説明

金属製閉断面部材の製造方法

【課題】板状ワークを良好に閉断面化させることができる金属製閉断面部材の製造方法を提供する。
【解決手段】板状ワークW1から閉断面部材を製造するに際し、板状ワークを凸状にプレス成形するとともに頂面部W2に逆方向に突出する凸部W2aを成形する第1成形工程と、板状ワークをダイ61に保持した状態でパンチ65により凸部を突出方向と逆方向にプレス成形し凸部を圧潰するとともに両側の側面部W3、W4を内方側へ変位させて板状ワークの内方側へ付勢した状態で該側面部の端部W3e、W4eをパンチの両側面65d、65cに当接させる第2成形工程と、パンチを板状ワークから抜き取り閉断面化させる第3成形工程とを備え、第2成形工程は、ダイの表面における板状ワークの凸部が圧潰された圧潰部W2dに対応する部位に凹部63が設けられたダイを用いて行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属製の板状素材(板状ワーク)から閉断面状に形成された閉断面部材を製造する金属製閉断面部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、自動車等の車両において車体の基本構造の一部を構成するピラー部材、フロント及びリアのサイドフレーム、ダッシュパネルの前面下部に位置するダッシュクロスメンバ等の車体部材には、車体の強度及び剛性を確保し安全性を高める観点から高強度化及び高剛性化が求められ、しかも燃費性能向上のために軽量化が求められている。
【0003】
これらの要請に応えるため、前記のような車体部材は、多くの場合、金属製の閉断面部材として構成されている。この金属製の閉断面部材の製造方法として、例えば鋼板などの金属製の板状ワークをプレス加工によりコ字形断面の両端部に外側へ張り出すフランジ部を一体成形した断面ハット状に形成し、この断面ハット状に形成された2枚の板状ワークのフランジ部を互いに重ね合わせて閉断面状にし、その後に、フランジ部を溶接して閉断面部材を製造する方法が一般に知られている。
【0004】
断面ハット状に形成した2枚の板状ワークのフランジ部を互いに重ね合わせて製造する場合には、閉断面部材を製造するためにのみ用いる閉断面部材の両側に設けられるフランジ部によって軽量化が妨げられるとともにフランジ部を溶接する溶接部分が多くなることから、これを改善する方法として、1枚の板状ワークから閉断面部材を製造する方法がまた知られている。
【0005】
1枚の板状ワークから閉断面部材を製造する方法として、例えば特許文献1には、概略方形の金属板の両側及び後端の3辺の縁部をフランジ部として残しかつ左右の中間に前後方向にのびる凸条を形成するように該凸条によって隔てられた左右2つの凹部を絞り加工する第1工程と、該凸条部分を潰して底部を形成するように固定部とパンチとの間で絞り加工しながら、該凹部の開口が向い合う方向に該フランジ部が突き合わされるまで該金属板の左右両半部分を曲げ合わす第2工程と、突き合わされた該フランジ部を溶接する第3工程とからなる吸熱用中空板状体の製造方法が開示されている。
【0006】
また、例えば特許文献2には、金属板をプレス成形することで、断面平坦な連結部の両端から一対の閉断面構造体半部を立ち上がらせてなる半成品を製作する工程と、両閉断面構造体半部の間に挿入した偏平パンチにより連結部を内側から押圧して断面V字状に外側に隆起した屈曲部に成形しながら両閉断面構造体半部を更に立ち上がらせる工程と、両閉断面構造体半部間から偏平パンチを引き上げた後、両閉断面構造体半部の外端を相互に突き合わせて溶接する工程とを順次実行する閉断面構造体の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭53−65257号公報
【特許文献2】特開2006−116552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1に開示される方法を、複雑な閉断面形状を有する車体部材の製造に適用する場合には、閉断面化させるために固定部とパンチとの間で絞り加工することから、閉断面形状と同一形状の固定部とパンチを作る必要があり、複雑な閉断面形状を有する車体部材の製造に適用することはなかなか困難なものとなり得る。
【0009】
これに対し、前記特許文献2に開示される方法によれば、断面平坦な連結部の両端から立ち上がる一対の閉断面構造体半部の間に挿入した偏平パンチにより該連結部を内側から押圧して断面V字状に外側に隆起する屈曲部を成形しながら両閉断面構造体半部を立ち上がらせ、両閉断面構造体半部間から偏平パンチを引き上げることにより両閉断面構造体半部の外端を相互に突き合わせて閉断面化することから、複雑な閉断面形状を有する車体部材の製造においても適用することが可能である。
【0010】
しかしながら、偏平パンチにより断面平坦な連結部を内側から押圧して断面V字状に外側に隆起させ両閉断面構造体半部を立ち上がらせて閉断面化させる場合、偏平パンチを引き上げたときに、スプリングバックによって両閉断面構造体半部の外端を相互に突き合わせることができない場合があり、かかる場合には、両閉断面構造体半部を外方側から押圧することが必要となる。
【0011】
そこで、この発明は、前記技術的課題に鑑みてなされたものであり、金属製の板状ワークから閉断面部材を製造するに際し、スプリングバックが生じることを抑制し、板状ワークを良好に閉断面化させることができる金属製閉断面部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため、本願の請求項1に係る金属製閉断面部材の製造方法は、金属製の板状ワークを凸状にプレス成形するとともに該板状ワークの凸状に成形される頂面部に該板状ワークの凸状に突出する方向と逆方向に突出する凸部を成形する第1成形工程と、前記板状ワークをダイに保持した状態でパンチにより前記凸部をその突出方向と逆方向にプレス成形することにより、該凸部を圧潰するとともに前記頂面部の両側の側面部をそれぞれ内方側へ変位させて該板状ワークの内方側へ付勢した状態で該側面部の端部をパンチの両側面にそれぞれ当接させる第2成形工程と、前記両側の側面部の端部がパンチの両側面にそれぞれ当接した状態で前記パンチを該板状ワークから抜き取り、前記両側の側面部をさらに内方側へ変位させて該板状ワークを閉断面化させる第3成形工程と、を備えた金属製閉断面部材の製造方法であって、前記第2成形工程は、前記ダイの表面における前記板状ワークの凸部の圧潰部に対応する部位に凹部が設けられたダイを用いて行われる、ことを特徴としたものである。
【0013】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記ダイに設けられる前記凹部は、断面曲線状又は断面角形状に形成されている、ことを特徴としたものである。
【0014】
更に、本願の請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記第1成形工程と前記第2成形工程の間に、前記板状ワークの側面部の頂面部側と反対側の端部を該板状ワークの内方側へ曲げ成形する曲げ成形工程をさらに備えている、ことを特徴としたものである。
【0015】
また更に、本願の請求項4に係る発明は、請求項1から3の何れか一に係る発明において、前記第3成形工程の後に、前記板状ワークの閉断面化された前記側面部の端部どうしを溶接する溶接工程をさらに備えている、ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0016】
本願の請求項1に係る金属製閉断面部材の製造方法によれば、第1成形工程において成形された板状ワークの頂面部における凸部を、第2成形工程においてパンチにより圧潰することにより板状ワークの側面部を内方側へ変位させて板状ワークの内方側へ付勢した状態で該側面部の端部をパンチの両側面にそれぞれ当接させ、第3成形工程でパンチを板状ワークから抜き取るので、板状ワークの両側の側面部がさらに内方側へ変位し、該板状ワークが閉断面化されることとなる。
【0017】
その際に、ダイの表面における板状ワークの凸部の圧潰部に対応する部位に凹部が設けられたダイを用いて第2成形工程が行われることにより、凸部が圧潰されるときの変形量を大きくして板状ワークの側面部が板状ワークの内方側へ付勢する付勢力を大きくできるので、パンチを板状ワークから抜き取ったときに、スプリングバックが生じることを抑制することができ、板状ワークの側面部の端部どうしを良好に突き合わせ、板状ワークを良好に閉断面化させることができる。板状ワークを閉断面化させるために板状ワークの側面部を外方側から押圧する工程を別途設けることなく、板状ワークから良好に閉断面部材を製造することができる。更に、前記特許文献2に開示される方法では、閉断面化させるために外側に隆起する屈曲部を形成する必要があり、閉断面部材の形状が制限され、パンチにより押圧された部分が平坦な閉断面部材を製造することができないが、本願発明によれば、閉断面化させるために閉断面部材の形状が制限されることなく、パンチにより押圧された部分が平坦な閉断面部材を製造することができる。
【0018】
また、本願の請求項2に係る発明によれば、ダイに設けられる凹部は、断面曲線状又は断面角形状に形成されていることにより、前記効果をより具体的に実現することができる。
【0019】
更に、本願の請求項3に係る発明によれば、第1成形工程と第2成形工程の間に、板状ワークの側面部の頂面部側と反対側の端部を板状ワークの内方側へ曲げ成形する曲げ成形工程をさらに備えていることにより、両側の側面部をそれぞれ内方側へ変位させる際に、側面部の内方側への変位を少なくし、より精度良く閉断面部材を製造することができる。
【0020】
また更に、本願の請求項4に係る発明によれば、第3成形工程の後に、板状ワークの閉断面化された側面部の端部どうしを溶接する溶接工程をさらに備えていることにより、閉断面部材の接合強度を高めることができ、より強固な閉断面部材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係る金属製閉断面部材を備えた自動車の車体構造を模式的に示す側面図である。
【図2】本実施形態に係る金属製閉断面部材としてのフロントサイドフレームを概略的に示す斜視図である。
【図3】図2におけるY3a−Y3a線及びY3b−Y3b線に沿ったフロントサイドフレームを概略的に示す断面図である。
【図4】板状ワークをプレス成形するための第1のプレス成形装置のプレス成形型を示す斜視図である。
【図5】図4におけるY5−Y5線に沿ったプレス成形型の断面図である。
【図6】第1のプレス成形装置によるプレス成形工程を説明するための説明図である。
【図7】第1のプレス成形装置によってプレス成形された板状ワークを示す斜視図である。
【図8】図7におけるY8−Y8線に沿った板状ワークの断面図である。
【図9】板状ワークの側面部の端部を曲げ成形するための曲げ成形装置の曲げ成形型を示す断面図である。
【図10】曲げ成形工程を説明するための説明図である。
【図11】曲げ成形工程を説明するための説明図である。
【図12】板状ワークの凸部をプレス成形するための第2のプレス成形装置のプレス成形型を示す断面図である。
【図13】第2のプレス成形装置によるプレス成形工程を説明するための説明図である。
【図14】第2のプレス成形装置によるプレス成形工程を説明するための説明図である。
【図15】第2のプレス成形装置によるプレス成形工程を説明するための説明図である。
【図16】板状ワークの凸部をプレス成形するための第2のプレス成形装置の別のプレス成形型を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、「上」、「下」、「右」、「左」およびそれらを含む他の用語、「時計回り方向」、「反時計回り方向」などの特定の方向を意味する用語を使用するが、それらの使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【0023】
図1は、本実施形態に係る金属製閉断面部材を備えた自動車の車体構造を模式的に示す側面図である。本実施形態では、金属製の板状ワークを閉断面状に形成して製造する金属製閉断面部材として、図1に示すように自動車のサイドボディ10に結合されるフロントサイドフレーム20を例に説明するが、これに限定されるものでなく、サイドボティ10に結合されるリアサイドフレーム30などの閉断面状に形成されるその他の車体部材に適用してもよく、さらには、車体部材に限らず閉断面状に形成されるその他の金属製の閉断面部材に適用することも可能である。
【0024】
図2は、本実施形態に係る金属製閉断面部材としてのフロントサイドフレームを概略的に示す斜視図である。また、図3は、図2におけるY3a−Y3a線及びY3b−Y3b線に沿ったフロントサイドフレームを概略的に示す断面図であり、図3の(a)は、図2におけるY3a−Y3a線に沿ったフロントサイドフレームを概略的に示す断面図、図3の(b)は、図2におけるY3b−Y3b線に沿ったフロントサイドフレームを概略的に示す断面図である。
【0025】
図2に示すように、本実施形態に係る金属製閉断面部材としてのフロントサイドフレーム20は、長手方向に延びるとともに閉断面状に形成される閉断面部材として構成されており、上面部21と、下面部22と、右側面部23と、左側面部24と、上面部21から右側面部23に向かって右斜め下方に傾斜する第1の傾斜側面部25と、上面部21から左側面部24に向かって左斜め下方に傾斜する第2の傾斜側面部26と、下面部22から右側面部23に向かって右斜め上方に傾斜する第3の傾斜側面部27と、下面部22から左側面部24に向かって左斜め上方に傾斜する第4の傾斜側面部28によって中空部29を有する断面略八角形状に形成されている。
【0026】
フロントサイドフレーム20は、上面部21と下面部22とが長手方向に沿って略平行に成形されるとともに短手方向の断面長さが略同一に成形されているが、図2に示すように、断面形状は長手方向において変化して成形されている。フロントサイドフレーム20は、図3(a)に示す断面においては、左側面部24、第1の傾斜側面部25及び第3の傾斜側面部27が、図3(b)に示す断面における左側面部24、第1の傾斜側面部25及び第3の傾斜側面部27のそれぞれの断面長さよりも短い断面長さを有するように形成され、右側面部23、第2の傾斜側面部26及び第4の傾斜側面部28が、図3(b)に示す断面における右側面部23、第2の傾斜側面部26及び第4の傾斜側面部28のそれぞれの断面長さよりも長い断面長さを有するように形成されている。
【0027】
また、フロントサイドフレーム20では、下面部22に対する第3の傾斜側面部27の傾斜角度及び下面部22に対する第4の傾斜側面部28の傾斜角度はそれぞれ、長手方向に一定の所定の角度で形成されており、右側面部23及び第1の傾斜側面部25には中空部29の内方側に窪む複数のビード31が形成されている。
【0028】
次に、このようにして構成される本実施形態に係る金属製閉断面部材としてのフロントサイドフレーム20の製造方法について説明する。
本実施形態では、フロントサイドフレーム20を製造するに際し、先ず、例えば鋼板などの略平板状に形成された矩形状の金属製の板状素材(板状ワーク)を用意し、この板状ワークを凸状にプレス成形し、具体的にはドロー(絞り)成形し、フロントサイドフレーム20の形状に応じた所定形状に成形する。
【0029】
図4は、板状ワークをプレス成形するための第1のプレス成形装置のプレス成形型を示す斜視図であり、図5は、図4におけるY5−Y5線に沿った第1のプレス成形装置のプレス成形型の断面図である。なお、図4では、プレス成形型のダイの下面に設けられる凹部とプレス成形型のブランクホルダ内に設けられるパンチとを実線で示し、図5では、ブランクホルダに保持される板状ワークも示している。
【0030】
板状ワークW1をプレス成形するための第1のプレス成形装置は、図4及び図5に示すように、板状ワークW1を凸状にプレス成形するとともに板状ワークW1の凸状に成形される頂面部に板状ワークW1の凸状に突出する方向と逆方向に突出する凸部を成形するためのダイ45及びパンチ42であって相対的に移動されるダイ45及びパンチ42と、板状ワークW1をダイ45と挟持するブランクホルダ41とを有するプレス成形型(第1のプレス成形型)40を備えている。
【0031】
プレス成形型40のダイ45には、その下面45aに凹状に窪む凹部45bが設けられ、凹部45b内に板状ワークW1をプレス成形するための成形空間45cが形成されている。ダイ45に設けられる凹部45bは、フロントサイドフレーム20の形状に応じて所定形状に形成され、略平面状に形成される底面部45dと、底面部45dから右斜め下方に傾斜する第1の傾斜壁部45eと、第1の傾斜壁部45eから垂直方向下方に延びる右縦壁部45fと、底面部45dから左斜め下方に傾斜する第2の傾斜壁部45iと、第2の傾斜壁部45iから垂直方向下方に延びる左縦壁部45jとを備えている。また、凹部45bの底面部45dには、底面部45dから成形空間45cの内方側に向かって断面円弧状に突出する凸部45mが設けられ、この凸部45mは、図4に示すように、底面部45dにおいて長手方向に連続して設けられている。
【0032】
プレス成形型40のパンチ42は、ブランクホルダ41の内周面部41aに外周面部42aが嵌め合わせられるとともに、図示しないパンチ移動機構によって上下方向に移動され、ダイ45に対して相対的に移動されるようになっている。パンチ42は、ダイ45との間で板状ワークW1をプレス成形するために、フロントサイドフレーム20の形状に応じて所定形状に形成され、パンチ42の頭部は、略平面状に形成される上面部42dと、上面部42dから右斜め下方に傾斜する第1の傾斜壁部42eと、第1の傾斜壁部42eから垂直方向下方に延び外周面部42aの一部を構成する右縦壁部42fと、上面部42dから左斜め下方に傾斜する第2の傾斜壁部42iと、第2の傾斜壁部42iから垂直方向下方に延び外周面部42aの一部を構成する左縦壁部42jとを備えている。また、パンチ42の上面部42dには、上面部42dから断面円弧状に窪む凹部42mが設けられ、この凹部42mは、上面部42dにおいて長手方向に連続して設けられている。
【0033】
プレス成形型40のブランクホルダ41は、板状ワークW1をダイ45に対して押さえるためのものであり、板状ワークW1を保持した状態で板状ワークW1をダイ45と挟持するように、図示しないブランクホルダ移動機構によって上下方向に移動されるようになっている。
【0034】
また、前記第1のプレス成形装置は、該第1のプレス成形装置を総合的に制御する第1のプレス成形装置用制御ユニット(不図示)を備えており、該第1のプレス成形装置用制御ユニットは、パンチ42及びブランクホルダ41の移動機構などの各種作動を制御する。なお、前記第1のプレス成形装置用制御ユニット、並びに後述する第2のプレス成形装置用制御ユニット及び曲げ成形装置用制御ユニットは、例えばマイクロコンピュータを主要部として構成されている。
【0035】
このようにして構成されるプレス成形型40を備えた第1のプレス成形装置では、板状ワークW1をブランクホルダ41とダイ45とにより挟持した状態で、パンチ42をダイ45の成形空間45c内に移動させて板状ワークW1をプレス成形することにより、フロントサイドフレーム20の形状に応じて所定形状に板状ワークW1がプレス成形されるようになっている。なお、ダイ45には、凹部45bの第2の傾斜壁部45i及び左縦壁部45jにビード31の形状に応じて成形空間45cの内方側に向かって突出するビード形成用突出部(不図示)が形成され、パンチ42には、第2の傾斜壁部42i及び左縦壁部42jにビード31の形状に応じて凹状に窪むビード形成用溝部(不図示)が形成されている。
【0036】
第1のプレス成形装置を用いて板状ワークW1をプレス成形する際には、図5に示すように、ブランクホルダ41とダイ45とが離間して配置され、パンチ42の上面部42dがブランクホルダ41の上面部41bよりも下方に配置された状態で、板状ワークW1がブランクホルダ41の上面部41bに保持される。そして、プレス成形型40のブランクホルダ41が上方へ移動され、ブランクホルダ41とダイ45とにより板状ワークW1の短手方向の両端部が挟持された後に、パンチ42が上方へ移動され、パンチ42がダイ45の成形空間45c内に移動され、板状ワークW1がプレス成形される。
【0037】
図6は、第1のプレス成形装置によるプレス成形工程を説明するための説明図であり、図6の(a)は、ブランクホルダとダイとにより板状ワークが挟持された後に、パンチが上方へ移動されて板状ワークがプレス成形されている状態を示し、図6の(b)は、パンチがさらに上方へ移動されて板状ワークがさらにプレス成形された状態を示している。
【0038】
図6(a)に示すように、板状ワークW1がブランクホルダ41とダイ45により挟持された状態で、パンチ42がダイ45の成形空間45c内に移動されることにより、パンチ42の上面部42dによって板状ワークW1が断面台形状にプレス成形される。さらにパンチ42が上方へ移動されると、図6(b)に示すように、板状ワークW1がさらにプレス成形され、パンチ42とダイ45とにより板状ワークW1が所定形状に成形される。
【0039】
図7は、第1のプレス成形装置によってプレス成形された板状ワークを示す斜視図であり、図8は、図7におけるY8−Y8線に沿った板状ワークの断面図である。図7及び図8に示すように、板状ワークW1は、ブランクホルダ41とダイ45とにより挟持された板状ワークW1の短手方向の両端部を除く短手方向の中央部分がダイ45に対するパンチ42の移動方向に突出させられて凸状にプレス成形され、頂面部W2と、該頂面部W2の両側の側面部W3、W4とを有している。
【0040】
プレス成形された板状ワークW1は、ダイ45に設けられる凹部45bの底面部45dとパンチ42の上面部42dとにより頂面部W2が成形され、頂面部W2には、底面部45dに設けられた凸部45mと上面部42dに設けられた凹部42mとにより板状ワークW1の凸状に突出する方向と逆方向に断面円弧状に突出する凸部W2aが長手方向に連続して設けられている。また、頂面部W2は、図7に示すように、凸部W2aによって凸部W2aの右側に位置する右頂面部W2bと凸部W2aの左側に位置する左頂面部W2cとに分割され、頂面部W2の凸部W2aによって分割される部分W2b、W2cの短手方向における断面長さが長手方向において変化するように成形されている。
【0041】
頂面部W2の右側には、ダイ45に設けられる凹部45bの第1の傾斜壁部45e及び右縦壁部45fとパンチ42の第1の傾斜壁部42e及び右縦壁部42fとにより側面部W3が成形され、側面部W3は、凹部45bの第1の傾斜壁部45eとパンチ42の第1の傾斜壁部42eとにより成形され頂面部W2の右頂面部W2bから右斜め下方に傾斜する第1の右側面部W3aと、凹部45bの右縦壁部45fとパンチ42の右縦壁部42fとにより成形され第1の右側面部W3aから垂直方向下方に延びる第2の右側面部W3bとを有している。
【0042】
一方、頂面部W2の左側には、ダイ45に設けられる凹部45bの第2の傾斜壁部45i及び左縦壁部45jとパンチ42の第2の傾斜壁部42i及び左縦壁部42jとにより側面部W4が成形され、側面部W4は、凹部45bの第2の傾斜壁部45iとパンチ42の第2の傾斜壁部42iとにより成形され頂面部W2の左頂面部W2cから左斜め下方に傾斜する第1の左側面部W4aと、凹部45bの左縦壁部45jとパンチ42の左縦壁部42jとにより成形され第1の左側面部W4aから垂直方向下方に延びる第2の左側面部W4bを有している。
【0043】
プレス成形された板状ワークW1にはまた、凹部45bの第2の傾斜壁部45i及び左縦壁部45jに形成される前記ビード形成用突出部とパンチ42の第2の傾斜壁部42i及び左縦壁部42jに形成される前記ビード形成用溝部とにより、側面部W4、具体的には第1及び第2の左側面部W4a、W4bにビードW4fが形成される。
【0044】
また、頂面部W2に設けられる凸部W2a、右頂面部W2b及び左頂面部W2cはそれぞれ、フロントサイドフレーム20の下面部22、第4の傾斜側面部28及び第3の傾斜側面部27の形状に応じて成形され、側面部W3の第1の右側面部W3aがフロントサイドフレーム20の左側面部24の形状に応じて成形され、側面部W3の第2の右側面部W3bがフロントサイドフレーム20の第2の傾斜側面部26及び上面部21の形状に応じて成形され、側面部W4の第1の左側面部W4aがフロントサイドフレーム20の右側面部23の形状に応じて成形され、側面部W4の第2の左側面部W4bがフロントサイドフレーム20の第1の傾斜側面部25及び上面部21の形状に応じて成形されている。
【0045】
本実施形態では、板状ワークW1をブランクホルダ41とダイ45とにより挟持した状態で、パンチ42をダイ45の成形空間45c内に移動させているが、パンチ42を固定した状態で、板状ワークW1を挟持したブランクホルダ41とダイ45とをパンチ42に対して相対的に移動させてプレス成形するようにしてもよい。
【0046】
このようにしてプレス成形型40を備えた第1のプレス成形装置によって板状ワークW1がプレス成形された後、プレス成形された板状ワークW1は、図示しないブランキング手段によって、図8に示すブランキングラインL1の下側に位置する部分がブランキングされ、ブランクホルダ41とダイ45とにより挟持される板状ワークW1の短手方向における両端部W5が切り取られる。
【0047】
次に、板状ワークW1は、側面部W3、W4の端部、具体的には、図8に示す側面部W3の第2の右側面部W3bの頂面部W2側と反対側の端部W3e、及び、側面部W4の第2の左側面部W4bの頂面部W2側と反対側の端部W4eが内方側へ曲げ成形される。図9は、第1のプレス成形装置によってプレス成形された板状ワークの側面部の端部を曲げ成形するための曲げ成形装置の曲げ成形型を示す断面図である。
【0048】
図9に示すように、板状ワークW1の側面部W3、W4の頂面部W2側と反対側の端部W3e、W4eを板状ワークW1の内方側へ曲げ成形するための曲げ成形装置は、凸状にプレス成形された板状ワークW1を保持するための第1のダイ51と、第1のダイ51の外周面51aに嵌め合わせられる第2のダイ52と、第2のダイ52を支持する第3のダイ53と、第1のダイ51の下方に配置される第4のダイ54と、第1のダイ51に対向して配置され、図示しないパンチ移動機構によって上下方向に移動可能に構成されるパンチ55と、を有する曲げ成形型50を備えている。
【0049】
曲げ成形型50の第1のダイ51は、図示しない付勢手段によって上方へ付勢され、図9に示すように第4のダイ54と離間した状態で配置されている。第1のダイ51の上面51bは、その右側部分が、プレス成形された板状ワークW1の側面部W4、具体的には第2の左側面部W4bの端部W4eを曲げ成形するために、第2の左側面部W4bの曲げ成形すべき端部W4eが第2のダイ52の上方に位置付けられた状態でプレス成形された板状ワークW1を保持するように、頂面部W2及び側面部W4の形状に応じて形成されている。また、第1のダイ51の上面51bの左側部分は、プレス成形された板状ワークW1の側面部W3、具体的には第2の右側面部W3bの端部W3eを曲げ成形するために、第2の右側面部W3bの曲げ成形すべき端部W3eが第2のダイ52の上方に位置付けられた状態でプレス成形された板状ワークW1を保持するように、頂面部W2及び側面部W3の形状に応じて形成されている。
【0050】
一方、曲げ成形型50のパンチ55は、第1のダイ51の上面51bの右側部分に保持された、プレス成形された板状ワークW1を押圧するための右側パンチ55aと、第1のダイ51の上面51bの左側部分に保持された板状ワークW1を押圧するための左側パンチ55bとを備えている。
【0051】
また、前記曲げ成形装置には、パンチ55の移動機構を制御する曲げ成形装置用制御ユニットが備えられており、該制御ユニットは、パンチ55、具体的には右側パンチ55a及び左側パンチ55bの上下方向の移動を制御する。
【0052】
前記曲げ成形装置を用いて板状ワークW1の側面部W3、W4の端部W3e、W4eを曲げ成形する際には、図9に示すように、第1のダイ51が前記付勢手段によって上方へ付勢された状態で、プレス成形された板状ワークW1が、第1の左側面部W4aを下側にして第1のダイ51の上面51bの右側部分に保持される。そして、曲げ成形型50のパンチ55が下方へ移動され、パンチ55と第2のダイ52とにより曲げ成形が行われる。
【0053】
図10及び図11は、曲げ成形工程を説明するための説明図であり、図10は、パンチが下降してパンチとプレス成形された板状ワークとが接触した状態を示し、図11は、パンチがさらに下降して第1のダイと第4のダイとが接触し、プレス成形された板状ワークの側面部の端部が曲げ成形された状態を示している。
【0054】
図10に示すように、第1のダイ51の上面51bに板状ワークW1が保持された状態で、パンチ55が下降されると、パンチ55の右側パンチ55aと板状ワークW1とが接触する。この状態からさらに、パンチ55が下方へ移動されると、パンチ55の右側パンチ55aと第1のダイ51とにより板状ワークW1を挟んだ状態でパンチ55の右側パンチ55aと第2のダイ52とにより側面部W4の第2の右側面部W4bの端部W4eが内方側へ曲げ成形され、図11に示すように、第1のダイ51が第4のダイ54に接触すると、パンチ55の下方への移動が停止され、曲げ成形を終了する。
【0055】
板状ワークW1の側面部W4の端部W4eの曲げ成形が終了すると、パンチ55が上方へ移動され、第1のダイ51及び第1のダイ51に保持された板状ワークW1が上方へ移動されて最初の位置に戻される。そして、図11において二点鎖線で示すように、凸状にプレス成形された板状ワークW1を90度回転させて、板状ワークW1が、第1の右側面部W3aを下側にして第1のダイ51の上面51bの左側部分に保持され、同様にして、左側パンチ55bと第2のダイ52とにより側面部W3の第2の左側面部W3bの端部W3eが内方側へ曲げ成形される。
【0056】
このようにして、板状ワークW1の側面部W3、W4の頂面部W2側と反対側の端部W3e、W4eがともに内方側へ曲げ成形された後、板状ワークW1は、頂面部W2に設けられた凸部W2aがその突出方向と逆方向である板状ワークW1の凸状に突出する方向にプレス成形され、頂面部W2の両側の側面部W3、W4がそれぞれ内方側へ変位させられる。
【0057】
図12は、板状ワークの凸部をプレス成形するための第2のプレス成形装置のプレス成形型を示す断面図であり、図12には、プレス成形型に保持された板状ワークも示している。また、図13から図15は、第2のプレス成形装置によるプレス成形工程を説明するための説明図であり、図13には、板状ワークの凸部をプレス成形した状態が示され、図14には、ストリッパ部材を回転移動した状態が示され、図15には、板状ワークからパンチを抜き取った状態が示されている。
【0058】
図12に示すように、板状ワークW1の凸部W2aをプレス成形するための第2のプレス成形装置は、板状ワークW1を保持するためのダイ61と、ダイ61の上方に配置され、ダイ61に保持された板状ワークW1の凸部W2aをその突出方向と逆方向である板状ワークW1の凸状に突出する方向にプレス成形するためのパンチ65とを有するプレス成形型(第2のプレス成形型)60を備えている。
【0059】
プレス成形型60のダイ61には、その中央部に板状ワークW1を保持するための突出部62が設けられ、該突出部62には、その上面62aの略中央部に、図12から図15では誇張して示しているが、上面62aより僅かに下側に断面曲線状に窪んで形成される凹部63が形成されている。凹部63は、上面62aにおける短手方向の断面長さL21が、板状ワークW1の凸部W2aの断面円弧長L11と略同一若しくはそれより短い長さを有するように形成され、長手方向に連続して形成されている。この凹部63は、後述するように、パンチ65により板状ワークW1の凸部W2aをプレス成形して圧潰させるときに、ダイ61の表面における板状ワークW1の凸部W2aの圧潰部に対応する部位に設けられている。
【0060】
プレス成形型60のダイ61にはまた、突出部62の左右両側に断面L字状に形成されたストリッパ部材64a、64bが取り付けられている。このストリッパ部材64a、64bは、後述するように、パンチ65により板状ワークW1の頂面部W2における凸部W2aをプレス成形し、頂面部W2の両側の側面部W3、W4をそれぞれ内方側へ変位させて板状ワークW1の内方側へ付勢した状態で該側面部W3、W4の端部W3e、W4eをパンチ65の側面に当接させた後に、板状ワークW1からパンチ65を抜き取るときに板状ワークW1を押さえるためのものである。
【0061】
ストリッパ部材64a、64bはそれぞれ、その下部が、図示しない回動駆動機構によってダイ61に対して回動可能に取り付けられた回動軸64c、64dに固定して取り付けられている。これにより、ストリッパ部材64a、64bは、前記回動駆動機構の作動を制御することで、図14に示すように、ストリッパ部材64a、64bはそれぞれ、ダイ61に取り付けられていない他方の端部が、板状ワークW1の側面部W3、W4の頂面部W2側と反対側の端部W3e、W4eの上側まで回転移動されるようになっている。
【0062】
プレス成形型60のパンチ65は、図12に示すように、上面65aと、下面65bと、右側面65cと、左側面65dとを備え、断面矩形状に形成され、長手方向に連続して形成されている。パンチ65の下面65bは、フロントサイドフレーム20の下面部22の形状に応じて形成され、その短手方向における断面長さが凸部W2aの断面円弧状L11と略同一の断面長さL31を有するように形成されている。このようにして形成されたパンチ65は、図示しないパンチ移動機構によって上下方向に移動されるようになっている。
【0063】
また、前記第2のプレス成形装置には、該第2のプレス成形装置を総合的に制御する第2のプレス成形装置用制御ユニット(不図示)が備えられており、該第2のプレス成形装置用制御ユニットは、パンチ65の移動機構及びストリッパ部材64a、64bの回動駆動機構などの各種作動を制御する。
【0064】
このようにして構成されるプレス成形型60を備えた第2のプレス成形装置は、板状ワークW1をプレス成形型60のダイ61に、該ダイ61の上面62aに板状ワークW1の頂面部W2が配置されるように保持した状態で、板状ワークW1の凸部W2aをパンチ65により板状ワークW1の凸状に突出する方向にプレス成形して圧潰し、両側の側面部W3、W4をそれぞれ内方側へ変位させて側面部W3、W4の端部W3e、W4eをそれぞれ板状ワークW1の弾性力によって板状ワークW1の内方側へ付勢した状態でパンチ65の側面65d、65cに当接させて、その後に、パンチ65を板状ワークW1から上方に抜き取ることにより、板状ワークW1の弾性力によって板状ワークW1の側面部W3、W4の端部W3e、W4eどうしを突き合わせて閉断面化することができるようになっている。
【0065】
本実施形態では、板状ワークW1の凸部W2aは、パンチ65が下死点まで移動して該凸部W2aがプレス成形され圧潰されたとき、内方側へ変位する側面部W3、W4の端部W3e、W4eがパンチ65の側面65d、65cと当接しない場合、側面部W3、W4の端部W3e、W4eどうしが突き合わせられ板状ワークW1が閉断面化されるように形成されており、ダイ61に設けられる凹部63は、パンチ65が下死点まで移動して凸部W2aが圧潰された圧潰部に対向する部位に形成されている。
【0066】
第2のプレス成形装置を用いて板状ワークW1の凸部W2aをパンチ65によりプレス成形する際には、図12に示すように、板状ワークW1の頂面部W2がダイ61の突出部62の上面62aに保持され、板状ワークW1がプレス成形型60のダイ61に保持される。
【0067】
板状ワークW1が、ダイ61に保持されるとパンチ65が下方へ移動され、図13に示すように、凸部W2aがパンチ65によりその突出方向と逆方向である下方に押圧され、左頂面部W2c及び側面部W4は、板状ワークW1を閉じる方向に(図13において反時計回り方向に)内方側へ変位し、右頂面部W2b及び側面部W3は、板状ワークW1を閉じる方向に(図13において時計回り方向に)内方側へ変位する。
【0068】
パンチ65が下死点まで移動し、板状ワークW1の凸部W2aがパンチ65によりプレス成形され圧潰されると、図13に示すように、凸部W2aが圧潰された圧潰部W2dが形成されるとともに、頂面部W2の両側の側面部W3、W4がそれぞれ内方側へ変位させられて板状ワークW1の内方側へ付勢した状態で該側面部W3、W4の端部W3e、W4eがパンチ65の両側面65d、65cにそれぞれ当接する。側面部W3の端部W3eが板状ワークW1の内方側へ所定の付勢力F1で付勢した状態でパンチの左側面65dに当接し、側面部W4の端部W4eが板状ワークW1の内方側へ所定の付勢力F2で付勢した状態でパンチ65の右側面65cに当接する。
【0069】
そして、両側の側面部W3、W4がそれぞれ板状ワークW1の内方側へ変位され、両側の側面部W3、W4が板状ワークW1の内方側へ付勢した状態で該側面部W3、W4の端部W3e、W4eがそれぞれパンチ65の両側面65d、65cと当接した後には、図14に示すように、前記回動駆動機構の作動が制御されてストリッパ部材64a、64bが回転移動され、ストリッパ部材64a、64bのダイ61に取り付けられていない他方の端部が、板状ワークW1の側面部W3、W4の頂面部W2側と反対側の端部W3e、W4eの上側まで移動される。
【0070】
本実施形態では、板状ワークW1の凸部W2aをパンチ65により圧潰した後に、ストリッパ部材64a、64bを回転移動させているが、板状ワークW1の凸部W2aを圧潰するパンチ65の移動に連動させてストリッパ部材64a、64bを回転移動させ、ダイ61に取り付けられていないストリッパ部材64a、64bの他方の端部を板状ワークW1の側面部W3、W4の頂面部W2側と反対側の端部W3e、W4eの上側まで移動させるようにしてもよい。
【0071】
両側の側面部W3、W4が板状ワークW1の内方側へ付勢した状態で該側面部W3、W4の端部W3e、W4eがパンチ65の両側面65d、65cにそれぞれ当接するとともに、ストリッパ部材64a、64bの端部が板状ワークW1の端部W3e、W4eの上側まで移動した後、図15に示すように、パンチ65が上方へ移動され、パンチ65が板状ワークW1から抜き取られる。
【0072】
頂面部W2の両側の側面部W3、W4がそれぞれ板状ワークW1の内方側へ付勢した状態でパンチ65を板状ワークW1から抜き取ると、両側の側面部W3、W4はそれぞれ付勢力F1、F2によってさらに板状ワークW1の内方側へ変位し、側面部W3、W4の端部W3e、W4eどうしが突き合わせられ、板状ワークW1が閉断面化される。なお、板状ワークW1は、パンチ65を抜き取るときにストリッパ部材64a、64bにより押さえられている。
【0073】
図12から図15では、板状ワークW1をダイ61に保持した状態でパンチ65により凸部W2aをプレス成形することにより、該凸部W2aを圧潰するとともに頂面部W2の両側の側面部W3、W4をそれぞれ内方側へ変位させて板状ワークW1の内方側へ付勢した状態でパンチ65の両側面65d、65cに当接させる工程と、頂面部W2の両側の側面部W3、W4がそれぞれ板状ワークW1の内方側へ付勢した状態でパンチ65を板状ワークW1から抜き取り閉断面化させる工程とを説明するために、フロントサイドフレーム20の図3(a)に示す断面に対応する断面について示しているが、図3(b)に示す断面に対応する断面などのその他の断面についても同時にプレス成形され、閉断面化される。
【0074】
図15に示すように、板状ワークW1の側面部W3、W4の端部W3e、W4eどうしが突き合わせられ板状ワークW1が閉断面化された後には、板状ワークW1の閉断面化された側面部W3、W4の端部W3e、W4eどうしが、例えばレーザ溶接などの溶接によって接合され、1枚の板状ワークW1から閉断面部材としてのフロントサイドフレーム20が製造される。
【0075】
なお、本実施形態では、ドロー成形によって板状ワークW1を凸状にプレス成形し、板状ワークW1の頂面部W2に板状ワークW1の凸状に突出する方向と逆方向に突出する凸部W2aを成形しているが、例えば張出し成形などのその他のプレス成形を用いて成形するようにしてもよい。また、本実施形態では、ダイ61に設けられる凹部63は、断面曲線状に形成されているが、断面矩形状や断面台形状など断面角形状に形成するようにしてよい。
【0076】
このように、本実施形態に係る金属製閉断面部材としてのフロントサイドフレーム20の製造方法では、板状ワークW1を凸状にプレス成形するとともに板状ワークW1の凸状に成形される頂面部W2に板状ワークW1の凸状に突出する方向と逆方向に突出する凸部W2aを成形する第1成形工程と、板状ワークW1をダイ61に保持した状態でパンチ65により凸部W2aをその突出方向と逆方向にプレス成形することにより、凸部W2aを圧潰するとともに頂面部W2の両側の側面部W3、W4をそれぞれ内方側へ変位させて板状ワークW1の内方側へ付勢した状態で該側面部W3、W4の端部W3e、W4eをパンチ65の両側面W65d、65cにそれぞれ当接させる第2成形工程と、両側の側面部W3、W4の端部W3e、W4eがパンチ65の両側面65d、65cにそれぞれ当接した状態でパンチ65を板状ワークW1から抜き取り、両側の側面部W3、W4をさらに内方側へ変位させて板状ワークW1を閉断面化させる第3成形工程とを備え、第2成形工程は、ダイ61の表面における板状ワークW1の凸部W2aの圧潰部W2dに対応する部位に凹部63が設けられたダイ61を用いて行われる。
【0077】
これにより、凸部W2aが圧潰されるときの変形量を大きくして板状ワークW1の側面部W3、W4が板状ワークW1の内方側へ付勢する付勢力F1、F2を大きくできるので、パンチ65を板状ワークW1から抜き取ったときに、スプリングバックが生じることを抑制することができ、板状ワークW1の側面部W3、W4の端部W3e、W4eどうしを良好に突き合わせ、板状ワークW1を良好に閉断面化させることができる。板状ワークW1を閉断面化させるために板状ワークW1の側面部W3、W4を外方側から押圧する工程を別途設けることなく、板状ワークW1から良好に閉断面部材20を製造することができる。更に、本実施形態に係る製造方法では、閉断面化させるために閉断面部材の形状が制限されることなく、パンチにより押圧された部分が平坦な閉断面部材を製造することができる。
【0078】
また、第1成形工程と第2成形工程の間に、板状ワークW1の側面部W3、W4の頂面部W2側と反対側の端部W3e、W4eを板状ワークW1の内方側へ曲げ成形する曲げ成形工程をさらに備えていることにより、両側の側面部W3、W4をそれぞれ内方側へ変位させる際に、側面部W3、W4の内方側への変位を少なくし、より精度良く閉断面部材を製造することができる。
【0079】
更に、第3成形工程の後に、板状ワークW1の閉断面化された側面部W3、W4の端部W3e、W4eどうしを溶接する溶接工程をさらに備えていることにより、閉断面部材20の接合強度を高めることができ、より強固な閉断面部材を製造することができる。
【0080】
本実施形態では、板状ワークW1の板厚として1.2mmのものを用いたときに凹部63の最大深さを0.3mmとすることで、すなわちパンチ65とダイ61との間に形成される空間(間隙)の最も大きい空間を板状ワークW1の板厚の1.25倍とすることで、板状ワークW1を良好に閉断面化させることができた。なお、ダイ61に設けられる凹部63は、パンチ65による凸部W2aのプレス成形時に、パンチ65とダイ61との間に形成される空間の最も大きい空間が板状ワークW1の板厚の1.2から1.4倍とするように形成することが好ましい。
【0081】
前述した実施形態では、第2のプレス成形装置のプレス成形型60において、ダイ61の表面における板状ワークW1の凸部W2aの圧潰部W2dに対応する部位に設けられる凹部63が、ダイ61の突出部62の上面62aに連続して上面62aから窪んで形成されているが、上面62aと凹部63との間にフロントサイドフレーム20の第3の傾斜側面部27及び第4の傾斜側面部28の形状に応じた傾斜部を設けるようにしてもよい。
【0082】
図16は、板状ワークの凸部をプレス成形するための第2のプレス成形装置の別のプレス成形型を示す断面図である。図16に示すプレス成形型70は、プレス成形型60のダイ61の上面62aと凹部63との間に傾斜部が設けられるとともにパンチ65の下面の両側にも該傾斜部に対応する傾斜部が設けられること以外は、プレス成形型60と同様であるので、同様の構成について同一符号を付して説明を省略する。なお、図16では、プレス成形型70に板状ワークW1が保持された状態が示されている。
【0083】
図16に示すように、プレス成形型70のダイ71には、上面72aから左斜め下方に傾斜する右傾斜部72b及び上面72aから右斜め下方に傾斜する左傾斜部72cが設けられている。また、ダイ71の表面における板状ワークW1の凸部W2aの圧潰部に対応する部位に、凹部73が設けられ、該凹部73は、図16では誇張して示しているが、傾斜部72b、72cの下端部をそれぞれ接続するフロントサイドフレーム20の下面部22の形状に応じた成形ラインL2より僅かに下側に断面曲線状に窪んで形成されている。この凹部73は、成形ラインL2における短手方向の断面長さL41が、板状ワークW1の凸部W2aの断面円弧長L11と略同一長さを有するように形成され、長手方向に連続して形成されている。
【0084】
本実施形態では、ダイ71の傾斜部72b、72cはそれぞれ、長手方向に変化する頂面部W2の断面長さの最も短い断面長さと略同一の断面長さを有するように形成され、右傾斜部72bが、左頂面部W2cの断面長さの最も短い断面長さと略同一の断面長さを有するように形成され、左傾斜部72cが、右頂面部W2bの断面長さの最も短い断面長さと略同一の断面長さを有するように形成されている。また、傾斜部72b及び72cの成形ラインL2に対する傾斜角度はそれぞれ、フロントサイドフレーム20の第3の傾斜側面部27及び第4の傾斜側面部28の形状に応じて長手方向に略一定の所定の角度で形成されている。
【0085】
プレス成形型70のパンチ75は、図16に示すように、上面75aと、下面75bと、右側面75c、左側面75dと、下面75bから右側面75cに向かって右斜め上方に傾斜する右傾斜側面75eと、下面75bから左側面75dに向かって左斜め上方に傾斜する左傾斜側面75fとを備え、同一断面形状で長手方向に連続して形成されている。パンチ75の下面75b、右傾斜側面75e及び左傾斜側面75fはそれぞれ、フロントサイドフレーム20の下面部22、第3の傾斜側面部27及び第4の傾斜側面部28の形状に応じて形成され、パンチ75の下面75bは、その短手方向における断面長さL51が凸部W2aの断面円弧長L11と略同一の断面長さを有するように形成されている。
【0086】
このようにして構成されるプレス成形型70を備えた第2のプレス成形装置を用いて、板状ワークW1の凸部W2aをプレス成形する際においても、板状ワークW1が、ダイ71に保持されるとパンチ75が下方へ移動され、凸部W2aがパンチ75によりその突出方向と逆方向である下方に押圧される。これにより、左頂面部W2c及び側面部W4は、右傾斜部72bと上面72aとの交点を支点として板状ワークW1を閉じる方向に内方側へ変位し、右頂面部W2b及び側面部W3は、左傾斜部72cと上面72aとの交点を支点として板状ワークW1を閉じる方向に内方側へ変位する。
【0087】
パンチ75が下死点まで移動すると、板状ワークW1の凸部W2aがパンチ75によりプレス成形され圧潰され、凸部W2aが圧潰された圧潰部が形成されるとともに、頂面部W2の両側の側面部W3、W4がそれぞれ内方側へ変位させられて板状ワークW1の内方側へ付勢した状態で該側面部W3、W4の端部W3e、W4eがパンチ75の両側面75d、75cにそれぞれ当接する。そして、前記回動駆動機構の作動が制御され、ストリッパ部材64a、64bのダイ61に取り付けられていない他方の端部が、板状ワークW1の側面部W3、W4の頂面部W2側と反対側の端部W3e、W4eの上側まで移動される。
【0088】
その後に、頂面部W2の両側の側面部W3、W4がそれぞれ板状ワークW1の内方側へ付勢した状態でパンチ65を板状ワークW1から抜き取ると、両側の側面部W3、W4はそれぞれさらに板状ワークW1の内方側へ変位し、側面部W3、W4の端部W3e、W4eどうしが突き合わせられ、板状ワークW1が閉断面化される。
【0089】
このように、プレス成形型70を備えた第2のプレス成形装置においても、ダイ71の表面における板状ワークW1の凸部W2aの圧潰部に対応する部位に凹部73が設けられたダイ71を用いて第2成形工程が行われることにより、パンチ75を板状ワークW1から抜き取ったときに、スプリングバックが生じることを抑制することができ、板状ワークW1の側面部W3、W4の端部W3e、W4eどうしを良好に突き合わせ、板状ワークW1を良好に閉断面化させることができる。
【0090】
また、プレス成形型70を備えた第2のプレス成形装置では、凸部W2aによって頂面部W2の分割される部分W2c、W2bの断面長さが長手方向において変化するように成形されている場合においても、傾斜部72b、72cの断面長さがそれぞれ、頂面部W2の分割される部分W2c、W2bの断面長さの最も短い部分と略同一に設定されることにより、フロントサイドフレーム20の第3の傾斜側面部27及び第4の傾斜側面部28に対応する頂面部W2c、W2bを長手方向において略等しいタイミングで立ち起こすことができ、プレス成形を安定して行うことができる。
【0091】
以上のように、本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、金属製の板状ワークから閉断面部材を製造する金属製閉断面部材の製造に関し、例えばフロントサイドフレームやリアサイドフレーム、あるいはダッシュクロスメンバなどの閉断面状に形成される車体部材の製造において有効に適用可能である。
【符号の説明】
【0093】
20 フロントサイドフレーム
40 第1のプレス成形型
60、70 第2のプレス成形型
61、71 第2のプレス成形型のダイ
63、73 第2のプレス成形型のダイに設けられた凹部
65、75 第2のプレス成形型のパンチ
65c、65d、75c、75d 第2のプレス成形型のパンチの側面
W1 板状ワーク
W2 板状ワークの頂面部
W2a 板状ワークの頂面部に設けられる凸部
W3、W4 板状ワークの側面部
W3e、W4e 板状ワークの側面部の頂面部側と反対側の端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の板状ワークを凸状にプレス成形するとともに該板状ワークの凸状に成形される頂面部に該板状ワークの凸状に突出する方向と逆方向に突出する凸部を成形する第1成形工程と、前記板状ワークをダイに保持した状態でパンチにより前記凸部をその突出方向と逆方向にプレス成形することにより、該凸部を圧潰するとともに前記頂面部の両側の側面部をそれぞれ内方側へ変位させて該板状ワークの内方側へ付勢した状態で該側面部の端部をパンチの両側面にそれぞれ当接させる第2成形工程と、前記両側の側面部の端部がパンチの両側面にそれぞれ当接した状態で前記パンチを該板状ワークから抜き取り、前記両側の側面部をさらに内方側へ変位させて該板状ワークを閉断面化させる第3成形工程と、を備えた金属製閉断面部材の製造方法であって、前記第2成形工程は、前記ダイの表面における前記板状ワークの凸部の圧潰部に対応する部位に凹部が設けられたダイを用いて行われる、ことを特徴とする金属製閉断面部材の製造方法。
【請求項2】
前記ダイに設けられる前記凹部は、断面曲線状又は断面角形状に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の金属製閉断面部材の製造方法。
【請求項3】
前記第1成形工程と前記第2成形工程の間に、前記板状ワークの側面部の頂面部側と反対側の端部を該板状ワークの内方側へ曲げ成形する曲げ成形工程をさらに備えている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の金属製閉断面部材の製造方法。
【請求項4】
前記第3成形工程の後に、前記板状ワークの閉断面化された前記側面部の端部どうしを溶接する溶接工程をさらに備えている、ことを特徴とする請求項1から3の何れか一に記載の金属製閉断面部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−98370(P2011−98370A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254056(P2009−254056)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】