説明

金属被覆金属酸化物微粒子の製造方法および金属被覆金属酸化物微粒子

【課題】コアとなる金属酸化物粒子の粒子径によらずコア粒子の表面に均一に金属被覆層が形成された金属被覆金属酸化物粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】下記の工程(a)〜(c)を含むこと特徴とする金属被覆金属酸化物微粒子の製造方法;
(a)金属酸化物微粒子分散液に、金属錯化剤を固形分として、金属酸化物微粒子の固形分としての重量(WP)の0.1〜3000重量%の範囲となるように添加し、金属酸化物微粒子に金属錯化剤を吸着させる工程
(b)金属塩水溶液を添加する工程
(c)還元剤を添加して金属塩を還元して金属被覆層を形成する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属被覆金属酸化物微粒子の製造方法および金属被覆金属酸化物粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属、複合金属、金属酸化物、および複合金属酸化物などの微粒子は、電子部品材料の導電性膜、塗料用材料、光学材料(赤外線反射膜、紫外線遮蔽剤など)および触媒材料として広く使用されている。
【0003】
たとえば、これらの微粒子を含む透明導電性被膜を陰極線管、蛍光表示管、液晶表示板などの表示パネル表面に形成すると、表示パネルの帯電を防止したり、反射を防止したりすることができる。
【0004】
また、これらの微粒子は触媒活性を有する場合があり、これらの微粒子をコロイド状に分散させると、光が透過しやすく、光反応触媒として好適に使用することができる。
このような微粒子のうち、コア−セル構造(核(コア)となる微粒子の表面に他の金属の層(セル)が形成されている)を有する複合微粒子を用いて、導電性被膜を形成すると、信頼性・耐久性に優れた被膜を形成することができる。また、このようなコア−セル構造を有する複合微粒子は、通常知られている金属微粒子と比べて触媒活性が高いことも知られている(非特許文献1:戸嶋、触媒技術の動向と展望,触媒学会編,12 (1996))。
【0005】
コア−セル構造を有する複合微粒子の製造方法としては、電解めっき法、共還元法、還元めっき法、機械的・物理的方法などが知られている。しかしながら、これらの方法では、粒子径が極めて小さい微粒子が得にくく、また得られる粒子が不均一であるという欠点がある。また、このような微粒子を用いて、導電性被膜を形成しても、電磁遮蔽効果、信頼性および耐久性などが不充分であるという欠点もある。さらに、共還元法および還元めっき法では、還元剤として、アルコール、クエン酸3ナトリウム、硫酸第一鉄などを使用しているため、金属塩、還元剤に由来するイオンが多く残存し、得られた微粒子が凝集するなどの欠点がある。
【0006】
また、コア−セル構造を有する複合微粒子の製造方法として、ポリビニルピロリドンを含むパラジウムコロイドを調製し、これに塩化白金酸水溶液を添加し、水素ガスを供給して白金を還元析出させる方法も提案されている(非特許文献2:J.Chem.Soc.,Perkin Trans.II,1986,37.)。
【0007】
しかしながら、この方法では、パラジウムコロイドとともに白金塩を含む溶液に水素ガスを供給するため、白金が核微粒子表面に還元析出する同時に、白金コロイドを生成してしまい、コア−セル構造の複合微粒子を高収率で得ることができず、また得られた複合微粒子の粒子径が不均一であるなどの欠点がある。
【0008】
そこで、本願出願人はコア−セル構造を有する複合微粒子の製造方法として、金属微粒子、金属酸化物微粒子、金属被覆金属酸化物微粒子と、有機安定化剤とを含む分散液に、水素ガスを供給、該微粒子に水素を吸着させた後、該分散液に金属塩を添加して該微粒子表面に吸着した水素により金属塩を還元して該微粒子上に金属を析出させて表面層を形成して複合微粒子とすることを開示している。(特許文献1:特開平11−012608号公報)
また、本願出願人は、金属酸化物粒子の表面に金属コロイド粒子で修飾した導電性複合粒子を開示している。(特許文献2:特開2008−311141号公報)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−12608号公報
【特許文献2】特開2008−311141号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】戸嶋、触媒技術の動向と展望,触媒学会編,12 (1996))
【非特許文献2】J.Chem.Soc.,Perkin Trans.II,1986,37.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1の方法では複合微粒子とは別の金属コロイドの生成は少なくなるものの、やはり金属のみからなる金属コロイドが生成し、また、コア粒子として金属酸化物微粒子を用いた場合は水素の吸着が低下するためか金属被覆量を多くしたり、被覆層の厚みを厚くするコントロールができず、さらに金属酸化物コア粒子が小さい場合は金属で被覆できない粒子が残存する場合があった。
【0012】
また、特許文献2の方法でも、アミノ基含有シラン化合物で表面処理した金属酸化物粒子とカルボキシル基および/またはカルボキシレート基含有有機化合物で表面処理した金属コロイドを用いるが、金属酸化物粒子の表面を均一に金属コロイド粒子で被覆できない場合があり、特に金属酸化物粒子の粒子径が概ね50nm以下と小さくなるとその傾向が強くなる問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は上記問題点に鑑み鋭意検討した結果、金属酸化物粒子に予め金属錯化剤を吸着させ、ついで金属塩を添加した後還元剤を添加して金属塩を還元すると金属酸化物粒子の粒子径が小さくても均一に金属被覆層を形成できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明の構成は以下の通りである。
[1]下記の工程(a)〜(c)を含むこと特徴とする金属被覆金属酸化物微粒子の製造方法;
(a)金属酸化物微粒子分散液に、金属錯化剤を固形分として、金属酸化物微粒子の固形分としての重量(WP)の0.1〜3000重量%の範囲となるように添加し、金属酸化物微粒子に金属錯化剤を吸着させる工程
(b)金属塩水溶液を添加する工程
(c)還元剤を添加して金属塩を還元して金属被覆層を形成する工程。
[2]前記工程(c)についで下記の工程(d)を行う[1]の金属被覆金属酸化物微粒子の製造方法。
(d)洗浄する工程
[3]前記金属塩の金属がA u、Pt、Ir、Pd、Rh、Ag、Cu、In、Co、Ni、Zn、Cd、Sn、Ruから選ばれる少なくとも1種である[1]または[2]の金属被覆金属酸化物微粒子の製造方法。
[4]前記金属錯化剤がポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸から選ばれる少なくとも1種である[1]〜[3]の金属被覆金属酸化物微粒子の製造方法。
[5]前記還元剤が水素、水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸ソーダ、ヒドラジン、硫酸第一鉄、クエン酸3ナトリウム、クエン酸、L(+)−アスコルビン酸、酒石酸、アルコール類、アルデヒド類から選ばれる少なくとも1種である[1]〜[4]の金属被覆金属酸化物微粒子の製造方法。
[6]前記金属酸化物微粒子がシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、五酸化アンチモン、酸化インジウムおよびこれらの複合酸化物、ドーピング剤を含む酸化物、複合酸化物から選ばれる少なくとも1種以上である[1]〜[5]の金属被覆金属酸化物微粒子の製造方法。
[7]得られた粒子の平均粒子径が5〜600nmの範囲にあり、金属被覆層の厚みが1〜20nmの範囲にある[1]〜[6]の金属被覆金属酸化物微粒子の製造方法。
[8]得られた粒子の平均粒子径が5〜50nmの範囲にあり、金属被覆層の厚みが1〜10nmの範囲にある[7]の金属被覆金属酸化物微粒子の製造方法。
[9]得られた粒子には、金属被覆層のない金属酸化物微粒子が存在せず、金属のみからなる金属微粒子も存在しない[1]〜[8]の金属被覆金属酸化物微粒子の製造方法。
[10]前記[1]〜[9]の方法で製造されてなる金属被覆金属酸化物微粒子。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、本発明は、コアとなる金属酸化物粒子の粒子径によらずコア粒子の表面に均一に金属被覆層が形成された金属被覆金属酸化物粒子の製造方法および金属被覆金属酸化物粒子を提供することができる。また独立した金属微粒子も発生も少ない。
【0016】
このような金属被覆金属酸化物粒子は、金属被覆層が欠損箇所もなく、また、別個に存在する金属微粒子もないので、導電性が阻害されることもなく、また、屈折率や粒子密度が変動することもなく、電子部品材料の導電性膜、塗料用材料、光学材料(赤外線反射膜、紫外線遮蔽剤など)および触媒材料等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について具体的に説明する。
まず、金属被覆金属酸化物微粒子の製造方法について説明する。
[金属被覆金属酸化物微粒子の製造方法]
本発明に係る金属被覆金属酸化物微粒子の製造方法は、下記の工程(a)〜(c)からなることを特徴としている。
【0018】
(a)金属酸化物微粒子分散液に、金属錯化剤を固形分として、金属酸化物微粒子の固形分としての重量(WP)の0.1〜3000重量%の範囲となるように添加し、金属酸化物微粒子に金属錯化剤を吸着させる工程
(b)金属塩水溶液を添加する工程
(c)還元剤を添加して金属塩を還元する工程
【0019】
工程(a)
金属酸化物微粒子分散液に金属錯化剤を添加し、金属酸化物微粒子に金属錯化剤を吸着させる。
【0020】
金属酸化物微粒子
本発明に用いる金属酸化物微粒子としては、後述する金属錯化剤を吸着し、所望の金属被覆金属酸化物微粒子が得られれば特に制限は無く従来公知の金属酸化物微粒子を用いることができる。
【0021】
本発明では、金属酸化物微粒子がシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、五酸化アンチモン、酸化インジウムおよびこれらの複合酸化物、ドーピング剤を含む酸化物、複合酸化物から選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0022】
これらの金属酸化物微粒子は化学的にあるいは熱的に安定であり、光学材料や導電材料、触媒材料として好適に用いることができる。
金属被覆金属酸化物微粒子の製造に用いる金属酸化物微粒子は、平均粒子径が3〜560nm、さらには5〜360nmの範囲にあることが好ましい。
【0023】
金属酸化物微粒子の平均粒子径がこの範囲にあれば、金属層の被覆が容易かつ均一となり、また、分散液中での分散性も高い。なお、粒子径が低すぎると、得ること自体が困難となり、このような微粒の金属酸化物微粒子を用いると、金属被覆層の形成が困難となったり、金属のみの微細な金属微粒子が混在する場合がある。
【0024】
金属酸化物微粒子の平均粒子径が大きすぎても、金属酸化物微粒子分散液での分散性が低いため均一な被覆が困難になる場合がある。
なお、金属酸化物微粒子は、球状であることが好ましいが、本発明に用いる金属酸化物微粒子は球状である必要はなく棒状(繊維状)、板状等用途に応じて適宜選択して用いることができる。
【0025】
金属錯化剤
本発明に用いる金属錯化剤としてはポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0026】
これらの金属錯化剤は前記金属酸化物微粒子に吸着することができるとともに、後述する被覆用金属塩と安定な錯体を形成することができ、金属を均一に、安定的に被覆することができ、しかも金属の被覆量を調整することができる。
【0027】
金属酸化物微粒子分散液に添加する際は、金属錯化剤をそのまま添加して溶解し、吸着させることもできるが、あらかじめ金属錯化剤水溶液として添加することもできる。さらに、金属錯化剤水溶液に金属酸化物微粒子または金属酸化物微粒子分散液を添加・混合させてもよい。
【0028】
金属錯化剤の添加量は固形分として、被覆する金属の量(厚み)によっても異なるが、金属酸化物微粒子の固形分としての重量(WP)の0.1〜3000重量%、さらには0.5〜2800重量%の範囲にあることが好ましい。
【0029】
この範囲にあれば、均一に被覆した金属層を形成できる。
金属錯化剤が少なければ吸着する金属錯化剤の量が少ないため、金属酸化物微粒子を完全に、均一に被覆した金属被覆層を形成できない場合がある。金属錯化剤が多すぎても、吸着できない金属錯化剤と後述する金属イオンが錯形成し、還元後、金属酸化物微粒子を被覆することなく金属のみからなる金属微粒子が生成する場合がある。
【0030】
金属酸化物微粒子分散液の分散媒は、水、モノアルコール類、多価アルコール類およびこれらの混合物が好ましい。
なかでも水は、金属酸化物微粒子の分散性に優れ、かつ、前記金属錯化剤の溶解性に優れているので好適に用いることができる。
【0031】
金属酸化物微粒子・金属錯化剤混合分散液の濃度は固形分として0.001〜20重量%、さらには0.005〜15重量%の範囲にあることが好ましい。この範囲にあれば、生産性が高く、また、均一な金属被覆金属酸化物粒子が得られる。
【0032】
なお、混合分散液の濃度が低すぎれば、生産性が低いく、高すぎると金属酸化物粒子同士が凝集したり、得られる金属被覆金属酸化物粒子が凝集することがあり均一な金属被覆金属酸化物粒子を得られない場合がある。
【0033】
金属酸化物微粒子・金属錯化剤混合分散液は、必要に応じて吸着が完了するまで、攪拌するか、超音波を照射することが好ましい。
金属錯化剤の吸着が完了してないと、吸着していない金属錯化剤と工程(b)で添加する金属塩の金属イオンが錯体を形成し金属酸化物微粒子の被覆に与らない金属微粒子が生成する場合がある。吸着の実質的な完了の確認は、分散液の電気伝導度が下げ止まることや、分散液中の金属錯化剤の分析などによって可能である。なお、概ね10分以上攪拌することによって吸着は完了する。
【0034】
工程(b)
ついで、金属塩水溶液を添加する。本発明に用いる金属塩としては、Au、Pt、Ir、Pd、Rh、Ag、Cu、In、Co、Ni、Zn、Cd、Sn、Ruから選ばれる少なくとも1種の金属の塩であることが好ましい。
【0035】
金属塩として具体的には、酢酸コバルト(II)、ビス(2,4−ペンタンジオネート)コバルト(II)、トリス(2, 4−ペンタンジオネート)コバルト(III)、塩化コバルト(II)、硝酸コバルト(II)、酢酸ニッケル(II)、ビス(2,4−ペンタンジオネート)ニッケル(II)、塩化ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)、シュウ酸ニッケル(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0) 、テトラシアノニッケル(II)酸カリウム、酢酸銅(I)、酢酸銅(II)、臭化銅(I)、臭化銅(II)、塩化銅(I)、塩化銅(II)、ヨウ化銅(I)、ヨウ化銅(II)、硝酸銅(II)、硫酸銅(II)、ビス(2,4−ペンタンジオネート)銅(II)、テトラクロロ銅(II)酸カリウム、酢酸亜鉛(II)、ビス(2,4−ペンタジオネート)亜鉛(II)、硝酸亜鉛(II)、硫酸亜鉛(II)、塩化ルテニウム(III)、酢酸ロジウム(II)、塩化ロジウム(III)、硝酸ロジウム(III)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)−μ ,μ'−ジクロロロジウム、トリス( トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、硝酸パラジウム(II)、炭酸パラジウム、ビス(2,4−ペンタンジオネート)パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) 、テトラクロロパラジウム(II)酸カリウム、酢酸銀(I)、トリフルオロメタンスルホン酸銀(I)、硝酸銀(I)、硫酸銀(I)、p-トルエンスルホン酸銀(I)、炭酸銀、酢酸カドミウム(II)、塩化カドミウム(II)、硝酸カドミウム(II)、硫酸カドミウム(II)、塩化イリジウム(III)、塩化イリジウム(IV)、塩化白金(II)、塩化白金(IV)、ヘキサクロロ白金(IV)酸カリウム、ヘキサクロロ白金( I V)酸、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(0)、テトラクロロ白金(II)酸カリウム、塩化金(I)、塩化金(III)、臭化金(III)、テトラシアノ金(III)酸カリウム、テトラクロロ金(III)酸、塩化(トリフェニルホスフィン)金(I)等が挙げられる。
【0036】
金属塩水溶液の添加量は、金属酸化物微粒子表面を被覆する金属被覆層の厚みが所望の厚みとなるように添加する。
このとき、前記金属錯化剤のモル数(MMC)と金属塩水溶液の金属のモル数(MMS)とのモル比(MMS)/(MMC)は0.01〜10、さらには0.1〜5の範囲にあることが好ましい。この範囲であれば、金属層が均一に金属酸化物表面を被覆し、かつ金属微粒子を生成することもない。
【0037】
前記モル比(MMS)/(MMC)が低ければ、単に金属が少ないので被覆層が完全に被覆できない。
前記モル比(MMS)/(MMC)が大きいと、金属錯化剤が少ないために、錯体の形成に与らない金属イオンが増加し、このため金属酸化物微粒子の被覆に与らない金属微粒子が生成する場合がある。
【0038】
金属塩水溶液を添加した後、概ね5〜50℃好ましくは10〜30℃で攪拌することが好ましい。5℃以下の場合は、金属塩と金属錯化剤との錯体形成が遅く、5〜50℃の範囲であれば錯体形成は速やかに短時間で進行し、50℃を超えた温度にする必要はない。
【0039】
工程(c)
ついで、還元剤を添加して金属塩を還元する。還元剤としては、前記金属塩を還元することができれば特に制限はなく従来公知の還元剤を用いることができる。
本発明では、水素ガス、水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸ソーダ、ヒドラジン、硫酸第一鉄、クエン酸3ナトリウム、クエン酸、L(+)−アスコルビン酸、酒石酸、アルコール類、アルデヒド類から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0040】
還元剤の添加量は、金属塩の種類、還元剤の種類によっても異なるが、金属塩の0.1〜4モル倍、好ましくは0.2〜2モル倍が良い。還元剤が0.1モル倍より少ない場合は、金属塩が充分還元されず金属の被覆が不充分になるとともに金属の利用率が不充分となる場合がある。還元剤が4モル倍を超えると還元速度が速すぎるためか得られる金属被覆金属酸化物微粒子が凝集する場合がある。
【0041】
還元剤の添加速度は、金属被覆層のない金属酸化物微粒子が残存したり、金属のみからなる金属微粒子が生成することなく均一な金属被覆金属酸化物粒子が得られれば特に制限はなく、適宜設定することができる。金属塩の種類、還元剤の種類によっても異なるが、概ね迅速に添加することが好ましい。
【0042】
還元する際の温度は、還元剤の種類、によって異なるが、概ね10〜200℃、好ましくは10〜100℃の範囲である。還元する際の温度がこの範囲にあれば、還元は速やかに進行し、均一な金属被覆金属酸化物微粒子を得ることができる。
【0043】
また、還元する際の時間は、温度、還元剤の種類、金属塩の種類によっても異なり、還元が実質的に終了するまで(未還元金属塩が実質的に無くなるまで)行うが、概ね1〜24時間である。
【0044】
工程(d)
本発明では、前記工程(c)で得られた金属被覆金属酸化物微粒子をそのまま使用することができるが、洗浄して用いることが好ましい。
【0045】
洗浄方法は、残存する金属塩、金属錯化剤、還元剤あるいはこれらに由来するイオン不純物等を除去できれば特に制限はないが、限外濾過膜法、デカンテーション法、遠心分離法等が好適に採用される。
【0046】
本発明では、前記工程(b)〜工程(d)は、系内の酸素濃度を0.1%以下にすることが好ましい。そのためには、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等が挙げられる。
【0047】
なお、金属被覆金属酸化物微粒子中に金属のみからなる金属微粒子が存在する場合は、遠心分離などによって除去することができる。
このようにして、上記方法によれば平均粒子径が5〜600nmの範囲にあり、金属被覆層の厚みが1〜20nmの範囲にある金属被覆金属酸化物微粒子を得ることができる。
【0048】
なお、必要に応じて、(b)〜(d)工程は繰り返してもよい。
金属被覆金属酸化物微粒子の平均粒子径が5nm未満のものは得ることが困難であり、600nmを越えると、調製時に粒子が均一に分散しにくいため、均一に金属を被覆した粒子を得ることが困難となる場合がある。
【0049】
たとえば、なお平均粒子径は、形成される金属被覆層の厚みにより、またかかる厚みは、使用する金属塩や、錯化剤量がおおければ、大きくすることができる。
金属被覆金属酸化物微粒子の特に好ましい平均粒子径は5〜50nmの範囲である。
【0050】
また、金属被覆金属酸化物微粒子の金属被覆層の厚みは用途によっても異なるが1〜20nm、さらには2〜15nmの範囲にあることが好ましい。この範囲にあれば、導電性や触媒活性が高いという特性が発現される。
つぎに、金属被覆金属酸化物微粒子について説明する。
【0051】
[金属被覆金属酸化物微粒子]
本発明に係る金属被覆金属酸化物微粒子は、平均粒子径が5〜600nmの範囲にあり、金属被覆層の厚みが1〜20nmの範囲にあり、金属被覆層のない金属酸化物微粒子が実質的に存在しないことを特徴としている。
【0052】
金属酸化物微粒子
本発明に用いる金属酸化物微粒子としては、前記した金属酸化物微粒子が用いられ、平均粒子径が3〜560nm、さらには5〜360nmの範囲にあることが好ましい。
金属酸化物微粒子としては、特に平均粒子径が3〜30nmの範囲にあることが好ましい。
【0053】
金属被覆層
金属被覆層を形成する金属はAu、Pt、Ir、Pd、Rh、Ag、Cu、In、Co、Ni、Zn、Cd、Sn、Ruから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
2種以上の金属からなる場合の金属としてはAu-Cu、Ag-Pt、Ag-Pd、Au-Pd、Au-Rh、Pt-Pd、Pt-Rh、Ni-Pd、Ru-Ag、Cu-Co、Au-Cu-Ag、Ag-Cu-Pt、Ag-Cu-Pd、Ag-Au-Pd、Au-Rh-Pd、Ag-Pt-Pd、Ag-Pt-Rh、Cu-Co-Pdなどが挙げられる。
【0054】
これらの金属を用いると、電子部品材料の導電性膜、塗料用材料、光学材料(赤外線反射膜、紫外線遮蔽剤など)および触媒材料等に好適に用いることが可能である。
金属被覆層の厚みは1〜20nm、さらには2〜15nmの範囲にあることが好ましい。この範囲にあれば、導電性や触媒活性が高い粒子が得られる。
【0055】
金属被覆金属酸化物微粒子には金属被覆層のない金属酸化物微粒子が実質的に存在しないことが好ましい。
金属被覆金属酸化物微粒子中の金属被覆層のない金属酸化物微粒子の割合は1%以下、さらには0.5%以下である。
【0056】
金属被覆金属酸化物微粒子中の金属被覆層のない金属酸化物微粒子が含まれていると、導電性や触媒活性の低下を引き起こす場合があり、また、光学材料(赤外線反射膜、紫外線遮蔽剤など)としては不具合を生じる場合がある。
【0057】
金属被覆金属酸化物微粒子中の金属被覆層のない金属酸化物微粒子の割合は、金属被覆金属酸化物微粒子の走査型電子顕微鏡写真を撮影し、1000個の粒子について観察し、金属被覆層のない金属酸化物微粒子数を求めて算出する。
【0058】
また、本発明の金属被覆金属酸化物微粒子の平均粒子径は、上記と同様にして100個の粒子について粒子径を求め、その平均値とした。
また、金属被覆層の厚みは、金属被覆金属酸化物微粒子の平均粒子径から使用した金属酸化物微粒子の平均粒子径を減じ、この1/2として求めた。
【0059】
さらに、金属被覆金属酸化物微粒子には金属のみからなる金属微粒子が実質的に存在しないことが好ましい。
金属被覆金属酸化物微粒子中の金属のみからなる金属微粒子の個数割合は特定されないが、上記における写真観察において概ね10nm以下の微粒として観察され、存在(有無)を確認することができる。
【0060】
上記した本発明に係る金属被覆金属酸化物微粒子は、前記した本発明に係る金属被覆金属酸化物微粒子の製造方法によって得られた金属被覆金属酸化物微粒子であることが好ましい。
【0061】
本発明の製造方法によって得られた金属被覆金属酸化物微粒子は、金属酸化物微粒子の平均粒子径が3〜30nmと小さい場合であっても表面が均一に金属で被覆されており、平均粒子径が5〜50nmの範囲にあり、金属被覆層のない金属酸化物微粒子が実質的に存在することがなく、また金属のみからなる金属微粒子も実質的に存在することがなく、従って、金属微粒子を除去する必要もなく、導電性材料、触媒材料、光学材料等としても好適に用いることができる。
【0062】
本発明の金属被覆金属酸化物微粒子には、本願出願人の出願による特開平11−012608号公報に準じて、金属被覆金属酸化物微粒子の被覆層金属よりも標準水素電極電位が小さい金属層をさらに形成することが可能である。
【0063】
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0064】
[実施例1]
金属被覆金属酸化物微粒子(1)分散液の調製
金属酸化物微粒子としてシリカゾル(日揮触媒化成(株)製:カタロイドSI-50、平均粒子径25nm、固形分濃度48重量%)0.07gを水400gに分散させ、固形分濃度0.0084重量%のシリカ微粒子分散液400.07gを調製した。
【0065】
別途、金属錯化剤としてポリビニルピロリドン(ARDRICH(株)製:MW55000)0.32gを水42.45gに溶解して、濃度0.75重量%のポリビニルピロリドン水溶液42.77gを調製した。
【0066】
・工程(a)
ついで、固形分濃度0.0084重量%のシリカ微粒子分散液に金属錯化剤(ポリビニルピロリドン)水溶液42.77gを添加し、20℃で 1時間撹拌してシリカ微粒子に金属錯化剤を吸着させた。この時の金属錯化剤/金属酸化物微粒子重量割合を表に示した。
【0067】
・工程(b)
前記調製した、金属塩水溶液として濃度6.65重量%の塩化白金酸水溶液90.96gを添加した。
この時の金属塩/金属錯化剤モル比(MMS)/(MMC)を表に示した。
【0068】
・工程(c)
つぎに、還元剤として濃度0.1重量%の水素化ホウ素ナトリウム水溶液159.07を30秒で添加し、その後、50℃で1時間撹拌を継続した。この時、黒色に変色した。この時の還元剤/金属塩モル比を表に示した。
【0069】
・工程(d)
反応後、限外濾過膜法により充分なイオン交換水を用いて洗浄して金属被覆金属酸化物微粒子(1)分散液を調製した。
得られた金属被覆金属酸化物微粒子(1)について、平均粒子径を測定し、金属被覆層厚みを算出し、また、金属被覆層のない金属酸化物微粒子の観察、金属のみからなる金属微粒子の観察を行い、結果を表に示す。
【0070】
[実施例2]
金属被覆金属酸化物微粒子(2)分散液の調製
実施例1において、金属錯化剤(ポリビニルピロリドン)水溶液7.12g、金属塩水溶液として濃度6.65重量%の塩化白金酸水溶液30.3g、還元剤として濃度0.1重量%の水素化ホウ素ナトリウム水溶液13.28gを添加した以外は同様にして金属被覆金属酸化物微粒子(2)分散液を調製した。
【0071】
得られた金属被覆金属酸化物微粒子(2)について、平均粒子径を測定し、金属被覆層厚みを算出し、また、金属被覆層のない金属酸化物微粒子の観察、金属のみからなる金属微粒子の観察を行い、結果を表に示す。
【0072】
[実施例3]
金属被覆金属酸化物微粒子(3)分散液の調製
実施例1において、金属錯化剤(ポリビニルピロリドン)水溶液118.76gを金属塩水溶液として濃度6.65重量%の塩化白金酸水溶液505.4g、還元剤として濃度0.1重量%の水素化ホウ素ナトリウム水溶液883.73g添加した以外は同様にして金属被覆金属酸化物微粒子(3)分散液を調製した。
【0073】
得られた金属被覆金属酸化物微粒子(3)について、平均粒子径を測定し、金属被覆層厚みを算出し、また、金属被覆層のない金属酸化物微粒子の観察、金属のみからなる金属微粒子の観察を行い、結果を表に示す。
【0074】
[実施例4]
金属被覆金属酸化物微粒子(4)分散液の調製
金属酸化物微粒子としてシリカゾル(日揮触媒化成(株)製:カタロイドSI-30、平均粒子径12nm、固形分濃度30重量%)0.112gを水400gに分散させ、固形分濃度0.0084重量%のシリカ微粒子分散液400.112gを調製した。
【0075】
別途、金属錯化剤としてポリビニルピロリドン(ARDRICH(株)製:MW55000)0.36gを水48gに溶解して、濃度0.75重量%のポリビニルピロリドン水溶液48.36gを調製した。
【0076】
・工程(a)
固形分濃度0.0084重量%のシリカ微粒子分散液に金属錯化剤(ポリビニルピロリドン)水溶液4.84gを添加し、20℃で 1時間撹拌してシリカ微粒子に金属錯化剤を吸着させた。
【0077】
・工程(b)
つぎに、金属塩水溶液として濃度6.65重量%の塩化白金酸水溶液10.71gを添加した。
【0078】
・工程(c)
還元剤として濃度0.1重量%の水素化ホウ素ナトリウム水溶液80gを30秒で添加し、その後、50℃で1時間撹拌を継続した。
【0079】
・工程(d)
反応後、限外濾過膜法により充分なイオン交換水を用いて洗浄して金属被覆金属酸化物微粒子(4)分散液を調製した。
【0080】
得られた金属被覆金属酸化物微粒子(4)について、平均粒子径を測定し、金属被覆層厚みを算出し、また、金属被覆層のない金属酸化物微粒子の観察、金属のみからなる金属微粒子の観察を行い、結果を表に示す。
【0081】
[実施例5]
金属被覆金属酸化物微粒子(5)分散液の調製
金属酸化物微粒子としてシリカゾル(日揮触媒化成(株)製:カタロイドSI-45P、平均粒子径45nm、固形分濃度40重量%0.084gを水400gに分散させ、固形分濃度0.0084重量%のシリカ微粒子分散液400.084gを調製した。
【0082】
別途、金属錯化剤としてポリビニルピロリドン(ARDRICH(株)製:MW55000)0.18gを水24gに溶解して、濃度0.75重量%のポリビニルピロリドン水溶液24.18gを調製した。
【0083】
・工程(a)
固形分濃度0.0084重量%のシリカ微粒子分散液に金属錯化剤(ポリビニルピロリドン)水溶液2.35gを添加し、20℃で1時間撹拌してシリカ微粒子に金属錯化剤を吸着させた。
【0084】
・工程(b)
金属塩水溶液として濃度6.65重量%の塩化白金酸水溶液10.71gを添加した。
【0085】
・工程(c)
還元剤として濃度0.1重量%の水素化ホウ素ナトリウム水溶液17.61を30秒で添加し、その後、50℃で1時間撹拌を継続した。
【0086】
・工程(d)
反応後、限外濾過膜法により充分なイオン交換水を用いて洗浄して金属被覆金属酸化物微粒子(5)分散液を調製した。
【0087】
得られた金属被覆金属酸化物微粒子(5)について、平均粒子径を測定し、金属被覆層厚みを算出し、また、金属被覆層のない金属酸化物微粒子の観察、金属のみからなる金属微粒子の観察を行い、結果を表に示す。
【0088】
[実施例6]
金属被覆金属酸化物微粒子(6)分散液の調製
実施例1において、金属錯化剤としてポリビニルピロリドン(ARDRICH(株)製:MW55000)0.32gの代わりにポリビニルアルコール(関東化学(株)製)0.32gを用いた以外は同様にして金属被覆金属酸化物微粒子(6)分散液を調製した。
【0089】
得られた金属被覆金属酸化物微粒子(6)について、平均粒子径を測定し、金属被覆層厚みを算出し、また、金属被覆層のない金属酸化物微粒子の観察、金属のみからなる金属微粒子の観察を行い、結果を表に示す。
【0090】
[実施例7]
金属被覆金属酸化物微粒子(7)分散液の調製
実施例1において、金属錯化剤としてポリビニルピロリドン(ARDRICH(株)製:MW55000)0.32gの代わりにポリアクリル酸(ARDRICH(株)製:MW3000)0.32gを用いた以外は同様にして金属被覆金属酸化物微粒子(7)分散液を調製した。
【0091】
得られた金属被覆金属酸化物微粒子(7)について、平均粒子径を測定し、金属被覆層厚みを算出し、また、金属被覆層のない金属酸化物微粒子の観察、金属のみからなる金属微粒子の観察を行い、結果を表に示す。
【0092】
[実施例8]
金属被覆金属酸化物微粒子(8)分散液の調製
濃度35重量%の過酸化水素水1425gを純水7122gで希釈した過酸化水素水溶液に濃度63重量%の硝酸6.3gを加え、これにテトライソプロピルチタネート143gを添加し黄褐色のペルオキソチタン酸水溶液を得た。
【0093】
ついで、ペルオキソチタン酸水溶液を90℃で2時間、95℃で12時間熟成した。溶液は、最初黄褐色であったが、熟成後には乳白色の透明性液体(コロイド液)となった。
ついで、透明性液体(コロイド液)を180℃で16時間水熱処理(加熱)してルチル型酸化チタン微粒子(1)分散液を調製した。
【0094】
得られたルチル型酸化チタン微粒子(1)分散液を限外濾過膜法により、洗浄し、ついで濃縮し、固形分濃度30重量%の棒状の(幅=25nm、長さ82nm)ルチル型酸化チタン微粒子(1)分散ゾルを得た。
【0095】
ついで、実施例1において、シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:カタロイドSI-50、平均粒子径25nm、固形分濃度48重量%)0.07gの代わりに固形分濃度30重量%のルチル型酸化チタン微粒子(1)分散ゾル0.201gを用いた以外は同様にして金属被覆金属酸化物微粒子(7)分散液を調製した。
【0096】
得られた金属被覆金属酸化物微粒子(7)について、平均粒子幅および粒子長を測定し、金属被覆層厚みを算出し、また、金属被覆層のない金属酸化物微粒子の観察、金属のみからなる金属微粒子の観察を行い、結果を表に示す。
【0097】
[実施例9]
金属被覆金属酸化物微粒子(9)分散液の調製
金属酸化物微粒子としてシリカゾル(日揮触媒化成(株)製:カタロイドSI-80P、平均粒子径100nm、固形分濃度40重量%)0.084gを水400gに分散させ、固形分濃度0.0084重量%のシリカ微粒子分散液400.084gを調製した。
【0098】
別途、金属錯化剤としてポリビニルピロリドン(ARDRICH(株)製:MW55000)0.18gを水24gに溶解して、濃度0.75重量%のポリビニルピロリドン水溶液 24.18gを調製した。
【0099】
・工程(a)
固形分濃度0.0084重量%のシリカ微粒子分散液に金属錯化剤(ポリビニルピロリドン)水溶液 4.0gを添加し、20℃で1時間撹拌してシリカ微粒子に金属錯化剤を吸着させた。
【0100】
・工程(b)
つぎに、金属塩水溶液として濃度6.65重量%の塩化白金酸水溶液10gを添加した。
【0101】
・工程(c)
還元剤として濃度0.1重量%の水素化ホウ素ナトリウム水溶液44.96を30秒で添加し、その後、50℃で1時間撹拌を継続した。
【0102】
・工程(d)
ついで、限外濾過膜法により充分なイオン交換水を用いて洗浄して金属被覆金属酸化物微粒子(9)分散液を調製した。
【0103】
得られた金属被覆金属酸化物微粒子(9)について、平均粒子径を測定し、金属被覆層厚みを算出し、また、金属被覆層のない金属酸化物微粒子の観察、金属のみからなる金属微粒子の観察を行い、結果を表に示す。
【0104】
[実施例10]
金属被覆金属酸化物微粒子(10)分散液の調製
金属酸化物微粒子としてシリカゾル(日揮触媒化成(株)製:スフェリカスラリー300、平均粒子径300nm、固形分濃度20重量%)20gを水380gに分散させ、固形分濃度1.0重量%のシリカ微粒子分散液400gを調製した。
【0105】
別途、金属錯化剤としてポリビニルピロリドン(ARDRICH(株)製:MW55000)0.18gを水24gに溶解して、濃度0.75重量%のポリビニルピロリドン水溶液 24.18gを調製した。
【0106】
・工程(a)
ついで、固形分濃度1.0重量%のシリカ微粒子分散液に金属錯化剤(ポリビニルピロリドン)水溶液3.0gを添加し、20℃で1時間撹拌してシリカ微粒子に金属錯化剤を吸着させた。
【0107】
・工程(b)
金属塩水溶液として濃度6.65重量%の塩化白金酸水溶液10gを添加した。
【0108】
・工程(c)
還元剤として濃度0.1重量%の水素化ホウ素ナトリウム水溶液44.96を30秒で添加し、その後、50℃で1時間撹拌を継続した。
【0109】
・工程(d)
反応後、限外濾過膜法により充分なイオン交換水を用いて洗浄して金属被覆金属酸化物微粒子(10)分散液を調製した。
得られた金属被覆金属酸化物微粒子(10)について、平均粒子径を測定し、金属被覆層厚みを算出し、また、金属被覆層のない金属酸化物微粒子の観察、金属のみからなる金属微粒子の観察を行い、結果を表に示す。
【0110】
[比較例1]
金属被覆金属酸化物微粒子(R1)分散液の調製
実施例1において、金属錯化剤としてポリビニルピロリドンを使用しなかった以外は同様にして金属被覆金属酸化物微粒子(R1)分散液を調製した。
【0111】
得られた金属被覆金属酸化物微粒子(R1)について、平均粒子径を測定し、金属被覆層厚みを算出し、また、金属被覆層のない金属酸化物微粒子の観察、金属のみからなる金属微粒子の観察を行い、結果を表に示す。
【0112】
[比較例2]
金属被覆金属酸化物微粒子(R2)の調製
実施例1において、実施例1と同様にして調製した濃度0.75重量%のポリビニルピロリドン水溶液30000gを使用した以外は同様にして金属被覆金属酸化物微粒子(R2)を調製した。
【0113】
得られた金属被覆金属酸化物微粒子(R2)について、平均粒子径を測定し、金属被覆層厚みを算出し、また、金属被覆層のない金属酸化物微粒子の観察、金属のみからなる金属微粒子の観察を行い、結果を表に示す。
【0114】
[比較例3]
金属被覆金属酸化物微粒子(R3)の調製
実施例1において、工程(a)で、金属錯化剤(ポリビニルピロリドン)水溶液42.77gを添加した後、20℃で1時間撹拌せずに(すなわちシリカ微粒子に金属錯化剤を吸着させることなく)、金属塩水溶液を添加した以外は同様にして金属被覆金属酸化物微粒子(R3)を調製した。
【0115】
得られた金属被覆金属酸化物微粒子(R3)について、平均粒子径を測定し、金属被覆層厚みを算出し、また、金属被覆層のない金属酸化物微粒子の観察、金属のみからなる金属微粒子の観察を行い、結果を表に示す。
【0116】
[比較例4]
金属被覆金属酸化物微粒子(R4)の調製
特開平11−012608号公報の実施例2に準拠してTiO2 (核)-Pt(表面層)複合微粒子を製造した。TiO2コロイド溶液(日揮触媒化成(株)製:PW-1010,固形分濃度20重量%、平均粒子径20nm)0.8gとポリビニルピロリドン(ARDRICH(株)製:MW55000)0.04gとを混合した後、水・エチレングリコール・エタノール(重量比=1:1:1)混合溶媒150gと混合し、TiO2微粒子が0.1重量%濃度で分散した分散液を調製した。
【0117】
得られたTiO2分散液に、攪拌しながら、2時間水素ガスを吹き込み、TiO2粒子上に、水素の吸着を行った。水素が吸着したTiO2分散液に、金属塩水溶液として濃度6.65重量%の塩化白金酸水溶液25.71gを添加した。窒素雰囲気下、攪拌しながら6時間かけて滴下したのち、8時間攪拌を続け、TiO2粒子上にPt表面層が形成された複合微粒子(R4)分散液を製造した。
【0118】
得られた金属被覆金属酸化物微粒子(R4)について、平均粒子径を測定し、金属被覆層厚みを算出し、また、金属被覆層のない金属酸化物微粒子の観察、金属のみからなる金属微粒子の観察を行い、結果を表に示す。
【0119】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(a)〜(c)を含むこと特徴とする金属被覆金属酸化物微粒子の製造方法;
(a)金属酸化物微粒子分散液に、金属錯化剤を固形分として、金属酸化物微粒子の固形分としての重量(WP)の0.1〜3000重量%の範囲となるように添加し、金属酸化物微粒子に金属錯化剤を吸着させる工程
(b)金属塩水溶液を添加する工程
(c)還元剤を添加して金属塩を還元して金属被覆層を形成する工程。
【請求項2】
前記工程(c)についで下記の工程(d)を行うことを特徴とする請求項1に記載の金属被覆金属酸化物微粒子の製造方法。
(d)洗浄する工程
【請求項3】
前記金属塩の金属がA u、Pt、Ir、Pd、Rh、Ag、Cu、In、Co、Ni、Zn、Cd、Sn、Ruから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属被覆金属酸化物微粒子の製造方法。
【請求項4】
前記金属錯化剤がポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属被覆金属酸化物微粒子の製造方法。
【請求項5】
前記還元剤が水素、水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸ソーダ、ヒドラジン、硫酸第一鉄、クエン酸3ナトリウム、クエン酸、L(+)−アスコルビン酸、酒石酸、アルコール類、アルデヒド類から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属被覆金属酸化物微粒子の製造方法。
【請求項6】
前記金属酸化物微粒子がシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、五酸化アンチモン、酸化インジウムおよびこれらの複合酸化物、ドーピング剤を含む酸化物、複合酸化物から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の金属被覆金属酸化物微粒子の製造方法。
【請求項7】
得られた粒子の平均粒子径が5〜600nmの範囲にあり、金属被覆層の厚みが1〜20nmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の金属被覆金属酸化物微粒子の製造方法。
【請求項8】
得られた粒子の平均粒子径が5〜50nmの範囲にあり、金属被覆層の厚みが1〜10nmの範囲にあることを特徴とする請求項7に記載の金属被覆金属酸化物微粒子の製造方法。
【請求項9】
得られた粒子には、金属被覆層のない金属酸化物微粒子が存在せず、金属のみからなる金属微粒子も存在しないことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の金属被覆金属酸化物微粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の方法で製造されてなる金属被覆金属酸化物微粒子。

【公開番号】特開2012−116699(P2012−116699A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267315(P2010−267315)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】