説明

金属製バット

【課題】弾性変形の回復スピードを上げるようにして、飛距離を伸ばすことのできるバットを課題とする。
【解決手段】中空筒体2からなる金属製バット1において、打球部3の中空筒体2内の長さ方向の先端側と手元側の両端に、バットの内径と略同じ外径の金属製、合成樹脂製、木製、竹製又はコルク製からなる剛性補強材5F,5Bを嵌挿した金属製バット1を構成するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボ−ルの飛距離を伸ばすようにした金属製バットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
中空筒体からなる金属製バットは、打球の瞬間にバットの断面が楕円状に撓むので、この弾性変形の撓みを、早く元の形状に回復させるようにすれば、飛距離を伸ばすことができる。そのために、打球部内に剛性補強材を内挿させて、回復スピ−ドを上げるようにすることが望ましい。
【0003】
打球部の中空筒体内に内装材を入れたバットは、先行技術が数多く出願されている。例えば特許文献1や特許文献2は、打球部の中空筒体内に補強管を内装して、反発特性を改善しようとしている。
【特許文献1】特開平11−137752号公報
【特許文献2】特開平10−314353号公報
【0004】
また特許文献3は、打球部の中空筒体内に金属管を嵌入し、スエージングにより縮径加工して、強度と弾発力を向上させるようにしている。
【特許文献3】特開平07−299170号公報
【0005】
更に特許文献4は、打球部の中空筒体内に管状インサートを含み、その間にエラストマ材料を充填している。
【特許文献4】特開2002−052108号公報
【0006】
そして特許文献5は、打球部の中空筒体内に剛性の芯材と、芯材に周設して発泡ポリウレタン層を被覆する保護層を内装させて、打球音を低くしている。
【特許文献5】特開平07−275413号公報
【0007】
更にまた特許文献6は、打球部の中空筒体内にハニカム状の発泡アルミニウム体を充填して、衝撃波を緩衝させるようにしている。
【特許文献6】特開平08−336627号公報
【0008】
そしてまた特許文献7は、打球部の中空筒体内に外周面に複数の羽根を放射状に備えた芯パイプを内蔵させて飛距離を伸ばすようにしている。
【特許文献7】特開平06−225952号公報
【0009】
一方特許文献8と特許文献9は、打球部の中空筒体内にリブを突設し内管を固着させ、弾性変形の回復スピードを上げるようにしている。
【特許文献8】特開平05−023407号公報
【特許文献9】特開平05−015624号公報
【0010】
また特許文献10は、打球部の中空筒体内に内装する内装物の両端にリングを嵌合している。しかしリングは、内装物が移動しないようにしたものである。
【特許文献10】特開平11−276652号公報
【0011】
一方更に特許文献11は、打球部の中空筒体内の両端に、内装物を充填したバットが開示されている。しかし内装物は、軟質ポリウレタンフォーム屑を接着剤で固化した可撓性のボ−ド等からなる消音材であって、剛性補強材ではない。
【特許文献11】特開平06−126359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の事情に鑑み、本発明は、弾性変形の回復スピードを上げるようにして、飛距離を伸ばすことのできるバットの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を達成するために、中空筒体からなる金属製バットにおいて、打球部の中空筒体内の長さ方向の先端側と手元側の両端に、バットの内径と略同じ外径の金属製、合成樹脂製、木製、竹製又はコルク製からなる剛性補強材を嵌挿した金属製バットを構成するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のバットで打球すると、弾性変形の回復スピ−ドが上がり、飛距離を伸ばすことのできるようになった。
【0015】
本発明のバットで打球すると、打球部の手元側にも剛性補強材を入れているため、グリップ部の衝撃が緩和されるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の金属製バットを、図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明のバットの一例を示す断面図である。図2は、本発明に使用される剛性補強材で、(イ)は球状の形状からなる剛性補強材の斜視図、(ロ)は柱状の形状からなる剛性補強材の斜視図、(ハ)は板状の形状からなる剛性補強材の斜視図、(ニ)はドーナツ状の形状からなる剛性補強材の斜視図、(ホ)は筒状の形状からなる剛性補強材の斜視図である。図3は本発明の実施例1における剛性補強材とその周辺の寸法関係を示すした説明図である。
【0018】
図1において、1は金属製バットで、2はその中空筒体であり、3が平行な太径からなる打球部で、4がキャップである。本発明の金属製バット1は、打球部3の中空筒体2内の長さ方向の先端側Fと手元側Bの両端に、バットの内径と略同じ外径の金属製または合成樹脂製からなる剛性補強材5F,5Bを嵌挿するようにしたものである。
【0019】
即ち、本発明の補強材5F,5Bは、金属製または合成樹脂製であり、剛性のものに限られる。従って合成樹脂は、硬質合成樹脂のみである。また、補強材5F,5Bは、木製、竹製又はコルク製であってもよい。
【0020】
本発明の剛性補強材5F.5Bは、図2(イ)に示すような球状15、図2(ロ)に示すような柱状25、図2(ハ)に示すような板状35、図2(ニ)に示すようなドーナツ状45、図2(ホ)に示すような筒状55のそれぞれの形状とすることもできる。即ち適用するバットの製品重量やバランスにより、適した素材や形状が選択される。
【0021】
また先端側の剛性補強材5Fは、キャップ4を兼用またはキャップ4にて代用するようにしてもよい。剛性補強材は、打球部の中空筒体内の長さ方向の先端側と手元側との間に、バットの内径と略同じ外径を有するものを3個以上嵌挿してもよい。
【0022】
剛性補強材5F,5Bは、油圧によって嵌挿させることもできるが、外径に接着剤を塗布しておき、圧入後にバットの内径に接着させることもできる。あるいは図示を省略するが、剛性補強材5F,5Bの外径とバットの内径に螺子を刻設しておき、螺子止めとすることもできる。
【実施例1】
【0023】
図3は、本発明の実施例1における剛性補強材とその周辺の寸法関係を示すした説明図である。
【0024】
ソフトボールには、ゴムボールと皮ボールがあるが、実施例1は、皮ボール対応商品である。バットの全長は84cmで、バットの外径Oは57mmφ、打球部の肉厚Tは1.9mmなので、内径Iは53.2mmφである。
【0025】
これに対して、本実施例のアルミパイプからなる剛性補強材65は、外径oが52.8mmφ、肉厚tが1.6mm、長さlが55mmからなるアルミパイプの両端をスピニング加工によって塞いだ、中空の卵型(アキュムレータ型)の形状からなっている。この剛性補強材65を、外周に接着剤を塗布して、矢印Aの方向に油圧によって所定の位置まで嵌挿する。この際、バットの内径Iが53.2mmφに対して、剛性補強材65の外径Oが52.8mmφであってバットの内径と略同じ外径である。0.4mm差は、先端が解放状態のバットは真円ではないので、接着剤66によって隙間ができることはない。
【0026】
剛性補強材65,65を、図1のように、打球部の中空筒体内の長さ方向の先端側と手元側の両端に圧入して接着66後、先端に樹脂製のキャップを填めてバットの試作品を完成させた。
【0027】
このバットの試作品を使用して、一人が軽く投げたボールを他方で打者A,B,Cが同じように打つというトスバッティング方式により、中空筒体からなる金属製バットにおいて、剛性補強材を嵌挿しない普通品バットと対比して、打球の飛距離を測定した。
【0028】
次の表1は、1種類のバットで、夫々20球を打って飛距離を測定し、飛距離の大きい方と小さい方からそれぞれ2つのデータを削除した16の数値を平均して測定値としたものである。
【0029】
【表1】

【0030】
表1のように、本発明品バットは、平均して10%近く飛距離をアップさせることができた。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明品のバットは、実施例の如きソフトボール用のバットに限らず、軟式や硬式用のバットにも、広く利用しうるものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のバットの一例を示す断面図である。
【図2】本発明に使用される剛性補強材で、(イ)は球状の形状からなる剛性補強材の斜視図、(ロ)は柱状の形状からなる剛性補強材の斜視図、(ハ)は板状の形状からなる剛性補強材の斜視図、(ニ)はドーナツ状の形状からなる剛性補強材の斜視図、(ホ)は筒状の形状からなる剛性補強材の斜視図である。
【図3】本発明の実施例1における剛性補強材とその周辺の寸法関係を示すした説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 金属製バット
2 中空筒体
3 打球部
4 キャップ
5B,5F 剛性補強材
15 球状の剛性補強材
25 柱状の剛性補強材
35 板状の剛性補強材
45 ドーナツ状の剛性補強材
55 筒状の剛性補強材
65 実施例1の剛性補強材
66 接着剤
A 圧入の方向

打球部の内径
l 剛性補強材の長さ
O バットの外径
o 剛性補強材の外径
T 打球部の肉厚
t 剛性補強材の肉厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空筒体からなる金属製バットにおいて、打球部の中空筒体内の長さ方向の先端側と手元側の両端に、バットの内径と略同じ外径を有する金属製、合成樹脂製、木製、竹製又はコルク製からなる剛性補強材を嵌挿したことを特徴とする金属製バット。
【請求項2】
剛性補強材が、球状、柱状、板状、ド−ナツ状又は筒状からなる請求項1記載の金属製バット。
【請求項3】
剛性補強材が、3個以上嵌挿した請求項1または請求項2記載の金属製バット。
【請求項4】
先端側の剛性補強材が、キャップからなる請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の金属製バット。
【請求項5】
嵌挿が、圧入後接着・螺子止めとした請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の金属製バット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−68044(P2006−68044A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−251430(P2004−251430)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(592109156)藤井金属化工株式会社 (9)
【出願人】(391041590)株式会社エスエスケイ (7)