説明

金属連続体の溶融浸漬被覆装置

本発明は、金属連続体1が溶融した被覆金属2を収容する容器3とこの容器の手前に接続配置された案内通路4とを通って垂直に案内され、被覆金属2を容器3内に保持するために電磁界を発生するための少なくとも2個のインダクタ5が金属連続体1の両側において案内通路の範囲内に配置され、被覆金属2の拡大容積部が一部区間に設けられている、金属連続体1、特に帯鋼を溶融浸漬被覆するための装置に関する。被覆浴を静止するために、本発明に従い、拡大容積部がインダクタ5の磁界の範囲内に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属連続体が溶融した被覆金属を収容する容器とこの容器の手前に接続配置された案内通路とを通って垂直に案内され、被覆金属を容器内に保持するために電磁界を発生するための少なくとも2個のインダクタが金属連続体の両側において案内通路の範囲内に配置され、被覆金属の拡大容積部が設けられている、金属連続体、特に帯鋼を溶融浸漬被覆するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような装置は先の独国特許出願(2004年7月8日出願の特許文献1)の対象となっている。前提部分に基づくこの先願の発明の根底をなす課題は、この先願に記載された従来技術、特に特許文献2、特許文献3および特許文献4の若干の欠点を克服した、金属連続体を溶融浸漬被覆するための装置を提供することである。電磁的な閉鎖を行う場合に浸漬浴を静止したままにすべきである。それによって、被覆の質が高められる。被覆金属の浴表面が比較的によく動くことが分かった。これは磁気閉鎖による電磁力に起因すると考えられる。しかしながら、静止した金属浴表面は、被覆厚さの正確な調節のために必須である。
【0003】
そのために、先願の提案では特に、案内通路と容器の底の間あるいは案内通路自身内に、横断面拡大部が設けられ、被覆金属が上側からこの横断面拡大部内に侵入可能である。従って、この横断面拡大部は、最後に述べられている実施形態では、案内通路の範囲内で被覆金属の拡大容積部を生じ、本発明の出発点を形成する。
【特許文献1】独国特許出願第103 30 656.0号明細書
【特許文献2】欧州特許第 0 673 444 B1号明細書
【特許文献3】国際公開第96/03533号パンフレット
【特許文献4】特開平5−86446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の根底をなす課題は、電磁閉鎖を行う場合に浸漬浴を静止したままにし、それによって被覆の質を高める他の手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は本発明に従い、拡大容積部がインダクタの磁界の範囲内に設けられていることによって解決される。
【0006】
先願では、被覆金属の拡大容積部が容器の底範囲内かあるいは案内通路内において、インダクタの上方に設けられている。従って、拡大容積部は少なくとも大部分がほぼインダクタの有効磁界の外側に設けられている。これに対して、本発明では、拡大容積部がインダクタの磁界の範囲内に設けられている。それによって、拡大容積部を有する範囲は磁界の影響にさらされる。
【0007】
本発明の有利な実施形態では、拡大容積部がインダクタの上側の半分から上側の3分の1の範囲内に設けられている。
【0008】
拡大容積部を形成するために、本発明は異なる複数の手段を提供する。第1の実施形態では、拡大容積部が、上方へ漏斗状に広がる、案内通路の壁の幅によって形成されている。この構造は、案内通路が別個の交換可能な管片として形成されていると、きわめて少ないコストで実現可能であるかあるいは後付け可能である。
【0009】
拡大容積部が、段状に側方へ広がる、案内通路の壁の幅によって形成されている第2の実施形態には、上記と同じ利点がある。
【0010】
第2の実施形態の継続形態では、拡大部内において上側のインダクタエッジの近くに、各々1つの壁中断部が配置されている。この壁中断部は金属浴またはその表面を一層鎮静化する。
【0011】
第2の実施形態の発展形態では、壁中断部が特別に形成され、特に壁中断部下側エッジまたは上側エッジまたは両エッジが角ばっているかまたは少なくとも1個所斜めに形成されているかまたは円錐状であるかまたは丸められている。
【0012】
さらに、壁中断部が導電性であるかまたは非導電性である。材料としては例えばセラミックスまたは溶融被覆金属の温度または攻撃性に耐える他の材料が望ましい。
【0013】
本発明の第3の実施形態では、拡大容積部が案内通路の壁の側方の膨らみ部によって形成されている。この場合にも、案内通路を交換することによって、少ないコストで後付けを行うことができる。
【0014】
本発明の第4の実施形態では、上記の横断面拡大部の代わりにあるいは付加して、拡大容積部が付加的な被覆金属の側方供給部によって形成されている。この場合、案内通路内に付加的に案内される被覆金属の流量が、場合によっては付加的な容積増大をもたらす。
【0015】
第4の実施形態の継続形態では、側方の供給が少なくとも2本の管によって行われ、この管が好ましくは長方形の案内通路の短辺に開口していることによって、効果的な容積増大が達成される。
【0016】
提案した手段によって、被覆金属からなる浴の表面が容器内で比較的静かであるので、高い品質の浸漬被覆が達成される。
【0017】
図には本発明の実施形態が示してある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1に一部を示した装置の場合、帯鋼の形をした被覆すべき金属連続体1は、溶液状の被覆金属2を通って、好ましくは上方へ、すなわち搬送方向Rへ引き抜かれる。被覆金属2は特に亜鉛またはアルミニウムであり、示唆した適当な容器3内に気密密閉して収容されている。
【0019】
容器3の底3aには、金属連続体1のための通過穴3bが設けられている。底3aの通過穴3bの下側には、ほぼ狭い長方形の管の形をした案内通路4が接続している。帯状の金属連続体1は四方に遊びをもって案内通路4を案内される。この場合、環状隙間RSの形をした案内通路4の空いた横断面には、ある垂直区間にわたって、被覆金属2が充填されている。従って、金属連続体1は案内通路4の上側範囲4aにおいて被覆金属2によって取り囲まれている。それによって、被覆金属2は上側範囲4aにおいて一種の液体環状シールの働きをする。この環状シールは環状隙間RS内に下側に向かってUまで充填されている。
【0020】
この環状シールのシール作用を保証するために、すなわち案内通路4内で環状隙間RSの下側を持続的に確実にシールするために、案内通路4の縦方向壁6の両側にインダクタ5が配置されている。このインダクタ5は案内通路4の範囲内に強い磁界を発生する。この磁界は環状の被覆金属2の重力に逆らい、それによって被覆金属2が案内通路4から下方に流出せず、ほぼ箇所Uにとどまる。
【0021】
図1に示した遊び、ひいては環状隙間RSは明瞭に示すために非常に拡大してあり、縮尺通りに示していない。案内通路4の上側範囲4a内で環状シールとして作用する環状の被覆金属2の容積は実際は非常に小さくすることができる。
【0022】
インダクタ5の種類とその作用並びに図示していない補正コイルの使用および装置の他の特徴は、上記の先の独国特許出願に詳細に記載されている。
【0023】
容器内の浴表面を鎮静化するために、インダクタ5の磁界の範囲内に、特にインダクタ5のすぐ隣において案内通路4内に、被覆金属2の増大した容積が設けられている。
【0024】
そのために、図1に示した本発明の第1の実施形態では、底3aの通過穴3bに開口する案内通路4の上側範囲4aが、漏斗状に広がっている。これは、縦壁6の下側範囲B1が上側に向かってB2まで大きくなっていることによって達成される。これによって生じる狭い横壁7の傾斜は垂線に対して鋭角をなし、この角度は約1〜15°である。
【0025】
案内通路4の縦壁6の拡張部、ひいては範囲4aは下側において、インダクタ5の高さHの約半分の高さH/2のところから始まり、高さHを越えるまで延在しており、それによって容器3の底3aの長方形の通過穴3bの縦辺に接続している。被覆金属の容積は環状隙間RSの範囲においてしかも金属連続体1の狭い横辺で増大する。
【0026】
案内通路4の上記の漏斗状形成と、インダクタ5の磁界に対する案内通路の空間的な付設とによって、磁界によって生じる、溶液状被覆金属2の流れの乱れが、きわめて少なくなり、特に溶融浴の表面が鎮静化される。
【0027】
次のすべての図において、同じ部分には、添字を付けた同じ参照符号が用いられている。図2には本発明の第2の実施形態が示してある。この第2の実施形態では、被覆金属2の容積増大は案内通路4′の段状に拡大した範囲4a′によって行われる。そのために、縦壁6′は下側の幅B1′から上側の幅B2′へ段状に拡大し、それによって底3a′の通過穴3b′に開口する段状の範囲4a′を形成している。
【0028】
案内通路4′ひいては範囲4a′の縦壁6′の段状拡大部は下側において、インダクタ5の高さHの半分の高さH/2に対して間隔Xをおいたところで、ひいては高さHの上側の約3分の1(H/3)、高さHの約半分の高さH/2のところで開始され、そして高さHを越えるまで延在し、それによって容器3′の底3a′の長方形の通過穴3b′の縦辺に接続している。
【0029】
段状範囲4a′の作用とその配置は、図1に関連して説明した範囲4aの漏斗状形状の作用および配置と同一である。
【0030】
図3には、本発明の第3の実施形態が示してある。この第3の実施形態は次の点を除いて図2の形状とほぼ同じである。
【0031】
区間4a′内において上側のインダクタエッジ8の近くに、各々1つの垂直な壁中断部9が配置されている。この壁中断部9は流れ案内および浴接触の働きをし、特に先の特許出願に詳しく記載した手段と協働する。
【0032】
図4〜図7には、壁中断部9,9′,9″,9″′の断面形状の例が示してある。壁中断9〜9″′は適当な導電性材料または非導電性材料、特に金属またはセラミックスからなり、横断面が四角形のように角ばっていて、1個所または2個所が斜めに、特に垂線に対して15〜60°の角度で切断されているかまたは15〜60°の角度をなし、上方および/または下方が円錐状または漏斗状に丸められている。
【0033】
図8には、本発明の第4の実施形態が、図1と同様に、しかし金属連続体1に対して横向きに中央を切断して示してある。案内通路4″はインダクタ5の高さHの上側半分H/2の高さに、縦壁6″の側方のほぼ球状の膨らみ部10を有し、それによって金属連続体1の縦辺で環状隙間内の被覆金属2の容積を拡大している。
【0034】
図9には、本発明の第5の実施形態が図1と同様に示してある。この実施形態は被覆金属2″′を側方から案内通路4″′に供給する構造となっている。供給は2本の管11を経て行われる。この管はインダクタ5の高さHの半分の高さH/2位置で案内通路4″′にほぼ水平に開口し、そこで実質的に環状隙間全体にわたって被覆金属2″′の容積を拡大している。管11を経て行われる側方供給とその配置構造の有利な作用は、図1に関連して説明した範囲4aの漏斗状の形状および配置構造の有利な作用と同じである。
【0035】
既に述べたように、本発明の上記の異なる手段を互いにおよび先の特許出願で提案した手段と組み合わせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】溶融浸漬被覆のための装置の下側部分を概略的に示す図であり、この装置を通って金属連続体が案内され、この金属連続体に沿って中央を切断して示している。被覆金属のための容器の底の範囲と、その下側に接続する、インダクタを備えた案内通路とが示してあり、本発明の第1の実施形態に従って案内通路は漏斗状に拡大した形をしている。
【図2】案内通路が側方に段状に拡大した形をしている本発明の第2実施形態を示す、図1と同様な図である。
【図3】壁中断部を有する本発明の第3の実施形態を示す、図1と同様な図である。
【図4】図3の壁中断部の第1の横断面形状を示す図である。
【図5】図3の壁中断部の第2の横断面形状を示す図である。
【図6】図3の壁中断部の第3の横断面形状を示す図である。
【図7】図3の壁中断部の第4の横断面形状を示す図である。
【図8】膨らみ部の形をしている本発明の第4の実施形態を示す、図1と同様な図であるが、金属連続体に対して横向きに中央を切断した図である。
【図9】被覆金属を側方から案内通路に供給する形をした本発明の第5の実施形態を示す、図1と同様な図である。
【符号の説明】
【0037】
1 金属連続体
1′ 金属連続体
1″ 金属連続体
1″′ 金属連続体
2 被覆金属
2′ 被覆金属
2″ 被覆金属
2″′ 被覆金属
3 容器
3′ 容器
3″ 容器
3″′ 容器
3a 底
3a′ 底
3a″ 底
3a″′ 底
3b 通過穴
3b′ 通過穴
3b″ 通過穴
3b″′ 通過穴
4 案内通路
4′ 案内通路
4″ 案内通路
4″′ 案内通路
4a 範囲
4a′ 範囲
4a″ 範囲
4a″′ 範囲
5 インダクタ
6 縦壁
6′ 縦壁
6″ 縦壁
6″′ 縦壁
7 横壁
8 上側のインダクタエッジ
9 壁中断部
10 膨らみ部
11 管
B1 下側の幅
B1′ 下側の幅
B2 上側の幅
B2′ 上側の幅
H 高さ
H/2 半分の高さ
H/3 3分の1の高さ
R 搬送方向
RS 環状隙間
U 下端
V 容積
X 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属連続体(1,1′,1″,1″′)が溶融した被覆金属(2,2′,2″,2″′)を収容する容器(3,3′,3″,3″′)とこの容器の手前に接続配置された案内通路(4,4′,4″,4″′)とを通って垂直に案内され、被覆金属(2,2′,2″,2″′)を容器(3,3′,3″,3″′)内に保持するために電磁界を発生するための少なくとも2個のインダクタ(5)が金属連続体(1,1′,1″,1″′)の両側において案内通路の範囲内に配置され、被覆金属(2,2′,2″,2″′)の拡大容積部が一部区間(4a,4a′,4a″,4a″′)に設けられている、金属連続体(1,1′,1″,1″′)、特に帯鋼を溶融浸漬被覆するための装置において、
拡大容積部がインダクタ(5)の磁界の範囲内に配置されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
拡大容積部がインダクタ(5)の上側の半分(H/2)から上側の3分の1(H/3)の範囲内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
拡大容積部が、上方へ漏斗状に広がる、案内通路(4)の壁(6)の幅(B1,B2)によって生じることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
拡大容積部が、段状に側方へ広がる、案内通路(4′)の壁(6′)の幅(B1′,B2′)によって生じることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項5】
拡大部内において上側のインダクタエッジ(8)の近くに、各々1つの壁中断部(9)が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
壁中断部(9,9′,9″,9″′)の横断面が角ばっているかまたは少なくとも1個所斜めに形成されているかまたは円錐状であるかまたは丸められていることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
壁中断部(9,9′,9″,9″′)が導電性であるかまたは非導電性であることを特徴とする請求項5または6に記載の装置。
【請求項8】
拡大容積部が案内通路(4″)の壁(6″)の側方の膨らみ部(10)によって生じることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項9】
拡大容積部が付加的な被覆金属(2″′)の側方供給部によって生じることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
側方の供給が少なくとも2本の管(11)によって行われることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
案内通路(4″′)が長方形の横断面を有していることと、各々の短辺に少なくとも1本の管(11)が開口していることを特徴とする請求項10に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−545062(P2008−545062A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518708(P2008−518708)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006236
【国際公開番号】WO2007/003315
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(390035426)エス・エム・エス・デマーク・アクチエンゲゼルシャフト (320)
【Fターム(参考)】