説明

金属表面処理組成物、これにより処理されてなる金属材料、及びこの金属材料を用いた金属ラミネートフィルム

【課題】ラミネートフィルムを接着させた金属に、ラミネートフィルムと金属との間の十分な密着性と耐食性を付与することができる、金属表面処理組成物を提供すること。
【解決手段】金属の表面とラミネートフィルムとの密着性を向上させるために用いられる金属表面処理組成物であって、1分子中に1級アミノ基を2個以上含有する1級アミノ基含有樹脂を、樹脂固形分当たり40質量%以上90質量%以下と、1分子中にグリシジル基を1個以上含有するグリシジル基含有樹脂を、樹脂固形分当たり5質量%以上30質量%以下と、1分子中にアミノ基を1個以上含有するアミノシラン化合物を、樹脂固形分当たり5質量%以上20質量%以下と、を含有する金属表面処理組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の表面に施され、ラミネートフィルムと金属との密着性を向上させるための金属表面処理組成物、及びこれにより処理されてなる金属材料に関する。この金属材料は、フィルムラミネート缶、リチウム電池外装材、レトルト用アルミパウチ等に展開される金属ラミネートフィルムに適用される。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属材料表面を保護し、意匠を施すために、金属素材の表面にラミネート加工を施すことが行われている。ラミネートフィルムは、成型加工性、耐食性、及び内容物のバリア性等に優れ、また塗料と異なり、金属材料への塗布工程において有機溶剤等の揮発がなく、生産環境面で好ましいことから、食品缶、意匠缶、コンデンサーケース、電池材等、コイルやシート状でプレコートされる包装用の金属材料、更にはアルミパウチ等の金属箔を含む軟包装材料や表面保護材として、多く用いられている。
【0003】
ところで、ラミネートフィルムは、上述のような優れた特性を有する一方で、ラミネート加工を施した金属材料においては、金属素材とラミネートフィルムとの密着性が十分でないために、金属材料に包装材としての高度な加工を施したり、加工後の包装材に内容物を加えて加熱処理を施したりする際に、金属素材からラミネートフィルムが剥離することがあった。このような、金属素材からのラミネートフィルムの剥離は、金属材料の美観を損ね、耐食性を低下させる大きな原因となっていた。
【0004】
したがって、ラミネート加工が施された金属材料における、このような問題を解決するため、ラミネート加工に先立って、金属素材の表面に金属表面処理組成物による表面処理層を形成し、ラミネートフィルムと金属素材との密着性を向上させることが行われている。
【0005】
例えば、特許文献1には、アミノ化フェノール重合体と、Ti、Zr、Hf、Mo、W、Se、Ce、Fe、Cu、Zn、V及び3価Crから選ばれる少なくとも1種の金属化合物とを含有し、pHが1.5〜6.0の範囲であることを特徴とする接着下地用の金属表面処理薬剤が開示されている。この金属表面処理薬剤によれば、アミノ化フェノール重合体に含まれる水酸基、アミノ基等の官能基が金属化合物と金属架橋することで、バリア性を向上するために耐食性と耐溶剤性が得られ、更に残存した水酸基により金属材料の表面と強く接着するとされている。このため、ラミネートフィルムや塗膜との層間密着性を向上させることができるとされている。
【特許文献1】特開2003−138382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の金属表面処理薬剤では、ラミネートフィルムを接着させた金属材料の、多くの用途において要求される、金属素材、特にはアルミニウム系金属とラミネートフィルムとの高い密着性を満足することはできなかった。このため、ラミネートフィルムを接着させた状態で、十分な密着性と耐食性を示す、金属表面処理組成物の開発が望まれていた。
【0007】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、ラミネートフィルムを接着させた金属に、ラミネートフィルムと金属との間の十分な密着性と耐食性を付与することができる、金属表面処理組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ラミネートフィルムと金属との間の十分な密着性と耐食性を得るための組成物について誠意検討を行った結果、ラミネートフィルムを接着させるための金属の表面に、1分子中に1級アミノ基を2個以上含有する1級アミノ基含有樹脂と、1分子中にグリシジル基を1個以上含有するグリシジル基含有樹脂と、1分子中にアミノ基を1個以上含有するアミノシラン化合物と、をある特定の範囲の量で含有する金属表面処理組成物を用いて表面処理層を形成させたときに、ラミネートフィルムと金属とを高い密着性をもって密着させられ、更には各種内容物に対しても密着性の低下を伴うことがないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0010】
(1) 金属の表面とラミネートフィルムとの密着性を向上させるために用いられる金属表面処理組成物であって、1分子中に1級アミノ基を2個以上含有する1級アミノ基含有樹脂を、樹脂固形分当たり40質量%以上90質量%以下と、1分子中にグリシジル基を1個以上含有するグリシジル基含有樹脂を、樹脂固形分当たり5質量%以上30質量%以下と、1分子中にアミノ基を1個以上含有するアミノシラン化合物を、樹脂固形分当たり5質量%以上20質量%以下と、を含有する金属表面処理組成物。
【0011】
(2) 更に、1分子中にオキサゾリン基を2個以上含有するオキサゾリン基含有樹脂を、樹脂固形分当たり10質量%以上40質量%以下含有する(1)に記載の金属表面処理組成物。
【0012】
(3) 前記1級アミノ基含有樹脂が、ポリアリルアミンである(1)又は(2)に記載の金属表面処理組成物。
【0013】
ここで、「ポリアリルアミン」とは、化学式(1)で示される構造単位を有する樹脂をいう。
【化1】

[式中、nは2以上2000以下の整数を表す。]
【0014】
(4) 金属と、(1)から(3)のいずれかに記載の金属表面処理組成物からなり、かつ前記金属の表面上に形成された表面処理層と、を含む金属材料。
【0015】
(5) 前記表面処理層の乾燥皮膜量が、5mg/m以上1000mg/m以下である(4)に記載の金属材料。
【0016】
(6) 前記金属が、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金である(4)又は(5)に記載の金属材料。
【0017】
(7) (4)から(6)のいずれかに記載の金属材料の少なくとも前記表面処理層側に、熱可塑性樹脂からなるフィルム層を積層させたことを特徴とする金属ラミネートフィルム
【0018】
(8) (7)に記載の金属ラミネートフィルムからなることを特徴とするフィルムラミネート缶。
【0019】
(9) (7)に記載の金属ラミネートフィルムからなることを特徴とするリチウム電池用外装材。
【0020】
(10) (7)に記載の金属ラミネートフィルムからなることを特徴とするレトルトアルミパウチ。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ラミネートフィルムと金属とを、高い密着性を持って接着させることができる金属表面処理組成物を提供することができる。この金属表面処理組成物を用いて、表面処理を行った金属にラミネートフィルムを接着させた場合、密着性、耐食性に優れた金属材料を得ることができる。この金属ラミネートフィルムはフィルムラミネート缶やリチウム電池外装材やレトルトアルミパウチ等に展開することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<金属表面処理組成物>
本実施形態においては、金属に後述する化成処理剤による処理を施した後、又は、化成処理剤による処理を施さずに、金属表面処理組成物を用いて表面処理層を形成させる。金属表面処理組成物は、1分子中に1級アミノ基を2個以上含有する1級アミノ基含有樹脂と、1分子中にグリシジル基を1個以上含有するグリシジル基含有樹脂と、1分子中にアミノ基を1個以上含有するアミノシラン化合物と、を含む。更に必要に応じて、1分子中にオキサゾリン基を2個以上含有するオキサゾリン基含有樹脂を含む。
【0023】
[1級アミノ基含有樹脂]
本実施形態において用いることができる、1級アミノ基含有樹脂としては、1分子中に1級アミノ基を2個以上含有しているものであれば、特に限定されないが、例えば、ポリアリルアミン、ポリリジン、ポリビニルアミン、及びポリエチレンイミン等を挙げることができる。1級アミノ基含有樹脂に含まれる1級アミノ基は、加熱により、後述のグリシジル基含有樹脂に含まれるグリシジル基と反応して架橋構造を形成し、以って、安定な3次元網目構造を形成する。このため、1級アミノ基含有樹脂と後述のグリシジル基含有樹脂とを併用することにより、ラミネートフィルムの貼り付け後に、安定で耐水性に優れた金属材料を得ることができる。
【0024】
1級アミノ基含有樹脂としては、市販のものを用いることができ、例えば、ポリアリルアミンとして「PAA−001」(商品名、日東紡績社製)、ポリリジンとして「ポリリジン」(商品名、チッソ社製)、ポリビニルアミンとして、「PVAM−0595」(商品名、三菱化学社製)、ポリエチレンイミンとして、「エポイミンP−1000」(商品名、日本触媒社製)等を用いることができる。なお、本実施形態においては、金属表面処理組成物の塗装後における60℃から100℃に及ぶ、水が揮発する程度の乾燥条件においても架橋反応が進行するため、1級アミノ基含有樹脂としては、ポリアリルアミンを用いることが好ましい。
【0025】
本実施形態に係る金属表面処理組成物における1級アミノ基含有樹脂の含有量は、樹脂固形分当たり、40質量%以上90質量%以下であり、60質量%以上80質量%以下であることが好ましい。1級アミノ基含有樹脂の含有量が40質量%未満では、1級アミノ基の含有量が十分でないため、ラミネートフィルムと金属との密着性が低下し、90質量%を超えると、他の構成成分の好ましい配合量を確保することができない。
【0026】
1級アミノ基含有樹脂の平均分子量は、500以上1000000以下であることが好ましく、1000以上70000以下であることが更に好ましい。分子量が1000000を超える場合には金属表面処理組成物の粘度が高くなり過ぎて、作業性が低下し、500未満である場合には好ましい表面処理層が得られない。
【0027】
1級アミノ基含有樹脂が、ポリアリルアミンである場合、その平均分子量は、1000以上60000以下であることが好ましい。これらの範囲外では、目的とする効果が得られないおそれがある。1000以上15000以下であることが更に好ましい。
【0028】
[グリシジル基含有樹脂]
本実施形態において用いることができる、グリシジル基含有樹脂としては、1分子中にグリシジル基を1個以上含有しているものであれば、特に限定されないが、架橋構造を形成するためには、2個以上であることが好ましい。グリシジル基含有樹脂としては、一般に、水溶性・水分散性のエポキシ化合物を用いることができ、例えば、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、及びグリセロールポリグリシジルエーテル等を用いることができる。グリシジル基含有樹脂は、加熱により、アミノ基及び必要に応じて添加されたオキサゾリン基含有樹脂の有するオキサゾリン基と架橋構造を形成し、安定な3次元網目構造の形成に寄与するので、金属表面処理組成物にグリシジル基を添加することにより、ラミネートフィルム貼り付け後に、安定で耐水性に優れた金属材料を得ることができる。
【0029】
グリシジル基含有樹脂は、市販のものを用いることができ、ポリグリセロールポリグリシジルエーテルとして「デナコールEX−512」(商品名、ナガセ化成工業社製)、ジグリセロールポリグリシジルエーテルとして「デナコールEX−421」(商品名、ナガセ化成工業社製)、グリセロールポリグリシジルエーテルとして「デナコールEX−313」(商品名、ナガセ化成工業社製)を用いることができる。グリシジル基含有樹脂のエポキシ当量は、120〜140であることが好ましい。これらの範囲外では、目的とする効果が得られないおそれがある。
【0030】
本実施形態に係る金属表面処理組成物におけるグリシジル基含有樹脂の含有量は、樹脂固形分当たり、5質量%以上30質量%以下であり、10質量%以上20質量%以下であることが好ましい。グリシジル基含有樹脂の含有量が5質量%未満では、グリシジル基の含有量が十分ではないため、架橋剤としての効果が十分に得られずに耐水性が低下し、30質量%を超えると、密着性に寄与する1級アミノ基含有樹脂の含有量が低減し、ラミネートフィルムとアルミニウム系金属材料との密着性が低下する。
【0031】
[アミノシラン化合物]
本実施形態において用いることのできるアミノシラン化合物としては、1分子中にアミノ基を1個以上含有するアミノシラン化合物であって、有機官能基としてアミノ基を含有しているものであれば特に限定されないが、一般的には、1分子中に3個のアルコキシ基と1個以上のアミノ基を有するシランカップリング剤を用いることができる。アミノシラン化合物は、金属とラミネートフィルムとの密着性を付与すると共に、グリシジル基含有樹脂との架橋反応により、耐水性改善にも寄与する。このため、金属表面処理組成物にアミノシラン化合物を添加することにより、ラミネートフィルム貼り付け後に、密着性及び耐水性に優れた金属材料を得ることができる。
【0032】
アミノシラン化合物には、市販のものを用いることができ、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランとして「サイラエースS310」(チッソ社製)、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランとして「サイラエースS320」(商品名、チッソ社製)、3−アミノプロピルトリエトキシシランとして「サイラエースS330」(商品名、チッソ社製)、3−アミノプロピルトリメトキシシランとして「サイラエースS360」(商品名、チッソ社製)等を用いることができる。
【0033】
本実施形態に係る金属表面処理組成物におけるアミノシラン化合物の含有量は、5質量%以上20質量%以下であり、10質量%以上15質量%以下が好ましい。アミノシラン化合物の含有量が5質量%未満である場合には、アミノ基の含有量が十分ではないために密着性向上の効果が得られず、20質量%を超えても密着性はそれ以上改善せずコスト面で不利となる。
【0034】
[オキサゾリン基含有樹脂]
本実施形態において用いることができる、オキサゾリン基含有樹脂としては、1分子中に2個以上のオキサゾリン基を有しているものであれば、特に限定されない。即ち、オキサゾリン基含有樹脂は、主鎖がアクリル骨格のオキサゾリン基含有樹脂、主鎖がスチレン/アクリル骨格のオキサゾリン基含有樹脂、主鎖がスチレン骨格のオキサゾリン基含有樹脂、及びアクリロニトリル/スチレン骨格のオキサゾリン基含有樹脂等を用いることができる。オキサゾリン基含有樹脂は、金属基材への密着性向上に寄与し、更に厚膜塗装する際の皮膜均一性を改善する効果をも有する。
【0035】
本実施形態において用いるオキサゾリン基含有樹脂としては、水溶媒中での安定性に優れ、塗装後の外観が無色透明であるという点から、主鎖がアクリル骨格のオキサゾリン基含有樹脂を用いることが好ましい。具体的には、「エポクロスWS500」(商品名、日本触媒社製)、「エポクロスWS700」(商品名、日本触媒社製)、及び「NK Linker FX」(商品名、新中村化学工業社製)を用いることができる。オキサゾリン基含有樹脂のオキサゾリン価は、200〜240であることが好ましい。
【0036】
本実施形態に係る金属表面処理組成物におけるオキサゾリン基含有樹脂の含有量は、樹脂固形分当たり、10質量%以上40質量%以下であることが好ましく、20質量%以上30質量%以下であることが更に好ましい。オキサゾリン基含有樹脂の含有量が10質量%未満では、オキサゾリン基の含有量が十分でないため、ラミネートフィルムと金属との密着性向上に寄与せず、40質量%を超えても密着性がそれ以上改善されない。なお、各樹脂の含有量を合計すると、樹脂固形分の100質量%となる。
【0037】
[乾燥皮膜量]
上述の金属表面処理組成物により形成される表面処理層の乾燥皮膜量は、5mg/m以上1000mg/m以下であることが好ましい。乾燥皮膜量が5mg/m未満の場合には、樹脂量(官能基量)が少ないため密着性が低下する。1000mg/mを超える場合には、膜厚が厚くなり、金属表面処理組成物の凝集破壊により密着性が低下する。
【0038】
<金属>
本実施形態に係る金属表面処理組成物による表面処理を適用することができる金属としては、アルミニウム、又は各種アルミニウム合金を好適に用いることができる。
【0039】
<ラミネートフィルム>
本実施形態において用いることができる、ラミネートフィルムの加工方法としては、一般にはドライラミネート法、押出ラミネート法を用いることができるが、特に限定されない。またフィルムの素材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステル、ポリオレフィン、及びアクリル等の熱可塑性の樹脂を挙げることができる。
【0040】
<金属材料>
本実施形態に係るアルミニウム系金属材料は、金属の表面を、必要に応じて脱脂、水洗工程等により清浄な状態とし、次いで、金属表面処理組成物を接触させて、表面処理層を形成させる。そして、形成された表面処理層の上からラミネートフィルムを接着させ、ラミネート構造を形成させた金属材料を得る。
【0041】
[表面処理層の形成]
本実施形態においては、清浄な金属の表面に金属表面処理組成物を接触させる。金属表面処理組成物を接触させる方法は特に限定されず、例えば、ロールコート法、バーコート法、スプレー処理法、浸漬処理法等による方法が挙げられる。金属表面処理組成物を金属の表面に接触させた後は、40℃から160℃において、2秒から60秒加熱して、金属表面処理組成物を乾燥させる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
以下、金属ラミネートフィルムの用途に応じて実施例を記載する。
【0044】
<実施例1〜8>
金属として厚さ0.30mmのアルミニウム合金(3004板材)を、2%の「サーフクリーナーEC710」(商品名、日本ペイント社製)を用いて60℃で6秒間スプレー処理して脱脂する。脱脂処理したアルミニウム合金を、水道水を用いて6秒間スプレー処理して洗浄し、更にイオン交換水を用いて、2秒間スプレー処理して洗浄する。余剰の水分をゴムロールによって搾り取りとった後、コンベア式オーブンを用いて、50℃で10秒間乾燥させた。
【0045】
1級アミノ基含有樹脂として「PAA−05」(商品名、日東紡績社製、分子量1000)と、グリシジル基含有樹脂として「デナコールEX−512」(商品名、ナガセケムテックス社製、エポキシ当量183)と、アミノシラン化合物として「サイラエースS330」(商品名、チッソ社製)とを、表1に示した有効成分重量比で混合し、総有効性分量を1%に調整した。
【0046】
この金属表面処理組成物を、リバースロールコーターを用いて、脱脂・洗浄・乾燥させたアルミニウム合金に、片面あたり、乾燥させたときの皮膜量が表1に示した皮膜量となるように塗布し、コンベア式オーブンを用いて、80℃で20秒間乾燥させた。
【0047】
<実施例9〜12>
上記表面処理組成物に、更にオキサゾリン基含有樹脂として「エポクロスWS−700」(商品名、日本触媒社製)を加えた点以外は、実施例1から実施例8と同様の方法により表面処理を行った。表面処理組成物の各構成成分は、表1に示した有効成分重量比で混合した。
【0048】
【表1】

【0049】
<比較例1>
金属として厚さ0.30mmのアルミニウム合金(3004板材)を、2%の「サーフクリーナーEC710」(商品名、日本ペイント社製)を用いて60℃で6秒間スプレー処理して脱脂した。脱脂処理したアルミニウム合金を、水道水を用いて6秒間スプレー処理して洗浄し、更にイオン交換水を用いて、2秒間スプレー処理して洗浄する。余剰の水分をゴムロールによって搾り取った後、コンベア式オーブンを用いて、50℃で10秒間乾燥させた。
【0050】
<比較例2〜10>
上述の1級アミノ基含有樹脂、グリシジル基含有樹脂、アミノシラン化合物、オキサゾリン基含有樹脂を、表2の有効成分重量比で混合し、金属表面処理組成物の固形分を1質量%とした。これらを金属表面処理組成物として、実施例1〜8と同様に、アルミニウム合金に処理を行った。
【0051】
【表2】

【0052】
<金属表面処理組成物の耐水性評価>
金属の表面に形成させた表面処理層の、温水による再溶解性を以下の方法により確認した。まず、蛍光X線分析装置「XRF1700」(商品名、島津製作所製)を用いて、実施例1〜12、比較例2〜10で、アルミニウム合金の表面に形成させた表面処理層に由来する、炭素重量(mg/m)を測定した。次に、表面処理層を形成させたアルミニウム合金を85℃に加熱した蒸留水に15分間浸漬させ、その後乾燥させた。これを、再度
【数1】

【0053】
表面処理層の耐水性を、重量減少率により以下の評価基準で判定した。◎、又は○の評点を以って合格とした。
◎;重量減少率10%未満
○;重量減少率10%以上、20%未満
△;重量減少率20%以上、40%未満
×;重量減少率40%以上
【0054】
<フィルムラミネート缶におけるラミネートフィルムの密着性評価>
表面処理層を形成させたアルミニウム合金板に、加熱ローラーを用いて、熱圧着温度150℃、ロール速度30m/minでポリエステル系ラミネートフィルム「メリネックス850」(商品名、アイシーアイジャパン社製、フィルム厚15μm)を圧着した。これを、コンベア式オーブンを用いて素材温度240℃で、20秒間再加熱し、オーブンから取り出した直後に水冷した。
【0055】
フィルムを熱圧着したアルミニウム合金板を切断し、150mm×50mmサイズの板を2枚作製した。フィルム面同士を重ね、ホットプレスを用いて、240℃、7kgf/cmで、60秒間圧着した。この操作によりフィルム面同士は完全に溶融し、接着した。これを150mm×5mm幅に切り出し、試験片とした。
【0056】
試験片をオートクレーブに入れ、125℃の加圧蒸気中で30分間加熱処理(レトルト処理)を行った。レトルト処理を行った試験片を、「テンシロン引っ張り試験機」(商品名、東洋ボールドウィン社製)を用いて、25℃の恒温室中で、引っ張り速度40mm/分にてフィルム貼り付け面を引き剥がす際にかかる剥離強度を測定した。剥離強度が1.5(kgf/5mm幅)以上を合格とした。
【0057】
<実施例13〜24>
金属として厚さ0.04mmのアルミニウム合金(8079板材)を用いた。脱脂方法及び金属表面処理物の塗工方法は、前述した実施例1〜12と同じ方法である。
【0058】
<比較例11〜20>
金属として厚さ0.04mmのアルミニウム合金(8070板材)を用いた。脱脂方法及び金属表面処理物の塗装方法は、前述した比較例1〜10と同じ方法である。
【0059】
[リチウム電池外装材におけるラミネートフィルムの接着]
本実施形態においては、表面処理層が形成されていない側に、25μm 2軸延伸ナイロンフィルム(出光石油化学社製、G100)をポリエステルウレタン系接着剤(東洋モートン社製、TM−K55/CAT−RT85)によりドライラミネートさせ、その表面処理層側に無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学社製、アドマー)をキャストポリプロピレンフィルム(昭和電工社製、アロマー)と共に、290℃で80m/minのサンド押出ラミネートにより積層させた。この積層フィルムを加熱ローラーを用いて、熱圧着温度190℃、ロール速度3m/minにて、熱圧着させた。
【0060】
<電解液評価>
エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1の溶液にLiPFが1.5mol/lになるように調整した電解液を作成し、内容量250mlのテフロン(登録商標)容器に充填した。その中に上記サンプルを入れ、密栓後、85℃で3時間保管した。その後水洗処理を施し、更に一昼夜、水浸漬させたときのサンプルの剥離状況を評価した。完全に剥離しているサンプルを×、剥離はしていないが端部に僅かに浮きが認められるサンプルを△、僅かな浮きも認められないサンプルを○とした。
【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
<実施例25〜36>
金属として厚さ0.007mmのアルミニウム合金(8021板材)を用いた。あらかじめポリエチレンテレフタレートフィルム及びナイロンフィルムを積層させた上記アルミニウム合金を用いて、前述した実施例1〜12と同じ方法で脱脂処理及び金属表面処理組成物の塗工を施した。
【0064】
<比較例21〜30>
金属として厚さ0.007mmのアルミニウム合金(8021板材)を用いた。脱脂方法及び金属表面処理物の塗工方法は、前述した実施例25〜36と同じ方法である。
【0065】
[レトルトアルミパウチにおけるラミネートフィルムの接着]
本実施形態においては、表面処理が成されていない側に、12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製、E5100)と15μmの2軸延伸ナイロンフィルム(ユニチカ製ON)をポリエステルウレタン系接着剤(三井ポリウレタン社製、A525/A52)によりドライラミネートさせた、その表面処理層側に同様にポリエステルウレタン系接着剤(三井ポリウレタン社製、A525/A52)により60μmレトルト用CPP(昭和電工社製、アロマー)をドライラミネートにより積層させた。
【0066】
<レトルト後の内容物評価>
上記構成からなる積層体を用いてパウチを作成し、内容物として5%濃度に調整した酢酸を充填し、121℃で30分のレトルト処理を施した。このレトルト処理後のサンプルを更に40℃環境下で保管した2週間後のパウチの状況を評価した。酢酸の影響でアルミに腐食が認められるサンプルを×、腐食は認められないが僅かに剥離が認められるサンプルを△、問題ないサンプルを○とした。
【0067】
【表5】

【0068】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属の表面とラミネートフィルムとの密着性を向上させるために用いられる金属表面処理組成物であって、
1分子中に1級アミノ基を2個以上含有する1級アミノ基含有樹脂を、樹脂固形分当たり40質量%以上90質量%以下と、
1分子中にグリシジル基を1個以上含有するグリシジル基含有樹脂を、樹脂固形分当たり5質量%以上30質量%以下と、
1分子中にアミノ基を1個以上含有するアミノシラン化合物を、樹脂固形分当たり5質量%以上20質量%以下と、を含有する金属表面処理組成物。
【請求項2】
更に、1分子中にオキサゾリン基を2個以上含有するオキサゾリン基含有樹脂を、樹脂固形分当たり10質量%以上40質量%以下含有する請求項1に記載の金属表面処理組成物。
【請求項3】
前記1級アミノ基含有樹脂が、ポリアリルアミンである請求項1又は2に記載の金属表面処理組成物。
【請求項4】
金属と、請求項1から3のいずれかに記載の金属表面処理組成物からなり、かつ前記金属の表面上に形成された表面処理層と、を含む金属材料。
【請求項5】
前記表面処理層の乾燥皮膜量が、5mg/m以上1000mg/m以下である請求項4に記載の金属材料。
【請求項6】
前記金属が、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金である請求項4又は5に記載の金属材料。
【請求項7】
請求項4から6のいずれかに記載の金属材料の少なくとも前記表面処理層側に、熱可塑性樹脂からなるフィルム層を積層させたことを特徴とする金属ラミネートフィルム
【請求項8】
請求項7に記載の金属ラミネートフィルムからなることを特徴とするフィルムラミネート缶。
【請求項9】
請求項7に記載の金属ラミネートフィルムからなることを特徴とするリチウム電池用外装材。
【請求項10】
請求項7に記載の金属ラミネートフィルムからなることを特徴とするレトルトアルミパウチ。

【公開番号】特開2008−184664(P2008−184664A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−20050(P2007−20050)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】