説明

金属被膜の形成方法、および金属超微粒子含有組成物

【課題】鏡面金属光沢被膜あるいは導電性被膜を高速かつ容易に形成することが可能な金属被膜の形成方法、およびこれに用いる金属超微粒子含有組成物を提供する。
【解決手段】平均粒子径が0.1μm以下の金属超微粒子およびハロゲン元素を含有する被膜、あるいは0.1μm以下の金属超微粒子、ラテックス、およびハロゲン元素を含有する被膜に、パルス光を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属被膜の形成方法、および金属被膜の形成に用いられる金属超微粒子含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
金属被膜は光輝性金属被膜や導電性被膜として利用され、光輝性金属被膜は例えば、意匠用途、反射用途などで広く用いられており、導電性被膜はRFIDタグに用いられるアンテナ、電磁波シールド材、各種ディスプレイのデータ電極等に利用されている。光輝性金属被膜においては、特に鏡面のような金属光沢を有する鏡面金属光沢被膜は意匠性等に優れるため、容易な形成方法が求められていた。
【0003】
従来から、光輝性金属被膜を形成する方法として、アルミニウム等の金属粉顔料の混合物である各種メタリック調インキ組成物が知られており、例えば特公昭62−37678号公報には金属粉顔料と油溶性染料および溶剤と樹脂からなる二重発色インキ組成物が開示されている。このインキ組成物は、塗膜形成時に、インキ組成物中に含有される金属粉顔料に起因する凹凸と、金属粉顔料が平行配列し難いことから、塗膜表面に入射した光は乱反射し拡散するため、ギラギラした光輝感や金属光沢感はある程度得られるものの、鏡面のような金属光沢を得ることができないものであった。
【0004】
鏡面のような金属光沢を得るためには、より小さい金属粒子である金属超微粒子を用いれば良く、このような金属超微粒子として、金属コロイドあるいは金属ナノ粒子と呼称される金属超微粒子が広く知られている。金属コロイドを用いた金属光沢を有する光輝性インキ組成物として、例えば特開2004−161852号公報(特許文献1)には、インキ組成物中の高分子量顔料分散剤の配合量がインキ全量に対して1〜9wt%であり、固着性付与樹脂がインキ全量に対して5wt%未満配合されている光輝性インキ組成物が開示されているが、形成される金属光沢を有する被膜は連続した金属被膜ではなく、金属コロイドを含む固形物であるため、水や有機溶剤等の接触により、金属コロイドが溶出するという課題があった。この点に関し、例えば特開2008−288568号公報(特許文献2)には金属コロイド(金属ナノ粒子)を湿式塗工法によって塗布した後、加熱焼成することにより金属コロイド同士を焼結させ、連続した金属被膜である導電性反射膜を形成する方法が開示されているが、必要とされる加熱焼成時間が長く、生産性は低いものであった。
【0005】
金属コロイド(金属ナノ粒子)を高速に焼成する方法として、フラッシュ光を照射する方法が開発されており、例えば特開2009−124029号公報(特許文献3)には、銀ナノインクを塗布・乾燥した被膜にキセノンフラッシュランプによるフラッシュ光を10ミリ秒以下照射し焼成する方法が開示されている。加熱焼成と比較して焼成時間を著しく短縮することができるが、得られる金属被膜はマット様の鈍い光沢であり、鏡面のような金属光沢ではなかった。従って高速かつ容易に鏡面金属光沢被膜を形成することが可能な金属被膜の形成方法が求められていた。
【0006】
一方、導電性被膜の形成方法としては、一般的に真空蒸着、スパッタリング、CVD法などの形成方法が用いられる。このような形成方法は、一般に減圧雰囲気下で行われるため、真空チャンバーなどの反応容器内に基板等を設置して行う必要がある。従って、導電性被膜を形成する対象物が大きくなると、大きな対象物を収納できる真空チャンバーが必要となり、その製造が困難になるという問題があった。また減圧雰囲気下でなくとも導電性被膜が形成可能な方法も検討されており、例えば特開2001−35255号公報(特許文献4)には、有機溶媒と粒径0.01μm以下の銀含有超微粒子を含有し、粘度が室温で50mPa・s以下である銀超微粒子独立分散液を半導体基板上に塗布し、300℃で焼成することにより導電性の金属被膜を形成できることが記載されるが、かかる焼成には時間を要するため、生産性は低いものであった。
【0007】
焼成時間を短くするために、フラッシュランプ装置による瞬間的な焼成の開発もなされており、このような技術としては、例えば特開2004−277832号公報(特許文献5)、特表2008−522369号公報(特許文献6)等に開示されている。しかしながら十分な導電性を得ることはできず、高速かつ容易に導電性に優れた導電性被膜を形成することが可能な金属被膜の形成方法が求められていた。
【0008】
特開2008−4375号公報(特許文献7)には、平均粒子径が0.1μm以下の金属超微粒子を含有する金属超微粒子含有組成物を利用した導電性発現方法が記載され、かかる金属超微粒子に、塩化ナトリウムや臭化ナトリウム等のイオン結合により分子内にハロゲンを有する化合物を作用させ、高い導電性が得られることが従来から知られている。また前述の特許文献5には、銀微粒子の表面に存在する酸化物をエッチングし、該金属微粒子の静電的安定性を高める化合物として、塩酸が記載されている。他方、ラテックスを導電性材料へ用いることは従来から知られており、例えば特公平7−26044号公報(特許文献8)には、ニッケルフレーク粉末とポリウレタンラテックスを含有するペイント染料の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−161852号公報
【特許文献2】特開2008−288568号公報
【特許文献3】特開2009−124029号公報
【特許文献4】特開2001−35255号公報
【特許文献5】特開2004−277832号公報
【特許文献6】特表2008−522369号公報
【特許文献7】特開2008−4375号公報
【特許文献8】特公平7−26044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、第1に高速かつ容易に鏡面金属光沢被膜を形成することが可能な金属被膜の形成方法を提供することにある。第2に高速かつ容易に導電性に優れた導電性被膜を形成することが可能な金属被膜の形成方法を提供するものである。第3にこれらの金属被膜形成方法に好適な金属超微粒子含有組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の発明によって基本的に達成された。
(1)平均粒子径が0.1μm以下の金属超微粒子およびハロゲン元素を含有する被膜にパルス光を照射することを特徴とする金属被膜の形成方法。
(2)上記金属超微粒子に対するハロゲン元素の比率が0.4〜5.0mol%であることを特徴とする上記(1)記載の金属被膜の形成方法。
(3)上記被膜が更にラテックスを含有することを特徴とする上記(1)記載の金属被膜の形成方法。
(4)パルス光を照射して金属被膜を形成した後、更に水分の付与を行うことを特徴とする上記(3)記載の金属被膜の形成方法。
(5)パルス光を照射することによる金属被膜の形成方法に用いられる金属超微粒子含有組成物であって、少なくとも平均粒子径が0.1μm以下の金属超微粒子、ハロゲン元素、溶媒成分を含有することを特徴とする金属超微粒子含有組成物。
(6)更にラテックスを含有することを特徴とする(5)記載の金属超微粒子含有組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1に高速かつ容易に鏡面金属光沢被膜を形成することが可能な金属被膜の形成方法を提供することができる。第2に高速かつ容易に導電性に優れた導電性被膜を形成することが可能な金属被膜の形成方法を提供することができる。第3にこれらの金属被膜形成方法に好適な金属超微粒子含有組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の金属被膜の形成方法に関して説明する。
本発明の金属被膜の形成方法に利用する被膜は、平均粒子径が0.1μm以下の金属超微粒子およびハロゲン元素を含有する。かかる被膜にパルス光を照射することで、高速かつ容易に鏡面金属光沢被膜を形成することが可能となる。従って上記(1)にかかる金属被膜の形成方法は、鏡面金属光沢被膜の形成方法として好適である。被膜中に金属超微粒子、ハロゲン元素以外に含まれる成分としては、分散剤、界面活性剤、溶媒、増粘剤、バインダー等を例示することができる。
【0014】
本発明における被膜とは、基材上に形成された流動性の被膜、あるいは非流動性の被膜を示す。流動性の被膜は、基材上にスロットダイ塗布、スプレー塗布、ディップ法、ディスペンス法等の各種公知の方法を用いて塗布を行い形成することが好ましい。流動性の被膜であっても、パルス光の照射によって加えられるエネルギーにより、瞬時に溶媒が蒸発すると同時に金属超微粒子同士の焼結が進み、鏡面金属光沢被膜を得ることができるが、溶媒蒸発時に金属被膜に部分的に亀裂がはいる場合もあるため、被膜は溶媒を含まないか、含有量が減少した非流動性の被膜にパルス光を照射することが好ましい。非流動性の被膜を形成するには、ペースト状の金属超微粒子含有組成物を印刷法によって印刷する、あるいは前記した流動性の被膜を形成した後、溶媒を蒸発あるいは固化させれば良い。
【0015】
基材としては、例えばポリエチレン・ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル・塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、トリアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、セロファン、ナイロン、スチレン系樹脂、ABS樹脂、天然ゴム、ポリエチレンジオキシチオフェン、セルロース等の各種ポリマー、繊維、樹脂等からなる薄層、シート状あるいは立体状の各種成型物、石英ガラス、無アルカリガラス、結晶化透明ガラス、パイレックス(登録商標)等のホウケイ酸ガラス、サファイア等の各種ガラス、AlN、Al、SiC、SiN、MgO、BeO、ZrO、Y、ThO、CaO、GGG(ガドリウム・ガリウム・ガーネット)、FTO、ITO、ZnO、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、砂、石等の無機材料からなる薄層や成型物、あるいは無機材料の粉末が焼結された各種セラミックスや、焼結前の無機材料粉末とバインダーが混練された一般的にグリーンシートと呼称されるシート、各種金属等を挙げることができ、必要に応じそれらを併用してもよく、基材には予め公知の各種方法により下塗層が施されていても良い。下塗層としては、ゼラチン、ポリビニルアルコール、各種ウレタン樹脂、各種塩化ビニル系樹脂等の各種水溶性樹脂類や各種熱可塑性樹脂等からなる層、各種シリカや各種アルミナ等の無機微粒子と熱可塑性樹脂や水溶性樹脂等の各種バインダーおよび必要に応じて添加されるバインダーの架橋剤等を含む層を例示することができる。特に基材表面に微少な凹凸が存在する場合や、基材あるいは下塗層が熱可塑性を有する場合、フラッシュ光の照射により形成された鏡面金属光沢被膜は、アンカー効果あるいは熱可塑性による接着効果により、強い密着性を得ることができる。また基材としてアート紙、コート紙、板紙、上質紙等の印刷用紙、PPC用紙等の情報用紙、インクジェット用紙、ポリオレフィン樹脂被覆紙、和紙、不織布、合成紙等の各種紙基材を挙げることができる。またこの下塗層にパルス光を吸収するための色素、あるいは顔料を含有せしめることにより、必要なエネルギーを減少させることができる。
【0016】
本発明で用いられる金属超微粒子には、不活性ガス中で金属を蒸発させガスとの衝突により冷却・凝縮し回収するガス中蒸発法、真空中で金属を蒸発させ有機溶剤と共に回収する金属蒸気合成法、レーザー照射のエネルギーにより液中で蒸発・凝縮し回収するレーザーアブレーション法、水溶液中で金属イオンを還元し生成・回収する化学的還元法、有機金属化合部の熱分解による方法、金属塩化物の気相中での還元による方法、酸化物の水素中還元法、マイクロ波照射法等、公知の種々の方法により製造された金属超微粒子を好ましく用いることができる。本発明においては製造が容易であるため化学還元法で製造された金属超微粒子を用いることが好ましく、化学還元法の中でも分散剤としての作用と還元剤としての作用を併せ持つ多糖類を用いて製造された金属超微粒子を用いることが、高濃度反応が可能であり生産性が高いため、より好ましい。
【0017】
金属超微粒子の平均粒子径は、金属超微粒子の分散安定性の観点から0.1μm以下であることが必要であり、好ましくは0.05μm以下である。なお、金属超微粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡下での観察により求めることができる。詳細にはポリエチレンテレフタレートフィルムの上に、金属超微粒子分散液を塗布、乾燥させ、走査型電子顕微鏡にて観察し、一定面積内に存在する100個の粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子径として平均し求める。
【0018】
金属超微粒子は、得られる金属被膜の鏡面光沢性や導電性、価格、生産性、扱いやすさ等の点から、主に銀からなることが好ましい。金属超微粒子中において、銀の占める割合は少なくとも50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上である。銀以外に含まれる金属としては、金、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、ニッケル、ビスマスを挙げることができる。銀以外の金属は銀超微粒子中に含まれていても良く、銀超微粒子と銀以外の金属の超微粒子が混合していても良い。
【0019】
本発明において、被膜中にハロゲン元素を含有せしめるには、前述した被膜を形成するための塗布方法に用いる塗布液、あるいは印刷方法に用いるペーストに、分子内にハロゲン元素を含む化合物を添加すれば良い。ハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素、沃素、アスタチン、ウンウンセプチウムがあるが、安全性、入手性から分子内に塩素、臭素、沃素を含む化合物が好ましい。分子内にハロゲン元素を含む化合物としては、イオン結合により分子内にハロゲンを有する化合物が好ましく利用でき、例えばハロゲン化アルキル類、ハロゲン化水素類、有機塩類、無機塩類を例示することができるが、ハロゲン元素以外の部分はパルス光を照射し焼成する際に余剰物となるため、分子量に対するハロゲン元素の総量の割合が高いことが好ましく、このような化合物としては、ハロゲン化水素類や無機塩類が挙げられる。また、ハロゲン化水素類の添加は、金属超微粒子含有組成物のpHを低下させ含まれる金属超微粒子の分散安定性を損なう場合があるため、無機塩類を用いることが特に好ましい。ハロゲン化水素類として、塩酸、臭化水素酸等を挙げることができる。ハロゲンの無機塩類として、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、ジルコニウム塩、アルミニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、銀塩等を挙げることができる。例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化カルシウム、臭化アンモニウム、沃化リチウム、沃化ナトリウム、沃化カリウム等を挙げることができる。
【0020】
金属超微粒子に対するハロゲン元素の比率は、フラッシュ光照射後に形成される金属被膜の鏡面光沢性や導電性の観点より、0.3〜6.0mol%であることが好ましく、より好ましくは、0.4〜5.0mol%である。ハロゲン元素が過剰もしくは不足のいずれの場合でも得られる金属鏡面光沢が曇ったり、十分な導電性が得られない場合がある。
【0021】
本発明における平均粒子径が0.1μm以下の金属超微粒子およびハロゲン元素を含有する被膜を形成する方法として、少なくとも金属超微粒子と溶媒成分が含まれた液体と少なくともハロゲン元素を含む液体を基材上にて混合する方法、少なくとも金属超微粒子と溶媒成分が含まれた液体と少なくともハロゲン元素を含む液体を混合し金属超微粒子含有組成物を作製し、その後基材上に付与する方法等を例示することができる。
【0022】
また、金属超微粒子含有組成物の経時安定性を向上させる点より、少なくとも金属超微粒子と溶媒成分が含まれた液体と少なくともハロゲン元素を含む液体を混合したのち、精製を行い、少なくとも平均粒子径が0.1μm以下の金属超微粒子、ハロゲン元素、溶媒成分を含有する金属超微粒子含有組成物を塗布し被膜を形成することがより好ましい。精製には、濾過法、限外濾過法、遠心分離法、デカンテーション法、溶媒抽出法といった公知の種々の精製法を好ましく使用することができる。製造効率の観点から濾過法、限外濾過法、遠心分離法を用いることが好ましい。精製を行った場合においても、添加した例えば無機塩類由来のハロゲン元素が除去されてその全てが消失することはない。これは金属超微粒子とハロゲン元素との間に何らかの相互作用が生じるためと推測される。
【0023】
本発明におけるパルス光とは、レーザーやフラッシュランプ等の装置により照射される光のことであり、照射光強度がピークの1/2の点で計測される照射時間として、100ミリ秒以下であり、照射時間は10ミリ秒以下であることがより好ましく、2ミリ秒以下であることが特に好ましい。照射エネルギーは、0.1〜50J/cmであることが好ましく、0.3〜30J/cmであることがより好ましい。照射時間が短いと必要とされる照射エネルギーは少なくなる。照射回数は10回以下であることが好ましく、より好ましくは3回以下であり、特に好ましくは1回である。照射エネルギーは、半導体接合素子アレイのサーモパイルやパイロエレクトリック素子により測定される。本発明におけるパルス光の照射は、特にフラッシュランプを用いて照射することが好ましい。
【0024】
本発明に用いられるフラッシュランプ装置としては、キセノンなどのガスが封入されトリガワイヤが取り付けられたフラッシュランプ内において放電発光させる装置や、不活性ガス下で短時間かつ大電力の放電によりパルス光を発光させる装置等を用いることができる。前者の例として米国XENON社のSINTERON2000、後者の例として米国Novacentrix社のPulseforge3100を例示することができる。
【0025】
本発明に用いられるレーザーとしては、各種半導体レーザーやYAGレーザー等の固体レーザー、ガスレーザー等、公知のレーザーを広く用いることができるが、波長は2000nm以下が好ましく、400nm以下がより好ましい。
【0026】
本発明においてパルス光が照射される被膜は、更にラテックスを含有することが好ましい。これにより高速かつ容易に導電性に優れた導電性被膜を形成することが可能となる。従って前記した(3)の金属被膜の形成方法は導電性被膜の形成方法として好適である。かかる被膜にラテックスを含有せしめるには、被膜形成に用いる塗布液やペーストにラテックスを添加すればよい。
【0027】
本発明に用いるラテックスとしては、単独重合体や共重合体等各種公知のラテックスの水分散物であるラテックスエマルジョンを用いる。単独重合体としては酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン等の重合体があり、共重合体としてはエチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・p−メトオキシスチレン共重合体、スチレン・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル・マレイン酸ジエチル共重合体、メチルメタクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・スチレン共重合体、メチルメタクリレート・酢酸ビニル共重合体、メチルメタクリレート・塩化ビニリデン共重合体、メチルアクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルアクリレート・ブタジエン共重合体、メチルアクリレート・スチレン共重合体、メチルアクリレート・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸・ブチルアクリレート共重合体、メチルアクリレート・塩化ビニル共重合体、ブチルアクリレート・スチレン共重合体、エチレン塩化ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂等がある。また、金属イオンを用いて樹脂を凝集させたアイオノマー型樹脂も用いることができる。これらの中でもポリエステルラテックス、アクリルラテックスおよびポリウレタンラテックスを用いることが好ましく、更に導電性の観点からポリウレタンラテックスが好ましい。また、得られた導電性被膜の耐熱性の観点からはエポキシ樹脂を用いることも好ましい態様の一つである。ポリウレタンラテックスとしては、例えば、市販品として、DIC(株)製のHYDRAN APシリーズ、第一工業製薬(株)製のスーパーフレックスシリーズ等が挙げられる。ラテックスエマルジョン中のラテックス粒子の平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは0.03〜5μmである。金属超微粒子同士の焼結が阻害されにくくなるためラテックスエマルジョン中のラテックス粒子の平均粒径は、用いる金属超微粒子よりも大きいことが好ましい。
【0028】
ラテックスの含有量は、金属超微粒子の体積に対して、10%以上であることが好ましく、40%以上がより好ましい。金属超微粒子の体積とは含まれている金属量を該金属の比重で除して求められる数値であり、例えば銀濃度30質量%の銀超微粒子分散液1gに含まれる銀の体積は銀の比重10.5で除して0.0286cmとなる。本発明においてラテックスの含有量が例えば金属超微粒子の体積に対して40%の場合、ラテックスの体積が0.0114cmとなるようにラテックスを添加すれば良く、実際に加える重量は、例えば樹脂の比重が1.1の場合、固形分として0.0126gを加えればよい。ラテックス含有量の上限は特にないが、多量に添加すると金属超微粒子含有組成物の金属超微粒子濃度が低下するため、金属超微粒子の体積に対して500%以下が好ましく、より好ましくは300%以下である。
【0029】
本発明において、被膜中にラテックスとハロゲン元素を含有せしめることより導電性が向上する理由は定かではないが、本発明の如く、パルス光を照射した場合に導電性が向上する理由として、被膜中に存在するラテックス粒子あるいはラテックス粒子同士が結合した樹脂が、光導波路として作用しパルス光を効率よく被膜内部まで到達させ焼結を進めているのではないか、更にハロゲン元素が添加された金属超微粒子同士は若干の二次凝集を形成しやすくなる傾向が観察されるため、添加されたラテックスエマルジョン中のラテックス粒子が金属超微粒子含有組成物中に均一に分散せず、ラテックス粒子が偏在し、前述した光導波路として作用するラテックス粒子同士が結合した樹脂を形成させていると推測している。
【0030】
上記した金属被膜の形成方法に用いる金属超微粒子含有組成物は、少なくとも平均粒子径が0.1μm以下の金属超微粒子、ハロゲン元素、溶媒成分を含有する。該金属超微粒子含有組成物は、パルス光を照射することで鏡面金属光沢被膜を形成する金属被膜の形成方法に用いる金属超微粒子含有組成物として好適である。また該金属超微粒子含有組成物が更にラテックスを含有する金属超微粒子含有組成物である場合、パルス光を照射することで導電性被膜を形成する金属被膜の形成方法に用いられる金属超微粒子含有組成物として好適である。
【0031】
上記金属超微粒子含有組成物が含有する溶媒成分としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどを例示することができる。金属超微粒子含有組成物がラテックスを含有する場合には、かかる組成物中に含まれるラテックス粒子を溶解するような溶媒、例えばトルエン、ノルマルヘキサンのような溶媒は含まないことが好ましく(含有する場合には3質量%以下とすることが好ましく、更には1質量%以下とすることが好ましい。)、全溶媒中の50質量%以上が水であることが好ましい。
【0032】
また金属超微粒子含有組成物の経時安定性を向上させる観点より、少なくとも金属超微粒子と溶媒成分が含まれた液体とハロゲン元素を含む液体を混合したのち、精製を行うことが好ましい。なお、ラテックスエマルジョンは、精製前あるいは精製後、任意の段階で加えればよいが、後述する精製法において加えるラテックスエマルジョンが除去される場合には、精製後に加えることが必要である。なお精製には公知の種々の精製法を好ましく使用することができる。また精製を行った場合においても、添加した例えば無機塩類由来のハロゲン元素が除去されてその全てが消失することはない。
【0033】
本発明において、パルス光の照射により形成された導電性被膜に対し、水分を付与することにより導電性被膜の導電性を高めることができるため好ましい。
【0034】
本発明において導電性被膜に水分を付与する方法としては、例えば(1)被膜の形成方法として例示した前述の方法を用い、水を塗布する、(2)スプレーノズルにより霧状水の噴霧を行う、(3)高湿度環境へ暴露する、(4)高温高圧水蒸気環境へ暴露する、といった方法が挙げられる。(3)の場合、温度は10℃から90℃が好ましく、重量絶対湿度Hとして0.01kg/kgD.A.以上であることが好ましい。
【0035】
本発明の方法により形成された金属被膜は必要に応じ、水洗の実施、樹脂成分の塗布やフィルムの貼合による封止や保護を好ましく行うことができる。また、パルス光が照射されていない部分の被膜は、被膜を溶解する適当な溶剤(例えば水)で洗浄することにより、除去することができる。
【0036】
本発明により得られた金属被膜が導電性被膜である場合、その用途としては、例えば微細配線、近接界通信、半導体チップ間通信、電力電送アンテナ、RFIDタグに用いられるアンテナ、GPS、地上デジタル放送の受信アンテナ等の各種アンテナ、電磁波シールド、有機TFTのゲート、ソース、ドレイン電極、各種ディスプレイのデータ電極、アドレス電極、太陽電池の集電電極や裏面電極、タッチパネルの周辺電極、タッチパネルのタッチ面電極、タッチパッドやデジタイザの電極、メンブレンスイッチの電極、プリント配線基板やインタポーザ、LTCC、HTCC等における配線パタン、積層セラミックコンデンサ、タンタルコンデンサ、導電性高分子コンデンサ等の各種コンデンサ、抵抗器、光導波路型デバイスにおける制御電極、SAWフィルタ電極、水晶振動子電極等の各種電子部品の電極等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
【0038】
《実施例1》
<銀超微粒子分散液1の作製>
10Lのステンレスビーカーに焙焼デキストリン(日澱化学(株)製、デキストリンNo.3)653gと純水5772gを加え、約30分間撹拌し溶解した。その後、硝酸銀1582gを加え、約30分間撹拌し溶解した。この液を氷浴中にて約5℃まで冷却し、水酸化カリウム730gを純水1007gに溶解した10℃の液を添加し、氷浴中で攪拌しながら1時間の還元反応を行った。得られた溶液に酢酸を添加し、pH=5.6に調整した後、ビオザイムF10SD(天野エンザイム(株)製)を添加し1時間撹拌した。得られた液を遠心分離法により精製した後、銀の固形分濃度が45質量%になるように純水を加え再分散し銀超微粒子分散液1を得た。含まれる銀超微粒子の平均粒子径は20nmであり、収率は87%であった。
【0039】
銀超微粒子分散液1を50g取り、純水、ノニオン性界面活性剤を加え、銀の固形分濃度が25質量%の金属超微粒子含有組成物1を作製した。
【0040】
銀超微粒子分散液1を50g取り、塩化ナトリウム水溶液を銀に対する塩化ナトリウムの比率が0.30mol%となるように混合した。その後、純水、ノニオン性界面活性剤を加え、銀の固形分濃度が25質量%の金属超微粒子含有組成物2を作製した。
【0041】
銀超微粒子分散液1を50g取り、塩化ナトリウム水溶液を銀に対する塩化ナトリウムの比率が0.50mol%となるように混合した。その後、純水、ノニオン性界面活性剤を加え、銀の固形分濃度が25質量%の金属超微粒子含有組成物3を作製した。
【0042】
銀超微粒子分散液1を50g取り、塩化ナトリウム水溶液を銀に対する塩化ナトリウムの比率が3.00mol%となるように混合した。その後、純水、ノニオン性界面活性剤を加え、銀の固形分濃度が25質量%の金属超微粒子含有組成物4を作製した。
【0043】
銀超微粒子分散液1を50g取り、塩化ナトリウム水溶液を銀に対する塩化ナトリウムの比率が4.00mol%となるように混合した。その後、純水、ノニオン性界面活性剤を加え、銀の固形分濃度が25質量%の金属超微粒子含有組成物5を作製した。
【0044】
銀超微粒子分散液1を50g取り、塩化ナトリウム水溶液を銀に対する塩化ナトリウムの比率が6.00mol%となるように混合した。その後、純水、ノニオン性界面活性剤を加え、銀の固形分濃度が25質量%の金属超微粒子含有組成物6を作製した。
【0045】
銀超微粒子分散液1を50g取り、臭化ナトリウム水溶液を銀に対する臭化ナトリウムの比率が1.50mol%となるように混合した。その後、純水、ノニオン性界面活性剤を加え、銀の固形分濃度が25質量%の金属超微粒子含有組成物7を作製した。
【0046】
銀超微粒子分散液1を50g取り、塩化ナトリウム水溶液を加え、遠心分離法により精製を行った。得られた銀超微粒子分散液を蛍光X線法を用い塩素含有量を定量した所、銀に対する塩素の比率は3.0mol%であった。その後、純水、ノニオン性界面活性剤を加え、銀の固形分濃度が25質量%の金属超微粒子含有組成物8を作製した。
【0047】
<金属被膜の形成>
金属超微粒子含有組成物1から8を易接着処理がなされた厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製)にワイヤーバーを用い、銀の塗布量が1mあたり1.5gとなるよう塗布・乾燥した。次に、キセノン管を用いたフラッシュランプ装置により、フラッシュ光を照射した。照射回数は1回、照射時間は0.6ミリ秒とした。フラッシュ光照射後に最も鏡面金属光沢が得られるように照射面から塗布物までの距離を変化させた。オフィール社の高出力測定用パイロエレクトリックエネルギーセンサーで測定された照射エネルギーは0.5〜2J/cmであった。以上の操作により、金属被膜1から8を得た。
【0048】
金属超微粒子含有組成物5を易接着処理がなされた厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製)にワイヤーバーを用い、銀の塗布量が1mあたり1.5gとなるよう塗布・乾燥した。次に、キセノン管を用いたフラッシュランプ装置により、フラッシュ光を照射した。照射回数は1回、照射時間は8ミリ秒とした。フラッシュ光照射後に最も鏡面金属光沢が得られるように照射面から塗布物までの距離を変化させた。オフィール社の高出力測定用パイロエレクトリックエネルギーセンサーで測定された照射エネルギーは4J/cmであった。以上の操作により、金属被膜9を得た。
【0049】
<鏡面金属光沢の評価>
金属被膜1から9について、目視により鏡面金属光沢を評価した。その結果を表1に示す。
○鏡面金属光沢である。
△鏡面金属光沢だが、若干曇っている。
×鏡面金属光沢ではなく、マット調である。
【0050】
【表1】

【0051】
表1の結果より明らかなように、本発明により鏡面金属光沢を得ることができる。
【0052】
<経時安定性の評価>
金属超微粒子含有組成物1、金属超微粒子含有組成物4、金属超微粒子含有組成物8を容器に入れ、10℃で1ヶ月経時させ、沈殿物の発生を評価した。その結果を表2に示す。
○沈殿物は発生しているが微量である。
△沈殿物が少量発生している。
【0053】
【表2】

【0054】
表2の結果より明らかなように、精製を行うことによりハロゲン元素を含む金属超微粒子含有組成物の経時安定性を向上せしめることができる。
【0055】
《実施例2》
<銀超微粒子分散液2の作製>
10Lのステンレスビーカーに焙焼デキストリン(日澱化学(株)製、デキストリンNo.3)653gと純水5772gを加え、約30分間撹拌し溶解した。その後、硝酸銀1582gを加え、約30分間撹拌し溶解した。この液を氷浴中にて約5℃まで冷却し、水酸化カリウム730gを純水1007gに溶解した10℃の液を添加し、氷浴中で攪拌しながら1時間の還元反応を行った。得られた溶液に酢酸を添加し、pH=5.6に調整した後、ビオザイムF10SD(天野エンザイム(株)製)を添加し1時間撹拌し、余剰のデキストリンを低分子化した。最終的に10質量%の銀超微粒子分散液2を9888g得た。含まれる銀超微粒子の平均粒径は20nmであり、収率は98.4%であった。
【0056】
銀超微粒子分散液2を800g取り、遠心分離法により精製した後、銀の固形分濃度が45質量%になるように純水を加え再分散し、銀超微粒子分散液3を得た。
【0057】
銀超微粒子分散液3を50g取り、これに有効成分濃度27質量%のノニオン性界面活性剤を0.3g加え良く攪拌した後、銀の固形分濃度が25質量%となるように純水を加え、金属超微粒子含有組成物9を作製した。
【0058】
銀超微粒子分散液2を8000g取り、そこにスターラー撹拌下で0.22mol/Lの塩化ナトリウム水溶液を1000mL加え、塩化ナトリウムを銀に対しモル比で3.0mol%の比率で混合した。10分間の混合中、液温は20℃を維持した。遠心分離法により精製した後、銀の固形分濃度が45質量%になるように純水を加え再分散し、銀超微粒子分散液4を得た。得られた銀超微粒子分散液4を蛍光X線法を用い塩素含有量を定量した所、銀に対する塩素の比率は2.5mol%であった。
【0059】
銀超微粒子分散液4を50g取り、これに有効成分濃度27質量%のノニオン性界面活性剤を0.3g加え良く攪拌した後、ラテックスエマルジョンとしてDIC(株)製AP−20(ポリウレタンラテックス、平均粒径約0.12μm、固形分約30質量%、樹脂比重約1.1)を1.6g加え、更に銀の固形分濃度が25質量%となるように純水を加え、金属超微粒子含有組成物10を作製した。含まれるラテックスの体積は、金属銀の体積に対して約20%であった。
【0060】
銀超微粒子分散液4を50g取り、これに有効成分濃度27質量%のノニオン性界面活性剤を0.3g加え良く攪拌した後、ラテックスエマルジョンとしてDIC(株)製AP−20を4.7g加え、更に銀の固形分濃度が25質量%となるように純水を加え、金属超微粒子含有組成物11を作製した。含まれるラテックスの体積は、金属銀の体積に対して約60%であった。
【0061】
銀超微粒子分散液4を50g取り、これに有効成分濃度27質量%のノニオン性界面活性剤を0.3g加え良く攪拌した後、ラテックスエマルジョンとしてDIC(株)製AP−20を15.7g加え、更に銀の固形分濃度が25質量%となるように純水を加え、金属超微粒子含有組成物12を作製した。含まれるラテックスの体積は、金属銀の体積に対して約200%であった。
【0062】
銀超微粒子分散液4を50g取り、これに有効成分濃度27質量%のノニオン性界面活性剤を0.3g加え良く攪拌した後、ラテックスエマルジョンとして東洋紡績(株)製バイロナールMD−1245(ポリエステルラテックス、平均粒径約0.1μm、固形分約30質量%、樹脂比重約1.3)を7.4g加え、更に銀の固形分濃度が25質量%となるように純水を加え、金属超微粒子含有組成物13を作製した。含まれるラテックスの体積は、金属銀の体積に対して約80%であった。
【0063】
銀超微粒子分散液2を800g取り、そこにスターラー撹拌下で0.12mol/Lの臭化ナトリウム水溶液を100mL加え、臭化ナトリウムを銀に対しモル比で1.6mol%の比率で混合した。10分間の混合中、液温は20℃を維持した。遠心分離法により精製した後、銀の固形分濃度が45質量%になるように純水を加え再分散し、銀超微粒子分散液5を得た。得られた銀超微粒子分散液5を蛍光X線法を用い臭素含有量を定量した所、銀に対する臭素の比率は1.4mol%であった。
【0064】
銀超微粒子分散液5を50g取り、これに有効成分濃度27質量%のノニオン性界面活性剤を0.3g加え良く撹拌した後、ラテックスエマルジョンとしてDIC(株)製AP−20を4.7g加え、更に銀の固形分濃度が25質量%となるように純水を加え、金属超微粒子含有組成物14を作製した。含まれるラテックスの体積は、金属銀の体積に対して約60%であった。
【0065】
銀超微粒子分散液3を50g取り、これに有効成分濃度27質量%のノニオン性界面活性剤を0.3g加え良く攪拌した後、ラテックスエマルジョンとしてDIC(株)製AP−20(ポリウレタンラテックス、平均粒径約0.12μm、固形分約30質量%、樹脂比重約1.1)を1.6g加え、更に銀の固形分濃度が25質量%となるように純水を加え、金属超微粒子含有組成物15を作製した。含まれるラテックスの体積は、金属銀の体積に対して約20%であった。
【0066】
<金属被膜の形成>
金属超微粒子含有組成物9から15を、易接着処理がなされた厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製)にワイヤーバーを用い、銀の塗布量が1mあたり1.3gとなるよう塗布・乾燥した。次に、キセノン管を用いたフラッシュランプ装置により、フラッシュ光を照射した。照射回数は1回、照射時間は0.6ミリ秒とした。フラッシュ光照射後に最も高い導電性が得られるように照射面から塗布物までの距離を変化させた。オフィール社の高出力測定用パイロエレクトリックエネルギーセンサーで測定された照射エネルギーは1〜3J/cmであった。以上の操作により、金属超微粒子含有組成物9から15よりなる金属被膜10から16を得た。
【0067】
金属被膜12を温度60℃、重量絶対湿度Hとして0.13kg/kgD.A.の環境下に10分暴露することにより水分を付与し、金属被膜17を得た。
【0068】
<導電性の評価>
導電性被膜10から17について、シート抵抗値を測定器(株式会社三菱化学アナリテック製ロレスタ−GP)を用いて測定した。その結果を表3に示す。
【0069】
【表3】

【0070】
表3の結果より明らかなように、ハロゲン元素を含有する被膜中へのポリマーラテックスの添加により導電性が著しく向上し、更に水分の付与により導電性がより向上することが判る。
【0071】
《実施例3》
<金属被膜の作製>
金属超微粒子含有組成物9および10を、易接着処理がなされた厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製)にワイヤーバーを用い、銀の塗布量が1mあたり1.3gとなるよう、それぞれ塗布・乾燥した。次にHOYA株式会社製HSL−4000型レーザー発振器でYAGレーザーの3倍波である355nmのレーザーを発振させ、これに10倍レンズを用い100μm×100μmの領域にパルス状のレーザー光を照射した。パルス幅は5〜7ナノ秒、最も高い導電性が得られるように2〜5J/cmの間で照射エネルギーを調整した。パルス状のレーザー光は照射位置を移動させながら照射し、幅100μm、長さ2mmの線状に照射を行った。照射は一部がオーバーラップするように照射したため、オーバーラップした部位は2回照射を受けることとなる。照射後、純水に浸漬し軽く洗浄することにより、パルス状のレーザー光が照射されていない部分の金属超微粒子含有組成物を再分散して取り除き、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に幅100μm、長さ2mmの線状の金属被膜18および19を形成した。
【0072】
<導電性の評価>
金属被膜18および19について、両端の抵抗値を測定し、シート抵抗値に換算した。その結果を表4に示す。
【0073】
【表4】

【0074】
表4の結果より明らかなように、被膜中へのラテックスとハロゲン元素の添加により導電性が著しく向上することが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が0.1μm以下の金属超微粒子およびハロゲン元素を含有する被膜にパルス光を照射することを特徴とする金属被膜の形成方法。
【請求項2】
前記金属超微粒子に対するハロゲン元素の比率が0.4〜5.0mol%であることを特徴とする請求項1記載の金属被膜の形成方法。
【請求項3】
前記被膜が更にラテックスを含有することを特徴とする請求項1記載の金属被膜の形成方法。
【請求項4】
パルス光を照射して金属被膜を形成した後、更に水分の付与を行うことを特徴とする請求項3記載の金属被膜の形成方法。
【請求項5】
パルス光を照射することによる金属被膜の形成方法に用いられる金属超微粒子含有組成物であって、少なくとも平均粒子径が0.1μm以下の金属超微粒子、ハロゲン元素、溶媒成分を含有することを特徴とする金属超微粒子含有組成物。
【請求項6】
更にラテックスを含有することを特徴とする請求項5記載の金属超微粒子含有組成物。

【公開番号】特開2012−214870(P2012−214870A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231484(P2011−231484)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】