説明

金属表面処理用窒素含有ポリマー

本発明は、水溶性窒素含有ポリマーを金属表面に接触することにより得られる金属表面上の不動態層、金属表面と本発明の不動態層からなる表面、この不動態層を金属表面に形成する方法、そして水溶性窒素含有ポリマーを金属表面の不動態化のために使用する方法、そして本発明の不動態層と別の被覆膜を含む金属表面上の被覆構造体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素含有ポリマーを含む金属表面上の不動態層、この不動態層の形成方法に関し、そして水溶性窒素含有ポリマーを金属表面の不動態化のために使用する方法、この不動態層を含む金属表面上の被覆構造体、形成された被覆構造体、及びさらにこの被覆構造体を形成する方法、及び金属表面と本発明の不動態層からなる表面に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料、特に鉄及びスチールは、環境の影響による腐食を防止するために、一般に、亜鉛メッキが施されている。亜鉛による腐食保護は、亜鉛が金属材料より卑であり、結果として、まず全ての中でそれ自体に専ら腐食攻撃を引きつける(即ち、それは犠牲層として機能する)との事実に基づいて行われる。金属材料それ自体は、それが亜鉛の連続相で覆われている限り、損なわれることはなく、その機械的機能は亜鉛メッキされていない部分よりも長期間維持される。このような亜鉛層への腐食攻撃は、不動態層の施すことより遅らせることができる。これは、電解亜鉛メッキされた部分、そしてその後被覆される部分と被覆無しで使用される部分の両方の場合に、特に行われる。アルミニウム表面、特に後で被覆されるべきアルミニウム表面の場合に、同様に不動態層が屡々設けられる。不動態層は、金属表面の腐食攻撃を遅らせ、同時に、施されるどのような被覆膜に対しても接着性を改善する機能を有する。用語「不動態層」は屡々、用語「転化被膜」と同義語として使用される。
【0003】
これまでは、亜鉛又はアルミニウム表面上の不動態層は、通常、保護されるべきワークピースをCrO3の酸水溶液に浸漬することにより得ている。浸漬及び乾燥の後、ワークピースは、腐食に対して保護される。浸漬の際、保護されるべき金属の一部は、溶解し、その後即座に、金属表面に酸化膜を形成する。このため、この膜は、多くの金属表面で、通常存在する酸化膜と類似しているが、後者より凝集力があり、接着性も良好である。不動態化の観点から、このCr(VI)処理は、最適である。Cr(VI)処理は、未被覆の亜鉛メッキパネルに白錆を発生させるために要する時間を、1時間未満から100時間を超える範囲で延ばしている。
【0004】
極めて有毒で、発ガン性のあるCr(VI)化合物の使用を避けるために、特許文献1(EP−A0907762)は、Cr(III)塩の酸性水溶液による不動態化を提案している。300〜400μmの厚さのいわゆる「厚い層」として施され、これらの不動態層は顕著な腐食防止をもたらす。
【0005】
Cr(VI)及びCr(III)等の重金属の使用を避けるために、ポリマーの使用が、重要性を増している。
【0006】
特許文献2(DE−A10005113)には、リン酸及び/又はZr、Ti、Hf及びSiから選ばれる1種以上の元素の少なくとも1種のフッ素酸、又は各場合においてこれらのアニオン、及びビニルピロリドンの単独重合体及び共重合体を含む塗布溶液に関するものであり、また金属表面をビニルピロリドンの単独重合体及び共重合体と接触させることからなる金属表面の腐食防止処理法に関するものである。特許文献2によれば、ビニルピロリドンの単独重合体及び共重合体は、Zr、Ti、Hf又はSiのフルオロメタレート(fluorometallate)を基礎とする公知の不動態化剤に添加される。
【0007】
特許文献3(JP−A―04231679)は、銅又は銅合金の腐食保護剤又は腐食表面に関し、ここでは銅表面が、まずポリビニルイミダゾールを含むアルコール性溶液で処理され、その後亜鉛塩を含む溶液で処理される。この処理は、銅表面の腐食保護及び耐熱性を向上させる。
【0008】
特許文献4(DE−A4409306)は、清浄化された、或いは化学的前処理された金属表面を、アミノ基含有有機ポリマーの水溶液、特にポリビニルアミンで変性する方法に関するものである。
【0009】
【特許文献1】EP−A0907762
【特許文献2】DE−A10005113
【特許文献3】JP−A―04231679
【特許文献4】DE−A4409306
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、下記の要求を満たす金属表面上の不動態層を提供することにある:
−上記層は、さらなる被覆が無くても、多くの用途に対して腐食を阻害しなければならない;
−上記層は、被覆材料の接着性を損なってはならず、被覆材料の接着性を向上させることが好ましく;換言すれば、上記層は一般に疎水性であってはならない;
−上記層は、不動態化ワークピースがその寸法を維持することを保証するために、できるだけ薄くなくてはならない;
−上記層は、120℃の温度に加熱した後であっても腐食防止作用を保持しなければならない;
−上記層は、基板に比較して色の違いが少ないが、欠陥を検出し、そして不動態化部分を非不動態化部分と簡単に見分けることが容易なように、できるだけ目視で識別可能であるべきである;
−上記層は、複雑な処理工程なしに製造することが可能であるべきである。
【0011】
本発明の目的は、特に、薄くても顕著な腐食防止性を示す薄い不動態層を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記目的が、
金属表面を、水溶性窒素含有ポリマーを含む組成物と接触させることにより得られる金属表面上の不動態層であって、該ポリマーが塩基であり、且つ該ポリマーの水溶液が、pH7未満において、基板金属の1種以上の金属の塩を添加した場合に沈殿を形成するものであることを特徴とする金属表面上の不動態層により達成されることを見いだした
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の不動態層は、極薄層であっても、顕著な腐食防止効果を示すとの事実が注目に値する。
【0014】
使用される金属表面は、一般に、どのような金属表面であっても良い。概して、好適な金属表面としては、スチール、鋳鉄、亜鉛、アルミニウム及びこれらの金属同士の合金、又はこれらの金属と他の合金成分との合金から選択される標準の工業材料である。亜鉛及びアルミニウム、及びこれらの金属と他の合金成分との合金が、特に好ましく、そして亜鉛又は亜鉛合金の表面は、一般に鉄又はスチール等の金属材料を亜鉛メッキする操作により得られる。
【0015】
前処理しなかった金属表面を使用することも考えられる。しかしながら、金属表面は、それらを水溶性窒素含有ポリマーを含む組成物と接触させる前に、少なくとも洗浄されていることが好ましい。この場合、洗浄は、金属表面を脱脂する工程を含むことが好ましい。好適な洗浄及び脱脂方法は、当該技術者に公知である。
【0016】
塩基であり、且つその水溶液がpH7未満において、基板金属の1種以上の金属の塩を添加した場合に沈殿を形成する水溶性窒素含有ポリマー(成分A)は、ビニルイミダゾールを含むことが好ましい。このポリマーは、50質量%を超えるビニルイミダゾール、及び所望により少なくとも1種の別のモノマーを含むことが特に好ましい。本発明のポリマーは、単独重合体及び共重合体の両方を服務もと理解されるべきである。
【0017】
本発明で使用されるポリマー(成分A)は、下記の成分Aa、Ab、Acを含むことが特に好ましい:
a)45質量%超える、好ましくは55質量%超える、特に好ましくは60質量%超えるビニルイミダゾール(Aa)、
b)0以上50質量%未満、好ましくは40質量%未満、特に好ましくは30質量%未満のN−ビニルラクタム、他のヘテロ芳香族ビニル化合物、ビニルエステル、C1〜C10アルキルアクリレート又はメタクリレート、或いはこれらのモノマーの混合物(Ab)、
c)0〜5質量%、好ましくは4質量%未満、特に好ましくは3質量%未満の酸基を含むモノエチレン性不飽和モノマー(Ac)。
【0018】
好適な成分Abとしては、N−ビニルラクタム、例えばN−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、及びN−ビニルピペリドンを挙げることができ;他のヘテロ芳香族ビニル化合物としては、ビニルピリジン及びビニルピリジンN−オキシドを挙げることができ;好適なビニルエステルとしては、例えば酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニルを挙げることができ;好適なC1〜C10(メタ)アルキルアクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート及びブチルアクリレート、及び対応するメタクリレートを挙げることができる。
【0019】
成分Abとして、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、及びビニルピリジンを使用することが好ましい。
【0020】
好適なコモノマー(Ac)は、少なくとも1個の酸基(例、カルボキシル基、スルホン酸基又はホスホン酸基)を含むモノエチレン性不飽和化合物である。成分Acとして好適な化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ジメタクリル酸、エチルアクリル酸、クロトン酸、アリル酢酸及びビニル酢酸を挙げることができる。また成分Acとして、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、メチレンマロン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、及び無水メチレンマロン酸を挙げることができ、無水物は、水に導入されると、一般に加水分解を受けて対応するジカルボン酸を形成する。成分Acとして、スルホン酸基含有モノマー(例、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビニルスルホン酸、メタリルスルホン酸及びアリルスルホン酸)、及びまたホスホン酸含有モノマー(例、ビニルホスホン酸)をさらに使用することも可能である。成分Acとして規定されたモノマーは、単独又は相互の混合物として使用することができる。
【0021】
成分Acとして、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリロイル−又はメタクリロイル−スルホン酸3−スルホプロピルエステル、及びビニルホスホン酸から選択されるモノマーを使用することが好ましい。
【0022】
成分Acとして使用されるモノマーは、遊離酸の形か、或いはそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩若しくはアンモニウム塩の形で使用することができるが、塩の形が好ましい。好ましいアルカリ金属塩としてはナトリウム塩及びカリウム塩、好ましいアルカリ土類金属塩はマグネシウム塩及びカルシウム塩である。
【0023】
特に好ましい一態様において、水溶性窒素含有ポリマーは、ビニルイミダゾール単独重合体であり、即ちこのポリマーは100質量%のN−ビニルイミダゾールから構成される。
【0024】
本発明で使用される水溶性窒素含有ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、一般に1000〜1000000g/モル、好ましくは10000〜150000g/モルである。特に好ましいビニルイミダゾール単独重合体を用いた場合、それは一般に5000〜200000g/モルの分子量を有する。分子量(Mw)は標準ポリスチレンを用いるゲル浸透クロマトグラフィにより測定した。
【0025】
共重合体は、一般に、少なくとも3繰り返し単位、好ましくは10を超える繰り返し単位を有する化合物を意味する。
【0026】
本発明で使用される水溶性窒素含有ポリマーは、当該技術者に公知の方法で製造することができる。使用可能な例として、トルエン、水又はエタノール中において、塊状重合、懸濁重合、乳化重合又は溶液重合によりポリマーを製造する方法を挙げることができる。別の可能性として、有機溶剤(例、アルカン又はシクロアルカン)からの沈殿重合により、又はDE−A−4342281に開示された方法に準拠した方法により、本発明で使用される水溶性窒素含有ポリマーを製造する方法がある。
【0027】
50質量%を超えるビニルイミダゾール及び所望により少なくとも1種の別のモノマーから構成される好ましく使用される水溶性窒素含有ポリマー、特に好ましく使用されるビニルイミダゾール単独重合体は、DE−A−4342281に開示された方法に対応する方法に従い製造することが好ましい。
【0028】
本発明の一好適態様において、金属表面を、下記成分A、B、Cを含む組成物と接触させることが好ましい:
a)上記定義された水溶性窒素含有ポリマー(成分A);
b)水、又はポリマー(成分A)を溶解又は分散、或いは懸濁又は乳化することができる他の溶剤(成分B);
c)所望により、少なくとも一種の界面活性化合物、少なくとも1種の乳化剤及び/又は少なくとも1種の分散剤(成分C)。
【0029】
[成分A]
成分Aとして使用される水溶性窒素含有ポリマーは既に前記で定義した。
【0030】
本発明で使用される組成物において、このポリマーは、一般に0.01〜100g/L、好ましくは0.01〜70g/L、さらに好ましくは0.01〜50g/L(それぞれ1Lの組成物に対する範囲)で使用される。
【0031】
[成分B]
成分Bは、水、又はポリマー(成分A)を溶解又は分散、或いは懸濁又は乳化することができる他の溶剤である。本発明において、溶剤は、その中で本発明の組成物の種々の成分が極めて微細な形態で存在している液体マトリックスである。このような微細状態は、例えば、分子的分散分布の点で、成分の真の溶剤溶液と言える。しかしながら、用語「溶剤」はもまた、その中で成分が乳濁又は分散状態で分布している(即ち、分子的分散溶液を形成していない)液体マトリックスも包含している。
【0032】
好適な溶剤の例としては、水、及び水混和性溶剤及び水非混和性溶剤を挙げることができる。好適な水混和性溶剤としては、炭素原子数1〜6個の1級又は2級の1価又は多価アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール又はグリセロールを挙げることができる。同様に、水混和性溶剤として、低分子質量のケトン、例えばアセトン又はメチルエチルケトン、或いはエーテルアルコール、例えばジエチレングリコール又はトリエチルグリコールも好適である。本発明において、水と混和性が低いか混和性の無い溶剤も同様に好適である。これらの例としては、エーテル、例えばジエチルエーテル、ジオキサン又はテトラヒドロフラン、芳香族溶剤、例えばトルエン又はキシレン、ハロゲン化溶剤、例えばジクロロメタン、クロロホルム又はテトラクロロメタン、そして任意に置換脂肪族溶剤、例えば上述のアルコール及びケトンの高級同族体及びパラフィン系炭化水素、を挙げることができる。
【0033】
上述の溶剤は、個々に又は2種以上の溶剤として使用することができる。本発明の一好適態様において、使用される溶剤が、水単独、又は1種以上の上述の、好ましくは水溶性溶剤との混合物である。本発明において、水及び水非混和性溶剤を含む溶剤を使用しなければならない場合、溶剤は、実質的に安定なW/O又はO/W乳濁液とするために乳化剤を含み得る。
【0034】
本発明の組成が、水と他の水混和性溶剤との混合物を含む場合、このような混合物中の水の割合は、少なくとも30質量%以上、例えば少なくとも40質量%又は少なくとも50質量%が好ましい。本発明の特に好ましい一態様において、水の割合は少なくとも75質量%である。水と水混和性溶剤の好適な組合せの例としては、水/メタノール、水/エタノール、水/プロパノール又は水/イソプロパノールを挙げることができる。本発明では、水とエタノールの混合物が好ましく、水の割合は、約75質量%を超える量が好ましく、例えば約80質量%を超える量又は約85質量%を超える量である。
【0035】
本発明の一好適態様において、本発明の組成は、少なくとも50質量%の水含有量を有する少なくとも1種の溶剤を含んでいる。
【0036】
特に、溶剤として水のみ使用することが好ましい。
【0037】
本発明の水溶液として好ましく使用される組成物は、一般に1〜6のpHを有するが、基板及び処理(施与)方法及び基板金属の表面を本発明で使用される組成物に曝露する期間に依存する狭いpH範囲を選択することが可能である。例えば、光輝金属表面を処理するために、pHは2〜6の範囲が好ましく、アルミニウム表面を処理する場合は2〜4にすることが好ましく、スチール、亜鉛又は亜鉛メッキスチールを処理する場合は3〜5にすることが好ましい。既に前処理され、例えばリン酸塩層を有する基板金属を、pH3.5〜5の範囲において本発明で使用される組成物と接触させることが好ましい。
【0038】
水又は他の溶剤の量は、本発明の組成物が直ぐ使用可能な組成物であるか、濃縮物であるかに対して相関関係があり、個々の末端の用途にも相関関係がある。基本的には、その量は、直ぐ使用可能な組成物として規定された個々の組成物の濃度の割合と相関関係にある。
【0039】
[成分C]
適宜に、本発明の組成物は、さらに界面活性化合物、乳化剤及び/又は分散剤を含むことができる。好適な界面活性化合物は、界面活性剤であり、カチオン性、アニオン性、両性又は非イオン性でも良い。好適な界面活性剤の例としては、R−EOn/POm[但し、Rが、一般に、直鎖若しくは分岐のC6〜C30アルキル基、好ましくはC8〜C20アルキル基を表し、EOがエチレンオキシド単位を表し、そしてPOがプロピレンオキシド単位を表し、EO及びPOの逐次配列は任意であり、n及びmは、相互に独立して、1を超え100未満の値、好ましくは3を超え50未満の値である。]で表されるアルキル及びアルケニルアルコキシレートを挙げることができ、例えばBASF社製のEmulanR、LutensolR及びPlurafac R、アルキルフェノールエトキシレート、EO/POブロック共重合体(BASF社製のPluronicR)、アルキルエーテルスルファート、及びアルキルアンモニウム塩(クワッツ(quats)と呼ばれる)を挙げることができる。
【0040】
本発明の組成物におけるこれらの成分の量は、一般に0.01〜100g/L、好ましくは0.1〜20g/Lである。
【0041】
好ましい一態様において、本発明で使用される組成物は、成分A、B及び適宜Cに加えて、さらに
d)少なくとも1種の遷移金属カチオン、遷移金属オキソアニオン、フルオロメタレート又はランタノイドを基礎とする少なくとも1種の塩、酸又は塩基(成分D);
及び/又は
e)リン酸、硫酸、スルホン酸、硝酸、フッ化水素酸及び塩酸からなる群より選択される少なくとも1種の酸(成分E);
及び/又は
f)少なくとも1種のさらなる腐食防止剤(成分F);
及び/又は
g)Ce、Ni、Co、V、Fe、Zn、Zr、Ca、Mn、Mo、W、Cr及び/又はBiの化合物(成分G);
及び/又は
h)他の助剤及び添加剤(成分H)
を含んでいる。
【0042】
これらの組成物は、この明細書で述べた金属表面を不動態化(特にリン酸処理(化))するのに好適である。
【0043】
[成分D]
好適な成分Eは、遷移金属カチオン、遷移金属オキソアニオン、フルオロメタレート又はランタノイドを基礎とする少なくとも1種の塩、酸又は塩基である。適当な遷移金属カチオンとしては、特に、Ti(IV)、Zr(IV)、Hf(IV)及び/又はSi(IV)のフルオロメタレートであり、また特に好適なランタノイドはCeである。さらに、タングステート及びモリブデートも好適である。
【0044】
成分Dを含む本発明の組成物は、特に、金属表面に腐食防止膜を形成(堆積)するか、金属表面に既に形成された腐食膜の腐食防止作用を強化すために特に好適である。本発明の組成物において、本発明で使用されるポリマー(成分A)は、顕著な腐食防止効果を有する。一般に、本発明で使用される組成物において成分Aを使用することにより、良好な腐食防止性が得られ、このため成分Dの添加は必要ではない。従って、特に好ましい本発明の一態様においては、成分Dの化合物は本発明で使用される組成物には存在しない。
【0045】
本発明の組成物に存在する場合の、成分Dの量は0.02〜20g/Lが好ましい。
【0046】
[成分E]
成分Dに加えて、又は成分Dの代わりに、本発明の組成物は、さらにリン酸、硫酸、スルホン酸(例、メタンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、m−ニトロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸及びこれらの誘導体)、硝酸、フッ化水素酸及び塩酸からなる群より選択される少なくとも1種の酸を含んでも良い。使用される酸の性質は、金属表面の処理のタイプに依存して異なる。従って、リン酸は、一般に、スチール表面をリン酸処理するためのリン酸処理浴で使用される。この場合、本発明で使用される組成物は、リン酸処理溶液である。ここでは、層形成しないリン酸処理溶液、即ち2価金属を含まない溶液として公知のものの間で、区別はされない。これらの層形成しないリン酸処理溶液は、例えば、鉄リン酸処理溶液の形態にある。リン酸処理溶液が、2価金属(例、亜鉛及び/又はマンガン)を含む場合、リン酸処理溶液は層形成であると言われている。硝酸を含む本発明の組成物は、亜鉛及びその合金の表面処理に特に好適であり、一方塩酸を含む組成物はアルミニウム及びその合金の表面処理に特に好適である。
【0047】
使用される酸の量は、用途分野に依存して変化し得る。一般に、成分Eが本発明の組成物に存在する場合は、それは0.2〜200g/L、好ましくは5〜100g/Lで使用される。
【0048】
[成分F]
D及び/又はEに加えて、又はこれらに代えて、本発明で使用される組成物は、少なくとも1種の他の腐食防止剤を含んでいても良い。好適な腐食防止剤は、ブチンジオール、ベンゾトリアゾール、アルデヒド、アミンカルボキシレート、アミノフェノール及びニトロフェノール、アミノアルコール、アミノベンズイミダゾール、アミノイミダゾリン、アミノトリアゾール、ベンズイミダゾールアミン、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール誘導体、ホウ酸ジエタノールアミンエステル等のホウ酸と種々のアルカノールアミンとのエステル、カルボン酸及びそのエステル、キノリン誘導体、ジベンジルスルホキシド、ジカルボン酸及びそのエステル、ジイソブテニルコハク酸、ジチオホスホン酸、脂肪アミン及び脂肪酸アミド、グアニジン誘導体、尿素及びその誘導体、ラウリルピリジニウムクロリド、マレインアミド、メルカプトベンズイミダゾール、N−2−エチルヘキシル−3−アミノスルホプロピオン酸、ホスホニウム塩、フタルアミド、アルキルアルコールのアミン−及びナトリウム−中和リン酸エステル、及びこれらのリン酸エステル自体、ポリアルコキシレート(特に、ポリエチレングリコール)のリン酸エステル、ポリエーテルアミン、スルホニウム塩、スルホン酸(例、メタンスルホン酸)、チオエーテル、チオ尿素、チウラミドスルフィド、桂皮酸及びその誘導体、リン酸亜鉛及びケイ酸亜鉛、リン酸ジルコニウム及びケイ酸ジルコニウムから選択される。
【0049】
他の腐食防止剤として、ブチンジオール及びベンゾトリアゾールの使用が好ましい。
【0050】
腐食防止剤を組成物で使用する場合、一般に0.01〜50g/L、好ましくは一般に0.1〜20g/L、特に好ましくは1〜10g/Lの量で使用される。
【0051】
[成分G]
上述の成分に加えて、或いは適宜その成分に代えて、Ce、Ni、Co、V、Fe、Zn、Zr、Ca、Mn、Mo、W、Cr及び/又はBiの化合物を使用することも可能である。一般に、組成物における本発明の成分Aの使用は、上述の化合物の添加を必要とせずに、良好な腐食防止性をもたらす。本発明の組成物はCr(IV)を含まないことが好ましい。さらに好ましくは成分Gの成分を含んでいないことである。にもかかわらず、上述の化合物(化合物G)を使用する場合は、Fe、Zn、Zr及びCaから選択される化合物を使用することが好ましい。本発明の組成物におけるこれらの化合物の量は、これらが存在する場合、一般に0.01〜100g/L、好ましくは一般に0.1〜50g/L、特に好ましくは一般に1〜20g/Lである。
【0052】
[成分H]
1種以上の上述の成分D〜Gに加えて又はこれらに代えて、本発明の組成物は、他の助剤及び添加剤を含むことができる。好適な助剤及び添加剤として、伝導度(導電率)顔料(conductivity pigment)又は伝導性(導電性)フィラー(conductive filler)、例えば鉄ホスフィド、炭化バナジウム、窒化チタン、カーボンブラック、グラファイト、モリブデンジスルフィド、又はスズ−又はアンチモン−ドープ硫酸バリウムを挙げることができ、鉄ホスフィドが好ましい。この種の伝導度(導電率)顔料又は伝導性(導電性)フィラーは、処理される金属表面の溶接性を改善するため、或いは続く電着(electrocoat)材料による次の被覆を改善するために、本発明の組成物に添加される。さらに、シリカ懸濁液を、特に組成物を、アルミニウムを含む表面処理に使用する場合に、用いることができる。
【0053】
これらの助剤及び/又は添加剤は、一般に極微細な形態で存在している;換言すれば、これらの平均粒径は一般に0.005〜5μm、好ましくは0.05〜2.5μmである。助剤及び添加剤の量は、本発明の組成物の全量に対して、0.1〜50質量%、好ましくは2〜35質量%である。
【0054】
本発明で使用される組成物は、さらに成形特性を改善する添加剤を含むことができる。このような添加剤としては、天然又は合成ワックスを基礎とするワックス・ベース誘導体、例えばアクリル酸・ベースワックス、ポリエチレンワックス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ワックス又はワックス誘導体、又はパラフィン及びその酸化生成物を挙げることができる。
【0055】
その用途分野により異なるが、本発明で使用される組成物は、スチレン、4−ヒドロスチレン、ブタジエン、アクリル酸、アクリレートエステル、アクリルアミド、アクリレート塩、メタクリル酸、メタクリレートエステル、メタクリルアミド、メタクリレート塩、及びアクリルアミドの誘導体を含んでも良い。また、本発明の組成物は、ポリウレタン分散液及びポリエステルウレタン分散液又はポリ尿素分散液を含むこともできる。
【0056】
本発明で使用される組成物中に存在しても良い化合物の別のグループとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキシドの共重合体、及びとプロピレンオキシドの共重合体を挙げることができる。
【0057】
本発明で使用される組成物は、不動態層の形成(変換膜の形成)、特にリンス(すすぎ洗い)無しの変換膜の形成、即ち、例えば亜鉛メッキされたスチール及びアルミニウムのリンス作業の回数が少ない方法に使用される。本発明の不動態膜は、金属表面に形成される。
【0058】
本発明で使用される組成物は、適宜に、さらに、成分Iとして錯化剤を含むことができる。錯化剤の好適な例としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、エチレンジアミン(ED)、クエン酸、及びこれらの化合物の塩を挙げることができる。
【0059】
本発明で使用される組成物は、適宜、さらに成分Kとして、少なくとも1種の酸、又は対応する酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩を含むことができ、その酸はHNO3、H2SO4、H3PO4、ギ酸、及び酢酸から選択されることが好ましい。酸は、一般に、0.5〜700g/L、好ましくは5〜280g/Lの量で使用される。
【0060】
上述の成分に加えて、本発明で使用される組成物は、別の添加剤を含むことができる。適当な添加剤として、1−(2−ビニルピリジニウム)−2−エチルスルホベタイン、1,1−ジメチル−2−プロピニル−1−アミン、1−ピリジニウム−2−エチルスルホベタイン、1−ピリジニウム−2−ヒドロキシ−3−プロピルスルホベタイン、1−ピリジニウム−3−プロピルスルホベタイン、2,2´−ジクロロジエチルエーテル、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2−ブチン−1,4−ジオール、2−ブチン−1,4−ジオールエトキシレート、2−ブチン−1,4−ジオールプロポキシレート、ナトリウム3−(2−ベンゾチアゾリルチオ)−1−プロパンスルホネート、ナトリウム 3,3’−ジチオビス(1−プロパンスルホネート)、3−[(アミノイミノメチル)チオ]−1−プロパンスルホン酸、ナトリウム3−[(ジメチルアミノ)チオキソメチル]チオ−1−プロパンスルホネート、カリウム3−[エトキシチオキソメチル]チオ−1−プロパンスルホネート、ナトリウム3−クロロ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネート、3−ヘキシン−2,5−ジオール、ナトリウム3−メルカプト−1−プロパンスルホネート、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−メトキシベンズアルデヒド、アルデヒド、アルキルフェニルポリエチレンオキシドスルホプロピルエーテルカリウム塩、アルキルポリエチレンオキシドスルホプロピルエーテルカリウム塩(例、トリデシル/ペンタデシルポリエチレンオキシドスルホプロピルエーテルカリウム塩)、ナトリウムアリルスルホネート、アミドスルホン酸、アルキルアルコールのアミン−及びナトリウム−中和リン酸エステル、アミンカルボキシレート、アミノフェノール及びニトロフェノール、アミノアルコール、アミノベンズイミダゾール、アミノイミダゾリン、アミノトリアゾール、メチルベンジルアセトアセテート、ベンジルアセトン、ベンズイミダゾールアミン、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、ベンジルピリジン−3−カルボキシレート、ビスフェノールA、種々のアルカノールアミンとホウ酸のエステル(例、ホウ酸ジエタノールエステル)、カルボン酸及びそれらのエステル、カルボキシエチルイソチウロニウムベタイン、キノリン誘導体、エチレン及びアクリル酸の共重合体、イミダゾール及びエピクロルヒドリンの共重合体、イミダゾール及びモルホリン及びエピクロルヒドリンの共重合体、N,N’−ビス[3−(ジメチルアミノ)プロピル]尿素及び1,1’−オキシビス[2−クロロエタン]の共重合体、n−ブチルアクリレート及びアクリル酸及びスチレンの共重合体、ジベンジルスルホキシド、ジカルボン酸及びそれらのエステル、ジエチレントリアミンペンタ酢酸及びそれから誘導される塩、ジイソブテニルコハク酸、ジナトリウムエチレンビスジチオカルバメート、ジチオホスホン酸、エチルアミドスルホン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸及びそれから誘導される塩、エチルグリシンジ酢酸及びそれから誘導される塩、エチルヘキサノールエトキシレート、脂肪アミン及び脂肪酸アミド、ホルムアルデヒド、グリセロールエトキシレート、グアニジン誘導体、尿素及びその誘導体、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸及びそれから誘導される塩、イミダゾール、イソプロピルアミドスルホン酸、イソプロピルアミドスルホニルクロリド、ラウリル/ミリスチルトリメチルアンモニウムメトスルフェート、ラウリルピリジニウムクロリド、マレインアミド、メルカプトベンズイミダゾール、メチルアミドスルホン酸、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)−エチレンジアミン、N,N−ジエチル−2−プロピン−1−アミン、N,N−ジエチル−4−アミノ−2−ブチン−1−オル、N,N−ジメチル−2−プロピン−1−アミン、N−2−エチルヘキシル−3−アミノスルホプロピオン酸、N−アリルピリジニウムクロリド、硫酸化アルキルフェノールエトキシレートのナトリウム塩、ナトリウム2−エチルヘキシルスルフェート、ニコチン酸、ニトロトリ酢酸及びそれから誘導される塩、ナトリウムニトロベンゼンスルホネート、N−メタアリルピリジニウムクロリド、オルト−クロロベンズアルデヒド、ホスホニウム塩、フタルアミド、ピコリン酸、ポリエーテルアミン、ポリエチレンイミン、ポリビニルイミダゾール、プロパルギルアルコール、プロパルギルアルコールエトキシレート、プロパルギルアルコールプロポキシレート、ナトリウムプロピンスルホネート、プロピオン酸、プロピレンジアミンテトラ酢酸及びそれから誘導される塩、ピロール、4級化ポリビニルイミダゾール、2−ブチン−1,4−ジオールとエピクロロヒドリンとの反応生成物、
2−ブチン−1,4−ジオールとプロパンスルトンとの反応生成物、サッカリンとプロパンスルトンとの反応生成物、アルキルエトキシレート/プロポキシレートとプロパンスルトンとの反応生成物、ポリエチレンイミンとプロパンスルトンとの反応生成物、β−ナフトールエトキシレート/プロポキシレートとプロパンスルトンとの反応生成物、レゾルシノールエトキシレート、サッカリン、β−ナフトールエトキシレート、ナトリウムβ−ナフトールエトキシレートスルフェート、スルホニウム塩、スルホン酸(例、メタンスルホン酸)、チオジグリコールエトキシレート、チオエーテル、チオ尿素、チウラミドスルフィド、ナトリウムビニルスルホネート、桂皮酸及びその誘導体、リン酸亜鉛及びケイ酸亜鉛、リン酸ジルコニウム及びケイ酸ジルコニウム、ハイポホスフィット(例、ナトリムハイポホスフィット)、NaBH4、ジメチルアミノボラン、ジエチルアミノボラン、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、ウロトロピン、塩化パラジウム、スズ酸ナトリウム、HFxBF3、分子量100〜1000000g/モルのポリエチレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体(例えば、BASF Aktiengesellshaft,Ludwigshafen/Rhein社製のPluronic)、及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドのランダム共重合体(特に、100〜2000g/モルのもの)を挙げることができる。
【0061】
本発明の特に好ましい一態様において、本発明の不動態層は、水溶性窒素含有ポリマーに加えて、基板金属(特に、アルミニウム及び亜鉛)の金属イオン、及び/又はアルミニウム又は亜鉛(しかし他の金属は含まない)との合金の合金金属イオンを含んでいる。このことは、不動態の製造に使用される組成物が、金属又は金属化合物を含まないことを意味する。他の金属又は金属化合物を添加しなくても、本発明の水溶性窒素含有ポリマーの使用により、顕著に腐食安定性に優れた不動態層を製造することができる。
【0062】
基板金属の表面に形成される本発明の不動態層の厚さは、3μm以下であることが好ましい。厚さは、さらに0.01〜3μm、特に0.1〜3μmが好ましい。その層の厚さは、本発明の組成物が金属表面で作用する前及び後に、質量差測定により(層は1kg/Lの比重とする)決定される。下記に規定された層厚は、実際のその比重と関係なく、このように決定されたパラメータである。このような薄層で、顕著な腐食防止を達成するのに十分である。このような薄層は、不動態化されたワークピースの寸法コンプライアンスを保証する。
【0063】
本発明(明細書)は、金属表面と本発明の不動態層から構成される表面を提供する。好適な金属表面及び好ましく使用されるもの、及び不動態層の好ましい態様は、既に述べた。
【0064】
本発明(明細書)は、さらに金属表面に本発明の不動態層を形成する方法も提供する。この方法は、金属表面を本発明で定義された組成物と接触させる工程を含むものである。好適な組成物及び好適な組成物の好ましい態様は、既に前述した。好適な金属表面及び金属表面の好ましい態様は、同様に既に前述した。
【0065】
本発明の方法において、本発明で使用される水溶性窒素含有ポリマーは、溶液、乳濁(エマルジョン)、懸濁又はエアゾールの形態のものである。本発明の方法で使用される本発明の組成物では、共重合体(成分A)は、水溶液の形態が好ましい。
【0066】
処理法は工業的標準法に対応している。金属表面は、本発明の組成物を金属表面に噴霧することにより、或いは金属表面を組成物に浸漬することにより、組成物に接触させることが好ましい。特に好ましく使用される処理は、取り扱われる部品の数、寸法、及び形状に依存して変わる。従って、接触は、噴霧、ロール塗布又は浸漬処理により行われることが好ましい。
【0067】
本発明の不動態層が、金属ストリップをリン酸処理することにより形成(施与)される場合、リン酸を成分Eとして含む本発明の組成物は、ロールオン法、又は乾燥場所(dry-place)法、又はすすぎ無し(no-rinse)法により施与(塗布)することができ、その場合、本発明で使用されるリン酸化組成物を金属ストリップに施し、リンスすることなく乾燥し、ポリマー膜を形成する。
【0068】
本発明(明細書)は、さらに下記の工程を含む方法を提供する:
a)適宜に、基板の金属表面を洗浄し、油、油脂、及び汚れを除去する工程、
b)適宜に、水洗する工程、
c)適宜に、酸洗い(pickling)し、錆又は他の酸化物を除去する工程、
d)適宜に、水洗する工程、
e)金属表面を、塩基である水溶性窒素含有ポリマーを含む組成物と接触させ、その際このポリマーの水溶液(成分A)は、pH7未満において、金属表面の1種以上の金属の塩を添加した場合に沈殿を形成するものである工程、
f)適宜に、水洗する工程、
g)適宜に、後処理する工程。
【0069】
金属表面に共重合体(成分A)を接触させる工程は、不動態化工程、特にリン酸処理工程であり、当該技術者に公知の工程である。本発明の不動態層は金属上に形成される。リン酸処理を工程e)で行う場合、g)で金属表面を不動態化添加剤で後処理することも可能である。
【0070】
好ましく使用される水溶性窒素含有ポリマーは既に前で定義した。
【0071】
前工程での溶液成分が、次の工程で必要な溶液を汚染することを防止するために、各工程間において水洗が行われる。
【0072】
しかしながら、本発明の方法を、リンス無し法として、即ち工程b)、d)及びf)を行わずに実施することも可能である。
【0073】
「リンス無し(no-rinse)」法として知られる方法では、本発明で使用される組成物を、一般に、基板金属表面に噴霧するか、或いは塗布ロールによって表面に移す。これは、一般に2〜20秒の範囲の曝露時間実施され、その後中間のリンスなしに、本発明で使用される組成物を乾燥することにより行われる。乾燥は、例えば加熱されたオーブンで行うことができる。
【0074】
洗浄工程(工程a)及び本発明で使用される水溶性窒素含有ポリマー(成分A)の存在下に金属表面を接触する工程(工程e)を、一工程で行っても良く、即ち、慣用の成分のみならず、本発明で使用される組成物を含む配合を用いて行っても良い。
【0075】
本発明の方法は、5〜100℃、好ましくは10〜80℃、さらに好ましくは15〜45℃の温度で一般に行われる。
【0076】
本発明は、さらに、金属表面を、水溶性窒素含有ポリマーを含む組成物であって、該ポリマーが塩基であり、且つ該ポリマーの水溶液は、pH7未満において、金属表面の1種以上の金属の塩を添加した場合に沈殿を形成するものであることを特徴とする組成物を、金属表面を不動態化するために使用する方法も提供する。好ましく使用される組成物、及び組成物で好ましく使用されるポリマー(成分A)は、既に前述した。好ましく使用される金属表面、及び好ましく実施される金属表面の不動態化法も同様に既に前述した。
【0077】
金属表面に不動態層を希有制する工程に続いて、本発明の不動態層を備えた金属表面に、工程a)〜g)の後で、被覆材料を設けることができる。被覆は、当該技術者に公知の方法で行うことができる。使用される被覆材料としては、例えば、粉末被覆材料、又は電解メッキ可能な、特にカソードメッキ可能な、メッキ被覆材料を挙げることができる。
【0078】
従って、本発明(明細書)は、少なくとも1層の本発明の不動態層X、及び膜Yとして少なくとも1層の被覆膜(好ましくは2層以上の被覆膜)を含む、金属表面上の被覆構造体を、さらに提供する。
【0079】
不動態層及びそれの好ましい態様は、既に前述した。好適な被覆膜は、当該技術者に公知である。
【0080】
本発明の被覆構造体は、付加層を有する多数被膜塗料構造体(2層以上の被覆膜)であり得る。例えば、多数被膜塗料構造体は、少なくとも1層の下記の層から構成されてもよく、典型的には以下のように配列し得る:
・顔料混入(着色)され、及び/又は効果のある物質を備えた層W、
・プライマー、ベースコート、下塗り、顔料混入膜(着色膜)又は効果のある物質を備えた膜からなる群より選択される層Z。
【0081】
層Z及び/又はWにおける着色及び/又は効果のある被覆材料として、好適な被覆材料は、これらの目的に通常用いられ且つ当該技術者に公知のもの全てを一般に包含する。これらの材料は、物理的、熱的又は化学線(放射線)照射で、或いは熱的及び化学線(放射線)照射(2重硬化)で硬化し得るものでも良い。これらの材料としては、通常のベースコート材料、水溶性ベースコート材料、実質的に溶剤及び水を含まない液体のベースコート材料(100%組成物)、実質的に溶剤及び水を含まない固体のベースコート材料(着色(顔料混入)粉体塗料材料)、又は実質的に溶剤を含まない着色(顔料混入)粉体被覆分散体(粉末スラリーのベースコート材料)を挙げることができる。これらは熱硬化性、又は2重硬化性でも良く、内部又は外部で架橋し得る。
【0082】
1種以上、好ましくは1〜3種、さらに好ましくは1又は2種の、極めて好ましくは1種の着色材料及び/又は効果のある被覆材料を層に使用することが可能である。
【0083】
「実質的に溶剤を含まない」とは、問題の被覆材料が、2.0質量%未満、好ましくは1.5質量%未満、さらに好ましくは1.0質量%未満の残留揮発溶剤含有量を有することを意味する。残留含有量がガスクロマトグラフィによる検出限界未満であれば、特に有利である。
【0084】
多数被膜塗料構造体では、水溶性ベースコート材料を使用することが好ましい。水溶性ベースコート材料の例としては、EP0089497A1、EP0256540A1、EP0260447A1、EP0297576A1、WO96/12747、EP0523610A1、EP0228003A1、EP0397806A1、EP0574417A1、EP0531510A1、EP0581211A1、EP0708788A1、EP0593454A1、DE−A−4328092A1、EP0299148A1、EP0394737A1、EP0590484A1、EP0234362A1、EP0234361A1、EP0543817A1、WO95/14721、EP0521928A1、EP0522420A1、EP0522419A1、EP0649865A1、EP0536712A1、EP0596460A1、EP0596461A1、EP0584818A1、EP0669356A1、EP0634431A1、EP0678536A1、EP0354261A1、EP0424705A1、WO97/49745、WO97/49747、EP0401565A1又はEP0817684、カラム5、31〜45行に記載のものを挙げることができる。
【0085】
前述の着色材料又は効果のある被覆材料は、着色ベースコート及び/又は効果のあるベースコートのみならず、着色−及び/又は効果−をもたらす組合せの効果のある被膜を作製する機能を有し得る。これらは、多数被膜の着色及び/又は効果のある塗料構造体において少なくとも2種の機能を満たす被覆を意味する。このような機能としては、例えば、腐食に対する保護機能、接着促進機能、機械エネルギーの吸収機能、及び着色及び/又は効果の付与機能を挙げることができる。特に、組合せの効果のある被膜は、機械エネルギーを吸収するように働き、同時に着色及び/又は効果を付与するように働く;従って、それは、表面被膜、又はアンチストーンチップ(antistonechip)プライマー被膜の機能、及びベースコートの機能を満足する。さらに好ましくは、組合せの効果のある被膜はまた、腐食保護効果及び/又は接着促進効果を有する。
【0086】
層(W)及び/又は(Z)の典型的な厚さは、一般に0.1〜2000μm、好ましくは0.5〜1000μm、さらに好ましくは1〜500μm、極めて好ましくは1〜250μm、特に好ましくは10〜100μmである。
【0087】
多数被膜塗料構造体に使用することができる被覆材料は、着色及び/又は効果のある顔料でも良い。好適な着色顔料としては、被覆材料として慣用される有機又は無機の全ての顔料を挙げることができる。有機又は無機の顔料の例としては、二酸化チタン、微粒子の二酸化チタン、酸化鉄顔料、カーボンブラック、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、及びピローロピロール顔料を挙げることができる。
【0088】
効果のある顔料は、特に板状構造が注目されている。効果のある顔料(effect pigment)の例としては、金属顔料(例、アルミニウム、銅又は他の金属の顔料);干渉顔料(例、金属酸化物被覆金属顔料、例えば二酸化チタン被覆又は混合酸化物被覆アルミニウム)、被覆マイカ(例、二酸化チタン被覆マイカ)、及びグラファイト効果のある顔料を挙げることができる。例えば、硬度を改善するために、UV−硬化性顔料、及び適宜フィラーを使用することが有利であり得る。これらは、放射線硬化性化合物、例えばアクリロイル−官能化シラン、被覆顔料/フィラーであり、このため放射線硬化操作に包含され得る。
【0089】
本発明の被覆構造体(system)は、下記の工程を含む方法により一般に製造される:
a)不動態層を形成するための前述の方法に従い、不動態層Xを形成する工程;
b)その不動態層を被覆する工程。
【0090】
不動態層を形成する方法は、その方法の好ましい態様に沿って、既に前述した。工程b)に好適な被覆方法は当該技術者に公知である。
【0091】
下記の実施例により、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0092】
[比較例]
金属テストパネル(亜鉛メッキスチール、20μmの亜鉛)を、表1に規定された不動態化法により不動態化した。安定時間は塩噴霧試験で決定した。
(塩噴霧試験)
腐食防止効果に使用される基準は、DIN50021に従う塩噴霧試験の結果である。腐食試験の安定時間は、観察される腐食損傷の種類に従い異なって定義される。
【0093】
−白色斑点が、一般に1mmを超える直径で形成された場合(Zn酸化物又はAl酸化物、白錆として知られている)、報告される安定時間は、観察される損傷がDIN EN ISO 10289(2001年4月、アネックスB、19頁)における評価段階8になるまでの時間である。
【0094】
−白錆斑点が形成される前に、黒色斑点が一般に1mm未満の直径で形成された場合(特に、不動態層を備えた亜鉛の上で)、報告される安定時間は、観察される損傷がDIN EN ISO 10289(2001年4月、アネックスA、9頁)における評価段階8になるまでの時間である。
【0095】
【表1】

【0096】
表2に規定された試薬は、HNO30.1%溶液中に濃度Cで溶解させる。金属テストパネル(亜鉛メッキスチール、20μmの亜鉛)を、溶液に1分間浸漬し、一晩吊り下げて乾燥する。いくつかの場合、層厚Dを質量差により決定した。安定時間は塩噴霧試験で測定した。
【0097】
(質量差)
層の厚さは、層の比重が1kg/Lであるとの仮定のもとに、本発明で使用される組成物が金属表面に作用する前及び後の質量差により決定される。層の実際の比重に関係なく、以下の本文の層厚に関しては、このように決定されたパラメータである。
【0098】
【表2】

【0099】
未処理金属パネルをその処理した片方(即ち、本発明の不動態層が設けられたもの)と比較した場合、腐食試験における安定時間が3倍であり、これは腐食防止効果の信頼し得る表示であると理解される。
【0100】
腐食試験の安定時間は、より高い温度(例、60℃で)で、或いはより高濃度の溶液にシステム(組成物)を浸漬することにより、さらに改善され得る。この高濃度の溶液は、上記規定された実施例のものとは異なる濃度を有する硝酸を含む溶液である。例えば、ポリマー濃度の増加により、安定時間の延長がもたらされる。ポリマーの濃度は、5質量%未満の値が好ましい。
【0101】
塩化亜鉛の水溶液は、白色の不溶性沈殿を形成し、その際、一般に、丁度0.5質量%のポリマーから始まる広い濃度範囲のポリビニルイミダゾール水溶液が使用される。
【0102】
*上記K値は、平均分子量を特性化するためのFikentscher定数である;H.-G. Elias, Makromolekuele 第1巻, 第5版, Huethig & Verlag, Basel 1990, 99頁参照。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属表面を、水溶性窒素含有ポリマーを含む組成物と接触させることにより得られる金属表面上の不動態層であって、該ポリマーが塩基であり、且つ該ポリマーの水溶液が、pH7未満において、金属表面の1種以上の金属の塩を添加した場合に沈殿を形成するものであることを特徴とする金属表面上の不動態層。
【請求項2】
水溶性窒素含有ポリマーが、45質量%を超えるビニルイミダゾール及び必要により少なくとも1種の別のモノマーから構成されている請求項1に記載の金属表面上の不動態層。
【請求項3】
水溶性窒素含有ポリマーが、ビニルイミダゾールの単独重合体である請求項2に記載の金属表面上の不動態層。
【請求項4】
厚さが3μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属表面上の不動態層。
【請求項5】
厚さが0.01〜3μm以下である請求項4に記載の金属表面上の不動態層。
【請求項6】
金属表面と請求項1〜5のいずれか1項に記載の不動態層からなる表面。
【請求項7】
金属表面に不動態層を形成する方法であって、金属表面を請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物と接触させることを特徴とする方法。
【請求項8】
接触を、噴霧法、ロール塗布法、又は浸漬法により行う請求項7に記載の方法。
【請求項9】
金属表面を不動態化するために、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物を使用する方法。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれかに記載の不動態層X及び別の被覆膜Yを含む金属表面構造体。
【請求項11】
下記の工程:
請求項7又は8に記載の方法により不動態層Xを形成する工程、及び
その不動態層を被覆する工程
を含む請求項10に記載の塗料構造体を形成する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛及びアルミニウム、及びこれらの金属と他の合金成分との合金から選択される金属表面上の不動態層であって、金属表面をビニルイミダゾールの単独重合体を含む組成物と接触させることにより得られる不動態層。
【請求項2】
厚さが3μm以下である請求項1に記載の金属表面上の不動態層。
【請求項3】
厚さが0.01〜3μm以下である請求項2に記載の金属表面上の不動態層。
【請求項4】
金属表面と請求項1〜3のいずれか1項に記載の不動態層からなる表面。
【請求項5】
亜鉛及びアルミニウム及びこれらの金属と他の合金成分との合金から選択される金属表面に不動態層を形成する方法であって、金属表面を請求項1に記載の組成物と接触させることを特徴とする方法。
【請求項6】
接触を、噴霧法、ロール塗布法、又は浸漬法により行う請求項5に記載の方法。
【請求項7】
金属表面を不動態化するために、請求項1に記載の組成物を使用する方法。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれかに記載の不動態層X及び別の被覆膜Yを含む金属表面構造体。
【請求項9】
下記の工程:
請求項5又は6に記載の方法により不動態層Xを形成する工程、及び
その不動態層を被覆する工程
を含む請求項8に記載の塗料構造体を形成する方法。

【公表番号】特表2006−520852(P2006−520852A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504676(P2006−504676)
【出願日】平成16年3月12日(2004.3.12)
【国際出願番号】PCT/EP2004/002623
【国際公開番号】WO2004/081128
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】