説明

金属表面処理剤、表面処理鋼材及びその表面処理方法、並びに塗装鋼材及びその製造方法

【課題】金属、特に金属被覆鋼材用として最適であり、クロムを含まず、塗料などのコーティングの前処理として、優れた加工性、密着性、耐食性を付与することができるノンクロメート金属表面処理剤、該処理剤により表面処理された表面処理鋼材及びその表面処理方法、並びにその上に上層被膜を有する塗装鋼材及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】配位性官能基を含有するシランカップリング剤必須成分とし、これを水及び/又は有機溶媒に溶解してなることを特徴とする金属表面処理剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷延鋼材、熱延鋼材、ステンレス鋼材、更に電気亜鉛めっき鋼材、溶融亜鉛めっき鋼材、亜鉛−アルミニウム合金系めっき鋼材、亜鉛−鉄合金系めっき鋼材、亜鉛−マグネシウム合金系めっき鋼材、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金系めっき鋼材、アルミニウム系めっき鋼材、アルミニウム−シリコン合金系めっき鋼材、錫系めっき鋼材、鉛−錫合金系めっき鋼材、クロム系めっき鋼材、ニッケル系めっき鋼材等の塗装鋼材用等として好適な金属表面処理剤、該処理剤により表面処理された表面処理鋼材及びその表面処理方法、並びにその上に上層被膜を有する塗装鋼材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属の表面処理剤として、クロメートやリン酸クロメート等のクロム系表面処理剤が使用されており、現在でも広く使用されている。しかしながら、最近の環境規制の動向を伺うに、クロムの有する毒性、特に発がん性のために将来的には使用が制限される可能性がある。そこで、クロムを含まずにクロメート処理剤と同等の密着性、耐食性を有する金属表面処理剤の開発が望まれていた。
【0003】
特開平11−29724号公報(特許文献1)では、水性樹脂にチオカルボニル基含有化合物とリン酸イオン、更に水分散性シリカを含有するノンクロムの防錆処理剤が提案されている。しかし、この系は耐食性に優れるが、加工性及び基板との密着性が十分ではない。特開平8−73775号公報(特許文献2)では、2種類のシランカップリング剤を含む酸性表面処理剤が開示されているが、この系は、金属表面を処理した後に高い耐食性と加工性が要求される場合には耐食性が不足している。
【0004】
これらに関連して、特開2001−316845号公報(特許文献3)では、シランカップリング剤、水分散性シリカ、ジルコニウム又はチタニウムイオンを必須成分とするノンクロメート金属表面処理剤を開示しており、耐食性と加工性を改善しているが、基材への塗工性、並びに上層被膜との密着強度等の点では不十分である。
【0005】
特開平10−60315号公報(特許文献4)では、水系エマルションと反応する特定官能基を有するシランカップリング剤を含有する鋼構造物用表面処理剤が開示されているが、この場合、要求されている耐食性は湿潤試験のような比較的マイルドな試験に対してのみであり、本発明のような過酷な耐食性試験に耐えるような金属表面処理剤と比べると、耐食性が不足している。
【0006】
特開2000−297093号公報(特許文献5)には、イミダゾール基含有有機ケイ素化合物を金属等の表面処理剤に用いることが記載されているが、耐食性や深絞り性等において十分満足なものではなかった。
【0007】
特開2007−297648号公報(特許文献6)では、水系エマルションと3価遷移金属イオンにβ−ジケトン2分子と水2分子とが配位した化合物、シランカップリング剤を含有する防錆用表面処理剤が開示されており、3価遷移金属錯体が乾燥により難溶性化合物となることで防錆能、塗膜密着能を発現させるという点において特徴的であるものの、要求されている耐食性は本発明のような過酷な環境に耐えるようなものではなく、改良すべき余地が十二分に有るものであった。
【0008】
以上のことから、薄膜で耐食性、加工密着性、塗工性、接着強度などの諸性質を高次元で発現するような金属表面処理剤の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−29724号公報
【特許文献2】特開平8−73775号公報
【特許文献3】特開2001−316845号公報
【特許文献4】特開平10−60315号公報
【特許文献5】特開2000−297093号公報
【特許文献6】特開2007−297648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、金属、特に金属被覆鋼材用として最適であり、クロムを含まず、塗料などのコーティングの前処理として、優れた加工性、密着性、耐食性を付与することができるノンクロメート金属表面処理剤、該処理剤により表面処理された表面処理鋼材及びその表面処理方法、並びにその上に上層被膜を有する塗装鋼材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、耐食性発現に有効な配位性官能基及びシロキサン結合により被塗物金属表面と結合するような反応性シリル基を有する有機ケイ素化合物を防錆剤の必須成分とすることで、クロムフリーであり、耐食性、加工密着性、塗工性、接着強度に優れた金属表面処理剤が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
従って、本発明は、下記に示す金属表面処理剤、表面処理鋼材及びその表面処理方法、並びに塗装鋼材及びその製造方法を提供する。
[請求項1]
下記一般式(3)
【化1】

(式中、Rは加水分解性基であり、R’は炭素数1〜4のアルキル基であり、Aは直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜6のアルキレン基であり、Xは酸素原子又は硫黄原子であり、Zは−NH−、酸素原子又は硫黄原子であり、R8〜R11はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基もしくはフルオロアルキル基、又はアミノ基であり、またR9とR10が直接結合して該置換基が結合する炭素間で二重結合を形成してもよく、さらにR8とR11でこれらが結合する炭素原子と共に脂肪族又は芳香族環骨格を形成してもよい。mは1〜3の整数であり、nは0〜3の整数である。)
で示される有機ケイ素化合物を必須成分とし、これを水、有機溶媒、又は水と有機溶媒の混合溶媒に溶解してなることを特徴とする金属表面処理剤。
[請求項2]
更に、下記一般式(14)
20xSi(OR214-x (14)
(式中、R20は炭素数1〜20の非置換又は置換の一価炭化水素基、R21は炭素数1〜8の非置換又は置換一価炭化水素基を示し、xは0〜3の整数である。)
で示されるアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物を含むことを特徴とする請求項1記載の金属表面処理剤。
[請求項3]
更に、有機チタン酸エステル類を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の金属表面処理剤。
[請求項4]
更に、水分散性シリカ又は有機溶媒分散性シリカを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の金属表面処理剤。
[請求項5]
更に、Fe,Zr,Ti,V,W,Mo,Al,Sn,Nb,Hf,Y,Ho,Bi,La,Ce及びZnから選択されるいずれか1種以上の金属の化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の金属表面処理剤。
[請求項6]
更に、チオカルボニル基含有化合物を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の金属表面処理剤。
[請求項7]
更に、水溶性もしくは水分散性樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の金属表面処理剤。
[請求項8]
更に、リン酸イオンを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の金属表面処理剤。
[請求項9]
鋼材の表面を請求項1〜8のいずれか1項記載の金属表面処理剤で表面処理することを特徴とする鋼材の表面処理方法。
[請求項10]
鋼材が金属被覆鋼材である請求項9記載の表面処理方法。
[請求項11]
請求項9又は10記載の方法で得られる表面処理鋼材。
[請求項12]
請求項1〜8のいずれか1項記載の金属表面処理剤で鋼材を処理した後、更に上層被膜層を設けることを特徴とする塗装鋼材の製造方法。
[請求項13]
請求項12記載の方法で得られる塗装鋼材。
【発明の効果】
【0013】
本発明の金属表面処理剤は、金属(イオン)に対して配位性を有するシランカップリング剤を必須成分とし、被処理金属材及び、他の金属(イオン)成分と該シランカップリング剤が配位結合することで難溶性の錯体を形成し良好な防錆能を発現する他、加水分解性シリル基により、基材及び必要に応じて上層に設ける有機・無機樹脂被膜層との加工密着性に優れるため接着強度が高く、従って得られる塗装鋼材の防錆耐食性が高次元で発現する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の金属表面処理剤は配位性官能基を有する有機ケイ素化合物(シランカップリング剤)を必須成分とし、これを水、有機溶媒又は水と有機溶媒の混合溶媒に溶解してなるものである。
【0015】
[配位性官能基を有する有機ケイ素化合物(シランカップリング剤)]
本発明で用いる有機ケイ素化合物は、下記一般式(1)〜(3)で示されるもので、その1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0016】
【化2】

(式中、Rは加水分解性基であり、R’は炭素数1〜4のアルキル基であり、Aは直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜6のアルキレン基であり、Xは酸素原子又は硫黄原子であり、Yは−NH−又は硫黄原子であり、L1、L2は独立に炭素原子又は窒素原子であり、R1〜R3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基もしくはフルオロアルキル基、又はアミノ基であり、R1とR2又はR2とR3でこれらが結合している炭素原子及びL2と共に環骨格を形成してもよい。mは1〜3の整数であり、nは0〜3の整数である。)
【0017】
【化3】

(式中、R、R’、A、X、m及びnは上記の通りであり、Zは−NH−、酸素原子又は硫黄原子であり、Mは−NH−、酸素原子又は硫黄原子であり、R4〜R7はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基もしくはフルオロアルキル基、又はアミノ基であり、この場合R5とR6が直接結合して該置換基が結合する炭素間で二重結合を形成してもよく、さらにR4とR7でこれらが結合する炭素原子と共に脂肪族又は芳香族環骨格を形成してもよい。)
【0018】
【化4】

(式中、R、R’、A、X、Z、m及びnは上記の通りであり、R8〜R11はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基もしくはフルオロアルキル基、又はアミノ基であり、またR9とR10が直接結合して該置換基が結合する炭素間で二重結合を形成してもよく、さらにR8とR11でこれらが結合する炭素原子と共に脂肪族又は芳香族環骨格を形成してもよい。)
【0019】
ここで、上記式中、Rとしては塩素、臭素等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基が挙げられ、アルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。R’としてはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基が挙げられ、メチル基が好ましい。Aは直鎖状のものとしてはメチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられ、分岐鎖状のものとしてはメタリル基、イソプロピレン基、イソブチレン基等が挙げられ、炭素数1〜3の直鎖状のアルキレン基が好ましく、プロピレン基が特に好ましい。また、R1〜R3としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子で置換したフルオロアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、アミノ基が挙げられ、また、R1とR2又はR2とR3でこれらが結合する炭素原子と共にシクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環を形成してもよい。R4〜R7としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子で置換したフルオロアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、アミノ基が挙げられ、R5とR6が直接結合してこれら置換基が結合する炭素間で二重結合を形成してもよく、さらにR4とR7でこれらが結合する炭素原子と共に脂肪族環骨格や芳香族環骨格を形成することができる。R8〜R11としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子で置換したフルオロアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、アミノ基が挙げられ、R9とR10が直接結合してこれら置換基が結合する炭素間で二重結合を形成してもよく、さらにR8とR11でこれらが結合する炭素原子と共にシクロペンチル基、シクロヘキシル基等の脂肪族又は芳香族環骨格を形成することができる。mは1〜3の整数であり、好ましくは2、3、特に好ましくは3である。nは0〜3の整数であり、好ましくは0、1、特に好ましくは0である。
【0020】
上記式(1)〜(3)で示されたように、本願に用いる配位性官能基を有する有機ケイ素化合物は、下記構造(i)〜(iii)を有するものである。
(i)窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1つの原子を有する複素環。
(ii)(チオ)ウレタン結合、(チオ)尿素結合、(チオ)アミド結合、(チオ)エステル結合、アミノ結合、(チオ)エーテル結合及びスルフィド結合から選択される少なくとも1つの結合を含む2価の有機基。
(iii)加水分解性シリル基。
上記構造(i)の窒素原子、酸素原子及び硫黄原子の少なくとも1つの原子を有する複素環は、脂肪族環でも芳香族環でもよく、その具体的な構造としては、下記のようなものが挙げられるが、これら例示したものに限らない。
【0021】
【化5】

(式中、波線は結合手を示す。)
【0022】
構造(iii)の加水分解性シリル基は、ケイ素原子に直結した一価の加水分解性原子(水と反応することでシラノール基を生成する原子)及びケイ素原子に直結した一価の加水分解性基(水と反応することでシラノール基を生成する基)の少なくとも一方を有するシリル基である限り特に限定されない。このような加水分解性シリル基は、加水分解してシラノール基を生成し、このシラノール基は無機材質と脱水縮合して、式:≡Si−O−M(M:無機材質)なる化学結合を形成する。この加水分解性シリル基は、本発明の有機ケイ素化合物中に1個のみ存在しても2個以上存在してもよく、2個以上存在する場合は同一であっても異種であってもよい。
【0023】
構造(iii)の加水分解性シリル基としては、例えばクロロシリル基、ブロモシリル基、メトキシシリル基、エトキシシリル基、プロポキシシリル基、ブトキシシリル基等が挙げられる。
【0024】
本発明の配位性官能基を有するシランカップリング剤の具体的な例は、下記構造式(4)〜(11)で示される。なお、下記例において、Etはエチル基を表す。また、下記例においてエチル基(Et)をメチル基(Me)に変えたものも例示される。
【0025】
【化6】

【0026】
上記の有機ケイ素化合物(シランカップリング剤)は水酸基のような活性プロトンと下記式(A)のような安定な配位結合を形成することができる。
【0027】
【化7】

(式中、Qは窒素原子、硫黄原子、又は酸素原子を表し、Mは金属(イオン)を表す。)
【0028】
本発明の残りの成分としては、水、上記有機ケイ素化合物を溶解する有機溶媒、又は水と該有機溶媒の混合溶媒を挙げることができ、該有機溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられ、その中でもメタノールやエタノールが特に好ましいが、ここに列挙したものに限られない。
【0029】
なお、上記式(1)〜(3)の有機ケイ素化合物は、本発明の金属表面処理剤中に0.01〜200g/L、特に0.05〜100g/Lの濃度で含まれていることが好ましく、含有量が少なすぎると本発明の効果が不十分となることがあり、多すぎると塗料の液安定性が低下することがある。
【0030】
本発明の金属表面処理剤は、更に、上記式(1)〜(3)で示される有機ケイ素化合物以外の有機ケイ素化合物を含むことが好ましい。有機ケイ素化合物としては、上記式(1)〜(3)で示される有機ケイ素化合物以外の加水分解性シリル基を有する化合物であれば特に限定されないが、下記一般式(14)で表される加水分解性シリル基を有する有機ケイ素化合物又はその部分加水分解縮合物であることが好ましい。
20xSi(OR214-x (14)
(式中、R20は炭素数1〜20、特に1〜15の非置換(好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、フェニル基)又は置換(好ましくはエポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミノアルキルアミノ基、アルキルアミノ基、イソシアナート基、ポリエーテル基、ハロゲン置換アルキル基、パーフロアルキル基、パーフルオロポリエーテル基を含有するもの)一価炭化水素基、R21は炭素数1〜8、特に1〜6の非置換又は置換一価炭化水素基を示し、好ましくはメチル基、エチル基である。xは0〜3の整数であり、特に0〜2が好ましい。)
【0031】
具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルメチルジエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0032】
上記有機ケイ素化合物を配合する場合は、金属表面処理剤中に0.05〜100g/Lの濃度で含まれていることが好ましく、特に0.5〜60g/Lの濃度で含まれていることが好ましい。含有量が0.05g/L未満では耐食性が不足する場合があり、100g/Lを超えると耐食性が飽和し、生産性が低下する場合がある。
【0033】
本発明の金属表面処理剤は、更に、有機チタン酸エステル類を含むことが好ましい。この有機チタン酸エステル類は、市販されているものを用いてもよく、構造等は特に限定されないが、有機チタン酸エステル類として具体的には、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、及びこれらの重合物が挙げられ、チタンアセチルチタネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチルグリシナート、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート等のチタンキレート化合物を使用することもでき、これらの1種を単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0034】
上記有機チタン酸エステル類を配合する場合は、金属表面処理剤中に0.05〜100g/Lの濃度で含まれていることが好ましく、特に0.5〜60g/Lの濃度で含まれていることが好ましい。含有量が0.05g/L未満では耐食性が不足する場合があり、100g/Lを超えると耐食性が飽和し、逆に金属表面処理剤の浴安定性が低下する場合がある。
【0035】
本発明の金属表面処理剤は、更に、水又は有機溶媒分散性シリカを含むことが好ましい。この水又は有機溶媒分散性シリカとしては、特に限定されないが、ナトリウム等の不純物が少なく、弱アルカリ系である球状シリカ、鎖状シリカ、アルミニウム修飾シリカが好ましい。球状シリカとしては、「スノーテックスN」、「スノーテックスUP」(いずれも日産化学工業社製)等のコロイダルシリカや、「アエロジル」(日本アエロジル社製)等のヒュームドシリカを挙げることができ、鎖状シリカとしては「スノーテックスPS」(日産化学工業社製)等のシリカゲル、更にアルミニウム修飾シリカとしては、「アデライトAT−20A」(旭電化工業社製)等の市販のシリカゲルを用いることができる。
【0036】
なお、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル化合物が例示できる。
【0037】
上記水又は有機溶媒分散性シリカを配合する場合は、金属表面処理剤中に固形分で0.05〜100g/L、特に0.5〜60g/Lの濃度で含まれていることが好ましい。水又は有機溶媒分散性のシリカの含有量が0.05g/L未満では耐食性が不足する場合があり、100g/Lを超えると耐食性向上効果が見られず、逆に金属表面処理剤の浴安定性が低下する場合がある。
【0038】
本発明の金属表面処理剤は、更に、Fe,Zr,Ti,V,W,Mo,Al,Sn,Nb,Hf,Y,Ho,Bi,La,Ce及びZnから選ばれるいずれか1種以上の金属の化合物を含むことが好ましい。具体的には上記金属の炭酸塩、酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、フッ化物、フルオロ酸もしくはその塩、オキソ酸塩、有機酸塩などが挙げられる。より具体的に、ジルコニウム(Zr)化合物の例としては、炭酸ジルコニルアンモニウム、ジルコンフッ化水素酸、ジルコンフッ化アンモニウム、ジルコンフッ化カリウム、ジルコンフッ化ナトリウム、ジルコニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムブトキシド1−ブタノール溶液、ジルコニウムn−プロポキシド等が挙げられる。また、チタン(Ti)化合物の例としては、チタンフッ化水素酸、チタンフッ化アンモニウム、シュウ酸チタンカリウム、チタンイソプロポキシド、チタン酸イソプロピル、チタンエトキシド、チタン−2−エチル−1−ヘキサノラート、チタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラn−ブチル、チタンフッ化カリウム、チタンフッ化ナトリウム等が挙げられる。また、バナジウム(V)化合物の例としては、五酸化バナジウム(V)、三酸化バナジウム(III)、二酸化バナジウム(IV)、水酸化バナジウム(II)、水酸化バナジウム(III)、硫酸バナジウム(II)、硫酸バナジウム(III)、オキシ硫酸バナジウム(IV)、フッ化バナジウム(III)、フッ化バナジウム(IV)、フッ化バナジウム(V)、オキシ三塩化バナジウムVOCl3、三塩化バナジウムVCl3、ヘキサフルオロバナジウム酸(III)もしくはその塩(カリウム塩、アンモニウム塩等)、メタバナジン酸(V)もしくはその塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩等)、バナジルアセチルアセトネート(IV)VO(OC(=CH2)CH2COCH32、バナジウムアセチルアセトネート(III)V(OC(=CH2)CH2COCH33、リンバナドモリブデン酸H15-X[PV12-XMoO40]・nH2O(6<X<12,n<30)などが挙げられる。また、タングステン(W)化合物の例としては、酸化タングステン(IV)、酸化タングステン(V)、酸化タングステン(VI)、フッ化タングステン(IV)、フッ化タングステン(VI)、タングステン酸(VI)H2WO4もしくはその塩(アンモニウム塩、ナトリウム塩等)、メタタングステン酸(VI)H6[H21240]もしくはその塩(アンモニウム塩、ナトリウム塩等)、パラタングステン酸(VI)H10[H101246]もしくはその塩(アンモニウム塩、ナトリウム塩等)などが挙げられる。また、モリブデン(Mo)化合物の例としては、リンバナドモリブデン酸H15-X[PV12-XMoO40]・nH2O(6<X<12,n<30)、酸化モリブデン、モリブデン酸H2MoO4、モリブデン酸アンモニウム、パラモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブドリン酸化合物(例えば、モリブドリン酸アンモニウム(NH43[PO4Mo1236]・3H2O、モリブドリン酸ナトリウムNa3[PO4Mo1236]・nH2O等)などが挙げられる。また、アルミニウム(Al)化合物の例としては、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、硫酸アンモニウムアルミニウム、リン酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。また、スズ(Sn)化合物の例としては、酸化スズ(IV)、スズ酸ナトリウムNa2SnO3、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、硝酸スズ(II)、硝酸スズ(IV)、ヘキサフルオロスズ酸アンモニウム(NH42SnF6などが挙げられる。また、ニオブ(Nb)化合物の例としては、五酸化ニオブ(Nb25)、ニオブ酸ナトリウム(NaNbO3)、フッ化ニオブ(NbF5)、ヘキサフルオロニオブ酸アンモニウム(NH4)NbF6などが挙げられる。また、ハフニウム(Hf)化合物、イットリウム(Y)化合物、ホルミウム(Ho)化合物、ビスマス(Bi)化合物、ランタン(La)化合物の例としては、酸化ハフニウム、ヘキサフルオロハフニウム水素酸、酸化イットリウム、イットリウムアセチルアセトネート、酸化ホルミウム、酸化ビスマス、酸化ランタンなどが挙げられる。また、セリウム(Ce)化合物の例としては、酸化セリウム、酢酸セリウムCe(CH3CO23、硝酸セリウム(III)もしくは(IV)、硝酸セリウムアンモニウム、硫酸セリウム、塩化セリウムなどが挙げられる。また、亜鉛(Zn)化合物の例としては、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、亜鉛酸ナトリウムなどが挙げられる。上記化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
上記化合物を配合する場合は、金属表面処理剤中に、金属イオンの量として、それぞれ0.01〜50g/L、特に0.05〜5g/Lの濃度で含まれていることが好ましい。上記化合物の含有量がそれぞれ0.01g/L未満であると耐食性が不十分となる場合があり、50g/Lを超えると加工密着性能の向上効果が見られず、逆に浴安定性が低下する場合がある。
【0040】
本発明の金属表面処理剤は、更に、チオカルボニル基含有化合物を含むことが好ましい。チオカルボニル基含有化合物としては、チオ尿素、ジメチルチオ尿素、1,3−ジメチルチオ尿素、ジプロピルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、1,3−ジフェニル−2−チオ尿素、2,2−ジトリルチオ尿素、チオアセトアミド、ソディウムジメチルジチオカルバメート、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジンクジメチルジチオカルバメート、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン塩、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、エチレンチオ尿素、ジメチルキサントゲンスルフィド、ジチオオキサミド、ポリジチオカルバミン酸又はその塩等のチオカルボニル基を少なくとも1つ含有する化合物が例示できる。上記化合物は単独で使用してもよいし、また2種以上を併用してもよい。
【0041】
上記チオカルボニル基含有化合物を配合する場合は、本発明の金属表面処理剤中に0.01〜100g/L、特に0.1〜10g/Lの濃度で含有されることが好ましい。上記化合物の含有量が0.01g/L未満になると耐食性が不十分となる場合があり、100g/Lを超えると耐食性が飽和し、不経済となる場合がある。
【0042】
本発明の金属表面処理剤は、更に、水溶性もしくは水分散性樹脂を含むことが好ましい。水溶性もしくは水分散性樹脂としてはアクリル樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、エチレンアクリル共重合体、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アルキド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいし、更に共重合して使用してもよい。具体的には、例えば水溶性アクリル樹脂としては、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を主成分とした共重合体で、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が例示でき、それらの誘導体や、その他のアクリル系モノマーとの共重合体も使用可能である。特に、共重合体におけるアクリル酸及び/又はメタクリル酸モノマー割合が、70質量%以上であることが好ましい。
【0043】
また、樹脂を用いる時にはその造膜性を向上させ、より均一で平滑な塗膜を形成するために有機溶剤を用いてもよい。更に、界面活性剤、レベリング剤、濡れ性向上剤、消泡剤を用いてもよい。
【0044】
水溶性もしくは水分散性樹脂の分子量は、重量平均分子量で1万以上であることが好ましい。より好ましくは30万〜200万である。1万未満では本発明の効果、特に塗膜の深絞り性向上効果が十分に発揮されない場合がある。また、200万を超えると粘度が高くなり取り扱い作業の効率が低下する場合がある。
【0045】
上記水溶性もしくは水分散性樹脂を配合する場合は、金属表面処理剤中に0.1〜100g/L、特に5〜80g/Lの濃度で含有されることが好ましい。樹脂の濃度が0.1g/L未満では折り曲げ密着性と深絞り性を向上させる効果が不十分となる場合があり、100g/Lを超えると、折り曲げ密着性と深絞り性の向上効果が飽和し、不経済となる場合がある。
【0046】
本発明の金属表面処理剤は、更に、リン酸イオンを含むことが好ましい。リン酸イオンを添加することにより、更に耐食性を向上させることができる。このリン酸イオンの添加は、水中においてリン酸イオンを形成することができる化合物を添加することにより行うことができる。このような化合物としては、リン酸、Na3PO4、Na2HPO4、NaH2PO4等のリン酸塩類、縮合リン酸、ポリリン酸、メタリン酸、二リン酸等の縮合したリン酸又はそれらの塩類が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、また2種以上を併用してもよい。
【0047】
上記リン酸イオンを配合する場合の添加量は、金属表面処理剤中に0.01〜100g/Lの濃度であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10g/Lの濃度である。添加量が0.01g/L未満であると耐食性の改善効果が不十分となる場合があり、100g/Lを超えると亜鉛系めっき鋼材に過剰なエッチングを起こし性能低下を引き起こしたり、その他成分として水性樹脂を含む場合にはゲル化を引き起こしたりする場合がある。
【0048】
また、本発明の金属表面処理剤は、更に金属表面処理剤として公知の添加剤を配合してもよい。例えば、タンニン酸又はその塩、フィチン酸又はその塩等が例示される。
【0049】
本発明の金属表面処理剤は、冷延鋼材、熱延鋼材、ステンレス鋼材、更に電気亜鉛めっき鋼材、溶融亜鉛めっき鋼材、亜鉛−アルミニウム合金系めっき鋼材、亜鉛−鉄合金系めっき鋼材、亜鉛−マグネシウム合金系めっき鋼材、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金系めっき鋼材、アルミニウム系めっき鋼材、アルミニウム−シリコン合金系めっき鋼材、錫系めっき鋼材、鉛−錫合金系めっき鋼材、クロム系めっき鋼材、ニッケル系めっき鋼材等の金属鋼材の表面処理剤として使用されるが、特に金属被覆鋼材(めっき鋼材)に効果が著しい。
【0050】
この表面処理剤の使用方法、すなわち表面処理方法としては、上記金属表面処理剤を被塗物に塗布し、塗布後に被塗物を乾燥させる方法であってもよく、あらかじめ被塗物を加熱し、その後上記本発明の金属表面処理剤を塗布し、余熱を利用して乾燥させる方法であってもよい。
【0051】
上記乾燥条件はいずれの場合も、室温〜250℃で2秒〜1時間、好ましくは40〜180℃で5秒〜20分とすることができる。250℃を超えると密着性や耐食性等の性能劣化が生じる可能性がある。
【0052】
上記表面処理方法において、上記本発明の金属表面処理剤の塗布量は、乾燥後の被膜質量が0.1mg/m2以上であることが好ましい。被膜質量が0.1mg/m2未満では防錆性が不足する場合がある。一方、付着量が多すぎると塗装用前処理剤としては不経済であり、より好ましくは0.5〜500mg/m2であり、更に好ましくは1〜250mg/m2である。
【0053】
上記表面処理方法において、金属表面処理剤の塗布方法は特に限定されず、一般に使用されているロールコート、シャワーコート、スプレー、浸漬、刷毛塗り等によって塗布することができる。また、処理される対象となる鋼材は、上記の金属鋼材であり、特に各種めっき鋼材の処理に最適である。
【0054】
本発明の塗装鋼材の製造方法は、上記金属鋼材を上記金属表面処理剤で表面処理し、乾燥、次いで上層被膜層を塗布する方法である。上記被膜層としては、必要に応じてノンクロメートプライマー塗布乾燥後、更にトップコートを塗布する塗装システムや、耐指紋性や潤滑性等の機能を持った機能コーティング等を挙げることができる。上記製造方法は、プレコート鋼材に限らず、ポストコート鋼材にも適用することができ、本発明において塗装鋼材とはこれらを含むものである。また、本発明において鋼材とは鋼板を含む概念である。
【0055】
本発明で使用できる上記ノンクロメートプライマーとしては、プライマーの配合中にクロメート系防錆顔料を使用しないプライマー全てが使用できる。このようなプライマーとしては、バナジン酸系防錆顔料とリン酸系防錆顔料とを用いたプライマー(V/P顔料プライマー)又はカルシウムシリケート系防錆顔料を用いたプライマーが好ましい。
【0056】
上記プライマーの塗布膜厚は、乾燥膜厚で1〜20μmであることが好ましい。1μm未満では耐食性が不足する場合があり、20μmを超えると加工密着性が低下する場合がある。
【0057】
上記ノンクロメートプライマーの焼き付け乾燥条件は、例えば金属表面温度で150〜250℃、時間を10秒〜5分とすることができる。
【0058】
上記トップコートとしては特に限定されず、通常の塗装用トップコート全てを用いることができる。また、機能コーティングとしては特に限定されず、現在クロメート系前処理被膜の上に施されているコーティング等、全て使用可能である。上記ノンクロメートプライマー及びトップコートや機能コーティングの塗布方法は特に限定されず、一般に使用されるロールコート、シャワーコート、エアスプレー、エアレススプレー、浸漬等を利用することができる。
【実施例】
【0059】
以下、合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の例において部は質量部を示し、Etはエチル基を示し、IRは赤外分光法の略である。
【0060】
[合成例1]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、2−アミノピリジン31.4g(0.33mol)を納め、溶媒としてテトラヒドロフラン150gを加え、撹拌・溶解させた。その中に3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン82.5g(0.33mol)を滴下投入し、70℃にて4時間加熱撹拌した。その後、IR測定により原料のイソシアネート基由来の吸収ピークが完全に消失し、代わりに尿素結合由来の吸収ピークが生成したことを確認し、反応終了とした。その後、溶媒を溜去することで得られた反応生成物は淡黄色液体であり、オストワルド粘度計による測定の結果、動粘度184mm2/s、比重1.094、屈折率1.4975であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より反応生成物は単一の生成物であった。また、NMRスペクトルにより下記化学構造式(4)に示す構造であることを確認した。NMRスペクトルデータは以下の通りであった。
【0061】
1H NMR(300MHz,CDCl3,δ(ppm)):0.58(t,2H),1.07(t,9H),1.61(quint,2H),3.28(t,2H),
3.67(q,6H),6.66(m,1H),6.88(m,1H),
7.39(m,1H),7.97(m,1H),9.34(s,1H),
10.01(s,1H)
13C NMR(75MHz,CDCl3,δ(ppm)):7.4,17.9,
23.2,42.0,58.0,111.9,116.0,137.6,145.4,
153.7,156.6
29Si NMR(60MHz,CDCl3,δ(ppm)):−45.7
【0062】
【化8】

【0063】
[合成例2]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、2−アミノピリミジン31.7g(0.33mol)を納め、溶媒としてテトラヒドロフラン150gを加え、撹拌・溶解させた。その中に3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン82.5g(0.33mol)を滴下投入し、70℃にて4時間加熱撹拌した。その後、IR測定により原料のイソシアネート基由来の吸収ピークが完全に消失し、代わりに尿素結合由来の吸収ピークが生成したことを確認し、反応終了とした。その後、溶媒を溜去することで得られた反応生成物は橙色固体であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より反応生成物は単一の生成物であった。NMRスペクトルにより、反応生成物は下記化学構造式(5)であることを確認した。NMRスペクトルデータは以下の通りであった。
【0064】
1H NMR(300MHz,CDCl3,δ(ppm)):0.55(t,2H),1.09(t,9H),1.61(quint,2H),3.31(t,2H),
3.66(q,6H),6.86(m,1H),7.38(m,1H),
7.80(m,1H),9.32(s,1H),10.02(s,1H)
13C NMR(75MHz,CDCl3,δ(ppm)):7.6,18.2,
23.2,42.2,58.0,110.8,113.7,158.0,163.2
29Si NMR(60MHz,CDCl3,δ(ppm)):−45.7
【0065】
【化9】

【0066】
[合成例3]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、2−メルカプトチアゾリン89.4g(0.75mol)、ジオクチルスズオキシド1.3gを納め、溶媒として酢酸エチル300gを加え、撹拌・溶解させた。その中に3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン185.5g(0.75mol)を滴下投入し、80℃にて4時間加熱撹拌した。その後、IR測定により原料のイソシアネート基由来の吸収ピークが完全に消失し、代わりにチオウレタン結合由来の吸収ピークが生成したことを確認し、反応終了とした。その後、溶媒を溜去することで得られた反応生成物は淡黄色液体で、オストワルド粘度計による測定の結果、動粘度38mm2/s、比重1.164、屈折率1.5218であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より反応生成物は単一の生成物であった。また、NMRスペクトルにより反応生成物は下記化学構造式(6)であることを確認した。NMRスペクトルデータは以下の通りであった。
【0067】
1H NMR(300MHz,CDCl3,δ(ppm)):0.38(t,2H),
0.94(t,9H),1.40(quint,2H),3.02(m,2H),
3.04(t,2H),3.54(q,6H),4.42(m,2H),
9.52(m,1H)
13C NMR(75MHz,CDCl3,δ(ppm)):7.2,17.7,
22.2,26.6,42.5,55.8,57.8,151.6,199.6
29Si NMR(60MHz,CDCl3,δ(ppm)):−45.7
【0068】
【化10】

【0069】
[合成例4]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、2−アミノチアゾール33.4g(0.33mol)を納め、溶媒としてテトラヒドロフラン150gを加え、撹拌・溶解させた。その中に3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン82.5g(0.33mol)を滴下投入し、80℃にて4時間加熱撹拌した。その後、IR測定により原料のイソシアネート基由来の吸収ピークが完全に消失し、代わりに尿素結合由来の吸収ピークが生成したことを確認し、反応終了とした。その後、溶媒を溜去することで得られた反応生成物は褐色固体であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より反応生成物は単一の生成物であった。NMRスペクトルにより反応生成物は下記化学構造式(7)であることを確認した。NMRスペクトルデータは以下の通りであった。
【0070】
1H NMR(300MHz,CDCl3,δ(ppm)):0.65(t,2H),
1.19(t,9H),1.68(quint,2H),3.32(t,2H),
3.69(m,1H),3.79(q,6H),6.26(m,2H),
7.28(m,2H)
13C NMR(75MHz,CDCl3,δ(ppm)):7.7,18.2,
23.4,42.7,58.3,111.0,136.8,154.8,162.6
29Si NMR(60MHz,CDCl3,δ(ppm)):−45.8
【0071】
【化11】

【0072】
[合成例5]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、2−アミノベンゾチアゾール50.1g(0.33mol)を納め、溶媒としてテトラヒドロフラン150gを加え、撹拌・溶解させた。その中に3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン82.5g(0.33mol)を滴下投入し、70℃にて4時間加熱撹拌した。その後、IR測定により原料のイソシアネート基由来の吸収ピークが完全に消失し、代わりに尿素結合由来の吸収ピークが生成したことを確認し、反応終了とした。その後、溶媒を溜去することで得られた反応生成物は白色固体であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より反応生成物は単一の生成物であった。NMRスペクトルにより反応生成物は下記化学構造式(8)であることを確認した。NMRスペクトルデータは以下の通りであった。
【0073】
1H NMR(300MHz,CDCl3,δ(ppm)):0.68(t,2H),
1.20(t,9H),1.71(quint,2H),3.35(t,2H),
3.53(m,1H),3.72(q,1H),3.81(q,6H),
7.21(m,1H),7.35(m,1H),7.68(m,2H)
13C NMR(75MHz,CDCl3,δ(ppm)):7.4,18.2,
23.2,42.7,58.4,119.8,121.1,123.3,126.0,
130.8,149.0,154.7,161.7
29Si NMR(60MHz,CDCl3,δ(ppm)):−45.9
【0074】
【化12】

【0075】
[合成例6]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、N−ヒドロキシコハク酸イミド57.5g(0.5mol)、ジオクチルスズオキシド1.0gを納め、溶媒としてテトラヒドロフラン300gを加え、撹拌・溶解させた。その中に3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン123.7g(0.5mol)を滴下投入し、70℃にて4時間加熱撹拌した。その後、IR測定により原料のイソシアネート基由来の吸収ピークが完全に消失し、代わりにウレタン結合由来の吸収ピークが生成したことを確認し、反応終了とした。その後、溶媒を溜去することで得られた反応生成物は淡黄色液体で、オストワルド粘度計による測定の結果、動粘度38mm2/s、比重1.164、屈折率1.5218であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より反応生成物は単一の生成物であった。NMRスペクトルにより反応生成物は下記化学構造式(9)であることを確認した。NMRスペクトルデータは以下の通りであった。
【0076】
1H NMR(300MHz,CDCl3,δ(ppm)):0.35(t,2H),
0.94(t,9H),1.38(quint,2H),2.39(m,2H),
2.52(m,2H),2.90(t,2H),3.53(q,6H),
4.42(m,2H),6.45(m,1H)
13C NMR(75MHz,CDCl3,δ(ppm)):6.8,17.6,
22.2,24.8,43.7,57.7,151.2,170.2
29Si NMR(60MHz,CDCl3,δ(ppm)):−45.4
【0077】
【化13】

【0078】
[合成例7]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、N−ヒドロキシフタルイミド48.9g(0.3mol)、ジオクチルスズオキシド1.0gを納め、溶媒として酢酸エチル200gを加え、撹拌・溶解させた。その中に3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン74.2g(0.3mol)を滴下投入し、80℃にて4時間加熱撹拌した。その後、IR測定により原料のイソシアネート基由来の吸収ピークが完全に消失し、代わりにウレタン結合由来の吸収ピークが生成したことを確認し、反応終了とした。その後、溶媒を溜去することで得られた反応生成物は黄色固体であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より反応生成物は単一の生成物であった。NMRスペクトルにより反応生成物は下記化学構造式(10)であることを確認した。NMRスペクトルデータは以下の通りであった。
【0079】
1H NMR(300MHz,CDCl3,δ(ppm)):0.60(t,2H),
1.14(t,9H),1.65(quint,2H),3.20(m,2H),
3.75(q,6H),6.30(m,1H),7.72(m,4H)
13C NMR(75MHz,CDCl3,δ(ppm)):7.3,17.9,
22.6,44.2,58.3,123.6,128.7,134.5,152.2,
162.4
29Si NMR(60MHz,CDCl3,δ(ppm)):−45.9
【0080】
【化14】

【0081】
[合成例8]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、N−ヒドロキシメチルフタルイミド53.2g(0.3mol)、ジオクチルスズオキシド1.0gを納め、溶媒として酢酸エチル200gを加え、撹拌・溶解させた。その中に3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン74.2g(0.3mol)を滴下投入し、80℃にて4時間加熱撹拌した。その後、IR測定により原料のイソシアネート基由来の吸収ピークが完全に消失し、代わりにウレタン結合由来の吸収ピークが生成したことを確認し、反応終了とした。その後、溶媒を溜去することで得られた反応生成物は白色固体であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より反応生成物は単一の生成物であった。NMRスペクトルにより反応生成物は下記化学構造式(11)であることを確認した。NMRスペクトルデータは以下の通りであった。
【0082】
1H NMR(300MHz,CDCl3,δ(ppm)):0.49(t,2H),
1.07(t,9H),1.49(quint,2H),3.04(m,2H),
3.68(q,6H),5.39(m,1H),5.55(s,2H),
7.69(m,4H)
13C NMR(75MHz,CDCl3,δ(ppm)):7.3,14.3,
17.9,22.7,43.1,57.9,123.2,131.4,134.1,
154.5,166.4
29Si NMR(60MHz,CDCl3,δ(ppm)):−45.6
【0083】
【化15】

【0084】
[参考例1]
メタノール990g、水10gの混合溶媒に合成例1で得た高分子化合物を不揮発分として10g添加し、室温で5分間撹拌することで金属表面処理剤を得た。得られた金属表面処理剤を脱脂乾燥した市販の溶融亜鉛めっき鋼板(日本テストパネル社製;70×150×0.4mm)にバーコーターNo.20で乾燥膜厚が10μmになるように塗布し、金属表面温度105℃で10分間乾燥させた。その後V/P顔料含有のノンクロメートプライマーをバーコーターNo.16で乾燥膜厚が5μmになるように塗布し、金属表面温度215℃で5分間乾燥した。更にトップコートとしてフレキコート1060(ポリエステル系上塗り塗料;日本ペイント社製)をバーコーターNo.36で乾燥膜厚が15μmとなるように塗布し、金属表面温度を230℃で乾燥させて試験板を得た。得られた試験板の折り曲げ密着性、深絞り性、耐食性を下記の評価方法に従って評価し、その結果を表1に記載した。
【0085】
[実施例1〜3、参考例2〜5]
合成例1で得られた化合物を合成例2〜8で得られた化合物に変更した以外は、参考例1と同様にして金属表面処理剤を調製した。これらの金属表面処理剤を用いて、参考例1と同様にして試験板を作製し、これらの評価を行った。得られた結果を表1に記載した。
【0086】
[参考例6〜13]
合成例1で得られた化合物、シラン系化合物の種類と濃度、有機チタン酸エステル、水分散性シリカ、ジルコニウムイオン、チオカルボニル基含有化合物、水溶性樹脂並びにリン酸イオンの濃度をそれぞれ表1に記載したように配合した以外は、参考例1と同様にして金属表面処理剤を調製した。これらの金属表面処理剤を用いて、参考例1と同様にして試験板を作製し、これらの評価を行った。得られた結果を表1に記載した。
【0087】
[比較例1〜4]
合成例で得られた化合物を用いずに、シラン系化合物の種類と濃度、有機チタン酸エステル、水分散性シリカ、ジルコニウムイオン、チオカルボニル基含有化合物、水溶性樹脂並びにリン酸イオンの濃度をそれぞれ表1に記載したように配合した以外は、参考例1と同様にして金属表面処理剤を調製した。これらの金属表面処理剤を用いて、参考例1と同様にして試験板を作製し、これらの評価を行った。得られた結果を表1に記載した。
【0088】
[比較例5]
金属表面処理剤に代えて、市販の塗布型クロメート処理剤(樹脂含有タイプ)をクロム付着量が20mg/m2となるように塗布、乾燥したこと、及びクロム含有プライマー(ストロンチウムクロメート顔料含有プライマー)を用いたこと以外は、参考例1と同様にして試験板を作製及び評価し、得られた結果を表1に記載した。
【0089】
なお、下記表1において、シラン系化合物、有機チタン酸エステル、水分散性シリカ、ジルコニウムイオンを形成する化合物、チオカルボニル基含有化合物、水溶性樹脂、リン酸イオンを形成する化合物として、以下の市販品を使用した。
【0090】
[シラン系化合物]
A:KBM−903(アミノプロピルトリメトキシシラン;信越化学工業社製)
B:KBM−403(グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;信越化学工業社製)
C:下記構造式(12)で示される有機ケイ素化合物
D:下記構造式(13)で示される有機ケイ素化合物
【化16】


[有機チタン酸エステル]
チタンテトライソプロポキシド
[水分散性シリカ]
メタノールシリカゾル(日産化学工業社製)
[ジルコニウムイオンを形成する化合物]
ジルコノゾールAC−7(炭酸ジルコニルアンモニウム;第一稀元素社製)
[チオカルボニル基含有化合物]
チオ尿素
[水溶性樹脂]
ポリアクリル酸(重量平均分子量100万)
[リン酸イオンを形成する化合物]
リン酸
【0091】
[評価方法]
上記実施例1〜3、参考例1〜13及び比較例1〜5における折り曲げ密着性、深絞り性、耐食性の評価は以下の方法、評価基準に基づいて行った。
【0092】
折り曲げ密着性:
20℃の環境下、コニカルマンドレル試験機を用いて試験板を2mmφのスペーサーを挟んで180°折り曲げ加工し、折り曲げ加工部を3回テープ剥離して、剥離度合いを20倍ルーペで観察し、下記の基準で評価した。
A:クラックなし
B:加工部前面にクラック
C:剥離面積が加工部の20%未満
D:剥離面積が加工部の20%以上〜80%未満
E:剥離面積が加工部の80%以上
【0093】
深絞り性:
20℃の環境下で絞り比:2.3、シワ抑え圧:2t、ポンチR:5mm、ダイス肩R:5mm、無塗油、の条件で円筒絞り試験を行った。その後、クロスカット部から塗膜の剥離幅を測定し、下記の基準で評価した。
A:ふくれ幅が1mm未満
B:ふくれ幅が1mm以上〜2mm未満
C:ふくれ幅が2mm以上〜3mm未満
D:ふくれ幅が3mm以上〜5mm未満
E:ふくれ幅が5mm以上
【0094】
耐食性:
(カット部)
試験板にクロスカットを入れ、JIS Z 2371に基づく塩水噴霧試験を500時間行った後、カット部片側のふくれ幅を測定し、下記の基準で評価した。
A:ふくれ幅が0mm
B:ふくれ幅が0mmを超え〜1mm未満
C:ふくれ幅が1mm以上〜3mm未満
D:ふくれ幅が3mm以上〜5mm未満
E:ふくれ幅が5mm以上
(端面)
試験板をJIS Z 2371に基づく塩水噴霧試験を500時間行った後、上バリ端面からのふくれ幅をカット部と同一基準で評価した。
【0095】
【表1】

【0096】
以上の実施例及び比較例の結果は、本発明の金属表面処理剤を用いて形成される被膜が良好な防錆能及び基材密着性を与えることを実証するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(3)
【化1】

(式中、Rは加水分解性基であり、R’は炭素数1〜4のアルキル基であり、Aは直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜6のアルキレン基であり、Xは酸素原子又は硫黄原子であり、Zは−NH−、酸素原子又は硫黄原子であり、R8〜R11はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基もしくはフルオロアルキル基、又はアミノ基であり、またR9とR10が直接結合して該置換基が結合する炭素間で二重結合を形成してもよく、さらにR8とR11でこれらが結合する炭素原子と共に脂肪族又は芳香族環骨格を形成してもよい。mは1〜3の整数であり、nは0〜3の整数である。)
で示される有機ケイ素化合物を必須成分とし、これを水、有機溶媒、又は水と有機溶媒の混合溶媒に溶解してなることを特徴とする金属表面処理剤。
【請求項2】
更に、下記一般式(14)
20xSi(OR214-x (14)
(式中、R20は炭素数1〜20の非置換又は置換の一価炭化水素基、R21は炭素数1〜8の非置換又は置換一価炭化水素基を示し、xは0〜3の整数である。)
で示されるアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物を含むことを特徴とする請求項1記載の金属表面処理剤。
【請求項3】
更に、有機チタン酸エステル類を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の金属表面処理剤。
【請求項4】
更に、水分散性シリカ又は有機溶媒分散性シリカを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の金属表面処理剤。
【請求項5】
更に、Fe,Zr,Ti,V,W,Mo,Al,Sn,Nb,Hf,Y,Ho,Bi,La,Ce及びZnから選択されるいずれか1種以上の金属の化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の金属表面処理剤。
【請求項6】
更に、チオカルボニル基含有化合物を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の金属表面処理剤。
【請求項7】
更に、水溶性もしくは水分散性樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の金属表面処理剤。
【請求項8】
更に、リン酸イオンを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の金属表面処理剤。
【請求項9】
鋼材の表面を請求項1〜8のいずれか1項記載の金属表面処理剤で表面処理することを特徴とする鋼材の表面処理方法。
【請求項10】
鋼材が金属被覆鋼材である請求項9記載の表面処理方法。
【請求項11】
請求項9又は10記載の方法で得られる表面処理鋼材。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項記載の金属表面処理剤で鋼材を処理した後、更に上層被膜層を設けることを特徴とする塗装鋼材の製造方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法で得られる塗装鋼材。

【公開番号】特開2013−40409(P2013−40409A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−225678(P2012−225678)
【出願日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【分割の表示】特願2009−4654(P2009−4654)の分割
【原出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】