説明

金属製真空断熱材

【課題】高い真空度を効率よく達成し、真空断熱材の封止に不具合が生じない真空断熱材を提供することにある。
【解決手段】互いに向かい合う金属製外包材に包まれた、芯材部を収納する収納部、及び前記収納部内を減圧状態に維持する封止接合部を含む真空断熱材であって、
互いに向かい合う前記金属外包材の少なくとも一方の内面には、前記真空断熱材の製造過程において前記収納部内の空気を排出するための、前記封止接合部から前記芯材部に達する溝を備え、
前記溝は、前記溝の一部が近接処理されて前記金属外包材の他方の内面に近接したか、又は前記金属外包材の他方の内面が近接処理されて前記溝の一部に近接した近接部を有し、
前記近接部に交差するように、前記収納部を封止して減圧状態に維持する前記封止接合部が形成されたことを特徴とする真空断熱材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
金属製外包材を用いた真空断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
従前から、真空断熱材を形成する際に、金属製外包材の内部を真空引きするための排気部を設け、排気部に繋がる真空引き用の通路を設けること、また排気部を切除可能なように形成することが考案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−311496号公報
【特許文献2】特開2001−311497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような真空断熱材では、真空引き後に、真空引き用の通路に渡って真空断熱材を封止(例えば、溶接)して、排気部等を切除すると、封止部に不具合が生じる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高い真空度を効率よく達成し、真空断熱材の封止に不具合が生じない真空断熱材を提供することにある。
【0006】
以上のような目的を達成するために、本発明においては、金属製外包材上に設けた排気のための溝を封止させるために、溝に金属製外包材が近接する近接部を形成した。
【0007】
具体的には、本発明に係る真空断熱材は、
互いに向かい合う金属製外包材に包まれた、芯材部を収納する収納部、及び前記収納部内を減圧状態に維持する封止接合部を含む真空断熱材であって、
互いに向かい合う前記金属外包材の少なくとも一方の内面には、前記真空断熱材の製造過程において前記収納部内の空気を排出するための、前記封止接合部から前記芯材部に達する溝を備え、
前記溝は、前記溝の一部が近接処理されて前記金属外包材の他方の内面に近接したか、又は前記金属外包材の他方の内面が近接処理されて前記溝の一部に近接した近接部を有し、
前記近接部に交差するように、前記収納部を封止して減圧状態に維持する前記封止接合部が形成されたことを特徴とする真空断熱材を提供するものである。
【0008】
上述したように、本発明に係る真空断熱材は、真空断熱材は、芯材部と金属製外包材とを含む。金属製外包材は、芯材部を収納すると共に、内部を減圧状態に維持できるものである。
【0009】
ここで、収納部は、互いに向かい合う金属製外包材によって芯材部が収納されるように形成された部分や領域である。芯材部を収納する収納部と、芯材部から延びる少なくとも1本の溝の一端に設けられた空気の排出孔とを周回するように、金属製外包材を封止することによって、予備封止接合部が形成される。この溝は、真空引き時、収納部の外側に延びて、芯材部から空気を案内して排出するために、金属製外包材に予め形成されている。溝により収納部の空気も、また案内して排出することができる。封止された金属製外包材を真空引きした後、溝と収納部の境界とが交差する領域に、押圧等の近接処理をして、近接部が形成され、近接部に交差するように、溝及び収納部を封止して減圧状態に維持する内部封止接合部が形成される。また、内部封止接合部は、収納部の三辺を周回する予備封止接合部に交差し、収納部の残る一辺と平行となるように形成される。つまり、内部封止接合部と予備封止接合部の一部とから封止接合部が構成される。封止接合部は収納部を周回するように形成され、すなわち収納部が封止され、真空断熱材が形成される。このとき、溝は、互いに向かい合う金属製外包材が近接するように形成された近接部と、互いに向かい合う金属製外包材が離隔するように形成された離隔部とを有する。封止接合部は、収納部を封止して、収納部を減圧状態に維持することができる。収納部を周回する封止接合部から延在する部分は切除等により除くことが好ましい。つまり、真空断熱材の外縁は封止接合部によって構成されることが好ましい。このような真空断熱材は芯材部の比率が高いので、優れた断熱効率を発揮する。
【0010】
ここで、溝の形状は、直線、曲線又はこれらの組み合わせとすることができる。溝は、空気の排出孔から放射状に広がった形状、互いに平行な形状、互いに独立して交差した形状で配置することができる。
【0011】
溝の近接部により、内部封止接合部は充分に形成されるので、不具合が生じ難い。このため、高い真空度を効率よく達成し、真空断熱材の封止に不具合が生じず、断熱効果を十分に発揮させることができる。
【0012】
そして、本発明に係る真空断熱材は、金属製外包材が、収納部から延在し、封止接合部の外側に延びる非収納部を有し、溝が、収納部から非収納部にわたって形成されたことが好ましい。
【0013】
ここで、封止接合部によって、収納部と、非収納部とは画定されている。収納部は芯材部を収納する部位である。非収納部は、収納部の外側に位置している。封止接合部で非収納部を収納部に折り重ねる、あるいは非収納部を任意の箇所を折り曲げることにより、真空断熱材の面積を小さくすることができる。
【0014】
このようにしたことにより、余剰部である非収納部を、例えば真空断熱材を取り付ける際の被接合部として機能させることができ、有効に活用することができる。また、余剰部である非収納部を設けることにより、封止接合部を形成する際に位置あわせが容易となり作業効率を高めることができる。
【0015】
また、本発明に係る真空断熱材は、溝が、金属製外包材の一方に、形成された複数本の溝であることが好ましい。
【0016】
このように複数本の溝を形成し、芯材部から空気を排出するのに用いるので、芯材部からの空気の排出速度が速められる。そのため、真空断熱材を製造する工程時間の短縮が図られ、製造コストを安くすることができる。
【0017】
さらに、本発明に係る真空断熱材は、金属製外包材が、ステンレス製外包材であるものが好ましい。
【0018】
このように金属製外包材がステンレス製外包材であるので、使用中の摩擦に対し耐磨耗性があり、外包材に破れが生じ難い。特に、外的要因による破れ、ピンホール等の問題に対して有効であり、強度に優れ、高耐久性の真空断熱材を提供することができる。
【0019】
さらにまた、本発明に係る真空断熱材は、封止接合部が、プラズマ溶接により形成された封止接合部であるものが好ましい。このように形成することにより、真空断熱材を封止する封止接合部は強固であり、生産性が良く、減圧状態を長期間にわたって維持することができる。
【0020】
さらにまた、本発明に係る真空断熱材は、封止接合部における互いに向かい合う金属製外包材間の距離が、該溝の近接部と、該溝の近接部を除く金属製外包材とでほぼ一定であるものが好ましい。このように形成することにより、真空断熱材を封止する内部封止接合部に不具合が生じ難く、減圧状態を長期間にわたって維持することができる。
【発明の効果】
【0021】
真空断熱材の高い真空度を効率よく達成し、真空断熱材の充分な封止ができ、断熱効果を十分に発揮にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の実施例について図面に基づいて説明する。
【0023】
<<<<真空断熱材100>>>>
<<<真空断熱材100の構成>>>
図1は、(A)は、真空断熱材100の全体の概略を示す正面図であり、(B)は、(A)中の溝130における近接部134と、離隔部132a及び132bを示す正面図である。図2は、図1に示した線I−Iに沿った真空断熱材100を示す断面図である。なお、予備封止接合部(後述する第1の封止接合部140)及び内部封止接合部160は、視認できるように形成されるので、図1及び図2においては、実線で示した。また、芯材部110は、金属製外包材120(120a及び120b)で覆われているので、図1及び図2においては、破線で示した。図1及び2においては、溝130は一本線で示したが、実際は幅を有する2本の線として視認される。
【0024】
図1及び図2に示すように、真空断熱材100は、芯材部110と、金属製外包材120(例えば、120a及び120b)と、収納部Iから空気を案内して排出するための少なくとも1本の溝130(例えば、離隔部132a及び132b及び近接部134)と、封止接合部(例えば、第1の封止接合部140a、140b及び140c、並びに内部封止接合部160)を含む。
真空断熱材100は、予め溝130が形成された略長方形の金属製外包材120の3辺に沿って、溶接等によって第1の封止接合部140を形成して、芯材部110を収納し、金属製外包材120の開放されている辺に沿って第2の封止接合部150が形成される。第1の封止接合部140及び第2の封止接合部150によって、芯材部110を収納する収納部Iと、収納部Iから延びる少なくとも1本の溝130の一端に設けられた空気の排出孔136とを周回する予備封止接合部Pが構成される。封止された金属製外包材120を真空引きした後、溝130と収納部Iの境界とが交差する領域に、押圧等の近接処理をして、近接部134が形成され、近接部に交差するように、溝及び収納部を封止して減圧状態に維持する内部封止接合部160が形成される(図1(A)及び(B)参照)。また、内部封止接合部160は、収納部Iの三辺を周回する部分の予備封止接合部(第1の封止接合部140a、140b及び140c)に交差し、収納部の残る一辺と平行となるように形成される。つまり、内部封止接合部160と予備封止接合部Pの一部(第1の封止接合部140a、140b及び140c)とから封止接合部Sが構成される。封止接合部Sは収納部Iを周回するように形成され、すなわち収納部Iが封止され、真空断熱材100が形成される(図1参照)。このとき、溝130は、互いに向かい合う金属製外包材120が近接するように形成された近接部134と、互いに向かい合う金属製外包材120が離隔するように形成された離隔部132とを有する。封止接合部Sは、収納部Iを封止して、収納部Iを減圧状態に維持することができる。図1では、収納部Iを周回する封止接合部Sから延在する部分は残されているが、この部分は切除等により除くことが好ましい。つまり、真空断熱材100の外縁は封止接合部Sによって構成されることが好ましい。
真空断熱材100の作り方の詳細については、後で述べる。
【0025】
<<芯材部110>>
<芯材部110の形状>
図1及び図2に示すように、芯材部110は、略正方形状で略薄板状の形状を有する。芯材部110の厚さや大きさは、断熱すべき対象物の大きさや断熱性能に応じて適宜定めればよい。
【0026】
<芯材部110の材料>
芯材部110は、特に限定されないが、繊維集合体、連続気泡発泡体等が使用される。断熱性の観点から好ましくは繊維集合体である。繊維集合体は、作業性の観点から、上述したように、略板状の形態で使用されることが好ましい。繊維集合体を、そのままの「わた状態」や、微細化した「粉体状」で使用する場合には、芯材部110の取り扱い性が低下するので、芯材部110を、後述する金属製外包材120へ収納する工程が煩雑になり、作業性が悪化する。
【0027】
繊維集合体は無機繊維、有機繊維またはそれらの混合物からなる。
【0028】
無機繊維としては、例えば、ガラス繊維(グラスウール)、アルミナ繊維、スラグウール繊維、シリカ繊維、ロックウール等が挙げられる。
【0029】
有機繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリウレタン繊維、ポリノジック繊維、レーヨン繊維等の合成繊維、麻、絹、綿、羊毛等の天然繊維等が挙げられる。無機繊維および有機繊維は、1種からなる単独繊維または複数種の混合繊維として用いられる。
【0030】
この実施の形態では、後述する金属製外包材120の耐熱性の利点を活かすために、芯材部110としても耐熱性に優れる無機系芯材が好ましく、断熱性も考慮すれば、グラスウール製芯材が特に好ましい。
【0031】
<<溝130、収納部I、非収納部N>>
溝130は、金属製外包材120が予備封止接合部P(第1の封止接合部140及び第2の封止接合部150)によって封止された後、真空引きする際に、空気を案内して排出するための溝130である。この溝130は、真空引き時、収納部Iの外側に延びて、収納部Iから空気を案内して排出するために、金属製外包材120に予め形成されている。つまり、溝130は、互いに向かい合う金属外包材120の少なくとも一方の内面に形成され、真空断熱材100の製造過程において収納部I内の空気を排出するための、封止接合部Sから芯材部110に達する溝である。なお、溝130は金属製外包材120の内面側に設けられ、空気を案内して排出するための溝であるが、後述するように空気を排出した後は、溝の形状のみを有するだけでなく、接合のための近接部のような平らな部分が形成される。
【0032】
<溝130の断面形状>
図3は、図1に示した線I−Iに沿った真空断熱材100の溝130を拡大した断面図であり、図3(A)、(B)及び(C)は溝130の態様例を示す断面図である。
【0033】
図3に示すように、溝130の断面形状は空気を案内して排出することができれば、特に限定されない。溝130は互いに向かい合う金属製外包材120a及び120bが離隔するように形成されている。例えば、金属製外包材120の所定の位置を、プレス、押し圧成形、型押し等することによって、V字、U字、半円、四角状等の凹部又は凸部の断面形状とすることができる。溝130は、金属製外包材120の一方にのみ溝を形成してもよく、例えば、金属製外包材120aに溝130をU字状に形成することができる(図3(A)参照)。また金属製外包材120の両方に溝を形成してもよく、例えば、金属製外包材120a及び120bの間の距離が等間隔となるように溝130を形成することができ(図3(B)参照)、或いは金属製外包材120aにより太い溝を形成し、金属製外包材120bにより細い溝を形成することができる(図3(C)参照)。
【0034】
溝130の幅及び深さは、空気を案内して排出することができれば、特に限定されない。幅及び深さが大きいと、空気を排出して内部が減圧状態となったときに、溝が外部圧により押し潰されるため、幅1.0mm程度x高さ1.0mm程度の細めの溝が好ましい。
【0035】
<溝130の配置>
図1に示すように、溝130は封止接合部Sから芯材部110に達する。また、溝130は、互いに向かい合う金属製外包材120によって芯材部110が収納されるように形成された収納部Iの外側に延びている。例えば、収納部Iとその外側に延在する非収納部Nとを連通し、一方の端は収納部Iに延び、他方の端は非収納部Nに延びることができる。つまり、溝130は、収納部Iから非収納部Nにわたって形成されている。好ましくは、収納部Iに収納された芯材部110の位置から非収納部Nにわたって形成される。図1の態様では、他方の端には排出孔136が接続されており(図示されていない)、溝130は排出孔136の中心から放射状に収納部Iに延びている。
ここで、封止接合部によって、収納部Iと、非収納部Nとは画定されている。収納部Iは芯材部110を収納する部位であり、非収納部Nは芯材部110を収納していない部位である。非収納部Nは、収納部の外側に位置している。
【0036】
溝の配置は、特に限定されない。例えば、排出孔136の中心から放射状に直線の溝130を複数本配置することができ、また、直線及び曲線の溝を同様に複数本配置することができ(後述の図7参照)、或いは排出孔136を中心として櫛形に配置することもできる。
【0037】
<溝の離隔部132(132a、132b)、近接部134>
真空断熱材100における、溝130には、互いに向かい合う金属製外包材120a及び120bが離隔する領域が形成されている。例えば、図1及び2に示すように、対向する金属製外包材120aの内面に対して、金属製外包材120bに設けられた溝130は離隔し、この領域を離隔部132a及び132bと称する。また、空気の排出後かつ封止接合部Sの形成前に、溝130の一部が近接処理されて金属外包材120aの内面に近接したか、又は金属外包材120aの内面が近接処理されて溝130の一部に近接した近接部134が形成される。つまり、互いに向かい合う金属製外包材120a及び120bが近接するように近接部134が形成される。そして、互いに向かい合う金属製外包材120a及び120bが近接するように、例えば溝130をハンマー、ローラー、プレス機等により押圧することによって、平らな近接部134が形成される。例えば、金属製外包材120b上の近接部134では、互いに向かい合う金属製外包材120a及び120bが近接し、溝130の領域においても等距離となる程度に近接する。近接部134は、芯材部110が介在する領域に形成しないことが好ましい。
【0038】
<<排出孔136>>
溝130の一端には、空気の排出孔136が設けられている。排出孔136から真空ポンプ等により、空気が排出されて、減圧状態が達成される。排出孔136には適宜空気排出のための排出部を設けることができる。
【0039】
排出孔136の配置は、芯材部110に近く、かつ金属製外包材120の外縁から離れていることが好ましく、芯材部110から15〜75mm程度、好ましくは20〜40mm程度離れた位置に形成することができる。
【0040】
排出孔136の数は、少なくとも1個以上であり、複数個設けることができる。また、少なくとも1本の溝130と少なくとも1個の排出孔136の組み合わせを、複数セット設けることができる。
【0041】
<<金属製外包材120>>
<金属製外包材120の形状>
2枚の金属製外包材120a及び120bの各々は、通常同じ大きさの略長方形の一定の形状を有するが、特に長方形状に限定されるものではなく、芯材部110の形状及び大きさや、芯材部を収納する収納部及び芯材部から延びる少なくとも1本の溝の一端に設けられた空気の排出孔を合わせた大きさ等に合せて、2枚の金属製外包材120a及び120bの各々の形状及び大きさを適宜定めればよい。なお、芯材の形状及び大きさは断熱対象物の形状により適宜設定される。
【0042】
2枚の金属製外包材120a及び120bの金属製外包材の少なくとも一方には、前述の溝130及び溝に接続された排出孔136が形成されている。
【0043】
図4は、互いに向かい合う金属製外包材の少なくとも一方に溝130が形成された金属製外包材120a及び120bを2枚重ねたときの状態を示す正面図である。
なお、図4は、構成を明確に示すために、隣り合う部材の間に隙間があるように示したが、実際には、これらの部材は、密着するように構成されている。図4においては、溝130は一本線で示したが、実際は幅を有する2本の線として視認される。
【0044】
金属製外包材120は、図4に示すように、2枚のシート状の金属製外包材120a及び120bによって構成される。なお、以下では、金属製外包材120a及び120bを、単に金属製外包材120と称する場合もある。
【0045】
<金属製外包材120の材料>
金属製外包材120は、真空断熱材100が使用される温度や圧力等の条件下で十分に耐え、真空断熱材100としての機能を維持できる金属であれば、どのようなものでも用いることができる。例えば、軟鋼薄板、ステンレス鋼薄板、亜鉛メッキ鋼薄板等の各種の鋼薄板や、アルミニウム合金薄板や、チタン薄板や、スズ薄板等を用いることができる。特に、板厚が0.05mmから1.0mm程度のステンレスを使用するのが好ましい。
なお、金属製外包材120を、単一の層の金属製の薄板で構成するだけでなく、複数の層の金属製の薄板で構成してもよい。金属製外包材の構成は、耐熱性や芯材部110の断熱性等を考慮して適宜定めればよい。
【0046】
<予備封止接合部P>
予備封止接合部Pは、第1の封止接合部140及び第2の封止接合部150によって構成され、芯材部110を収納する収納部Iと、収納部Iから延びる少なくとも1本の溝130の一端に設けられた空気の排出孔136とを周回する。なお、第1の封止接合部140は、予備封止接合部Pだけでなく、後述する封止接合部Sの形成にも使われる。
【0047】
<第1の封止接合部140>
図5は、互いに向かい合う金属製外包材120a及び120bの三辺を、第1の封止接合部140で封止したときの状態及び芯材部110を挿入する過程を示す正面図である。図5においては、溝130は一本線で示したが、実際は幅を有する2本の線として視認される。
【0048】
図5に示すように、この2枚の金属製外包材120a及び120bを溶接することによって、第1の封止接合部140を形成することができる。
【0049】
この第1の封止接合部140(140a〜140c)は、図5に示すように、金属製外包材120の一辺の端部に対し略平行に、四辺のうち、三辺に形成され、各々140a、140b及び140cの符号を付している。
【0050】
上述したように、第1の封止接合部140(140a〜140c)を形成することによって、第1の封止接合部140は、芯材部110が収納される周囲三辺を周回するように、袋の状態に形成される。
【0051】
袋の状態に形成された2枚の金属製外包材120a及び120bに、芯材部110を挿入し、芯材部110が、袋状の金属製外包材120の奥側に位置するように位置づける。
【0052】
<第2の封止接合部150>
図6は、四辺が封止された金属製外包材120に、芯材部110が収納されたときの状態を示す正面図であり、図7は、図6における溝130の他の態様を示す正面図である。図8は、予備封止接合部Pによって封止された金属製外包材120が減圧状態にされたときの状態を示す正面図である。図6〜8においては、溝130は一本線で示したが、実際は幅を有する2本の線として視認される。また、図8においては、切断線N,Cは、切断前の状態であるので、点線で示した。なお、図6〜8では、明確に示すために、収納部Iを右上がりの斜線を付して示し、非収納部Nを右下がりの斜線を付して示した。
【0053】
図6に示すように、封止されていない辺の端部に沿って、溶接することによって、第2の封止接合部150を形成することができる。図6には、排出孔136の中心から放射状に直線の溝130を複数本配置された態様が示されているが、例えば図7のように排出孔136の中心から直線及び曲線の溝を同様に複数本配置された態様とすることもできる。
【0054】
そして、図8に示すように、溝130に接続された排出孔136を介して、収納部I及び収納部Iから延びる少なくとも1本の溝130の一端に設けられた空気の排出孔136を周回する予備封止接合部Pによって封止された領域から溝130を介して空気が排出され、減圧状態が達成される。真空度は減圧状態であれば特に限定されないが、数Pa以下が好ましく、3Pa程度がより好ましい。
【0055】
<封止接合部S、内部封止接合部160、内部封止接合領域V,S>
図9(A)は、溝130に渡って内部封止接合領域V,Sが形成されたときの状態を、図9(B)は、溝130に、上述のとおり、互いに向かい合う金属製外包材120a及び120bが近接するように形成された近接部134と、互いに向かい合う金属製外包材120a及び120bが離隔するように形成された離隔部132a及び132bが形成されたときの状態を示す正面図であり、図10は、封止接合部Sが形成されたときの状態を示す正面図である。図9及び10では、明確に示すために、収納部Iを右上がりの斜線を付して示し、非収納部Nを右下がりの斜線を付して示した。
【0056】
図9に示すように、溝130には、内部封止領域V,Sが位置づけられる。内部封止領域V,Sは、内部封止接合部160を形成する領域である。内部封止領域V,S内の溝130は、上述のように押し圧、プレス等により、互いに向かい合う金属製外包材120が近接するように形成された近接部134であり、内部封止領域V,Sの両側に位置する溝130は、上述のように互いに向かい合う金属製外包材120a及び120bが離隔するように形成された離隔部132a及び132bである。
【0057】
図10に示すように、溶接によって、内部封止領域V,Sの略中央に近接部に交差するように、内部封止接合部160は形成される。内部封止接合部160は溝130の近接部134に掛けて形成され、近接部134では上述のように金属製外包材120a及び120bが近接しているので、溶接条件に優れ、封止状態が良好である。また、内部封止接合部160は、収納部Iの三辺を周回する部分の予備封止接合部(第1の封止接合部140a、140b及び140c)に交差し、収納部の残る一辺が略中央となるように形成される。つまり、内部封止接合部160と予備封止接合部Pの一部(第1の封止接合部140a、140b及び140c)とから封止接合部Sが構成される。封止接合部Sは収納部Iを周回するように形成され、すなわち収納部Iが封止され、真空断熱材100が形成される。このとき、溝130は、互いに向かい合う金属製外包材120が近接するように形成された近接部134と、互いに向かい合う金属製外包材120が離隔するように形成された離隔部132とを有する。封止接合部Sは、収納部Iを封止して、収納部Iを減圧状態に維持することができる。収納部Iを周回する封止接合部Sから延在する部分は切除等により除くことが好ましい。つまり、真空断熱材100の外縁は封止接合部Sによって構成されることが好ましい。封止接合部Sは、芯材部110と重ならないように、かつ、芯材部110の外周に可能な限り近づけて形成するものが好ましい。
【0058】
さらに、封止接合部(例えば、第1の封止接合部140、第2の封止接合部150及び内部封止接合部160)自体の幅を5mm以内、特に0.1〜3mmにするのが好ましい。従来の金属製外包材内層を熱融着する方式であれば、この幅は広いほど長期断熱性能に優れるので、熱融着するのに要する幅は、通常は10mm程度のシール幅である。
【0059】
<<ゲッター剤170>>
<ゲッター剤170の機能>
金属製外包材120の中には、ゲッター剤170(図示せず)を設けてもよい。金属製外包材120の内部を減圧して溶接した後に、金属製外包材120の内部では、ガス、例えば、芯材部110からアウトガスや水分が発生する場合があり、真空度を低下させる可能性がある。このため、ガスや水分を吸着することができるゲッター剤170を、金属製外包材120の収納部Iに芯材部110と共に収納することが好ましい。
【0060】
このように、ゲッター剤170を金属製外包材120の内部に収納することで、ゲッター剤170によってガスや水分を吸収できるので、真空断熱材100の断熱効果をより長く持続させることができる。
【0061】
<ゲッター剤170の材質>
ガスや水分を吸着できる物質は、特に、限定されるものではなく、物理的にガスや水分等を吸着するものとして、例えば、活性炭、シリカゲル、酸化アルミニウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト等がある。また、化学的にガスや水分等を吸着するものは、例えば、酸化カルシウム、酸化バリウム、塩化カルシウム、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム等や、鉄、亜鉛等の金属粉素材、バリウム−リチウム系合金、ジルコニウム系合金等がある。
【0062】
<<真空断熱材100の形成>>
真空断熱材100は、以下のようにして作ることができる。
【0063】
まず、略同じ大きさの2枚の金属製の金属製外包材120a及び120bを用意し、これらの2枚の金属製外包材120a及び120bの少なくとも一方には、空気を案内して排出するための少なくとも1本の溝130及び溝130に接続された排出孔136が形成されている。この2枚の金属製外包材120a及び120bが、おおよそ重なるように配置する(図4参照)。次いで、互いに向かい合う金属製外包材120a及び120bの三辺を、溶接することによって、第1の封止接合部140を形成する(図5参照)。三辺が封止されて袋状となった金属外包材120の内部に、芯材部110を挿入し、芯材部110が、袋状の金属製外包材120の奥側に位置するように位置づける。このとき、適宜排出孔136に排出部を設けることができる。そして、封止されていない辺の端部に沿って、溶接することによって、第2の封止接合部150を形成する(図6参照)。そして、溝130に接続された排出孔136を介して、或いは排出孔136に設けた排出部を通じて、空気を排出することによって、予備封止接合部Pで封止された金属製外包材120の内部を減圧状態とする(図8参照)。真空断熱材100を形成するための内部封止接合部160が略中央となるように、内部封止接合領域V,Sを位置づける。内部封止接合領域V,S内の溝を押圧して、互いに向かい合う金属製外包材120a及び120bを近接させることによって、近接部134を形成する。内部封止接合領域V,Sの両側に位置する溝は互いに向かい合う金属製外包材120a及び120bが離隔するように形成された離隔部132a及び132bを形成する(図9参照)。内部封止接合領域V,Sの略中央を通って、芯材部110に平行に溶接することによって、内部封止接合部160が形成され、封止接合部Sによって封止された断熱材100を形成する(図10参照)。
【0064】
断熱材100は、断熱性能を向上させるために、非収納部Nの面積をなるべく小さくすることが好ましい。よって、本願発明の好ましい態様では、封止接合部Sに平行にかつなるべく近接して、非収納部Nの余剰な部分を切断する切断線N,Cを位置づけ、切断線N,Cに沿って切除することができる。この態様では、例えば排出孔136及びその周縁領域が切除される。
【0065】
溶接は、2枚の金属製外包材120a及び120bを接合できる溶接であれば、電子ビーム溶接、抵抗溶接等のいかなる種類のものを用いてもよい。例えば、シーム溶接、スポット溶接、レーザー溶接、TIG溶接、プラズマ溶接等の接合方法等がある。特に、真空状態や高温状態であっても、接合部である封止接合部140からガスなどが発生しない溶接方法を用いるのが好ましく、とりわけ特にプラズマ溶接が好ましい。
【0066】
なお、上述した例では、接合部を予備封止接合部P又は封止接合部Sとして溶接によって形成したが、ハンダ付けやロウ付けによって形成してもよい。真空断熱材100の内部、すなわち、収納部Iを減圧状態にして封止を維持できるものであればよい。
【0067】
このように、略正方形状の略薄板状の形状を有する芯材部110と、略正方形状の略薄板状の形状を有する2枚の金属製外包材120a及び120bとを用いて、形成された真空断熱材100も、略正方形状の略薄板状の形状を有する。
【0068】
<金属製外包材120の形態及び材質>
金属製外包材120の厚さや材質については、金切バサミ、シャーリング機のような切断機の切断道具で切断可能なもの、例えば、略1mmのステンレス製のものが好ましい。非収納部Nを切断道具で簡便に切除することできる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】(A)は、真空断熱材100の全体の概略を示す正面図であり、(B)は、(A)中の溝130における近接部134と、離隔部132a及び132bを示す正面図である。
【図2】図1に示した線I−Iに沿った真空断熱材100を示す断面図である。
【図3】図1に示した線I−Iに沿った真空断熱材100の溝130を拡大した断面図であり、図3(A)、(B)及び(C)は溝130の態様例を示す断面図である。
【図4】互いに向かい合う金属製外包材の少なくとも一方に溝130が形成された金属製外包材120a及び120bを2枚重ねたときの状態を示す正面図である。
【図5】互いに向かい合う金属製外包材120a及び120bの三辺を、第1の封止接合部140で封止したときの状態及び芯材部110を挿入する過程を示す正面図である。
【図6】四辺が封止された金属製外包材120に、芯材部110が収納されたときの状態を示す正面図である。
【図7】図6における溝130の他の態様を示す正面図である。
【図8】予備封止接合部Pによって封止された金属製外包材120が減圧状態にされたときの状態を示す正面図である。
【図9】(A)は、溝130に渡って内部封止接合領域V,Sが形成されたときの状態を、(B)は、溝130に、互いに向かい合う金属製外包材120a及び120bが近接するように形成された近接部134と、互いに向かい合う金属製外包材120a及び120bが離隔するように形成された離隔部132a及び132bが形成されたときの状態を示す正面図である。
【図10】内部封止接合部160が形成されたときの状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0070】
100 真空断熱材
110 芯材部
120、120a、120b 金属製外包材
130 溝
132、132a、132b 離隔部
134 近接部
136 排出孔
140、140a、140b、140c 第1の封止接合部
150 第2の封止接合部
160 内部封止接合部
I 収納部
P 予備封止接合部
S 封止接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに向かい合う金属製外包材に包まれた、芯材部を収納する収納部、及び前記収納部内を減圧状態に維持する封止接合部を含む真空断熱材であって、
互いに向かい合う前記金属外包材の少なくとも一方の内面には、前記真空断熱材の製造過程において前記収納部内の空気を排出するための、前記封止接合部から前記芯材部に達する溝を備え、
前記溝は、前記溝の一部が近接処理されて前記金属外包材の他方の内面に近接したか、又は前記金属外包材の他方の内面が近接処理されて前記溝の一部に近接した近接部を有し、
前記近接部に交差するように、前記収納部を封止して減圧状態に維持する前記封止接合部が形成されたことを特徴とする真空断熱材。
【請求項2】
前記金属製外包材が、前記収納部から延在し、前記封止接合部の外側に延びる非収納部を有し、前記溝が、前記収納部から前記非収納部にわたって形成された請求項1記載の真空断熱材。
【請求項3】
前記金属製外包材の一方の内面に複数本の前記溝を形成した請求項1又は2記載の真空断熱材。
【請求項4】
前記金属製外包材が、ステンレス製外包材である請求項1〜3のいずれか1項記載の真空断熱材。
【請求項5】
前記封止接合部が、プラズマ溶接により形成された請求項1〜4のいずれか1項記載の真空断熱材。
【請求項6】
該封止接合部における互いに向かい合う該金属製外包材間の距離が、該溝の近接部と、該溝の近接部を除く該金属製外包材とでほぼ一定である請求項1〜5のいずれか1項記載の真空断熱材。
【請求項7】
前記芯材部が、無機系芯材部である請求項1〜6のいずれか1項記載の真空断熱材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−228803(P2009−228803A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75341(P2008−75341)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【Fターム(参考)】