、数μmの厚みを有する層についても極めて平滑な表面が達成される。
【0031】
複合体層は無機ガラス質マトリクスを含む。複合体層中に存在する、このマトリクスと、上記で説明されるような本発明に従って使用されるフィラーとの組合せは驚くべきことに、超硬層をもたらす。マトリクスは好ましくはアルカリ土類金属ケイ酸塩及び/又はアルカリ金属ケイ酸塩を含む。かかる無機ガラス質マトリクス、すなわちアルカリ土類金属ケイ酸塩及び/又はアルカリ金属ケイ酸塩を含有するマトリクスは、当業者に既知である。マトリクスは、特許文献1に記載のプロセスによって且つ特許文献1に記載の材料を用いて生成されるマトリクスであることが特に好ましい。
【0032】
複合体層を製造するために、ガラス形成マトリクス前駆体(glass-forming matrix precursor)として加水分解性化合物の加水分解物又は縮合体と、1つ又は複数の研磨性フィラー、好ましくは硬質材料から成るフィラーとを含むコーティング組成物を、金属支持体に塗布し、且つ熱高密度化して上記複合体層を形成し、上記コーティング組成物中の、フィラー粒子の直径、又は該フィラー粒子が小板状幾何学形状である場合には該フィラー粒子の厚みが、上記複合体層の厚みよりも小さい。これは、複合体層を湿式化学的手段によって塗布することを意味する。
【0033】
加水分解性化合物の加水分解物又は縮合体は、好ましくはコーティング懸濁液又は溶液、特に好ましくはコーティングゾルであり、これはゾル−ゲル法又は類似の加水分解法及び縮合法によって生成されることが好ましい。
【0034】
加水分解性化合物は好ましくは少なくとも1つの有機的に修飾された加水分解性シランを含む。加水分解物又は縮合体は、アルカリ金属ケイ酸塩又はアルカリ土類金属ケイ酸塩を含有するコーティング懸濁液又は溶液、好ましくは、アルカリ土類金属ケイ酸塩又はアルカリ金属ケイ酸塩を含有するコーティングゾルであることが特に好ましい。
【0035】
アルカリ金属ケイ酸塩又はアルカリ土類金属ケイ酸塩を含有するコーティング懸濁液又は溶液として、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物及び適切な場合にはナノサイズのSiO粒子の存在下における、少なくとも1つの有機的に修飾された加水分解性シランの加水分解及び縮合によって得られるコーティング組成物を使用することが好ましい。
【0036】
かかるコーティング組成物を、例えば、上記アルカリ金属及びアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物から成る群からの少なくとも1つの化合物の存在下(適切な場合にはナノサイズのSiO粒子が添加される)における、一般式(I)
SiX4−n (I)
(式中、X基は、同一又は異なり、加水分解性基又はヒドロキシル基であり、R基は、同一又は異なり、水素、4個までの炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基、並びに、6個〜10個の炭素原子を有するアリール、アラルキル及びアルカリール基であり、nは0、1又は2であるが、但し、n=1若しくは2である少なくとも1つのシラン、又は、それらから誘導されるオリゴマーが使用される)
の1つ又は複数のシランの加水分解及び縮合によって得ることができる。
【0037】
式(I)の上記シランは、一般式中nが1又は2である少なくとも1つのシランを含む。概して、一般式(I)の少なくとも2つのシランを組み合わせて使用し、なお、n=0である一般式(I)の少なくとも1つのシラン、及びn=1又は2である一般式(I)の少なくとも1つのシランを使用することが好ましい。この場合、シランは、nの平均値(モルを基準として)が0.2〜1.5、好ましくは0.5〜1.0となるような比で使用されることが好ましい。nの平均値が0.6〜0.8の範囲内であることが特に好ましい。
【0038】
一般式(I)中、X基は、同一又は異なり、加水分解性基又はヒドロキシル基である。加水分解性基Xの具体例は、ハロゲン原子(特に塩素及び臭素)、6個までの炭素原子を有するアルコキシ基及びアシルオキシ基である。アルコキシ基、とりわけ、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ及びi−プロポキシ等のC1〜4−アルコキシ基が特に好ましい。1つのシラン中のX基は好ましくは同一であり、なお、メトキシ基及びとりわけエトキシ基を使用することが特に好ましい。
【0039】
n=2の場合に同じであっても異なっていてもよい一般式(I)中のR基は、例えば、水素、4個までの炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基、並びに、6個〜10個の炭素原子を有するアリール、アラルキル及びアルカリール基である。このような基の具体例は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル及びtert−ブチル、ビニル、アリル及びプロパルギル、フェニル、トリル及びベンジルである。該基は、通常の置換基を有していてもよいが、かかる基はいかなる置換基も有しないことが好ましい。好ましいR基は、1個〜4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチル及びエチルであり、フェニルでもある。
【0040】
式(I)の少なくとも1つのアルキルトリアルコキシシラン、とりわけ、メチルトリエトキシシラン(MTEOS)、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン及びエチルトリエトキシシランを使用することが好ましい。少なくとも1つのテトラアルコキシシラン、とりわけ、テトラエトキシシラン(TEOS)及びテトラメトキシシランをさらに使用することが好ましい。
【0041】
本発明によれば、1つのシランにおいてn=0であり、他のシランにおいてn=1である一般式(I)の少なくとも2つのシランを使用することが好ましい。かかるシラン混合物は、例えば、少なくとも1つのアルキルトリアルコキシシラン(例えば、(m)エチルトリ(m)エトキシシラン)と、テトラアルコキシシラン(例えば、テトラ(m)エトキシシラン)とを含み、これらは、nの平均値が上記の好ましい範囲内となるような比で使用されることが好ましい。一般式(I)の開始シランの特に好ましい組合せは、メチルトリ(m)エトキシシラン及びテトラ(m)エトキシシランである。(m)エトキシ及び(m)エチルとは、それぞれメトキシ又はエトキシ、及びメチル又はエチルである。
【0042】
式(I)のシラン(単数又は複数)の加水分解及び縮合又は重縮合は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物から成る群からの少なくとも1つの化合物の存在下で行われる。これらの酸化物及び水酸化物は好ましくは、Li、Na、K、Mg、Ca及び/又はBaのものである。例は、LiO、LiOH、NaO、NaOH、KOH、Mg(OH)、CaO、Ca(OH)、CaO、Ca(OH)、BaO及びBa(OH)であり、水酸化物が好ましい。
【0043】
アルカリ金属、好ましくはNa及び/又はKの水酸化物又は酸化物、とりわけNaOH及びKOHを使用することが好ましい。アルカリ金属の酸化物又は水酸化物を使用する場合、これは好ましくは、Si:アルカリ金属の原子比が20:1〜7:1、特に15:1〜10:1の範囲内となるような量で使用され、ナノサイズのSiO粒子を使用する場合には、そのSi含量が考慮される。いずれの場合にも、ケイ素とアルカリ土類金属及び/又はアルカリ金属との原子比は、生じたコーティングが(例えば水ガラスの場合のように)水に可溶性とならないように十分に大きいように選択される。
【0044】
一般式(I)の加水分解性シランに加えて使用され得るナノサイズのSiO粒子は、好ましくは、一般式(I)のシラン中の全てのSi原子と、ナノサイズのSiO粒子中の全てのSi原子との比が、5:1〜1:2、特に3:1〜1:1の範囲内となるような量で使用される。
【0045】
本発明の目的のために、ナノサイズのSiO粒子は、体積平均(d50)に基づく平均粒子直径が、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、特に30nm以下であるSiO粒子である。このサイズは、フィラーについて上記したように、レーザ光により求めることができる。例えば、商業用シリカ製品、例えばLevasils(登録商標)等のシリカゾル、Bayer AG製のシリカゾル、又は、発熱性シリカ、例えばDegussa製のAerosil製品を本目的のために使用することが可能である。粒状材料は、粉末及びゾルの形態で添加することができる。しかしながら、粒状材料は、シランの加水分解及び重縮合においてその場で形成することもできる。
【0046】
一実施形態において、シランの加水分解及び重縮合において、ケイ素を全く含有しない1つ又は複数のさらなる加水分解性化合物を添加してもよい。化合物は好ましくはホウ素化合物又は金属化合物である。加水分解及び縮合においてこのような加水分解性の金属化合物又はホウ素化合物を使用する場合、金属又はホウ素がマトリクスに組み込まれる。加水分解性化合物は好ましくは一般式(II)
MX (II)
(式中、Mは、元素周期律表の主族I〜VIII若しくは遷移族II〜VIIIの金属、又はホウ素であり、Xは、一般式(I)と同様に定義され、2つのX基はオキソ基で置換されてもよく、aは元素の価数に相当する)を有する。
【0047】
このような化合物の例は、ガラス形成元素、すなわちセラミック形成元素の化合物、とりわけ、元素周期律表の主族III〜V及び/又は遷移族II〜IVからの少なくとも1つの元素Mの化合物である。化合物は、好ましくは、Al、B、Sn、Ti、Zr、V若しくはZnの加水分解性化合物、とりわけAl、Ti若しくはZrのもの、又はこれらの元素の2つ以上の混合物である。例えば、周期律表の主族I及びII(例えば、Na、K、Ca及びMg)、並びに周期律表の遷移族V〜VIII(例えば、Mn、Cr、Fe及びNi)の元素の加水分解性化合物を使用することが同様に可能である。Ce等のランタニドの加水分解性化合物も使用することができる。元素B、Ti、Zr及びAlの加水分解性化合物が好ましく、Tiが特に好ましい。
【0048】
好ましい化合物は例えば、B、Al、Zr及びTiのアルコキシドである。好適な加水分解性化合物は例えば、Al(OCH、Al(OC、Al(O−n−C、Al(O−i−C、Al(O−n−C、Al(O−sec−C、AlCl、AlCl(OH)、Al(OCOC、TiCl、Ti(OC、Ti(O−n−C、Ti(O−i−C、Ti(OC、Ti(2−エチルヘキソキシ)、ZrCl、Zr(OC、Zr(O−n−C、Zr(O−i−C、Zr(OC、ZrOCl、Zr(2−エチルヘキソキシ)、及び錯体形成基(例えばβ−ジケトン基及び(メタ)アクリレート基)を有するZr化合物、ナトリウムエトキシド、酢酸カリウム、ホウ酸、BCl、B(OCH、B(OC、SnCl、Sn(OCH、Sn(OC、VOCl及びVO(OCHである。
【0049】
シランの加水分解及び重縮合は、有機溶剤の存在又は非存在下で行うことができる。有機溶剤を使用しないことが好ましい。有機溶剤を使用する場合、開始成分は好ましくは反応媒体に可溶性である。そうでなければ、加水分解及び重縮合は、当業者によく知られた手法に従って行われ得る。加水分解及び縮合のために水が添加される。水を過剰に添加してもよく、この際、適切な場合には少なくとも部分的な加水分解及び/又は縮合が起こった後にのみ、水の一部を添加してもよい。
【0050】
好適な有機溶剤は、とりわけ、水混和性溶剤、例えば、メタノール、エタノール、1−又は2−プロパノール等の一価又は多価脂肪族アルコール、ブチルグリコール等のグリコール、ジエーテル等のエーテル、エチルアセテート等のエステル、ケトン、アミド、スルホキシド及びスルホン、又はそれらの混合物、例えばエタノールと、イソプロパノールと、ブチルグリコールとの混合物である。高沸点溶剤の使用も時に有益である。例は、ポリエーテル、例えば、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、及びテトラエチレングリコールジメチルエーテルである。これらの例は、下記の有機溶剤の使用にも好適である。
【0051】
加水分解及び縮合前に溶剤を添加したか否かに関係なく、例えば粘度を調節するために少なくとも部分反応後に、又はフィラー又は他の添加剤の添加を伴って、有機溶剤、そうでなければ水を添加してもよい。それゆえ、得られるコーティング組成物は有機溶剤及び/又は水を含み得る。
【0052】
研磨性フィラーは好ましくは、コーティング組成物を生成するために、ガラス形成マトリクスである、このコーティング懸濁液若しくは溶液、又はゾルに分散される。しかしながら、これらのフィラーと加水分解性化合物とを組み合わせて、フィラーの存在下で加水分解及び/又は縮合を行うことも可能である。フィラーは、例えば、粉末として、又は有機溶剤中の懸濁液若しくはスラリーとして、コーティング組成物に直接添加してもよい。
【0053】
研磨性フィラーとは別に、本発明によって使用されるコーティング組成物は、表面コーティング産業において一般的な添加剤、例えば、レオロジ及び乾燥挙動を制御する添加剤、湿潤剤及び均展剤、消泡剤、界面活性剤、溶剤、染料及び顔料、特に着色顔料又は効果顔料を含有し得る。商業用艶消剤、例えばミクロサイズのSiO又はセラミックパウダーを、耐指紋性を有する艶消層を得るために添加することができる。艶消剤、例えばミクロサイズのSiO又はセラミックパウダーを使用する場合、シランの加水分解及び重縮合はそれらの存在下で行われ得る。しかしながら、それらは、コーティング組成物に後で添加してもよい。
【0054】
コーティング組成物は、一般的な湿式化学コーティング技法、例えば浸漬、キャスティング、スピンコーティング、噴霧、ローラー塗工、塗装、ドクターブレードコーティング又はカーテンコーティングによって塗布することができる。例えば、スクリーン印刷等の印刷法を使用することも可能である。
【0055】
金属性表面に塗布されるコーティング組成物は通常、熱高密度化してガラス質層を形成する前に、室温又はわずかに高い温度、例えば100℃まで、特に80℃までで乾燥される。熱高密度化は、適切な場合には、IR放射又はレーザ放射によって実施され得る。
【0056】
高密度化温度は、広範に変化し、当然ながら、使用される材料に依存し得る。当業者は好適な範囲を知っている。熱高密度化は一般に、300℃〜800℃、好ましくは350℃〜700℃の温度で行われる。熱高密度化はまた、存在する任意の有機物を完全に又は所望の極めて少ない残渣含量にまで燃やし尽くすため、無機ガラス質層が得られる。コーティング組成物は、例えばステンレススチール又はスチール表面上において、比較的低い温度、概して400℃からでも高密度SiO膜に変わり得る。
【0057】
層は、標準大気圧、すなわち酸化雰囲気下で、又は保護気体、すなわち還元雰囲気下で、又は一定量の水素の添加を伴って熱高密度化され得る。熱高密度化はまた、異なる、すなわち連続的に変化する条件下における2つ以上の段階を含んでいてもよく、概してこれも好ましい。それゆえ、熱高密度化は、第1の段階において、比較的低い温度の酸化雰囲気中で有機物を燃やし尽くし、その後、第2の段階において、比較的高い温度の不活性雰囲気中で最終的な高密度化まで行い得る。
【0058】
したがって、例えば、高密度化は、第1の段階において、酸素含有雰囲気中、例えば空気中、又は代替的に減圧下で、例えば15mbar以下の残圧で行われ得る。最終温度は100℃〜500℃、好ましくは150℃〜450℃の範囲内とすることができ、厳密な温度は、とりわけ、選択条件及び所望のさらなる処理に応じて決まる。
【0059】
酸素含有雰囲気中における高密度化では、プロセスガスとして圧縮空気を使用することが好ましい。ここで、炉の内部体積の3倍〜10倍に相当するプロセスガス量を好ましくは1時間毎に導入し、炉の内部のゲージ圧を約1mbar〜10mbar、好ましくは2mbar〜3mbarとする。同時に、水を炉に入れる前に圧縮空気流に導入することによって、プロセスガス中の水蒸気の分圧をこのプロセス工程中に調節することができる。このようにして、事前に高密度化され、且つまた最終的に高密度化された層の微孔性を調節することができる。450℃〜500℃の温度で完全に高密度化されるコーティングを作製するためには、例えば、200℃〜400℃、特に好ましくは250℃〜350℃の範囲までの温度において、50%〜100%のプロセスガスの相対雰囲気湿度(室温に基づく水の量)を設定することが好ましい。450℃〜500℃の上記最終温度までのさらなる高密度化プロセスのためには、水の添加を停止する。
【0060】
第2の熱処理段階において、さらなる高密度化を行ってガラス質層を形成する。この第2の熱処理段階は好ましくは、350℃〜700℃、より好ましくは400℃〜600℃、特に好ましくは450℃〜560℃の範囲の最終温度まで行われる。これらの温度範囲は、高密度化を一工程で行う場合にも好ましい。第2の段階は好ましくは、低酸素雰囲気中、又は極めて少ない酸素含量(0.5体積%以下)しか有しない酸素無含有雰囲気中で行われる。第2の段階は、例えば、大気圧下又は減圧下で行われ得る。低酸素雰囲気としては、ゲージ圧が1mbar〜10mbar、好ましくは1mbar〜3mbarである窒素等の不活性ガスを使用することが可能である。
【0061】
2つより多い高密度化段階を使用することも可能である。例えば、2つの上記の段階後に、例えば、H/N混合物を用いた、還元条件下におけるさらなる高密度化段階を続けて行うことが有益である。好適な高密度化段階及び各々の条件に関するさらなる詳細は特許文献1にも見ることが可能である。
【0062】
熱高密度化は概して、温度を特有の速度で最大最終温度まで上昇させる制御温度プログラムに従って行われる。高密度化のための上記温度は、この最大最終温度に関する。高密度化段階における最大温度での滞留時間は、通常5分〜75分、好ましくは20分〜65分である。
【0063】
このようにして、極めて高い耐引っ掻き性及び耐摩耗性を有するガラス質層を金属性表面上に得ることができる。それらのガラス質層はまた、比較的高い温度でも、金属性表面への酸素の出入を防止するか又は劇的に減らし、且つ優れた防食を確実なものとし、さらには、例えば、指紋、水、油、油脂、界面活性剤及び塵埃による汚れをつけない効果のある密封層を形成する。例えば、耐指紋性機能(antifingerprint function)を有する超硬コーティングを得ることが可能である。
【0064】
適切な場合には、例えば、付着性を改善するために、さらなる保護を提供するために、又はさらなる光学効果を生じさせるために、金属支持体と複合体層との間に、1つ又は複数の中間層を設けてもよい。概して、この無機ガラス質層はこの目的のために同様に使用される。中間層は、湿式化学的に、又はCVD若しくはPVD等の他のプロセスによって同様に塗布することができ、それらは、別個に又は好ましくは複合体層と一緒に高密度化することができる。熱高密度化のための条件としては、組成物に依存するものの、複合体層について上記に記載した条件を使用することが可能であり、他の条件も有益であり得る。また、中間層は通常、無機ガラス質層であり、好ましい実施形態では、複合体層について記載した、アルカリ土類金属ケイ酸塩又はアルカリ金属ケイ酸塩を含有する層でもある。
【0065】
概して、中間層(単数又は複数)は、複合体層のように研磨性フィラーを含有しない。しかしながら、それらは、目的に応じて他の添加剤を含有し得る。複合体層を透明にすることができるため、所望の装飾効果を生じさせるように、例えば、有色顔料又は効果顔料を中間層(複数可)中に組み込むことが可能である。しかしながら、このような装飾効果を達成するためには、有色顔料又は効果顔料を複合体層中に直接組み込むことも可能であり、この際、中間層は存在しても存在しなくてもよい。このとき1つ又は複数の中間層が存在するとすれば、これ/これらもまた、適切な場合には、有色顔料又は効果顔料を含有し得る。
【0066】
複合体層が設けられる金属支持体は、プレート、金属シート、チューブ、ロッド若しくはワイヤ等の半完成部品、部材又は完成品であり得る。これは、例えば、施設、道具、家庭用器具、電気部材、機械、車両部品、特に自動車部材、製造施設、ファサード、搬送道具、光スイッチカバー、アイロン、電話用筐体、又はそれらの部品に使用することができる。
【0067】
コーティングは、概して、金属支持体、例えば、電子機器の金属筐体、光学機器用の金属性部材、車両の内部及び外部の金属性部品、機械及び施設構造における金属性部材、エンジン、医療機器に含まれる金属性部材、家庭用器具、他の電気器具、スポーツ用品、兵器、軍需品及びタービンの金属性部材、コンテナ等の住宅設備、ナイフ、金属性ファサード部材、エレベータの金属性部材、搬送装置の部品、家具、庭園用具、農業機械、取付具(mountings)、エンジン部材及び製造施設の金属性部品に特に好適である。
【0068】
以下の実施例によって本発明を説明するが、これらは決して本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0069】
耐指紋性機能を有する超耐引っ掻き性コーティングの作製
実施例1
ステンレススチールから成るサンドブラスト加工光スイッチカバー用の無色の超耐引っ掻き性コーティング
a)コーティングベース(1)(ケイ酸ナトリウムコーティングゾル)
25ml(124.8mmol)のメチルトリエトキシシラン(MTEOS)を、7ml(31.4mmol)のテトラエトキシシラン(TEOS)及び0.8g(20mmol)の水酸化ナトリウムと合わせて、水酸化ナトリウムが全て溶解して透明な黄色溶液が現れるまで室温で一晩(少なくとも12時間)攪拌する。
【0070】
次に、3.2ml(177.8mmol)の水を室温で徐々に滴下すると、溶液が温かくなる。水の添加が完了した後、透明な黄色溶液が再度冷却するまで室温で攪拌し、続いて孔径が0.8μmであるフィルタに通して濾過する。
【0071】
b)顔料懸濁液(2):
2−プロパノール中の50重量%のAlusion Al(小板状α−アルミナ、粒径d90=18μm)の混合物を、20℃で冷却しながらDispermatにおいて15分間均質化し、続いて、最終生成物の試料を蒸発させることによって懸濁液の含量を求める(固形分:40.0重量%)。
【0072】
c)顔料懸濁液(3):
2−プロパノール中の50重量%のF1000 Al(ブラスト処理用アルミナ、粉砕、粒径1μm〜10μm)の混合物を、冷却しながらDispermatにおいて10分間均質化し、続いて、最終生成物の試料を蒸発させることによって懸濁液の含量を求める(40.0重量%)。
【0073】
d)コーティング組成物(4)
コーティング組成物(4)を生成するために、0.9kgのコーティングベース(1)を容器に移し、100gのエチレングリコールモノブチルエーテルを添加し、混合物を攪拌する。攪拌しながら、30gの顔料懸濁液(2)及び45gの顔料懸濁液(3)を添加し、混合物をさらに20分間攪拌する。
【0074】
e)コーティング
100μmフィルタスクリーンに通した濾過後に、コーティング組成物(4)を、商業用アルカリ性洗浄浴中で事前に洗浄したステンレススチール部品上に、産業用フラットスプレー施設において湿潤膜厚11μmまで噴霧し、続いて室温で15分間乾燥させる。
【0075】
f)硬化
コーティングに続き、コーティングされた部品を排気可能なレトルト炉内に導入し、第1の加熱工程において空気中200℃で硬化させ、続いて、純窒素中500℃で1時間硬化させる。硬化されたガラス層の厚みは4μmである。
【0076】
実施例2
ステンレススチール上の金色に着色された超耐引っ掻き性コーティング
a)トップコート(5)
トップコート(5)を作製するために、実施例1からの0.9kgのコーティングベース(1)を容器に移し、100gのエチレングリコールモノブチルエーテルを添加し、組成物を混合する。実施例1からの30gの顔料懸濁液(2)及び45gの顔料懸濁液(3)を攪拌しながら添加する。
【0077】
b)コーティング組成物(6)
コーティング組成物(6)を生成するために、20gのIriodin 323「Royal Gold」(粒径:5μm〜25μm)及び10gのIriodin 120(ファインシルバー、粒径:5μm〜25μm)を、攪拌しながら実施例1からの0.9kgのコーティングベース(1)に少しずつ添加する。続いて100gのエチレングリコールモノブチルエーテルを添加し、組成物を混合する。
【0078】
c)コーティング
100μmフィルタスクリーンに通した濾過後に、コーティング組成物(6)を、蒸留水において事前に洗浄したブラスト加工ステンレススチール基板(soles)上に、産業用フラットスプレーユニットにおいて湿潤膜の厚みが7μmとなるまで噴霧し、続いて室温で15分間乾燥させる。同様のユニットにおける続く第2のコーティング工程では、トップコート(5)を用いてさらなるコーティングを噴霧し(湿潤膜厚:7μm)、同様に15分間乾燥させる。
【0079】
d)硬化
コーティングに続き、コーティングされた部品を対流チャンバ炉内に導入し、第1の加熱工程において、水の制御された添加を伴い、空気中350℃で硬化させ、続いて、乾燥空気中475℃で1時間硬化させる。硬化されたガラス層の厚みは6μmである。
【0080】
3.ステンレススチール上の赤色の超耐引っ掻き性コーティング
a)コーティング組成物(7)
コーティング組成物(7)を生成するために、実施例1と同様の0.9kgのコーティングベース(1)を容器に移し、100gのエチレングリコールモノブチルエーテルを添加し、組成物を混合する。実施例1と同様の30gの顔料懸濁液(2)及び45gの顔料懸濁液(3)を攪拌しながら添加する。続いて30gのIriodin 4504「Lavarot」(粒径:5μm〜25μm)を攪拌しながら少しずつ添加する。
【0081】
b)コーティング
100μmフィルタスクリーンに通した濾過後に、コーティング組成物(7)を、商業用アルカリ性洗浄浴中で事前に洗浄したステンレススチール部品に、産業用フラットスプレーユニットにおいて湿潤膜が12μmとなるまで噴霧し、続いて室温で15分間乾燥させる。
【0082】
c)硬化
コーティングに続き、コーティングされた部品を対流チャンバ炉内に導入し、三段階プログラム(空気及び水蒸気の添加を伴い350℃で、続いて、乾燥空気中500℃で1時間、最後に還元雰囲気(95%N+5%H)中400℃で1時間)で硬化させる。硬化されたガラス層の厚みは5μmである。
【0083】
実施例4
チタン上の無色の超耐引っ掻き性防食コーティング
a)コーティング組成物(8)
コーティング組成物(8)を生成するために、実施例1と同様の0.67kgのコーティングベース(1)を容器に移し、0.33kgの2−プロパノールを添加し、組成物を混合する。次に、攪拌しながら、23gの顔料懸濁液(2)及び35gの顔料懸濁液(3)を添加し、混合物をさらに20分間攪拌する。
【0084】
b)コーティング
100μmフィルタスクリーンに通した濾過後に、8μmの湿潤膜を、産業用ロボットコーティングユニットにおいてコーティング組成物(8)を用いて、アルカリ性洗浄浴中で事前に洗浄したチタン支持体上に噴霧し、続いて室温で15分間乾燥させる。
【0085】
c)硬化
コーティングに続き、コーティングされた部品を排気可能なレトルト炉内に導入し、第1の加熱工程において空気中200℃まで硬化させ、続いて、純窒素中530℃で1時間硬化させる。硬化されたガラス層の厚みは3μmである。
【0086】
実施例1〜実施例4の複合体層は全て、極めて高い耐引っ掻き性及び耐摩耗性を有する。このため、複合体層は、例えば、高分子が結合したα−アルミナから成るたわしによる破損を受けることがない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数の研磨性フィラーを含有する無機ガラス質マトリクスを含む超硬複合体層を有する金属支持体であって、該フィラー粒子の直径、又は該フィラー粒子が小板状幾何学形状である場合には該フィラー粒子の厚みが、前記超硬複合体層の厚みよりも小さい、超硬複合体層を有する金属支持体。
【請求項2】
前記研磨性フィラーが硬質材料から構成されるフィラーであることを特徴とする、請求項1に記載の超硬複合体層を有する金属支持体。
【請求項3】
前記無機ガラス質マトリクスが、アルカリ土類金属ケイ酸塩又はアルカリ金属ケイ酸塩を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の超硬複合体層を有する金属支持体。
【請求項4】
少なくとも1つの研磨性フィラーが、遷移金属の炭化物、窒化物又はホウ化物、天然ダイヤモンド又は合成ダイヤモンド、α−アルミナ、天然貴石又は合成貴石、ホウ素、窒化ホウ素、炭化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び小板状Alの中から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の超硬複合体層を有する金属支持体。
【請求項5】
前記硬質材料フィラーが、α−アルミナ、炭化ケイ素及び炭化タングステンの中から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の超硬複合体層を有する金属支持体。
【請求項6】
前記フィラー粒子の前記直径、又は該フィラー粒子が小板状幾何学形状である場合には該フィラー粒子の前記厚みが、前記超硬複合体層の前記厚みの少なくとも5分の1よりも小さいことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の超硬複合体層を有する金属支持体。
【請求項7】
前記複合体層の前記厚みが20μm以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の超硬複合体層を有する金属支持体。
【請求項8】
前記複合体層中の研磨性フィラーの割合が、該最終複合体層の総重量に基づき1重量%〜35重量%の範囲内であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の超硬複合体層を有する金属支持体。
【請求項9】
前記無機ガラス質マトリクスが、少なくとも1つの小板状研磨性フィラーと、小板状でない研磨性フィラーとを含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の超硬複合体層を有する金属支持体。
【請求項10】
1つ又は複数の中間層が、前記金属支持体と前記超硬複合体層との間に配置されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の超硬複合体層を有する金属支持体。
【請求項11】
着色顔料又は効果顔料が前記複合体層又は中間層中に存在することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の超硬複合体層を有する金属支持体。
【請求項12】
超硬複合体層を有する金属支持体を製造する方法であって、ガラス形成マトリクス前駆体として加水分解性化合物の加水分解物又は縮合体と、1つ又は複数の研磨性フィラーとを含むコーティング組成物を、金属支持体に塗布し、且つ熱高密度化して前記複合体層を形成し、前記コーティング組成物中の、前記フィラー粒子の直径、又は該フィラー粒子が小板状幾何学形状である場合には該フィラー粒子の厚みが、前記複合体層の厚みよりも小さい、超硬複合体層を有する金属支持体を製造する方法。
【請求項13】
加水分解性化合物の前記加水分解物又は縮合体が、アルカリ金属ケイ酸塩又はアルカリ土類金属ケイ酸塩を含有するゾルを含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
アルカリ金属ケイ酸塩又はアルカリ土類金属ケイ酸塩を含有する前記ゾルを、前記アルカリ金属及びアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物から成る群からの少なくとも1つの化合物の存在下における、一般式(I)
SiX4−n (I)
(式中、X基は、同一又は異なり、加水分解性基又はヒドロキシル基であり、R基は、同一又は異なり、水素、4個までの炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基、並びに、6個〜10個の炭素原子を有するアリール、アラルキル及びアルカリール基であり、nは0、1又は2であるが、但し、n=1若しくは2である少なくとも1つのシラン、又は、それらから誘導されるオリゴマーが使用される)
の1つ又は複数のシランの加水分解及び縮合によって得ることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
Siを含有しないさらなる加水分解性化合物を、前記一般式(I)のシランに加えて使用することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ナノサイズのSiO粒子を、前記加水分解及び縮合前に添加することを特徴とする、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物を、Si:アルカリ金属又はアルカリ土類金属の原子比が20:1〜7:1の範囲内となるような量で使用することを特徴とする、請求項14〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記一般式(I)の開始シランにおけるnの平均値が0.2〜1.5であることを特徴とする、請求項14〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記コーティング組成物が有機溶剤及び/又は水を含むことを特徴とする、請求項12〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記金属支持体に塗布する前記コーティング組成物を、300℃〜800℃、好ましくは350℃〜700℃の温度で高密度化することを特徴とする、請求項12〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記コーティング組成物を、大気条件、すなわち酸化条件、不活性条件、すなわち還元条件下、又はこのように連続的に変化する条件下で高密度化することを特徴とする、請求項12〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記コーティング組成物を1つ又は複数の段階で高密度化することを特徴とする、請求項12〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
電子機器の金属筐体、光学機器用の金属性部材、車両の内部及び外部の金属性部品、機械及び施設構造における金属性部材、エンジン、医療機器に含まれる金属性部材、家庭用器具、電気器具、スポーツ用品、兵器、軍需品及びタービンの金属性部材、住宅設備、金属性ファサード部材、エレベータの金属性部材、搬送装置の部品、家具、庭園用具、農業機械、取付具、エンジン部材及び製造施設の金属性部品のための、請求項1〜11のいずれか一項に記載の超硬複合体層を有する金属支持体の使用。

【公表番号】特表2010−532722(P2010−532722A)
【公表日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513915(P2010−513915)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058132
【国際公開番号】WO2009/000874
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(507202600)イーピージー (エンジニアード ナノプロダクツ ジャーマニー) アーゲー (9)
【Fターム(参考)】