説明

金属調樹脂フィルム、および、その製造方法

【課題】 金属層の割れがなく、ヘアラインの形成された表皮層が剥離しにくい、使用性に優れた金属調樹脂フィルムを提供すること。
【解決手段】 PETフィルムから成る印刷補助フィルム(1)にアクリル系の剥離層(2)が積層され、その上にメタリックインクがグラビア印刷により印刷されて印刷層(3)が積層され、その上に、接着層(4)が積層され転写フィルム(10)が形成される。ABS等の熱可塑性フィルムから成る基板層(5)の上に、転写フィルムが接着層を下にして熱転写され、その後、印刷補助フィルムが除去されて印刷フィルム(11)が形成される。印刷フィルムの剥離層の上にアクリルフィルムから成る表皮層(6)が熱プレスラミネート法により積層される。その後、サンドペーパー等でヘアライン(6a)を形成して金属調樹脂フィルム(12)が完成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非金属製材料に表面に貼付されて当該表面に金属のような質感を与える金属調樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
非金属製材料に表面に貼付されて当該表面に金属のような質感を与える金属調樹脂フィルムが自動車、家電製品等に使用されている。
このような金属調樹脂フィルムは複数の非常に薄い層を積層して形成されるが、積層する層の種類が多く、また、積層する順序も多く、その結果、非常に多くの種類のものがある。
【0003】
例えば、特許文献1は、熱可塑性樹脂の基層の上に接着剤層を介して金属蒸着層等から成る金属層を積層し、その上に更に、接着剤層を介してヘアライン加工樹脂層を最外層に積層することを開示している。上記公報の金属調樹脂フィルムはヘアライン加工樹脂層が最外層に配置され良好な質感を得ることができる。
【0004】
上記公報のものを含めて金属調樹脂フィルムの使用に際しては、この金属調樹脂フィルムを使用する製品のサイズに合わせてカットし、真空成形または圧空成形で予備賦形をおこない、予備賦形したものを適切な治具でトリミングし、それを金型にセットして射出成形をおこなうようにされることが多い。その際、上記公報の金属調樹脂フィルムには予備賦形時に、高延伸部で金属蒸着層が割れてしまったり、予備賦形時あるいは射出成形時の熱によって接着層が脆くなりヘアライン加工樹脂層が剥離してしまうという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開平8−216334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題に鑑み、金属層の割れがなく、ヘアラインの形成された表皮層が剥離しにくい、使用性に優れた金属調樹脂フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明によれば、基材層と、基材層の上に転写されるメタリックインクの印刷層と、熱プレスラミネートで印刷層の上に積層される少なくとも一方の表面にヘアラインを有する表皮層とを具備する、ことを特徴とする金属調樹脂フィルムが提供される。
このように構成される金属調樹脂フィルムでは金属の層は基材層の上にメタリックインクの印刷層を転写することによって形成されるので割れることがない。またヘアラインを有する表皮層は熱プレスラミネートで印刷層の上に積層されるので剥離しにくい。
【0008】
請求項2の発明では表皮層は外側面にヘアラインを有するようにされ、請求項3の発明では表皮層は内側面にヘアラインを有するようにされている。
【0009】
請求項4の発明によれば、印刷補助フィルムの上に剥離層を積層し、剥離層の上にメタリックインクで印刷をおこなって印刷層を積層し、印刷層の上に接着層を積層して転写フィルムを形成するステップと、
基材層の上に前記形成された転写フィルムを接着層を下にして積層してから印刷補助フィルムを除去して基材層の上に印刷層を転写することにより印刷フィルムを形成するステップと、
前記形成された印刷フィルムの印刷層の上に、少なくとも一方の表面にヘアラインを有する表皮層を積層するステップと、を順次おこない、
剥離層の上への表皮層の積層を熱プレスラミネートでおこなう、ことを特徴とする金属調樹脂フィルムの製造方法が提供される。
このような製造方法で製造される金属調樹脂フィルムでは金属の層は基材層の上にメタリックインクの印刷層を転写することによって形成されるので割れることがない。またヘアラインを有する表皮層は熱プレスラミネートで印刷層の上に積層されるので剥離しにくい。
【0010】
請求項5の発明では、表皮層を積層してからヘアライン加工がおこなわれる。
請求項6の発明ではヘアライン加工をした表皮層が剥離層の上に積層され、請求項7の発明では、一方の面にのみヘアライン加工され、ヘアライン加工された面を外側に向けて剥離層の上に積層され、請求項8の発明では、一方の面にのみヘアライン加工され、ヘアライン加工された面を内側に向けて剥離層の上に積層される。
【0011】
請求項9の発明では、メタリックインクによる印刷はグラビア印刷とされる。
請求項10の発明では、メタリックインクはアクリル樹脂、及び、または、酢酸ビニール樹脂を含む有機系塗料に金属の薄片を混入したものとされ、請求項11の発明では金属の薄片はアルミニウムの薄片とされる。
請求項12の発明では印刷補助フィルムがPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂のフィルムとされ、請求項13の発明では基材層がABS(アクリロ二トリルブタジエンスチレン)樹脂のフィルムとされ、請求項14の発明では表皮層が透明、または、半透明のアクリル系樹脂のフィルムとされる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明の金属調樹脂フィルム、及び、請求項4の発明で製造される金属調樹脂フィルムでは金属の層は基材層の上にメタリックインクの印刷層を転写することによって形成されるので割れることがない。またヘアラインを有する表皮層は熱プレスラミネートで印刷層の上に積層されるので剥離しにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して本発明の金属調樹脂フィルムの製造方法の各実施の形態について、製造される金属調樹脂フィルムを含めて、説明する。
初めに図1を参照して第1の実施の形態について説明する。
図1の(A)の工程ではまず、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムから成る印刷補助フィルム1に、アクリル系の剥離層2が積層され、その剥離層2の上にメタリックインクがグラビア印刷により印刷されて印刷層3が積層される。そして、その上に、アクリル系、および、または、酢酸ビニール系の接着層4が積層されて転写フィルム10が作られる。
【0014】
なお、PETフィルムから成る印刷補助フィルム1の厚さは約16〜75μmとされ、剥離層2の厚さは約1〜5μmとされ、メタリックインクの印刷層3の厚さは約2〜3μmとされ、接着層4の厚さは約2〜3μmとされる。
メタリックインクはアクリル系、および、または、酢酸ビニール系をベースとした有機塗料に1μm以下の非常に薄い金属片を多量に混入したものであり、金属としてはアルミニウムが使用されることが多い。
【0015】
図1の(B)の工程では、まず、ABS等の熱可塑性フィルムから成る基板層5の上に、上記説明した図1の(A)の工程で形成された転写フィルム10が、接着層4を下にして熱転写される。そして、その後、最も上層にある印刷補助フィルム1が除去されて印刷フィルム11が作られる。この状態では、最も外側に剥離層2が配置されている。
なお、熱可塑性フィルムから成る基板層5の厚さは100〜400μmであり、熱転写の温度は120〜200℃の温度である。
【0016】
図1の(C)、(D)は上記の図1の(B)の工程で形成された印刷フィルム11の上にヘアラインを有する表皮層を積層して金属調樹脂フィルムを完成させる工程を示している。
先ず、図1の(C)の工程で、図1の(B)に示される工程で形成された印刷フィルム11の剥離層2の上に約75〜250μmのアクリルフィルムから成る表皮層6が150〜200℃の温度で熱プレスラミネート法により積層される。その後、図1の(D)の工程において表皮層6の表面にサンドペーパー等で3〜5μmの深さの引っ掻き傷を作りヘアライン6aを形成して金属調樹脂フィルム12が完成する。
【0017】
上述の第1の実施の形態では、金属調樹脂フィルム12は、金属の蒸着ではなく非常に薄い金属片を含有したメタリックインクの印刷によって金属調の層を積層している。したがって、予備賦形等において大きく曲げられても蒸着により形成された金属の層のように割れが発生することがない。また、ヘアライン6aが形成される表皮層6を印刷フィルム11の上に積層するに際して熱プレスラミネート法が用いられ強く密着されているために剥離が発生しない。
【0018】
図2は第2の実施の形態の製造方法による金属調樹脂フィルムの製造方法を示す図であって、図2の(A)、(B)は、図1の(A)、(B)と全く同じであるが、その後、図2の(C)の工程で、予めヘアライン6aが形成された表皮層6’を(B)に示される工程で形成された印刷フィルム11の剥離層2の上に、ヘアライン6aが外側になるようにして、熱プレスラミネート法により積層される点が異なる。
この第2の実施の形態の製造方法で作られる金属調樹脂フィルムも第1の実施の形態の製造方法で作られる金属調樹脂フィルムと同様の利点を有する。
【0019】
図3は第3の実施の形態の製造方法による金属調樹脂フィルムの製造方法を示す図であって、図3の(A)、(B)は、図2の(A)、(B)と全く同じであるが、その後、図3の(C)の工程で、予めヘアライン6aが形成された表皮層6’を(B)に示される工程で形成された印刷フィルム11の剥離層2の上に、ヘアライン6aが内側になるようにして、熱プレスラミネート法により積層される点が異なる。
この第3の実施の形態の製造方法で作られる金属調樹脂フィルムも第1の実施の形態の製造方法で作られる金属調樹脂フィルムと同様の利点を有するが、さらに、ヘアライン6aが外側に露出していないので経時的に美観が劣化することが少ない。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、自動車部品、家電製品等に使用される金属調樹脂フィルムに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施の形態の金属調樹脂フィルムの製法を説明する図である。
【図2】第2実施の形態の金属調樹脂フィルムの製法を説明する図である。
【図3】第2実施の形態の金属調樹脂フィルムの製法を説明する図である。
【符号の説明】
【0022】
1 印刷補助フィルム(PET)
2 剥離層
3 印刷層(メタリックインク)
4 接着層
5 基板層(ABS)
6、6’ 表皮層(アクリルフィルム)
6a ヘアライン
10 転写フィルム
11 印刷フィルム
12 金属調樹脂フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、基材層の上に転写されるメタリックインクの印刷層と、熱プレスラミネートで印刷層の上に積層される少なくとも一方の表面にヘアラインを有する表皮層とを具備する、ことを特徴とする金属調樹脂フィルム。
【請求項2】
表皮層は外側面にヘアラインを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の金属調樹脂フィルム。
【請求項3】
表皮層は内側面にヘアラインを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の金属調樹脂フィルム。
【請求項4】
印刷補助フィルムの上に剥離層を積層し、剥離層の上にメタリックインクで印刷をおこなって印刷層を積層し、印刷層の上に接着層を積層して転写フィルムを形成するステップと、
基材層の上に前記形成された転写フィルムを接着層を下にして積層してから印刷補助フィルムを除去して基材層の上に印刷層を転写することにより印刷フィルムを形成するステップと、
前記形成された印刷フィルムの印刷層の上に、少なくとも一方の表面にヘアラインを有する表皮層を積層するステップと、を順次おこない、
剥離層の上への表皮層の積層を熱プレスラミネートでおこなう、ことを特徴とする金属調樹脂フィルムの製造方法。
【請求項5】
表皮層を積層してからヘアライン加工をおこなう、ことを特徴とする請求項4に記載の金属調樹脂フィルムの製造方法。
【請求項6】
ヘアライン加工をした表皮層を剥離層の上に積層する、ことを特徴とする請求項4に記載の金属調樹脂フィルムの製造方法。
【請求項7】
一方の面にのみヘアライン加工をし、ヘアライン加工をした面を外側に向けて剥離層の上に積層する、ことを特徴とする請求項6に記載の金属調樹脂フィルムの製造方法。
【請求項8】
一方の面にのみヘアライン加工をし、ヘアライン加工をした面を内側に向けて剥離層の上に積層する、ことを特徴とする請求項6に記載の金属調樹脂フィルムの製造方法。
【請求項9】
メタリックインクによる印刷はグラビア印刷である、ことを特徴とする請求項1に記載の金属調樹脂フィルムの製造方法。
【請求項10】
メタリックインクはアクリル樹脂、及び、または、酢酸ビニール樹脂を含む有機系塗料に金属の薄片を混入したものである、ことを特徴とする請求項1に記載の金属調樹脂フィルムの製造方法。
【請求項11】
金属の薄片はアルミニウムの薄片である、ことを特徴とする請求項10に記載の金属調樹脂フィルムの製造方法。
【請求項12】
印刷補助フィルムがPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂のフィルムである、ことを特徴とする請求項1に記載の金属調樹脂フィルムの製造方法。
【請求項13】
基材層がABS(アクリロ二トリルブタジエンスチレン)樹脂のフィルムである、ことを特徴とする請求項1に記載の金属調樹脂フィルムの製造方法。
【請求項14】
表皮層が透明、または、半透明のアクリル系樹脂のフィルムである、ことを特徴とする請求項1に記載の金属調樹脂フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−123390(P2006−123390A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−315674(P2004−315674)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】