金属製加圧容器用RFIDタグシステム
【課題】金属缶を含む加圧容器へのRFIDタグの取り付けを可能とすること。
【解決手段】所定の波長の電磁波により情報の送受信を行うRFIDタグ105と、金属材料(アルミ系金属材料)による金属製加圧容器100を含む金属製加圧容器用RFIDタグシステムであって、金属製加圧容器100の上面に設けられている金属製定量チャンバー格納部102の周囲に所定の間隔(高さ)を有する非金属材料性のリング状スペーサ104を設け、その上部のリング状面に円弧状のリング状RFIDタグ105を形成したもの。
【解決手段】所定の波長の電磁波により情報の送受信を行うRFIDタグ105と、金属材料(アルミ系金属材料)による金属製加圧容器100を含む金属製加圧容器用RFIDタグシステムであって、金属製加圧容器100の上面に設けられている金属製定量チャンバー格納部102の周囲に所定の間隔(高さ)を有する非金属材料性のリング状スペーサ104を設け、その上部のリング状面に円弧状のリング状RFIDタグ105を形成したもの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内等に噴霧するための薬剤等を収納するアルミ、アルミ合金、鉄、鉄合金等の金属製加圧容器(スプレー缶)にRFID(Radio Frequency IDentification、無線周波数の電磁波を用いた非接触個別識別技術)タグを付した金属製加圧容器用RFIDタグシステムに係り、特に前記金属製加圧容器に取り付けたRFIDタグからの情報を高精度で読み取ることができる金属製加圧容器用RFIDタグシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にRFIDタグは、アンテナを含み、RFIDチップと呼ばれる集積回路にIDコードもしくはそれと同等な識別情報を内蔵し、RFIDチップに接続されたアンテナを経由して、外部から無線手段によりその情報を読み取るものである。このRFIDタグの用途の一つとしては、製品のトレースシステムが知られている。このトレースシステムは、例えば製造工程又は流通過程の必要時にRFIDタグと通信装置が交信し、得られたIDコード/日時データ/交信場所等の情報からRFIDタグが添付されている製品の製造履歴や流通履歴を追跡し、管理するものである。
【0003】
特に医薬品の分野においては、製造工程での品質管理、流通過程での真贋判定、薬局での誤販売防止、市場での不良発生時のフィードバック等、前記トレースシステムを用いた製品の履歴を個別に管理することが望まれている。
【0004】
前記RFIDタグを用いたトレースシステムの従来技術としては、例えば下記特許文献が挙げられ、特許文献1には、ガラス瓶の再使用型容器に読み出し及び書き込みが可能なRFIDタグを設け、前記容器の再使用状況を記録することで、適切な再使用を可能とするシステムが記述されている。
また特許文献2には、薬品に取り付けられたRFIDタグの情報を販売の際に読み取ってその薬品名を端末に表示し、また処方箋データと比較することで、誤った薬品がユーザーに渡るのを防止するシステムが記載され、特許文献3には、シール部材に仕込んだRFIDタグシールを薬品ケースに貼り付け、このRFIDタグシールからの情報を薬品棚から入出庫する際に読み取り、薬品棚の在庫管理を行うシステムが記載されている。
【0005】
また、これらのシステムを信頼性良く稼働させるためには、添付されたRFIDタグの情報を確実に読み取る必要があり、特に金属材料等の導電性の容器や、容器内部に導電性のある液体を格納した容器においては、RFIDタグとの確実な交信が困難になるため、この確実な交信を行うために静電結合による交信方式を採用する技術が特許文献4に提案されている。また特許文献5及び6には、電磁誘導給電方式のRFIDタグを採用し、プロパンガス等の加圧容器を始めとした金属製(導電性)容器に設置したRFIDタグとの交信を可能にする技術が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−211574号公報
【特許文献2】特開2003−233673号公報
【特許文献3】特開2003−292123号公報
【特許文献4】特開2002−259934号公報
【特許文献5】特開2002−181296号公報
【特許文献6】特開2002−118490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
医薬品(薬剤)の形態の一つとして、気管支喘息等の症状を緩和するために使用されるエアロゾル状態の薬剤があり、このエアロゾル状態の薬剤(被吐出物質)を口腔内に吐出(噴霧)するための機構として一般に加圧定量噴霧吸入器が採用されている。この加圧定量噴霧吸入器は、加圧容器内の液体状薬品(またはドライパウダ)を噴霧することでエアロゾル化し、口腔内から気管支へ導入するものである。ここで用いられる加圧容器は、一回につき一定量の医薬品を吐出するための定量吐出機構を設けた金属製加圧容器であり、定量吐出機構を除けば、一般の金属製加圧容器とほぼ同じ構造で、概略形状も底面を密封され、上面にバルブ機構を設けた概略円筒形状のものである。但し、その容器(缶)のサイズは、医薬品の使用量に合わせて小型化されており、直径で20乃至30mm、高さで数十mm程度である。
【0008】
ここで、一般に使用される塗料やヘアケア用のスプレー缶は、比較的単純なエアロゾルのスプレーパターン(中心部が濃く、周辺部が薄い)を作れば実用上問題ないため、バルブ機構はプッシュボタンを兼ねたノズルを備えるに過ぎないが、前述した医薬品用の加圧定量噴霧吸入器は、噴霧直後から極力均一な濃度のエアロゾル分布を作り出す必要があるため、バルブの後に膨張室と口にくわえるマウスピース部を備えたアダプタを装着する必要があると共に、金属製加圧容器部分だけが使い切りで使用され、通常、金属製加圧容器を交換することによってアダプタは継続して使用される。
このため、医薬品自体のトレースを目的としてこの加圧定量噴霧吸入器に対してRFIDタグ技術を適用する場合には、医薬品を収納している金属製加圧容器側にRFIDタグを取り付ける必要がある。
尚、前記薬剤用の金属製加圧容器は、薬剤を収納する円筒状の金属製タンク部と、前記薬剤の吐出を制御するためのバルブ機構部と、該バルブ機構部の内、上方に設けられ、前記薬剤の吐出量を定量チャンバーで計量することにより定量化する定量吐出機構と、前記バルブ機構部を動作させると同時に、前記薬剤を外部へ案内する弁棒部とから構成されるものであるが、薬剤の定量吐出が不要なものにあっては前記定量吐出機構は必ずしも必要なものではない。
【0009】
前記特許文献1記載の技術は、ガラス瓶を対象としてRFIDタグを設置する構成のために交信を行うことができるものの、アルミ等の金属材料で作られた加圧容器には適用することができないという不具合があった。特許文献2及び3記載技術は、RFIDタグを貼り付ける薬品のケースやパッケージが金属製である場合を考慮しておらず、薬品のケースやパッケージが金属製である場合、この金属製ケースや金属製パッケージによってリーダライタとの交信が困難であるという不具合があった。また特許文献4記載の技術は、導電性を有する液体を収容する容器外壁へ貼着しても、リーダライタとの交信ができるようにするために、静電結合型で2面の平面状のアンテナパターンの一方のパターンを、導電性を有する液体と接していない容器外壁に貼着する技術であるため、導電体であるアルミ等の金属材料で作られた加圧容器にアンテナパターンの全面を貼着してもリーダライタとの交信はできない、という不具合があった。また、同引例記載技術は、静電結合による交信方式を用いた交信を行うことができるものの、交信距離が極端に短くRFIDタグと読み取りアンテナをほぼ接触させる必要がある。従って、金属製加圧容器にアダプタを取り付ける必要があるために、読み取りアンテナをRFIDタグに接触させられない加圧定量噴霧吸入器に対しては適用することができないという不具合があった。
【0010】
更に前述の特許文献5及び6記載の技術は、電磁誘導給電方式による交信を行うことができるものの、十分な供給電力を得るために大きなコイルアンテナを必要とするため、本願発明対象とする医薬品用の小型化された金属製加圧容器へ適用することができないという不具合があった。
【0011】
本発明の目的は、前述の従来技術による不具合を除去することであり、医薬品(薬剤)用の小型化された金属製加圧容器であっても、通信装置側と容易に交信を行うことができる金属製加圧容器用RFIDタグシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために本発明は、加圧された被吐出物質を収納する金属製タンク部と、該金属製タンク部の上方に設けられ、押圧されることにより前記被吐出物質を吐出するバルブ機構を格納する金属製バルブ格納部と、該金属製バルブ格納部の内、上部に設けられている金属製定量チャンバー格納部と、該金属製定量チャンバー格納部から上方に突出し、前記被吐出物質を外部に案内する弁棒部とを備える概略円筒形状の金属製加圧容器にRFIDタグを設けたRFIDタグシステムであって、前記金属製定量チャンバー格納部の周囲を囲む様に配置され、円筒形状であって、該円筒方向高さが前記金属製バルブ格納部のRFIDタグへの影響を制限するための所定値に設定された非導電材料製スペーサを設け、該非導電材料製スペーサの上面に前記RFIDタグを配置したことを第1の特徴とする。
【0013】
また本発明は、加圧された被吐出物質を収納する金属製タンク部と、該金属製タンク部の上方に設けられ、押圧されることにより前記被吐出物質を吐出するバルブ機構を格納する金属製バルブ格納部と、該金属製バルブ格納部の内、上部に設けられている金属製定量チャンバー格納部と、該金属製定量チャンバー格納部から上方に突出し、前記被吐出物質を外部に案内する弁棒部とを備える概略円筒形状の金属製加圧容器にRFIDタグを設けたRFIDタグシステムであって、前記金属製定量チャンバー格納部の周囲を囲む様に配置され、円筒形状であって、該円筒の内外半径差が前記金属製バルブ格納部のRFIDタグへの影響を制限するための所定値に設定された非導電材料製スペーサを設け、該非導電材料製スペーサの外周面に前記RFIDタグを配置したことを第2の特徴とする。
【0014】
また本発明は、加圧された被吐出物質を収納する概略円筒形状の金属製タンク部と、該金属製タンク部の上方に設けられ、押圧されることにより前記被吐出物質を吐出するバルブ機構を格納する概略円筒形状の金属製バルブ格納部と、該金属製バルブ格納部の内、上部に設けられている金属製定量チャンバー格納部と、該金属製定量チャンバー格納部から上方に突出し、前記被吐出物質を外部に案内する弁棒部と、前記金属製バルブ格納部と前記金属製タンク部との円筒径を縮径して連結する金属製ネック部とを備える概略円筒形状の金属製加圧容器にアンテナを有するRFIDタグを設けたRFIDタグシステムであって、前記金属製ネック部の周囲を囲む様に配置され、該金属製ネック部と、前記RFIDタグのアンテナとの最短距離が、前記金属製ネック部のRFIDタグへの影響を制限するための所定値に設定された非導電材料製スペーサを設け、該非導電材料製スペーサの外周面に前記RFIDタグを配置したことを第3の特徴とする。
【0015】
また本発明は、加圧された被吐出物質を収納する金属製タンク部と、該金属製タンク部の上方に設けられ、押圧されることにより前記被吐出物質を吐出するバルブ機構を格納する金属製バルブ格納部と、該金属製バルブ格納部の上方から突出し、前記被吐出物質を外部に案内する弁棒部とを備える概略円筒状の金属製加圧容器にRFIDタグを設けたRFIDタグシステムであって、前記弁棒部の周囲を囲む様に前記金属製バルブ格納部の上面に配置され、円筒形状であって、該円筒方向高さが前記金属製バルブ格納部のRFIDタグへの影響を制限するための所定値に設定された非導電材料製スペーサを設け、該非導電材料製スペーサの上面に前記RFIDタグを配置したことを第4の特徴とする。
【0016】
更に本発明は、前記第1の特徴のRFIDタグシステムにおいて、前記RFIDタグが使用する電磁波の周波数が2.45GHz帯であって、前記所定値が、3mm以上乃至前記金属製定量チャンバー格納部の円筒方向高さと該金属製定量チャンバー格納部から突出している前記弁棒部の長さの合計値から弁棒部移動距離を差し引いた値以下であることを第5の特徴とし、前記第2の特徴のRFIDタグシステムにおいて、前記RFIDタグが使用する電磁波の周波数が2.45GHz帯であって、前記所定値が、3mm以上乃至前記非導電材料製スペーサの外径が金属製加圧容器の外径以下になる値であり、前記RFIDタグが、前記非導電材料製スペーサの外周面に沿って配置された概略直線状アンテナを有することを第6の特徴とする。
【0017】
更に本発明は、前記第3の特徴のRFIDシステムにおいて、前記RFIDタグが使用する電磁波の周波数が2.45GHz帯であって、前記所定値が、3mm以上乃至前記非導電材料製スペーサの外径が金属製加圧容器の外径以下になる値であり、前記RFIDタグが、前記非導電材料製スペーサの外周面に沿って配置された概略直線状アンテナを有することを第7の特徴とし、前記第4の特徴のRFIDシステムにおいて、前記RFIDが使用する電磁波の周波数が2.45GHz帯であって、前記所定値が、3mm以上乃至前記弁棒部の高さから弁棒部移動距離を差し引いた値以下であることを第8の特徴とする。
【0018】
また本発明は、加圧された被吐出物質を収納する金属製タンク部と、該金属製タンク部の上方に設けられ、押圧されることにより前記被吐出物質を吐出するバルブ機構を格納する金属製バルブ格納部と、該金属製バルブ格納部の上方から突出し、前記被吐出物質を外部に案内する弁棒部とを備える概略円筒状の金属製加圧容器に、アンテナを有するRFIDタグを設けたRFIDタグシステムであって、前記RFIDタグが、前記金属製タンク部の底面に設けられ、該金属製タンク部の底面の面積が、前記RFIDタグのアンテナの面積に対して、1倍乃至1.5倍であることを第9の特徴とし、該第9の特徴のRFIDタグシステムにおいて、前記RFIDタグのアンテナが、円形状又はスパイラル状又は長尺状を折り曲げた形のアンテナであることを第10の特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明による金属製加圧容器用RFIDタグシステムは、例えば、加圧定量噴霧吸入器の金属製加圧容器の弁棒部又は金属製定量チャンバー格納部の周囲に、円筒形状のリング状スペーサをかぶせ、そのリング状上面又は外周面にRFIDタグを設置することにより、又は、金属製加圧容器の金属製ネック部にリング状スペーサをかぶせ、そのリング状外周面にRFIDタグを設置することにより、又は、加圧定量噴霧吸入器の金属製加圧容器の底面部分に、底面部分を面積比で2/3以上を覆う形状のアンテナを持ったRFIDタグを設置することにより、金属製加圧容器に添付されたRFIDタグとの交信を低廉なコストで精度良く実現し、読み取り及び書き込みを行うことができる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明による金属製加圧容器用RFIDタグシステムの一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施形態による金属製加圧容器へRFIDタグを取り付けたRFIDタグシステムの斜視図、図2は本発明の対象となる金属製加圧容器を説明する斜視図、図3は本実施形態の対象となるRFIDタグシステムを構成する加圧定量噴霧吸入器の構造を示す断面図、図4はRFIDタグの構成を示す正面図、図5は本発明の第2の実施形態による金属製加圧容器へのRFIDタグの取り付け機構を示す斜視図、図6はアルミ薄板上に設置されたRFIDタグを示す正面図、図7はアルミ薄板上に設置されたRFIDタグとの最大交信可能距離をアルミ薄板の面積とRFIDタグのアンテナの面積の比を変化させて測定した結果を示すグラフ、図8は本発明の第4の実施形態による金属製加圧容器へRFIDタグを取り付けたRFIDタグシステムの断面図、図9は本発明の第4の実施形態による金属製加圧容器へRFIDタグを取り付けたRFIDタグシステムの底面図、図10は本発明の隔離機能を得るためのリング状スペーサの内外半径差又は円筒方向高さに関する交信性能の実験結果を示すグラフ、図11は本発明の第3の実施形態によるRFIDタグの取り付け機構を示す斜視図、図12は第3の実施形態によるRFIDタグの取り付け状況を示す断面図、図13は第3の実施形態によるRFIDタグの断面図、図14は第3の実施形態によるネック部用スペーサの部分拡大断面図である。
【0021】
尚、本願発明では、RFIDチップと、該RFIDチップと接続されるアンテナと、該RFIDチップ及び該アンテナを一体的に搭載する基材とを組み合わせたものをインレットと呼び、このインレットに保護透明フィルムや取り付け用の接着剤等のユーティリティを付したものをRFIDタグと呼び、このRFIDタグが取り付けられた最小単位の製品(例えば金属製加圧容器)をRFIDタグシステムと呼ぶ。
【0022】
まず、本システムの実施形態の対象となる金属(アルミ合金)製加圧容器100の構成を図2を参照して説明する。この金属製加圧容器100は、加圧された気体、又は気体によって加圧された液体又は粉末状の薬剤(被吐出物質)を収納し、概略外形が円筒状の金属製タンク部101と、前記薬剤を外部に案内する円筒状の弁棒部103と、該弁棒部103を押したときに薬剤を吐出するバルブ機構を格納する金属製バルブ格納部1503と、吐出される薬剤の量を一定量に制御するための定量チャンバーを格納する金属製定量チャンバー格納部102と、前記金属製バルブ格納部1503と金属製タンク部101との間に位置する金属製ネック部1502とから構成される。尚、前記定量吐出機構は、前記バルブ機構部の一部であるため、本発明では、前記金属製定量チャンバー格納部102も前記金属製バルブ格納部1503の一部として扱うこととする。
<第1の実施形態>
【0023】
さて、本発明の第1の実施形態による金属製加圧容器を含む金属製加圧容器用RFIDタグシステムは、図1に示す如く、前記金属製加圧容器100と、該金属製加圧容器100の金属製定量チャンバー格納部102の周囲を囲む様に配され、円筒方向高さが、前記金属製バルブ格納部1503(図2参照)によるRFIDタグへの影響を制限するための所定値に設定された非導電性材料のリング状スペーサ104と、該リング状スペーサ104の上面に形成されたリング状のアンテナを含むリング状RFIDタグ105とから成り、図中上方からRFIDリーダ/ライタのアンテナ(図示せず)と交信を行う様に構成されている。
【0024】
前記リング状スペーサ104は、樹脂製/紙製等の非金属性(非導電性)の材料から製造され、リング状RFIDタグ105と金属製バルブ格納部1503の上面との間隔を所定値に保ち、RFIDタグ105が金属製バルブ格納部1503の上面からの影響を受けるのを避ける隔離機能を有する。この隔離機能を得るためのリング状スペーサ104の円筒方向高さは、発明者らが行った実験結果から、周波数2.45GHz帯のマイクロ波を用いたRFIDタグでは3mmあれば十分なことが解明されたため、間隔3mmを確保し、弁棒部103の移動を確保するため、金属製定量チャンバー格納部102の円筒方向高さと該金属製定量チャンバー格納部102から突出している弁棒部103の長さの合計値から弁棒部移動距離を差し引いた値以下に設定する。
【0025】
前記隔離機能は、リング状スペーサ104の円筒方向高さを所定条件の範囲に定めることにより前記機能を実現するものであり、この隔離機能を得るためのリング状スペーサ104の円筒方向高さが交信性能に影響する実験結果を図10を参照して説明する。前述の交信性能は、金属材料とRFIDタグとの間隔を変化させて交信可能な最大距離を測定した図10に示す如く、金属材料とRFIDタグとの間隔d、最大交信距離Lをそれぞれ、交信周波数の波長λを用いて数式1[d’=d/λ]及び数式2[L’=L/λ]によりd’、L’へ無次元化した場合、d’がゼロのときの交信は不可能となり、d’=0.015近辺から急激にL’が増加し、d’=0.025近辺からL’の増加が鈍化し、更にd’=0.04近辺では完全に鈍化している。その後、d’=0.1あたりまで徐々にL’が増加する特性をもち、本実験結果によれば、d’を広げることによる最大交信距離を拡大させる効果はd’=0.025あたりまでが顕著にでていることが判る。このときL’は2.2であるが、余裕を見てL’≒2.0が好ましい。これらの具体的数値は、周波数2.45GHz、λ=122mmのとき、d=3mmとなる。このときのd’をda’と呼ぶことにすると、使用条件によってda’は概略0.025から0.04の範囲で選択することができる。この値「0.025から0.04」は、金属材料とRFIDタグとの間隔を決めるための係数とも呼ぶことができる。
【0026】
また、前記実験においてはリング状スペーサ104の円筒方向高さが交信性能に影響することを説明したが、この交信性能は、リング状スペーサ104の外周面にRFIDタグを配置した場合は、リング状スペーサ104の外周面と金属製定量チャンバー部102の外周面との隔離距離が交信性能に影響する。
この隔離距離は、リング状スペーサ104の内周面径と金属製定量チャンバー部102の外周面径が略等しいスペーサの場合、リング外側の半径と内側の半径の差に相当する内外半径差であり、リング状スペーサの内周径が金属製定量チャンバー部102の外周径に比べて極めて大きいスペーサの場合、金属製定量チャンバー部102の外周とスペーサの内周との間隔とスペーサ内外径半径差を合算した値となる。
本発明においては、前記両タイプのスペーサの隔離距離を内外半径差と呼ぶものとし、この内外半径差は、前記実験結果同様に金属材料とRFIDタグとの間隔を決めるための係数として適用することができる。
【0027】
尚、ここでは、RFIDタグシステムで使用する周波数として2.45GHzの例をあげたが、本発明に適用できる周波数はこれに限られない。RFIDタグシステムが使用出来る周波数は、無線周波数全域に渡っており、目的とする製品形態や交信の条件、周辺環境等の要素を考慮して、使用する周波数を決定するが、いずれの周波数においても、本発明を適用することが可能である。
【0028】
上記実験結果によれば、金属製加圧容器の各金属材料部分のRFIDタグへの影響を避け、良好な交信距離を確保するためには、金属材料とRFIDタグとの間隔dを少なくとも3mm確保する必要がある。このため図1における実施形態においては、RFIDタグと金属製バルブ格納部とを所定距離だけ間隔を保持するためにリング状スペーサ104の隔離機能を成すための間隔(図1における円筒方向高さ)は3mm以上が好ましいことが判る。
【0029】
また、前記リング状スペーサ104の隔離機能を成すための間隔(円筒方向高さ)の上限値は、後述するアダプタ301に金属製加圧容器100を取り付けた際に弁棒部103が押し込まれて薬剤を噴霧するための弁棒部移動距離(ストローク)を確保するため、金属製定量チャンバー格納部102の厚み程度が好ましいが、金属製定量チャンバー格納部102の円筒方向高さと金属製定量チャンバー格納部102から突出している弁棒部103の長さとの合計値から弁棒部103の移動距離(ストローク)を差し引いた値以下であれば良い。
【0030】
尚、前述した実験に用いた通信装置は、株式会社日立超LSIシステムズ製RFIDリーダ/ライタ装置MS6502RWEA(定格出力300mW)及び同装置専用4パッチアンテナ(円偏波、利得14dBi)である。また、今回の実験における通信プロトコルは、ISO18000−4ドラフト版準拠を用い、転送レート40kbpsにて測定を行った。
【0031】
図3は、本実施形態による金属製加圧容器100を樹脂製のアダプタ301に取り付けた加圧定量噴霧吸入器の断面図を示す図であり、この加圧定量噴霧吸入器は、鍵状に折曲した内部が円筒状のアダプタ301と、該アダプタ301の下方の筒状開口部から挿入されたRFIDタグシステムを含む金属製加圧容器100と、該挿入した金属製加圧容器100の下を覆い且つ金属製加圧容器100を上方へ移動可能に案内する蓋状の底面キャップ302とから成り、該底面キャップ302をトリガー方向303へ押すことにより、弁棒部103が下方へ押しつけられてバルブ機構(図示せず)を動作させ、エアロゾル膨張室305を経由して、エアロゾル吐出方向304の方向へエアロゾル状態の薬剤が吐出される様に構成されている。前記アダプタ301には、金属製定量チャンバー格納部102の外径が金属製加圧容器100の外径より小さいため、該金属製定量チャンバー格納部102の周辺に空間があり、図3に示す如く、リング状スペーサ104はこの空間に収まることができる。従ってリング状スペーサ104は、リング状の内径が金属製定量チャンバー格納部102の外径以上で、リング状の外径が金属製タンク部101の外径以下であり、円筒方向高さが3mm以上乃至金属製定量チャンバー格納部102の円筒方向高さ以下が好適である。
【0032】
この様に構成された金属製加圧容器用RFIDタグシステムを含む加圧定量噴霧吸入器は、図1に示したリング状RFIDタグ105が、リング状スペーサ104の円筒方向高さによって金属製バルブ格納部1503上面との間隔を金属材料による影響を受けない所定の間隔(3mm)以上に設定しているため、図中上方からRFIDリーダ/ライタのアンテナ(図示せず)と交信を行うことができる。
<第2の実施形態>
【0033】
前述の第1の実施形態による金属製加圧容器用RFIDタグシステムは、リング状スペーサ104の上面にリング状RFIDタグ105を貼り付ける例を説明したが、前記リング状RFIDタグ105は特殊形状であり、製造コストが一般に市販されているRFIDタグに比して高価なものとなることが考えられる。
【0034】
ここで、一般に市販されているRFIDタグは、図4に示す如く、長尺直線状のRFIDタグ基材(ポリイミド樹脂等)403上に、長尺状のRFIDタグアンテナ部402と長方形のRFIDチップ401とを搭載したインレットに対し、保護透明フィルムや取り付け用の接着剤等のユーティリティを付したものであり、この形状のものが、入手が容易で製造コストも安価である。
【0035】
そこで発明者らは、図5に示す如く、前記直線状のRFIDタグを使用した金属(アルミ合金)製加圧容器100を含む金属製加圧容器用RFIDタグシステムを発明した。この金属製加圧容器用RFIDタグシステムは、図5に示す如く、気体又は液体又は粉末状の医薬品(薬剤)を格納し、金属製定量チャンバー格納部102が上方へ突出するように形成された概略外形が円筒状の金属製タンク部101を含む金属製加圧容器100と、該金属製加圧容器100の金属製定量チャンバー格納部102の周囲を囲む様に配され、内外半径差が、前記金属製加圧容器100のRFIDタグへの影響を制限するための所定値に設定された非導電性材料のリング状スペーサ104と、該リング状スペーサ104の外周面に沿って巻き付けた直線状のRFIDタグ501とから成り、図中横方向からRFIDリーダ/ライタのアンテナ(図示せず)により交信を行う様に構成されている。
【0036】
本実施形態による金属製加圧容器用RFIDタグシステムは、RFIDタグ501が、金属製加圧容器100から突出する金属製定量チャンバー格納部102の周囲から3mm以上隔離する様にリング状スペーサ104の内外半径差が設定されており、このために金属製加圧容器100にRFIDタグ501を取り付けた場合であっても、金属製定量チャンバー格納部102の外周面の金属部によるRFIDタグへの影響を制限することができる。
【0037】
尚、RFIDタグへの金属材料からの影響は、アンテナが形成する平面と金属製加圧容器100の各部が形成する面とが電磁波の進行方向上で略平行に近く且つ重複するほど金属材料からの影響が大きく、このため本実施形態におけるRFIDタグ501に影響する金属材料部は、金属製定量チャンバー格納部102であり、この金属製定量チャンバー格納部102とRFIDタグ501のアンテナとの間隔をリング状スペーサ104の内外半径差により確保することにより、交信性能を確保することができる。また、リング状スペーサ104の外径の上限値は、前記アダプタ301に収納するために金属製加圧容器100の外径以下であることは言うまでもない。
【0038】
この様に構成された金属製加圧容器用RFIDタグシステムを含む加圧定量噴霧吸入器は、図5に示したRFIDタグ501が、所定値以上の内外半径差を持つリング状スペーサ104の外周面に貼り付けたことによって金属製定量チャンバー格納部102の外周との間隔を金属材料による影響を受けない所定の間隔(3mm)以上に設定しているため、RFIDリーダ/ライタのアンテナ(図示せず)と交信を行うことができる。
【0039】
尚、前述の各実施形態においては、所定量の薬剤を均一に噴霧するための定量吐出機構を有する医薬用製品を例にとって説明しているが、本発明は、定量吐出機構を要しないヘアケヤや塗料等の金属製加圧容器にも適用することもでき、この場合はノズルの周囲に直接、前述の要件を満たすリング状スペーサを配するように構成しても良い。
<第3の実施形態>
【0040】
前述の各実施形態においては、リング状スペーサを設置する空間がアダプタ内に確保できることが前提となっていたが、アダプタ内にリング状スペーサを設置する空間が確保できないことも想定され、この様なアダプタに適用することができるRFIDタグシステムの実施形態を次に説明する。
【0041】
本実施形態によるRFIDタグシステムは、図11に示す如く、金属(アルミ合金)製加圧容器100の金属製ネック部1502の外周にRFIDタグ1102を巻き付けたネック部用スペーサ1101を取り付けたものである。この金属製ネック部1502は、金属製タンク部101と金属製バルブ格納部1503とを巻き締めにより結合する際に形成されるものであり、金属製タンク部101の直径と比較して、数ミリ程度直径が減少している領域である。本実施形態によるRFIDシステムは、以下に説明する様に工夫された非導電性材料のネック部用スペーサ1101を介してRFIDタグ1102を設置することによって、前記金属製ネック部のRFIDタグへの影響を制限し、金属製加圧容器100からの影響を避けることができる。
【0042】
前記金属製ネック部1502の断面は、図12に示す如く、矩形断面ではなく凹曲面状に形成しているため、ネック部用スペーサ1101の片面は前記凹曲面に合わせた形状に成型され、もう一方の面はRFIDタグ1102が貼り付けられる様に平面に成型されている。
前記ネック部用スペーサ1101及びRFIDタグ1102を図12の上方から観察した断面で表したものを図13に示す。ネック部用スペーサ1101は、金属製ネック部1502の全周を覆うのではなく、切れ目1301を有しており、この切れ目1301を通して金属製ネック部1502へ挿入される。
【0043】
前記した第1及び第2実施形態における各スペーサは、金属製加圧容器からRFIDインレットを隔離させる役割を担っており、本第3実施形態によるネック部用スペーサ1101は、RFIDタグ1102と金属製加圧容器100の金属製ネック部1502との隔離距離を形成しているが、前述の如く金属製ネック部の凹曲面に合わせた断面を有しているため、ネック部用スペーサ1101の厚さの定義を行う位置に工夫が必要となる。
【0044】
図14は、本実施形態によるネック部用スペーサ1101の部分拡大図である。本発明によるとRFIDタグ(又はRFIDインレット)と金属材料との隔離距離が問題であり、これを詳細に表現すると、問題となるのはRFIDタグ1102上のアンテナと金属材料との隔離距離である。
【0045】
図14に示す如く、本実施形態によるネック部用スペーサ1101上には、RFIDタグ基材403を介して概略矩形状のRFIDタグアンテナ部402が設置されており、該RFIDタグアンテナ部402の全面で、図10で説明したda’以上の隔離距離が確保されれば良い。このためRFIDタグアンテナ部402は、アンテナ短手方向の端部であるアンテナ部分1402が、RFIDタグアンテナ部402の全面の中で最も金属製ネック部1502に接近するため、この地点における厚さ1401(「RFIDタグアンテナ部と金属製加圧容器との最近接距離」と呼ぶ)がda’以上確保される必要がある。即ち、本実施形態によるネック部用スペーサ1101は、RFIDタグアンテナ部と金属製加圧容器との最近接距離をda'以上(周波数2.45GHz帯のRFIDタグでは約3mm以上)の厚みに設定することにより、金属製加圧容器100の金属製ネック部1502によるRFIDタグ1102への影響を制限することができる。
<第4の実施形態>
【0046】
前述の各実施形態においては、RFIDタグを金属製加圧容器から所定距離だけ隔離することによって金属材料による信号交信に対する影響を低減する例を説明したが、発明者らは、金属板上にRFIDタグを設置した場合であっても、設置条件によっては金属材料の影響を受けないことを発見し、この他の実施形態を以下説明する。
【0047】
まず、図6に示す如く、金属板601上にRFIDタグ502を直置した場合、金属板の影響によりRFIDタグ502の感度が低下し、RFIDタグ502の最大交信可能距離が短くなると考えられていた。しかし本願発明者らは実験により、金属板が及ぼす影響は、その金属板とRFIDタグアンテナの大きさ(面積比)により影響の度合いが異なることを発見した。
【0048】
これを説明すると、発明者らは、金属板として厚さ0.5mmのアルミ薄板を用い、RFIDタグのアンテナ部分の面積に対するアルミ薄板の面積比(Rs=(アルミ薄板の面積)/(RFIDタグのアンテナ部分の面積))を横軸に変化させ、最大交信可能距離を縦軸として測定した。その結果は、図7に示す如く、面積比Rsがゼロ(アルミ薄板が存在しない状態)において最大交信可能距離が最も大きくなり、面積比Rsが大きくなるに従い緩やかに低下し、面積比Rs≒1.5で約20%の感度低下となった後、面積比Rsのさらなる増加に伴い急激に感度が低下することを発見した。換言すれば、面積比Rs≦1.5とすることで、急激な感度の低下を避けることが出来ることを発見した。
【0049】
この実験結果から発明者らは、金属材料部分の面積を、RFIDタグアンテナ部分の1.5倍程度以内に抑えれば、換言すれば金属面の面積を2/3以上被うアンテナを使用すれば、金属材料上であってもRFIDタグが交信可能なことを発見した。尚、前述した実験に用いた通信装置は、株式会社日立超LSIシステムズ製RFIDリーダ/ライタ装置MS6502RWEA(定格出力300mW)及び同装置専用4パッチアンテナ(円偏波、利得14dBi)である。また、今回の実験における通信プロトコルは、ISO18000−4ドラフト版準拠を用い、転送レート40kbpsにて測定を行った。
【0050】
発明者らは、前述の実験結果を基に本願発明の対象となる金属製加圧容器にRFIDタグを設ける金属(アルミ合金)製加圧容器用RFIDタグシステムを検討した結果、図8及び図9に示す如く、金属製タンク部101の底部とアダプタ底部のキャップ302との間に底部用RFIDタグ801を設置する発明を成した。
【0051】
この実施形態による金属製加圧容器用RFIDタグシステムは、アダプタ底部側から観た図9に示す如く、RFIDタグ801が金属製タンク部101の底面(幅Da)からの影響を低減するために、2枚一組の半円状のRFIDタグアンテナ901を用い、前記面積比Rsが1.5乃至1に成るように設定してある。尚、面積比Rsが、アダプタ底部側面積とアンテナ面積が同一である「1」以上且つ1.5より小さければ本発明の目的は達せられるので、2枚一組の半円状のアンテナだけでなく、スパイラル状や長尺状を折り曲げた形のアンテナ形状であっても良い。
【0052】
この様に本実施形態による金属製加圧容器用RFIDタグシステムは、RFIDタグのアンテナ部分と金属製タンク部の底面の面積比Rsを1.5以下(下限値は例えばアダプタ底部側面積とアンテナ面積が同一である「1」)に設定することによって、金属製加圧容器にRFIDタグを貼り付けた場合であっても、RFIDリーダ/ライタからのアンテナ(図示せず)と交信を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
前述の実施形態においては、気体又は液体又は粉末状の薬剤を噴霧する加圧定量噴霧吸入器を例にとって説明したが、本発明による金属製加圧容器用RFIDタグシステムは医薬品用に限られるものではなく、金属材料による加圧容器を用いる他のパッケージ、例えば塗料やヘアケア用のスプレー缶等にも広く適用することができる。また、金属材料による加圧容器だけでなく、導電性の液体を格納した非金属材料製のスプレー容器全般にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施形態による金属製加圧容器へRFIDタグを取り付けたRFIDタグシステムの斜視図。
【図2】本発明の対象となる金属製加圧容器を説明する斜視図。
【図3】加圧定量噴霧吸入器の構造を示す断面図。
【図4】RFIDタグの構成を示す正面図。
【図5】本発明の第2の実施形態による金属製加圧容器へのRFIDタグの取り付け機構を示す斜視図。
【図6】アルミ薄板上に設置されたRFIDタグを示す正面図。
【図7】アルミ薄板上に設置されたRFIDタグとの最大交信可能距離を、アルミ薄板の面積とRFIDタグのアンテナの面積の比を変化させて測定した結果を示すグラフ。
【図8】本発明の第4の実施形態による金属製加圧容器へRFIDタグを取り付けたRFIDタグシステムの断面図。
【図9】本発明の第4の実施形態による金属製加圧容器へRFIDタグを取り付けたRFIDタグシステムの底面図。
【図10】本発明の隔離機能を得るためのリング状スペーサの内外半径差又は円筒方向高さに関する交信性能の実験結果を示すグラフ。
【図11】本発明の第3の実施形態によるRFIDタグの取り付け機構を示す斜視図。
【図12】本発明の第3の実施形態によるRFIDタグの取り付け状況を示す断面図。
【図13】本発明の第3の実施形態によるRFIDタグの断面図。
【図14】本発明の第3の実施形態によるネック部用スペーサの部分拡大断面図。
【符号の説明】
【0055】
100:金属製加圧容器、101:金属製タンク部、102:金属製定量チャンバー格納部、103:弁棒部、104:リング状スペーサ、105:リング状RFIDタグ、301:アダプタ、302:アダプタ底面キャップ、304:エアロゾル吐出方向、303:底面キャップトリガー方向、305:エアロゾル膨張室、401:RFIDチップ、402:RFIDタグアンテナ部、403:RFIDタグ基材、501:RFIDタグ、601:金属板(アルミ薄板)、801:RFIDタグ、901:半円状のRFIDタグアンテナ、1101:ネック部用スペーサ、1102:RFIDタグ、1301:取り付け用切り欠き部、1302:ネック部用スペーサ厚さ、1401:RFIDタグアンテナ部と金属製加圧容器との最近接距離、1402:アンテナ部分、1502:金属製ネック部、1503:金属製バルブ格納部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内等に噴霧するための薬剤等を収納するアルミ、アルミ合金、鉄、鉄合金等の金属製加圧容器(スプレー缶)にRFID(Radio Frequency IDentification、無線周波数の電磁波を用いた非接触個別識別技術)タグを付した金属製加圧容器用RFIDタグシステムに係り、特に前記金属製加圧容器に取り付けたRFIDタグからの情報を高精度で読み取ることができる金属製加圧容器用RFIDタグシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にRFIDタグは、アンテナを含み、RFIDチップと呼ばれる集積回路にIDコードもしくはそれと同等な識別情報を内蔵し、RFIDチップに接続されたアンテナを経由して、外部から無線手段によりその情報を読み取るものである。このRFIDタグの用途の一つとしては、製品のトレースシステムが知られている。このトレースシステムは、例えば製造工程又は流通過程の必要時にRFIDタグと通信装置が交信し、得られたIDコード/日時データ/交信場所等の情報からRFIDタグが添付されている製品の製造履歴や流通履歴を追跡し、管理するものである。
【0003】
特に医薬品の分野においては、製造工程での品質管理、流通過程での真贋判定、薬局での誤販売防止、市場での不良発生時のフィードバック等、前記トレースシステムを用いた製品の履歴を個別に管理することが望まれている。
【0004】
前記RFIDタグを用いたトレースシステムの従来技術としては、例えば下記特許文献が挙げられ、特許文献1には、ガラス瓶の再使用型容器に読み出し及び書き込みが可能なRFIDタグを設け、前記容器の再使用状況を記録することで、適切な再使用を可能とするシステムが記述されている。
また特許文献2には、薬品に取り付けられたRFIDタグの情報を販売の際に読み取ってその薬品名を端末に表示し、また処方箋データと比較することで、誤った薬品がユーザーに渡るのを防止するシステムが記載され、特許文献3には、シール部材に仕込んだRFIDタグシールを薬品ケースに貼り付け、このRFIDタグシールからの情報を薬品棚から入出庫する際に読み取り、薬品棚の在庫管理を行うシステムが記載されている。
【0005】
また、これらのシステムを信頼性良く稼働させるためには、添付されたRFIDタグの情報を確実に読み取る必要があり、特に金属材料等の導電性の容器や、容器内部に導電性のある液体を格納した容器においては、RFIDタグとの確実な交信が困難になるため、この確実な交信を行うために静電結合による交信方式を採用する技術が特許文献4に提案されている。また特許文献5及び6には、電磁誘導給電方式のRFIDタグを採用し、プロパンガス等の加圧容器を始めとした金属製(導電性)容器に設置したRFIDタグとの交信を可能にする技術が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−211574号公報
【特許文献2】特開2003−233673号公報
【特許文献3】特開2003−292123号公報
【特許文献4】特開2002−259934号公報
【特許文献5】特開2002−181296号公報
【特許文献6】特開2002−118490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
医薬品(薬剤)の形態の一つとして、気管支喘息等の症状を緩和するために使用されるエアロゾル状態の薬剤があり、このエアロゾル状態の薬剤(被吐出物質)を口腔内に吐出(噴霧)するための機構として一般に加圧定量噴霧吸入器が採用されている。この加圧定量噴霧吸入器は、加圧容器内の液体状薬品(またはドライパウダ)を噴霧することでエアロゾル化し、口腔内から気管支へ導入するものである。ここで用いられる加圧容器は、一回につき一定量の医薬品を吐出するための定量吐出機構を設けた金属製加圧容器であり、定量吐出機構を除けば、一般の金属製加圧容器とほぼ同じ構造で、概略形状も底面を密封され、上面にバルブ機構を設けた概略円筒形状のものである。但し、その容器(缶)のサイズは、医薬品の使用量に合わせて小型化されており、直径で20乃至30mm、高さで数十mm程度である。
【0008】
ここで、一般に使用される塗料やヘアケア用のスプレー缶は、比較的単純なエアロゾルのスプレーパターン(中心部が濃く、周辺部が薄い)を作れば実用上問題ないため、バルブ機構はプッシュボタンを兼ねたノズルを備えるに過ぎないが、前述した医薬品用の加圧定量噴霧吸入器は、噴霧直後から極力均一な濃度のエアロゾル分布を作り出す必要があるため、バルブの後に膨張室と口にくわえるマウスピース部を備えたアダプタを装着する必要があると共に、金属製加圧容器部分だけが使い切りで使用され、通常、金属製加圧容器を交換することによってアダプタは継続して使用される。
このため、医薬品自体のトレースを目的としてこの加圧定量噴霧吸入器に対してRFIDタグ技術を適用する場合には、医薬品を収納している金属製加圧容器側にRFIDタグを取り付ける必要がある。
尚、前記薬剤用の金属製加圧容器は、薬剤を収納する円筒状の金属製タンク部と、前記薬剤の吐出を制御するためのバルブ機構部と、該バルブ機構部の内、上方に設けられ、前記薬剤の吐出量を定量チャンバーで計量することにより定量化する定量吐出機構と、前記バルブ機構部を動作させると同時に、前記薬剤を外部へ案内する弁棒部とから構成されるものであるが、薬剤の定量吐出が不要なものにあっては前記定量吐出機構は必ずしも必要なものではない。
【0009】
前記特許文献1記載の技術は、ガラス瓶を対象としてRFIDタグを設置する構成のために交信を行うことができるものの、アルミ等の金属材料で作られた加圧容器には適用することができないという不具合があった。特許文献2及び3記載技術は、RFIDタグを貼り付ける薬品のケースやパッケージが金属製である場合を考慮しておらず、薬品のケースやパッケージが金属製である場合、この金属製ケースや金属製パッケージによってリーダライタとの交信が困難であるという不具合があった。また特許文献4記載の技術は、導電性を有する液体を収容する容器外壁へ貼着しても、リーダライタとの交信ができるようにするために、静電結合型で2面の平面状のアンテナパターンの一方のパターンを、導電性を有する液体と接していない容器外壁に貼着する技術であるため、導電体であるアルミ等の金属材料で作られた加圧容器にアンテナパターンの全面を貼着してもリーダライタとの交信はできない、という不具合があった。また、同引例記載技術は、静電結合による交信方式を用いた交信を行うことができるものの、交信距離が極端に短くRFIDタグと読み取りアンテナをほぼ接触させる必要がある。従って、金属製加圧容器にアダプタを取り付ける必要があるために、読み取りアンテナをRFIDタグに接触させられない加圧定量噴霧吸入器に対しては適用することができないという不具合があった。
【0010】
更に前述の特許文献5及び6記載の技術は、電磁誘導給電方式による交信を行うことができるものの、十分な供給電力を得るために大きなコイルアンテナを必要とするため、本願発明対象とする医薬品用の小型化された金属製加圧容器へ適用することができないという不具合があった。
【0011】
本発明の目的は、前述の従来技術による不具合を除去することであり、医薬品(薬剤)用の小型化された金属製加圧容器であっても、通信装置側と容易に交信を行うことができる金属製加圧容器用RFIDタグシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために本発明は、加圧された被吐出物質を収納する金属製タンク部と、該金属製タンク部の上方に設けられ、押圧されることにより前記被吐出物質を吐出するバルブ機構を格納する金属製バルブ格納部と、該金属製バルブ格納部の内、上部に設けられている金属製定量チャンバー格納部と、該金属製定量チャンバー格納部から上方に突出し、前記被吐出物質を外部に案内する弁棒部とを備える概略円筒形状の金属製加圧容器にRFIDタグを設けたRFIDタグシステムであって、前記金属製定量チャンバー格納部の周囲を囲む様に配置され、円筒形状であって、該円筒方向高さが前記金属製バルブ格納部のRFIDタグへの影響を制限するための所定値に設定された非導電材料製スペーサを設け、該非導電材料製スペーサの上面に前記RFIDタグを配置したことを第1の特徴とする。
【0013】
また本発明は、加圧された被吐出物質を収納する金属製タンク部と、該金属製タンク部の上方に設けられ、押圧されることにより前記被吐出物質を吐出するバルブ機構を格納する金属製バルブ格納部と、該金属製バルブ格納部の内、上部に設けられている金属製定量チャンバー格納部と、該金属製定量チャンバー格納部から上方に突出し、前記被吐出物質を外部に案内する弁棒部とを備える概略円筒形状の金属製加圧容器にRFIDタグを設けたRFIDタグシステムであって、前記金属製定量チャンバー格納部の周囲を囲む様に配置され、円筒形状であって、該円筒の内外半径差が前記金属製バルブ格納部のRFIDタグへの影響を制限するための所定値に設定された非導電材料製スペーサを設け、該非導電材料製スペーサの外周面に前記RFIDタグを配置したことを第2の特徴とする。
【0014】
また本発明は、加圧された被吐出物質を収納する概略円筒形状の金属製タンク部と、該金属製タンク部の上方に設けられ、押圧されることにより前記被吐出物質を吐出するバルブ機構を格納する概略円筒形状の金属製バルブ格納部と、該金属製バルブ格納部の内、上部に設けられている金属製定量チャンバー格納部と、該金属製定量チャンバー格納部から上方に突出し、前記被吐出物質を外部に案内する弁棒部と、前記金属製バルブ格納部と前記金属製タンク部との円筒径を縮径して連結する金属製ネック部とを備える概略円筒形状の金属製加圧容器にアンテナを有するRFIDタグを設けたRFIDタグシステムであって、前記金属製ネック部の周囲を囲む様に配置され、該金属製ネック部と、前記RFIDタグのアンテナとの最短距離が、前記金属製ネック部のRFIDタグへの影響を制限するための所定値に設定された非導電材料製スペーサを設け、該非導電材料製スペーサの外周面に前記RFIDタグを配置したことを第3の特徴とする。
【0015】
また本発明は、加圧された被吐出物質を収納する金属製タンク部と、該金属製タンク部の上方に設けられ、押圧されることにより前記被吐出物質を吐出するバルブ機構を格納する金属製バルブ格納部と、該金属製バルブ格納部の上方から突出し、前記被吐出物質を外部に案内する弁棒部とを備える概略円筒状の金属製加圧容器にRFIDタグを設けたRFIDタグシステムであって、前記弁棒部の周囲を囲む様に前記金属製バルブ格納部の上面に配置され、円筒形状であって、該円筒方向高さが前記金属製バルブ格納部のRFIDタグへの影響を制限するための所定値に設定された非導電材料製スペーサを設け、該非導電材料製スペーサの上面に前記RFIDタグを配置したことを第4の特徴とする。
【0016】
更に本発明は、前記第1の特徴のRFIDタグシステムにおいて、前記RFIDタグが使用する電磁波の周波数が2.45GHz帯であって、前記所定値が、3mm以上乃至前記金属製定量チャンバー格納部の円筒方向高さと該金属製定量チャンバー格納部から突出している前記弁棒部の長さの合計値から弁棒部移動距離を差し引いた値以下であることを第5の特徴とし、前記第2の特徴のRFIDタグシステムにおいて、前記RFIDタグが使用する電磁波の周波数が2.45GHz帯であって、前記所定値が、3mm以上乃至前記非導電材料製スペーサの外径が金属製加圧容器の外径以下になる値であり、前記RFIDタグが、前記非導電材料製スペーサの外周面に沿って配置された概略直線状アンテナを有することを第6の特徴とする。
【0017】
更に本発明は、前記第3の特徴のRFIDシステムにおいて、前記RFIDタグが使用する電磁波の周波数が2.45GHz帯であって、前記所定値が、3mm以上乃至前記非導電材料製スペーサの外径が金属製加圧容器の外径以下になる値であり、前記RFIDタグが、前記非導電材料製スペーサの外周面に沿って配置された概略直線状アンテナを有することを第7の特徴とし、前記第4の特徴のRFIDシステムにおいて、前記RFIDが使用する電磁波の周波数が2.45GHz帯であって、前記所定値が、3mm以上乃至前記弁棒部の高さから弁棒部移動距離を差し引いた値以下であることを第8の特徴とする。
【0018】
また本発明は、加圧された被吐出物質を収納する金属製タンク部と、該金属製タンク部の上方に設けられ、押圧されることにより前記被吐出物質を吐出するバルブ機構を格納する金属製バルブ格納部と、該金属製バルブ格納部の上方から突出し、前記被吐出物質を外部に案内する弁棒部とを備える概略円筒状の金属製加圧容器に、アンテナを有するRFIDタグを設けたRFIDタグシステムであって、前記RFIDタグが、前記金属製タンク部の底面に設けられ、該金属製タンク部の底面の面積が、前記RFIDタグのアンテナの面積に対して、1倍乃至1.5倍であることを第9の特徴とし、該第9の特徴のRFIDタグシステムにおいて、前記RFIDタグのアンテナが、円形状又はスパイラル状又は長尺状を折り曲げた形のアンテナであることを第10の特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明による金属製加圧容器用RFIDタグシステムは、例えば、加圧定量噴霧吸入器の金属製加圧容器の弁棒部又は金属製定量チャンバー格納部の周囲に、円筒形状のリング状スペーサをかぶせ、そのリング状上面又は外周面にRFIDタグを設置することにより、又は、金属製加圧容器の金属製ネック部にリング状スペーサをかぶせ、そのリング状外周面にRFIDタグを設置することにより、又は、加圧定量噴霧吸入器の金属製加圧容器の底面部分に、底面部分を面積比で2/3以上を覆う形状のアンテナを持ったRFIDタグを設置することにより、金属製加圧容器に添付されたRFIDタグとの交信を低廉なコストで精度良く実現し、読み取り及び書き込みを行うことができる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明による金属製加圧容器用RFIDタグシステムの一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施形態による金属製加圧容器へRFIDタグを取り付けたRFIDタグシステムの斜視図、図2は本発明の対象となる金属製加圧容器を説明する斜視図、図3は本実施形態の対象となるRFIDタグシステムを構成する加圧定量噴霧吸入器の構造を示す断面図、図4はRFIDタグの構成を示す正面図、図5は本発明の第2の実施形態による金属製加圧容器へのRFIDタグの取り付け機構を示す斜視図、図6はアルミ薄板上に設置されたRFIDタグを示す正面図、図7はアルミ薄板上に設置されたRFIDタグとの最大交信可能距離をアルミ薄板の面積とRFIDタグのアンテナの面積の比を変化させて測定した結果を示すグラフ、図8は本発明の第4の実施形態による金属製加圧容器へRFIDタグを取り付けたRFIDタグシステムの断面図、図9は本発明の第4の実施形態による金属製加圧容器へRFIDタグを取り付けたRFIDタグシステムの底面図、図10は本発明の隔離機能を得るためのリング状スペーサの内外半径差又は円筒方向高さに関する交信性能の実験結果を示すグラフ、図11は本発明の第3の実施形態によるRFIDタグの取り付け機構を示す斜視図、図12は第3の実施形態によるRFIDタグの取り付け状況を示す断面図、図13は第3の実施形態によるRFIDタグの断面図、図14は第3の実施形態によるネック部用スペーサの部分拡大断面図である。
【0021】
尚、本願発明では、RFIDチップと、該RFIDチップと接続されるアンテナと、該RFIDチップ及び該アンテナを一体的に搭載する基材とを組み合わせたものをインレットと呼び、このインレットに保護透明フィルムや取り付け用の接着剤等のユーティリティを付したものをRFIDタグと呼び、このRFIDタグが取り付けられた最小単位の製品(例えば金属製加圧容器)をRFIDタグシステムと呼ぶ。
【0022】
まず、本システムの実施形態の対象となる金属(アルミ合金)製加圧容器100の構成を図2を参照して説明する。この金属製加圧容器100は、加圧された気体、又は気体によって加圧された液体又は粉末状の薬剤(被吐出物質)を収納し、概略外形が円筒状の金属製タンク部101と、前記薬剤を外部に案内する円筒状の弁棒部103と、該弁棒部103を押したときに薬剤を吐出するバルブ機構を格納する金属製バルブ格納部1503と、吐出される薬剤の量を一定量に制御するための定量チャンバーを格納する金属製定量チャンバー格納部102と、前記金属製バルブ格納部1503と金属製タンク部101との間に位置する金属製ネック部1502とから構成される。尚、前記定量吐出機構は、前記バルブ機構部の一部であるため、本発明では、前記金属製定量チャンバー格納部102も前記金属製バルブ格納部1503の一部として扱うこととする。
<第1の実施形態>
【0023】
さて、本発明の第1の実施形態による金属製加圧容器を含む金属製加圧容器用RFIDタグシステムは、図1に示す如く、前記金属製加圧容器100と、該金属製加圧容器100の金属製定量チャンバー格納部102の周囲を囲む様に配され、円筒方向高さが、前記金属製バルブ格納部1503(図2参照)によるRFIDタグへの影響を制限するための所定値に設定された非導電性材料のリング状スペーサ104と、該リング状スペーサ104の上面に形成されたリング状のアンテナを含むリング状RFIDタグ105とから成り、図中上方からRFIDリーダ/ライタのアンテナ(図示せず)と交信を行う様に構成されている。
【0024】
前記リング状スペーサ104は、樹脂製/紙製等の非金属性(非導電性)の材料から製造され、リング状RFIDタグ105と金属製バルブ格納部1503の上面との間隔を所定値に保ち、RFIDタグ105が金属製バルブ格納部1503の上面からの影響を受けるのを避ける隔離機能を有する。この隔離機能を得るためのリング状スペーサ104の円筒方向高さは、発明者らが行った実験結果から、周波数2.45GHz帯のマイクロ波を用いたRFIDタグでは3mmあれば十分なことが解明されたため、間隔3mmを確保し、弁棒部103の移動を確保するため、金属製定量チャンバー格納部102の円筒方向高さと該金属製定量チャンバー格納部102から突出している弁棒部103の長さの合計値から弁棒部移動距離を差し引いた値以下に設定する。
【0025】
前記隔離機能は、リング状スペーサ104の円筒方向高さを所定条件の範囲に定めることにより前記機能を実現するものであり、この隔離機能を得るためのリング状スペーサ104の円筒方向高さが交信性能に影響する実験結果を図10を参照して説明する。前述の交信性能は、金属材料とRFIDタグとの間隔を変化させて交信可能な最大距離を測定した図10に示す如く、金属材料とRFIDタグとの間隔d、最大交信距離Lをそれぞれ、交信周波数の波長λを用いて数式1[d’=d/λ]及び数式2[L’=L/λ]によりd’、L’へ無次元化した場合、d’がゼロのときの交信は不可能となり、d’=0.015近辺から急激にL’が増加し、d’=0.025近辺からL’の増加が鈍化し、更にd’=0.04近辺では完全に鈍化している。その後、d’=0.1あたりまで徐々にL’が増加する特性をもち、本実験結果によれば、d’を広げることによる最大交信距離を拡大させる効果はd’=0.025あたりまでが顕著にでていることが判る。このときL’は2.2であるが、余裕を見てL’≒2.0が好ましい。これらの具体的数値は、周波数2.45GHz、λ=122mmのとき、d=3mmとなる。このときのd’をda’と呼ぶことにすると、使用条件によってda’は概略0.025から0.04の範囲で選択することができる。この値「0.025から0.04」は、金属材料とRFIDタグとの間隔を決めるための係数とも呼ぶことができる。
【0026】
また、前記実験においてはリング状スペーサ104の円筒方向高さが交信性能に影響することを説明したが、この交信性能は、リング状スペーサ104の外周面にRFIDタグを配置した場合は、リング状スペーサ104の外周面と金属製定量チャンバー部102の外周面との隔離距離が交信性能に影響する。
この隔離距離は、リング状スペーサ104の内周面径と金属製定量チャンバー部102の外周面径が略等しいスペーサの場合、リング外側の半径と内側の半径の差に相当する内外半径差であり、リング状スペーサの内周径が金属製定量チャンバー部102の外周径に比べて極めて大きいスペーサの場合、金属製定量チャンバー部102の外周とスペーサの内周との間隔とスペーサ内外径半径差を合算した値となる。
本発明においては、前記両タイプのスペーサの隔離距離を内外半径差と呼ぶものとし、この内外半径差は、前記実験結果同様に金属材料とRFIDタグとの間隔を決めるための係数として適用することができる。
【0027】
尚、ここでは、RFIDタグシステムで使用する周波数として2.45GHzの例をあげたが、本発明に適用できる周波数はこれに限られない。RFIDタグシステムが使用出来る周波数は、無線周波数全域に渡っており、目的とする製品形態や交信の条件、周辺環境等の要素を考慮して、使用する周波数を決定するが、いずれの周波数においても、本発明を適用することが可能である。
【0028】
上記実験結果によれば、金属製加圧容器の各金属材料部分のRFIDタグへの影響を避け、良好な交信距離を確保するためには、金属材料とRFIDタグとの間隔dを少なくとも3mm確保する必要がある。このため図1における実施形態においては、RFIDタグと金属製バルブ格納部とを所定距離だけ間隔を保持するためにリング状スペーサ104の隔離機能を成すための間隔(図1における円筒方向高さ)は3mm以上が好ましいことが判る。
【0029】
また、前記リング状スペーサ104の隔離機能を成すための間隔(円筒方向高さ)の上限値は、後述するアダプタ301に金属製加圧容器100を取り付けた際に弁棒部103が押し込まれて薬剤を噴霧するための弁棒部移動距離(ストローク)を確保するため、金属製定量チャンバー格納部102の厚み程度が好ましいが、金属製定量チャンバー格納部102の円筒方向高さと金属製定量チャンバー格納部102から突出している弁棒部103の長さとの合計値から弁棒部103の移動距離(ストローク)を差し引いた値以下であれば良い。
【0030】
尚、前述した実験に用いた通信装置は、株式会社日立超LSIシステムズ製RFIDリーダ/ライタ装置MS6502RWEA(定格出力300mW)及び同装置専用4パッチアンテナ(円偏波、利得14dBi)である。また、今回の実験における通信プロトコルは、ISO18000−4ドラフト版準拠を用い、転送レート40kbpsにて測定を行った。
【0031】
図3は、本実施形態による金属製加圧容器100を樹脂製のアダプタ301に取り付けた加圧定量噴霧吸入器の断面図を示す図であり、この加圧定量噴霧吸入器は、鍵状に折曲した内部が円筒状のアダプタ301と、該アダプタ301の下方の筒状開口部から挿入されたRFIDタグシステムを含む金属製加圧容器100と、該挿入した金属製加圧容器100の下を覆い且つ金属製加圧容器100を上方へ移動可能に案内する蓋状の底面キャップ302とから成り、該底面キャップ302をトリガー方向303へ押すことにより、弁棒部103が下方へ押しつけられてバルブ機構(図示せず)を動作させ、エアロゾル膨張室305を経由して、エアロゾル吐出方向304の方向へエアロゾル状態の薬剤が吐出される様に構成されている。前記アダプタ301には、金属製定量チャンバー格納部102の外径が金属製加圧容器100の外径より小さいため、該金属製定量チャンバー格納部102の周辺に空間があり、図3に示す如く、リング状スペーサ104はこの空間に収まることができる。従ってリング状スペーサ104は、リング状の内径が金属製定量チャンバー格納部102の外径以上で、リング状の外径が金属製タンク部101の外径以下であり、円筒方向高さが3mm以上乃至金属製定量チャンバー格納部102の円筒方向高さ以下が好適である。
【0032】
この様に構成された金属製加圧容器用RFIDタグシステムを含む加圧定量噴霧吸入器は、図1に示したリング状RFIDタグ105が、リング状スペーサ104の円筒方向高さによって金属製バルブ格納部1503上面との間隔を金属材料による影響を受けない所定の間隔(3mm)以上に設定しているため、図中上方からRFIDリーダ/ライタのアンテナ(図示せず)と交信を行うことができる。
<第2の実施形態>
【0033】
前述の第1の実施形態による金属製加圧容器用RFIDタグシステムは、リング状スペーサ104の上面にリング状RFIDタグ105を貼り付ける例を説明したが、前記リング状RFIDタグ105は特殊形状であり、製造コストが一般に市販されているRFIDタグに比して高価なものとなることが考えられる。
【0034】
ここで、一般に市販されているRFIDタグは、図4に示す如く、長尺直線状のRFIDタグ基材(ポリイミド樹脂等)403上に、長尺状のRFIDタグアンテナ部402と長方形のRFIDチップ401とを搭載したインレットに対し、保護透明フィルムや取り付け用の接着剤等のユーティリティを付したものであり、この形状のものが、入手が容易で製造コストも安価である。
【0035】
そこで発明者らは、図5に示す如く、前記直線状のRFIDタグを使用した金属(アルミ合金)製加圧容器100を含む金属製加圧容器用RFIDタグシステムを発明した。この金属製加圧容器用RFIDタグシステムは、図5に示す如く、気体又は液体又は粉末状の医薬品(薬剤)を格納し、金属製定量チャンバー格納部102が上方へ突出するように形成された概略外形が円筒状の金属製タンク部101を含む金属製加圧容器100と、該金属製加圧容器100の金属製定量チャンバー格納部102の周囲を囲む様に配され、内外半径差が、前記金属製加圧容器100のRFIDタグへの影響を制限するための所定値に設定された非導電性材料のリング状スペーサ104と、該リング状スペーサ104の外周面に沿って巻き付けた直線状のRFIDタグ501とから成り、図中横方向からRFIDリーダ/ライタのアンテナ(図示せず)により交信を行う様に構成されている。
【0036】
本実施形態による金属製加圧容器用RFIDタグシステムは、RFIDタグ501が、金属製加圧容器100から突出する金属製定量チャンバー格納部102の周囲から3mm以上隔離する様にリング状スペーサ104の内外半径差が設定されており、このために金属製加圧容器100にRFIDタグ501を取り付けた場合であっても、金属製定量チャンバー格納部102の外周面の金属部によるRFIDタグへの影響を制限することができる。
【0037】
尚、RFIDタグへの金属材料からの影響は、アンテナが形成する平面と金属製加圧容器100の各部が形成する面とが電磁波の進行方向上で略平行に近く且つ重複するほど金属材料からの影響が大きく、このため本実施形態におけるRFIDタグ501に影響する金属材料部は、金属製定量チャンバー格納部102であり、この金属製定量チャンバー格納部102とRFIDタグ501のアンテナとの間隔をリング状スペーサ104の内外半径差により確保することにより、交信性能を確保することができる。また、リング状スペーサ104の外径の上限値は、前記アダプタ301に収納するために金属製加圧容器100の外径以下であることは言うまでもない。
【0038】
この様に構成された金属製加圧容器用RFIDタグシステムを含む加圧定量噴霧吸入器は、図5に示したRFIDタグ501が、所定値以上の内外半径差を持つリング状スペーサ104の外周面に貼り付けたことによって金属製定量チャンバー格納部102の外周との間隔を金属材料による影響を受けない所定の間隔(3mm)以上に設定しているため、RFIDリーダ/ライタのアンテナ(図示せず)と交信を行うことができる。
【0039】
尚、前述の各実施形態においては、所定量の薬剤を均一に噴霧するための定量吐出機構を有する医薬用製品を例にとって説明しているが、本発明は、定量吐出機構を要しないヘアケヤや塗料等の金属製加圧容器にも適用することもでき、この場合はノズルの周囲に直接、前述の要件を満たすリング状スペーサを配するように構成しても良い。
<第3の実施形態>
【0040】
前述の各実施形態においては、リング状スペーサを設置する空間がアダプタ内に確保できることが前提となっていたが、アダプタ内にリング状スペーサを設置する空間が確保できないことも想定され、この様なアダプタに適用することができるRFIDタグシステムの実施形態を次に説明する。
【0041】
本実施形態によるRFIDタグシステムは、図11に示す如く、金属(アルミ合金)製加圧容器100の金属製ネック部1502の外周にRFIDタグ1102を巻き付けたネック部用スペーサ1101を取り付けたものである。この金属製ネック部1502は、金属製タンク部101と金属製バルブ格納部1503とを巻き締めにより結合する際に形成されるものであり、金属製タンク部101の直径と比較して、数ミリ程度直径が減少している領域である。本実施形態によるRFIDシステムは、以下に説明する様に工夫された非導電性材料のネック部用スペーサ1101を介してRFIDタグ1102を設置することによって、前記金属製ネック部のRFIDタグへの影響を制限し、金属製加圧容器100からの影響を避けることができる。
【0042】
前記金属製ネック部1502の断面は、図12に示す如く、矩形断面ではなく凹曲面状に形成しているため、ネック部用スペーサ1101の片面は前記凹曲面に合わせた形状に成型され、もう一方の面はRFIDタグ1102が貼り付けられる様に平面に成型されている。
前記ネック部用スペーサ1101及びRFIDタグ1102を図12の上方から観察した断面で表したものを図13に示す。ネック部用スペーサ1101は、金属製ネック部1502の全周を覆うのではなく、切れ目1301を有しており、この切れ目1301を通して金属製ネック部1502へ挿入される。
【0043】
前記した第1及び第2実施形態における各スペーサは、金属製加圧容器からRFIDインレットを隔離させる役割を担っており、本第3実施形態によるネック部用スペーサ1101は、RFIDタグ1102と金属製加圧容器100の金属製ネック部1502との隔離距離を形成しているが、前述の如く金属製ネック部の凹曲面に合わせた断面を有しているため、ネック部用スペーサ1101の厚さの定義を行う位置に工夫が必要となる。
【0044】
図14は、本実施形態によるネック部用スペーサ1101の部分拡大図である。本発明によるとRFIDタグ(又はRFIDインレット)と金属材料との隔離距離が問題であり、これを詳細に表現すると、問題となるのはRFIDタグ1102上のアンテナと金属材料との隔離距離である。
【0045】
図14に示す如く、本実施形態によるネック部用スペーサ1101上には、RFIDタグ基材403を介して概略矩形状のRFIDタグアンテナ部402が設置されており、該RFIDタグアンテナ部402の全面で、図10で説明したda’以上の隔離距離が確保されれば良い。このためRFIDタグアンテナ部402は、アンテナ短手方向の端部であるアンテナ部分1402が、RFIDタグアンテナ部402の全面の中で最も金属製ネック部1502に接近するため、この地点における厚さ1401(「RFIDタグアンテナ部と金属製加圧容器との最近接距離」と呼ぶ)がda’以上確保される必要がある。即ち、本実施形態によるネック部用スペーサ1101は、RFIDタグアンテナ部と金属製加圧容器との最近接距離をda'以上(周波数2.45GHz帯のRFIDタグでは約3mm以上)の厚みに設定することにより、金属製加圧容器100の金属製ネック部1502によるRFIDタグ1102への影響を制限することができる。
<第4の実施形態>
【0046】
前述の各実施形態においては、RFIDタグを金属製加圧容器から所定距離だけ隔離することによって金属材料による信号交信に対する影響を低減する例を説明したが、発明者らは、金属板上にRFIDタグを設置した場合であっても、設置条件によっては金属材料の影響を受けないことを発見し、この他の実施形態を以下説明する。
【0047】
まず、図6に示す如く、金属板601上にRFIDタグ502を直置した場合、金属板の影響によりRFIDタグ502の感度が低下し、RFIDタグ502の最大交信可能距離が短くなると考えられていた。しかし本願発明者らは実験により、金属板が及ぼす影響は、その金属板とRFIDタグアンテナの大きさ(面積比)により影響の度合いが異なることを発見した。
【0048】
これを説明すると、発明者らは、金属板として厚さ0.5mmのアルミ薄板を用い、RFIDタグのアンテナ部分の面積に対するアルミ薄板の面積比(Rs=(アルミ薄板の面積)/(RFIDタグのアンテナ部分の面積))を横軸に変化させ、最大交信可能距離を縦軸として測定した。その結果は、図7に示す如く、面積比Rsがゼロ(アルミ薄板が存在しない状態)において最大交信可能距離が最も大きくなり、面積比Rsが大きくなるに従い緩やかに低下し、面積比Rs≒1.5で約20%の感度低下となった後、面積比Rsのさらなる増加に伴い急激に感度が低下することを発見した。換言すれば、面積比Rs≦1.5とすることで、急激な感度の低下を避けることが出来ることを発見した。
【0049】
この実験結果から発明者らは、金属材料部分の面積を、RFIDタグアンテナ部分の1.5倍程度以内に抑えれば、換言すれば金属面の面積を2/3以上被うアンテナを使用すれば、金属材料上であってもRFIDタグが交信可能なことを発見した。尚、前述した実験に用いた通信装置は、株式会社日立超LSIシステムズ製RFIDリーダ/ライタ装置MS6502RWEA(定格出力300mW)及び同装置専用4パッチアンテナ(円偏波、利得14dBi)である。また、今回の実験における通信プロトコルは、ISO18000−4ドラフト版準拠を用い、転送レート40kbpsにて測定を行った。
【0050】
発明者らは、前述の実験結果を基に本願発明の対象となる金属製加圧容器にRFIDタグを設ける金属(アルミ合金)製加圧容器用RFIDタグシステムを検討した結果、図8及び図9に示す如く、金属製タンク部101の底部とアダプタ底部のキャップ302との間に底部用RFIDタグ801を設置する発明を成した。
【0051】
この実施形態による金属製加圧容器用RFIDタグシステムは、アダプタ底部側から観た図9に示す如く、RFIDタグ801が金属製タンク部101の底面(幅Da)からの影響を低減するために、2枚一組の半円状のRFIDタグアンテナ901を用い、前記面積比Rsが1.5乃至1に成るように設定してある。尚、面積比Rsが、アダプタ底部側面積とアンテナ面積が同一である「1」以上且つ1.5より小さければ本発明の目的は達せられるので、2枚一組の半円状のアンテナだけでなく、スパイラル状や長尺状を折り曲げた形のアンテナ形状であっても良い。
【0052】
この様に本実施形態による金属製加圧容器用RFIDタグシステムは、RFIDタグのアンテナ部分と金属製タンク部の底面の面積比Rsを1.5以下(下限値は例えばアダプタ底部側面積とアンテナ面積が同一である「1」)に設定することによって、金属製加圧容器にRFIDタグを貼り付けた場合であっても、RFIDリーダ/ライタからのアンテナ(図示せず)と交信を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
前述の実施形態においては、気体又は液体又は粉末状の薬剤を噴霧する加圧定量噴霧吸入器を例にとって説明したが、本発明による金属製加圧容器用RFIDタグシステムは医薬品用に限られるものではなく、金属材料による加圧容器を用いる他のパッケージ、例えば塗料やヘアケア用のスプレー缶等にも広く適用することができる。また、金属材料による加圧容器だけでなく、導電性の液体を格納した非金属材料製のスプレー容器全般にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施形態による金属製加圧容器へRFIDタグを取り付けたRFIDタグシステムの斜視図。
【図2】本発明の対象となる金属製加圧容器を説明する斜視図。
【図3】加圧定量噴霧吸入器の構造を示す断面図。
【図4】RFIDタグの構成を示す正面図。
【図5】本発明の第2の実施形態による金属製加圧容器へのRFIDタグの取り付け機構を示す斜視図。
【図6】アルミ薄板上に設置されたRFIDタグを示す正面図。
【図7】アルミ薄板上に設置されたRFIDタグとの最大交信可能距離を、アルミ薄板の面積とRFIDタグのアンテナの面積の比を変化させて測定した結果を示すグラフ。
【図8】本発明の第4の実施形態による金属製加圧容器へRFIDタグを取り付けたRFIDタグシステムの断面図。
【図9】本発明の第4の実施形態による金属製加圧容器へRFIDタグを取り付けたRFIDタグシステムの底面図。
【図10】本発明の隔離機能を得るためのリング状スペーサの内外半径差又は円筒方向高さに関する交信性能の実験結果を示すグラフ。
【図11】本発明の第3の実施形態によるRFIDタグの取り付け機構を示す斜視図。
【図12】本発明の第3の実施形態によるRFIDタグの取り付け状況を示す断面図。
【図13】本発明の第3の実施形態によるRFIDタグの断面図。
【図14】本発明の第3の実施形態によるネック部用スペーサの部分拡大断面図。
【符号の説明】
【0055】
100:金属製加圧容器、101:金属製タンク部、102:金属製定量チャンバー格納部、103:弁棒部、104:リング状スペーサ、105:リング状RFIDタグ、301:アダプタ、302:アダプタ底面キャップ、304:エアロゾル吐出方向、303:底面キャップトリガー方向、305:エアロゾル膨張室、401:RFIDチップ、402:RFIDタグアンテナ部、403:RFIDタグ基材、501:RFIDタグ、601:金属板(アルミ薄板)、801:RFIDタグ、901:半円状のRFIDタグアンテナ、1101:ネック部用スペーサ、1102:RFIDタグ、1301:取り付け用切り欠き部、1302:ネック部用スペーサ厚さ、1401:RFIDタグアンテナ部と金属製加圧容器との最近接距離、1402:アンテナ部分、1502:金属製ネック部、1503:金属製バルブ格納部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧された被吐出物質を収納する金属製タンク部と、該金属製タンク部の上方に設けられ、押圧されることにより前記被吐出物質を吐出するバルブ機構を格納する金属製バルブ格納部と、該金属製バルブ格納部の内、上部に設けられている金属製定量チャンバー格納部と、該金属製定量チャンバー格納部から上方に突出し、前記被吐出物質を外部に案内する弁棒部とを備える概略円筒形状の金属製加圧容器にRFIDタグを設けたRFIDタグシステムであって、
前記金属製定量チャンバー格納部の周囲を囲む様に配置され、円筒形状であって、該円筒方向高さが前記金属製バルブ格納部のRFIDタグへの影響を制限するための所定値に設定された非導電材料製スペーサを設け、該非導電材料製スペーサの上面に前記RFIDタグを配置したことを特徴とするRFIDタグシステム。
【請求項2】
加圧された被吐出物質を収納する金属製タンク部と、該金属製タンク部の上方に設けられ、押圧されることにより前記被吐出物質を吐出するバルブ機構を格納する金属製バルブ格納部と、該金属製バルブ格納部の内、上部に設けられている金属製定量チャンバー格納部と、該金属製定量チャンバー格納部から上方に突出し、前記被吐出物質を外部に案内する弁棒部とを備える概略円筒形状の金属製加圧容器にRFIDタグを設けたRFIDタグシステムであって、
前記金属製定量チャンバー格納部の周囲を囲む様に配置され、円筒形状であって、該円筒の内外半径差が前記金属製バルブ格納部のRFIDタグへの影響を制限するための所定値に設定された非導電材料製スペーサを設け、該非導電材料製スペーサの外周面に前記RFIDタグを配置したことを特徴とするRFIDタグシステム。
【請求項3】
加圧された被吐出物質を収納する概略円筒形状の金属製タンク部と、該金属製タンク部の上方に設けられ、押圧されることにより前記被吐出物質を吐出するバルブ機構を格納する概略円筒形状の金属製バルブ格納部と、該金属製バルブ格納部の内、上部に設けられている金属製定量チャンバー格納部と、該金属製定量チャンバー格納部から上方に突出し、前記被吐出物質を外部に案内する弁棒部と、前記金属製バルブ格納部と前記金属製タンク部との円筒径を縮径して連結する金属製ネック部とを備える概略円筒形状の金属製加圧容器にアンテナを有するRFIDタグを設けたRFIDタグシステムであって、
前記金属製ネック部の周囲を囲む様に配置され、該金属製ネック部と、前記RFIDタグのアンテナとの最短距離が、前記金属製ネック部のRFIDタグへの影響を制限するための所定値に設定された非導電材料製スペーサを設け、該非導電材料製スペーサの外周面に前記RFIDタグを配置したことを特徴とするRFIDタグシステム。
【請求項4】
加圧された被吐出物質を収納する金属製タンク部と、該金属製タンク部の上方に設けられ、押圧されることにより前記被吐出物質を吐出するバルブ機構を格納する金属製バルブ格納部と、該金属製バルブ格納部の上方から突出し、前記被吐出物質を外部に案内する弁棒部とを備える概略円筒状の金属製加圧容器にRFIDタグを設けたRFIDタグシステムであって、
前記弁棒部の周囲を囲む様に前記金属製バルブ格納部の上面に配置され、円筒形状であって、該円筒方向高さが前記金属製バルブ格納部のRFIDタグへの影響を制限するための所定値に設定された非導電材料製スペーサを設け、該非導電材料製スペーサの上面に前記RFIDタグを配置したことを特徴とするRFIDタグシステム。
【請求項5】
前記RFIDタグが使用する電磁波の周波数が2.45GHz帯であって、前記所定値が、3mm以上乃至前記金属製定量チャンバー格納部の円筒方向高さと該金属製定量チャンバー格納部から突出している前記弁棒部の長さの合計値から弁棒部移動距離を差し引いた値以下であることを特徴とする請求項1記載のRFIDタグシステム。
【請求項6】
前記RFIDタグが使用する電磁波の周波数が2.45GHz帯であって、前記所定値が、3mm以上乃至前記非導電材料製スペーサの外径が金属製加圧容器の外径以下になる値であり、前記RFIDタグが、前記非導電材料製スペーサの外周面に沿って配置された概略直線状アンテナを有することを特徴とする請求項2記載のRFIDタグシステム。
【請求項7】
前記RFIDタグが使用する電磁波の周波数が2.45GHz帯であって、前記所定値が、3mm以上乃至前記非導電材料製スペーサの外径が金属製加圧容器の外径以下になる値であり、前記RFIDタグが、前記非導電材料製スペーサの外周面に沿って配置された概略直線状アンテナを有することを特徴とする請求項3記載のRFIDタグシステム。
【請求項8】
前記RFIDが使用する電磁波の周波数が2.45GHz帯であって、前記所定値が、3mm以上乃至前記弁棒部の高さから弁棒部移動距離を差し引いた値以下であることを特徴とする請求項4記載のRFIDタグシステム。
【請求項9】
加圧された被吐出物質を収納する金属製タンク部と、該金属製タンク部の上方に設けられ、押圧されることにより前記被吐出物質を吐出するバルブ機構を格納する金属製バルブ格納部と、該金属製バルブ格納部の上方から突出し、前記被吐出物質を外部に案内する弁棒部とを備える概略円筒状の金属製加圧容器に、アンテナを有するRFIDタグを設けたRFIDタグシステムであって、
前記RFIDタグが、前記金属製タンク部の底面に設けられ、該金属製タンク部の底面の面積が、前記RFIDタグのアンテナの面積に対して、1倍乃至1.5倍であることを特徴とするRFIDタグシステム。
【請求項10】
前記RFIDタグのアンテナが、円形状又はスパイラル状又は長尺状を折り曲げた形のアンテナであることを特徴とする請求項9記載のRFIDタグシステム。
【請求項1】
加圧された被吐出物質を収納する金属製タンク部と、該金属製タンク部の上方に設けられ、押圧されることにより前記被吐出物質を吐出するバルブ機構を格納する金属製バルブ格納部と、該金属製バルブ格納部の内、上部に設けられている金属製定量チャンバー格納部と、該金属製定量チャンバー格納部から上方に突出し、前記被吐出物質を外部に案内する弁棒部とを備える概略円筒形状の金属製加圧容器にRFIDタグを設けたRFIDタグシステムであって、
前記金属製定量チャンバー格納部の周囲を囲む様に配置され、円筒形状であって、該円筒方向高さが前記金属製バルブ格納部のRFIDタグへの影響を制限するための所定値に設定された非導電材料製スペーサを設け、該非導電材料製スペーサの上面に前記RFIDタグを配置したことを特徴とするRFIDタグシステム。
【請求項2】
加圧された被吐出物質を収納する金属製タンク部と、該金属製タンク部の上方に設けられ、押圧されることにより前記被吐出物質を吐出するバルブ機構を格納する金属製バルブ格納部と、該金属製バルブ格納部の内、上部に設けられている金属製定量チャンバー格納部と、該金属製定量チャンバー格納部から上方に突出し、前記被吐出物質を外部に案内する弁棒部とを備える概略円筒形状の金属製加圧容器にRFIDタグを設けたRFIDタグシステムであって、
前記金属製定量チャンバー格納部の周囲を囲む様に配置され、円筒形状であって、該円筒の内外半径差が前記金属製バルブ格納部のRFIDタグへの影響を制限するための所定値に設定された非導電材料製スペーサを設け、該非導電材料製スペーサの外周面に前記RFIDタグを配置したことを特徴とするRFIDタグシステム。
【請求項3】
加圧された被吐出物質を収納する概略円筒形状の金属製タンク部と、該金属製タンク部の上方に設けられ、押圧されることにより前記被吐出物質を吐出するバルブ機構を格納する概略円筒形状の金属製バルブ格納部と、該金属製バルブ格納部の内、上部に設けられている金属製定量チャンバー格納部と、該金属製定量チャンバー格納部から上方に突出し、前記被吐出物質を外部に案内する弁棒部と、前記金属製バルブ格納部と前記金属製タンク部との円筒径を縮径して連結する金属製ネック部とを備える概略円筒形状の金属製加圧容器にアンテナを有するRFIDタグを設けたRFIDタグシステムであって、
前記金属製ネック部の周囲を囲む様に配置され、該金属製ネック部と、前記RFIDタグのアンテナとの最短距離が、前記金属製ネック部のRFIDタグへの影響を制限するための所定値に設定された非導電材料製スペーサを設け、該非導電材料製スペーサの外周面に前記RFIDタグを配置したことを特徴とするRFIDタグシステム。
【請求項4】
加圧された被吐出物質を収納する金属製タンク部と、該金属製タンク部の上方に設けられ、押圧されることにより前記被吐出物質を吐出するバルブ機構を格納する金属製バルブ格納部と、該金属製バルブ格納部の上方から突出し、前記被吐出物質を外部に案内する弁棒部とを備える概略円筒状の金属製加圧容器にRFIDタグを設けたRFIDタグシステムであって、
前記弁棒部の周囲を囲む様に前記金属製バルブ格納部の上面に配置され、円筒形状であって、該円筒方向高さが前記金属製バルブ格納部のRFIDタグへの影響を制限するための所定値に設定された非導電材料製スペーサを設け、該非導電材料製スペーサの上面に前記RFIDタグを配置したことを特徴とするRFIDタグシステム。
【請求項5】
前記RFIDタグが使用する電磁波の周波数が2.45GHz帯であって、前記所定値が、3mm以上乃至前記金属製定量チャンバー格納部の円筒方向高さと該金属製定量チャンバー格納部から突出している前記弁棒部の長さの合計値から弁棒部移動距離を差し引いた値以下であることを特徴とする請求項1記載のRFIDタグシステム。
【請求項6】
前記RFIDタグが使用する電磁波の周波数が2.45GHz帯であって、前記所定値が、3mm以上乃至前記非導電材料製スペーサの外径が金属製加圧容器の外径以下になる値であり、前記RFIDタグが、前記非導電材料製スペーサの外周面に沿って配置された概略直線状アンテナを有することを特徴とする請求項2記載のRFIDタグシステム。
【請求項7】
前記RFIDタグが使用する電磁波の周波数が2.45GHz帯であって、前記所定値が、3mm以上乃至前記非導電材料製スペーサの外径が金属製加圧容器の外径以下になる値であり、前記RFIDタグが、前記非導電材料製スペーサの外周面に沿って配置された概略直線状アンテナを有することを特徴とする請求項3記載のRFIDタグシステム。
【請求項8】
前記RFIDが使用する電磁波の周波数が2.45GHz帯であって、前記所定値が、3mm以上乃至前記弁棒部の高さから弁棒部移動距離を差し引いた値以下であることを特徴とする請求項4記載のRFIDタグシステム。
【請求項9】
加圧された被吐出物質を収納する金属製タンク部と、該金属製タンク部の上方に設けられ、押圧されることにより前記被吐出物質を吐出するバルブ機構を格納する金属製バルブ格納部と、該金属製バルブ格納部の上方から突出し、前記被吐出物質を外部に案内する弁棒部とを備える概略円筒状の金属製加圧容器に、アンテナを有するRFIDタグを設けたRFIDタグシステムであって、
前記RFIDタグが、前記金属製タンク部の底面に設けられ、該金属製タンク部の底面の面積が、前記RFIDタグのアンテナの面積に対して、1倍乃至1.5倍であることを特徴とするRFIDタグシステム。
【請求項10】
前記RFIDタグのアンテナが、円形状又はスパイラル状又は長尺状を折り曲げた形のアンテナであることを特徴とする請求項9記載のRFIDタグシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−81165(P2008−81165A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263505(P2006−263505)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000152985)株式会社日立情報システムズ (409)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000152985)株式会社日立情報システムズ (409)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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