説明

金属表面付着成分の濃度計測方法および装置

【課題】照射と同時に発光が計測できるようにしてリアルタイムで計測が可能であり、かつ廃棄物が計測の過程で発生しないようにする。
【解決手段】検査対象である金属表面6にパルス状のレーザー光11を照射して付着物質をアブレーションし、その後アブレーションによりプラズマ化された物質からの発光13を計測し、分光することにより、金属表面に付着する微量成分の特定と濃度を求めるようにしている。この計測方法は、狭隘な空間に面している金属表面に付着している微量成分の濃度を計測する場合には、狭隘な空間の外にレーザーと少なくとも分光器を含む濃度計測装置本体を配置し、狭隘な空間に金属表面に沿って挿入される光伝送部を介して金属表面にレーザー光を照射して付着物質をアブレーションすると共にプラズマ化し、プラズマ化された物質からの発光を光伝送部を介して狭隘な空間の外の分光手段に導いて分光すると共に受光素子で発光スペクトルを得るようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属表面付着成分の濃度計測方法及び装置に関する。さらに詳述すると、本発明は、金属表面に付着した微量成分例えば原子力発電所の使用済み燃料を長期保存するために用いるコンクリートキャスク内の金属製キャニスタの表面に付着する塩分の測定に好適な濃度計測方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉の使用済み核燃料の再処理までの中間貯蔵方式として、使用済み燃料を金属製貯蔵容器(キャニスタ)に収納して密封し、さらにコンクリート製貯蔵容器(コンクリートキャスク)に収めてから中間貯蔵施設の建屋に貯蔵することが考えられている。このコンクリートキャスク方式貯蔵施設における徐熱機能は、コンクリートキャスクと建屋の双方で担保されている。コンクリートキャスクにおける徐熱は、コンクリートキャスクの底部と上部に換気口を備え、キャニスタを冷却することにより温められた空気が上昇することにより起こる自然通風によって、コンクリートキャスク内を換気する自然空冷方式が採用されている。また、建屋における徐熱も、煙突効果を有する排気塔と換気口を備え、自然通風によって、建屋内を換気する自然空冷方式が採用されている。そして、この中間貯蔵施設は、安全性を考慮して多くの場合海岸の近くに建設されている。
【0003】
したがって、海からの強風などで海岸から運ばれてきた塩分粒子が空気中に含まれていることがあり、その塩分が建屋内に止まらずさらにコンクリートキャスク内に侵入し、使用済み核燃料を密封しているキャニスタの表面に付着し、SCCと呼ばれる応力腐食割れを引き起こす可能性がある。SCCの発生を防止するためには、キャニスタ表面に付着する塩分濃度がSCCの発生に対する限界の表面付着物質濃度を超えないようにする必要がある。このためには、キャニスタ表面に付着する塩分濃度を正確に測定する必要がある。
【0004】
従来、キャニスタ表面に付着する塩分を測定する方法としては、表面に付着する塩分を布でふき取ってその布に付着する塩分を化学的計測等で測定するスミヤ法や、レーザーで塩分を除去して雰囲気ごとコンクリートキャスクの外に取り出す排気経路上でレーザー光を海塩粒子に照射してその反射光を受けてスペクトルに分光して付着量を測定する方法(特許文献1)が提案されている。
【0005】
後者の特許文献1記載の測定方法は、伝送ファイバを介してコンクリートキャスクの外に設置したレーザ装置からキャニスタの外周面にレーザ光を照射し、キャニスタ外周面に付着した海塩粒子をレーザー光によりブラスト除去する一方、除去された海塩粒子をコンクリートキャスク内に引き込んだ吸引ホースによってアブレーションプルームをコンクリートキャスクの外に真空引きなどで採取し、測定部・測定ヘッドに海塩粒子を取り込んでから、海塩粒子にレーザを照射してその反射光を受けてスペクトルに分光して検出器でスペクトルから海塩粒子の濃度即ち付着量を測定しようとするものである。
【0006】
ここで、キャニスタ外周面から除去された海塩粒子は、吸引ホースを通してコンクリートキャスクの外に吸引される。このとき、測定ヘッド内ではレーザを照射してその反射光を測定装置に送る。そして、測定装置では、スペクトルに分光して検出器でスペクトルから海塩粒子の濃度即ち付着量を測定するようにしている。このため、測定ヘッド内に除去された海塩粒子を測定の間滞留させることが必要である。そこで、送風機の駆動を停止することあるいは測定ヘッドを送風機に対して遮断するなどの対策をとることにより、吸引ホース内を移動する海塩粒子の流れを測定ヘッド内で一旦停止させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−271634号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、付着成分を布でふき取るスミヤ法では、塩をふき取った布が放射化してしまうため、放射性廃棄物が増える問題がある。また遠隔での測定が困難であるため、測定を行う作業員が被爆する危険性がある。さらにリアルタイムでの計測が不可能であるという問題点があった。さらに少量の塩分の測定の場合、測定精度が悪いという問題点がある。
【0009】
また、特許文献1記載の塩分濃度測定法は、レーザーによりキャニスタから剥離させた塩分粒子をコンクリートキャスクの外の測定ヘッドに引き込んでから濃度測定するようにしているので、測定ヘッドに到達する前に吸引ホースの途中の管壁に塩分が付着するため、剥離させた塩分粒子の全量を測定ヘッドに取り込んで測定することができない。また、測定ヘッドを送風機に対して遮断するなどの手段により海塩粒子を測定ヘッドで一旦停止させるため、流れを止めた時に既に測定ヘッドを通過していたり、測定ヘッドに達していない塩分も測定ヘッドに取り込めない。このため、測定精度の悪いものとなる。したがって、特許文献1記載の塩分濃度測定法によれば、定量化・定量評価できないばかりか、SCCの発生を評価する指標としても感度の悪いものとなる。
【0010】
また、特許文献1記載の塩分濃度測定法は、レーザー光によるブラスト除去で金属製キャニスク表面から吹き飛ばした海塩粒子やマグネシウム、ナトリウムなどのその他の付着成分を含むプルームをコンクリートキャニスタの外の測定ヘッドに取り込んでからレーザー光を当てて反射光を計測するようにしているので、何らかの発光成分が存在することだけしか判明せず、塩素の発光強度を特定できないために、塩分の濃度が正確に測定できない。
【0011】
さらに、特許文献1記載の塩分濃度測定装置は、コンクリートキャスク内の金属製キャニスタの表面に付着する塩分を取り除くブラスト部と、海塩粒子やその他の付着成分を含むプルームを吸引してからコンクリートキャスクの外に取りだしてからレーザを照射してその反射光を測定装置に送る計測部・測定ヘッドとに分けられた大がかりで複雑な構造となるため、狭隘な空間では金属表面の直近でアブレーション直後の塩分粒子などの微量付着成分を検出することができない。
【0012】
そこで本発明は、金属表面に付着している微量成分を感度良く測定できる方法及び装置を提供することを目的とする。また、本発明は、リアルタイムで計測が可能であり、かつ廃棄物が計測の過程で発生しない金属表面付着成分の濃度計測方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、対象となる金属表面で付着微量成分の測定を可能とする金属表面付着成分の濃度計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の発明にかかる金属表面付着成分の濃度計測方法は、検査対象である金属表面にパルス状のレーザー光を照射して付着物質をアブレーションし、その後アブレーションによりプラズマ化された物質からの発光を計測し、分光することにより、金属表面に付着する微量成分の特定と濃度を求めるようにしている。
【0014】
また、請求項2記載の発明にかかる狭隘な空間に面している金属表面に付着している微量成分の濃度を計測する方法は、狭隘な空間の外に少なくともレーザーと分光手段と受光素子及びレーザーと受光素子を制御するコントローラを備える濃度計測装置本体を配置し、狭隘な空間に金属表面に沿って挿入される光伝送部を介して金属表面にレーザー光を照射して付着物質をアブレーションすると共にプラズマ化し、プラズマ化された物質からの発光を光伝送部を介して狭隘な空間の外の分光手段に導いて分光すると共に受光素子で発光スペクトルを得ることにより、金属表面に付着する微量成分の特定と濃度を求めるようにしている。
【0015】
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載の金属表面付着成分の濃度計測方法において、金属表面が使用済み燃料を収容する金属製キャニスタの外表面であり、狭隘な空間は金属製キャニスタを収容するコンクリートキャスクの内周面との間で形成されるものであることを特徴とする。
【0016】
ここで、本発明の金属表面付着成分の濃度計測方法において、金属製キャニスタの外表面に照射するレーザー光の照射部を支持する走行手段を金属製キャニスタの外表面とコンクリートキャスクの内周面との間に設け、照射部と金属製キャニスタの外表面との間隔を一定に維持することが好ましい。
【0017】
また、本発明の金属表面付着成分の濃度計測方法において、対象となる微量成分は特に限定されるものでないが、応力腐食割れの原因となる塩分であることが好ましい。そして、この塩分の検出には、837.59nmの塩素の発光線、517.26 nmのマグネシウムの発光線、518.36 nmのマグネシウムの発光線、833.31 nmの塩素の発光線のいずれかを用いることが好ましい。
【0018】
また、本発明にかかる金属表面付着成分の濃度計測方法において、パルス状のレーザー光の照射は1回でも十分であるが、複数回行われることが好ましい。パルス状のレーザー光の複数回の照射は、同じ方向から行っても良いが、場合によっては請求項8記載の発明にかかるように、金属表面に向けて照射し前記金属表面に付着している微量成分をアブレーションさせる第1のステップと、前記アブレーションにより形成されたプラズマに向けて前記金属表面と平行に照射され前記第1のステップで励起されなかった粒子を励起する第2のステップとで実行するようにしても良い。さらに、複数回の照射を行う場合、請求項9記載の発明にかかるように、第1のステップで照射するレーザー光は第2のステップで照射するレーザー光よりも弱く、少なくとも計測対象となる付着微量成分を金属表面からはじき出すのに十分なものであり、第2のステップで照射するレーザー光は第1のステップではじき出された付着微量成分を励起して発光させるに十分なものであることが好ましい。
【0019】
また、請求項10記載の発明は、請求項1から9のいずれか1つに記載の金属表面付着成分の濃度計測方法において、計測対象となる付着微量成分を示す発光線の発光強度の酸素の発光線の発光強度に対する比と付着微量成分濃度との相関関係を求め、計測時の付着微量成分の発光強度の酸素の発光線の発光強度に対する比から付着微量成分濃度を求めることを特徴とする。
【0020】
また、請求項11記載の発明は、請求項1から10のいずれか1つに記載の金属表面付着成分の濃度計測方法において、プラズマ化された物質からの発光の計測とその直前のレーザー光の照射との間に1μs〜10μsの時間差を与えることを特徴とするものである。
【0021】
また、請求項12記載の発明は、請求項8から11のいずれか1つに記載の金属表面付着成分の濃度計測方法において、第1のステップで照射するレーザー光と第2のステップで照射するレーザー光との間に0.5μs〜5μsの時間差を与えることを特徴とするものである。
【0022】
さらに、本発明にかかる金属表面付着成分の濃度計測装置は、被検査金属の表面にレーザー光を照射して付着物質をアブレーションすると共にプラズマ化するに十分なピークパワーのレーザーと、プラズマ化された物質からの発光を計測し波長毎に分解する分光手段と、分光手段を経て分光されたプラズマ化された物質からの発光を受光し発光スペクトルを得るゲート機能を有する受光素子と、レーザー及び受光素子のゲート開放開始時間との間の時間差を制御するコントローラとを備えるようにしている。
【0023】
また、本発明にかかる狭隘な空間に面している金属表面に付着している微量成分の濃度を計測する装置は、少なくともレーザーと分光手段と受光素子及びレーザーと受光素子を制御するコントローラを備え狭隘な空間の外に配置される濃度計測装置本体と、レーザー光伝送用の光学系と発光計測用の光学系とを含み狭隘な空間に金属表面に沿って挿入される光伝送部とを備え、光伝送部を介して金属表面にレーザー光を照射して付着物質をアブレーションすると共にプラズマ化し、プラズマ化された物質からの発光を光伝送部を介して狭隘な空間の外の分光手段に導いて分光すると共に受光素子で発光スペクトルを得ることにより、金属表面に付着する微量成分の特定と濃度を求めるようにしている。
【0024】
また、請求項15記載の発明は、請求項14記載の金属表面付着成分の濃度計測装置において、金属表面が使用済み燃料を収容する金属製キャニスタの外表面であり、狭隘な空間は金属製キャニスタを収容するコンクリートキャスクの内周面との間で形成されるものとしている。
【0025】
また、請求項16記載の発明は、請求項15記載の金属表面付着成分の濃度計測装置において、金属製キャニスタの外表面とコンクリートキャスクの内周面との間に設けられ、レーザー光伝送用の光学系の照射部を支持すると共に、照射部と金属製キャニスタの外表面との間隔を一定に維持する走行手段を備えるものである。
【0026】
また、請求項17記載の発明は、請求項13から16のいずれか1つに記載の金属表面付着成分の濃度計測装置において、レーザは被検査金属表面にレーザー光を照射して付着物質をアブレーションする第1のレーザーと、第1のレーザー光でアブレーションされた物質にレーザー光を照射してプラズマ化する第2のレーザーとから成り、コントローラは第1レーザー、第2レーザー及び受光素子のゲート開放開始時間との間の時間差を制御するものである。
【0027】
また、請求項18記載の発明は、請求項14から17のいずれか1つに記載の金属表面付着成分の濃度計測装置において、光伝送部は中空管であり、レーザー光伝送用の光学系と発光計測用の光学系とを内蔵すると共に金属表面に対向する先端開口部に金属表面と密着するシール部材が具備されており、レーザー照射時に、シール部材と金属表面とが密着することで、照射点を固定すると同時に中空管内を減圧可能とするものであることが好ましい。
【0028】
また、請求項19記載の発明は、請求項18に記載の金属表面付着成分の濃度計測装置において、レーザー光伝送用の光学系と発光計測用の光学系とは、光ファイバであり、各光ファイバの先端面が金属表面と対向するように配置されているものである。
【0029】
また、請求項20記載の発明は、請求項18記載の金属表面付着成分の濃度計測装置において、中空管には、集光用レンズと、レーザー光の波長のみを反射しレーザー光を金属表面に照射する波長選択型ミラーとを有するレーザー光伝送用の光学系と、金属表面に付着する微量成分のアブレーションにより生じたプラズマ発光を波長選択型ミラーの背後に配置され波長選択型ミラーを透過したプラズマ発光を反射させる波長に依存しない反射ミラーを備える発光計測用の光学系とを備え、中空管内をレーザー光とプラズマの発光とが伝搬されるようにしている。
【0030】
また、請求項21記載の発明は、請求項13から17のいずれか1つに記載の金属表面付着成分の濃度計測装置において、光伝送部は、レーザー光伝送用の光ファイバと、発光計測用の光ファイバとから成り、各光ファイバの先端面が金属表面と対向するように配置されているものである。
【0031】
また、請求項22記載の発明は、請求項13から21のいずれか1つに記載の金属表面付着成分の濃度計測装置において、受光素子のゲート開放開始とその直前のレーザー光の照射との間に1μs〜10μsの時間差を与えるものである。
【0032】
さらに、請求項23記載の発明は、請求項13から22のいずれか1つに記載の金属表面付着成分の濃度計測装置において、第1のステップで照射するレーザー光と第2のステップで照射するレーザー光との間に0.5μs〜5μsの時間差を与えるものである。
【発明の効果】
【0033】
本発明の金属表面付着成分の濃度計測方法及び装置によれば、金属表面の付着物質をパルス状のレーザー光の照射によりアブレーションしてプラズマ化された物質からの発光を計測し、分光することにより波長毎の発光強度を求めるようにしているので、付着物質濃度を各々の評価などに十分利用できる感度で計測できる。即ち、付着物質が存在するか否かの判断ができる。具体的には、本発明者等による実験では、表面塩分濃度0.1 g/m程度の塩素に対する測定感度があることを確認された。この測定感度は応力腐食割れの影響を評価するには十分な感度である。しかも、レーザー光を照射する金属表面の付近でのプラズマ発光を直接計測するため、計測部の構造を小さくすることが可能であることから、狭隘な空間例えばコンクリートキャスクに収容された金属製キャニスタの表面に付着する塩分の測定に適用することができる。勿論、金属キャスクのような、開放された金属表面の付着微量成分を測定することもできる。
【0034】
また、遠隔かつリアルタイムでの測定が可能であるため、使用済み燃料を保存するために用いるコンクリートキャスク内の金属製キャニスタの表面に付着する塩分の測定に用いる場合には、作業員が被爆する危険性もなく、またスニア法では問題となっている新たに発生する放射性廃棄物(塩をふき取った布)もなくなる。さらに少量の付着塩分であっても、アブレーションに伴い発生するプラズマ発光を計測し分光することにより、濃度に比例した発光強度を得るため、塩分の濃度が正確に測定できる。したがって、SCCの発生を評価する指標としても感度の良いものとなるばかりか、定量化・定量評価が可能となる。
【0035】
また、狭隘な空間に面している金属表面に付着している微量成分の濃度を計測する本発明の金属表面付着成分の濃度計測方法及び装置によれば、狭隘な空間の外に濃度計測装置本体を配置し、狭隘な空間に金属表面に沿って挿入される光伝送部を介して金属表面にレーザー光を照射して付着物質をアブレーションすると共にプラズマ化し、プラズマ化された物質からの発光を光伝送部を介して狭隘な空間の外の分光手段に導いて分光すると共に受光素子で発光スペクトルを得るようにしているので、狭隘な空間での金属表面の直近でアブレーション直後の塩分粒子などの微量付着成分の濃度を求めることができる。したがって、コンクリートキャスク内に収容された金属製キャニスタの外面に付着する塩分濃度を測定することができる。
【0036】
また、塩分の検出において、837.59nmの塩素の発光線、517.26 nmのマグネシウムの発光線、518.36 nmのマグネシウムの発光線、833.31 nmの塩素の発光線のいずれかを用いる場合、塩素やマグネシウムに対する感度、濃度が得られる。
【0037】
また、パルス状のレーザー光の照射を複数回行う場合には、アブレーションさせた元素の発光を漏れなく計測することができるので、測定感度が向上する。つまり、アブレーションにより励起された粒子を2回目のレーザー光による再加熱または再励起を効果的に行って励起原子の発光寿命を延ばすと共に、1回目のアブレーションでプラズマ化せずに金属表面からはじき出された付着成分の粒子も励起されるので、より低いパワーで材料への損傷を抑えながらもアブレーション効率を上げてプラズマを生成し測定感度を良くすることができる。しかも、一回目のレーザーパルスのエネルギーを低く出来るため、キャニスタ表面におけるレーザー光による損傷を低減することができる。
【0038】
特に、パルス状のレーザー光の照射を、金属表面に向けて照射し金属表面に付着している微量成分をアブレーションさせる第1のステップと、アブレーションにより形成されたプラズマに向けて金属表面と平行に照射され第1のステップで励起されなかった粒子を励起する第2のステップとで行う場合には、アブレーションにより原子化された雰囲気(プラズマプルーム)にさらにレーザー光を照射してアブレーションされた物質を再加熱または再励起することにより、励起原子の発光寿命を延ばして発光ピークを顕著にできる。しかも、プラズマプルームを再加熱または再励起するため、エアプラズマによりはじき出された粒子も励起されるため、アブレーション効率が上がり、発光強度が向上する。このため、付着物質濃度と発光強度との間に濃度の評価に十分利用できる感度で計測できる。加えて、第1のステップのレーザーパルスのエネルギを低くできるため、キャニスタ表面におけるレーザー光による損傷を低減させることができる。
【0039】
さらに、第1のステップで照射するレーザー光を第2のステップで照射するレーザー光よりも弱く、少なくとも計測対象となる付着微量成分を金属表面からはじき出すのに十分なものであり、第2のステップで照射するレーザー光は第1のステップではじき出された付着微量成分を励起して発光させるに十分なものとする場合には、キャニスタ表面におけるレーザー光による損傷を最小限に抑制しながら測定感度を上げることができる。
【0040】
さらに、計測対象となる付着微量成分を示す発光線の発光強度の酸素の発光線の発光強度に対する比と付着微量成分濃度との相関関係を求め、計測時の付着微量成分の発光強度の酸素の発光線の発光強度に対する比から付着微量成分濃度を求める場合には、グラフの線形性が向上するため、付着微量成分の測定の指標として選択した元素と付着微量成分の付着濃度との相関がより精度良く求められるので、濃度の定量化が精度の良いものとなる。
【0041】
また、本発明の金属表面付着成分の濃度計測方法において、プラズマ化された物質からの発光の計測とその直前のレーザー光の照射との間に1μs〜10μsの時間差を与えることにより、白色ノイズの影響を排除し発光ピークが顕著となったタイミングで受光素子で受光して発光スペクトルを得ることできるので測定感度を上げることができる。金属表面の付着微量成分をアブレーションする場合、レーザーのピークパワーが小さいことから白色ノイズは弱いが、この場合においても、受光素子のゲート開始時間が早ければ、白色光ノイズが輝線強度に比べて強いので、計測できず、遅いと輝線強度が減衰してしまって感度が出ない。そこで、この場合における、受光素子のゲート開放開始とその直前のレーザー光の照射との時間差は、ダブルパルスによる場合と同様に、1μs〜10μsの範囲に調整されることが好ましい。
【0042】
また、本発明の金属表面付着成分の濃度計測方法において、第1のステップで照射するレーザー光と前記第2のステップで照射するレーザー光との間に0.5μs〜5μsの時間差を与えることにより、追加加熱の効果が得られると共に励起された粒子が飛散する前に十分な追加加熱を与えることができる。
【0043】
また、本発明の金属表面付着成分の濃度計測装置において、レーザー光伝送用光学系と発光計測用光学系とを内蔵し先端開口部が金属表面に固定される密封可能な中空管で光伝送部を構成する場合、レーザー照射時に、シール部材と金属表面とが密着することで、照射部を固定して安定化すると同時に中空管内を減圧可能とすることから、真空化により空気のプラズマ化を抑制できるので、付着微量成分からのプラズマのみが発生し、計測精度が向上する。
【0044】
さらに、密封可能な中空管で構成される光伝送部のレーザー光伝送用の光学系と発光計測用の光学系とを光ファイバで構成する場合には、レーザー光とプラズマの発光との伝搬を実現しながら、狭隘な空間内での光伝送部の移動に制約を受けることが少ない。このことは、集光用レンズやミラーなどの光学系を組みこむ請求項20の発明においても同様である。また、光ファイバ若しくは照射部にのみ光学部品を用いることにより、光伝送部及び照射部を小型にすることができ、狭隘部での測定が可能になる。
【0045】
また、本発明の金属表面付着成分の濃度計測装置において、光伝送部を剥き出しのレーザー光伝送用光ファイバと発光計測用光ファイバとで構成する場合には、より狭隘な空間での金属表面の付着微量成分の検出と濃度測定を実施可能とすることができる。
【0046】
また、本発明の金属表面付着成分の濃度計測方法および装置において、金属製キャニスタの外表面とコンクリートキャスクの内周面との間にレーザー光伝送用の光学系の照射部を支持する走行手段を設けた場合には、照射部を移動させても金属製キャニスタの外表面との間隔を一定に維持することができるので、照射部の揺れを防止することができる。そのため、照射部と金属製キャニスタの外表面との距離が変化してレーザー光の焦点と金属製キャニスタの外表面との位置関係が当該外表面の垂直方向にずれたり、レーザー光の照射方向がずれてしまうのを防止することができ、別の位置の計測においてもアブレーションを良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の金属表面付着成分の濃度計測方法を実施する計測システムをコンクリートキャスクの中の金属製キャニスタの表面に付着する塩分の濃度を計測する態様に適用する場合の概念図を示す。
【図2】光伝送部の第1の実施形態を示す概念図である。
【図3】光伝送部の第2の実施形態を示す概念図である。
【図4】本発明の金属表面付着成分の濃度計測方法の効果を確認するための実験装置の一例を示す原理図である。
【図5】SUS304L(濃度 0.1 g/m2)と照射箇所の様子を示す説明図である。
【図6】照射後のSUS316Lの表面状態を示す光学顕微鏡写真である。
【図7】照射後のSUS316Lの表面状態(濃度 0.1 g/m2)を示す電子顕微鏡写真である。
【図8】各元素に起因する発光強度の評価例を示すグラフである。
【図9】シングルパルスでのレーザー照射方法を示す原理図(左図)と、レーザー光及びICCDの時間的関係を示す説明図(右図)である。
【図10】シングルパルス計測時の発光スペクトル(495〜525nm)を示すグラフである。
【図11】シングルパルス計測時の発光スペクトル(830〜850nm)を示すグラフである。
【図12】シングルパルスにおける発光スペクトルの表面塩分濃度依存性(495〜525nm)を示すグラフである。
【図13】シングルパルスにおける発光スペクトルの表面塩分濃度依存性(830〜850nm)を示すグラフである。
【図14】シングルパルス計測時のClの発光強度の表面塩分濃度依存性を示すグラフである。
【図15】シングルパルス計測時のMgの発光強度の表面塩分濃度依存性を示すグラフである。
【図16】シングルパルス計測時のCrの発光強度の表面塩分濃度依存性を示すグラフである。
【図17】ダブルパルスでのレーザー照射方法を示す原理図(左図)と、レーザー光及びICCDの時間的関係を示す説明図(右図)である。
【図18】ダブルパルス計測時の発光スペクトル(495〜525nm)を示すグラフである。
【図19】ダブルパルス計測時の発光スペクトル(830〜850nm)を示すグラフである。
【図20】ダブルパルスにおける発光スペクトルの表面塩分濃度依存性(495〜525nm)を示すグラフである。
【図21】ダブルパルスにおける発光スペクトルの表面塩分濃度依存性(830〜850nm)を示すグラフである。
【図22】ダブルパルス計測時のClの発光強度の表面塩分濃度依存性を示すグラフである。
【図23】ダブルパルス計測時のMgの発光強度の表面塩分濃度依存性を示すグラフである。
【図24】ダブルパルス計測時のCrの発光強度の表面塩分濃度依存性を示すグラフである。
【図25】ダブルパルス計測時のClの発光強度の酸素の発光強度に対する比と表面塩分濃度との相関性を示すグラフである。
【図26】アブレーションの様相を示す図で、左図はシングルパルスの場合、右図はダブルパルスの場合を示す。
【図27】レーザーによりはじき出された粒子数と発光強度の濃度依存性を示すグラフであり、上図はレーザーによりはじき出された粒子の総量と表面塩分濃度との関係を示し、下図は発光強度と表面塩分濃度との関係を示す。
【図28】本発明の金属表面付着成分の濃度計測方法を実施する計測システムをコンクリートキャスクの中の金属製キャニスタの表面に付着する塩分の濃度を計測する態様に適用する場合の他の実施形態を示す概念図である。
【図29】走行手段を示す概念図である。
【図30】共線照射方式によるレーザー光および発光の伝送を説明するための概念図である。
【図31】バンドルファイバの先端を示す概念図である。
【図32】垂直−水平照射方式によるレーザー光および発光の伝送を説明するための概念図である。
【図33】第2のレーザー光を伝送する光ファイバの先端を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0049】
本発明にかかる金属表面付着成分の濃度計測方法は、金属表面に付着している微量成分例えば塩分などの濃度を測定するものであって、検査対象である金属表面にパルス状のレーザー光を照射して付着物質をアブレーションし、その後アブレーションによりプラズマ化された物質からの発光を計測し、分光することにより、金属表面に付着する微量成分を特定しその濃度を求めるようにするものである。
【0050】
本発明の金属表面付着成分の濃度計測方法並びに装置の概念を、図4に示す実験装置を引用して説明する。図4は、金属表面付着成分の濃度計測方法を実施するダブルパルス方式の計測システムの概念図である。この付着物質計測システムは、被検査金属6の表面にレーザー光11を照射して付着物質をアブレーションする第1のレーザー(アブレーション用レーザー)1と、第1のレーザー光11でアブレーションされた物質の雰囲気(アブレーションプルーム)19に第2のレーザー光12を照射してプラズマ化を促進する第2のレーザー2と、プラズマ化された物質からの発光13を波長毎に分解する分光器4と、該分光器4を経て分光されたプラズマ化された物質からの発光13を制御された時間差をもって受光し発光スペクトルを得るゲート機能を有する受光素子5と、第1レーザー1、第2レーザー2及び受光素子5のゲート開放開始時間との間の時間差を制御するコントローラ3並びに受光素子5からの電気信号を取り込み、保存し、必要に応じて積算し、解析するコンピュータ18とを備え、発光スペクトルのピークの周波数から励起原子を特定し、そのピーク高さから付着物質濃度を測定するようにしたものである。分光器4は、取り込んだ光をスペクトルに分解し、更に受光素子5を用いてスペクトル強度分布(波長依存性を有する発光強度の分布)を測定する。
【0051】
第1及び第2のレーザとしては、金属表面にレーザー光11,12を照射して付着物質をアブレーションすると共にプラズマ化するに十分なピークパワーのレーザー、例えばNd:YAGレーザ、ファイバーレーザー、チタンサファイアレーザー、ガラスレーザー、COレーザ、エキシマレーザ等といったパルスレーザーの類が用いられる。つまり、パルスレーザーであれば、ナノ秒レーザーでも、超短パルスレーザーでも実施可能である。そして、コントローラ3によって第1のレーザー1のトリガ信号に対する第2のレーザー2のQスイッチの遅延時間が設定されることにより、第1のレーザー光11に対し第2のレーザー光12が所定の時間差(遅れ時間)をもって生成される。また、第1のレーザー1と第2のレーザー2とは同じ種類のレーザーでも良いし、異なるレーザーでも良い。
【0052】
ここで、金属表面の付着物質をアブレーションするレーザー(アブレーション用レーザー)としての条件は、少なくとも以下の二つの照射条件のどちらかを満たしていることが望まれる。
1.パルス幅が1〜20 ナノ秒でかつフルエンス4〜12J/cm
2.パルス幅が1 ピコ秒以下でかつエネルギーフルエンスが1J/cm以下
である。尚、パルス幅は、超短パルスとナノ秒パルスとで異なるので、エネルギーフルエンスの条件が変化する。したがって、ピークパワーの単位(W/cm)で記載すれば、超短パルス(パルス幅1psec以下)の場合、1012W/cm以下、ナノ秒パルス(パルス幅10nsec)の場合6×10〜2×10W/cm以下となる。
1つ目の条件は、レーザー強度が低い時の条件であり、レーザーアブレーションのためのレーザ出力並びに照射時間は、比較的低いエネルギーフルエンス(W/cm)でパルス状に照射することが好ましい。具体的には、本発明者等の実験によれば、4〜12J/cmの範囲で計測を行った結果、同範囲で計測可能であり、12J/cmでは十分計測が可能なことを確認し、0.4J/cmで計測ができていないことを確認した。また、フルエンスの上限については、実験による確認をしていないが、100J/cmで検査対象となる金属表面に影響を与えず測定に支障を来さないものと推測される。したがって、フルエンス4〜100J/cmの範囲で可能である。1つ目のパルス幅の条件は、一般的なナノ秒レーザー(Nd:YAGやエキシマレーザーなど)の仕様の範囲である。つまり、ナノ秒レーザーを使って上記のフルエンスの範囲で照射すれば計測可能であることが判明した。
また、2つ目の条件は、超短パルスレーザーを用いる場合の条件であり、1J/cm以下、より好ましくは1J/cmよりも十分に小さいことである。この超短パルスを用いる場合のエネルギーフルエンスは、引張残留応力が減っていく条件(ピーニング条件)を満たし、レーザー照射により引張残留応力が増加しないものである。つまり、本発明者等によって、ピーニング条件でのレーザー光の照射は、金属材料に応力腐食割れを誘起せずに付着微量成分をアブレーションすることができるものであることの知見を得た。
尚、上述のレーザーの条件は、付着した微量成分の分析に関しては、ほとんど変わらないものである。また、キャニスタの温度(最高100℃程度)でもほとんど精度に影響が出ないものである。
【0053】
この第1のレーザー1と第2のレーザー2とは、第1のレーザー光11でサンプル6の表面をアブレーションした後、第2のレーザー光12でアブレーションされた物質の雰囲気(アブレーションプルーム)19を再加熱または再励起するように配置される。例えば本実施形態の場合、第1のレーザー光11をサンプル6の表面に直交するように照射させ、第2のレーザー光12をサンプル6の表面と平行に照射してアブレーションプルームを通過するように設けられている。第2のレーザー光は、材料ではなく空気をプラズマ化するため、レーザー光のピークパワーを高くしても材料への損傷を大きくすることがなく、材料への損傷を抑制するため第1のレーザー光をより低いパワーでアブレーションするようにしてもプラズマが生成されるという効果を有する。
【0054】
ここで、第1のレーザー光11と第2のレーザー光12とのレーザー光照射時間差としては、第1のレーザー1によるアブレーションの後、白色光ノイズが減少し尚かつ励起原子がアブレーションプルーム19中に残っている状態が確保される時間であり、例えば0.5μs〜5μsの範囲で与えることが好ましい。また、金属表面の付着微量成分をアブレーションする場合、レーザーのピークパワーが小さいことから白色ノイズは弱いが、この場合においても、受光素子5のゲート開始時間が早ければ、白色光ノイズが輝線強度に比べて強いので、計測できず、遅いと輝線強度が減衰してしまって感度が出ない。そこで、この場合における、受光素子のゲート開放開始とその直前のレーザー光の照射との時間差は、ダブルパルスによる場合と同様に、1μs〜10μsの範囲に調整されることが好ましい。
【0055】
尚、実験装置では、レーザー光の照射によるアブレーション並びにアブレーションプルーム19からの発光の計測は、光学レンズやミラーなどを用いた光学系によって行うようにしているが、場合によっては、直接光ファイバーによって導光することにより、照射したり、分光器4に取り込むようにしても良い。光ファイバーは通常紫外域(波長200nm以下)の光は通さないため、真空紫外域等の発光を測定する場合に有効である。勿論、レンズを用いて光ファイバーに集光することにより分光される光強度を増加し、測定感度を向上することも好ましい。また、光ファイバーとしてバンドルファイバーを用い、光ファイバーの出射形状をライン状にして分光器のスリット形状に合わせることにより、光ファイバーと分光器の結合効率を向上させるようにしても良い。また、レーザー光の集光と発光の集光を同軸に設定することも可能である。これにより、システムを簡便にすることができる。
【0056】
分光器4としては、本実施形態では、回折格子により波長情報を空間情報に変換する分光器を用いているが、これに限らず、例えばバンドパスフィルターを用いることも可能である。測定対象物質が一つまたは少数に限られている場合、その発光線と近傍のバックグラウンドの波長に合わせたバンドパスフィルターを用意し、それぞれのバンドパスフィルターを通した後の光強度を測定することにより、バックグラウンドに対する発光の強度、すなわち測定対象物質の発光線強度を測定することが可能である。この場合、バックグラウンド測定用バンドパスフィルターとして、二つ以上の波長のバンドパスフィルターを用いることで測定の信頼性を向上することができる。以上のようにバンドパスフィルターを用いて分光することにより、装置構成を格段に簡素化することができると共に、製作コストを格段に下げることが可能となる。
【0057】
受光系としては分光器4とICCDカメラ5、または分光器4と光電子増倍管(図示省略)を用いることが好ましい。ゲート機能を有する受光素子5としては、本実施形態の場合、ICCDカメラを用いている。ICCDカメラは回折格子を有する分光器により空間情報に変換された波長毎の強度分布(スペクトル)を一度に取得することが可能であり、多数の物質の発光スペクトルを同時に取得することが可能であり、多数の物質の計測を一度に行うことができる。また、高い時間分解能でゲートをかけることができるため、前述したようにゲート開放開始までの遅れ時間とゲート開放時間を調整することにより、プラズマの制動輻射によるバックグラウンドノイズを低減することが可能である。さらにイメージインテンシファイアにより信号強度を増強することが可能であるため、測定のS/N比を向上することができる。しかしながら受光素子5としてはICCDカメラに限る必要はなく、たとえば、通常のCCDカメラや線形フォトダイオード等の線形受光素子を用いることも可能である。この場合も回折格子を有する分光器と同時に用いることにより、多数の物質を一度に計測することが可能である。また、受光素子として、光電子増倍管やフォトダイオード等の単一受光素子を用いることも可能である。この場合、波長毎の強度分布(スペクトル)を一度に取得することはできないため、多数の物質の計測を同時に行うことはできないが、単一または少数の物質のみを測定すればよい場合、または多数の物質の計測でも、各物質を同時に測定しなくてもよい場合は適用可能である。例えば、単一または少数の物質のみを測定すればよい場合、上述したようにバンドパスフィルターと共に用いて、測定対象物質の発光波長とその近傍のバックグラウンド波長を1点もしくは数点同時に測定すればよい。これにより装置を格段に簡便にすることが可能となると共に、製作コストを低くすることができる。また、多数の物質の計測でも各物質を同時に測定しなくてもよい場合には、例えば回折格子を有する分光器と共に用いて、回折格子を回転させながら波長毎の強度分布(スペクトル)を測定すればよい。時間に対して変動の少ない現象を測定する場合は有効である。
【0058】
本実施形態の場合には、ICCDカメラ5にはスペクトル強度分布を分析する各種解析プログラムなどを実装したコンピュータ18が接続され、ICCDカメラ5で撮像した周波数毎の発光強度の情報を入力して、このデータを保存し、あるいは積算し、解析して発光スペクトルとしてディスプレーに表示したり、周波数毎の発光強度の情報から金属表面の塩分の有無、さらには塩分濃度等を計測する。このコンピュータ18は、図示していないが記憶装置を備え、金属表面に既知の濃度の微量成分を付着させてレーザ光を照射したときに発生するプラズマの発光のスペクトル強度分布等を予め記憶させたり、検量線を備えることにより、参照データとの発光強度の比較あるいは検量線の参照により目的物質・原子の濃度変化などを検出するように設けることが好ましい。尚、発光スペクトルを保存し、必要に応じて積算したり、解析する必要がない場合には、パソコン18を必要とせず、ICCDカメラ5に付属のモニターディスプレイに単に発光スペクトルを表示してモニターするようにしても良い。
【0059】
以上のように構成された本発明の金属表面の付着物質濃度の計測方法並びに装置によると、金属表面に付着した微量成分の濃度の計測を以下に示すようにして実施できる。
【0060】
まず、金属表面に対してレーザー光を照射し、付着成分をアブレーションさせ、発光を観測する。ここで、一つ目のレーザー光11はレンズ7により金属表面6a上に集光されてアブレーションプラズマを生成し、二つ目のレーザー光12は一つ目のレーザー光照射により生じたプラズマプルーム19中にレンズ8により集光される。発光は光ファイバー17を通過し、回折格子を有する分光器4により分光され、ICCDカメラ5により受光される。ICCDカメラ5は、回折格子を有する分光器4により空間情報に変換された波長毎の強度分布(スペクトル)を一度に取得することが可能であり、多数の物質の発光スペクトルを同時に取得することが可能であり、多数の物質の計測を一度に行うことができる。
【0061】
ここで、837.59nmの塩素の発光線、517.26 nmのマグネシウムの発光線、518.36 nmのマグネシウムの発光線、833.31 nmの塩素の発光線は塩分の存在を示唆するものであり、いずれかの発光線を用いることによりそれら発光線の発光強度と塩分濃度とは比例関係にあることから、塩分の存在とその濃度が求められる。
【0062】
図1に本発明の金属表面の付着物質濃度の計測方法並びに装置をコンクリートキャスクの中の金属製キャニスタの表面(外表面)に付着する塩分の濃度を計測する実施の形態に適用した場合における、キャニスタ付着塩分濃度計測方法を実施する計測システムの概念図を示す。この付着物質計測システムは、被検査金属(本実施例では金属製キャニスタであり、以下単にキャニスタと呼ぶ)6の表面にレーザー光を照射して付着物質をアブレーションすると共にプラズマ化するに十分なピークパワーのレーザー1と、プラズマ化された物質からの発光を計測し波長毎に分解する分光器と、分光器を経て分光されたプラズマ化された物質からの発光を受光し発光スペクトルを得るゲート機能を有する受光素子と、レーザー及び受光素子のゲート開放開始時間との間の時間差を制御するコントローラとを備える解析装置21と、レーザー光伝送用の光学系と発光計測用の光学系とを含みコンクリートキャスク26とその中に収容されている金属製キャニスタ6との間、即ち、コンクリートキャスク26の内周面と金属製キャニスタ6の外表面との間の狭隘な空間(狭隘部)27にキャニスタ6の表面に沿って挿入される光伝送部(スコープ)33とで構成されている。
【0063】
したがって、コンクリートキャスク26に収容されている金属製キャニスタ6の表面に付着している塩分濃度を計測する場合には、レーザー1と分光器などを含む解析装置21とをコンクリートキャスク26の外に配置し、コンクリートキャスク26内に挿入される光伝送部33を介して金属製キャニスタ6の表面にレーザー光を照射して塩分をアブレーションすると共にプラズマ化し、発光を光伝送部33を介して狭隘な空間27の外の解析装置21に光ファイバ22を介して導き、分光すると共に受光素子で発光スペクトルを得ることにより、金属製キャニスタ6の表面に付着する微量成分を特定しかつその濃度を求める。
【0064】
ここで、分光器を含めた解析装置21は、コンクリートキャスク26から離れた位置に設置し解析を行う。このように、光伝送部33以外はコンクリートキャスク26から離れて測定が可能なスタンドオフなシステムで測定を行えば、点検時における点検者のコンクリートキャスク26への接近時間を短縮できる可能性がある。また、中空管23から成る光伝送部33は、コンクリートキャスク26の蓋の上に載置されたスコープ駆動系25によって、金属製キャニスタ6の表面に沿って昇降自在に設けられている。また、この光伝送部33は、回転可能に構成されているコンクリートキャスク26の蓋を回転させることにより、スコープ駆動系25ごと金属製キャニスタ6の周りを回転移動するように設けられている。したがって、コンクリートキャスク26の蓋を回転とスコープ駆動系25による光伝送部33の昇降とによって、金属製キャニスタ6の全外周面に付着する塩分を必要に応じて除去し尚かつ計測することができる。しかし、実際には、全周検査が手間なので、SCCが最も発生しやすい溶接箇所のみを検査することが好ましい。
【0065】
光伝送部33は、図2あるいは図3に示すように中空管23にレーザー光伝送用の光学系と発光計測用の光学系とを内蔵したものであり、検査対象である金属即ち金属製キャニスタ6の表面に対向する照射部24の先端開口部に金属表面と密着するシール部材28が具備されており、レーザー照射時に、シール部材28と金属製キャニスタ6の表面(金属表面)とが密着することで、照射点を固定すると同時に中空管内を減圧可能とされている。シール部材28としては、例えばOリングゴムなどが用いられる。
【0066】
ここで、レーザー光伝送用の光学系と発光計測用の光学系とは、例えば図2に示すように、集光用レンズ7と、レーザー光11の波長のみを反射しレーザー光11を金属表面6に照射する波長選択型ミラー29とを含むレーザー光伝送用の光学系と、金属表面6に付着する微量成分のアブレーションにより生じたプラズマ発光を波長選択型ミラー29の背後に配置されて波長選択型ミラー29を透過したプラズマ発光を反射させる波長に依存しない反射ミラー30を含む発光計測用の光学系とを中空管23の内部に備え、中空管23内をレーザー光とプラズマの発光とが伝搬されるようにしても良い。
【0067】
また、レーザー光伝送用の光学系と発光計測用の光学系とは、例えば図3に示すように、光ファイバで構成するようにしても良い。この場合には、光伝送部33の中空管23の先端のL形に屈曲した形状に沿ってレーザー光伝送用光ファイバ31と発光計測用光ファイバ32の先端面が各々金属表面と対向するように曲げられて配置されている。
【0068】
また、光伝送部33は、図示していないが、中空管23を用いずに、むき出しとなったレーザー光伝送用の光ファイバ31と、発光計測用の光ファイバ32のみで構成するようにしても良い。この場合には、各光ファイバ31,32はコンクリートキャスク26の外に配置される巻き取り用ドラムになどに巻き取られてコンクリートキャスク26内の金属製キャニスクとの間の狭隘な空間27に吊り下げられ、金属表面と対向するようにケーブル先端が曲げられた状態で上下動されるように設けられる。
【0069】
図1〜図3に例示される光伝送部33の場合、金属表面と平行に第2のレーザー光を照射する構成を採ること難しいケースもあるので、シングルパルス方式とすることが好ましいが、場合によっては同じ光学系あるいは光ファイバを用いたダブルパルス方式とすることも可能である。例えば、同軸に配置された二つのレーザー光11,12の間で焦点位置をずらしたり、また第2のレーザー光12を金属表面に対して斜交させることにより照射面の大きさを変えることで、ピークパワー上限値以下となるようにレーザー光のエネルギと照射面の面積を調整することでも同様の効果を得ることができる。さらに、2回目のレーザー光のレーザーエネルギーを下げることによっても同様の効果が得られる。具体的には、2回目も追加熱用として材料をアブレーションさせる場合は、1回目も2回目も同じ強さ、あるいは1回目に対し2回目が弱いというピークパワーの配分によっても、金属表面の損傷を招くことなくプラズマが生成されて測定感度を上げることができる。さらに、中空管23の先端開口部のシール部材28をキャニスタ6の表面に密着させると共に基端側を真空ポンプなどに接続して中空管23内を真空化することにより、空気のプラズマ化を抑制できるので、付着微量成分からのプラズマのみが発生し、計測精度を向上させることができる。
【0070】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば本実施形態では、第1のレーザー1と第2のレーザー2とを時間差を与えて照射するダブルパルスについて主に説明したが、これに特に限られるものではなく、検査対象である金属表面に1パルスのレーザー光を照射して付着物質をアブレーションし、アブレーションによりプラズマ化された物質からの発光を受光素子で撮像して発光スペクトルを求め、この発光スペクトルから付着物質濃度を測定するようにしても良い。
【0071】
また、ダブルパルスによる場合、2つのレーザー光11,12は互いに直交するように照射させるように配置するものに限られる必要は無く、図示していないが、例えば同軸に配置された二つのレーザー光11,12の間で焦点位置をずらしたり、また第2のレーザー光12を金属表面に対して斜交させることにより照射面の大きさを変えることで、ピークパワー上限値以下となるようにレーザー光のエネルギと照射面の面積を調整することでも同様の効果を得ることができる。しかも、同軸に配置する場合には装置の構成が簡便となる利点がある。さらに、2回目のレーザー光のレーザーエネルギー(J)を下げることによっても同様の効果が得られる。具体的には、2回目も追加熱用として材料をアブレーションさせる場合は、1回目も2回目も同じ強さ、あるいは1回目に対し2回目が弱いというピークパワーの配分によっても、金属表面の損傷を招くことなくプラズマが生成されて測定感度を上げることができる。
【0072】
また、金属製キャニスタ6の外表面とコンクリートキャスク26の内周面との間に設けられ、レーザー光伝送用の光学系の照射部24を支持すると共に、照射部24と金属製キャニスタ6の外表面との間隔を一定に維持する走行手段36を設けても良い。この場合の例を図28〜図33に示す。なお、図1〜図4に記載された構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付し、それらの説明を省略する。
【0073】
本実施形態では、耐熱ケース37内にレーザー光伝送用の光学系の光ファイバ31の先端を挿入すると共に、レンズやミラー等の光学部品を収容することで光伝送部33の照射部24を構成している。
【0074】
耐熱ケース37は高放射線・高温による光学機器の損傷を出来る限り低減するために密閉構造とし、鉄などの高原子番号の素材とアクリルなどの低原子番号の素材を組み合わせた構造等が挙げられる。また、さらなる冷却が必要な場合には、耐熱ケース37内部にファンを設置して空冷を行うか、冷却水を満たして循環水冷を行うようにしても良い。冷却水を用いる場合には、冷却水が高速中性子線を熱中性子に減速させるため、中性子線による光学機器の損傷が低減される。さらに、耐熱ケース37にはレーザー照射と発光計測用のために石英窓37aが具備される。
【0075】
キャスク蓋26aの上部に照射部24を挿入させる貫通穴を具備した装置挿入用固定台38を設置する。この装置挿入用固定台38の上に、挿入する照射部24を昇降する装置39を設置する。昇降装置39としては、例えばワイヤーロープを用いた巻き取り式クレーンやガイドレールを用いた駆動装置等が挙げられる。ただし、これらに限られるものではない。本実施形態では、昇降装置39としてワイヤーロープ41を用いた巻き取り式クレーンを採用している。ワイヤーロープ41は耐熱ケース37の上部に接続されている。このような照射部24を吊り下げる方式を用いる場合、吊り下げられる機器の小型化と軽量化を行うことが可能となり、狭隘部27を長ストローク移動させても、照射部24のふらつきが抑えられる。
【0076】
また、照射部24の位置(高さ)を把握するために、レーザー測距計などの距離計40を固定台38に設置する。これにより、照射部24を正確に上下方向に駆動させることが可能になる。ただし、距離計40を設ける代わりに、例えばワイヤーロープ41の繰り出し量に基づいて照射部24の位置を把握するようにしても良い。
【0077】
耐熱ケース37の下には、耐熱ケース37のふらつきを抑えて金属製キャニスタ6との間隔を所定距離に維持する走行手段36が取り付けられている。本実施形態の走行手段36は、車輪42および台車43を備えている。台車43は耐熱ケース37の底面に取り付けられ、金属製キャニスタ6の表面6a(相手側面)を転動する車輪42と、コンクリートキャスク26の内周面26b(相手側面)を転動する車輪42が取り付けられている。各車輪42はサスペンションによって相手側面に押し付けられている。車輪42は例えばキャスターであり、照射部24の動きに追従して向きを変える。金属製キャニスタ6側の車輪42とコンクリートキャスク26側の車輪42との間隔は、狭隘部27の間隔(金属製キャニスタ6の表面6aとコンクリートキャスク26の内周面26bとの間隔)に合わせて調整可能となっている。
【0078】
本実施形態では、車輪42の数を金属製キャニスタ6側:2輪(水平に並べる)、コンクリートキャスク26側:1輪としており、緩やかな曲率を持つ金属製キャニスタ6の表面6a又はコンクリートキャスク26の内周面26bの転動に適した構成となっている。ただし、車輪42の数はこれに限られるものではなく、例えば金属製キャニスタ6側:コンクリートキャスク26側を2輪:2輪、1輪:1輪、1輪:2輪としても良く、その他でも良い。
【0079】
照射部24の上下方向の移動は昇降装置25によって行われ、水平方向(金属製キャニスタ6周方向)の移動はコンクリートキャスク26のキャスク蓋26aを回転させることで行われる。即ち、照射部24を吊り下げるワイヤーロープ41を垂直方向及び水平方向に動かすことで、照射部24は走行手段36を走行させながら所望の位置に移動される。このとき、走行手段36の各車輪42はサスペンションによって金属製キャニスタ6又はコンクリートキャスク26に押し付けられており、謂わば金属製キャニスタ6とコンクリートキャスク26との間を突っ張る構成であり、照射部24の揺れが抑制される。
【0080】
ただし、照射部24を移動させる手段としては、ワイヤーロープ41による垂直方向及び水平方向への牽引に限るものではない。例えば、車輪42を回転駆動させるモータと車輪42の向きを変えるモータを台車43に設け、無線通信又は有線通信による遠隔操作によって各車輪42の向きと回転駆動を制御して照射部24を所望の位置まで移動させるようにしても良い。
【0081】
図30にレーザー光および発光の伝送方法の一例を示す。コンクリートキャスク26の外部に設置してあるレーザー1,2および解析装置21と照射部24との間を光伝送させるために、レーザー光伝送用光ファイバ31と発光計測用光ファイバ32を束ねたもの(バンドルファイバ44)を用いる。本実施形態では、1本のレーザー光伝送用光ファイバ31の周囲に複数の発光計測用光ファイバ32を配置している。各光ファイバ31,32の先端はフェルール45内に挿入され固定されている(図31)。フェルール45は耐熱ケース37に固定されている。本実施形態では、レーザー光伝送用光ファイバ31で伝送されたレーザー光11,12は、凸レンズ46で集光されて、全反射ミラー47で90度方向を変えた後に石英窓37aから金属製キャニスタ6の表面に対して垂直に照射される。
【0082】
また、本実施形態ではダブルパルス方式を採用しており、レーザーとして、被検査金属6の表面6aにレーザー光11を照射して付着物質をアブレーションする第1のレーザー(アブレーション用レーザー)1と、第1のレーザー光11でアブレーションされた物質の雰囲気(アブレーションプルーム)19に第2のレーザー光12を照射してプラズマ化を促進する第2のレーザー2を備えている。また、本実施形態では、第1のレーザー光11と第2のレーザー光12とを同一の光ファイバ31で伝送している。そのため、光カプラや偏光ビームスプリッタなどの光学素子48を用いてレーザー光11,12を重畳させて光ファイバ31に入射する。
【0083】
金属製キャニスタ6の表面で生じたプラズマ発光は、レーザー光11,12と逆の光路(石英窓37a→全反射ミラー47→凸レンズ46→バンドルファイバ44)を辿ってバンドルファイバ44に集光される。そして、発光は発光計測用光ファイバ32で伝送されて解析装置21の分光器4に入射される。このように、照射と受光の光路を同じにすることにより、レーザーが集光する面と受光面との位置ずれが原理的に無くなり、光学部品点数の削減により照射部24の小型化が可能となる。なお、ここではダブルパルス方式を採用した例について説明したが、シングルパルス方式を採用しても良いことは勿論である。
【0084】
また、図32にレーザー光および発光の伝送方法の他の例を示す。図30に示す部材と同一の部材については同一の符号を付してある。図30の例と比較すると、レーザー照射の照射方向に違いがある。金属製キャニスタ6の表面に垂直に照射される第1のレーザー光11により金属製キャニスタ6の表面に付着した塩分をプラズマ化し、金属製キャニスタ6の表面に平行に照射される第2のレーザー光12によりプラズマを再励起させる。平行に照射される第2のレーザー光12は、軸外し楕円鏡49により集光させる。図30では、プラズマ生成用のレーザー光(第1のレーザー光)11と再励起用のレーザー光(第2のレーザー光)12は同じ光ファイバ31を伝送することになるが、図32の方式ではそれぞれ別の光ファイバ31,31を用いる。これにより、再励起用のレーザー光12は金属製キャニスタ6の表面に照射されないため、金属製キャニスタ6への損傷を気にせずにレーザー光強度を高く設定することが可能となる。また、光ファイバ1本当たりが受けるレーザー光による熱損傷を低減することが可能となる。
【0085】
この例では、耐熱ケース37の石英窓37aは斜めに設けられており、再励起用のレーザー光12が石英窓37aから耐熱ケース37外に照射されてアブレーションプルーム19(図示省略)に当たる構成になっている。
【0086】
この例でも、第1のレーザー光11を伝送する1本のレーザー光伝送用光ファイバ31の周囲に複数の発光計測用光ファイバ32を配置したバンドルファイバ44を使用している。なお、第2のレーザー光12は1本のレーザー光伝送用光ファイバ31によって伝送される。第2のレーザー光12を伝送する光ファイバ31の先端はフェルール50内に挿入され、軸外し楕円鏡49に向けて固定されている(図33)。
【0087】
照射部24に走行手段36を設けることで、照射部24を移動させても金属製キャニスタ6の表面6aとの間隔を一定に維持することができ、照射部24の揺れを防止することができる。そのため、照射部24と金属製キャニスタ6の表面6aとの距離が変化してレーザー光11,12の焦点と金属製キャニスタ6の表面6aとの位置関係が当該表面6aの垂直方向にずれたり、レーザー光11,12の照射方向がずれてしまうのを防止することができ、別の位置の計測においてもアブレーションを良好に行うことができる。
【0088】
さらに、本実施形態においては金属表面に付着する微量成分例えば塩分をプラズマ化して発光を得る手法としては、レーザー照射を挙げて主に説明したが、これに特に限られるものではなく、例えば電気的な方法によっても良い。例えば、スパークプラグや針電極を用いてギャップ放電を行うことによりプラズマを生成させることが可能であり、レーザー照射部を電極に置き換えるだけでレーザー系、受光系などのその他の装置の基本構成に変更を必要としない。
【0089】
さらに、本実施形態では、コンクリートキャスクに収容された金属製キャニスタの表面に付着した塩分の濃度を求める場合について主に説明したが、これに特に限られるものではく、広く金属全般に適用できるものであって、金属表面に付着するあらゆる微量成分の有無とその濃度を求めることができる。しかも、この金属表面は、狭隘な空間に面しているものに限られず、開放された空間に面するものに対しても適用可能である。また、本実施形態では、金属表面に付着した塩分に対し、濃度0.1 g/m程度の感度があることを確認し、また任意の元素の発光強度による付着物質(塩分)濃度の定量化を行うことについて主に説明しているが、場合によっては例えば金属製キャニスタの塩分に起因する応力腐食割れの発生の可能性を判定する指標値(閾値)を定め、それを越えているか否かの判断を行うようにしても良い。
【実施例1】
【0090】
金属表面の微量付着成分の検出感度と濃度測定について確認する実験を行った。ダブルパルス方式の実験配置図を図4に示す。第1及び第2のレーザー1,2は2台のQスイッチNd:YAGレーザー(Continuum社製,Powerlite8010)であり、パルス繰り返し周波数10Hzで、第1のレーザー1はエネルギー30mJ、第2のレーザー2はエネルギー100mJのレーザー光を発生する。レーザー照射のタイミングは1台のタイミングコントローラー3により制御される。第1のレーザー1の出射光11は対象物(サンプル)6に垂直に入射され、焦点距離250mmのレンズ7によりサンプル6上に集光され、アブレーションプラズマプルーム19を生成する。第2のレーザー2の出射光12はサンプル6に平行に入射され、焦点距離250mmのレンズ8を用いて第1のレーザー1により生じたプラズマプルーム19に集光される。プラズマプルーム19からの発光は、第1のレーザー1の集光点から150mmの位置に設置した直径50mm、焦点距離150mmのレンズ14aにより平行光にされ、焦点距離200mmのレンズ14b、シャープカットフィルター15を通した後、光ファイバヘッド16に集光されて、光ファイバ17で伝送される。その後、分光器(Jobin Yvon社製,HR460)4により分光され、ICCDカメラ5により受光される。ICCDカメラ5はレーザー発振と同期した信号によりゲート遅延時間やゲート幅の操作が可能である。尚、図中の符号9,10は反射ミラー、20は移動ステージである。
【0091】
(実験方法)
本実験では、2台のNd:YAGレーザー装置1,2から第二高調波(532nm)を発振させ、図4に示すように30mJの第1のレーザー光11をSUS304L板(金属板6)表面に対して垂直に入射させ、100mJの第2のレーザー12を平行に入射させた。第1及び第2のレーザー光11,12は、アブレーションをさせるために両方とも凸レンズ7,8で集光させ、第1のレーザー光11はSUS304L板表面の塩分を蒸発(アブレーション)するために、第2のレーザー光12はアブレーションされた塩分を追加熱するために用いた。アブレーションにより生成されたプラズマ19の発光13を計測するために、平凸レンズ14a,14bと低波長側を遮るシャープカットフィルタ15からなる受光系を構築し、光ファイバ17と分光器4を介してICCDカメラ5にて受光した。集光された第1のレーザー光11の直径は、およそ0.5mm程度であり、照射位置により塩分濃度のばらつきがあるため複数箇所を照射し、照射ごとの発光強度の積算平均を求めて濃度と比較した。そのために、移動ステージ20を用いて照射の際に金属板6を移動させ、照射ごとに位置を変更しながら発光を計測した。今回は1回の計測にて、20ショットの発光強度をパソコン18で積算平均した。
【0092】
本実験では、霧状に均一に人工海水(成分は表1参照)が噴霧されたSUS304Lを使用した。図5に噴霧されたSUS304Lの全体写真とレーザー照射箇所の様子を示す。SUS304Lは、移動しながらレーザーにより照射されるため、図のような横一列の照射痕が1回の計測に相当する。
【0093】
【表1】

計測方法は、後述のとおりレーザー1のみを用いる方法(シングルパルス)とレーザー1と2を同時に用いる方法(ダブルパルス)をそれぞれ行った。
【0094】
(実験結果)
図6および図7にレーザー照射後の様子を示す。塩分は、レーザー光の周辺付近を中心に除去されている。
【0095】
一般的に、アブレーションにより生成されたプラズマは可視光全域にわたる白色光を発することが知られている。そのため、測定された発光スペクトルは各元素が励起されることにより放出される光と、白色光の足し合わせになる。また、白色光強度は測定ごとに異なるため、ショットごとにバックグラウンドを考慮する必要がある。そこで、スペクトルピーク近傍のバックラインを基準にして線形近似したベースラインを決定し、各元素に起因する発光強度を図8のように評価した。また、発光スペクトルから強度を求める際に、平滑化のためにスペクトルを単純移動平均(11点,約0.3nm相当)した。
【0096】
(シングルパルス計測結果)
シングルパルス計測では、図9のようにレーザー1を照射してから1.7msec後にICCDカメラのシャッターを500nsec間開放して発光を計測した。
【0097】
495nm 〜525nmの波長域における発光スペクトルを図10に示す。塩分が付着していないSUS304Lにレーザーを照射した際に得られる発光スペクトルから、クロム(Cr)の輝線(495.48nm,520.60nm)を計測した。これは、若干SUS304LがアブレーションされたことによりCrが励起されたことが原因と考えられる。塩分が付着した場合では、さらにマグネシウム(Mg)の輝線(517.19nm,518.36nm)を計測した。その他の元素の輝線が確認されなかったのは、濃度が低かったためバックグラウンドレベル程度の発光しか得られなかったからと考えられる。830nm〜850nmの波長域では、酸素(O)の輝線(844.60nm)を計測した。Oの輝線が観測されるのは、アブレーションにより生成されたプラズマによって空気中のOが励起されたと考えられる。また、塩分が付着した場合では、塩素(Cl)の輝線(833.31nm,837.59nm)を計測した。シングルパルスの結果より、表2に示す通りSUS304Lおよび付着した塩分、空気からの発光スペクトルが得られることがわかった。
【0098】
【表2】

【0099】
次に、濃度の異なるSUS304Lに対してレーザーを照射して得られた発光スペクトルを図12および図13に示す。一般的に、濃度の高い元素ほど発光強度が高くなるが、830nm 〜850nmの波長域では、逆に濃度が高いほど発光強度は顕著に低くなった。
【0100】
図14および図15、図16にClとMgおよびCrの発光強度の濃度依存性を示す。図中のエラーバーは、5回の測定の標準偏差を表している。濃度0.0 g/mではClとMgが存在しないため発光はバックグラウンドレベルであるが、0.1 g/mから顕著に発光強度が高くなるため、0.1 g/m程度の感度はあると評価できる。そして、濃度が高いほど発光強度は低下して0.8g/m以上で飽和する傾向にある。Mgの発光強度がClのそれに比べて100倍程度高いのは、励起されるClのエネルギー準位が高いためである。ClとMgの発光強度の濃度依存性が若干異なるのは、プラズマの密度、温度により各元素の励起される原子数が変化するためと考えられる。ClやMgに対して、Crの発光強度は0.1g/mを除いてほぼ濃度に対して減少傾向である。
【0101】
(ダブルパルス計測結果)
シングルパルスの結果を踏まえ、アブレーション効率が下げずにかつ、SUS304Lへの損傷を低減させたままで計測が可能と思われるダブルパルス計測を実施した。本手法はアブレーションさせるためのレーザー光とは別のレーザー光を用いて、SUS304L手前にて空気を電離させプラズマ(以降、エアプラズマ)を生成させる。アブレーションされた元素はエアプラズマにより励起されるため、発光強度が高くなることが期待できる。
ダブルパルスでは、図17のようにレーザー1を照射してから2.0 msec後にレーザー2を照射し、更に1.7msec後にICCDカメラのシャッターを500nsec間開放して発光を計測した。
【0102】
ダブルパルス計測時の発光スペクトルを図19および図18に示す。シングルパルス計測と同様のスペクトルが得られるが、シングルパルス計測と比較して発光強度が高い。また、エアプラズマが生成されるためOの発光強度が他の輝線よりも相対的に高くなる。
図20および図21に発光スペクトルの濃度依存性を示す。図21より、濃度が高くなるとともにOの発光強度が低下する一方、ClやMg, Crの発光強度は高くなる。
【0103】
図22にClの発光強度の濃度依存性を示す。シングルパルス計測と異なり、発光強度は濃度に比例する。このことは、図23のとおりMgの発光強度でも同様である。濃度0.1 g/mの場合の発光強度は濃度 0.0 g/mと比較して3倍程度高いため、本計測方法は濃度0.1g/m程度の感度があるといえる。また、ClおよびMgの発光強度の濃度依存性は、濃度0.8g/m以上に手やや飽和傾向にある。一方、Crの発光強度は図24のように0.0,1.0g/mを除いて一定である。また、図25に示すように、計測対象となる付着微量成分を示す発光線例えば塩分の場合の塩素を示す発光線(833.31nm)の発光強度の酸素の発光線の発光強度に対する比と付着微量成分濃度との相関関係を求めると、グラフの線形性が向上した。そこで、計測時の付着微量成分の発光強度の酸素の発光線の発光強度に対する比から付着微量成分濃度の定量化評価ができるとの知見を得た。これから、付着微量成分の測定の指標として選択した元素と付着微量成分の付着濃度との相関がより精度良く求められるので、濃度の定量化が精度の良いものとなる。
【0104】
次いで、シングルパルスおよびダブルパルス計測結果の結果から示唆されるアブレーションの様相と定量測定に関係する発光強度の濃度依存性について検討する。
パルスレーザーの照射により金属表面の付着物質をアブレーションする本発明では、測定対象を完全にプラズマ化もしくは励起することにより濃度測定を行うことが可能である。しかし本実験の場合、SUS304Lへの損傷を低減するために、レーザー光強度を下げる必要がある。その結果、濃度が高い場合はレーザー光の強度が低いことにより、アブレーション効率が下がり、発光強度と濃度とに比例関係が見られないことが結果より示唆される。一方、ダブルパルスの結果では発光強度と濃度とに比例関係が見られる。このことから、シングルパルス計測にて発光強度と濃度が比例しなかったのは、レーザーにより全ての粒子が励起されていないことが原因と考えられる。本実験の条件ではレーザー光強度が低いため、図26に示すようにレーザーによりはじき出された粒子のうちの一部はプラズマ化しないと考えられる。このような粒子は、濃度の上昇とともに増加するので図27のように相対的に発光強度が低下してしまう。一方、エアプラズマがアブレーションされた粒子を全て励起させると仮定すると、ダブルパルスの場合はそれらの粒子も全て励起させるため、発光強度が濃度に比例すると考えられる。このことから、SUS304Lへの損傷を低減させずに濃度を測定するためには、ダブルパルスが適切であるといえる。
【0105】
一方、シングルパルス計測は、最も計測システムが単純であり、濃度0.1 g/m程度の感度があると評価できる。しかし、発光強度と塩分濃度とに比例関係が見られなくなるため、定量測定を行うのが困難である。ダブルパルス計測も同様に、発光強度が濃度に対して線形ではなくやや飽和する傾向にある。定量測定を精度良く行うには、図25のグラフに示すような、計測対象となる付着微量成分を示す発光線の発光強度の酸素の発光線の発光強度に対する比と付着微量成分濃度との相関関係を求めて発光強度と濃度とに線形性が見られるようにすることが好ましい。また、金属表面のレーザー照射面とレーザー光伝送用光学系と発光計測用光学系とを含む光伝送部内を、少なくともレーザー照射時に真空化することにより、空気のプラズマ化を抑制して付着微量成分のプラズマのみを発生させることによっても、計測精度を向上させうる。
【0106】
他方、塩分濃度が同じであっても、濃度に相当する発光強度が、空気雰囲気(温度や組成)によって変化することが考えられる。また、SUSの温度によりアブレーションされる量が変化するため、常温での測定と比較して感度に違いが見られることが予想される。その場合には、キャスク内に濃度が既知のサンプルを設置して感度補正を行うか、予め発光強度の特徴各種パラメータの依存性を明らかにする必要がある。
【0107】
以上、パルスレーザーの照射により金属表面の付着物質をアブレーションする本発明による表面塩分濃度の非接触測定を行った結果、シングルパルスおよびダブルパルス計測の両方法において表面塩分濃度0.1 g/m程度の塩素に対する測定感度があることが確認された。また、SUS304Lへの損傷を低減させるためにレーザー光強度を下げて実験を行った結果、シングルパルス計測では発光強度と濃度とに比例関係が見られなかったが、濃度0.1 g/m程度の感度があることが判明した。一方、ダブルパルス計測では両者がほぼ比例関係であり、感度補正などを考慮することにより、濃度の定量測定を行うことが可能であることが判明した。
【符号の説明】
【0108】
1 第1のレーザー
2 第2のレーザー
3 時間差を与えるコントローラ
4 分光装置
5 ゲート機能を有する受光素子(ICCDカメラ)
6 検査対象となる微量成分が付着した金属表面
11 第1のレーザー光
12 第2のレーザー光
13 発光
17 光ファイバ
18 パソコン
19 アブレーションプルーム
21 解析装置
22 光ファイバー
23 中空管
24 照射部
25 スコー部駆動系
26 コンクリートキャスク
27 狭隘部
28 ゴム
29 反射ミラー(レーザー光の波長にのみ依存する)
30 全反射ミラー(波長に依存しない)
31 レーザー光伝送用光ファイバー
32 発光計測用光ファイバ
36 走行手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属表面に付着している微量成分の濃度を測定する方法において、検査対象である前記金属表面にパルス状のレーザー光を照射して付着物質をアブレーションし、その後前記アブレーションによりプラズマ化された物質からの発光を計測し、分光することにより、前記金属表面に付着する微量成分の特定と濃度を求める金属表面付着成分の濃度計測方法。
【請求項2】
狭隘な空間に面している金属表面に付着している微量成分の濃度を計測する方法において、前記狭隘な空間の外に少なくともレーザーと分光手段と受光素子及び前記レーザーと前記受光素子を制御するコントローラを備える濃度計測装置本体を配置し、前記狭隘な空間に前記金属表面に沿って挿入される光伝送部を介して前記金属表面にレーザー光を照射して付着物質をアブレーションすると共にプラズマ化し、前記プラズマ化された物質からの発光を前記光伝送部を介して前記狭隘な空間の外の前記分光手段に導いて分光すると共に受光素子で発光スペクトルを得ることにより、前記金属表面に付着する微量成分の特定と濃度を求める金属表面付着成分の濃度計測方法。
【請求項3】
前記金属表面は使用済み燃料を収容する金属製キャニスタの外表面であり、前記狭隘な空間は前記金属製キャニスタを収容するコンクリートキャスクの内周面との間で形成されるものであることを特徴とする請求項2記載の金属表面付着成分の濃度計測方法。
【請求項4】
前記金属製キャニスタの外表面に照射するレーザー光の照射部を支持する走行手段を前記金属製キャニスタの外表面と前記コンクリートキャスクの内周面との間に設け、前記照射部と前記金属製キャニスタの外表面との間隔を一定に維持することを特徴とする請求項3記載の金属表面付着成分の濃度計測方法。
【請求項5】
前記微量成分は塩分であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の金属表面付着成分の濃度計測方法。
【請求項6】
前記塩分の検出には、837.59nmの塩素の発光線、517.26 nmのマグネシウムの発光線、518.36 nmのマグネシウムの発光線、833.31 nmの塩素の発光線のいずれかを用いることを特徴とする請求項5記載の金属表面付着成分の濃度計測方法。
【請求項7】
前記パルス状のレーザー光の照射は複数回行われることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の金属表面付着成分の濃度計測方法。
【請求項8】
前記パルス状のレーザー光の照射は、前記金属表面に向けて照射し前記金属表面に付着している微量成分をアブレーションさせる第1のステップと、前記アブレーションにより形成されたプラズマに向けて前記金属表面と平行に照射され前記第1のステップで励起されなかった粒子を励起する第2のステップとで構成されることを特徴とする請求項7記載の金属表面付着成分の濃度計測方法。
【請求項9】
前記第1のステップで照射するレーザー光は前記第2のステップで照射するレーザー光よりも弱く、少なくとも計測対象となる付着微量成分を前記金属表面からはじき出すのに十分なものであり、前記第2のステップで照射するレーザー光は前記第1のステップではじき出された前記付着微量成分を励起して発光させるに十分なものであることを特徴とする請求項7または8に記載の金属表面付着成分の濃度計測方法。
【請求項10】
計測対象となる前記付着微量成分を示す発光線の発光強度の酸素の発光線の発光強度に対する比と前記付着微量成分濃度との相関関係を求め、計測時の前記付着微量成分の発光強度の酸素の発光線の発光強度に対する比から前記付着微量成分濃度を求めることを特徴とする請求項1から9のいずれか1つに記載の金属表面付着成分の濃度計測方法。
【請求項11】
プラズマ化された物質からの発光の計測とその直前のレーザー光の照射との間に1μs〜10μsの時間差を与えるものである請求項1から10のいずれか1つに記載の金属表面付着成分の濃度計測方法。
【請求項12】
前記第1のステップで照射するレーザー光と前記第2のステップで照射するレーザー光との間に0.5μs〜5μsの時間差を与えるものである請求項8から11のいずれか1つに記載の金属表面付着成分の濃度計測方法。
【請求項13】
被検査金属の表面にレーザー光を照射して付着物質をアブレーションすると共にプラズマ化するに十分なピークパワーのレーザーと、前記プラズマ化された物質からの発光を計測し波長毎に分解する分光手段と、前記分光手段を経て分光された前記プラズマ化された物質からの発光を受光し発光スペクトルを得るゲート機能を有する受光素子と、前記レーザー及び前記受光素子のゲート開放開始時間との間の時間差を制御するコントローラとを備える金属表面付着成分の濃度計測装置。
【請求項14】
狭隘な空間に面している金属表面に付着している微量成分の濃度を計測する装置において、少なくともレーザーと分光手段と受光素子及び前記レーザーと前記受光素子を制御するコントローラを備え前記狭隘な空間の外に配置される濃度計測装置本体と、レーザー光伝送用の光学系と発光計測用の光学系とを含み前記狭隘な空間に前記金属表面に沿って挿入される光伝送部とを備え、前記光伝送部を介して前記金属表面にレーザー光を照射して付着物質をアブレーションすると共にプラズマ化し、前記プラズマ化された物質からの発光を前記光伝送部を介して前記狭隘な空間の外の前記分光手段に導いて分光すると共に前記受光素子で発光スペクトルを得ることにより、前記金属表面に付着する微量成分の特定と濃度を求める金属表面付着成分の濃度計測装置。
【請求項15】
前記金属表面は使用済み燃料を収容する金属製キャニスタの外表面であり、前記狭隘な空間は前記金属製キャニスタを収容するコンクリートキャスクの内周面との間で形成されるものであることを特徴とする請求項14記載の金属表面付着成分の濃度計測装置。
【請求項16】
前記金属製キャニスタの外表面と前記コンクリートキャスクの内周面との間に設けられ、前記レーザー光伝送用の光学系の照射部を支持すると共に、前記照射部と前記金属製キャニスタの外表面との間隔を一定に維持する走行手段を備えることを特徴とする請求項15記載の金属表面付着成分の濃度計測装置。
【請求項17】
前記レーザは前記被検査金属表面にレーザー光を照射して付着物質をアブレーションする第1のレーザーと、前記第1のレーザー光でアブレーションされた物質にレーザー光を照射してプラズマ化する第2のレーザーとから成り、前記コントローラは前記第1レーザー、第2レーザー及び前記受光素子のゲート開放開始時間との間の時間差を制御するものである請求項13から16のいずれか1つに記載の金属表面付着成分の濃度計測装置。
【請求項18】
前記光伝送部は中空管であり、レーザー光伝送用の光学系と発光計測用の光学系とを内蔵すると共に前記金属表面に対向する先端開口部に前記金属表面と密着するシール部材が具備されており、レーザー照射時に、前記シール部材と前記金属表面とが密着することで、照射点を固定すると同時に中空管内を減圧可能とするものである請求項14から17のいずれか1つに記載の金属表面付着成分の濃度計測装置。
【請求項19】
前記レーザー光伝送用の光学系と発光計測用の光学系とは、光ファイバであり、各光ファイバの先端面が前記金属表面と対向するように配置されているものである請求項18に記載の金属表面付着成分の濃度計測装置。
【請求項20】
前記中空管には、集光用レンズと、レーザー光の波長のみを反射しレーザー光を前記金属表面に照射する波長選択型ミラーとを有するレーザー光伝送用の光学系と、金属表面に付着する微量成分のアブレーションにより生じたプラズマ発光を前記波長選択型ミラーの背後に配置され前記波長選択型ミラーを透過したプラズマ発光を反射させる波長に依存しない反射ミラーを備える発光計測用の光学系とを備え、前記中空管内をレーザー光とプラズマの発光とが伝搬されることを特徴とする請求項18記載の金属表面付着成分の濃度計測装置。
【請求項21】
前記光伝送部は、レーザー光伝送用の光ファイバと、発光計測用の光ファイバとから成り、各光ファイバの先端面が前記金属表面と対向するように配置されているものである請求項13から17のいずれか1つに記載の金属表面付着成分の濃度計測装置。
【請求項22】
前記受光素子のゲート開放開始とその直前のレーザー光の照射との間に1μs〜10μsの時間差を与えるものである請求項13から21のいずれか1つに記載の金属表面付着成分の濃度計測装置。
【請求項23】
前記第1のステップで照射するレーザー光と前記第2のステップで照射するレーザー光との間に0.5μs〜5μsの時間差を与えるものである請求項13から22のいずれか1つに記載の金属表面付着成分の濃度計測装置。

【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図28】
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【図31】
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【図33】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図17】
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【図20】
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【図21】
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【図26】
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【図27】
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【図29】
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【図30】
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【図32】
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【公開番号】特開2012−32388(P2012−32388A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144134(P2011−144134)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年1月9日 社団法人レーザー学会発行の「レーザー学会学術講演会第31回年次大会 講演予稿集」に発表
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】