説明

金属表面処理用水性組成物、これを用いた金属表面処理方法及び皮膜付金属材料の製造方法並びにこれらを用いた金属表面処理皮膜

【課題】Biの析出性を劇的に向上させると共に、ハジキやブツなどの塗膜外観の悪化を防止する手段。
【解決手段】カチオン性樹脂エマルションを含有する金属表面処理用水性組成物であって、カチオン性樹脂エマルションの分散質が、変性エポキシ樹脂のアミノ化物、ブロックポリイソシアネート及び式1:


(ここで、式1において、mは4以上、nは0以上10以下である)に示す錫化合物を含有し、カチオン性樹脂エマルションの分散媒が、Biイオンを含有する事を特徴とする金属表面処理用水性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料、特に形状が複雑な金属構成体に対し、優れた耐食性及び塗膜外観を付与し得る皮膜を形成せしめることが可能な金属表面処理用水性組成物、これを用いた金属表面処理方法及び皮膜付金属材料の製造方法並びにこれらを用いた金属表面処理皮膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種金属材料、特に形状が複雑な金属構成体に対して優れた耐食性を付与するための手法としては、高い付き廻り性を有する電着塗装が一般的に用いられてきた。しかし、電着塗装によって得られる電着塗膜のみでは、所望の耐食性が得られない場合が多いため、電着塗装の前段には標準的にリン酸亜鉛系化成処理等の化成型の塗装下地処理が適用されていた。
【0003】
電着塗装は、アニオン性樹脂エマルジョンを含有する水性塗料中で被塗物をアノード電解することによって塗膜を析出させるアニオン電着塗装と、カチオン樹脂エマルジョンを含有する水性塗料中で被塗物をカソード電解することによって塗膜を析出させるカチオン電着塗装とに大別できるが、鉄系金属材料の耐食性向上に対しては、電解処理中に素地金属が塗料中に溶出する心配の無いカチオン電着塗装が有利であり、鉄系材料を主とする金属構成体である自動車車体、自動車部品、家電製品、建築材料等に対してはカチオン電着塗装が広く適用されている。
【0004】
カチオン電着塗装の市場での歴史は長く、かつてはクロム化合物や鉛化合物を配合することによって防錆性を確保していた。但し、これによっても防錆性は不充分であったため、リン酸亜鉛系化成処理等の下地処理が必須であった。現在では環境規制、特に欧州におけるELV規制によりクロム化合物や鉛化合物が実質使用できなくなったため、代替成分が検討され、ビスマス化合物にその効果が見出されており、具体的には次に挙げる特許文献が開示されている。
【0005】
特許文献1(特開平5−32919)には、ビスマス化合物をコーティングした顔料を少なくとも1種含有することを特徴とする電着塗料用樹脂組成物が開示されている。
【0006】
特許文献2(WO99/31187)には、有機酸変性ビスマス化合物が非水溶性の形態で存在する水性分散液を配合した水性分散ペーストからなることを特徴とするカチオン電着塗料組成物が開示されている。
【0007】
特許文献3(特開2004−137367)には、コロイド状ビスマス金属、及び、スルホニウム基とプロパルギル基とを持つ樹脂組成物からなることを特徴とするカチオン電着塗料が開示されている。
【0008】
特許文献4(特開2007−197688)には、水酸化ビスマス、ジルコニウム化合物及びタングステン化合物から選ばれる少なくとも1種の金属化合物の粒子を含んでなる電着塗料であって、該金属化合物が1〜1000nmであることを特徴とする電着塗料が開示されている。
【0009】
特許文献5(特開平11−80621)には、脂肪族アルコキシカルボン酸ビスマス塩水溶液を含有することを特徴とするカチオン電着塗料組成物が開示されている。
【0010】
特許文献6(特開平11−80622)には、2種以上の有機酸によるビスマス塩の水溶液であって、該有機酸の少なくとも1種が脂肪族ヒドロキシカルボン酸である有機酸ビスマス塩水溶液を含有することを特徴とするカチオン電着塗料組成物が開示されている。
【0011】
特許文献7(特開平11−100533)には、光学異性体のうちのL体が80%以上含まれる乳酸を用いてなる乳酸ビスマスを含有することを特徴とするカチオン電着塗料組成物が開示されている。
【0012】
特許文献8(特開平11−106687)には、2種以上の有機酸によるビスマス塩の水溶液であって、該有機酸の少なくとも1種が脂肪族アルコキシカルボン酸である有機酸ビスマス塩水溶液を含有することを特徴とするカチオン電着塗料組成物が開示されている。
【0013】
これらの特許文献は特許文献1〜4及び特許文献5〜8に大別できる。すなわち、特許文献1〜4は水性塗料に対して不溶性のビスマス化合物又は金属ビスマスを分散させたものであり、特許文献5〜8は少なくともビスマス化合物を固形分の残存が無くなるまで溶解させる、つまりBiイオンの状態にしてから塗料に添加することを特徴としている。
【0014】
しかしながら、これらの特許文献におけるビスマス化合物は、あくまでクロム化合物や鉛化合物の代替として作用するものであり、リン酸亜鉛系化成処理等の下地処理無しには充分な耐食性は得られない。事実、これらの特許文献ではリン酸亜鉛系化成処理との組合せを前提とした実施例のみが開示されている。
【0015】
一方、昨今ビスマス化合物以外の手法により耐食性を更に向上させ、リン酸亜鉛系化成処理等の下地処理を施さなくても、1コートにて充分な耐食性を確保し得る技術が検討されてきている。
【0016】
例えば特許文献9(特開2008−274392)には、金属基材に、皮膜形成剤を少なくとも2段階の多段通電方式で塗装することによって皮膜を形成する方法であって、(i)皮膜形成剤が、ジルコニウム化合物と、必要に応じて、チタン、コバルト、バナジウム、タングステン、モリブデン、銅、亜鉛、インジウム、アルミニウム、ビスマス、イットリウム、ランタノイド金属、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属(a)を含有する化合物とを合計金属量(質量換算)で30〜20,000ppmと、樹脂成分1〜40質量%とを含んでなり、(ii)金属基材を陰極として1段目の塗装を1〜50Vの電圧(V1)で10〜360秒間通電することにより行い、次いで、金属基材を陰極として2段目以降の塗装を50〜400Vの電圧(V2)で60〜600秒間通電することにより行い、そして(iii)電圧(V2)と電圧(V1)の差が少なくとも10Vであることを特徴とする表面処理皮膜の形成方法が開示されている。
【0017】
また、特許文献10(特開2008−538383)には、(A)希土類金属化合物、(B)カチオン基を有する基体樹脂、及び(C)硬化剤を含む水性塗料組成物であって、該水性塗料組成物に含まれる(A)希土類金属化合物の量が、塗料固形分に対して、希土類金属に換算して、0.05〜10重量%である水性塗料組成物に、被塗物を浸漬する、浸漬工程、該水性塗料組成物中において、被塗物を陰極として50V未満の電圧を印加する、前処理工程、及び該水性塗料組成物中において、被塗物を陰極として50〜450Vの電圧を印加する、電着塗装工程を包含する、複層塗膜形成方法が開示されている。
【0018】
特許文献11(特開2010−24471)には、ビスマスの有機酸塩又は無機酸塩を含む水溶液に金属基材を浸漬し、第一工程として該金属基材を陰極として電解することによりビスマス化合物被膜を形成し、第二工程として該被膜の上にカチオン電着塗装により電着塗膜を形成する複層塗膜形成方法が開示されている。
【0019】
これら特許文献1〜8記載のリン酸亜鉛系化成処理等の下地処理の上に施される処理液組成物、特許文献9〜11記載のリン酸亜鉛系化成処理等の下地処理なしに充分な耐食性を確保し得る処理液組成物には、共通した技術として水系樹脂の架橋・硬化反応を促進するための触媒が含有されており、架橋密度の向上や硬化温度の低温化などに寄与してきた。
【0020】
触媒としては、鉛化合物や錫化合物が一般的に使用されている。中でも近年では鉛化合物の有毒性から、錫化合物の使用が一般的であり、本発明や特許文献9のように、触媒効果を期待できる化合物を併用することもできる。
【0021】
含有している錫化合物は2種類に大別することができる。
【0022】
特許文献1、4、9、11の実施例、特許文献12〜14には固体状の錫化合物の使用が示されている。
【0023】
特許文献5〜8の実施例、特許文献15〜17には液体状の錫化合物の使用が示されている。
【0024】
固体状の錫化合物としては、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、モノブチル錫オキサイド、モノオクチル錫オキサイドなどの使用が挙げられている。
【0025】
液体状の錫化合物としては、ジブチル錫ジアセテート、アルキル錫の芳香族カルボン酸エステル、アルキル錫脂肪酸塩、アルキル錫(アルキルメルカプタン)などの使用が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開平5−32919号公報
【特許文献2】WO99/31187号公報
【特許文献3】特開2004−137367号公報
【特許文献4】特開2007−197688号公報
【特許文献5】特開平11−80621号公報
【特許文献6】特開平11−80622号公報
【特許文献7】特開平11−100533号公報
【特許文献8】特開平11−106687号公報
【特許文献9】特開2008−274392号公報
【特許文献10】特開2008−538383号公報
【特許文献11】特開2010−24471号公報
【特許文献12】特開平5−65438号公報
【特許文献13】特開2008−231142号公報
【特許文献14】特開2004−269582号公報
【特許文献15】特公昭61−9986号公報
【特許文献16】特開平5−65439号公報
【特許文献17】特開2004−123942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明者らは、これら従来技術について種々検討した結果、やはりリン酸亜鉛系化成皮膜等の前処理無しに1コートで充分な耐食性を付与する皮膜を金属材料の上に形成させるためには、Biの適用が最も効果的であるとの結論に達した。そしてBiの作用効果について再検討することとした。
【0028】
そして、Biの作用効果としては従来から、樹脂の硬化触媒としての機能と、素地金属の防食作用が注目されていたが、従来技術では、硬化触媒としての機能はある程度望めるものの、素地金属の防食作用については極めて不充分であり、この作用を最大限に発揮させることこそ課題解決につながるものとして検討を進めた。
【0029】
素地金属の防食作用はBiが金属に接触する面、すなわち素地金属表面と皮膜の界面に存在しなくてはならないが、従来技術ではBi成分が皮膜中に均一に分散してしまい、耐食性を発揮するに充分なBiが素地金属表面にあらかじめ存在していないものと推定した。
【0030】
そして、本発明者らは、同一浴内で低電圧カソード電解にてBiを還元析出させ、次いで高電圧カソード電解でBiイオンの拡散が不十分になった段階で、かかるpH上昇によってカチオン性樹脂が析出する反応機構が最適であることを確認した。
【0031】
具体的には、これによって得られた皮膜は、Biの持つ樹脂の硬化触媒能はもちろん、素地金属表面により高濃度で存在するBiにより、素地金属の耐食性をも充分に向上し得ることを確認した。
【0032】
但し、従来法では以下の課題がある。前述の通り、本方式(多段階電解方式)においては、先ず低電圧カソード電解にてBiを還元析出させ、次いでカチオン性樹脂が析出する工程をとる。ここで、Bi析出性を向上させることは、必要な耐食性を獲得するために充分なBi析出量を早期に得ることに繋がり、それは低電圧処理状態の短時間化、すなわち生産性の向上やコストの削減を可能とさせる。よって、本発明は、Biの析出性を劇的に向上させる手段を提供することを第一の課題とする。更に、本方式(多段階電解方式)においては、条件等により、ハジキやブツなどの塗膜外観が悪化してしまうことがある。よって、本発明は、ハジキやブツなどの塗膜外観悪化を防止する手段を提供することを第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明者らは、様々なカチオン性樹脂、硬化剤及び硬化触媒を検証し、上記第一の課題及び第二の課題を達成し得る組み合わせについて検証した。その結果、本発明者らは、組成物としてカチオン性エマルションを採用した上、エマルションの分散媒中にビスマスイオンを存在させつつ、特定のカチオン性樹脂・硬化剤・硬化触媒の組み合わせをエマルションの分散質成分として選択することにより前記課題を達成し得ることを見出し、本発明を完成させた。具体的には、下記発明(1)〜(10)である。
【0034】
本発明(1)は、
カチオン性樹脂エマルションを含有する金属表面処理用水性組成物であって、カチオン性樹脂エマルションの分散質が、変性エポキシ樹脂のアミノ化物(特に、ビスフェノール型が好適)、ブロックポリイソシアネート及び式1:

(ここで、式1において、mは4以上、nは0以上10以下である)に示す錫化合物を含有し、カチオン性樹脂エマルションの分散媒が、Biイオンを含有する事を特徴とする金属表面処理用水性組成物である。尚、必要に応じて顔料粒子を含有してもよい。また、エマルションの分散質は、変性エポキシ樹脂のアミノ化物以外の樹脂(例えば、他のカチオン性樹脂やノニオン性樹脂等)を含有していてもよい。
【0035】
本発明(2)は、式1におけるmが7以上である事を特徴とする前記発明(1)の金属表面処理用水性組成物である。
【0036】
本発明(3)は、式1におけるmが7である事を特徴とする前記発明(1)又は(2)の金属表面処理用水性組成物である。
【0037】
本発明(4)は、式1におけるmが7でnが0である事を特徴とする前記発明(3)のの金属表面処理用水性組成物である。
【0038】
本発明(5)は、全組成物中における錫化合物の含有量が、Sn量として0.01〜1重量%である事を特徴とする前記発明(1)〜(4)のいずれか一つの金属表面処理用水性組成物である。
【0039】
本発明(6)は、同一浴内での多段通電法に使用される組成物であることを特徴とする前記発明(1)〜(5)のいずれか一つの金属表面処理用水性組成物である。
【0040】
本発明(7)は、前記発明(1)〜(6)のいずれか一つの水性組成物に被処理金属材料を浸漬し、被処理金属材料を陰極とした電解処理工程にて金属材料に皮膜を析出させることを特徴とする金属表面処理方法である。
【0041】
本発明(8)は、電解処理工程が、表面が清浄化された金属材料を、前記発明(1)〜(6)のいずれか一つの水性組成物中に浸漬させた後、又は、浸漬させながら、該金属材料を陰極とし、電圧15V以下にて10〜120秒間電解する第一工程と、電圧50〜400Vにて30〜300秒電解する、前記第一工程に引き続いて同一浴内で実施する第二工程と、を有する事を特徴とする前記発明(7)の金属表面処理方法である。
【0042】
本発明(9)は、前記発明(7)又は(8)の電解処理工程を有する事を特徴とする皮膜付金属材料の製造方法である。
【0043】
本発明(10)は、前記発明(9)の製造方法により得られる皮膜であって、金属Bi及び酸化BiがBiとして20〜250mg/m付着し、全皮膜厚が5〜40μmであり、かつ皮膜厚の中心から金属材料側のBi付着量:Bが、全Bi付着量:Aに対して55%以上(B/A≧55%)となるBi付着分布であることを特徴とする金属表面処理皮膜である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、実施例及び比較例に係る水性組成物についての、一定電圧をかけた際のBi析出量と印加時間との関係を示した図である。
【図2】図2は、実施例1に係る水性組成物を用いた場合の、B/Aのプロファイルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
≪金属表面処理方法≫
(適用対象)
本発明に係る金属表面処理用水性組成物は、各種金属を腐食から防止する目的で使用される。金属材料は、特に限定されるものではないが、冷延鋼板、熱延鋼板、鋳物材、鋼管等の鉄鋼材料、それらの鉄鋼材料の上に亜鉛系めっき処理及び/又はアルミニウム系めっきが施された材料、アルミニウム合金板、アルミニウム系鋳物材、マグネシウム合金板、マグネシウム系鋳物材等が挙げられる。特に形状が複雑な金属構成体、例えば、鉄系材料を主とする金属構成体である自動車車体、自動車部品、家電製品、建築材料等への使用に適している。
【0046】
(金属表面処理方法)
本発明に係る金属表面処理方法は、前述した金属表面処理用水性組成物を用い、被処理金属材料を陰極とした電解処理工程にて金属材料表面に皮膜を析出させる工程を含む。より好適には、本発明に係る金属表面処理方法は、金属材料上に皮膜を析出させるべく、表面が清浄化された金属材料に対して電解処理を施す電解処理工程と、電解処理工程後に実行する水洗及び焼付け工程を含む。以下、本方法に特徴的な電解処理工程及び焼付け工程について詳述する。
【0047】
<電解処理工程>
この電解処理工程(カソード電解)は、金属表面処理用水性組成物中に前記金属材料を浸漬させた状態で、電圧15V以下にて10〜120秒間電解する第一工程と、金属表面処理用水性組成物中に前記金属材料を浸漬させた状態で、電圧50〜400Vにて30〜300秒間電解する、前記第一工程の後に実施する第二工程とを有し、ここで、前記第二工程は、前記第一工程に引き続いて同一浴内で実施する。
【0048】
ここで、第一工程は主としてBiを優先的に付着させるために行われる工程であり、第二工程は主としてカチオン性樹脂を優先的に析出させるために行われる工程である。十分な耐食性を得るためには、金属材料に直接接触しているBi、つまり金属材料と皮膜の界面に存在する界面Biの存在が必要であり、そのためには第一工程と第二工程の順番と条件が極めて重要となってくる。
【0049】
第一工程の電圧は15V以下(下限値は特に限定されないが例えば0.01V)であり、10〜120秒間電解することが好ましい。電圧が0Vを下回る場合、すなわち金属材料を陽極として電解した場合は、金属材料が組成物中に溶出してしまい、組成物の安定性を低下させるばかりか、耐食性の向上に必要な界面Biが十分付着しなくなる。上限を超える場合も、Biが金属表面に優先的に析出する前に樹脂析出が始まってしまうため、やはり充分な耐食性が得られなくなる。
【0050】
処理時間が下限を下回る場合も充分な界面Biが析出せず、上限を上回る場合は界面Biの付着量が過多となり、皮膜の密着性が損なわれる場合がある。
【0051】
第二工程の電圧は50〜400Vであり、30〜300秒間電解することが好ましい。電圧が下限を下回る場合は、樹脂皮膜の析出量が不充分となり、上限を上回る場合は、樹脂皮膜の析出過多により経済的に不利であるばかりか、皮膜の仕上がり外観が損なわれる場合がある。
【0052】
第一工程に次いで第二工程に移行する際、電圧を瞬時に増加させる必要は無く、緩やかに増加させても本発明の効果を損なうものではない。また、第一工程及び第二工程共、電圧は常時一定である必要は無い。
【0053】
〈焼付け工程〉
次に、焼付け工程について説明する。焼付け手法は特に限定されず、例えばオーブンで焼付ける手法を挙げることができる。また、焼き付け温度は、例えば100℃〜200℃である。更に、焼付け時間は、被処理金属材料の形状、大きさ、材質にもよるが、通常は10〜30分である。
【0054】
次に、本発明に係る金属表面処理用水性組成物について詳述する。
【0055】
《金属表面処理用水性組成物》
本発明に係る金属表面処理用水性組成物は、カチオン性樹脂エマルションを含有する金属表面処理用水性組成物であって、カチオン性樹脂エマルションの分散質が、ベース樹脂として変性エポキシ樹脂のアミノ化物、硬化剤としてブロック化ポリイソシアネート及び硬化触媒として(又は助触媒として)特定構造の錫化合物を必須的に含有し、カチオン樹脂エマルションの分散媒が、Biイオンを含有することを特徴とする(例えば、電着塗料として使用されるF2剤に相当する)。ここで、本発明に係る金属表面処理用水性組成物は、例えば顔料成分も任意に配合することができる。この際、この顔料成分は、例えば電着塗料として使用されるF1剤に相当する。以下、各成分を詳述する。
【0056】
<組成物構成成分:カチオン性樹脂エマルションの分散質>
(組成物構成成分:カチオン性樹脂エマルションの分散質/カチオン性樹脂)
※成分
本発明に係るベース樹脂は、カチオン性樹脂として、変性エポキシ樹脂の基体樹脂をアミンでカチオン化したものを必須的に含有する。ここで、変性エポキシ樹脂のアミノ化物の中では、ビスフェノール型、ノボラック型の変性エポキシ樹脂が好適であり、ビスフェノール型が最も好適である。なお、変性させた成分を用いる理由は下記の通りである。通常はこれらの基体樹脂の成分のみを用いると、得られた皮膜の性能を満足しない。そのため、基体樹脂とは異なる構造の化合物を付加し、変性する方法がとられる。例として、変性をしないビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いると、剛性には非常に富むものの、逆に柔軟性に欠け、充分な性能は得られない。具体的には、ポリオール化合物(後で詳述)などを付加させることで、硬さと柔らかさを併せ持った皮膜を得ることが可能となる。
【0057】
ここで、樹脂にカチオン性を付与するには、典型的にはアミノ基を樹脂骨格中(特に末端)に導入する手法(例えば、エポキシ樹脂では、末端のグリシジル基にアミノ基含有化合物を付加する手法)が採用されている。尚、これについては後で詳述する。
【0058】
以下、カチオン性樹脂として特に好適である、ビスフェノール型の変性エポキシ樹脂のアミノ化物について詳述する。ここで、特に好適なビスフェノールA型の変性エポキシ樹脂のアミノ化物は、原料として、変性樹脂、エポキシ当量180〜2500のエポキシ樹脂、1級及び/又は2級アミノ基含有化合物、或いは更にビスフェノールAを用い、これらを反応させることで得られる変性エポキシ樹脂のアミノ化物である。以下、各成分について説明する。
【0059】
*ビスフェノールA型の変性エポキシ樹脂の原料
まず、変性樹脂としては、通常、ポリオール化合物が用いられる。これらは、エポキシ樹脂の可塑性向上などを目的として適用される。具体的には、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール、アクリルポリオール等のポリオール樹脂、末端にフェノールを付加し、水酸基を有する芳香族縮合化合物などが挙げられる。更に具体的には、ポリカプロラクトンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、フェノール性水酸基を有するキシレンホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。これら化合物により変性を行うことは、これら化合物が有する水酸基とエポキシ樹脂のグリシジルエーテル部が容易に反応し得ることから、従来より用いられてきた技術である。変性エポキシ樹脂中において、これら変性樹脂は5〜30重量%含まれる。
【0060】
次に、エポキシ当量180〜2500のエポキシ樹脂としては、塗膜の防食性等の観点から、特に、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリン、例えば、エピクロルヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂が好適である。中でも、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの反応により得られるビスフェノールAジグリシジルエーテルが最適である。また、ビスフェノールAを基本構造として重合させたエポキシ樹脂も同様の効果を示し、エポキシ当量として180〜2500、好ましくは180〜2000、更に好ましくは180〜1500のものが最適である。変性エポキシ樹脂中において、これらエポキシ樹脂は5〜30重量%含まれる。
【0061】
次に、ビスフェノールAはエポキシ樹脂の骨格分子量をコントロールするために用いられる。この含有量(添加量)により、エポキシ当量をコントロールすることができる。変性エポキシ樹脂中において、ビスフェノールAは5〜30重量%含まれる。
【0062】
次に、1級及び/又は2級アミノ基含有化合物は、エポキシ樹脂基体にアミノ基を導入して、該エポキシ樹脂をカチオン化するためのカチオン性付与成分である。ここで使用されるアミンはエポキシ基と反応する活性水素を少なくとも1個含有するものが用いられる。そのような目的で使用されるアミノ基含有化合物としては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミンなどのモノ−、もしくはジ−アルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、モノメチルアミノエタノール、モノエチルアミノエタノールなどのアルカノールアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアルキレンポリアミン及びこれらのポリアミンのケチミン化物;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのアルキレンイミン;ピペラジン、モルホリン等の環状アミン等が挙げられる。変性エポキシ樹脂中において、1級及び/又は2級アミノ基含有化合物は0.5〜20重量%含まれる。
【0063】
*ビスフェノールA型の変性エポキシ樹脂のアミノ化物の製造方法
先ず、変性樹脂、エポキシ樹脂、を所定量混合し、加熱撹拌を行う。加熱温度は70〜100℃が好ましい。各原料が溶解した後、触媒を添加し、加熱温度を上げ、合成を行う。触媒は、通常、ジメチルベンジルアミンのような3級アミンが使用される。合成温度は120℃〜170℃で制御するのが一般的である。
【0064】
合成温度と時間を調整することにより、所定のエポキシ当量を持った変性エポキシ樹脂を合成できる。エポキシ当量はJIS
K7236に定められるエポキシ当量測定によって算出される。この時のエポキシ当量は800〜10000が好適であり、800〜5000がより好適であり、800〜3000が最も好適である。エポキシ当量が大きくなるほど、エマルション作製時の乳化が困難となる。
【0065】
次に、この合成した変性エポキシ樹脂に1級及び/又は2級アミノ基含有化合物を付加する。変性エポキシ樹脂を60℃〜110℃に保ちながら1級及び/又は2級アミノ基含有化合物を添加し、1〜3時間合成を行うことで、変性エポキシ樹脂のアミノ化物が得られる。
【0066】
*変性エポキシ樹脂のカチオン化
合成した変性エポキシ樹脂のアミノ化物に中和酸を添加し、撹拌混合した後、水で希釈し、所定濃度の樹脂エマルションを作製する。中和酸は、蟻酸、酢酸、乳酸、スルファミン酸などが用いられる。
【0067】
この際、中和酸を添加する前に硬化剤や硬化触媒、有機溶剤などを添加しておくことが好ましい。このようにあらかじめ添加することで、均一なエマルションを得ることができる。
【0068】
※分散質中のカチオン性樹脂の含有量
エマルションの分散質中におけるカチオン性樹脂(特に、変性エポキシ樹脂のアミノ化物)の含有量は、分散質の全重量(有機溶剤も含む全重量)を基準として、30〜80重量%であることが好適である。
【0069】
(組成物構成成分:カチオン性樹脂エマルションの分散質/硬化剤)
※成分
本発明に係るカチオン性樹脂エマルションの分散質に含まれる硬化剤は、ブロックポリイソシアネートである。ブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤とのほぼ化学理論量での付加反応生成物である。ここで使用されるポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4'−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート(通常「MDI」と呼ばれる)、クルードMDI、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの芳香族、脂肪族又は脂環族のポリイソシアネート化合物;これらのポリイシアネート化合物の環化重合体、イソシアネートビゥレット体;これらのイソシアネート化合物の過剰量にエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物を反応させて得られる末端イソシアネート含有化合物などを挙げることができる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合わせて使用することができる。
【0070】
一方、前記イソシアネートブロック剤は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に付加してブロックするものであり、そして付加によって生成するブロックポリイソシアネート化合物は常温において安定であるが、塗膜の焼付け温度(通常約100〜約200℃)に加熱した際、ブロック剤が解離して遊離のイソシアネート基を再生しうるものであることが望ましい。
【0071】
このような要件を満たすブロック剤としては、例えば、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタムなどのラクタム系化合物;メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物;フェノール、パラ−t−ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール系化合物;n−ブタノール、2−エチルヘキサノールなどの脂肪族アルコール類;フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノールなどの芳香族アルキルアルコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテルアルコール系化合物等を挙げることができる。これらのブロック剤はそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、ブロック剤の解離、硬化反応などを効率よく進め、また、意図する硬化反応物を生成させるために、あらかじめ、変性エポキシ樹脂の骨格にイソシアネート基の一部を付加し、かつ、残りのイソシアネート基をブロック剤でブロックする手法もとられる。
【0072】
※分散質中のブロックポリイソシアネートの含有量
エマルションの分散質中におけるブロックポリイソシアネートは、分散質の全重量(有機溶剤も含む全重量)を基準として、5〜40重量%であることが好適である。
【0073】
(組成物構成成分:カチオン性樹脂エマルションの分散質/錫化合物)
※成分
本発明に係るカチオン性樹脂エマルションの分散質に含まれる錫化合物は、式1に示す錫化合物を含む。尚、本発明においては式1に示す錫化合物単独での使用を限定しているわけではなく、ジブチル錫化合物のようなmが3以下の錫化合物や固体状の錫化合物、他の硬化触媒との併用も可能である。
【0074】
樹脂エマルションの分散質は、前述のように、カチオン性樹脂や硬化剤、硬化触媒、有機溶剤などから構成されているが、Biの析出性向上にはカチオン性樹脂以外の成分における疎水/親水性が大きく寄与していると考えられ、その点にて、式1に示すmが4以上の化合物は好ましい。更には疎水性の高いmが7以上である錫化合物が好適であり、中でも触媒能の高いmが7であるジオクチル錫化合物が最も好適である。尚、上限値は例えば12である。
【0075】
また、nが11以上の化合物は樹脂との相溶性が悪く、エマルションの安定性不良、硬化性不足、はじきやブツの発生があり、不適当である。
【0076】
ここで、Biの析出性向上及びはじきやブツの発生防止の観点から、特に好適なmとnの組み合わせは、4≦m≦10(更に好適には、6≦m≦8)であり且つ0≦n≦5(更に好適には、0≦n≦3)である。そして、さらに好適な組み合わせは、mとnとの合計数が7〜10であり、最も好適な組み合わせは、mとnとの合計が7である(例えば、ジアルキル錫ジアセテート)。例えば、実施例、比較例に示す通り、疎水性の低いジブチル錫ジアセテート(m=3、n=0)を用いた場合と比較し、疎水性の高いジオクチル錫ジアセテート(m=7、n=0)を用いた場合、Bi析出性は劇的に向上する。
【0077】
※作用機序
ところで、上記のように、特定の系にて前述した特定構造の錫化合物を使用した場合にBiの析出性が劇的に向上し且つはじきやブツの発生が防止できる作用機序を考察すると下記の通りであろうと推察される。
【0078】
カチオン性樹脂エマルション中の分散質成分の構成を考慮した場合、変性エポキシ樹脂のアミノ化物は自身が有するアミン部分のカチオン化能により、媒体である水との親和性を得ることが出来る(エマルション化)。一方、硬化剤であるブロック化ポリイソシアネートや硬化触媒である錫化合物は、化学構造的特徴から水との親和性が低く、分散質表面に存在することは難しく、分散質内部に存在しやすくなる。すなわち変性エポキシ樹脂のアミノ化物をシェルに、ブロック化ポリイソシアネートや錫化合物をコアにしたコアシェル構造を有しているものと容易に予想できる。
【0079】
この場合、コア成分の疎水/親水性により、分散質の表面状態が変わってくる。コア成分の疎水性が高いほど、分散質表面近傍への存在は難しく、よりコア部へ、一方、疎水性が低いほど、分散質表面近傍にも存在できることとなる。
【0080】
通常時(無電解時)においては、変性エポキシ樹脂のアミノ化物における充分なカチオン化により、安定化したエマルション状態を実現していても、水との親和性が低く、しかしながらも疎水性の低い成分が分散質表面近傍に存在する場合においては、第一工程時での素地界面におけるカチオン化の微妙な変化において、エマルションの不安定度は増す。
【0081】
具体的には、低電圧電解状態(第一工程)においても、エマルションは濃縮され、不安定度は増し、場合によっては、分散質である樹脂成分の析出が起こる場合もある。
【0082】
本発明においては、低電圧電解状態において樹脂成分が析出してしまうと、Biの析出を阻害してしまうこととなり、不都合となる。逆に言うと、疎水性の低い錫化合物と比較し、よりコア部に存在し得る疎水性の高い錫化合物を用いることで、Bi析出を阻害しにくくさせる。すなわち、Bi析出性が向上する。
【0083】
錫化合物の疎水性はその構造、特に式1におけるmの数値が大きく寄与する。このmの値が大きいほど、疎水性が高まり、よりコア部へ存在し、すなわち、Bi析出を阻害させ難くし、Bi析出性が向上することとなる。
【0084】
式1に示すジアルキル錫ジ脂肪酸エステルは常温において液体状であり、樹脂との相溶性に優れる。また、これらに起因したはじきやブツの発生もない。
【0085】
電解にて樹脂が析出し、エマルションの分散質が合一化された際に、最外面に存在した錫化合物は水分と接触することとなるが、その際、水分と接触したジアルキル錫ジ脂肪酸エステルは加水分解され、ジアルキル錫オキサイドの形態となり易いことが好ましい。すなわち、脂肪酸部位が容易に外れることに加え、外れた後に水相に移動し易い(高親水性)である脂肪酸根であることが好適である。これにより、水相側へ移ることで、塗膜中に含まれる余分な成分は減少し、硬化性向上、耐食性向上が実現する。この観点からもnが上述した数値以下であることが好適である。他方、高級脂肪酸エステル部などは加水分解されにくく、塗膜中に残存されやすいことで、硬化性低下、耐食性低下を招くことがある。例えば、硬化性を評価するにあたり、アセトンを潤沢にしめらしたガーゼを押しつけ、往復運動をさせた後、塗膜の外観を目視にて確認すると、硬化に寄与していない成分が存在した場合、その成分がアセトンに溶解してしまうことで、塗膜外観には、塗膜のはがれた跡が確認される。
【0086】
※エマルションの分散質中の錫化合物の含有量
錫化合物の含有量が多すぎると、経済的に不利である。それだけでなく、コアシェル構造のコア部分が膨大な構造となり、エマルション化能を有するシェル部分とのバランスがとれなくなる。膨大なコア部分を包み込んでエマルション化するシェル部分が足りなくなることで、エマルションは凝集、合一を起こしやすくなり、樹脂エマルションの状態をとれなくなる。
【0087】
そのため、シェル部分となる樹脂成分との比率も重要となる。エマルションの分散質中における錫化合物量は、分散質の全重量(有機溶剤も含む全重量)を基準として、Sn量として0.05〜3重量%であることが好適であり、0.05〜2重量%であることが更に好適であり、0.05〜1重量%であることが最も好適である。
【0088】
尚、金属表面処理用水性組成物又は分散質中における錫化合物量は、Sn量として把握することができる。600℃程度の高温状態で長時間加熱すると、樹脂などの成分は燃焼してしまい、錫化合物はすべて錫酸化物状態になる。ここで得られた錫酸化物を熱濃硫酸などで溶解させ、水溶液を作製し、これについてICP発光分析やICP質量分析などに行うことより、Sn量が測定できる。
【0089】
<組成物構成成分:カチオン性樹脂エマルションの分散媒>
(組成物構成成分:カチオン性樹脂エマルションの分散媒/液体媒体)
本発明に係る金属表面処理用水性組成物の液体媒体(カチオン性樹脂エマルションの分散媒としての液体媒体)としては、水性媒体が好適であり、水がより好適である。尚、液体媒体が水である場合、液体媒体として水以外の他の水系溶媒(例えば、水溶性のアルコール類)を含有していてもよい(例えば、全液体媒体の重量を基準として10重量%以下)。
【0090】
(組成物構成成分:カチオン性樹脂エマルションの分散媒/3価のビスマスイオン)
本発明で言うBiイオンとは、組成物中で固体化せず、具体的には後述するアミノポリカルボン酸などによってキレートを構成し、完全に溶解状態になっているBi成分の事を指す。なお、当該イオンは、エマルションの分散媒に存在する。
【0091】
Biイオンの供給源としては、3価のビスマス化合物であれば特に限定されるものではないが、例えば硝酸ビスマス、リン酸ビスマス、硫酸ビスマス、酸化ビスマス、水酸化ビスマスなどの無機ビスマス化合物、フッ化ビスマス、塩化ビスマス、臭化ビスマス、ヨウ化ビスマスなどのハロゲン化ビスマス化合物、酢酸ビスマス、蟻酸ビスマス、乳酸ビスマス、クエン酸ビスマスなどの有機酸ビスマス化合物が挙げられる。
【0092】
本発明には、アミノポリカルボン酸を含有させてもよい。アミノポリカルボン酸とは、分子中にアミノ基と複数のカルボキシル基を有するキレート剤の総称である。アミノポリカルボン酸は、組成物中の3価のBiイオンを、より安定的に水溶化された状態とするため、アミノポリカルボン酸を含有させることが出来る。具体的には、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、HEDTA(ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、TTHA(トリエチレンテトラミン六酢酸)等が該当するが、Biイオンとのキレート安定度の観点からEDTA、HEDTA、NTAがより好ましい。
【0093】
<組成物構成成分:他の成分>
本発明の組成物には、更に必要に応じて顔料、有機溶剤、顔料分散剤、界面活性剤等、塗料分野で通常使用されている添加剤を適用することもできる。顔料としては、チタン白、カーボンブラック等の着色顔料、クレー、タルク、バリタ等の体質顔料、トリポリリン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等の防錆顔料などが挙げられる。尚、上記では、カチオン性樹脂エマルションの分散質における成分(カチオン性樹脂、ブロック化ポリイソシアネート、錫化合物)と分散媒における成分(液体媒体、ビスマスイオン)に分けて説明したが、これら成分は実質的に分散質又は分散媒中に存在することを意味し、分散質にのみ又は分散媒にのみ存在することを意味しない。例えば、カチオン性樹脂の一部が分散媒中に微量溶解していたとしても、本発明の範囲内である。
【0094】
<組成物の組成>
次に、本発明に係る金属表面処理用水性組成物の組成について説明することとする。まず、本発明に係る金属表面処理用水性組成物は、高濃度の物を適宜水で希釈して所望の濃度に調整する事ができる。以下、当該水性組成物中における各成分の好適濃度を説明する。
【0095】
(水性組成物中のカチオン性樹脂)
当該組成物は、組成物の全重量を基準としてカチオン性樹脂を好適には5〜30重量%(固形分)含み、より好適には5〜20重量%含み、更に好適には5〜15重量%含む。
【0096】
(水性組成物中のブロックイソシアネート)
当該組成物は、組成物の全重量を基準としてブロックイソシアネートを2〜20重量%(固形分)含み、より好適には2〜15重量%含み、より好適には2〜10重量%含む。
【0097】
(水性組成物中の錫化合物)
当該組成物における錫化合物の含有量は、Sn量として0.01〜1重量%であることが好適であり、0.01〜0.5重量%であることが更に好適であり、0.01〜0.2重量%であることが最も好適である。錫化合物の含有量が低すぎると、期待している硬化触媒能が低下し、硬化性を満足しなくなり、前述のようにアセトン往復試験を行うと、塗膜のはがれた跡が確認されることとなる。
【0098】
(水性組成物中の3価のBiイオン)
当該組成物は、3価のBiイオンを100〜5000ppm含有する。500〜4000ppmが更に好ましく、1000〜3000ppmが最も好ましい。Biイオン濃度が低過ぎる場合Biの析出性に不利となり、高過ぎると組成物の電気伝導度が高くなり過ぎ、複雑な形状を有する金属材料への皮膜の付き廻り性が劣化すると共に、Bi付着量過多となり皮膜密着性を損なう恐れがある。組成物中のBiイオン濃度は、超遠心機により組成物を固液分離し、液相を高周波誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP)もしくは原子吸光分光分析(AA)を用いて定量することができる。
【0099】
<金属表面処理用水性組成物の物性>
(pH)
本発明に係る金属表面処理用水性組成物のpHは特に制限されるものではないが、通常2.0〜7.0、好ましくは3.0〜6.5の範囲に調整して使用することができる。
【0100】
(温度)
本発明に係る金属表面処理用水性組成物の温度についても特に制約は無いが、電解処理によって皮膜を析出させる際は、通常15〜40℃、好ましくは20〜35℃の範囲内で使用することができる。
【0101】
≪金属表面処理皮膜≫
本発明に係る金属表面処理皮膜は、本発明の金属表面処理用水性組成物を用い、本発明の処理方法によって得られる。ここで、皮膜中に存在するBiは金属及び酸化物の形態で存在する。カソード電解によって析出するBiは、基本的に還元析出した金属Biであるが、その一部は特に皮膜の焼付け工程で酸化されて酸化物となる。また、第二工程において高電圧がかかった場合、皮膜表面のpH上昇により、アミノポリカルボン酸によるBiの安定化が不充分となるため、特に皮膜表面側では酸化Biとしても析出する。
【0102】
Bi付着量は20〜500mg/mが好ましく、30〜400mg/mが更に好ましく、50〜300mg/mが最も好ましい。Bi付着量が低過ぎると充分な耐食性が得られず、高過ぎるともはや耐食性の向上が望めないばかりか皮膜密着性を損なう場合もある。尚、Bi付着量は蛍光X線分析により定量可能である。尚、本特許請求の範囲及び本明細書における「金属Bi付着量」及び「酸化Bi付着量」は、当該蛍光X線分析で定量された値とする。尚、その他の形態として水酸化物の存在も否定できないが、当該測定方法で「金属Bi」又は「酸化Bi」として定量された場合には、その数値は「金属Bi付着量」又は「酸化Bi付着量」とすることとする。
【0103】
得られる皮膜の全皮膜厚は5〜40μmが好ましく、5〜30μmが更に好ましく、7〜25μmが最も好ましい。薄過ぎると充分な耐食性が得られず、厚過ぎると経済的に不利なばかりか付き廻り性が低下する場合がある。皮膜厚は、素地金属が磁性金属であれば電磁誘導式膜厚計、素地金属が非磁性金属であれば渦電流式膜厚計により、測定可能である。
【0104】
皮膜中のBiは、皮膜表面よりも素地金属側により多く存在する必要がある。具体的には、皮膜厚の中心から金属材料側のBi付着量:Bが、全Bi付着量:Aに対して55%以上(B/A≧55%)となるBi付着分布であることが好ましい。58%以上が更に好ましく、60%以上が最も好ましい。低過ぎると充分な耐食性が得られない。なお、90%を越えると皮膜表面側のBi濃度が極端に低下し、Biの持つ硬化触媒としての機能を失うので好ましくない。
【0105】
皮膜中のBi付着分布については、EPMAを用いて皮膜断面を線分析することにより測定可能である。同時に撮影した反射電子像によって素地金属と皮膜の界面及び皮膜表面の位置を特定し、EPMA線分析による皮膜中のBi強度の積分値:A及び皮膜厚の中心から素地金属側のみの積分値:Bを求め、B/Aを算出することができる。
【実施例】
【0106】
ブロック化イソシアネートの作製
コスモネートM200(三井化学株式会社製):678.4gにメチルイソブチルケトン:115.6gを加え、70℃に昇温した後、ジエチレングリコールモノエチルエーテル:706.0gをゆっくり滴下し、滴下終了後、90℃に昇温した。90℃の条件下で12時間反応させ、ブロック化イソシアネートを得た。赤外吸収スペクトル測定を行ったところ、未反応のイソシアネート基由来の吸収が見られず、イソシアネートが完全にブロック化されたことが確認できた。
【0107】
30%第四級塩型エポキシ樹脂の作製
温度計、コンデンサ、攪拌機を備えた1000mlセパラブルフラスコにエポキシ樹脂・jER#828(三菱化学株式会社製、エポキシ当量:180):134.9g、ビスフェノールA:80.94g、ジメチルベンジルアミン0.1gを加え、130℃でエポキシ当量1200になるまで反応を行った。反応終了後にブチルセロソルブ71.7gを加え、更にジメチルアミノエタノール13.16g、90%乳酸を14.79g加えて90℃で1時間反応を行った。反応後、脱イオン水613.36gを強く撹拌しながら約1時間かけて滴下し、固形分30%の第四級塩型エポキシ樹脂を作製した。
【0108】
カチオン性樹脂エマルションの作製
製造例1
温度計、コンデンサ、攪拌機を備えた1000mlセパラブルフラスコにエポキシ樹脂・jER#828(三菱化学株式会社製、エポキシ当量:180):114.0g、変性樹脂としてポリカプロラクトンジオール・プラクセル208(ダイセル化学株式会社製):41.5g、ビスフェノールA:45.6g、ジメチルベンジルアミン0.1gを加え、130℃でエポキシ当量1000になるまで反応を行った。反応終了後にブチルセロソルブ55.5gを加え、更にジエタノールアミン:12.6g、ジエチレントリアミンのケチミン化物:8.0gを加え、90℃で2時間反応を行った。ここにブロック化イソシアネート:105.5g、ジオクチル錫ジアセテート(日東化成工業株式会社製ネオスタンU820):3.2g、酢酸5.4gを加え、均一になるまで撹拌を行った後、脱イオン水578.1gを強く撹拌しながら約1時間かけて滴下し、固形分濃度33%のカチオン性樹脂エマルション(A1)を得た。
【0109】
製造例2
製造例1において、ジオクチル錫ジアセテートの代わりに、ジオクチル錫ジアセテート1.6g、ジブチル錫ジアセテート(日東化成工業株式会社製ネオスタンU200)1.6gを使用し、同様な反応を行うことで、カチオン性樹脂エマルション(A2)を得た。
【0110】
製造例3
製造例1において、ジオクチル錫ジアセテートの代わりに、ジオクチル錫ジラウレート(日東化成工業株式会社製ネオスタンU810)3.2gを使用し、同様な反応を行うことで、カチオン性樹脂エマルション(A3)を得た。
【0111】
製造例4
製造例1において、ジオクチル錫ジアセテートの代わりに、ジブチル錫ジアセテート(日東化成工業株式会社製ネオスタンU200)3.2gを使用し、同様な反応を行うことで、カチオン性樹脂エマルション(A4)を得た。
【0112】
製造例5
製造例1において、ジオクチル錫ジアセテートの代わりに、ジオクチル錫ジステアレート(日東化成工業株式会社製ネオスタンU500)3.2gを使用し、同様な反応を行うことで、カチオン性樹脂エマルション(A5)を得た。
【0113】
顔料分散ペーストの作製
製造例6
30%の第四級塩型エポキシ樹脂16.6部に対し、精製クレー7.0部、カーボンブラック0.3部、第三リン酸亜鉛3.0部及び脱イオン水を加え、ボールミルにて20時間分散し、固形分50重量%の顔料分散ペーストを得た。
【0114】
Biイオン液の作製
蒸留水:500gにHEDTA:13.3gを溶解させ、60℃に加温した後、硝酸ビスマス5水和物:23.2gを加えて固形分が完全に溶解するまで撹拌した。最終的に全量が1.0Lとなるように更に蒸留水を加え、Biイオン水溶液を作製した。
【0115】
実施例1〜3及び比較例1〜2
組成物の作製
表1に示す組合せの固形分16.0重量%になる量の樹脂エマルジョンに無機固形分4.0重量%になる量の顔料分散ペースト及びBiイオン水溶液を配合し、実施例1〜3及び比較例1〜2に係る組成物を作製した(組成物中のBi濃度:1000ppm;pH:6.0;分散質中のカチオン性樹脂:58重量%;分散質中のブロックイソシアネート:27重量%)。なお、それぞれの濃度は脱イオン水を用いて希釈し調整した。
【0116】
電解条件
電解工程(1)として8Vにて90秒間電解後、直ちに電解工程(2)として180Vにて180秒間電解処理を行った。
【0117】
試験板の作製
試験板として、冷延鋼板:SPCC(JIS3141)70×150×0.8mm(以下、SPCと略す)を用い、あらかじめその表面を日本パーカライジング社製強アルカリ脱脂剤「FC−E2001」を使用して、120秒間スプレー処理することにより脱脂処理した。脱脂処理後は30秒間スプレー水洗し、実施例及び比較例に示す組成物に浸漬させ、実施例及び比較例に示す電解条件にてカソード電解処理を実施した。電解終了後の試験板は直ちに脱イオン水にて30秒間スプレー水洗し、電気オーブン中で180℃にて20分間焼付けを行った。
【0118】
皮膜特性の調査
試験板の上に析出した皮膜の皮膜特性を以下の方法で調査した。
皮膜厚測定:電磁誘導式膜厚計を用いて測定した。
Bi付着量:蛍光X線分光分析によって定量した。
Bi付着分布:試料断面をEPMAの線分析にて分析した。具体的方法は下記参照。
【0119】
皮膜中のBi付着量分布測定は、EPMAを用いて分析した。皮膜処理後の金属材料を、埋め込み樹脂によって固定し、断面を研磨し、素地金属方向から析出皮膜表面方向にBiの線分析プロファイルを求めた。線分析プロファイルとは、マッピング分析データを基に、分析エリアの1次元方向に任意の幅で特性X線強度の平均値を算出したもので、幅を持った線分析と解することができる。測定条件は以下の通り。
【0120】
測定機器:島津製作所製EPMA−1610型
電子銃:CeB6カソード型
ビーム電流:50nA、ビーム電圧:15kV、ビーム径:1μmφ以下
積算回数:1回、1点あたりのサンプリング時間:100ms
分光結晶:PET(Bi Mα)
【0121】
同時に撮影した反射電子像によって素地金属と皮膜の界面及び皮膜表面の位置を特定し、皮膜中のBi強度の積分値:A及び皮膜厚の中心から素地金属側のみの積分値:Bを求め、B/Aを算出した。なお、参考のため代表的なプロファイルとして実施例1で得られた皮膜の分析結果を図2に示す。
【0122】
Bi析出性:Bi析出性として、経時における蛍光X線分光分析結果より、Bi析出量が50mg/mまで達する時間を評価した。評価基準は45秒以内:◎、45〜60秒:○、60秒以上:×とした。結果を表1、析出量の推移を図1に示す。尚、Bi析出性試験は、8Vにて30、60、90秒間電解し、脱イオン水にて水洗後、風乾した。
【0123】
塗膜硬化性:カソード電解処理により作製された樹脂塗装板に対し、アセトンを潤沢にしめらしたガーゼを押しつけ、30回の往復運動をさせた後、塗膜の外観を目視にて確認した。評価基準は、跡なし:◎、跡あり:○、素地まで見える状態:×とした。結果を表1に示す。
【0124】
樹脂析出時間(樹脂析出性):15Vにて90秒間電解処理を行い、電流値の低下が見られた時点を塗膜抵抗が発現した時点、すなわち樹脂析出が起こった時点と判断し、その時点までの処理時間を樹脂析出時間とした。結果を表1に示す。
【0125】
はじき、ブツ:目視にて有無を確認した。
【0126】
密着性:塗膜上に1mm幅での碁盤目カットを100マスぶん入れ、その部分をエリクセン試験器にて押し出した。押し出し後、テープ剥離を行い、剥離せずに残存した部分のマス数を数えた。押し出し距離:4mm 残存マス数 80〜100:◎、80〜60:○、60〜20:△、20〜0:×
【0127】
表1から明らかなように、実施例に係る組成物は、Biの析出性向上とはじきやブツ等の塗膜外観の悪化防止を図ることができ、更には優れた塗膜硬化性と密着性を付与することが確認された。即ち、実施例に係る組成物は、同一浴にて皮膜が形成できる上、皮膜として重要な性質を満足する皮膜を形成できることが確認された。他方、比較例に係る組成物は、いずれかの性質において著しく劣っており、実用品としては使用し得ないことが分かる。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性樹脂エマルションを含有する金属表面処理用水性組成物であって、カチオン性樹脂エマルションの分散質が、変性エポキシ樹脂のアミノ化物、ブロックポリイソシアネート及び式1:

(ここで、式1において、mは4以上、nは0以上10以下である)に示す錫化合物を含有し、カチオン性樹脂エマルションの分散媒が、Biイオンを含有する事を特徴とする金属表面処理用水性組成物。
【請求項2】
式1におけるmが7以上である事を特徴とする請求項1に記載の金属表面処理用水性組成物。
【請求項3】
式1におけるmが7である事を特徴とする請求項1又は2に記載の金属表面処理用水性組成物。
【請求項4】
式1におけるmが7でnが0である事を特徴とする請求項3に記載の金属表面処理用水性組成物。
【請求項5】
全組成物中における錫化合物の含有量が、Sn量として0.01〜1重量%である事を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属表面処理用水性組成物。
【請求項6】
同一浴内での多段通電法に使用される組成物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の金属表面処理用水性組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性組成物に被処理金属材料を浸漬し、被処理金属材料を陰極とした電解処理工程にて金属材料に皮膜を析出させることを特徴とする金属表面処理方法。
【請求項8】
電解処理工程が、表面が清浄化された金属材料を、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性組成物中に浸漬させた後、又は、浸漬させながら、該金属材料を陰極とし、電圧15V以下にて10〜120秒間電解する第一工程と、電圧50〜400Vにて30〜300秒電解する、前記第一工程に引き続いて同一浴内で実施する第二工程と、を有する事を特徴とする請求項7に記載の金属表面処理方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の電解処理工程を有する事を特徴とする皮膜付金属材料の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の製造方法により得られる皮膜であって、金属Bi及び酸化BiがBiとして20〜250mg/m付着し、全皮膜厚が5〜40μmであり、かつ皮膜厚の中心から金属材料側のBi付着量:Bが、全Bi付着量:Aに対して55%以上(B/A≧55%)となるBi付着分布であることを特徴とする金属表面処理皮膜。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−23524(P2013−23524A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157635(P2011−157635)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000229597)日本パーカライジング株式会社 (198)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】