説明

金属複合体及び該金属複合体を用いた発光素子

【課題】高い発光効率を示す発光素子の提供。
【解決手段】下式1で表される構造を有する金属複合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属複合体及び該金属複合体を用いた発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代ディスプレイとして、有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた有機エレクトロルミネッセンスディスプレイが注目されている。有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光層、電荷輸送層等の有機層を有している。有機層に用いられる材料としては、例えば、ジチエノシロール化合物が知られている(特許文献1及び非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−255575号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J. Ohshita et al., Organometallics, 20, 4800 (2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記化合物は、発光量子収率が十分とは言い難い。
【0006】
そこで、本発明は、高い発光量子収率を有する材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を進めたところ、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は下記の[1]から[8]を提供する。
[1]下記式(1)で表される構造を有する金属複合体。
【化1】


(式(1)中、Ar及びArは、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよく、かつ置換基を有していてもよい単環式芳香族基を表す。yは、1又は2である。Aは、直接結合、−O−で表される基、−S−で表される基、−N(R)−で表される基、−Si(R)(R)−で表される基、又は−C(R)(R)−で表される基であり、yが1である場合、Aは−O−で表される基、−S−で表される基、−N(R)−で表される基、−Si(R)(R)−で表される基、又は−C(R)(R)−で表される基を表す。yが2である場合、AはSi又はCである。R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、又は置換基を有していてもよいヘテロシクリル基を表し、RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。mは、1以上の整数である。nは、0以上の整数である。Zは、Arに直接結合している窒素原子、リン原子、ヒ素原子又はアンチモン原子を表す。Zは、Arに直接結合している窒素原子、リン原子、ヒ素原子又はアンチモン原子を表す。R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、又は置換基を有していてもよいヘテロシクリル基を表し、RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。M及びMは、それぞれ独立に、金属原子又は金属イオンを表す。L及びLは、それぞれ独立に、配位子を表す。a及びbは、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。X及びXは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基、又は対イオンを表す。XとXとは、互いに結合していてもよい。)
[2]前記yが1である、[1]に記載の金属複合体。
[3]前記Arがチオフェン環から水素原子を(2+m)個取り除いた単環式芳香族基であり、前記Arがチオフェン環から水素原子を(2+n)個取り除いた単環式芳香族基である、[1]又は[2]に記載の金属複合体。
[4]前記Aが−Si(R)(R)−で表される基であり、かつ前記Aが直接結合である、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の金属複合体。
[5]前記Z及び前記Zが、リン原子である、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の金属複合体。
[6]前記M及び前記Mが、それぞれ独立に、銅、銀及び金からなる群から選ばれる金属原子又はその金属イオンである、[1]〜[5]のいずれか1つに記載の金属複合体。
[7]前記X及びXが、それぞれ独立に、対イオンである、[1]〜[6]のいずれか1つに記載の金属複合体。
[8][1]〜[7]のいずれか1つに記載の金属複合体を含む層を有する発光素子。
【発明の効果】
【0008】
本発明の金属複合体は、高い発光量子収率を有している。よって、本発明の金属複合体を発光素子の製造に用いれば、高い発光効率を示す発光素子が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0010】
まず、本明細書中で用いられる用語について説明する。
【0011】
本明細書において、Meはメチル基を表し、Phはフェニル基を表し、n−Buはノルマルブチル基を表し、t−Buはtert−ブチル基を表し、n−Hexはノルマルヘキシル基を表し、i−Prはイソプロピル基を表す。
【0012】
本明細書において、「置換基を有していてもよい」とは、その化合物又は基を構成するすべての水素原子が無置換の場合、及び1個以上の水素原子の一部又は全部が置換基によって置換されている場合の両方の態様を含む。
置換基の例としては、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、亜リン酸基、ニトロ基、炭素原子数が1〜30のヒドロカルビル基、炭素原子数が1〜30のヒドロカルビルオキシ基、炭素原子数が1〜30のヒドロカルビルチオ基、炭素原子数が1〜30の置換シリル基が挙げられる。これらの置換基の中でも、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜18のヒドロカルビル基、炭素原子数が1〜18のヒドロカルビルオキシ基、炭素原子数が1〜18のヒドロカルビルチオ基、炭素原子数が1〜18の置換シリル基が好ましく、炭素原子数が1〜12のヒドロカルビル基、炭素原子数が1〜12のヒドロカルビルオキシ基、炭素原子数が1〜12のヒドロカルビルチオ基、炭素原子数が1〜12の置換シリル基がより好ましく、炭素原子数が1〜12のヒドロカルビル基、炭素原子数が1〜12のヒドロカルビルオキシ基が更に好ましい。ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基はそれぞれ、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。
【0013】
上記のハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。ハロゲン原子としては、好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子であり、より好ましくはフッ素原子、塩素原子であり、更に好ましくはフッ素原子である。
【0014】
上記のヒドロカルビル基の例としては、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ノルボルニル基、ベンジル基、α,α―ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基、4−ビフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、コロニル基が挙げられる。
【0015】
ヒドロカルビル基としては、好ましくはメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基、4−ビフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基、9−フェナントリル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基、フェニル基であり、更に好ましくはメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基であり、とりわけ好ましくはメチル基である。
【0016】
上記のヒドロカルビルオキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、1−プロピルオキシ基、2−プロピルオキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、1−アダマンチルオキシ基、2−アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、ベンジルオキシ基、α,α−ジメチルベンジロキシ基、2−フェネチルオキシ基、1−フェネチルオキシ基、フェノキシ基、アルコキシフェノキシ基、アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基が挙げられる。
【0017】
ヒドロカルビルオキシ基としては、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、1−プロピルオキシ基、2−プロピルオキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基であり、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基である。
【0018】
上記のヒドロカルビルチオ基の例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、1−プロピルチオ基、2−プロピルチオ基、1−ブチルチオ基、2−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、シクロプロピルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、1−アダマンチルチオ基、2−アダマンチルチオ基、ノルボルニルチオ基、ベンジルチオ基、α,α-ジメチルベンジルチオ基、2−フェネチルチオ基、1−フェネチルチオ基、フェニルチオ基、アルコキシフェニルチオ基、アルキルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2―ナフチルチオ基が挙げられる。
【0019】
ヒドロカルビルチオ基としては、好ましくはメチルチオ基、エチルチオ基、1−プロピルチオ基、2−プロピルチオ基、1−ブチルチオ基、2−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基であり、より好ましくはメチルチオ基、エチルチオ基である。
【0020】
上記の置換シリル基は、シリル基における水素原子の1個、2個又は3個が、アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基からなる群から選ばれる1個、2個又は3個の基で置換されたシリル基をいう。置換シリル基の例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチル−イソプロピルシリル基、ジエチル−イソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリル基、ラウリルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基が挙げられる。
【0021】
置換シリル基としては、好ましくはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基であり、より好ましくはトリメチルシリル基である。
【0022】
本発明の金属複合体は、下記式(1)で表される構造を有する。
【0023】
【化2】

【0024】
式(1)中、Ar及びArは、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよく、かつ置換基を有していてもよい単環式芳香族基を表す。yは1又は2である。Aは、直接結合、−O−で表される基、−S−で表される基、−N(R)−で表される基、−Si(R)(R)−で表される基、又は−C(R)(R)−で表される基であり、yが1である場合、Aは、−O−で表される基、−S−で表される基、−NR−で表される基、−Si(R)(R)−で表される基、又は−C(R)(R)−で表される基を表す。yが2である場合、AはSi又はCである。R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、又は置換基を有していてもよいヘテロシクリル基を表し、RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。mは1以上の整数である。nは0以上の整数である。Zは、Arに直接結合している窒素原子、リン原子、ヒ素原子又はアンチモン原子を表す。Zは、Arに直接結合している窒素原子、リン原子、ヒ素原子又はアンチモン原子を表す。R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、又は置換基を有していてもよいヘテロシクリル基を表し、RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。M及びMは、それぞれ独立に、金属原子又は金属イオンを表す。ZとMとの結合、及びZとMとの結合は、配位結合である。L及びLは、それぞれ独立に、配位子を表す。a及びbは、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。X及びXは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基、又は対イオンを表す。
【0025】
yは、好ましくは1である。
【0026】
Ar及びArの具体的な例としては、Arの場合、下記の環Ar−1から環Ar−13で表される環から水素原子を(2+m)個取り除いた単環式芳香族基が挙げられ、Arの場合、下記の環Ar−1から環Ar−13で表される化合物から水素原子を(2+n)個取り除いた単環式芳香族基が挙げられる。Ar及びArを構成し得る環Ar−1から環Ar−13のうち、環Ar−1、環Ar−6から環Ar−13が好ましく、環Ar−1、環Ar−6から環Ar−8がより好ましく、環Ar−1、環Ar−7が更に好ましく、環Ar−7が特に好ましい。Ar及びArを構成し得る環Ar−1から環Ar−13は、置換基を有していてもよい。
【0027】
【化3】

【0028】
ArとArとは、同一であっても異なっていてもよい。Ar及びArは、好ましくは同一である。
【0029】
Ar及びArを構成する環は、それぞれA及びAと結合している。Ar及びArを構成する環は、それぞれAに結合する原子とAに結合する原子とが隣り合う位置でA及びAと結合していることが好ましい。
Ar及びArを構成する環は、それぞれ、好ましくはAに結合する原子が炭素原子であり、かつ、Aに結合する原子が炭素原子である。
【0030】
yが1である場合、Aは、−O−で表される基、−S−で表される基、−N(R)−で表される基、−Si(R)(R)−で表される基、又は−C(R)(R)−で表される基であり、好ましくは−Si(R)(R)−で表される基、又は−C(R)(R)−で表される基であり、より好ましくは−Si(R)(R)−で表される基である。yが2である場合、AはSi又はCであり、好ましくはSiである。
は、直接結合、−O−で表される基、−S−で表される基、−N(R)−で表される基、−Si(R)(R)−で表される基、又は−C(R)(R)−で表される基であり、好ましくは、直接結合、−O−で表される基、又は−S−で表される基であり、より好ましくは直接結合である。
【0031】
、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、又は置換基を有していてもよいヘテロシクリル基を表す。R、R、R、R及びRは、好ましくは、置換基(好ましくは、炭素原子数1〜20のアルキル基であり、より好ましくは、炭素原子数1〜6のアルキル基)を有していてもよいヒドロカルビル基である。
【0032】
、R、R、R及びRにおけるヒドロカルビル基の例としては、メチル基、エチル基、ベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基、4−ビフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、6−クリセニル基、1−ベンゾ[c]フェナントリル基、2−ベンゾ[c]フェナントリル基、3−ベンゾ[c]フェナントリル基、4−ベンゾ[c]フェナントリル基、5−ベンゾ[c]フェナントリル基、6−ベンゾ[c]フェナントリル基、1−ベンゾ[g]クリセニル基、2−ベンゾ[g]クリセニル基、3−ベンゾ[g]クリセニル基、4−ベンゾ[g]クリセニル基、5−ベンゾ[g]クリセニル基、6−ベンゾ[g]クリセニル基、7−ベンゾ[g]クリセニル基、8−ベンゾ[g]クリセニル基、9−ベンゾ[g]クリセニル基、10−ベンゾ[g]クリセニル基、11−ベンゾ[g]クリセニル基、12−ベンゾ[g]クリセニル基、13−ベンゾ[g]クリセニル基、14−ベンゾ[g]クリセニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基が挙げられる。
【0033】
、R、R、R及びRにおけるヒドロカルビル基としては、好ましくはフェニル基、2−トリル基、4−トリル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基であり、より好ましくはフェニル基、2−トリル基、4−トリル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基であり、更に好ましくはフェニル基、2−トリル基、4−トリル基、1−ナフチル基であり、特に好ましくはフェニル基である。
【0034】
、R、R、R及びRにおけるヘテロシクリル基の例としては、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、1−フェナントリジニル基、2−フェナントリジニル基、3−フェナントリジニル基、4−フェナントリジニル基、6−フェナントリジニル基、7−フェナントリジニル基、8−フェナントリジニル基、9−フェナントリジニル基、10−フェナントリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、1,7−フェナントロリン−2−イル基、1,7−フェナントロリン−3−イル基、1,7−フェナントロリン−4−イル基、1,7−フェナントロリン−5−イル基、1,7−フェナントロリン−6−イル基、1,7−フェナントロリン−8−イル基、1,7−フェナントロリン−9−イル基、1,7−フェナントロリン−10−イル基、1,8−フェナントロリン−2−イル基、1,8−フェナントロリン−3−イル基、1,8−フェナントロリン−4−イル基、1,8−フェナントロリン−5−イル基、1,8−フェナントロリン−6−イル基、1,8−フェナントロリン−7−イル基、1,8−フェナントロリン−9−イル基、1,8−フェナントロリン−10−イル基、1,9−フェナントロリン−2−イル基、1,9−フェナントロリン−3−イル基、1,9−フェナントロリン−4−イル基、1,9−フェナントロリン−5−イル基、1,9−フェナントロリン−6−イル基、1,9−フェナントロリン−7−イル基、1,9−フェナントロリン−8−イル基、1,9−フェナントロリン−10−イル基、1,10−フェナントロリン−2−イル基、1,10−フェナントロリン−3−イル基、1,10−フェナントロリン−4−イル基、1,10−フェナントロリン−5−イル基、2,9−フェナントロリン−1−イル基、2,9−フェナントロリン−3−イル基、2,9−フェナントロリン−4−イル基、2,9−フェナントロリン−5−イル基、2,9−フェナントロリン−6−イル基、2,9−フェナントロリン−7−イル基、2,9−フェナントロリン−8−イル基、2,9−フェナントロリン−10−イル基、2,8−フェナントロリン−1−イル基、2,8−フェナントロリン−3−イル基、2,8−フェナントロリン−4−イル基、2,8−フェナントロリン−5−イル基、2,8−フェナントロリン−6−イル基、2,8−フェナントロリン−7−イル基、2,8−フェナントロリン−9−イル基、2,8−フェナントロリン−10−イル基、2,7−フェナントロリン−1−イル基、2,7−フェナントロリン−3−イル基、2,7−フェナントロリン−4−イル基、2,7−フェナントロリン−5−イル基、2,7−フェナントロリン−6−イル基、2,7−フェナントロリン−8−イル基、2,7−フェナントロリン−9−イル基、2,7−フェナントロリン−10−イル基、1−フェナジニル基、2−フェナジニル基、1−フェノチアジニル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基、4−フェノチアジニル基、10−フェノチアジニル基、1−フェノキサジニル基、2−フェノキサジニル基、3−フェノキサジニル基、4−フェノキサジニル基、10−フェノキサジニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、2−オキサジアゾリル基、5−オキサジアゾリル基、3−フラザニル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−メチルピロール−1−イル基、2−メチルピロール−3−イル基、2−メチルピロール−4−イル基、2−メチルピロール−5−イル基、3−メチルピロール−1−イル基、3−メチルピロール−2−イル基、3−メチルピロール−4−イル基、3−メチルピロール−5−イル基、2−t−ブチルピロール−4−イル基、3−(2−フェニルプロピル)ピロール−1−イル基、2−メチル−1−インドリル基、4−メチル−1−インドリル基、2−メチル−3−インドリル基、4−メチル−3−インドリル基、2−t−ブチル1−インドリル基、4−t−ブチル1−インドリル基、2−t−ブチル3−インドリル基、4−t−ブチル3−インドリル基が挙げられる。
【0035】
、R、R、R及びRにおけるヘテロシクリル基としては、好ましくは、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、1−フェナジニル基、2−フェナジニル基、1−フェノキサジニル基、2−フェノキサジニル基、3−フェノキサジニル基、4−フェノキサジニル基、10−フェノキサジニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、2−オキサジアゾリル基、5−オキサジアゾリル基、2−チエニル基、3−チエニル基であり、より好ましくは、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−フリル基、3−フリル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、2−チエニル基、3−チエニル基であり、更に好ましくは、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基である。
【0036】
mは、1以上の整数である。mは、好ましくは1〜4の整数であり、より好ましくは1又は2であり、更に好ましくは1である。
【0037】
nは、0以上の整数である。nは、好ましくは0〜4の整数であり、より好ましくは0〜2の整数であり、更に好ましくは1である。
【0038】
は、Arに直接結合している窒素原子、リン原子、ヒ素原子又はアンチモン原子を表す。Zは、Arに直接結合している窒素原子、リン原子、ヒ素原子又はアンチモン原子を表す。Z及びZは、それぞれ独立に、窒素原子又はリン原子であることが好ましく、リン原子であることがより好ましい。
【0039】
、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、又は置換基を有していてもよいヘテロシクリル基を表す。RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。R、R、R及びRは、好ましくは、置換基(好ましくは、炭素原子数1〜20のアルキル基であり、より好ましくは、炭素原子数1〜6のアルキル基)を有していてもよいヒドロカルビル基である。
ヒドロカルビル基及びヘテロシクリル基の具体例、好ましい例は上記R、R、R及びRにおける具体例、好ましい例と同じである。
【0040】
及びMは、それぞれ独立に、金属原子又は金属イオンである。M及びMは、周期表の第1族元素〜第12族元素、及び、ランタノイドからなる群から選択される金属原子又はその金属イオンである。
【0041】
及びMの例としては、具体的には、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、水銀等の金属原子及びその金属イオンが挙げられる。
【0042】
及びMとしては、好ましくは、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、及び水銀からなる群から選ばれる金属原子並びにその金属イオンであり、より好ましくは、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、及び水銀からなる群から選ばれる金属原子並びにその金属イオンであり、高い発光効率を示すので、更に好ましくは、銅、銀、及び金からなる群から選ばれる金属原子並びにその金属イオンであり、特に好ましくは金原子及び金イオンである。M及びMは金属原子であるより金属イオンであることが好ましい。
【0043】
及びLは、それぞれ独立に、配位子を表す。L及びLの炭素原子数は、通常、100以下であり、好ましくは3〜70であり、より好ましくは5〜50であり、更に好ましくは5〜40である。L及びLの例としては、複素環式化合物、ホスフィン化合物、アミン化合物、及び下記式L−1〜式L−81で表される配位子が挙げられる。下記式L−1〜式L−81から選ばれる配位子は置換基を有していてもよい。
【0044】
【化4】



【0045】
【化5】

【0046】
【化6】

【0047】
上記の複素環式化合物の例としては、ピリジン、キノリン、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、トリアジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオフェン、フラン、トリアゾール、トリアジン、及び、アクリジンが挙げられる。これらの複素環式化合物は、置換基を有していてもよい。
【0048】
複素環式化合物としては、好ましくは、ピリジン、キノリン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、及び、トリアジンである。これらの複素環式化合物は、置換基を有していてもよい。
【0049】
上記のホスフィン化合物の例としては、トリフェニルホスフィン、プロピルジフェニルホスフィン、tert−ブチルジフェニルホスフィン、1−ブチルジフェニルホスフィン、1−ヘキシルジフェニルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリ(2−フリル)ホスフィン、トリ(3−フリル)ホスフィン、トリ(2−ピリジル)ホスフィン、トリ(3−ピリジル)ホスフィン、トリ(4−ピリジル)ホスフィン、2−フリルジフェニルホスフィン、3−フリルジフェニルホスフィン、2−ピリジルジフェニルホスフィン、3−ピリジルジフェニルホスフィン、及び、4−ピリジルジフェニルホスフィンが挙げられる。
【0050】
ホスフィン化合物としては、好ましくは、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリ(2−フリル)ホスフィン、トリ(3−フリル)ホスフィン、トリ(2−ピリジル)ホスフィン、トリ(3−ピリジル)ホスフィン、トリ(4−ピリジル)ホスフィン、2−フリルジフェニルホスフィン、3−フリルジフェニルホスフィン、2−ピリジルジフェニルホスフィン、3−ピリジルジフェニルホスフィン、及び、4−ピリジルジフェニルホスフィンであり、より好ましくは、トリフェニルホスフィンである。これらのホスフィン化合物のフェニル基、シクロヘキシル基、フリル基及びピリジル基は置換基を有していてもよい。
【0051】
上記のアミン化合物の例としては、トリフェニルアミン、ジフェニルアミン、プロピルジフェニルアミン、tert−ブチルジフェニルアミン、n−ブチルジフェニルアミン、n−ヘキシルジフェニルアミン、シクロヘキシルジフェニルアミン、ジシクロヘキシルフェニルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリメチルアミン、及び、ジメチルアミンが挙げられる。
【0052】
アミン化合物としては、好ましくは、トリフェニルアミン、ジフェニルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリメチルアミン、及び、ジメチルアミンである。これらのアミン化合物のフェニル基及びシクロヘキシル基は置換基を有していてもよい。
【0053】
a及びbは、それぞれ独立に、0以上の整数であり、好ましくは0〜5の整数であり、より好ましくは0〜3の整数であり、更に好ましくは0又は1である。
【0054】
及びXは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基、又は対イオンを表す。
【0055】
及びXは、それぞれ独立に、好ましくは置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基、又は対イオンであり、より好ましくは、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は対イオンであり、更に好ましくは対イオンである。
【0056】
及びXにおけるアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ノルボルニル基が挙げられる。該アルキル基の炭素原子数は、通常、1〜18であり、好ましくは1〜12であり、より好ましくは1〜6である。
【0057】
及びXにおけるアルケニル基の例としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基が挙げられる。該アルケニル基の炭素原子数は、通常、2〜18であり、好ましくは2〜12であり、より好ましくは2〜6である。
【0058】
及びXにおけるアルキニル基の例としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、フェニルエチニル基、メシチルエチニル基、ピリジルエチニル基、ピリミジルエチニル基、フェナントリルエチニル基が挙げられる。該アルキニル基の炭素原子数は、通常、2〜18であり、好ましくは2〜12であり、より好ましくは2〜6である。
【0059】
及びXにおけるアリール基の例としては、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基、4−ビフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、コロニル基が挙げられる。該アリール基の炭素原子数は、通常、6〜36であり、好ましくは6〜24であり、より好ましくは6〜12である。
【0060】
及びXにおけるヘテロシクリル基の例としては、上述のR、R、R、R及びRがとり得るヘテロシクリル基と同じ基が挙げられる。該ヘテロシクリル基の炭素原子数は、通常、2〜36であり、好ましくは2〜24であり、より好ましくは2〜12である。
【0061】
及びXにおける対イオンの例としては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、酢酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ヘキサフルオロアンチモンイオン、ヘキサフルオロヒ素イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、テトラフェニルボレートイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン、これらのイオンの構造を有する構造単位を含む高分子化合物が挙げられる。
【0062】
及びXにおける対イオンとしては、好ましくはフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、及び、テトラフェニルボレートイオンであり、より好ましくはフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、及び、ヨウ化物イオンであり、更に好ましくは、塩化物イオン、臭化物イオン、及び、ヨウ化物イオンであり、特に好ましくは塩化物イオンである。
【0063】
とXとは、互いに結合していてもよい。XとXとが互いに結合する場合の構造例としては、下記式(X−1)〜式(X−9)で表される構造が挙げられる。下記式(X−1)〜式(X−6)中、それぞれ2つある符号「*」は、M及びMとの結合部位を示している。下記式(X−1)〜式(X−9)で表される構造は置換基を有していてもよい。
【0064】
【化7】

【0065】
式(X−1)〜式(X−9)で表される構造のうち、式(X−1)〜式(X−6)で表される構造が好ましく、金属複合体の構造をより安定にできることから、式(X−1)及び式(X−2)で表される構造がより好ましい。
【0066】
本発明の金属複合体の例としては、下記式(A−1)〜式(A−18)で表される金属複合体が挙げられる。
【0067】
【化8】

【0068】
【化9】

【0069】
式(A−1)〜式(A−18)で表される金属複合体はそれぞれ、置換基を有していてもよい。
式(A−1)〜式(A−18)で表される金属複合体のうち、式(A−1)〜式(A−12)、及び式(A−18)で表される金属複合体が好ましく、式(A−1)〜式(A−6)で表される金属複合体がより好ましく、式(A−1)〜式(A−3)で表される金属複合体が更に好ましい。
【0070】
本発明の金属複合体には、前記式(1)で表される化合物の他に、前記式(1)で表される構造が分子内に組み込まれた化合物も含まれる。
前記式(1)で表される構造が分子内に組み込まれた化合物は、電荷輸送材料として好適に用いることができる。前記式(1)で表される構造が分子内に組み込まれた化合物であって、電荷輸送材料として用いられる化合物は、共役系であることが、共役が広がりキャリア(電子又は正孔)移動度が高くなるので好ましい。
【0071】
次に、本発明の実施形態にかかる発光素子について説明する。発光素子には、上記金属複合体が材料として用いられる。上記の本発明の金属複合体を用いることにより、発光効率に優れた発光素子を得ることができる。
【0072】
発光素子が有機エレクトロルミネッセンス素子である場合、有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極及び陰極からなる1対の電極間に、上記金属複合体を含有する層(有機層)を1層以上有する。この1層以上の層は、上記金属複合体を含有する層を少なくとも1層有していればよく、該1層以上の層のうちの少なくとも1層は、発光層である。
【0073】
発光素子の具体的な構造の例を、以下に示す。なお記号「/」は、記号「/」を挟む層同士が隣接して設けられていることを示す。
a)陽極/(電荷注入層)/発光層/(電荷注入層)/陰極
b)陽極/(電荷注入層)/正孔輸送層/発光層/(電荷注入層)/陰極
c)陽極/(電荷注入層)/発光層/電子輸送層/(電荷注入層)/陰極
d)陽極/(電荷注入層)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/(電荷注入層)/陰極
【0074】
上記(a)から(d)において、小括弧内に記載されている層は、それぞれ独立に、その位置に設けられていなくてもよいことを表す。
【0075】
電極に隣接して設けられた電荷輸送層(正孔輸送層及び電子輸送層)のうち、電極からの電荷注入効率を改善する機能を有し、素子の駆動電圧を下げる効果を有するものは、一般に電荷注入層(正孔注入層及び電子注入層)と呼ばれる場合がある。電荷注入層を有する素子としては、陰極に隣接して電荷注入層を有する素子、陽極に隣接して電荷注入層を有する素子が挙げられる。
【0076】
発光素子には、電極との密着性向上や電極からの電荷注入の改善のために、電極に隣接して厚さ5nm以下の絶縁層を設けてもよい。絶縁層に用いる材料の例としては、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料が挙げられる。厚さ5nm以下の絶縁層を有する素子の例としては、陰極に隣接して絶縁層を有する素子、陽極に隣接して絶縁層を有する素子が挙げられる。
【0077】
発光素子には、界面の密着性向上及び混層の防止のために、電極と発光層との間にこの電極に隣接して、平均厚さが10nm以下のバッファー層を設けてもよい。また、電荷輸送層と発光層との界面に、平均厚さが10nm以下のバッファー層を設けてもよい。
【0078】
発光素子は上記例示した構造に限定されるものではなく、層が積層される順番、層の数、及び各層の厚さを、発光効率及び素子寿命を考慮して適宜設定することができる。
【0079】
発光素子が有し得る各層の実施形態について説明する。
【0080】
(発光層)
発光素子の発光層は、電界印加時に陽極又は正孔注入層より正孔を注入することができ、陰極又は電子注入層より電子を注入することができる機能、注入した電荷(電子及び正孔)を電界の力で移動させる機能、電子と正孔との再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能を有するものである。発光素子の発光層は、上記金属複合体を含有することが好ましく、この金属複合体をゲスト材料とするホスト材料を含有していてもよい。
【0081】
ホスト材料の例としては、フルオレン骨格を有する化合物、カルバゾール骨格を有する化合物、ジアリールアミン骨格を有する化合物、ピリジン骨格を有する化合物、ピラジン骨格を有する化合物、トリアジン骨格を有する化合物及びアリールシラン骨格を有する化合物が挙げられる。ホスト材料のT1(最低三重項励起状態のエネルギーレベル)は、ゲスト材料のT1より大きいことが好ましく、その差が0.2eVよりも大きいことがより好ましい。ホスト材料は低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよい。ホスト材料と金属複合体などの発光材料とを混合して塗布するか、又は共蒸着などすることによって、発光材料がホスト材料にドープされた発光層を形成することができる。
【0082】
(正孔輸送層)
上記正孔輸送層の材料の例としては、特開昭63−70257号公報、特開昭63−175860号公報、特開平2−135359号公報、特開平2−135361号公報、特開平2−209988号公報、特開平3−37992号公報、特開平3−152184号公報に記載されている化合物が挙げられる。正孔輸送層に用いる材料の例としては、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリアミノフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、並びにポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体も挙げられる。
【0083】
正孔輸送層の厚さは、発光効率と駆動電圧とが適度な値となるように設定される。正孔輸送層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なる。正孔輸送層の厚さは、1nm〜1μmであることが好ましく、2nm〜500nmであることがより好ましく、5nm〜200nmであることが特に好ましい。
【0084】
(電子輸送層)
電子輸送層の材料の例としては、特開昭63−70257号公報、特開昭63−175860号公報、特開平2−135359号公報、特開平2−135361号公報、特開平2−209988号公報、特開平3−37992号公報、特開平3−152184号公報に記載されている化合物が挙げられる。電子輸送層に用いる材料の例としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、並びにポリフルオレン及びその誘導体も挙げられる。
【0085】
電子輸送層の厚さは、発光効率と駆動電圧とが適度な値となるように設定される。電子輸送層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なる。電子輸送層の厚さは、1nm〜1μmであることが好ましく、2nm〜500nmであることがより好ましく、5nm〜200nmであることが特に好ましい。
【0086】
(基板)
発光素子は、通常、基板を用いて形成される。基板の厚み方向に対向する一方の面には電極及び発光素子の各層が形成され、基板寄りの側から採光する場合には基板の他方の面が光の出射面となる。基板には、陽極及び陰極のうちの一方が接合するように設けることができる。基板は電極及び素子の各層を形成する際に化学的に変化しないものであればよい。基板の例としては、ガラス基板、プラスチック基板、高分子フィルム、シリコン基板が挙げられる。この基板が不透明である場合には、基板の厚み方向についてこの基板とは反対側に配置された電極が透明又は半透明とされる。
【0087】
(電極)
通常、陽極及び陰極のうちの採光側の電極は、透明又は半透明とされる。陽極が透明又は半透明であることが好ましい。
【0088】
陽極の材料の例としては、導電性の金属酸化物、半透明の金属が挙げられる。陽極の材料の例としては、具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体(インジウムスズ酸化物(ITO)及びインジウム亜鉛酸化物(IZO)等)、アンチモンスズ酸化物(NESA)、金、白金、銀、並びに銅が挙げられる。
これらの材料のうち、陽極の材料としては、ITO、IZO及び酸化スズが好ましい。また、陽極として、ポリアニリン及びその誘導体、並びに、ポリアミノフェン及びその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0089】
陽極の形成方法の例としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、及びメッキ法が挙げられる。
【0090】
陽極の厚さは、光の透過性と電気伝導度とを考慮して設定することができる。陽極の厚さは、10nm〜10μmであることが好ましく、20nm〜1μmであることがより好ましく、50〜500nmであることが更に好ましい。
【0091】
陰極の材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましい。陰極の材料の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、及びイッテルビウム等の金属;これら金属のうちの2つ以上の金属の合金;これら金属のうちの1つ以上の金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1つ以上の金属との合金;グラファイト;並びにグラファイトの層間に上記金属の原子が配置された化合物が挙げられる。上記合金の例として、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金が挙げられる。
【0092】
陰極の形成方法の例としては、真空蒸着法、スパッタリング法、及び金属薄膜を熱圧着するラミネート法が挙げられる。また2層以上の層が積層された構造の陰極を形成してもよい。
【0093】
陰極の厚さは、電気伝導度、耐久性を考慮して設定することができる。陰極の厚さは、10nm〜10μmであることが好ましく、20nm〜1μmであることがより好ましく、50nm〜500nmであることが特に好ましい。
【0094】
また陰極と他の層との間に、導電性高分子からなる層、金属酸化物、金属フッ化物、有機絶縁材料などからなる平均厚さが10nm以下の層を設けてもよい。
【0095】
(保護層)
発光素子には、素子を外部環境から保護して長期的かつ安定的に使用するために、素子形成後に、素子を保護する保護層及び/又は保護カバーを設けてもよい。
【0096】
このような保護層の材料の例としては、高分子化合物、金属酸化物、金属フッ化物、及び金属ホウ化物が挙げられる。また保護カバーの例としては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板が挙げられる。これらのうち、保護カバーの材料として、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等を用いて素子を気密に密閉することが好ましい。
【0097】
(電荷注入層)
電荷注入層の例としては、導電性高分子を含む層、電荷注入層を陽極と正孔輸送層との間に設ける場合には陽極材料と正孔輸送層に含まれる正孔輸送材料との中間の値のイオン化ポテンシャルを有する材料を含む層、及び電荷注入層を陰極と電子輸送層との間に設ける場合には陰極材料と電子輸送層に含まれる電子輸送材料との中間の値の電子親和力を有する材料を含む層が挙げられる。
【0098】
電荷注入層の材料は、電極、隣接する層の材料との関係に応じて選択すればよい。電荷注入層の材料の例としては、ポリアニリン及びその誘導体、ポリアミノフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、芳香族アミン構造を主鎖又は側鎖に含む重合体等の導電性高分子、銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン、並びにカーボンが挙げられる。
【0099】
電荷注入層の厚さは、1nm〜100nmであることが好ましく、1nm〜50nmであることがより好ましく、1nm〜10nmであることが更に好ましい。
【0100】
なお、本発明の金属複合体は、発光素子において発光層に用いることができるだけでなく、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層にも好適に用いることができる。特に、本発明の金属複合体は低い最高占有分子軌道(HOMO)レベルを有しており、かつ、正孔阻止能を有しているため、電子輸送層にも用いることができる。
【0101】
発光素子は、照明用光源、サイン用光源、バックライト用光源、ディスプレイ装置、プリンターヘッド等に用いることができる。ディスプレイ装置としては、公知の駆動回路などの駆動技術を用い、セグメント型、ドットマトリクス型等の構成とすることができる。
【0102】
本発明の金属複合体は、導電性材料としても有用であるので、電荷輸送材料、電荷注入材料としても有用である。
【実施例】
【0103】
以下、実施例を具体的に説明する。本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0104】
H−NMR及び13C−NMRスペクトルは、JEOL Model JNM−EX−270 スペクトルメーター及びJEOL Model JNM−EX−400を用いて測定した。
MSスペクトルは、SHIMADZU−GCMS−QP5050Aを用いて測定した。
FAB−MSは、日本電子製SX102A型二重収束質量分析計を用いて測定した。
薄層クロマトグラフィー(以下、TLCと略記する場合がある。)は、シリカゲルを担体として用いた。
発光スペクトルは、励起波長を380nmとして、蛍光分光光度計(日本分光株式会社製、商品名:FP−6500)により測定した。
励起寿命は、蛍光分光光度計(JOBINYVON−SPEX社製、商品名:Fluorolog−Tau3)により、発光スペクトルの発光ピーク波長における励起寿命を求めた。
イオン化ポテンシャルは、理研計器株式会社製のAC2を用いて測定した。
発光量子収率は、浜松ホトニクス社製マルチチャンネルアナライザC7473が装着された積分球を用いて測定した。
全ての合成反応は窒素気流下にて行った。
【0105】
下記化合物(B−1)及び化合物(B−2)は、特許文献1に記載の方法で合成した。
【0106】
【化10】

【0107】
<実施例1>
<[1,1−ビス(p−ブチルフェニル)−3,6−ビス(ジフェニルホスフィノ)ジチエノシロール]−塩化金:金属複合体(A−1)の合成例>
[1,1−ビス(p−ブチルフェニル)−3,6−ビス(ジフェニルホスフィノ)ジチエノシロール]−塩化金:金属複合体(A−1)の合成は、下記反応式に従って行った。
【0108】
【化11】

【0109】
滴下ロートを備えたシュレンク管に、ジメチルスルフィド金塩化物0.071g(0.24mmol)、及び、アセトン2mLを加え、そこに、アセトン2mLに溶解させた1,1−ビス(p−ブチルフェニル)−3,6−ビス(ジフェニルホスフィノ)ジチエノシロール:化合物(B−1)0.10g(0.12mmol)を室温で滴下した。室温で5時間攪拌し、沈殿の生成を確認してから、TLCで原料の消失を確認した。生成した沈殿を桐山ロートによりろ取した後、エタノールで洗浄し、エタノール−クロロホルム混合液(体積比1:1)で再結晶することで、緑色固体として金属複合体(A−1)を0.020g(収率13%)得た。
【0110】
m.p. 236.0℃.
FAB-MS m/z 1255(M+-Cl).
1H NMR(in CDCl3) δ 0.94(t,6H,J=6.77Hz,CH3),1.37(m,4H,CH2),1.60(m,4H,CH2),2.64(t,4H,J=7.72Hz,CH2-Ph),7.22(d,4H,J=7.72Hz,phenylene),7.47-7.63(m,24H),7.76(d,2H,JH-P=8.71Hz,DTS);
13C NMR(in CDCl3) δ 13.95,22.47,33.39,35.79(Bu),125.68(phenylene),128.82(phenylene),129.34(d,JP-C=11.9Hz,m-pPh),129.46(d,JP-C=65.5Hz,i-Ph),131.51(d,JP-C=60.2Hz,DTS),132.28(d,JP-C=2.2Hz,p-Ph),133.50(d,JP-C=14.1Hz,o-Ph),135.46(phenylene),142.42(d,J=14.8Hz,DTS),144.47(d,J=11.1Hz,phenylene),146.40,157.42,157.47(DTS).
Anal calcd for C52H48Au2Cl2P2S2Si:C,48.34;H,3.74.
Found:C,48.04;H,3.44.
【0111】
金属複合体(A−1)は、クロロホルム中で波長370nm付近に吸収ピークを有し、紫外線励起(波長365nm)により固体状態及びクロロホルム中で青色発光を示した。
金属複合体(A−1)は、固体状態では波長440nm付近に発光ピークを示し、クロロホルム中では波長430nm付近に発光ピークを示した。金属複合体(A−1)の発光励起寿命はクロロホルム中で3.2nsであった。金属複合体(A−1)のイオン化ポテンシャルは5.93eVであった。
【0112】
<実施例2>
<[1,1−ジフェニル−3,6−ビス(ジフェニルホスフィノ)ジチエノシロール]−塩化金(A−2)の合成例>
[1,1−ジフェニル−3,6−ビス(ジフェニルホスフィノ)ジチエノシロール]−塩化金(A−2)の合成は、下記反応式に従って行った。
【0113】
【化12】

【0114】
滴下ロートを備えた容量30mLのシュレンク管に、ジメチルスルフィド金塩化物0.049g(0.166mmol)を加え、装置内の気体をアルゴンガスで置換した後、アルゴンガスをバブリングして溶存酸素を取り除いたアセトン2mLを加えて懸濁させ、懸濁液を得た。この懸濁液に1,1−ジフェニル−3,6−ビス(ジフェニルホスフィノ)ジチエノシロール:化合物(B−2)0.059g(0.083mmol)のアセトン−ジエチルエーテル溶液を加え、室温で一晩攪拌した。生成物の沈殿をろ取し、アセトン、ヘキサンで順次に洗浄し、クロロホルム−エタノール混合液で再沈殿することで金属複合体(A−2)20mg(収率21%)を得た。
【0115】
1H-NMR(in C6D6) δ 6.830-7.114(m,20H),7.193-7.252(m,6H),7.436(dd,J=8.0 and 1.2Hz,4H,o-SiPh),7.475(d,J=8Hz,2H,thiophene ring H)
【0116】
実施例1で得られた金属複合体(A−1)、実施例2で得られた金属複合体(A−2)及び比較例として化合物(B−2)のクロロホルム中での発光量子収率及び発光ピークを測定した。結果を表1に示す。
【0117】
金属複合体(A−2)は、クロロホルム中で波長370nm付近に吸収ピークを有し、紫外線励起(波長365nm)により固体状態及びクロロホルム中で青色発光を示した。
金属複合体(A−2)は、固体状態では波長430nm付近に発光ピークを示し、クロロホルム中では波長430nm付近に発光ピークを示した。
【0118】
【表1】

【0119】
表1から明らかな通り、本発明の金属複合体(A−1)及び(A−2)は、比較例の化合物(B−2)に比して、高い発光量子収率を有していた。よって、本発明の金属複合体を発光素子の材料として用いれば、発光効率に優れた発光素子が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造を有する金属複合体。
【化1】

(式(1)中、Ar及びArは、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよく、かつ置換基を有していてもよい単環式芳香族基を表す。yは、1又は2である。Aは、直接結合、−O−で表される基、−S−で表される基、−N(R)−で表される基、−Si(R)(R)−で表される基、又は−C(R)(R)−で表される基であり、yが1である場合、Aは−O−で表される基、−S−で表される基、−N(R)−で表される基、−Si(R)(R)−で表される基、又は−C(R)(R)−で表される基を表す。yが2である場合、AはSi又はCである。R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、又は置換基を有していてもよいヘテロシクリル基を表し、RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。mは、1以上の整数である。nは、0以上の整数である。Zは、Arに直接結合している窒素原子、リン原子、ヒ素原子又はアンチモン原子を表す。Zは、Arに直接結合している窒素原子、リン原子、ヒ素原子又はアンチモン原子を表す。R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、又は置換基を有していてもよいヘテロシクリル基を表し、RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。M及びMは、それぞれ独立に、金属原子又は金属イオンを表す。L及びLは、それぞれ独立に、配位子を表す。a及びbは、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。X及びXは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基、又は対イオンを表す。XとXとは、互いに結合していてもよい。)
【請求項2】
前記yが1である、請求項1に記載の金属複合体。
【請求項3】
前記Arがチオフェン環から水素原子を(2+m)個取り除いた単環式芳香族基であり、前記Arがチオフェン環から水素原子を(2+n)個取り除いた単環式芳香族基である、請求項2に記載の金属複合体。
【請求項4】
前記Aが−Si(R)(R)−で表される基であり、かつ前記Aが直接結合である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属複合体。
【請求項5】
前記Z及び前記Zが、リン原子である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属複合体。
【請求項6】
前記M及び前記Mが、それぞれ独立に、銅、銀及び金からなる群から選ばれる金属原子又はその金属イオンである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の金属複合体。
【請求項7】
前記X及びXが、それぞれ独立に、対イオンである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の金属複合体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の金属複合体を含む層を有する発光素子。

【公開番号】特開2012−92090(P2012−92090A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209027(P2011−209027)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】