金属部材の接合方法、および接合金属部材ユニット
【課題】一方の金属部材を他方部材に接合しても、長期にわたって接合の信頼性を得る金属部材の接合方法及び接合金属部材ユニットをもたらす。
【解決手段】平面視で平行状の対向2辺を有したリッド3をパッケージ本体2に接合する際に、前記対向2辺で、各辺の中央付近から当該辺の一方の端部ア、エまでローラー電極4、4を通電しつつ押圧移動して接合A1、A1を行う一端方向接合工程と、各辺の前記中央付近から当該辺に沿って前記移動の方向とは反対方向の他方の端部イ、ウまでローラー電極4、4を通電しつつ押圧移動して接合A2、A2を行う他端方向接合工程とを行う。
【解決手段】平面視で平行状の対向2辺を有したリッド3をパッケージ本体2に接合する際に、前記対向2辺で、各辺の中央付近から当該辺の一方の端部ア、エまでローラー電極4、4を通電しつつ押圧移動して接合A1、A1を行う一端方向接合工程と、各辺の前記中央付近から当該辺に沿って前記移動の方向とは反対方向の他方の端部イ、ウまでローラー電極4、4を通電しつつ押圧移動して接合A2、A2を行う他端方向接合工程とを行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部材の接合方法、および接合金属部材ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体装置などの電子部品をセラミック等のパッケージ本体内に実装し、同パッケージ本体を金属のリッド(蓋部材)で封止するパッケージが知られている。
このリッドをパッケージ本体に接合するためには、特許文献1に開示されているように矩形状のリッドの一対の対向する2長辺に一対のローラー電極を圧接させ両ローラー電極間に接合用電流を流しジュール熱によりリッドをパッケージ本体との間に配置した金属接合材を溶融させてリッドをパッケージ本体に接合している。
【0003】
この場合、特許文献1の図6に図示されているように、リッドの前記長辺側の2辺各々の一端に一対のローラー電極を加圧した条件下で接触させ、この状態でパッケージをステージとともに長辺方向(矢印アの方向)、即ち前記長辺の一端から他端に向かう方向に移動させ、その際にローラー電極同士に通電を行いジュール熱によりろう材を溶融して前記長辺側2辺においてリッドをパッケージに接合し、次に短辺側2辺においても同様に接合するリッドの接合方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−114710号公報(特許請求の範囲、[0001]、[0005]、[0006]、図6等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記のように従来から行われているリッドの接合方法について、図17〜図19に基づいて、詳細に説明する。
図17は、上記接合方法の接合順序を詳述したリッド803の平面図である。
図17において、長辺アーイのほぼ中間点オと長辺エーウのほぼ中間点カは、リッド803を仮止めしておく位置である。
この仮止めは、一対のローラー電極各々を上記中間点オとカに圧接させた状態で両ローラー電極に通電することにより行われる。上記通電により、リッド803とパッケージ本体(図示省略)との間に配置したろう材が溶け出して両者を接合するものである。
【0006】
図17のA、Aは、リッド803の各長辺アーイ及びエーウに一対のローラー電極(図示省略)各々を圧接させて、各長辺においてローラー電極が相対的に移動する移動軌跡及びその方向を示したものである。
ローラー電極の移動軌跡A、Aがリッドの各長辺の一端ア、エに始まり他端イ、ウで終了している。従って、ローラー電極は、リッド803の各長辺の一端ア、エに始まり他端イ、ウまで、リッドの各長辺を圧接している。この際に、両ローラー電極間に接合用電流を通電しているため、ジュール熱により金属接合材が溶融しリッドをパッケージ本体に接合するものである。
この場合、リッド803の各長辺が加熱された温度は、図18に図示されているように、一端アから他端イに向かって高温に加熱され、同時に、一端エから他端ウに向かって高温に加熱される。図18のAT、ATは、長辺各々におけるリッド803の表面温度を示す温度グラフである。図18の左側の温度グラフATは、長辺アーイを基準線として右側に行くほど高い温度となるように図示されている。図18の右側の温度グラフATは、長辺エーウを基準線として左側に行くほど高い温度となるように図示されている。
【0007】
上記のようにローラー電極がリッド803の各長辺の一端ア、エに始まり他端イ、ウまでリッド803の各長辺を圧接・通電した後、直ちに、リッド及びパッケージを90度回転させて、リッド803の各短辺を接合する。この場合、作業性向上を図るため2長辺の接合によるリッド803の温度が低下しきらないうちに2短辺の接合が行われる。
この接合方向は、図17において、リッド803の各短辺に一対のローラー電極各々を圧接させて、各短辺においてローラー電極が相対的に移動する移動軌跡及びその方向がB、Bに図示されている。即ち、ローラー電極の移動軌跡及びその方向B、Bは、リッド803の各短辺の一端ア、イで始まり他端エ、ウで終了している。従って、ローラー電極は、リッド803の各短辺の一端ア、イで始まり他端エ、ウまで、リッド803の2短辺を圧接しており、同時に両ローラー電極間に接合用電流が通電している。このため、ジュール熱により金属接合材を溶融させてリッド803をパッケージ本体に接合するものである。
この場合、リッド803の各短辺が加熱された温度は、図18に図示されているように、一端アから他端エに向かって高温に加熱され、同時に、一端イから他端ウに向かって高温に加熱される。図18のBT、BTは、短辺各々におけるリッド803の表面温度を示す温度グラフである。図18の上側の温度グラフBTは、短辺アーエを基準線として下側に行くほど高い温度となるように図示されている。図18の下側の温度グラフBTは、短辺イーウを基準線として上側に行くほど高い温度となるように図示されている。
以上にして、リッド803の長辺側2辺と短辺側2辺とがパッケージ本体に接合される。
【0008】
ここで、長辺側2辺の接合及び短辺側2辺の接合により、リッド803の各辺の表面温度は、長辺側2辺の加熱と短辺側2辺の加熱とが互いに影響し合った温度状態となる。
そこで、各端部ア、イ、ウ、エ付近の表面温度は、図18で図示されているように、端部ア付近では、温度グラフATとBTのように加熱開始時のため低温であり、端部ウ付近では長辺エーウの温度グラフATのほぼ最高温度と短辺イーウの温度グラフBTの最高温度とがほぼ重ね合わせされるため最高重ね合わせ温度となっている。
端部イでは、長辺アーイの温度グラフATが最高高温であるが短辺イーウの温度グラフBTが低温であるので、重ね合わせ温度は端部アの重ね合わせ温度と端部ウの重ね合わせ温度の中間温度となる。同様に、端部エでは、長辺エーウの温度グラフATが低温であり 短辺アーエの温度グラフBTが高温であるので、重ね合わせ温度は端部アの重ね合わせ温度と端部ウの重ね合わせ温度の中間温度となる。
【0009】
従って、端部アでは、リッド803の膨張は少なく常温まで冷却された際の収縮も少ない。端部ウでは、リッドの膨張量Pウ(実線の矢印)は最も大きくなり、常温まで冷却された際の収縮量Qウ(鎖線の矢印)も最も大きくなる。端部イとエでは、リッド803の膨張量Pイ、Pエは中間であって常温まで冷却された際の収縮量Qイ、Qエも中間である。
このため、常温まで冷却された通常使用状態では、端部ウにおいて最大の収縮量Qウに見合った大きな収縮力(鎖線の矢印方向)がリッドに働いており、それが内部応力となる。従って、リッド803とパッケージ本体との接合部に上記内部応力が働き、リッド803は、端部ウ付近で亀裂や接合破壊を発生させる可能性がありパッケージの機密性を損ねてしまいかねない。この現象は、時間が経過するほど発生しやすい。
一方、端部アにおいては、加熱温度が低く、それに伴って接合力が小さくなりやすく、パッケージの機密性を損ねやすい。
【0010】
一方、図19に図示されたように、リッド903内にガラス板904を圧入保持させたタイプがある。
リッド903の平面形状はほぼ正方形であり、ガラス板904の外形形状は、ほぼ円形である。
このリッド903をパッケージ本体に接合するにあたり、図17と同様の接合方法で行っている。
即ち、一対のローラー電極を、上記のように通電しながらリッド903の対向する各辺の一端ア及びエから他端イ及びウに向けて移動軌跡A、Aのように移動させる。次にパッケージを90度回転させて、一対のローラー電極を通電しながらリッド903の他の対向する各辺の一端ア及びイから他端エ及びウに向けて移動軌跡B、Bのように移動させる。従って、リッド903の各辺は、前述のろう材が溶融してパッケージに接合されるのである。
【0011】
しかるに、前述のように端部ウでの収縮力が大きくなり、常温使用時ではリッド903に損傷をもたらせてしまう。
しかも円形のガラス板904とリッド903の辺との間隔が周囲より最も狭くなっているリッド903の各幅狭部位置オ、カ及びキ、クでは、もともとガラス板904の圧入により各幅狭部位置オ、カ及びキ、クに生じている圧入応力に加え、上記ローラー電極による加熱による膨張の後の冷却による収縮力が加わるので、幅狭部位置オ、カ及びキ、クには一層の内部応力が生じてしまう。従って、長期使用後には、幅狭部位置オ、カ及びキ、クに亀裂や破壊が生じパッケージの気密性が損なわれる可能性がある。
【0012】
本発明は、上記課題を解消するものであり、一方の金属部材を他方部材に接合しても、長期にわたって接合の信頼性を得る金属部材の接合方法及び接合金属部材ユニットをもたらすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明実施態様1の金属部材の接合方法は、平面視で平行状の対向2辺を有した一方金属部材を他方部材に接合するにあたり、前記一方金属部材の前記対向2辺の各々において、各辺の中央付近から当該辺に沿った一方の端部の付近までローラー電極を押圧移動させ、その際、各辺のローラー電極同士を前記一方金属部材を介して通電させて前記一方金属部材と前記他方部材とを接合する一端方向接合工程と、各辺の前記中央付近から当該辺に沿って前記一方とは反対方向にある他方の端部の付近までローラー電極を押圧移動させ、その際、各辺のローラー電極同士を前記一方金属部材を介して通電させて前記一方金属部材と前記他方部材とを接合する他端方向接合工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
上記本発明実施態様1の構成によれば、次のような作用効果を有する。
上記各々の接合工程は、対向2辺において、各々の中点付近の接合開始位置から一方の端部と他方の端部の終点位置まで各々加熱しながら行うので、従来の図17の各辺の一方の端部の接合開始位置から他方の端部の終点位置まで連続して行う場合に比べ、接合開始位置から各々の終点位置までの距離が短くなり、従って各々の終点位置での一方金属部材の温度は従来のように高温になりすぎることがない。
従って、各々の終点位置(端部)では、加熱による一方金属部材の膨張量と冷却による収縮量が小さくなって内部応力が減少する。当然ながら対向2辺の全体でも上記膨張量と収縮量が小さく内部応力が減少する。このため、一方金属部材において、前記端部はもとより対向辺全体での亀裂や破壊は防止される。加えて、他方部材でも同様に、接合される端部はもとより接合辺全域で上記内部応力は小さくなり、亀裂や破壊は防止される。
【0015】
一方、従来の図17の端部アのように、接合Aと接合Bが開始される端部はほとんど加熱されず低温のために接合が不安定になりやすいが、本発明の実施態様1は、前述のように各々の辺の中点付近の接合開始位置から一方の端部と他方の端部の終点位置まで各々加熱するので、上記一方の端部と他方の端部では程よく高温に加熱されるものである。よって前述の各端部の接合が安定するものである。
このため、一方金属部材と他方部材を採用した本発明の接合により、良好な接合状態が長期にわたって維持されるものである。
なお、対向2辺の各々の中点付近の接合開始位置での加熱温度が低すぎる場合には、接合開始から所定時間までは、前記一対のローラー電極の移動速度を低速にする、あるいはローラー電極同士に通電する接合用電流の電力をアップする等の加熱温度上昇方法を採用することも可能である。
また上記2辺が平行状とは、ほぼ平行に配置されていればよい。その場合、上記2辺は、直線同士の場合だけでなく、少なくとも一方の辺が円弧状、蛇行状であってもよい。
【0016】
なお、本実施態様では、一方金属部材と他方部材の平面視形状が矩形状である場合に、一方金属部材の上記矩形状の前記対向2辺において、一端方向接合工程と他端方向接合工程を前述のように行い、前記対向2辺とは異なる(ほぼ直交する)第2対向2辺でも一端方向接合工程と他端方向接合工程を前述のように行うことが好ましい。ただし、一方金属部材の前記対向2辺においては一端方向接合工程と他端方向接合工程を前述のように行うが、前記第2対向2辺では、図17の接合B、Bのように各辺の一端から他端まで一対のローラー電極を前述のように通電させながら押圧移動させて一方金属部材と他方部材を接合するようにしてもよい。その場合は、前記対向2辺においては一端方向接合工程と他端方向接合工程を前述のように行うことに伴う前述の作用効果がもたらされる。
【0017】
本発明実施態様2の金属部材の接合方法は、実施態様1の金属部材の接合方法であって、 前記他端方向接合工程の接合開始位置は、前記一端方向接合工程の接合開始位置より前記一端側に近づいており、各辺の前記中央付近では前記一端方向接合工程と他端方向接合工程の両接合が行われることを特徴とする。
【0018】
上記本発明実施態様2の構成によれば、次の様な作用効果を有する。
各辺の中点付近では、一端方向接合工程での接合と他端方向接合工程での接合の両者が重なって行われる。この場合、両接合が重なって行われる部分は上記各接合が開始される付近であり、この接合開始位置付近は加熱温度が比較的低いのであるが、両者の接合工程での加熱温度が重なることになる。即ち、一端方向接合工程での接合開始による加熱温度が冷め切らないうちに他端方向接合工程での接合が開始されるものであるから、それらの加熱温度がほぼ重ね合わせされた温度になり、接合にふさわしい温度を得ることができるものである。従って、各辺の両接合工程が重なって行われる部分は、良好な接合が行われることになる。
【0019】
本発明実施態様3の金属部材の接合方法は、実施態様1から実施態様2のうちいずれかに記載された金属部材の接合方法であって、前記一方金属部材及び他方部材は平面視で略矩形に形成され、前記対向2辺にほぼ直交して平行状の第2対向2辺が形成されており、前記第2対向2辺においても前記一端方向接合工程と前記他端方向接合工程とを行うことを特徴とする。
【0020】
上記本発明実施態様3の構成によれば、前記一方金属部材及び他方部材は略矩形に形成されている場合に、前記対向2辺に前記一端方向接合工程と他端方向接合工程とを行うとともに、第2対向2辺でも前記一端方向接合工程と他端方向接合工程とを行うため、第2対向2辺でも前記一端方向接合工程と他端方向接合工程とを行う前述の作用効果を有することができる。
加えて、前記対向2辺において前記一端方向接合工程と他端方向接合工程を行う作業を総称して一方の対向辺接合工程と称し、前記第2対向2辺において前記一端方向接合工程と他端方向接合工程を行う作業を総称して他方の対向辺接合工程と称すると、一方の対向辺接合工程により加熱された各4つの端部(コーナー部)の温度と、前記他方の対向辺接合工程により加熱された各4つの端部(コーナー部)の温度とは、前述のように各々の工程で高温になりすぎないことから両温度が重なった重ね合わせ温度は、前記一方金属部材と他方部材との良好な接合を図る上で最適な温度とすることができ、また各4つの端部の重ね合わせ温度がほぼ一定となる。従って、一方金属部材及び他方部材の膨張量及び常温への冷却による収縮量にバラツキが少なくなり、このため内部応力が小さく且つバラツキも少ない。このため、略矩形の全辺において前記一方金属部材と他方部材との接合が良好に行われるとともに、一方金属部材及び他方部材の亀裂や破壊の発生がなく、上記接合を長期にわたって安定させることができる。
【0021】
本発明実施態様4の金属部材の接合方法は、実施態様3に記載された金属部材の接合方法であって、前記対向2辺での前記一端方向接合工程と前記他端方向接合工程の前に、前記第2対向2辺において前記ローラー電極同士を前記第2対向2辺の所定位置に停止させ前記ローラー電極同士を前記一方金属部材を介して通電させて前記一方金属部材と前記他方部材とを仮接合する仮止め接合工程を行い、しかる後、前記対向2辺において前記一端方向接合工程と前記他端方向接合工程とを行い、この後、前記第2対向2辺において前記一端方向接合工程と前記他端方向接合工程とを行うことを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、前記対向2辺での前記一端方向接合工程と前記他端方向接合工程の前に、前記対向2辺とは異なる前記第2対向2辺で仮止め接合が行われるので、前記一端方向接合工程と前記他端方向接合工程による加熱が上記仮接合部に伝達しにくくなり、仮接合により一方金属部材を他方部材に確実に位置決めしたまま前記一端方向接合工程及び前記他端方向接合工程を行うことが出来、一方金属部材をより正しい位置で他方部材に接合することが出来る。
【0023】
本発明実施態様5の金属部材の接合方法は、実施態様1から実施態様4のうちいずれかに記載された金属部材の接合方法であって、前記一端方向接合工程及び前記他端方向接合工程の前に、各々のローラー電極を対向する2辺の所定位置に停止させ各々のローラー電極同士を前記一方金属部材を介して通電させて前記一方金属部材と前記他方部材とを仮接合する仮止め接合工程を行い、前記一端方向接合工程及び前記他端方向接合工程の各々の接合開始位置は、前記仮接合の位置とずれている、ことを特徴とする。
【0024】
上記本発明実施態様5の構成によれば、次の様な作用効果を有する。
上述のように前記一端方向接合工程及び前記他端方向接合工程の各々の接合開始位置が前記仮接合の位置とずれていることから、前記一端方向接合工程及び前記他端方向接合工程の各々の接合開始時において、上記仮接合部を即溶融することがない。従って、仮接合により一方金属部材を他方部材により位置決めした状態で、本接合の一端方向接合工程及び前記他端方向接合工程を行うことが出来る。このため、前記一端方向接合工程及び前記他端方向接合工程によって、一方金属部材を他方部材に正しい位置にて接合することが出来る。
【0025】
本発明実施態様6の金属部材の接合方法は、実施態様1または実施態様5のうちいずれかに記載された金属部材の接合方法であって、前記一方金属部材の中央側に外形形状が略円形の別部材が配設され、前記別部材の略円形外形部と前記一方金属部材の前記対向2辺との間には、両者の間隔が周囲より狭い幅狭部が形成されており、前記一端方向接合工程及び前記他端方向接合工程は、前記幅狭部を構成する当該辺の幅狭部位置とずれた位置から接合を開始する、ことを特徴とする。
【0026】
上記構成によれば、上記接合を行っても前記幅狭部に無理な応力をもたらすことが減少し、前記一方金属部材と前記別部材との接合を長期にわたって安定させることができる。
もともと、前記一方金属部材の中央側に外形形状が略円形の開口が形成されることによって前記幅狭部が形成されることから、前記幅狭部には機械的応力が集中しやすく、亀裂、破壊が生じやすい。しかもこの状態の開口に別部材が圧入される場合には、幅狭部に機械的な亀裂や破壊が生じやすくなる。この状態の幅狭部にて上記接合が開始されると冷却状態にある部分が急激に加熱されるため熱ショック状態が生じて幅狭部が急激に膨張するあるいは冷却すると、幅狭部に亀裂、破壊が引き起こされかねない。
しかるに本実施形態は、前記一端方向接合工程と前記他端方向接合工程とにおいて、各々の接合開始位置が前記幅狭部を構成する当該辺の幅狭部位置とずれた位置であるので、各々の接合開始時の上記熱ショックを直接に前記幅狭部にもたらすことがない。
以上のように、幅狭部に熱ショックをかけることがなく、前記一方金属部材と前記別部材との接合を長期にわたって安定させることができる。
【0027】
本発明実施態様7の接合金属部材ユニットは、平面視で平行状の対向2辺を有した一方金属部材及び他方部材を有し、前記一方金属部材の前記対向2辺の各々において、各辺の中央付近から当該辺に沿った一方の端部の付近までローラー電極が押圧移動しながら各辺のローラー電極同士が前記一方金属部材を介して通電して前記一方金属部材と前記他方部材とが接合されており、各辺の前記中央付近から当該辺に沿って前記一方とは反対方向にある他方の端部の付近までローラー電極が押圧移動しながら各辺のローラー電極同士が前記一方金属部材を介して通電して前記一方金属部材と前記他方部材とが接合されている、ことを特徴とする。
【0028】
上記構成によれば、実施態様1と同様の作用効果を有する接合金属部材ユニットを得ることが出来る。
【0029】
本発明実施態様8の接合金属部材ユニットは、実施態様7に記載された接合金属部材ユニットであって、前記一方金属部材の中央側に外形形状が略円形の別部材が配設され、前記別部材の略円形外形部と前記一方金属部材の前記対向2辺との間には、両者の間隔が周囲より狭い幅狭部が形成されており、各ローラー電極が、当該辺に沿った一方の端部の付近まで押圧移動し始める位置、及び当該辺に沿った他方の端部の付近まで押圧移動し始める位置は、前記幅狭部を構成する当該辺の幅狭部位置からずれた位置である、ことを特徴とする。
【0030】
上記構成によれば、実施態様6と同様の作用効果を有する接合金属部材ユニットを得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態の接合を行う接合装置の断面図。
【図2】図1のリッドの平面図で、リッドの各辺の接合方向・接合順序を表示した図。
【図3】本発明の第1実施形態によるリッドが加熱された際のリッド各辺の表面温度及び接合用電流を示す図。
【図4】本発明の第1実施形態の変形例1の接合方法を示したリッドの平面図。
【図5】本発明の第1実施形態の変形例2の接合方法を示したリッドの平面図。
【図6】本発明の第1実施形態の変形例3の接合方法を示したリッドの平面図。
【図7】本発明の第1実施形態の変形例4の接合方法を示したリッドの平面図。
【図8】本発明の第1実施形態の変形例5の接合方法を示したリッドの平面図。
【図9】本発明の第1実施形態の変形例6の接合方法を示したリッドの平面図。
【図10】本発明の第2実施形態のパッケージの断面図。
【図11】図10での接合方法を示したリッドの平面図。
【図12】本発明の第3実施形態の接合方法を示したリッドの平面図。
【図13】本発明の第4実施形態の接合方法を示したリッドの平面図。
【図14】本発明の第5実施形態の接合方法を示したリッドの平面図。
【図15】本発明の応用形態での接合を行う接合装置の断面図。
【図16】図15の接合方法を示したリッドの平面図。
【図17】従来の接合方法を示したリッドの平面図。
【図18】従来の接合方法によるにリッドが加熱された際のリッド各辺の表面温度を示す図。
【図19】従来の他の接合方法を示したリッドの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を具体的な実施形態に基づいて説明する。
【0033】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態は、半導体装置を実装したパッケージ本体にリッドを接合するものであり、このリッドを接合することにより半導体を収納したパッケージを得るものである。即ち、矩形状のリッドの一対の対向する2辺及び第2対向2辺に各々一対のローラー電極を圧接させ両ローラー電極間に接合用電流を流しジュール熱によりリッドをパッケージ本体に接合して上記パッケージを得るものである。
【0034】
図1は、第1実施形態の接合を行う接合装置の断面図である。
図1の接合装置は、半導体装置を収納したパッケージ1を得るためのもので、一方金属部材であるリッド3を断面が皿状に形成された他方部材であるパッケージ本体2の上端に載置し、このリッド3の略平行配置された一対の外形辺に一対のローラー電極4、4を押圧し通電する装置である。
5は、ICやLSI等の半導体装置である。半導体装置5は、パッケージ本体2の内部に接合されている。半導体装置5は、先端がパッケージ本体2から外部に突出している金属板状のリード電極6の内端に導電ワイヤー7にて導通接続している。
【0035】
パッケージ本体2は、平面矩形に形成され、アルミナ系セラミックから構成されている。パッケージ本体2の材質は、上記以外のセラミックでもよい。
リッド3は、パッケージ本体2の平面矩形と同様の形状でほぼ同等の大きさの平面矩形に形成され、コバール合金(FeにNiとCoとを配合した合金)材から構成されている。リッド3の材料は、パッケージ本体2と熱膨張率が近ければ、コバール合金以外の金属でもよい。リッド3の表面には、Niメッキが施され、さらにそのNiメッキの表面にAuメッキが施されていてもよい。
リッド3及びパッケージ本体2は、平面視で平行状の対向2辺とこの対向2辺にほぼ直交する第2対向2辺とで上記矩形状が形成されている。
8は、パッケージ本体2の外周壁の上面に形成されたシールリングである。シールリング8は、厚さが0.3〜0.5mmで、予めコバール合金からなるリングをプレス加工等により形成しておき、そのリングの表面にNiメッキ(厚さ3〜5μm)を被覆しそのNiメッキの表面にAuメッキ(厚さ0.3〜0.5μm)を形成して構成されている。このシールリング8をパッケージ本体2の表面に配置しAg―Cu合金等のろう材9でろう接して固定している。ろう材9は、上記材料に限定されるものではなく、例えば半田であってもよく、厚さや製法も上記以外でもよい。
【0036】
ローラー電極4、4は、導電性に優れる金属から構成され、断面形状が円錐形の円錐部4aと回転軸4bとを有している。
上記の各円錐部4a、4aは、図1に図示されているように、リッド3の外周上端部(対向辺、第2対向辺の外周上端部)に接触している。各回転軸4b、4bは、外部より回転制御されるととともに、パッケージ本体2側(図1の下側)に押圧手段で押圧されている。この押圧は、パッケージ本体2側をローラー電極4、4に押す手段であってもよい。
ローラー電極4、4は、各円錐部4a、4aがリッド3の対向辺の外周上端部をパッケージ本体2側に押圧するように、対向配置されている。
上記のような関係部材の位置のもとに、両ローラー電極4、4の各円錐部4a、4aがリッド3の対向辺の外周上端部をパッケージ本体2側に押圧しながら、両ローラー電極4、4間に接合用交流電流を流すと、上記電流がリッド3及びシールリング8に流れ、ジュール熱によりリッド3の表面のNiメッキ部分等とシールリング8の表面のNiメッキ部分及びAuメッキ部分とが溶解することにより、リッド3がパッケージ本体2に接合するものである。
上記リッド3の表面のNiメッキ部分等とシールリング8の表面のNiメッキ部分及びAuメッキ部分は、ジュール熱により溶解してリッド3をパッケージ本体2に接合させる接合材である。
【0037】
〔接合方法〕
次に、リッド3がパッケージ本体2に接合される方法(工程)を説明する。
まず、図1のように、パッケージ本体2の皿状底部上に半導体装置5を接合し、リード電極6に導電ワイヤー6を導通接続する(パッケージ本体への半導体装置実装工程)。
パッケージ本体への半導体装置実装工程の後、半導体装置5が実装されたパッケージ本体2にリッド3を仮接合する(リッド仮接合工程)。
このリッド仮接合工程は、不活性ガス(アルゴンガス、窒素ガス等)中や真空中等の非酸素雰囲気中で行われる。上記非酸素雰囲気中で行われるのは、上記接合を行う際に、接合部に酸化被膜が形成されて接合力が低減することを防止するためである。
上記リッド仮接合工程は、図2に図示されている。図2は、図1のリッド3の平面図で、各接合方向を示してある。
リッド仮接合工程は、図2のように、リッド3の各辺の中間位置付近を接合するものである。具体的には、一方の対向辺の中点オ及びカに上記各円錐部4a、4aが接触するように両ローラー電極4、4を移動し、両ローラー電極4、4がリッド3をパッケージ本体2側に押圧した状態で、両ローラー電極4、4間に接合用交流電流を流す。このため、上記中点オ及びカで、ジュール熱によりリッド3の表面のNiメッキ部分等とシールリング8の表面のNiメッキ部分及びAuメッキ部分とが溶解融合し、仮接合が施される。この場合、両ローラー電極4、4は回転せず固定位置のままである。
しかる後に、リッド3及びパッケージ本体2を90度回転し、他の対向辺の中点キとクに同様の仮接合を施して、リッド仮接合工程は終了する。
なお、リッド仮接合工程は、一方の対向辺の中点オとカのみを接合してもよく、他方の対向辺(第2対向辺)の中点キとクのみを接合してもよい。
【0038】
上記リッド仮接合工程の次に、一方の対向辺接合工程を行う。
一方の対向辺接合工程は、図2のようなリッド3の平行配置された対向2辺である辺アーイと辺エーウの接合を行うものであり、接合不活性ガス(アルゴンガス、窒素ガス等)中や真空中等の非酸素雰囲気中で行われる。即ち、平面矩形状のリッド3において、対向2辺の辺アーイと辺エーウを同時に接合するものである。この接合は、一対のローラー電極4、4によるパラレルシーム熔接と呼ばれている。
この一方の対向辺接合工程では、一端方向接合工程と他端方向接合工程とを行う。
一端方向接合工程は、辺アーイと辺エーウを接合する際に、図2のA1、A1の接合を実線矢印A1、A1の向きに行うものである。
前記一端方向接合工程の次に行う他端方向接合工程は、辺アーイと辺エーウを接合する際に、図2のA2、A2の接合を鎖線矢印A2、A2の向き(実線矢印A1、A1の向きとは逆向き)に行うものである。
上記の接合A1、A1(一端方向接合工程)は、一対のローラー電極4、4の中心位置(円錐部4a、4aの回転中心位置で、回転軸4b、4bの回転中心位置)を、辺アーイの中点オより端部イ側(実線矢印A1とは反対方向)に若干の所定距離Lだけ近づけた接合開始位置A11、及び辺エーウの中点カより端部ウ側(実線矢印A1とは反対方向)に所定距離Lだけ近づけた接合開始位置A11に配置し、両ローラー電極4、4をリッド3に押圧しながら、両ローラー電極4、4間に接合用交流電流を流す。その状態のまま、両ローラー電極4、4を上記接合開始位置から一端ア、エまで回転させると、上記A1、A1の接合が行われる。
【0039】
上記の接合A2、A2(他端方向接合工程)は、一対のローラー電極4、4の上記中心位置を、辺アーイの中点オより端部ア側(鎖線矢印A2とは反対方向)に若干の所定距離Lだけ近づけた接合開始位置A21、及び辺エーウの中点カより端部エ側(鎖線矢印A2とは反対方向)に所定距離Lだけ近づけた接合開始位置A21に配置し、両ローラー電極4、4をリッド3に押圧しながら、両ローラー電極4、4間に接合用交流電流を流す。その状態のまま、両ローラー電極4、4を上記接合開始位置から他端イ、ウまで回転させると、上記A2、A2の接合が行われることになる。
上記接合A1、A1と上記接合A2、A2は、各々の接合開始位置付近において重なっており、その重なり距離は中点オ、カを中心にして2Lとなる。即ち、各々の接合開始位置付近の所定長さでは、接合A1、A1を行った後に逆接合方向の接合A2、A2が行われるものである。
【0040】
前記一方の対向辺接合工程の次に、他方の対向辺接合工程を行う。
この他方の対向辺接合工程は、前記一方の対向辺接合工程の行われた直後に行われ、リッド3及びパッケージ本体2を90度回転させてから、前記一方の対向辺接合工程と同様の雰囲気としての不活性ガス(アルゴンガス、窒素ガス等)中や真空中等の非酸素雰囲気中で行われる。
この他方の対向辺接合工程でも、前述のような一端方向接合工程と他端方向接合工程とを行う。
上記他方の対向辺接合工程での一端方向接合工程は、辺アーエと辺イーウを接合する際に、図2のB1、B1の接合を実線矢印B1、B1の向きに行うものである。
前記一端方向接合工程の次に行う他端方向接合工程は、辺アーエと辺イーウを接合する際に、図2のB2、B2の接合を鎖線矢印B2、B2の向き(実線矢印B1、B1の向きとは反対方向)に行うものである。
上記の接合B1、B1(一端方向接合工程)は、一対のローラー電極4、4の中心位置(円錐部4a、4aの回転中心位置で、回転軸4b、4bの回転中心位置)を、辺アーエの中点キより端部ア側(実線矢印B1とは逆方向)に若干の所定距離Lだけ近づけた接合開始位置B11、及び辺イーウの中点クより端部イ側(実線矢印B1とは逆方向)に所定距離Lだけ近づけた接合開始位置B11に配置し、両ローラー電極4、4をリッド3に押圧しながら、両ローラー電極4、4間に接合用交流電流を流す。その状態のまま、両ローラー電極4、4を接合開始位置B11から他端エ、ウまで回転させると、上記B1、B1の接合が行われる。
【0041】
上記の接合B2、B2(他端方向接合工程)は、一対のローラー電極4、4の上記中心位置を、辺アーエの中点キより端部エ側(鎖線矢印B2とは逆方向)に若干の所定距離Lだけ近づけた接合開始位置B21、及び辺イーウの中点クより端部ウ側(鎖線矢印B2とは逆方向)に所定距離Lだけ近づけた接合開始位置B21に配置し、両ローラー電極4、4をリッド3に押圧しながら、両ローラー電極4、4間に接合用交流電流を流す。その状態のまま、両ローラー電極4、4を接合開始位置から他端ア、イまで回転させると、上記B2、B2の接合が行われることになる。
上記接合B1、B1と上記接合B2、B2は、各々の接合開始位置付近において重なっており、その重なり距離は中点キ、クを中心にして2Lとなる。即ち、各々の接合開始位置付近の所定長さでは、接合B1、B1を行った後に逆接合方向の接合B2、B2が行われることになる。
【0042】
こうして、リッド3の4辺の接合が行われる。
上記一方の対向辺接合工程及び他方の対向辺接合工程により、リッド3がパッケージ本体2の外周上面に接合されるが、その接合は、前述のように、両ローラー電極4、4間に接合用交流電流が流されることによってジュール熱によりリッド3の表面のNiメッキ部分等とシールリング8の表面のNiメッキ部分及びAuメッキ部分とが溶解融合することによる。
両ローラー電極4、4間に流される接合用交流電流は、パルス電流であり、上記電流が流れる時間帯と流れない時間帯とを交互に行うため、リッド3の表面のNiメッキ部分等とシールリング8の表面のNiメッキ部分及びAuメッキ部分との溶けすぎをコントロールしながら効率よくジュール熱を発生させて接合するものである。
なお、上記所定距離Lは、一端方向接合工程と他端方向接合工程において、同じ長さとしたが、状況により異なるように設定してもよい。
【0043】
〔各辺、各端部の温度等〕
ここで、加熱接合される際のリッド3の各辺の温度を、図3に基づいて詳述する。
図3は、前記一方の対向辺接合工程及び前記他方の対向辺接合工程の際に、リッド3が加熱された際の各辺(辺アーイ、辺エーウ、及び辺アーエ、辺イーウ)におけるリッド3の表面温度を示す温度グラフである。
図3において、左上側の温度グラフA1T(実線)は、辺アーイを基準線として右側に行くほど高い温度となるように図示され、図3の右上側の温度グラフA1T(実線)は、辺エーウを基準線として左側に行くほど高い温度となるように図示されている。
同様に、図3において、左下側の温度グラフA2T(鎖線)は、辺アーイを基準線として右側に行くほど高い温度となるように図示され、図3の右下側の温度グラフA2T(鎖線)は、辺エーウを基準線として左側に行くほど高い温度となるように図示されている。
図3において、上右側の温度グラフB1T(実線)は、辺アーエを基準線として下側に行くほど高い温度となるように図示され、図3の下右側の温度グラフB1T(実線)は、辺イーウを基準線として上側に行くほど高い温度となるように図示されている。
同様に、図3において、上左側の温度グラフB2T(鎖線)は、辺アーエを基準線として下側に行くほど高い温度となるように図示され、図3の下左側の温度グラフB2T(鎖線)は、辺イーウを基準線として上側に行くほど高い温度となるように図示されている。
【0044】
一方、前記一方の対向辺接合工程及び前記他方の対向辺接合工程において、両ローラー電極間に流す接合用交流電流は、図3の左端と下端とに図示されている。
まず、前記一方の対向辺接合工程において上記電流を流す電流グラフは、図3の辺アーイの左側に表示されている。即ち、辺アーイにおける前述の温度グラフA1Tに対応する電流グラフは、実線のA1Iで表示されており、前述の温度グラフA2Tに対応する電流グラフは、鎖線のA2Iで表示されている。電流量は、電流グラフA1I及びA2Iにおいて図3の右側に行くほど大きくなるように図示されている。
図3の辺エーウにおける前述の温度グラフA1Tに対応する電流グラフ及び温度グラフA2Tに対応する電流グラフは、上記電流グラフA1I及びA2Iと辺エーウに対して対象関係になる(表示は省略)。
同様に、前記他方の対向辺接合工程において上記電流を流す電流グラフは、図3の辺イーウの下側に表示されている。即ち、辺イーウにおける前述の温度グラフB1Tに対応する電流グラフは、実線のB1Iで表示されており、前述の温度グラフB2Tに対応する電流グラフは、鎖線のB2Iで表示されている。電流量は、電流グラフB1I及びB2Iにおいて図3の上側に行くほど大きくなるように図示されている。
図3の辺アーエにおける前述の温度グラフB1Tに対応する電流グラフ及び温度グラフB2Tに対応する電流グラフは、上記電流グラフB1I及びB2Iと辺アーエに対して対象関係になる(表示は省略)。
【0045】
ここで、前記一方の対向辺接合工程での上記電流量及び加熱されるリッド3の各辺の表面温度は、次の通りである。
上記A1、A1の接合においては、次の通りである。
図3の温度グラフA1T、A1Tのように、辺アーイの中点オより前記所定距離Lだけ端部イ側に近づいた接合開始位置A11、及び辺エーウの中点カから前記所定距離Lだけ端部ウ側に近づいた接合開始位置A11から各ローラー電極の円錐部4a、4aがリッド3の各辺アーイ、辺エーウを押圧し始め、且つ電流グラフA1Iのように通電し始めるので、その接合開始位置A11、A11の温度は通電前のリッドの温度とほぼ同じである。
上記電流量は、電流グラフA1Iのように前記接合開始位置A11、A11に対応する電流スタート点a1において最大電流量の約半分の電流量が流れ始める(立ち上がる)。前記電流スタート点a1において上記電流量が流れ始めてもその電流量が前記約半分であるのでリッドは直ぐには高温になることはなく、温度グラフA1T、A1Tのように電流スタート点a1から中点オ、カ側に向けて上昇する。
上記電流量は、電流グラフA1Iのように、前記電流スタート点a1での前記約半分の電流量から中点オ、中点カの最大電流量まで徐々に増加し、中点オ、中点カで最大電流量となりそのまま最大電流量が端部ア側、端部エ側に向かって流れる。端部アの所定手前位置、端部エの所定手前位置に達すると最大電流量から端部ア、端部エの電流ストップ点a2における前記約半分の電流量まで徐々に減少してゆき、電流ストップ点a2で前記約半分の電流量に減少したならば電流量はゼロ(通電停止)となる。その場合、上記温度は、温度グラフA1T、A1Tのように端部ア、端部エまで徐々に上昇してゆく。但し、電流ストップ点a2まで前述のように前記約半分の電流量まで徐々に減少してゆくので、上記温度上昇は急激にはならない。
【0046】
次に上記A2、A2の接合においても、上記A1、A1の接合の場合と同様である。
図3の温度グラフA2T、A2Tのように、辺アーイの中点オより前記所定距離Lだけ端部ア側に近づいた接合開始位置A21、及び辺エーウの中点カから前記所定距離Lだけ端部エ側に近づいた接合開始位置A21から各ローラー電極の円錐部4a、4aがリッド3の各辺アーイ、辺エーウを押圧し始め、且つ電流グラフA2Iのように通電し始めるので、その接合開始位置A21、A21の温度は通電前のリッドの温度とほぼ同じである。
上記電流量は、電流グラフA2Iのように前記接合開始位置A21、A21に対応する電流スタート点a3において最大電流量の約半分の電流量が流れ始める(立ち上がる)。前記電流スタート点a3において上記電流量が流れ始めてもその電流量が前記約半分であるのでリッドは直ぐには高温になることはなく、温度グラフA2T、A2Tのように電流スタート点a3から中点オ、カ側に向けて上昇する。
上記電流量は、電流グラフA2I(鎖線)のように、前記電流スタート点a3での前記約半分の電流量から中点オ、中点カの最大電流量まで徐々に増加し、中点オ、中点カで最大電流量となりそのまま最大電流量が端部イ側、端部ウ側に向かって流れる。端部イの手前の所定位置、端部ウの手前の所定位置に達すると最大電流量から、端部イ、端部ウの電流ストップ点a4における前記約半分の電流量まで徐々に減少してゆき、電流ストップ点a4で前記約半分の電流量に減少したならば電流量はゼロ(通電停止)となる。その場合、上記温度は、温度グラフA2T、A2Tのように端部イ、端部ウまで徐々に上昇してゆく。但し、電流ストップ点a4まで前述のように前記約半分の電流量まで徐々に減少してゆくので、上記温度上昇は急激にはならない。
【0047】
次に、前記他方の対向辺接合工程での上記電流量及び加熱されるリッド3の各辺の表面温度は、前記一方の対向辺接合工程の場合と同様であり、次の通りである。
上記B1、B1の接合においては、次の通りである。
図3の温度グラフB1T、B1Tのように、辺アーエの中点キより前記所定距離Lだけ端部ア側に近づいた接合開始位置B11、及び辺イーウの中点クから前記所定距離Lだけ端部イ側に近づいた接合開始位置B11から各ローラー電極の円錐部4a、4aがリッド3の各辺アーエ、辺イーウを押圧し始め、且つ電流グラフB1Iのように通電し始めるので、その接合開始位置B11、B11の温度は通電前のリッドの温度とほぼ同じである。
上記電流量は、電流グラフB1Iのように前記接合開始位置B11に対応する電流スタート点b1において最大電流量の約半分の電流量が流れ始める(立ち上がる)。前記電流スタート点b1において上記電流量が流れ始めてもその電流量が前記約半分であるのでリッドは直ぐには高温になることはなく、温度グラフB1T、B1Tのように電流スタート点b1から中点キ、ク側に向けて上昇する。
上記電流量は、電流グラフB1Iのように前記電流スタート点b1での前記約半分の電流量から中点キ、中点クの最大電流量まで徐々に増加し、中点キ、中点クで最大電流量となりそのまま最大電流量が端部エ側、端部ウ側に向かって流れる。端部エの手前の所定位置、端部ウの手前の所定位置に達すると最大電流量から端部エ、端部ウの電流ストップ点b2における前記約半分の電流量まで徐々に減少してゆき、電流ストップ点b2で前記約半分の電流量に減少したならば電流量はゼロ(通電停止)となる。その場合、上記温度は、温度グラフB1T、B1Tのように端部エ及び端部ウまで徐々に上昇してゆく。但し、電流ストップ点b2まで前述のように前記約半分の電流量まで徐々に減少してゆくので、上記温度上昇は急激にはならない。
【0048】
次に上記B2、B2の接合においても、上記B1、B1の接合の場合と同様である。
図3の温度グラフB2T、B2Tのように、辺アーエの中点キより前記所定距離Lだけ端部エ側に近づいた接合開始位置B21、及び辺イーウの中点クから前記所定距離Lだけ端部ウ側に近づいた接合開始位置B21から各ローラー電極の円錐部4a、4aがリッド3の各辺アーエ、辺イーウを押圧し始め、且つ電流グラフB2Iのように通電し始めるので、その接合開始位置B21、B21の温度は通電前のリッドの温度とほぼ同じである。
上記電流量は、電流グラフB2Iのように前記接合開始位置B21、B21に対応する電流スタート点b3において最大電流量の約半分の電流量が流れ始める(立ち上がる)。前記電流スタート点b3において上記電流が流れ始めてもその電流量が前記約半分であるのでリッドは直ぐには高温になることはなく、温度グラフB2T、B2Tのように電流スタート点b3から中点キ、ク側に向けて上昇する。
上記電流量は、電流グラフB2Iのように前記電流スタート点b3での前記約半分の電流量から中点キ、中点クの最大電流量まで徐々に増加し、中点キ、中点クで最大電流量となりそのまま最大電流量が端部ア側、端部イ側に向かって流れる。端部アの手前の所定位置、端部イの手前の所定位置に達すると最大電流量から端部ア、端部イの電流ストップ点b4における前記約半分の電流量まで徐々に減少してゆき、電流ストップ点b4で前記約半分の電流量に減少したならば電流量はゼロ(通電停止)となる。その場合、上記温度は、温度グラフB2T、B2Tのように端部ア及び端部イまで徐々に上昇してゆく。但し、電流ストップ点b4まで前述のように前記約半分の電流量まで徐々に減少してゆくので、上記温度上昇は急激にはならない。
【0049】
〔作用効果〕
以上の様にして行われたリッド3をパッケージ本体2に接合する接合方法によれば、次の様な有益な作用効果をもたらす。
まず、上記各々の一端方向接合工程及び他端方向接合工程は、リッド3をパッケージ本体2の対向2辺において、各々の中点付近の接合開始位置から一方の端部と他方の端部の終点位置まで各々加熱しながら行うので、従来の図17のように各辺の一方の端部の接合開始位置から他方の端部の終点位置まで連続して行う場合に比べ、接合開始位置から各々の終点位置までの距離が短くなり、従って各々の終点位置でのリッド3の温度は従来のように高温になりすぎることがない。
従って、各々の終点位置(端部)では、加熱によるリッド3の膨張量と冷却による収縮量は小さくなっておりその分内部応力が減少する。当然ながら対向2辺の全域でも上記膨張量と収縮量が小さく内部応力が減少する。このため、リッド3において、終点位置(端部)はもとより対向辺全域での亀裂や破壊は防止される。加えて、パッケージ本体でも同様に、接合される終点位置(端部)はもとより接合辺全体でも上記内部応力は小さくなり、亀裂や破壊は防止される。
一方、従来の図17の端部アのように、接合Aと接合Bが開始される端部は加熱開始時であることから加熱条件によっては加熱温度が比較的低く不安定となりやすい。この場合はリッドの端部アからリッドが剥離する等の気密性が損なわれる可能性を有している。上記リッドの剥離は端部(コーナー部)から始まるので、端部の接合が良好で安定していないと当該辺全域の機密性が損なわれかねない。これに対して本発明の第1実施形態は、前述のようにリッド3の各々の辺の中点付近の接合開始位置から一方の端部と他方の端部の終点位置まで各々加熱しているので、上記一方の端部と他方の端部は共に程よい高温に加熱される。従って、全端部の接合が安定し、剥離や機密性を損ねることがない。
【0050】
次に、前記一方の対向辺接合工程と前記他方の対向辺接合工程とが行われた際の各端部ア、イ、ウ、エの温度は、従来の図18の端部ウのように高温になりすぎることはない。
即ち、前記一方の対向辺接合工程において一端方向接合工程である接合A1、A1と他端方向接合工程である接合A2、A2、及び前記他方の対向辺接合工程において一端方向接合工程である接合B1、B1と他端方向接合工程である接合B2、B2の接合距離は、図17の接合A、A及び接合B、Bの接合距離より短いことから、前記一方の対向辺接合工程と前記他方の対向辺接合工程により加熱された各端部ア、イ、ウ、エの重ね合わせ温度は、図18の端部ウの重ね合わせ温度より低くものである。しかも各々の端部の重ね合わせ温度は、ほぼ同等となる。
詳述すると、図3のように端部アでは、辺アーイの接合A1による温度グラフA1Tの終点温度と辺アーエの接合B2の温度グラフB2Tの終端温度が重ね合わされて端部ア重ね合わせ温度となり、端部イでは、辺アーイの接合A2による温度グラフA2Tの終点温度と辺イーウの接合B2の温度グラフB2Tの終端温度が重ね合わされて端部イ重ね合わせ温度となり、端部ウでは、辺イーウの接合B1による温度グラフB1Tの終点温度と辺エーウの接合A2の温度グラフA2Tの終端温度が重ね合わされて端部ウ重ね合わせ温度となり、端部エでは、辺エーウの接合A1による温度グラフA1Tの終点温度と辺アーエの接合B1の温度グラフB1Tの終端温度が重ね合わされて端部エ重ね合わせ温度となる。
ここで、上記各温度グラフでの上記終点温度は、図18の温度グラフAT、BTの終点温度より前述のように低くなる。従って、第1実施形態での各端部ア、イ、ウ、エの重ね合わせ温度は、図18の端部ウの重ね合わせ温度より低くなるものである。しかも各端部ア、イ、ウ、エの重ね合わせ温度は、ほぼ同等となる。
【0051】
従って、各端部ア、イ、ウ、エの上記重ね合わせ温度は、図18の端部ウの重ね合わせ温度より低くなり、しかも各々がほぼ同等となるため、リッドの各端部ア、イ、ウ、エの各々の熱膨張量Pア、Pイ、Pウ、Pエ及び、冷却時の収縮量Qア、Qイ、Qウ、Qエは、図19の端部ウの膨張量Pウと収縮量Qウより小さくなり、しかも同等であることから互いにバラツキが殆ど生じない。
上記バラツキが殆ど生じないことは、従来の図19に比べると、顕著である。即ち図19では、端部アでは、膨張と収縮は殆ど生じないが、端部ウでは、前述のように膨張量Pウと収縮量Qウが他の端部に比べて際立って大きくなり、端部間の膨張量と収縮量とに大きな差をもたらせてしまうものであるのに対し、本実施形態では前述のように端部間の膨張量と収縮量とが同等となるのである。
従って、本実施形態の各端部ア、イ、ウ、エでは、常温時の収縮完了状態での内部応力が小さく、しかもバラツキが少なくなり、従ってリッド2がパッケージ本体2に接合される接合力は必要量が確保され、しかも長期にわたってリッドの亀裂や損傷をもたらすことはない。
【0052】
加えて、本実施形態では、各辺の中点オ、カ、キ、ク周辺は、接合A1、A1及びA2、A2、或いは接合B1、B1及びB2、B2が重なって行われる。この場合、各辺の中点オ、カ、キ、ク周辺は、上記接合A1、A1及びA2、A2、或いは接合B1、B1及びB2、B2が開始される付近であって各々の接合開始による加熱温度が比較的に低いが、両者の加熱温度が重なることから、接合にふさわしい温度を確保しやすくなるものである。即ち、一端方向接合工程(接合A1、A1及び接合B1、B1)での接合開始による加熱温度が冷め切らないうちに他端方向接合工程(接合A2、A2及び接合B2、B2)での接合が開始されるものである。従って、各辺の中点オ、カ、キ、ク周辺の接合は、良好である。この点は、従来の図19の端部アのように、接合A及び接合Bによってもほとんど加熱されない場合に接合が不安定になりやすいことに比べて、本実施形態では、端部アも上述のように良好に接合されるものである。しかも、各中点オ、カ、キ、ク周辺は、加熱温度が同等になるので、接合状態(接合力、長期接合力の変化量等)のバラツキも少なくなる。
従って、本実施形態では、各辺の端部及び中点付近は無論のこと、全辺において、接合に適した加熱温度を確保することが出来、膨張量、収縮量にバラツキが少なく、よって内部応力が少なく、リッド等の亀裂や破壊が生じることもなく、しかも長期にわたって良好な接合状態が維持されるものである。
なお、上記接合A1、A1及びA2、A2、或いは接合B1、B1及びB2、B2の上記重なり長さは、リッド、シールリング、パッケージ本体の材質、厚さ、形状、接合条件(接合電流の大きさ、ローラー電極の回転速度及び押圧力等)等により、適宜選択するようにしても良い。上記重なり長さは、例えば、上記各接合が開始される接合開始位置が前述の仮接合位置オ、カ、キ、クからだけ離れている前記所定距離Lを各々適宜選択するようにしてもよい。
【0053】
さらに、上記接合A1、A1及びA2、A2、或いは接合B1、B1及びB2、B2が開始される接合開始位置は、前述の仮接合位置オ、カ、キ、ク、即ち各々の辺の中点とは前記所定距離Lだけ離れているので、前記接合スタート時に、上記仮接合部(リッドのNiメッキ部等、シールリングのAuメッキ部やNiメッキ部等)を溶融させてリッド3のパッケージ本体2に対する移動を防止することが出来る。即ち、上記接合開始位置が仮接合位置オ、カ、キ、クに一致している場合には、接合スタート時の接合用電流により上記仮接合箇所を溶融するので、リッド3がパッケージ本体2に対する移動を抑制できなくなりやすいのに対しては、上記接合開始位置が仮接合位置オ、カ、キ、クから上記のように所定距離だけ離れているので、上記仮接合箇所の溶融を防止あるいは緩和し、パッケージ本体2に対するリッド3の移動を抑制し、リッド3を正しい位置で接合することができるものである。
なお、前述した他方の対向辺接合工程は、まずB1、B1の接合を実線矢印B1、B1の向きに行い、次にB2、B2の接合を鎖線矢印B2、B2の向き(実線矢印B1、B1の向きとは逆向き)に行っていたが、その順序とは逆に、まずB2、B2の接合を実線矢印B2、B2の向きに行い、次にB1、B1の接合を鎖線矢印B1、B1の向き(実線矢印B2、B2の向きとは逆向き)に行ってもよい。
【0054】
〔変形例1〕
図4は、本発明の第1実施形態の変形例1の接合方法を示したリッド3の平面図である。
変形例1の基本構造と基本接合方法は、第1実施形態の図1〜図3と同様である。
変形例1は、リッド3の平面形状が長方形であり、リッド仮接合工程においてその仮接合をリッド3の長辺に複数個所で行うものである。
図4において、左側長辺の仮接合点mは5箇所であり、右側長辺の仮接合点nは5箇所である。
上記のように仮接合点m、nを各々複数個所とすることにより、パッケージ本体2に対するリッド3の仮止め位置がより確実となり、接合A1、A1及びA2、A2による接合時に、リッド3がパッケージ本体2に対して移動することがなく、リッド3を正しい位置で接合することが出来る。
【0055】
〔変形例2〕
図5は、本発明の第1実施形態の変形例2の接合方法を示したリッド3の平面図である。
変形例2の基本構造と基本接合方法は、第1実施形態の図1〜図3と同様である。
変形例2は、図5のように、リッド仮接合工程で仮接合をリッド3の一方の対向辺(長辺側:対向2辺)に行うが、他の対向辺(短辺側:第2対向2辺)では行わず、各辺の各接合A1、A1とA2、A2、及びB1、B1とB2、B2の接合順番を変更しているものである。
即ち、まずリッド3の一方の対向辺(長辺)の各々の2箇所の仮接合点m、nでリッド仮接合を行った後、他方の対向辺(第2対向辺である短辺)で接合A1、A1とA2、A2を行い、次に前記一方の対向辺(長辺)で接合B1、B1とB2、B2を行うものである。
上記のように長辺でリッド仮接合を行った後において、短辺の上辺と下辺に、各々の中点付近から図2と同様に接合A1、A1を行い、次に上辺と下辺に各々の中点付近から図2と同様に接合A2、A2を行う。その場合、各接合A1、A1と接合A2、A2とは、接合開始位置付近において重なるものである。
次に、長辺の右辺と左辺に、各々の中点付近から図2と同様に接合B1、B1を行い、次に右辺と左辺に各々の中点付近から図2と同様に接合B2、B2を行う。その場合、各接合B1、B1と接合B2、B2とは、接合開始位置付近において重なるものである。
【0056】
変形例2によれば、リッド仮接合が各々の長辺で複数個所で行われているので、短辺側に仮止めがなされる場合に比べて長方形のリッドの仮止めの効果、即ちリッドの位置が安定する。このリッド位置が安定したままで、各々の短辺側で本番の接合A1、A1及びA2、A2が行われるので、リッドの移動はより確実に防止される。しかる後に、長辺側を接合B1、B1及びB2、B2することにより、リッドが最終的に正しい位置で接合されることになる。
さらに、前記一方の対向辺での各接合A1、A1と接合A2、A2を行う前に、前記一方の対向辺とは異なる前記他の対向辺で仮止め接合が行われるので、各接合A1、A1と接合A2、A2による加熱が上記仮接合部m、nに伝達しにくくなり、仮接合によりリッドをパッケージ本体に確実に位置決めしたまま各接合A1、A1と接合A2、A2を行うことが出来、リッドをより正しい位置でパッケージ本体に接合することが出来る。
なお、上記一方の対向辺が短辺であり上記他方の対向辺が長辺の場合や、上記一方の対向辺と上記他方の対向辺がほぼ同じ長さである場合でも、リッド3の一方の対向辺(短辺)でリッド仮接合を行った後、他方の対向辺(長辺)で接合A1、A1とA2、A2を行い、次に前記一方の対向辺(短辺)で接合B1、B1とB2、B2を行うようにしても、前述の作用効果が得られる。
【0057】
〔変形例3〕
図6は、本発明の第1実施形態の変形例3の接合方法を示したリッド3の平面図である。
変形例3の基本構造と基本接合方法は、第1実施形態の図1〜図3と同様である。
変形例3は、各接合A1、A1、B1、B1及びA2、A2、B2、B2の接合スタート時の接合用電流の流し方に特徴をもたせたものである。
即ち、図6の左端に表示されている接合用電流グラフのように、各接合A1、A1及びA2、A2のスタートでは、接合用電流A1I、A2Iを徐々に増加するようにしている。図6では、各辺の中点では接合用電流がピーク(最大電流量)ではなく中点を過ぎた時点でピークとなっている。そのまま接合方向にある端部に至ると接合用電流は、徐々に減少して最後には停止する。同様に、各接合B1、B1及びB2、B2のスタートでは、接合用電流A1I、A2Iと同様の接合用電流B1I、B2I(図6では図示を省略)を徐々に増加しており、各辺の中点では接合用電流がピークではなく中点を過ぎた時点でピークとなっている。そのまま接合方向にある端部に至ると接合用電流は、徐々に減少して最後には停止する。は、接合用電流A1I、A2Iの接合用電流グラフと同様であるので、表示は省略した。
上記のように、接合用電流を徐々に増加して各辺の中点では接合用電流がピークではなく、中点を過ぎた時点でピークとなるように制御することは、融点が低い接合材を用いる場合等のように、接合材がリッドの外部や内部に急激に流れ出ることを防止する際に有益である。またリッドの材質によっては、上記接合開始位置は、通常は常温であることから急激に接合用電流が流れると、リッドが急激に加熱されることによってその材質が変質し、接合後の機械的強度が弱体化する場合があるが、上記のように徐々に加熱することにより上記弱体化を防止することも可能である。
なお、図6では、各接合A1、A1、B1、B1及びA2、A2、B2、B2の接合終了時の接合用電流は、各辺の終端部まで最大電流量を流し、前記終端部からは徐々に減少させているが、図3のように前記終端部で接合電流を停止してもよい。
【0058】
〔変形例4〕
図7は、本発明の第1実施形態の変形例4の接合方法を示したリッド3の平面図である。
変形例4の基本構造と基本接合方法は、第1実施形態の図1〜図3と同様である。
変形例4は、各接合A1、A1、B1、B1及びA2、A2、B2、B2の接合電流の開始点a1、a3と接合電流終了点a2、a4の接合用電流の流し方に特徴をもたせたものである。
即ち、図7の左端に表示されている接合用電流グラフのように、各接合A1、A1及びA2、A2の接合電流開始点a1、a3では最大電流量の接合用電流A1I及び接合用電流A2Iを流し、接合電流終了点a2、a4まで最大電流量を流し、接合電流終了点a2、a4では接合電流を停止する。上記接合電流終了点a2、a4は、各接合A1、A1及びA2、A2における各々の接合方向の各々の端部に至る手前の所定位置である。
同様に、各接合B1、B1の終了時点では各々の接合方向の各々の端部に至る手前の所定位置で上記と同様の接合用電流B1I(A1Iと同様のグラフのため図示は省略)を停止し、及びB2、B2の終了時点では各々の接合方向の各々の端部に至る手前の所定位置で上記と同様の接合用電流B2I(A2Iと同様のグラフのため図示は省略)を停止するものである。
上記のように、各接合方向の各々の端部に至る手前の所定位置で接合用電流を停止しても、接合用電流が流れている際の加熱により先方の各端部にも熱が伝達されることから、接合材の融点が低い場合等接合材の材質や特性によっては各端部の接合が良好に行われる。従って、接合終了付近の電力が節約され、接合コストが安価になるものである。
【0059】
〔変形例5〕
図8は、本発明の第1実施形態の変形例5の接合方法を示したリッド3の平面図である。
変形例5の基本構造と基本接合方法は、第1実施形態の図1〜図3と同様である。
変形例5は、各接合A1、A1、A2、A2及びB1、B1、B2、B2の接合開始後に流す接合用電流の流し方に特徴をもたせている。
即ち、図8の左端に表示されている接合用電流グラフの電流A1Iのように、各接合A1、A1の接合開始直後には最大電流量の電流を流し始め、各々の中点(仮接合部)オ、カ付近までは同等量の電流を流す。その後は各接合A1、A1の接合方向先の端部ア、エに向かって電流量を徐々に減少させ、端部ア、エ付近で電流を停止する。同様に上記接合用電流グラフの電流A2Iのように、各接合A2、A2の接合開始直後には最大電流量の電流を流し始め、各々の中点(仮接合部)オ、カまでは同等量の電流を流す。その後は各接合A2、A2の接合方向先の端部イ、ウに向かって電流量を徐々に減少させ、端部イ、ウ付近では電流を停止している。
接合B1、B1、B2、B2においても接合A1、A1、A2、A2の場合と同様に接合電流を流す。即ち、各接合B1、B1の接合開始直後には最大電流量の電流を流し始め、各々の中点(仮接合部)キ、ク付近までは同等量の電流を流す。その後は各接合B1、B1の接合方向先の端部エ、ウに向かって電流量を徐々に減少させ、端部エ、ウ付近で電流を停止する。同様に各接合B2、B2の接合開始直後には最大電流量の電流を流し始め、各々の中点(仮接合部)キ、ク付近までは同等量の電流を流す。その後は各接合B2、B2の接合方向先の端部ア、イに向かって電流量を徐々に減少させ、端部ア、イ付近では電流を停止している。
上記のように接合開始直後には、接合に必要な最大電流量の電流を流すことによりリッド3や接合材が高温に加熱され、その接合先の部分も加熱熱が伝達することになる。従って、リッドや接合材の材質や特性によっては初期時の加熱により接合方向先のリッドなどが温められことになりその部分にローラー電極が押圧される際には上記電流が減少しても接合には差し支えないようになる。このため、接合初期段階で接合に必要とする大き目の電流を流した後の電流量が減少する分、消費電力を減少させて省エネ効果を得ることができる。
【0060】
〔変形例6〕
図9は、本発明の第1実施形態の変形例6の接合方法を示したリッド3の平面図である。
変形例6の基本構造と基本接合方法は、第1実施形態の図1〜図3と同様である。
第1実施形態の図3、変形例1から変形例5までは、各接合における接合用電流の流し方に違いを持たせていた。
変形例6は、各接合A1、A1、A2、A2及びB1、B1、B2、B2の接合用電力の電圧に変化をもたらせるか、あるいはローラー電極4、4がリッド3を押圧する圧力に変化をもたせたものである。
図9の左端は、各接合A1、A1においてローラー電極4、4間に供給する接合用電力の電圧変化を電圧グラフA1Vで表し、各接合A2、A2においてローラー電極4、4間に供給する接合用電力の電圧変化を電圧グラフA2Vで表したものであり、併せて各接合A1、A1においてローラー電極4、4がリッド3を押圧する圧力変化を圧力グラフA1Pで表し、各接合A2、A2においてローラー電極4、4がリッド3を押圧する圧力変化を圧力グラフA2Pで表したものである。この電圧グラフA1V、A2V及び圧力グラフA1P、A2Pは、各接合A1、A1及び各接合A2、A2の開始位置では最大値が加えられそのまま各接合A1、A1及び各接合A2、A2の終了端部まで変化無く継続し、その終了端部でゼロとなるものである。
【0061】
各接合B1、B1、B2、Bにおいて、接合用電力の電圧変化、あるいはローラー電極4、4がリッド3を押圧する圧力変化も、上記各接合A1、A1、A2、A2の場合の電圧変化、圧力変化と同様である。従って、各接合B1、B1の電圧グラフ(仮にB1Vと称す)及び圧力グラフ(仮にB1Pと称す)は、上記電圧グラフA2V及び圧力グラフA2Pと同様となり、各接合B2、B2の電圧グラフ(仮にB2Vと称す)及び圧力グラフ(仮にB2Pと称す)は、上記電圧グラフA1V及び圧力グラフA1Pと同様となる。
各辺の上記電圧グラフ、及び上記圧力グラフは、図9に限定されるものではなく、図3、図6、図7、図8の各電流グラフA1I、A2Iと同様に設定しても良い。
以上のように、変形例6では、接合用電力の電圧に変化をもたらせ、あるいはローラー電極4、4がリッド3を押圧する圧力に変化をもたらせたことにより、図3、図6、図7、図8における各電流グラフA1I、A2I及びB1I、B2Iと同様の効果をもたらせることができる。
なお、上記電圧変化により上記接合を行うと、電圧制御が簡便で確実な制御管理がしやすくなるものである。
また上記圧力変化により上記接合を行うと、加熱している箇所の接合材を確実にリッド3とパッケージ本体2に密着することができ、リッド3とパッケージ本体2の接合をより確実に行うことが出来る。
さらに、各接合において、変形例6の電力変化と圧力変化とを同時に行ってもよく、あるいは変形例6の電力変化または圧力変化と、図3、図6、図7、図8のいずれかの各電流グラフA1I、A2Iとを組み合わせて行ってもよい。
【0062】
〔変形例7〕
変形例7は、第1実施形態及びその変形例の金属部材の接合方法ではあるが、前記他端方向接合工程を、前記一端方向接合工程における接合開始位置又は接合終了位置におけるリッド(一方金属部材)又はパッケージ本体(他方部材)の接合部の温度が所定値まで低下してから開始するように変更しているものである。
上記変形例7によれば、前記他端方向接合工程の開始位置の温度が、前記一端方向接合工程における接合開始位置又は接合終了位置におけるリッド又はパッケージ本体の接合部の温度にそのまま加算されることが無い。そこで、リッド又はパッケージ本体の材料によっては前記のそのまま加算した温度であると高温になりすぎる場合があるのに対して、変形例7では前記一端方向接合工程の接合開始位置又は接合終了位置における上記所定温度まで低下している分、両者の重ね合わせ温度が低下する。従って、リッド又はパッケージ本体の接合部が冷却時に亀裂、破壊することを防止するものである。
なお、接合部の温度の前記所定値は、状況により設定すればよく、例えば、一端方向接合工程における接合開始位置又は接合終了位置におけるリッド(一方金属部材)又はパッケージ本体(他方部材)の接合部の最高温度の半分の温度とする。
【0063】
〔第2実施形態〕
第2実施形態は、平面視でリッドの内方にガラス部材を嵌め込み、このリッドをパッケージ本体に接合し、パッケージを得るものである。
第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、リッドに上記ガラス部材が嵌め込まれている点である。それ以外のリッドをパッケージ本体に接合する方法は、第1実施形態と同様である。
図10は、第2実施形態のパッケージ201の断面図であり、図11は、図10の平面図である。
第2実施形態のパッケージ201は、外形形状がほぼ円形のガラス板204が予め圧入等により嵌め込まれた矩形状のリッド203が、矩形状のパッケージ本体202に接合されている。ほぼ円形とは、真円、楕円形などを含む。
パッケージ本体202は、図1と同様に、その中央底面に半導体装置が接合され、リード電極が埋め込まれその下端がパッケージ本体202の底面から突出しており、導電ワイヤーが半導体装置の電極とリード電極とを接合しているものであるが、図示は省略している。
【0064】
パッケージ本体202はセラミックで形成され、リッド203はコバール合金で構成され、ガラス板204は無機ガラスである。ガラス板204は、耐熱性ガラスが好ましく、耐熱性に優れ圧縮強度が高ければ有機ガラス(合成樹脂)であっても良い。
前述の矩形状のリッド203に外形形状が円形のガラス板204が嵌め込まれる方法は、ガラス板204がリッド203に圧入されるのが好ましいが、その他に、ガラス板204がリッド203に接着材で接合されている場合、ガラス板204がリッド203にろう材により接合されている場合であってもよい。
リッド203をパッケージ本体202に接合するものは、第1実施形態と同様にシールリング205である。
シールリング205は、パッケージ本体202の外周上面にろう接等により予め一体化されているものである。シールリング205は、厚さが0.3〜0.5mmで、基材をコバール合金から構成され、その基材の表面に下地としてNiメッキ(厚さ3〜5μm)が、Niメッキの表面にAuメッキ(厚さ0.3〜0.5μm)が施されている。リッド203の外周全面にはNiメッキが、場合によってはその上にAuメッキが施されており、加熱接合時には、リッド203のNiメッキ等とシールリング205のNiメッキ及びAuメッキとが融合することによりリッド203がシールリング205に接合され、こうしてパッケージ本体202に接合されるものである。
上記リッド3の表面のNiメッキ部分等とシールリング8の表面のNiメッキ部分及びAuメッキ部分は、ジュール熱により溶解してリッド3をパッケージ本体2に接合させる接合材である。
【0065】
予めガラス板204が圧入取付けされたリッド203をパッケージ本体202に熱接合するには、第1実施形態の図2と同様に行う。なお各接合工程は、不活性ガス(アルゴンガス、窒素ガス等)中や真空中等の非酸素雰囲気中で行われる。
まず、リッドの仮接合工程でリッド203をパッケージ本体202に仮接合する。
この仮接合工程は、第1実施形態と同様に一対のローラー電極をリッド204の各辺の仮接合位置の中点に当てて行ってもよいが、少なくとも対向する辺同士において上記中点を避けた位置に行っても良うことが好ましい。図11において、辺アーイでは中点オを避けた位置m、mで、辺エーウでは中点カを避けた位置n、nで仮接合を行っている。また、各4辺において、中点オ、カ、キ、クを避けた複数個所で仮接合を行ってもよい。
ここで、上記仮接合位置を各辺の中点位置で行うと、円形状のガラス板204との幅が他より狭くなった幅狭部(リッドの各辺の中点からガラス板の外形部までの部分)に仮接合による加熱が加わる。もともと幅が狭く機械的強度が弱くなっている幅狭部に仮接合時の加熱が加わり、内部応力が増大し亀裂が生じやすくなる。
これに対して、第2実施形態では、上記のように幅狭部(リッド203の各辺の中点オ、カ、ク、キからガラス板204の外形部までの部分)に対応する各辺の幅狭部位置オ、カ、ク、キを避けた位置で仮接合を行うので、幅狭部への加熱温度が低くなり上記亀裂が生じにくくなる。
【0066】
次に、上記一方の対向辺接合工程を行う。
一方の対向辺接合工程は、図11に図示されているが、平面矩形状のリッド3において、一方の対向辺である辺アーイと、辺エーウを同時に接合するものである。この接合は、一対のローラー電極4、4によるパラレルシーム熔接と呼ばれている。
上記一方の対向辺接合工程である辺アーイと、辺エーウの接合は、まずA1、A1の接合(一端方向接合工程)を実線矢印A1、A1の向きに行い、次にA2、A2の接合(他端方向接合工程)を鎖線矢印A2、A2の向き(実線矢印A1、A1の向きとは逆向き)に行うことによって終了する。
接合A1、A1の接合開始位置A11、A11は、辺アーイの中点オ(幅狭部位置)から接合方向A1とは逆方向の端部イに所定距離だけ近づいた位置であり、辺エーウの中点カ(幅狭部位置)から接合方向A1とは逆方向の端部ウに所定距離だけ近づいた位置である。
次にA2、A2の接合を鎖線矢印A2、A2の向き(実線矢印A1、A1の向きとは逆向き)に行う。接合A2、A2の接合開始位置A21、A21は、辺アーイの中点オ(幅狭部位置)から接合方向A2、A2とは逆方向の端部アに所定距離だけ近づいた位置であり、辺エーウの中点カ(幅狭部位置)から接合方向A2、A2とは逆方向の端部エに所定距離だけ近づいた位置である。
【0067】
次に他方の対向辺接合工程を行う。
上記他方の対向辺接合工程である辺アーエ、辺イーウの接合は、まずB1、B1の接合(一端方向接合工程)を実線矢印B1、B1の向きに行い、次にB2、B2の接合(他端方向接合工程)を鎖線矢印B2、B2の向き(実線矢印B1、B1の向きとは逆向き)に行うことによって終了する。
接合B1、B1の接合開始位置B11、B11は、辺アーエの中点キ(幅狭部位置)から接合方向B1、B1とは逆方向の端部アに所定距離だけ近づいた位置であり、辺イーウの中点ク(幅狭部位置)から接合方向B1、B1とは逆方向の端部イに所定距離だけ近づいた位置である。
次にB2、B2の接合を鎖線矢印B2、B2の向き(実線矢印B1、B1の向きとは逆向き)に行う。接合B2、B2の接合開始位置B21、B21は、辺アーエ中点キ(幅狭部位置)から接合方向B2、B2とは逆方向の端部エに所定距離だけ近づいた位置であり、辺イーウの中点ク(幅狭部位置)から接合方向B2、B2とは逆方向の端部ウに所定距離だけ近づいた位置である。
上記各々の接合開始位置は、上記仮接合位置m、m及びn、nを避けた位置である。
接合A1、A1及び接合A2、A2の接合用電流の電流値は、図11の左端の電流グラフのA1I、A2Iに図示されている通りで、図3の電流グラフと同様である。
接合B1、B1及び接合B2、B2の接合用電流の電流値は、図示することを省略したが、図3の下端に図示された電流グラフB1I、B2Iと同様である。
【0068】
第2実施形態は、次の様な作用効果を有する。
上記構成によれば、上記接合によっても前記幅狭部に無理な応力をもたらすことがなく、前記リッド203と前記ガラス部材204との接合を長期にわたって安定させることができる。
前記リッド203の中央側に外形形状が略円形の開口が形成されること、及びこの開口にガラス部材204が配設されることによって、元来前記幅狭部には機械的応力が集中しやすく、亀裂、破壊が生じやすい。この状態の幅狭部に上記接合が開始されると冷却状態にある部分が急激に加熱されて熱ショック状態となり幅狭部が急激に膨張し、亀裂、破壊が引き起されやすい。
しかるに第2実施形態は、前記一端方向接合工程と前記他端方向接合工程とにおいて、各々の接合開始位置が前記幅狭部を構成する当該辺の幅狭部位置からずれた位置であるので、各々の接合開始時の上記熱ショックは直接に前記幅狭部にもたらされない。
以上のように、幅狭部に熱ショックをかけることなく、前記リッド203と前記ガラス部材204との接合を長期にわたって安定させることができる。
【0069】
さらに第2実施形態は、第1実施形態と同様に、前記一方の対向辺接合工程(接合A1、A1と接合A2、A2)により加熱された各端部ア、イ、ウ、エの温度と、前記他方の対向辺接合工程(接合B1、B1と接合B2、B2)により加熱された各端部ア、イ、ウ、エの温度とが重ね合わせされた際の各端部ア、イ、ウ、エの重ね合わせ温度は、高温になりすぎることがなく、しかも各端部ア、イ、ウ、エの重ね合わせ温度がほぼ一定となる。従って、リッド3とパッケージ本体2との接合に良好な加熱温度とすることができる。さらにリッドの膨張量及び常温への冷却による収縮量にバラツキがなく、長期にわたって上記接合を安定させることができる。
その上、円形のガラス板204とリッド203の各辺との間隔が最も狭くなっているリッド203の幅狭部オ、カ、キ、クでも、上記各接合が重ね合わせされてもその温度は高くならないことから、加熱時の膨張と冷却時の収縮量が少なくなり、内部応力が低くなる。よって、ガラス板204の挿入により幅狭部オ、カ、キ、クに内部応力が発生していても、上記接合による熱変形や内部応力の増加促進を抑制でき、幅狭部オ、カ、キ、クに亀裂が入り破壊することを防止することが出来る。従って、長期にわたってパッケージ201の気密性を確保することができる。
【0070】
〔第3実施形態〕
第3実施形態は、第1実施形態に対して各辺の接合方法を変更したものであり、その他は第1実施形態と同様である。
図12は、第3実施形態のリッドの303の平面図で、リッド303の各辺の接合方向・接合順序を表示した図である。
第1実施形態のリッドの各辺の接合方法は、一方の対向辺接合工程においては、前述のA1、A1の接合とA2、A2の接合は、各々の接合開始位置付近において重なっていた。即ち、各々の接合開始位置付近の所定長さLとLの範囲では、接合A1、A1を行った後に逆接合方向の接合A2、A2が行われた。同様に他方の対向辺接合工程においては、前述のB1、B1の接合とB2、B2の接合は、各々の接合開始位置付近において重なっていた。即ち、各々の接合開始位置付近の所定長さLとLの範囲では、B1、B1を行った後に逆接合方向の接合B2、B2が行われていた。
第3実施形態では、一方の対向辺接合工程においては、前述のA1、A1の接合とA2、A2の接合は、各々の接合開始位置付近において重ならないようにしており、同様に他方の対向辺接合工程においても、前述のB1、B1の接合とB2、B2の接合は、各々の接合開始位置付近において重ならないものである。
即ち、一方の対向辺接合工程では、接合A1、A1を行った後に逆接合方向の接合A2、A2が行われる重なり部分はなく、B1、B1を行った後に逆接合方向の接合B2、B2が行われる重なり部分はないのである。つまり、各辺においては、上記A1、A1の接合、A2、A2の接合、B1、B1の接合、B2、B2の接合だけが行われるものである。より詳細には、第3実施形態は、一方の対向辺接合工程の前述のA1、A1の接合とA2、A2の接合の接合開始位置は各々ほぼ同一とし、他方の対向辺接合工程の前述のB1、B1の接合とB2、B2の接合の接合開始位置は各々ほぼ同一である。
【0071】
図12において、リッド303において、左辺アーイの中点オ、右辺エーウの中点カ、上辺アーエの中点キ、下辺イーウの中点クでは、仮接合が行われている。
その場合、リッド303の対向辺にローラー電極を押し当てて通電し各辺をパッケージ本体に接合するにあたり、左辺と右辺との接合A1、A1の接合開始箇所は中点オ及びカであり端部ア、エに向かって接合され、接合A2、A2の接合開始箇所は中点オ及びカであり端部イ、ウに向かって接合される。
同様に上辺と下辺との接合B1、B1の接合開始箇所は中点キ及びクであり端部エ、ウに向かって接合され、接合B2、B2の接合開始箇所は中点キ及びクであり端部ア、イに向かって接合される。
従って、各接合が接合開始付近では重なることがない。
【0072】
第3実施形態では、各接合が接合開始付近では重なることがないため、リッドをパッケージ本体に接合する時間が短くなり、消費電力も少なく出来る。
なお、各接合が接合開始付近では重なることがないが、各接合開始時の加熱によりその付近も加熱される。このため、後から行われる他端方向接合工程の接合開始位置の温度はある程度高温となる。なお、接合材は、加熱温度が低くなっても接合が良好に行われるタイプを採用することがこのましい。
なお、仮接合箇所は、上記のように全辺に施す以外に、対向辺のみに施してもよく、あるいは、各辺の中点以外の箇所に施してもよい。
また、一方の対向辺接合工程では、図12のように前述のA1、A1の接合とA2、A2の接合が各々の接合開始位置付近において重ならないようにしているが、他方の対向辺接合工程では、第1実施形態のように前述のB1、B1の接合とB2、B2の接合は、各々の接合開始位置付近において所定距離重なるように接合しても良い。
【0073】
〔第4実施形態〕
第4実施形態は、各辺の接合方法を第3実施形態に対して変更したものであり、その他は第3実施形態と同様である。
第3実施形態では、一方の対向辺接合工程の前述のA1、A1の接合とA2、A2の接合の接合開始位置は各々ほぼ同一とし、他方の対向辺接合工程の前述のB1、B1の接合とB2、B2の接合の接合開始位置は各々ほぼ同一としていた。
第4実施形態は、一方の対向辺接合工程の前述のA1、A1の接合とA2、A2の接合の接合開始位置は所定距離だけ離れており、他方の対向辺接合工程の前述のB1、B1の接合とB2、B2の接合の接合開始位置は所定距離だけ離れているようにしたものである。
【0074】
図13は、第4実施形態のリッドの403の平面図で、リッド403の各辺の接合方向・接合順序を表示した図である。
図13において、一方の対向辺接合工程の前述のA1、A1の接合とA2、A2の接合の接合開始位置は、中点オ、カから各々所定距離P、Pだけ離れており、他方の対向辺接合工程の前述のB1、B1の接合とB2、B2の接合の接合開始位置は、中点キ、クから各々所定距離P、Pだけ離れている。
【0075】
このため第4実施形態では、各接合が接合開始付近では重なることがなく、各接合の接合開始位置が所定距離だけ離れているので、リッドをパッケージ本体に接合する時間が短くなり、消費電力も少なくなる。
なお、各接合が接合開始付近では重なることがなく所定距離だけ離れていても、各接合開始時の加熱によりその付近も加熱されるから接合されるものであるが、第1実施形態のように各接合の接合開始部分が重なる場合に比べて加熱温度が低くなっても接合が良好に行われる接合材を採用することが好ましい。
なお、仮接合箇所は、上記のように全辺に施す以外に、対向辺のみに施してもよく、あるいは、各辺の中点以外の箇所に施してもよい。
また、一方の対向辺接合工程では、図13のように前述のA1、A1の接合とA2、A2の接合の各々の接合開始位置は所定距離だけ離れているが、他方の対向辺接合工程では、第3実施形態のように前述のB1、B1の接合とB2、B2の接合は、各々の接合開始位置付が一致していてもよいし、或いは第1実施形態のように前述のB1、B1の接合とB2、B2の接合は、各々の接合開始位置付近において所定距離重なるように接合しても良い。
【0076】
〔第5実施形態〕
第5実施形態は、各辺の接合方法を第4実施形態に対して変更したものであり、その他は第3実施形態と同様である。
第4実施形態は、一方の対向辺接合工程の前述のA1、A1の接合とA2、A2の接合の接合開始位置は所定距離だけ離れており、他方の対向辺接合工程の前述のB1、B1の接合とB2、B2の接合の接合開始位置は所定距離だけ離れているものであった。
第5実施形態は、第4実施形態のように、一方の対向辺接合工程の前述のA1、A1の接合とA2、A2の接合の接合開始位置は所定距離だけ離れており、他方の対向辺接合工程の前述のB1、B1の接合とB2、B2の接合の接合開始位置は所定距離だけ離れているように接合した後に、上記両接合の接合開始位置が離れている所定距離の部分を第3の接合で補完接合するものである。
【0077】
図14は、第5実施形態のリッド503の平面図で、リッド503の各辺の接合方向・接合順序を表示した図である。
図14において、一方の対向辺接合工程の前述のA1、A1の接合とA2、A2の接合の接合開始位置が各々の中点から各々所定距離だけ離れて接合が行われる。その後で、その所定距離だけ離れた部分は少なくともカバーするように第3の接合A3が施される。
同様に、図14において、他方の対向辺接合工程の前述のB1、B1の接合とB2、B2の接合の接合開始位置が各々の中点から各々所定距離だけ離れて接合が行われる。その後で、その所定距離だけ離れた部分は少なくともカバーするように第4の接合B3が施される。
上記第3の接合A3の接合方向、第4の接合B3の接合方向は、図14のように、接合A2、接合B2と同方向としてもよく、あるいは図14とは逆に接合A1、接合B1と同方向としてもよい。
そこで、第5実施形態では、各接合により接合開始位置が前述のように所定距離だけ離れていても、第3接合A3、第3の接合B3により接合カバーされるので、リッド503の各辺の全長で接合が確実に行われることになる。
なお、一方の対向辺接合工程は、図14のようにA1、A1の接合とA2、A2の接合及び第3の接合A3が行われるが、他方の対向辺接合工程は、第1実施形態、第3実施形態、第4実施形態各々の他方の対向辺接合工程の接合を採用してもよい。
【0078】
〔応用形態〕
本応用形態は、前述の第1実施形態から第5実施形態の本発明を応用したものである。
第1実施形態から第5実施形態は、リッドの対向辺を一対のローラー電極で押圧し両電極間に接合用交流電流を流してリッドのメッキ層やシールリングのメッキ層などを溶融しリッドをパッケージ本体に接合する、いわゆるパラレルシーム熔接であった。
本応用形態は、リッドの一方の辺に一つのローラー電極を押圧し、このローラー電極とパッケージ本体側との間に接合用交流電流を流して接合材を溶融しリッドをパッケージ本体に接合するものである。
【0079】
図15は、本応用形態の接合を行う接合装置の断面図、図16はそのリッド603の平面図である。
図15において、リッド603、左方図示のローラー電極604の各々の構造、材質は、概ね第1実施形態と同様である。
但し、シールリングに替えてメタライズ層608を用い、リッド603の下表面にろう材609を形成し、パッケージ本体602は、金属からなり導電性材料に変更したことが異なる。
なお、パッケージ本端602の底部には、図1と同様に、半導体装置が接合され、リード電極が配置され、導電ワイヤーが半導体装置とリード電極を同通接続しているが、それらの図示は省略した。
上記メタライズ層608は、予めパッケージ本体602の表面にタングステン粒子を混ぜたペーストを印刷してから加熱硬化させる等によりタングステン膜を20〜30μm形成し、その表面にNi無電解メッキを3〜5μm、その表面にAu無電解メッキを0.3〜0.5μm形成する。
上記ろう材609は、リッド603の下表面にAu―Sn合金メッキを50μmほどに形成しておくものである。上記ろう材609は、上記以外の金属、例えばAu―Cu合金やSn−Pb合金等のろう材であってもよい。
【0080】
610は、接合用交流電源であり、上記ローラー電極604とパッケージ本体602との間に配置されている。
ここでリッド603の一辺を接合するには、まず上記ローラー電極604により各辺に仮接合を施しておく。
次に、図15のように、上記ローラー電極604をリッド603の一辺の外端に押圧し、接合用交流電源610からの接合用交流電流を流すと、上記ローラー電極604、リッド603、ろう材609、メタライズ層608、パッケージ本体602に電流が流れ、そのジュール熱によりろう材609のAu―Sn合金メッキ部及びメタライズ層608のNiメッキ部とAuメッキ部とが融合することにより、リッド604がパッケージ本体602に接合するようになる。
なお、上記リッド603のろう材609の下表面のAu―Sn合金メッキ部分等とメタライズ層608の表面のNiメッキ部分及びAuメッキ部分は、ジュール熱により溶解してリッド603をパッケージ本体602に接合させる接合材である。
上記の接合の場合、図15の右側に二点差線で記載されたように、ローラー電極604が押圧している一辺の対向辺に補助ローラ611を押圧し、ローラー電極604が一辺上を回転するのに同期して対向辺を回転するようにしてもよい。
【0081】
上記ローラー電極604によるリッド603の各辺の接合は、図16のように行う。
まず、長方形のリッド603において、左辺で接合A1を行い次に逆向きにA2を行う。次に対向辺の右辺で接合A1と同方向に接合A3を、次に逆向きに接合A4を行い、次に上辺で接合B1を行い次に逆向きで接合B2を行い、次の下辺で接合B1と同方向で接合B3を行い次に逆向きで接合B4を行う。
上記接合A1とA2、接合A3とA4、接合B1とB2、接合B3とB4は、各々の接合開始位置が各辺の中央付近であり、各接合方向は各々の矢印の接合方向にある端部に向かって行う。その際、各接合の接合開始位置付近では、各々の接合が重なるようになる。この重なり長さは、第1実施形態の場合、例えば図2のA1とA2の重なり長さ2Lと同様である。
【0082】
このため、前述のように各接合を各辺の中点付近の接合開始位置から端部の終点位置まで加熱しながら行うので、従来の図17のように各辺の一方の端部の接合開始位置から他方の端部の終点位置まで行う場合に比べ、接合開始位置から終点位置までの距離が短くなり、従って終点位置でのリッドの温度は従来のように高温になることを抑制できる。しかも、各端部ア、イ、ウ、エにおいて、一方の辺の接合(例えばA1)と隣接辺の接合(例えばB1)の温度とが重ね合わされるのであるが、各端部(例えば端部ア)での重ね合わせ温度が高温になることが抑制される。また各端部ア、イ、ウ、エの上記重ね合わせ温度は、ほぼ同等になる。以上から、各端部ア、イ、ウ、エでのリッドの膨張、冷却時の収縮の量が少なくなるので、リッドの亀裂や破壊を防止することが出来る。
加えて、本実施形態では、各辺において、接合A1とA2、A3とA4、B1とB2、B3とB4の接合開始位置付近は両接合が重なって行われるので、各々の接合開始による加熱温度が低くても、両者の加熱温度が重なることから、それらの加熱温度が重ね合わせされ、接合にふさわしい温度を確保しやすくなるものである。従って、本実施形態では、各辺の端部及び中点付近は無論のこと、全辺において、接合に適した加熱温度に保つことが出来、膨張量、収縮量にバラツキが少なくなり、よって内部応力が少なく、リッド等の亀裂や破壊が生じることもなく、しかも長期にわたって良好な接合状態が維持されるものである。
【0083】
そこで、本応用形態の発明を汎用的に表現すると、次の様になる。
本応用形態の金属部材の接合方法は、平面視が略矩形状の一方金属部材及び他方部材の各辺を接合するにあたり、前記一方金属部材の各辺において、前記辺のほぼ中央付近から当該辺の一方の端である一端の付近までローラー電極を押圧移動させながらローラー電極と前記他方部材とを通電させ前記一方金属部材と前記他方部材との接触部で前記押圧移動させた部分にほぼ対応する部分を接合する一端方向接合工程と、前記一方金属部材で前記一端方向接合工程を行った辺のほぼ中央付近から当該辺の他方の端である他端の付近までローラー電極を押圧移動させながらローラー電極と前記他方部材とを通電させ前記一方金属部材と前記他方部材との接触部で前記押圧移動させた部分にほぼ対応する部分を接合する他方方向接合工程と、を有することを特徴とする。
また、本応用形態の接合金属部材ユニットは、平面視が略矩形状の一方金属部材及び他方部材を有し、前記一方金属部材の各辺において、前記辺のほぼ中央付近から当該辺の一方の端である一端の付近までローラー電極を押圧移動させながらローラー電極と前記他方部材とを通電させ前記一方金属部材と前記他方部材との接触部で前記押圧移動させた部分にほぼ対応する部分が接合されており、前記一方金属部材で前記辺のほぼ中央付近から当該辺の他方の端である他端の付近までローラー電極を押圧移動させながらローラー電極と前記他方部材とを通電させ前記一方金属部材と前記他方部材との接触部で前記押圧移動させた部分にほぼ対応する部分が接合されている、ことを特徴とする。
【0084】
〔変形例8〕
各実施形態及び各変形例において、シールリングに替えて図15のようにメタライズ層608を採用し、メタライズ層608をパッケージ本体に接合させておき、リッドの下表面に図15のろう材609としてのAu―Sn合金メッキを施すようにしてもよい。
また、各実施形態及び各変形例において、パッケージ本体に接合されるシールリングまたはメタライズ層や、リッドの下表面に形成するNiメッキ層及びAuメッキ層またはAu―Sn合金メッキ層の他に、通電によるジュール熱により溶融してリッドをパッケージ本体に接合することができるならばどのような接合材でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の金属部材の接合方法、接合金属部材ユニットは、半導体装置を固定したパッケージ本体にリッドを接合する上述のパッケージに適用できるだけでなく、パッケージ本体に半導体装置以外の電子部品、例えば水晶振動子を振動可能に装着して、そのパッケージ本体にリッドを接合するパッケージに適用することが出来る。
また本発明の金属部材の接合方法、接合金属部材ユニットは、上記以外の一方金属部材及び他方部材に適用してもよい。
【符号の説明】
【0086】
1、201:パッケージ、2、202:パッケージ本体(他方部材)、3、203、303、403、503、803、903:リッド(一方金属部材)、4:ローラー電極、4a:円錐部、4b:回転軸、5:半導体装置、6:リード電極、7:導電ワイヤー、8、205:シールリング、9:ろう材、204、904:ガラス板、A1、A1、B1、B1:一端方向接合工程、A2、A2、B2、B2:他端方向接合工程、L、P:所定距離、A11、A21、B11、B21:接合開始位置、ア、イ、ウ、エ:端部、オ、カ、キ、ク:中点(仮接合位置、幅狭部位置)、m、n:仮接合位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部材の接合方法、および接合金属部材ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体装置などの電子部品をセラミック等のパッケージ本体内に実装し、同パッケージ本体を金属のリッド(蓋部材)で封止するパッケージが知られている。
このリッドをパッケージ本体に接合するためには、特許文献1に開示されているように矩形状のリッドの一対の対向する2長辺に一対のローラー電極を圧接させ両ローラー電極間に接合用電流を流しジュール熱によりリッドをパッケージ本体との間に配置した金属接合材を溶融させてリッドをパッケージ本体に接合している。
【0003】
この場合、特許文献1の図6に図示されているように、リッドの前記長辺側の2辺各々の一端に一対のローラー電極を加圧した条件下で接触させ、この状態でパッケージをステージとともに長辺方向(矢印アの方向)、即ち前記長辺の一端から他端に向かう方向に移動させ、その際にローラー電極同士に通電を行いジュール熱によりろう材を溶融して前記長辺側2辺においてリッドをパッケージに接合し、次に短辺側2辺においても同様に接合するリッドの接合方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−114710号公報(特許請求の範囲、[0001]、[0005]、[0006]、図6等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記のように従来から行われているリッドの接合方法について、図17〜図19に基づいて、詳細に説明する。
図17は、上記接合方法の接合順序を詳述したリッド803の平面図である。
図17において、長辺アーイのほぼ中間点オと長辺エーウのほぼ中間点カは、リッド803を仮止めしておく位置である。
この仮止めは、一対のローラー電極各々を上記中間点オとカに圧接させた状態で両ローラー電極に通電することにより行われる。上記通電により、リッド803とパッケージ本体(図示省略)との間に配置したろう材が溶け出して両者を接合するものである。
【0006】
図17のA、Aは、リッド803の各長辺アーイ及びエーウに一対のローラー電極(図示省略)各々を圧接させて、各長辺においてローラー電極が相対的に移動する移動軌跡及びその方向を示したものである。
ローラー電極の移動軌跡A、Aがリッドの各長辺の一端ア、エに始まり他端イ、ウで終了している。従って、ローラー電極は、リッド803の各長辺の一端ア、エに始まり他端イ、ウまで、リッドの各長辺を圧接している。この際に、両ローラー電極間に接合用電流を通電しているため、ジュール熱により金属接合材が溶融しリッドをパッケージ本体に接合するものである。
この場合、リッド803の各長辺が加熱された温度は、図18に図示されているように、一端アから他端イに向かって高温に加熱され、同時に、一端エから他端ウに向かって高温に加熱される。図18のAT、ATは、長辺各々におけるリッド803の表面温度を示す温度グラフである。図18の左側の温度グラフATは、長辺アーイを基準線として右側に行くほど高い温度となるように図示されている。図18の右側の温度グラフATは、長辺エーウを基準線として左側に行くほど高い温度となるように図示されている。
【0007】
上記のようにローラー電極がリッド803の各長辺の一端ア、エに始まり他端イ、ウまでリッド803の各長辺を圧接・通電した後、直ちに、リッド及びパッケージを90度回転させて、リッド803の各短辺を接合する。この場合、作業性向上を図るため2長辺の接合によるリッド803の温度が低下しきらないうちに2短辺の接合が行われる。
この接合方向は、図17において、リッド803の各短辺に一対のローラー電極各々を圧接させて、各短辺においてローラー電極が相対的に移動する移動軌跡及びその方向がB、Bに図示されている。即ち、ローラー電極の移動軌跡及びその方向B、Bは、リッド803の各短辺の一端ア、イで始まり他端エ、ウで終了している。従って、ローラー電極は、リッド803の各短辺の一端ア、イで始まり他端エ、ウまで、リッド803の2短辺を圧接しており、同時に両ローラー電極間に接合用電流が通電している。このため、ジュール熱により金属接合材を溶融させてリッド803をパッケージ本体に接合するものである。
この場合、リッド803の各短辺が加熱された温度は、図18に図示されているように、一端アから他端エに向かって高温に加熱され、同時に、一端イから他端ウに向かって高温に加熱される。図18のBT、BTは、短辺各々におけるリッド803の表面温度を示す温度グラフである。図18の上側の温度グラフBTは、短辺アーエを基準線として下側に行くほど高い温度となるように図示されている。図18の下側の温度グラフBTは、短辺イーウを基準線として上側に行くほど高い温度となるように図示されている。
以上にして、リッド803の長辺側2辺と短辺側2辺とがパッケージ本体に接合される。
【0008】
ここで、長辺側2辺の接合及び短辺側2辺の接合により、リッド803の各辺の表面温度は、長辺側2辺の加熱と短辺側2辺の加熱とが互いに影響し合った温度状態となる。
そこで、各端部ア、イ、ウ、エ付近の表面温度は、図18で図示されているように、端部ア付近では、温度グラフATとBTのように加熱開始時のため低温であり、端部ウ付近では長辺エーウの温度グラフATのほぼ最高温度と短辺イーウの温度グラフBTの最高温度とがほぼ重ね合わせされるため最高重ね合わせ温度となっている。
端部イでは、長辺アーイの温度グラフATが最高高温であるが短辺イーウの温度グラフBTが低温であるので、重ね合わせ温度は端部アの重ね合わせ温度と端部ウの重ね合わせ温度の中間温度となる。同様に、端部エでは、長辺エーウの温度グラフATが低温であり 短辺アーエの温度グラフBTが高温であるので、重ね合わせ温度は端部アの重ね合わせ温度と端部ウの重ね合わせ温度の中間温度となる。
【0009】
従って、端部アでは、リッド803の膨張は少なく常温まで冷却された際の収縮も少ない。端部ウでは、リッドの膨張量Pウ(実線の矢印)は最も大きくなり、常温まで冷却された際の収縮量Qウ(鎖線の矢印)も最も大きくなる。端部イとエでは、リッド803の膨張量Pイ、Pエは中間であって常温まで冷却された際の収縮量Qイ、Qエも中間である。
このため、常温まで冷却された通常使用状態では、端部ウにおいて最大の収縮量Qウに見合った大きな収縮力(鎖線の矢印方向)がリッドに働いており、それが内部応力となる。従って、リッド803とパッケージ本体との接合部に上記内部応力が働き、リッド803は、端部ウ付近で亀裂や接合破壊を発生させる可能性がありパッケージの機密性を損ねてしまいかねない。この現象は、時間が経過するほど発生しやすい。
一方、端部アにおいては、加熱温度が低く、それに伴って接合力が小さくなりやすく、パッケージの機密性を損ねやすい。
【0010】
一方、図19に図示されたように、リッド903内にガラス板904を圧入保持させたタイプがある。
リッド903の平面形状はほぼ正方形であり、ガラス板904の外形形状は、ほぼ円形である。
このリッド903をパッケージ本体に接合するにあたり、図17と同様の接合方法で行っている。
即ち、一対のローラー電極を、上記のように通電しながらリッド903の対向する各辺の一端ア及びエから他端イ及びウに向けて移動軌跡A、Aのように移動させる。次にパッケージを90度回転させて、一対のローラー電極を通電しながらリッド903の他の対向する各辺の一端ア及びイから他端エ及びウに向けて移動軌跡B、Bのように移動させる。従って、リッド903の各辺は、前述のろう材が溶融してパッケージに接合されるのである。
【0011】
しかるに、前述のように端部ウでの収縮力が大きくなり、常温使用時ではリッド903に損傷をもたらせてしまう。
しかも円形のガラス板904とリッド903の辺との間隔が周囲より最も狭くなっているリッド903の各幅狭部位置オ、カ及びキ、クでは、もともとガラス板904の圧入により各幅狭部位置オ、カ及びキ、クに生じている圧入応力に加え、上記ローラー電極による加熱による膨張の後の冷却による収縮力が加わるので、幅狭部位置オ、カ及びキ、クには一層の内部応力が生じてしまう。従って、長期使用後には、幅狭部位置オ、カ及びキ、クに亀裂や破壊が生じパッケージの気密性が損なわれる可能性がある。
【0012】
本発明は、上記課題を解消するものであり、一方の金属部材を他方部材に接合しても、長期にわたって接合の信頼性を得る金属部材の接合方法及び接合金属部材ユニットをもたらすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明実施態様1の金属部材の接合方法は、平面視で平行状の対向2辺を有した一方金属部材を他方部材に接合するにあたり、前記一方金属部材の前記対向2辺の各々において、各辺の中央付近から当該辺に沿った一方の端部の付近までローラー電極を押圧移動させ、その際、各辺のローラー電極同士を前記一方金属部材を介して通電させて前記一方金属部材と前記他方部材とを接合する一端方向接合工程と、各辺の前記中央付近から当該辺に沿って前記一方とは反対方向にある他方の端部の付近までローラー電極を押圧移動させ、その際、各辺のローラー電極同士を前記一方金属部材を介して通電させて前記一方金属部材と前記他方部材とを接合する他端方向接合工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
上記本発明実施態様1の構成によれば、次のような作用効果を有する。
上記各々の接合工程は、対向2辺において、各々の中点付近の接合開始位置から一方の端部と他方の端部の終点位置まで各々加熱しながら行うので、従来の図17の各辺の一方の端部の接合開始位置から他方の端部の終点位置まで連続して行う場合に比べ、接合開始位置から各々の終点位置までの距離が短くなり、従って各々の終点位置での一方金属部材の温度は従来のように高温になりすぎることがない。
従って、各々の終点位置(端部)では、加熱による一方金属部材の膨張量と冷却による収縮量が小さくなって内部応力が減少する。当然ながら対向2辺の全体でも上記膨張量と収縮量が小さく内部応力が減少する。このため、一方金属部材において、前記端部はもとより対向辺全体での亀裂や破壊は防止される。加えて、他方部材でも同様に、接合される端部はもとより接合辺全域で上記内部応力は小さくなり、亀裂や破壊は防止される。
【0015】
一方、従来の図17の端部アのように、接合Aと接合Bが開始される端部はほとんど加熱されず低温のために接合が不安定になりやすいが、本発明の実施態様1は、前述のように各々の辺の中点付近の接合開始位置から一方の端部と他方の端部の終点位置まで各々加熱するので、上記一方の端部と他方の端部では程よく高温に加熱されるものである。よって前述の各端部の接合が安定するものである。
このため、一方金属部材と他方部材を採用した本発明の接合により、良好な接合状態が長期にわたって維持されるものである。
なお、対向2辺の各々の中点付近の接合開始位置での加熱温度が低すぎる場合には、接合開始から所定時間までは、前記一対のローラー電極の移動速度を低速にする、あるいはローラー電極同士に通電する接合用電流の電力をアップする等の加熱温度上昇方法を採用することも可能である。
また上記2辺が平行状とは、ほぼ平行に配置されていればよい。その場合、上記2辺は、直線同士の場合だけでなく、少なくとも一方の辺が円弧状、蛇行状であってもよい。
【0016】
なお、本実施態様では、一方金属部材と他方部材の平面視形状が矩形状である場合に、一方金属部材の上記矩形状の前記対向2辺において、一端方向接合工程と他端方向接合工程を前述のように行い、前記対向2辺とは異なる(ほぼ直交する)第2対向2辺でも一端方向接合工程と他端方向接合工程を前述のように行うことが好ましい。ただし、一方金属部材の前記対向2辺においては一端方向接合工程と他端方向接合工程を前述のように行うが、前記第2対向2辺では、図17の接合B、Bのように各辺の一端から他端まで一対のローラー電極を前述のように通電させながら押圧移動させて一方金属部材と他方部材を接合するようにしてもよい。その場合は、前記対向2辺においては一端方向接合工程と他端方向接合工程を前述のように行うことに伴う前述の作用効果がもたらされる。
【0017】
本発明実施態様2の金属部材の接合方法は、実施態様1の金属部材の接合方法であって、 前記他端方向接合工程の接合開始位置は、前記一端方向接合工程の接合開始位置より前記一端側に近づいており、各辺の前記中央付近では前記一端方向接合工程と他端方向接合工程の両接合が行われることを特徴とする。
【0018】
上記本発明実施態様2の構成によれば、次の様な作用効果を有する。
各辺の中点付近では、一端方向接合工程での接合と他端方向接合工程での接合の両者が重なって行われる。この場合、両接合が重なって行われる部分は上記各接合が開始される付近であり、この接合開始位置付近は加熱温度が比較的低いのであるが、両者の接合工程での加熱温度が重なることになる。即ち、一端方向接合工程での接合開始による加熱温度が冷め切らないうちに他端方向接合工程での接合が開始されるものであるから、それらの加熱温度がほぼ重ね合わせされた温度になり、接合にふさわしい温度を得ることができるものである。従って、各辺の両接合工程が重なって行われる部分は、良好な接合が行われることになる。
【0019】
本発明実施態様3の金属部材の接合方法は、実施態様1から実施態様2のうちいずれかに記載された金属部材の接合方法であって、前記一方金属部材及び他方部材は平面視で略矩形に形成され、前記対向2辺にほぼ直交して平行状の第2対向2辺が形成されており、前記第2対向2辺においても前記一端方向接合工程と前記他端方向接合工程とを行うことを特徴とする。
【0020】
上記本発明実施態様3の構成によれば、前記一方金属部材及び他方部材は略矩形に形成されている場合に、前記対向2辺に前記一端方向接合工程と他端方向接合工程とを行うとともに、第2対向2辺でも前記一端方向接合工程と他端方向接合工程とを行うため、第2対向2辺でも前記一端方向接合工程と他端方向接合工程とを行う前述の作用効果を有することができる。
加えて、前記対向2辺において前記一端方向接合工程と他端方向接合工程を行う作業を総称して一方の対向辺接合工程と称し、前記第2対向2辺において前記一端方向接合工程と他端方向接合工程を行う作業を総称して他方の対向辺接合工程と称すると、一方の対向辺接合工程により加熱された各4つの端部(コーナー部)の温度と、前記他方の対向辺接合工程により加熱された各4つの端部(コーナー部)の温度とは、前述のように各々の工程で高温になりすぎないことから両温度が重なった重ね合わせ温度は、前記一方金属部材と他方部材との良好な接合を図る上で最適な温度とすることができ、また各4つの端部の重ね合わせ温度がほぼ一定となる。従って、一方金属部材及び他方部材の膨張量及び常温への冷却による収縮量にバラツキが少なくなり、このため内部応力が小さく且つバラツキも少ない。このため、略矩形の全辺において前記一方金属部材と他方部材との接合が良好に行われるとともに、一方金属部材及び他方部材の亀裂や破壊の発生がなく、上記接合を長期にわたって安定させることができる。
【0021】
本発明実施態様4の金属部材の接合方法は、実施態様3に記載された金属部材の接合方法であって、前記対向2辺での前記一端方向接合工程と前記他端方向接合工程の前に、前記第2対向2辺において前記ローラー電極同士を前記第2対向2辺の所定位置に停止させ前記ローラー電極同士を前記一方金属部材を介して通電させて前記一方金属部材と前記他方部材とを仮接合する仮止め接合工程を行い、しかる後、前記対向2辺において前記一端方向接合工程と前記他端方向接合工程とを行い、この後、前記第2対向2辺において前記一端方向接合工程と前記他端方向接合工程とを行うことを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、前記対向2辺での前記一端方向接合工程と前記他端方向接合工程の前に、前記対向2辺とは異なる前記第2対向2辺で仮止め接合が行われるので、前記一端方向接合工程と前記他端方向接合工程による加熱が上記仮接合部に伝達しにくくなり、仮接合により一方金属部材を他方部材に確実に位置決めしたまま前記一端方向接合工程及び前記他端方向接合工程を行うことが出来、一方金属部材をより正しい位置で他方部材に接合することが出来る。
【0023】
本発明実施態様5の金属部材の接合方法は、実施態様1から実施態様4のうちいずれかに記載された金属部材の接合方法であって、前記一端方向接合工程及び前記他端方向接合工程の前に、各々のローラー電極を対向する2辺の所定位置に停止させ各々のローラー電極同士を前記一方金属部材を介して通電させて前記一方金属部材と前記他方部材とを仮接合する仮止め接合工程を行い、前記一端方向接合工程及び前記他端方向接合工程の各々の接合開始位置は、前記仮接合の位置とずれている、ことを特徴とする。
【0024】
上記本発明実施態様5の構成によれば、次の様な作用効果を有する。
上述のように前記一端方向接合工程及び前記他端方向接合工程の各々の接合開始位置が前記仮接合の位置とずれていることから、前記一端方向接合工程及び前記他端方向接合工程の各々の接合開始時において、上記仮接合部を即溶融することがない。従って、仮接合により一方金属部材を他方部材により位置決めした状態で、本接合の一端方向接合工程及び前記他端方向接合工程を行うことが出来る。このため、前記一端方向接合工程及び前記他端方向接合工程によって、一方金属部材を他方部材に正しい位置にて接合することが出来る。
【0025】
本発明実施態様6の金属部材の接合方法は、実施態様1または実施態様5のうちいずれかに記載された金属部材の接合方法であって、前記一方金属部材の中央側に外形形状が略円形の別部材が配設され、前記別部材の略円形外形部と前記一方金属部材の前記対向2辺との間には、両者の間隔が周囲より狭い幅狭部が形成されており、前記一端方向接合工程及び前記他端方向接合工程は、前記幅狭部を構成する当該辺の幅狭部位置とずれた位置から接合を開始する、ことを特徴とする。
【0026】
上記構成によれば、上記接合を行っても前記幅狭部に無理な応力をもたらすことが減少し、前記一方金属部材と前記別部材との接合を長期にわたって安定させることができる。
もともと、前記一方金属部材の中央側に外形形状が略円形の開口が形成されることによって前記幅狭部が形成されることから、前記幅狭部には機械的応力が集中しやすく、亀裂、破壊が生じやすい。しかもこの状態の開口に別部材が圧入される場合には、幅狭部に機械的な亀裂や破壊が生じやすくなる。この状態の幅狭部にて上記接合が開始されると冷却状態にある部分が急激に加熱されるため熱ショック状態が生じて幅狭部が急激に膨張するあるいは冷却すると、幅狭部に亀裂、破壊が引き起こされかねない。
しかるに本実施形態は、前記一端方向接合工程と前記他端方向接合工程とにおいて、各々の接合開始位置が前記幅狭部を構成する当該辺の幅狭部位置とずれた位置であるので、各々の接合開始時の上記熱ショックを直接に前記幅狭部にもたらすことがない。
以上のように、幅狭部に熱ショックをかけることがなく、前記一方金属部材と前記別部材との接合を長期にわたって安定させることができる。
【0027】
本発明実施態様7の接合金属部材ユニットは、平面視で平行状の対向2辺を有した一方金属部材及び他方部材を有し、前記一方金属部材の前記対向2辺の各々において、各辺の中央付近から当該辺に沿った一方の端部の付近までローラー電極が押圧移動しながら各辺のローラー電極同士が前記一方金属部材を介して通電して前記一方金属部材と前記他方部材とが接合されており、各辺の前記中央付近から当該辺に沿って前記一方とは反対方向にある他方の端部の付近までローラー電極が押圧移動しながら各辺のローラー電極同士が前記一方金属部材を介して通電して前記一方金属部材と前記他方部材とが接合されている、ことを特徴とする。
【0028】
上記構成によれば、実施態様1と同様の作用効果を有する接合金属部材ユニットを得ることが出来る。
【0029】
本発明実施態様8の接合金属部材ユニットは、実施態様7に記載された接合金属部材ユニットであって、前記一方金属部材の中央側に外形形状が略円形の別部材が配設され、前記別部材の略円形外形部と前記一方金属部材の前記対向2辺との間には、両者の間隔が周囲より狭い幅狭部が形成されており、各ローラー電極が、当該辺に沿った一方の端部の付近まで押圧移動し始める位置、及び当該辺に沿った他方の端部の付近まで押圧移動し始める位置は、前記幅狭部を構成する当該辺の幅狭部位置からずれた位置である、ことを特徴とする。
【0030】
上記構成によれば、実施態様6と同様の作用効果を有する接合金属部材ユニットを得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態の接合を行う接合装置の断面図。
【図2】図1のリッドの平面図で、リッドの各辺の接合方向・接合順序を表示した図。
【図3】本発明の第1実施形態によるリッドが加熱された際のリッド各辺の表面温度及び接合用電流を示す図。
【図4】本発明の第1実施形態の変形例1の接合方法を示したリッドの平面図。
【図5】本発明の第1実施形態の変形例2の接合方法を示したリッドの平面図。
【図6】本発明の第1実施形態の変形例3の接合方法を示したリッドの平面図。
【図7】本発明の第1実施形態の変形例4の接合方法を示したリッドの平面図。
【図8】本発明の第1実施形態の変形例5の接合方法を示したリッドの平面図。
【図9】本発明の第1実施形態の変形例6の接合方法を示したリッドの平面図。
【図10】本発明の第2実施形態のパッケージの断面図。
【図11】図10での接合方法を示したリッドの平面図。
【図12】本発明の第3実施形態の接合方法を示したリッドの平面図。
【図13】本発明の第4実施形態の接合方法を示したリッドの平面図。
【図14】本発明の第5実施形態の接合方法を示したリッドの平面図。
【図15】本発明の応用形態での接合を行う接合装置の断面図。
【図16】図15の接合方法を示したリッドの平面図。
【図17】従来の接合方法を示したリッドの平面図。
【図18】従来の接合方法によるにリッドが加熱された際のリッド各辺の表面温度を示す図。
【図19】従来の他の接合方法を示したリッドの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を具体的な実施形態に基づいて説明する。
【0033】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態は、半導体装置を実装したパッケージ本体にリッドを接合するものであり、このリッドを接合することにより半導体を収納したパッケージを得るものである。即ち、矩形状のリッドの一対の対向する2辺及び第2対向2辺に各々一対のローラー電極を圧接させ両ローラー電極間に接合用電流を流しジュール熱によりリッドをパッケージ本体に接合して上記パッケージを得るものである。
【0034】
図1は、第1実施形態の接合を行う接合装置の断面図である。
図1の接合装置は、半導体装置を収納したパッケージ1を得るためのもので、一方金属部材であるリッド3を断面が皿状に形成された他方部材であるパッケージ本体2の上端に載置し、このリッド3の略平行配置された一対の外形辺に一対のローラー電極4、4を押圧し通電する装置である。
5は、ICやLSI等の半導体装置である。半導体装置5は、パッケージ本体2の内部に接合されている。半導体装置5は、先端がパッケージ本体2から外部に突出している金属板状のリード電極6の内端に導電ワイヤー7にて導通接続している。
【0035】
パッケージ本体2は、平面矩形に形成され、アルミナ系セラミックから構成されている。パッケージ本体2の材質は、上記以外のセラミックでもよい。
リッド3は、パッケージ本体2の平面矩形と同様の形状でほぼ同等の大きさの平面矩形に形成され、コバール合金(FeにNiとCoとを配合した合金)材から構成されている。リッド3の材料は、パッケージ本体2と熱膨張率が近ければ、コバール合金以外の金属でもよい。リッド3の表面には、Niメッキが施され、さらにそのNiメッキの表面にAuメッキが施されていてもよい。
リッド3及びパッケージ本体2は、平面視で平行状の対向2辺とこの対向2辺にほぼ直交する第2対向2辺とで上記矩形状が形成されている。
8は、パッケージ本体2の外周壁の上面に形成されたシールリングである。シールリング8は、厚さが0.3〜0.5mmで、予めコバール合金からなるリングをプレス加工等により形成しておき、そのリングの表面にNiメッキ(厚さ3〜5μm)を被覆しそのNiメッキの表面にAuメッキ(厚さ0.3〜0.5μm)を形成して構成されている。このシールリング8をパッケージ本体2の表面に配置しAg―Cu合金等のろう材9でろう接して固定している。ろう材9は、上記材料に限定されるものではなく、例えば半田であってもよく、厚さや製法も上記以外でもよい。
【0036】
ローラー電極4、4は、導電性に優れる金属から構成され、断面形状が円錐形の円錐部4aと回転軸4bとを有している。
上記の各円錐部4a、4aは、図1に図示されているように、リッド3の外周上端部(対向辺、第2対向辺の外周上端部)に接触している。各回転軸4b、4bは、外部より回転制御されるととともに、パッケージ本体2側(図1の下側)に押圧手段で押圧されている。この押圧は、パッケージ本体2側をローラー電極4、4に押す手段であってもよい。
ローラー電極4、4は、各円錐部4a、4aがリッド3の対向辺の外周上端部をパッケージ本体2側に押圧するように、対向配置されている。
上記のような関係部材の位置のもとに、両ローラー電極4、4の各円錐部4a、4aがリッド3の対向辺の外周上端部をパッケージ本体2側に押圧しながら、両ローラー電極4、4間に接合用交流電流を流すと、上記電流がリッド3及びシールリング8に流れ、ジュール熱によりリッド3の表面のNiメッキ部分等とシールリング8の表面のNiメッキ部分及びAuメッキ部分とが溶解することにより、リッド3がパッケージ本体2に接合するものである。
上記リッド3の表面のNiメッキ部分等とシールリング8の表面のNiメッキ部分及びAuメッキ部分は、ジュール熱により溶解してリッド3をパッケージ本体2に接合させる接合材である。
【0037】
〔接合方法〕
次に、リッド3がパッケージ本体2に接合される方法(工程)を説明する。
まず、図1のように、パッケージ本体2の皿状底部上に半導体装置5を接合し、リード電極6に導電ワイヤー6を導通接続する(パッケージ本体への半導体装置実装工程)。
パッケージ本体への半導体装置実装工程の後、半導体装置5が実装されたパッケージ本体2にリッド3を仮接合する(リッド仮接合工程)。
このリッド仮接合工程は、不活性ガス(アルゴンガス、窒素ガス等)中や真空中等の非酸素雰囲気中で行われる。上記非酸素雰囲気中で行われるのは、上記接合を行う際に、接合部に酸化被膜が形成されて接合力が低減することを防止するためである。
上記リッド仮接合工程は、図2に図示されている。図2は、図1のリッド3の平面図で、各接合方向を示してある。
リッド仮接合工程は、図2のように、リッド3の各辺の中間位置付近を接合するものである。具体的には、一方の対向辺の中点オ及びカに上記各円錐部4a、4aが接触するように両ローラー電極4、4を移動し、両ローラー電極4、4がリッド3をパッケージ本体2側に押圧した状態で、両ローラー電極4、4間に接合用交流電流を流す。このため、上記中点オ及びカで、ジュール熱によりリッド3の表面のNiメッキ部分等とシールリング8の表面のNiメッキ部分及びAuメッキ部分とが溶解融合し、仮接合が施される。この場合、両ローラー電極4、4は回転せず固定位置のままである。
しかる後に、リッド3及びパッケージ本体2を90度回転し、他の対向辺の中点キとクに同様の仮接合を施して、リッド仮接合工程は終了する。
なお、リッド仮接合工程は、一方の対向辺の中点オとカのみを接合してもよく、他方の対向辺(第2対向辺)の中点キとクのみを接合してもよい。
【0038】
上記リッド仮接合工程の次に、一方の対向辺接合工程を行う。
一方の対向辺接合工程は、図2のようなリッド3の平行配置された対向2辺である辺アーイと辺エーウの接合を行うものであり、接合不活性ガス(アルゴンガス、窒素ガス等)中や真空中等の非酸素雰囲気中で行われる。即ち、平面矩形状のリッド3において、対向2辺の辺アーイと辺エーウを同時に接合するものである。この接合は、一対のローラー電極4、4によるパラレルシーム熔接と呼ばれている。
この一方の対向辺接合工程では、一端方向接合工程と他端方向接合工程とを行う。
一端方向接合工程は、辺アーイと辺エーウを接合する際に、図2のA1、A1の接合を実線矢印A1、A1の向きに行うものである。
前記一端方向接合工程の次に行う他端方向接合工程は、辺アーイと辺エーウを接合する際に、図2のA2、A2の接合を鎖線矢印A2、A2の向き(実線矢印A1、A1の向きとは逆向き)に行うものである。
上記の接合A1、A1(一端方向接合工程)は、一対のローラー電極4、4の中心位置(円錐部4a、4aの回転中心位置で、回転軸4b、4bの回転中心位置)を、辺アーイの中点オより端部イ側(実線矢印A1とは反対方向)に若干の所定距離Lだけ近づけた接合開始位置A11、及び辺エーウの中点カより端部ウ側(実線矢印A1とは反対方向)に所定距離Lだけ近づけた接合開始位置A11に配置し、両ローラー電極4、4をリッド3に押圧しながら、両ローラー電極4、4間に接合用交流電流を流す。その状態のまま、両ローラー電極4、4を上記接合開始位置から一端ア、エまで回転させると、上記A1、A1の接合が行われる。
【0039】
上記の接合A2、A2(他端方向接合工程)は、一対のローラー電極4、4の上記中心位置を、辺アーイの中点オより端部ア側(鎖線矢印A2とは反対方向)に若干の所定距離Lだけ近づけた接合開始位置A21、及び辺エーウの中点カより端部エ側(鎖線矢印A2とは反対方向)に所定距離Lだけ近づけた接合開始位置A21に配置し、両ローラー電極4、4をリッド3に押圧しながら、両ローラー電極4、4間に接合用交流電流を流す。その状態のまま、両ローラー電極4、4を上記接合開始位置から他端イ、ウまで回転させると、上記A2、A2の接合が行われることになる。
上記接合A1、A1と上記接合A2、A2は、各々の接合開始位置付近において重なっており、その重なり距離は中点オ、カを中心にして2Lとなる。即ち、各々の接合開始位置付近の所定長さでは、接合A1、A1を行った後に逆接合方向の接合A2、A2が行われるものである。
【0040】
前記一方の対向辺接合工程の次に、他方の対向辺接合工程を行う。
この他方の対向辺接合工程は、前記一方の対向辺接合工程の行われた直後に行われ、リッド3及びパッケージ本体2を90度回転させてから、前記一方の対向辺接合工程と同様の雰囲気としての不活性ガス(アルゴンガス、窒素ガス等)中や真空中等の非酸素雰囲気中で行われる。
この他方の対向辺接合工程でも、前述のような一端方向接合工程と他端方向接合工程とを行う。
上記他方の対向辺接合工程での一端方向接合工程は、辺アーエと辺イーウを接合する際に、図2のB1、B1の接合を実線矢印B1、B1の向きに行うものである。
前記一端方向接合工程の次に行う他端方向接合工程は、辺アーエと辺イーウを接合する際に、図2のB2、B2の接合を鎖線矢印B2、B2の向き(実線矢印B1、B1の向きとは反対方向)に行うものである。
上記の接合B1、B1(一端方向接合工程)は、一対のローラー電極4、4の中心位置(円錐部4a、4aの回転中心位置で、回転軸4b、4bの回転中心位置)を、辺アーエの中点キより端部ア側(実線矢印B1とは逆方向)に若干の所定距離Lだけ近づけた接合開始位置B11、及び辺イーウの中点クより端部イ側(実線矢印B1とは逆方向)に所定距離Lだけ近づけた接合開始位置B11に配置し、両ローラー電極4、4をリッド3に押圧しながら、両ローラー電極4、4間に接合用交流電流を流す。その状態のまま、両ローラー電極4、4を接合開始位置B11から他端エ、ウまで回転させると、上記B1、B1の接合が行われる。
【0041】
上記の接合B2、B2(他端方向接合工程)は、一対のローラー電極4、4の上記中心位置を、辺アーエの中点キより端部エ側(鎖線矢印B2とは逆方向)に若干の所定距離Lだけ近づけた接合開始位置B21、及び辺イーウの中点クより端部ウ側(鎖線矢印B2とは逆方向)に所定距離Lだけ近づけた接合開始位置B21に配置し、両ローラー電極4、4をリッド3に押圧しながら、両ローラー電極4、4間に接合用交流電流を流す。その状態のまま、両ローラー電極4、4を接合開始位置から他端ア、イまで回転させると、上記B2、B2の接合が行われることになる。
上記接合B1、B1と上記接合B2、B2は、各々の接合開始位置付近において重なっており、その重なり距離は中点キ、クを中心にして2Lとなる。即ち、各々の接合開始位置付近の所定長さでは、接合B1、B1を行った後に逆接合方向の接合B2、B2が行われることになる。
【0042】
こうして、リッド3の4辺の接合が行われる。
上記一方の対向辺接合工程及び他方の対向辺接合工程により、リッド3がパッケージ本体2の外周上面に接合されるが、その接合は、前述のように、両ローラー電極4、4間に接合用交流電流が流されることによってジュール熱によりリッド3の表面のNiメッキ部分等とシールリング8の表面のNiメッキ部分及びAuメッキ部分とが溶解融合することによる。
両ローラー電極4、4間に流される接合用交流電流は、パルス電流であり、上記電流が流れる時間帯と流れない時間帯とを交互に行うため、リッド3の表面のNiメッキ部分等とシールリング8の表面のNiメッキ部分及びAuメッキ部分との溶けすぎをコントロールしながら効率よくジュール熱を発生させて接合するものである。
なお、上記所定距離Lは、一端方向接合工程と他端方向接合工程において、同じ長さとしたが、状況により異なるように設定してもよい。
【0043】
〔各辺、各端部の温度等〕
ここで、加熱接合される際のリッド3の各辺の温度を、図3に基づいて詳述する。
図3は、前記一方の対向辺接合工程及び前記他方の対向辺接合工程の際に、リッド3が加熱された際の各辺(辺アーイ、辺エーウ、及び辺アーエ、辺イーウ)におけるリッド3の表面温度を示す温度グラフである。
図3において、左上側の温度グラフA1T(実線)は、辺アーイを基準線として右側に行くほど高い温度となるように図示され、図3の右上側の温度グラフA1T(実線)は、辺エーウを基準線として左側に行くほど高い温度となるように図示されている。
同様に、図3において、左下側の温度グラフA2T(鎖線)は、辺アーイを基準線として右側に行くほど高い温度となるように図示され、図3の右下側の温度グラフA2T(鎖線)は、辺エーウを基準線として左側に行くほど高い温度となるように図示されている。
図3において、上右側の温度グラフB1T(実線)は、辺アーエを基準線として下側に行くほど高い温度となるように図示され、図3の下右側の温度グラフB1T(実線)は、辺イーウを基準線として上側に行くほど高い温度となるように図示されている。
同様に、図3において、上左側の温度グラフB2T(鎖線)は、辺アーエを基準線として下側に行くほど高い温度となるように図示され、図3の下左側の温度グラフB2T(鎖線)は、辺イーウを基準線として上側に行くほど高い温度となるように図示されている。
【0044】
一方、前記一方の対向辺接合工程及び前記他方の対向辺接合工程において、両ローラー電極間に流す接合用交流電流は、図3の左端と下端とに図示されている。
まず、前記一方の対向辺接合工程において上記電流を流す電流グラフは、図3の辺アーイの左側に表示されている。即ち、辺アーイにおける前述の温度グラフA1Tに対応する電流グラフは、実線のA1Iで表示されており、前述の温度グラフA2Tに対応する電流グラフは、鎖線のA2Iで表示されている。電流量は、電流グラフA1I及びA2Iにおいて図3の右側に行くほど大きくなるように図示されている。
図3の辺エーウにおける前述の温度グラフA1Tに対応する電流グラフ及び温度グラフA2Tに対応する電流グラフは、上記電流グラフA1I及びA2Iと辺エーウに対して対象関係になる(表示は省略)。
同様に、前記他方の対向辺接合工程において上記電流を流す電流グラフは、図3の辺イーウの下側に表示されている。即ち、辺イーウにおける前述の温度グラフB1Tに対応する電流グラフは、実線のB1Iで表示されており、前述の温度グラフB2Tに対応する電流グラフは、鎖線のB2Iで表示されている。電流量は、電流グラフB1I及びB2Iにおいて図3の上側に行くほど大きくなるように図示されている。
図3の辺アーエにおける前述の温度グラフB1Tに対応する電流グラフ及び温度グラフB2Tに対応する電流グラフは、上記電流グラフB1I及びB2Iと辺アーエに対して対象関係になる(表示は省略)。
【0045】
ここで、前記一方の対向辺接合工程での上記電流量及び加熱されるリッド3の各辺の表面温度は、次の通りである。
上記A1、A1の接合においては、次の通りである。
図3の温度グラフA1T、A1Tのように、辺アーイの中点オより前記所定距離Lだけ端部イ側に近づいた接合開始位置A11、及び辺エーウの中点カから前記所定距離Lだけ端部ウ側に近づいた接合開始位置A11から各ローラー電極の円錐部4a、4aがリッド3の各辺アーイ、辺エーウを押圧し始め、且つ電流グラフA1Iのように通電し始めるので、その接合開始位置A11、A11の温度は通電前のリッドの温度とほぼ同じである。
上記電流量は、電流グラフA1Iのように前記接合開始位置A11、A11に対応する電流スタート点a1において最大電流量の約半分の電流量が流れ始める(立ち上がる)。前記電流スタート点a1において上記電流量が流れ始めてもその電流量が前記約半分であるのでリッドは直ぐには高温になることはなく、温度グラフA1T、A1Tのように電流スタート点a1から中点オ、カ側に向けて上昇する。
上記電流量は、電流グラフA1Iのように、前記電流スタート点a1での前記約半分の電流量から中点オ、中点カの最大電流量まで徐々に増加し、中点オ、中点カで最大電流量となりそのまま最大電流量が端部ア側、端部エ側に向かって流れる。端部アの所定手前位置、端部エの所定手前位置に達すると最大電流量から端部ア、端部エの電流ストップ点a2における前記約半分の電流量まで徐々に減少してゆき、電流ストップ点a2で前記約半分の電流量に減少したならば電流量はゼロ(通電停止)となる。その場合、上記温度は、温度グラフA1T、A1Tのように端部ア、端部エまで徐々に上昇してゆく。但し、電流ストップ点a2まで前述のように前記約半分の電流量まで徐々に減少してゆくので、上記温度上昇は急激にはならない。
【0046】
次に上記A2、A2の接合においても、上記A1、A1の接合の場合と同様である。
図3の温度グラフA2T、A2Tのように、辺アーイの中点オより前記所定距離Lだけ端部ア側に近づいた接合開始位置A21、及び辺エーウの中点カから前記所定距離Lだけ端部エ側に近づいた接合開始位置A21から各ローラー電極の円錐部4a、4aがリッド3の各辺アーイ、辺エーウを押圧し始め、且つ電流グラフA2Iのように通電し始めるので、その接合開始位置A21、A21の温度は通電前のリッドの温度とほぼ同じである。
上記電流量は、電流グラフA2Iのように前記接合開始位置A21、A21に対応する電流スタート点a3において最大電流量の約半分の電流量が流れ始める(立ち上がる)。前記電流スタート点a3において上記電流量が流れ始めてもその電流量が前記約半分であるのでリッドは直ぐには高温になることはなく、温度グラフA2T、A2Tのように電流スタート点a3から中点オ、カ側に向けて上昇する。
上記電流量は、電流グラフA2I(鎖線)のように、前記電流スタート点a3での前記約半分の電流量から中点オ、中点カの最大電流量まで徐々に増加し、中点オ、中点カで最大電流量となりそのまま最大電流量が端部イ側、端部ウ側に向かって流れる。端部イの手前の所定位置、端部ウの手前の所定位置に達すると最大電流量から、端部イ、端部ウの電流ストップ点a4における前記約半分の電流量まで徐々に減少してゆき、電流ストップ点a4で前記約半分の電流量に減少したならば電流量はゼロ(通電停止)となる。その場合、上記温度は、温度グラフA2T、A2Tのように端部イ、端部ウまで徐々に上昇してゆく。但し、電流ストップ点a4まで前述のように前記約半分の電流量まで徐々に減少してゆくので、上記温度上昇は急激にはならない。
【0047】
次に、前記他方の対向辺接合工程での上記電流量及び加熱されるリッド3の各辺の表面温度は、前記一方の対向辺接合工程の場合と同様であり、次の通りである。
上記B1、B1の接合においては、次の通りである。
図3の温度グラフB1T、B1Tのように、辺アーエの中点キより前記所定距離Lだけ端部ア側に近づいた接合開始位置B11、及び辺イーウの中点クから前記所定距離Lだけ端部イ側に近づいた接合開始位置B11から各ローラー電極の円錐部4a、4aがリッド3の各辺アーエ、辺イーウを押圧し始め、且つ電流グラフB1Iのように通電し始めるので、その接合開始位置B11、B11の温度は通電前のリッドの温度とほぼ同じである。
上記電流量は、電流グラフB1Iのように前記接合開始位置B11に対応する電流スタート点b1において最大電流量の約半分の電流量が流れ始める(立ち上がる)。前記電流スタート点b1において上記電流量が流れ始めてもその電流量が前記約半分であるのでリッドは直ぐには高温になることはなく、温度グラフB1T、B1Tのように電流スタート点b1から中点キ、ク側に向けて上昇する。
上記電流量は、電流グラフB1Iのように前記電流スタート点b1での前記約半分の電流量から中点キ、中点クの最大電流量まで徐々に増加し、中点キ、中点クで最大電流量となりそのまま最大電流量が端部エ側、端部ウ側に向かって流れる。端部エの手前の所定位置、端部ウの手前の所定位置に達すると最大電流量から端部エ、端部ウの電流ストップ点b2における前記約半分の電流量まで徐々に減少してゆき、電流ストップ点b2で前記約半分の電流量に減少したならば電流量はゼロ(通電停止)となる。その場合、上記温度は、温度グラフB1T、B1Tのように端部エ及び端部ウまで徐々に上昇してゆく。但し、電流ストップ点b2まで前述のように前記約半分の電流量まで徐々に減少してゆくので、上記温度上昇は急激にはならない。
【0048】
次に上記B2、B2の接合においても、上記B1、B1の接合の場合と同様である。
図3の温度グラフB2T、B2Tのように、辺アーエの中点キより前記所定距離Lだけ端部エ側に近づいた接合開始位置B21、及び辺イーウの中点クから前記所定距離Lだけ端部ウ側に近づいた接合開始位置B21から各ローラー電極の円錐部4a、4aがリッド3の各辺アーエ、辺イーウを押圧し始め、且つ電流グラフB2Iのように通電し始めるので、その接合開始位置B21、B21の温度は通電前のリッドの温度とほぼ同じである。
上記電流量は、電流グラフB2Iのように前記接合開始位置B21、B21に対応する電流スタート点b3において最大電流量の約半分の電流量が流れ始める(立ち上がる)。前記電流スタート点b3において上記電流が流れ始めてもその電流量が前記約半分であるのでリッドは直ぐには高温になることはなく、温度グラフB2T、B2Tのように電流スタート点b3から中点キ、ク側に向けて上昇する。
上記電流量は、電流グラフB2Iのように前記電流スタート点b3での前記約半分の電流量から中点キ、中点クの最大電流量まで徐々に増加し、中点キ、中点クで最大電流量となりそのまま最大電流量が端部ア側、端部イ側に向かって流れる。端部アの手前の所定位置、端部イの手前の所定位置に達すると最大電流量から端部ア、端部イの電流ストップ点b4における前記約半分の電流量まで徐々に減少してゆき、電流ストップ点b4で前記約半分の電流量に減少したならば電流量はゼロ(通電停止)となる。その場合、上記温度は、温度グラフB2T、B2Tのように端部ア及び端部イまで徐々に上昇してゆく。但し、電流ストップ点b4まで前述のように前記約半分の電流量まで徐々に減少してゆくので、上記温度上昇は急激にはならない。
【0049】
〔作用効果〕
以上の様にして行われたリッド3をパッケージ本体2に接合する接合方法によれば、次の様な有益な作用効果をもたらす。
まず、上記各々の一端方向接合工程及び他端方向接合工程は、リッド3をパッケージ本体2の対向2辺において、各々の中点付近の接合開始位置から一方の端部と他方の端部の終点位置まで各々加熱しながら行うので、従来の図17のように各辺の一方の端部の接合開始位置から他方の端部の終点位置まで連続して行う場合に比べ、接合開始位置から各々の終点位置までの距離が短くなり、従って各々の終点位置でのリッド3の温度は従来のように高温になりすぎることがない。
従って、各々の終点位置(端部)では、加熱によるリッド3の膨張量と冷却による収縮量は小さくなっておりその分内部応力が減少する。当然ながら対向2辺の全域でも上記膨張量と収縮量が小さく内部応力が減少する。このため、リッド3において、終点位置(端部)はもとより対向辺全域での亀裂や破壊は防止される。加えて、パッケージ本体でも同様に、接合される終点位置(端部)はもとより接合辺全体でも上記内部応力は小さくなり、亀裂や破壊は防止される。
一方、従来の図17の端部アのように、接合Aと接合Bが開始される端部は加熱開始時であることから加熱条件によっては加熱温度が比較的低く不安定となりやすい。この場合はリッドの端部アからリッドが剥離する等の気密性が損なわれる可能性を有している。上記リッドの剥離は端部(コーナー部)から始まるので、端部の接合が良好で安定していないと当該辺全域の機密性が損なわれかねない。これに対して本発明の第1実施形態は、前述のようにリッド3の各々の辺の中点付近の接合開始位置から一方の端部と他方の端部の終点位置まで各々加熱しているので、上記一方の端部と他方の端部は共に程よい高温に加熱される。従って、全端部の接合が安定し、剥離や機密性を損ねることがない。
【0050】
次に、前記一方の対向辺接合工程と前記他方の対向辺接合工程とが行われた際の各端部ア、イ、ウ、エの温度は、従来の図18の端部ウのように高温になりすぎることはない。
即ち、前記一方の対向辺接合工程において一端方向接合工程である接合A1、A1と他端方向接合工程である接合A2、A2、及び前記他方の対向辺接合工程において一端方向接合工程である接合B1、B1と他端方向接合工程である接合B2、B2の接合距離は、図17の接合A、A及び接合B、Bの接合距離より短いことから、前記一方の対向辺接合工程と前記他方の対向辺接合工程により加熱された各端部ア、イ、ウ、エの重ね合わせ温度は、図18の端部ウの重ね合わせ温度より低くものである。しかも各々の端部の重ね合わせ温度は、ほぼ同等となる。
詳述すると、図3のように端部アでは、辺アーイの接合A1による温度グラフA1Tの終点温度と辺アーエの接合B2の温度グラフB2Tの終端温度が重ね合わされて端部ア重ね合わせ温度となり、端部イでは、辺アーイの接合A2による温度グラフA2Tの終点温度と辺イーウの接合B2の温度グラフB2Tの終端温度が重ね合わされて端部イ重ね合わせ温度となり、端部ウでは、辺イーウの接合B1による温度グラフB1Tの終点温度と辺エーウの接合A2の温度グラフA2Tの終端温度が重ね合わされて端部ウ重ね合わせ温度となり、端部エでは、辺エーウの接合A1による温度グラフA1Tの終点温度と辺アーエの接合B1の温度グラフB1Tの終端温度が重ね合わされて端部エ重ね合わせ温度となる。
ここで、上記各温度グラフでの上記終点温度は、図18の温度グラフAT、BTの終点温度より前述のように低くなる。従って、第1実施形態での各端部ア、イ、ウ、エの重ね合わせ温度は、図18の端部ウの重ね合わせ温度より低くなるものである。しかも各端部ア、イ、ウ、エの重ね合わせ温度は、ほぼ同等となる。
【0051】
従って、各端部ア、イ、ウ、エの上記重ね合わせ温度は、図18の端部ウの重ね合わせ温度より低くなり、しかも各々がほぼ同等となるため、リッドの各端部ア、イ、ウ、エの各々の熱膨張量Pア、Pイ、Pウ、Pエ及び、冷却時の収縮量Qア、Qイ、Qウ、Qエは、図19の端部ウの膨張量Pウと収縮量Qウより小さくなり、しかも同等であることから互いにバラツキが殆ど生じない。
上記バラツキが殆ど生じないことは、従来の図19に比べると、顕著である。即ち図19では、端部アでは、膨張と収縮は殆ど生じないが、端部ウでは、前述のように膨張量Pウと収縮量Qウが他の端部に比べて際立って大きくなり、端部間の膨張量と収縮量とに大きな差をもたらせてしまうものであるのに対し、本実施形態では前述のように端部間の膨張量と収縮量とが同等となるのである。
従って、本実施形態の各端部ア、イ、ウ、エでは、常温時の収縮完了状態での内部応力が小さく、しかもバラツキが少なくなり、従ってリッド2がパッケージ本体2に接合される接合力は必要量が確保され、しかも長期にわたってリッドの亀裂や損傷をもたらすことはない。
【0052】
加えて、本実施形態では、各辺の中点オ、カ、キ、ク周辺は、接合A1、A1及びA2、A2、或いは接合B1、B1及びB2、B2が重なって行われる。この場合、各辺の中点オ、カ、キ、ク周辺は、上記接合A1、A1及びA2、A2、或いは接合B1、B1及びB2、B2が開始される付近であって各々の接合開始による加熱温度が比較的に低いが、両者の加熱温度が重なることから、接合にふさわしい温度を確保しやすくなるものである。即ち、一端方向接合工程(接合A1、A1及び接合B1、B1)での接合開始による加熱温度が冷め切らないうちに他端方向接合工程(接合A2、A2及び接合B2、B2)での接合が開始されるものである。従って、各辺の中点オ、カ、キ、ク周辺の接合は、良好である。この点は、従来の図19の端部アのように、接合A及び接合Bによってもほとんど加熱されない場合に接合が不安定になりやすいことに比べて、本実施形態では、端部アも上述のように良好に接合されるものである。しかも、各中点オ、カ、キ、ク周辺は、加熱温度が同等になるので、接合状態(接合力、長期接合力の変化量等)のバラツキも少なくなる。
従って、本実施形態では、各辺の端部及び中点付近は無論のこと、全辺において、接合に適した加熱温度を確保することが出来、膨張量、収縮量にバラツキが少なく、よって内部応力が少なく、リッド等の亀裂や破壊が生じることもなく、しかも長期にわたって良好な接合状態が維持されるものである。
なお、上記接合A1、A1及びA2、A2、或いは接合B1、B1及びB2、B2の上記重なり長さは、リッド、シールリング、パッケージ本体の材質、厚さ、形状、接合条件(接合電流の大きさ、ローラー電極の回転速度及び押圧力等)等により、適宜選択するようにしても良い。上記重なり長さは、例えば、上記各接合が開始される接合開始位置が前述の仮接合位置オ、カ、キ、クからだけ離れている前記所定距離Lを各々適宜選択するようにしてもよい。
【0053】
さらに、上記接合A1、A1及びA2、A2、或いは接合B1、B1及びB2、B2が開始される接合開始位置は、前述の仮接合位置オ、カ、キ、ク、即ち各々の辺の中点とは前記所定距離Lだけ離れているので、前記接合スタート時に、上記仮接合部(リッドのNiメッキ部等、シールリングのAuメッキ部やNiメッキ部等)を溶融させてリッド3のパッケージ本体2に対する移動を防止することが出来る。即ち、上記接合開始位置が仮接合位置オ、カ、キ、クに一致している場合には、接合スタート時の接合用電流により上記仮接合箇所を溶融するので、リッド3がパッケージ本体2に対する移動を抑制できなくなりやすいのに対しては、上記接合開始位置が仮接合位置オ、カ、キ、クから上記のように所定距離だけ離れているので、上記仮接合箇所の溶融を防止あるいは緩和し、パッケージ本体2に対するリッド3の移動を抑制し、リッド3を正しい位置で接合することができるものである。
なお、前述した他方の対向辺接合工程は、まずB1、B1の接合を実線矢印B1、B1の向きに行い、次にB2、B2の接合を鎖線矢印B2、B2の向き(実線矢印B1、B1の向きとは逆向き)に行っていたが、その順序とは逆に、まずB2、B2の接合を実線矢印B2、B2の向きに行い、次にB1、B1の接合を鎖線矢印B1、B1の向き(実線矢印B2、B2の向きとは逆向き)に行ってもよい。
【0054】
〔変形例1〕
図4は、本発明の第1実施形態の変形例1の接合方法を示したリッド3の平面図である。
変形例1の基本構造と基本接合方法は、第1実施形態の図1〜図3と同様である。
変形例1は、リッド3の平面形状が長方形であり、リッド仮接合工程においてその仮接合をリッド3の長辺に複数個所で行うものである。
図4において、左側長辺の仮接合点mは5箇所であり、右側長辺の仮接合点nは5箇所である。
上記のように仮接合点m、nを各々複数個所とすることにより、パッケージ本体2に対するリッド3の仮止め位置がより確実となり、接合A1、A1及びA2、A2による接合時に、リッド3がパッケージ本体2に対して移動することがなく、リッド3を正しい位置で接合することが出来る。
【0055】
〔変形例2〕
図5は、本発明の第1実施形態の変形例2の接合方法を示したリッド3の平面図である。
変形例2の基本構造と基本接合方法は、第1実施形態の図1〜図3と同様である。
変形例2は、図5のように、リッド仮接合工程で仮接合をリッド3の一方の対向辺(長辺側:対向2辺)に行うが、他の対向辺(短辺側:第2対向2辺)では行わず、各辺の各接合A1、A1とA2、A2、及びB1、B1とB2、B2の接合順番を変更しているものである。
即ち、まずリッド3の一方の対向辺(長辺)の各々の2箇所の仮接合点m、nでリッド仮接合を行った後、他方の対向辺(第2対向辺である短辺)で接合A1、A1とA2、A2を行い、次に前記一方の対向辺(長辺)で接合B1、B1とB2、B2を行うものである。
上記のように長辺でリッド仮接合を行った後において、短辺の上辺と下辺に、各々の中点付近から図2と同様に接合A1、A1を行い、次に上辺と下辺に各々の中点付近から図2と同様に接合A2、A2を行う。その場合、各接合A1、A1と接合A2、A2とは、接合開始位置付近において重なるものである。
次に、長辺の右辺と左辺に、各々の中点付近から図2と同様に接合B1、B1を行い、次に右辺と左辺に各々の中点付近から図2と同様に接合B2、B2を行う。その場合、各接合B1、B1と接合B2、B2とは、接合開始位置付近において重なるものである。
【0056】
変形例2によれば、リッド仮接合が各々の長辺で複数個所で行われているので、短辺側に仮止めがなされる場合に比べて長方形のリッドの仮止めの効果、即ちリッドの位置が安定する。このリッド位置が安定したままで、各々の短辺側で本番の接合A1、A1及びA2、A2が行われるので、リッドの移動はより確実に防止される。しかる後に、長辺側を接合B1、B1及びB2、B2することにより、リッドが最終的に正しい位置で接合されることになる。
さらに、前記一方の対向辺での各接合A1、A1と接合A2、A2を行う前に、前記一方の対向辺とは異なる前記他の対向辺で仮止め接合が行われるので、各接合A1、A1と接合A2、A2による加熱が上記仮接合部m、nに伝達しにくくなり、仮接合によりリッドをパッケージ本体に確実に位置決めしたまま各接合A1、A1と接合A2、A2を行うことが出来、リッドをより正しい位置でパッケージ本体に接合することが出来る。
なお、上記一方の対向辺が短辺であり上記他方の対向辺が長辺の場合や、上記一方の対向辺と上記他方の対向辺がほぼ同じ長さである場合でも、リッド3の一方の対向辺(短辺)でリッド仮接合を行った後、他方の対向辺(長辺)で接合A1、A1とA2、A2を行い、次に前記一方の対向辺(短辺)で接合B1、B1とB2、B2を行うようにしても、前述の作用効果が得られる。
【0057】
〔変形例3〕
図6は、本発明の第1実施形態の変形例3の接合方法を示したリッド3の平面図である。
変形例3の基本構造と基本接合方法は、第1実施形態の図1〜図3と同様である。
変形例3は、各接合A1、A1、B1、B1及びA2、A2、B2、B2の接合スタート時の接合用電流の流し方に特徴をもたせたものである。
即ち、図6の左端に表示されている接合用電流グラフのように、各接合A1、A1及びA2、A2のスタートでは、接合用電流A1I、A2Iを徐々に増加するようにしている。図6では、各辺の中点では接合用電流がピーク(最大電流量)ではなく中点を過ぎた時点でピークとなっている。そのまま接合方向にある端部に至ると接合用電流は、徐々に減少して最後には停止する。同様に、各接合B1、B1及びB2、B2のスタートでは、接合用電流A1I、A2Iと同様の接合用電流B1I、B2I(図6では図示を省略)を徐々に増加しており、各辺の中点では接合用電流がピークではなく中点を過ぎた時点でピークとなっている。そのまま接合方向にある端部に至ると接合用電流は、徐々に減少して最後には停止する。は、接合用電流A1I、A2Iの接合用電流グラフと同様であるので、表示は省略した。
上記のように、接合用電流を徐々に増加して各辺の中点では接合用電流がピークではなく、中点を過ぎた時点でピークとなるように制御することは、融点が低い接合材を用いる場合等のように、接合材がリッドの外部や内部に急激に流れ出ることを防止する際に有益である。またリッドの材質によっては、上記接合開始位置は、通常は常温であることから急激に接合用電流が流れると、リッドが急激に加熱されることによってその材質が変質し、接合後の機械的強度が弱体化する場合があるが、上記のように徐々に加熱することにより上記弱体化を防止することも可能である。
なお、図6では、各接合A1、A1、B1、B1及びA2、A2、B2、B2の接合終了時の接合用電流は、各辺の終端部まで最大電流量を流し、前記終端部からは徐々に減少させているが、図3のように前記終端部で接合電流を停止してもよい。
【0058】
〔変形例4〕
図7は、本発明の第1実施形態の変形例4の接合方法を示したリッド3の平面図である。
変形例4の基本構造と基本接合方法は、第1実施形態の図1〜図3と同様である。
変形例4は、各接合A1、A1、B1、B1及びA2、A2、B2、B2の接合電流の開始点a1、a3と接合電流終了点a2、a4の接合用電流の流し方に特徴をもたせたものである。
即ち、図7の左端に表示されている接合用電流グラフのように、各接合A1、A1及びA2、A2の接合電流開始点a1、a3では最大電流量の接合用電流A1I及び接合用電流A2Iを流し、接合電流終了点a2、a4まで最大電流量を流し、接合電流終了点a2、a4では接合電流を停止する。上記接合電流終了点a2、a4は、各接合A1、A1及びA2、A2における各々の接合方向の各々の端部に至る手前の所定位置である。
同様に、各接合B1、B1の終了時点では各々の接合方向の各々の端部に至る手前の所定位置で上記と同様の接合用電流B1I(A1Iと同様のグラフのため図示は省略)を停止し、及びB2、B2の終了時点では各々の接合方向の各々の端部に至る手前の所定位置で上記と同様の接合用電流B2I(A2Iと同様のグラフのため図示は省略)を停止するものである。
上記のように、各接合方向の各々の端部に至る手前の所定位置で接合用電流を停止しても、接合用電流が流れている際の加熱により先方の各端部にも熱が伝達されることから、接合材の融点が低い場合等接合材の材質や特性によっては各端部の接合が良好に行われる。従って、接合終了付近の電力が節約され、接合コストが安価になるものである。
【0059】
〔変形例5〕
図8は、本発明の第1実施形態の変形例5の接合方法を示したリッド3の平面図である。
変形例5の基本構造と基本接合方法は、第1実施形態の図1〜図3と同様である。
変形例5は、各接合A1、A1、A2、A2及びB1、B1、B2、B2の接合開始後に流す接合用電流の流し方に特徴をもたせている。
即ち、図8の左端に表示されている接合用電流グラフの電流A1Iのように、各接合A1、A1の接合開始直後には最大電流量の電流を流し始め、各々の中点(仮接合部)オ、カ付近までは同等量の電流を流す。その後は各接合A1、A1の接合方向先の端部ア、エに向かって電流量を徐々に減少させ、端部ア、エ付近で電流を停止する。同様に上記接合用電流グラフの電流A2Iのように、各接合A2、A2の接合開始直後には最大電流量の電流を流し始め、各々の中点(仮接合部)オ、カまでは同等量の電流を流す。その後は各接合A2、A2の接合方向先の端部イ、ウに向かって電流量を徐々に減少させ、端部イ、ウ付近では電流を停止している。
接合B1、B1、B2、B2においても接合A1、A1、A2、A2の場合と同様に接合電流を流す。即ち、各接合B1、B1の接合開始直後には最大電流量の電流を流し始め、各々の中点(仮接合部)キ、ク付近までは同等量の電流を流す。その後は各接合B1、B1の接合方向先の端部エ、ウに向かって電流量を徐々に減少させ、端部エ、ウ付近で電流を停止する。同様に各接合B2、B2の接合開始直後には最大電流量の電流を流し始め、各々の中点(仮接合部)キ、ク付近までは同等量の電流を流す。その後は各接合B2、B2の接合方向先の端部ア、イに向かって電流量を徐々に減少させ、端部ア、イ付近では電流を停止している。
上記のように接合開始直後には、接合に必要な最大電流量の電流を流すことによりリッド3や接合材が高温に加熱され、その接合先の部分も加熱熱が伝達することになる。従って、リッドや接合材の材質や特性によっては初期時の加熱により接合方向先のリッドなどが温められことになりその部分にローラー電極が押圧される際には上記電流が減少しても接合には差し支えないようになる。このため、接合初期段階で接合に必要とする大き目の電流を流した後の電流量が減少する分、消費電力を減少させて省エネ効果を得ることができる。
【0060】
〔変形例6〕
図9は、本発明の第1実施形態の変形例6の接合方法を示したリッド3の平面図である。
変形例6の基本構造と基本接合方法は、第1実施形態の図1〜図3と同様である。
第1実施形態の図3、変形例1から変形例5までは、各接合における接合用電流の流し方に違いを持たせていた。
変形例6は、各接合A1、A1、A2、A2及びB1、B1、B2、B2の接合用電力の電圧に変化をもたらせるか、あるいはローラー電極4、4がリッド3を押圧する圧力に変化をもたせたものである。
図9の左端は、各接合A1、A1においてローラー電極4、4間に供給する接合用電力の電圧変化を電圧グラフA1Vで表し、各接合A2、A2においてローラー電極4、4間に供給する接合用電力の電圧変化を電圧グラフA2Vで表したものであり、併せて各接合A1、A1においてローラー電極4、4がリッド3を押圧する圧力変化を圧力グラフA1Pで表し、各接合A2、A2においてローラー電極4、4がリッド3を押圧する圧力変化を圧力グラフA2Pで表したものである。この電圧グラフA1V、A2V及び圧力グラフA1P、A2Pは、各接合A1、A1及び各接合A2、A2の開始位置では最大値が加えられそのまま各接合A1、A1及び各接合A2、A2の終了端部まで変化無く継続し、その終了端部でゼロとなるものである。
【0061】
各接合B1、B1、B2、Bにおいて、接合用電力の電圧変化、あるいはローラー電極4、4がリッド3を押圧する圧力変化も、上記各接合A1、A1、A2、A2の場合の電圧変化、圧力変化と同様である。従って、各接合B1、B1の電圧グラフ(仮にB1Vと称す)及び圧力グラフ(仮にB1Pと称す)は、上記電圧グラフA2V及び圧力グラフA2Pと同様となり、各接合B2、B2の電圧グラフ(仮にB2Vと称す)及び圧力グラフ(仮にB2Pと称す)は、上記電圧グラフA1V及び圧力グラフA1Pと同様となる。
各辺の上記電圧グラフ、及び上記圧力グラフは、図9に限定されるものではなく、図3、図6、図7、図8の各電流グラフA1I、A2Iと同様に設定しても良い。
以上のように、変形例6では、接合用電力の電圧に変化をもたらせ、あるいはローラー電極4、4がリッド3を押圧する圧力に変化をもたらせたことにより、図3、図6、図7、図8における各電流グラフA1I、A2I及びB1I、B2Iと同様の効果をもたらせることができる。
なお、上記電圧変化により上記接合を行うと、電圧制御が簡便で確実な制御管理がしやすくなるものである。
また上記圧力変化により上記接合を行うと、加熱している箇所の接合材を確実にリッド3とパッケージ本体2に密着することができ、リッド3とパッケージ本体2の接合をより確実に行うことが出来る。
さらに、各接合において、変形例6の電力変化と圧力変化とを同時に行ってもよく、あるいは変形例6の電力変化または圧力変化と、図3、図6、図7、図8のいずれかの各電流グラフA1I、A2Iとを組み合わせて行ってもよい。
【0062】
〔変形例7〕
変形例7は、第1実施形態及びその変形例の金属部材の接合方法ではあるが、前記他端方向接合工程を、前記一端方向接合工程における接合開始位置又は接合終了位置におけるリッド(一方金属部材)又はパッケージ本体(他方部材)の接合部の温度が所定値まで低下してから開始するように変更しているものである。
上記変形例7によれば、前記他端方向接合工程の開始位置の温度が、前記一端方向接合工程における接合開始位置又は接合終了位置におけるリッド又はパッケージ本体の接合部の温度にそのまま加算されることが無い。そこで、リッド又はパッケージ本体の材料によっては前記のそのまま加算した温度であると高温になりすぎる場合があるのに対して、変形例7では前記一端方向接合工程の接合開始位置又は接合終了位置における上記所定温度まで低下している分、両者の重ね合わせ温度が低下する。従って、リッド又はパッケージ本体の接合部が冷却時に亀裂、破壊することを防止するものである。
なお、接合部の温度の前記所定値は、状況により設定すればよく、例えば、一端方向接合工程における接合開始位置又は接合終了位置におけるリッド(一方金属部材)又はパッケージ本体(他方部材)の接合部の最高温度の半分の温度とする。
【0063】
〔第2実施形態〕
第2実施形態は、平面視でリッドの内方にガラス部材を嵌め込み、このリッドをパッケージ本体に接合し、パッケージを得るものである。
第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、リッドに上記ガラス部材が嵌め込まれている点である。それ以外のリッドをパッケージ本体に接合する方法は、第1実施形態と同様である。
図10は、第2実施形態のパッケージ201の断面図であり、図11は、図10の平面図である。
第2実施形態のパッケージ201は、外形形状がほぼ円形のガラス板204が予め圧入等により嵌め込まれた矩形状のリッド203が、矩形状のパッケージ本体202に接合されている。ほぼ円形とは、真円、楕円形などを含む。
パッケージ本体202は、図1と同様に、その中央底面に半導体装置が接合され、リード電極が埋め込まれその下端がパッケージ本体202の底面から突出しており、導電ワイヤーが半導体装置の電極とリード電極とを接合しているものであるが、図示は省略している。
【0064】
パッケージ本体202はセラミックで形成され、リッド203はコバール合金で構成され、ガラス板204は無機ガラスである。ガラス板204は、耐熱性ガラスが好ましく、耐熱性に優れ圧縮強度が高ければ有機ガラス(合成樹脂)であっても良い。
前述の矩形状のリッド203に外形形状が円形のガラス板204が嵌め込まれる方法は、ガラス板204がリッド203に圧入されるのが好ましいが、その他に、ガラス板204がリッド203に接着材で接合されている場合、ガラス板204がリッド203にろう材により接合されている場合であってもよい。
リッド203をパッケージ本体202に接合するものは、第1実施形態と同様にシールリング205である。
シールリング205は、パッケージ本体202の外周上面にろう接等により予め一体化されているものである。シールリング205は、厚さが0.3〜0.5mmで、基材をコバール合金から構成され、その基材の表面に下地としてNiメッキ(厚さ3〜5μm)が、Niメッキの表面にAuメッキ(厚さ0.3〜0.5μm)が施されている。リッド203の外周全面にはNiメッキが、場合によってはその上にAuメッキが施されており、加熱接合時には、リッド203のNiメッキ等とシールリング205のNiメッキ及びAuメッキとが融合することによりリッド203がシールリング205に接合され、こうしてパッケージ本体202に接合されるものである。
上記リッド3の表面のNiメッキ部分等とシールリング8の表面のNiメッキ部分及びAuメッキ部分は、ジュール熱により溶解してリッド3をパッケージ本体2に接合させる接合材である。
【0065】
予めガラス板204が圧入取付けされたリッド203をパッケージ本体202に熱接合するには、第1実施形態の図2と同様に行う。なお各接合工程は、不活性ガス(アルゴンガス、窒素ガス等)中や真空中等の非酸素雰囲気中で行われる。
まず、リッドの仮接合工程でリッド203をパッケージ本体202に仮接合する。
この仮接合工程は、第1実施形態と同様に一対のローラー電極をリッド204の各辺の仮接合位置の中点に当てて行ってもよいが、少なくとも対向する辺同士において上記中点を避けた位置に行っても良うことが好ましい。図11において、辺アーイでは中点オを避けた位置m、mで、辺エーウでは中点カを避けた位置n、nで仮接合を行っている。また、各4辺において、中点オ、カ、キ、クを避けた複数個所で仮接合を行ってもよい。
ここで、上記仮接合位置を各辺の中点位置で行うと、円形状のガラス板204との幅が他より狭くなった幅狭部(リッドの各辺の中点からガラス板の外形部までの部分)に仮接合による加熱が加わる。もともと幅が狭く機械的強度が弱くなっている幅狭部に仮接合時の加熱が加わり、内部応力が増大し亀裂が生じやすくなる。
これに対して、第2実施形態では、上記のように幅狭部(リッド203の各辺の中点オ、カ、ク、キからガラス板204の外形部までの部分)に対応する各辺の幅狭部位置オ、カ、ク、キを避けた位置で仮接合を行うので、幅狭部への加熱温度が低くなり上記亀裂が生じにくくなる。
【0066】
次に、上記一方の対向辺接合工程を行う。
一方の対向辺接合工程は、図11に図示されているが、平面矩形状のリッド3において、一方の対向辺である辺アーイと、辺エーウを同時に接合するものである。この接合は、一対のローラー電極4、4によるパラレルシーム熔接と呼ばれている。
上記一方の対向辺接合工程である辺アーイと、辺エーウの接合は、まずA1、A1の接合(一端方向接合工程)を実線矢印A1、A1の向きに行い、次にA2、A2の接合(他端方向接合工程)を鎖線矢印A2、A2の向き(実線矢印A1、A1の向きとは逆向き)に行うことによって終了する。
接合A1、A1の接合開始位置A11、A11は、辺アーイの中点オ(幅狭部位置)から接合方向A1とは逆方向の端部イに所定距離だけ近づいた位置であり、辺エーウの中点カ(幅狭部位置)から接合方向A1とは逆方向の端部ウに所定距離だけ近づいた位置である。
次にA2、A2の接合を鎖線矢印A2、A2の向き(実線矢印A1、A1の向きとは逆向き)に行う。接合A2、A2の接合開始位置A21、A21は、辺アーイの中点オ(幅狭部位置)から接合方向A2、A2とは逆方向の端部アに所定距離だけ近づいた位置であり、辺エーウの中点カ(幅狭部位置)から接合方向A2、A2とは逆方向の端部エに所定距離だけ近づいた位置である。
【0067】
次に他方の対向辺接合工程を行う。
上記他方の対向辺接合工程である辺アーエ、辺イーウの接合は、まずB1、B1の接合(一端方向接合工程)を実線矢印B1、B1の向きに行い、次にB2、B2の接合(他端方向接合工程)を鎖線矢印B2、B2の向き(実線矢印B1、B1の向きとは逆向き)に行うことによって終了する。
接合B1、B1の接合開始位置B11、B11は、辺アーエの中点キ(幅狭部位置)から接合方向B1、B1とは逆方向の端部アに所定距離だけ近づいた位置であり、辺イーウの中点ク(幅狭部位置)から接合方向B1、B1とは逆方向の端部イに所定距離だけ近づいた位置である。
次にB2、B2の接合を鎖線矢印B2、B2の向き(実線矢印B1、B1の向きとは逆向き)に行う。接合B2、B2の接合開始位置B21、B21は、辺アーエ中点キ(幅狭部位置)から接合方向B2、B2とは逆方向の端部エに所定距離だけ近づいた位置であり、辺イーウの中点ク(幅狭部位置)から接合方向B2、B2とは逆方向の端部ウに所定距離だけ近づいた位置である。
上記各々の接合開始位置は、上記仮接合位置m、m及びn、nを避けた位置である。
接合A1、A1及び接合A2、A2の接合用電流の電流値は、図11の左端の電流グラフのA1I、A2Iに図示されている通りで、図3の電流グラフと同様である。
接合B1、B1及び接合B2、B2の接合用電流の電流値は、図示することを省略したが、図3の下端に図示された電流グラフB1I、B2Iと同様である。
【0068】
第2実施形態は、次の様な作用効果を有する。
上記構成によれば、上記接合によっても前記幅狭部に無理な応力をもたらすことがなく、前記リッド203と前記ガラス部材204との接合を長期にわたって安定させることができる。
前記リッド203の中央側に外形形状が略円形の開口が形成されること、及びこの開口にガラス部材204が配設されることによって、元来前記幅狭部には機械的応力が集中しやすく、亀裂、破壊が生じやすい。この状態の幅狭部に上記接合が開始されると冷却状態にある部分が急激に加熱されて熱ショック状態となり幅狭部が急激に膨張し、亀裂、破壊が引き起されやすい。
しかるに第2実施形態は、前記一端方向接合工程と前記他端方向接合工程とにおいて、各々の接合開始位置が前記幅狭部を構成する当該辺の幅狭部位置からずれた位置であるので、各々の接合開始時の上記熱ショックは直接に前記幅狭部にもたらされない。
以上のように、幅狭部に熱ショックをかけることなく、前記リッド203と前記ガラス部材204との接合を長期にわたって安定させることができる。
【0069】
さらに第2実施形態は、第1実施形態と同様に、前記一方の対向辺接合工程(接合A1、A1と接合A2、A2)により加熱された各端部ア、イ、ウ、エの温度と、前記他方の対向辺接合工程(接合B1、B1と接合B2、B2)により加熱された各端部ア、イ、ウ、エの温度とが重ね合わせされた際の各端部ア、イ、ウ、エの重ね合わせ温度は、高温になりすぎることがなく、しかも各端部ア、イ、ウ、エの重ね合わせ温度がほぼ一定となる。従って、リッド3とパッケージ本体2との接合に良好な加熱温度とすることができる。さらにリッドの膨張量及び常温への冷却による収縮量にバラツキがなく、長期にわたって上記接合を安定させることができる。
その上、円形のガラス板204とリッド203の各辺との間隔が最も狭くなっているリッド203の幅狭部オ、カ、キ、クでも、上記各接合が重ね合わせされてもその温度は高くならないことから、加熱時の膨張と冷却時の収縮量が少なくなり、内部応力が低くなる。よって、ガラス板204の挿入により幅狭部オ、カ、キ、クに内部応力が発生していても、上記接合による熱変形や内部応力の増加促進を抑制でき、幅狭部オ、カ、キ、クに亀裂が入り破壊することを防止することが出来る。従って、長期にわたってパッケージ201の気密性を確保することができる。
【0070】
〔第3実施形態〕
第3実施形態は、第1実施形態に対して各辺の接合方法を変更したものであり、その他は第1実施形態と同様である。
図12は、第3実施形態のリッドの303の平面図で、リッド303の各辺の接合方向・接合順序を表示した図である。
第1実施形態のリッドの各辺の接合方法は、一方の対向辺接合工程においては、前述のA1、A1の接合とA2、A2の接合は、各々の接合開始位置付近において重なっていた。即ち、各々の接合開始位置付近の所定長さLとLの範囲では、接合A1、A1を行った後に逆接合方向の接合A2、A2が行われた。同様に他方の対向辺接合工程においては、前述のB1、B1の接合とB2、B2の接合は、各々の接合開始位置付近において重なっていた。即ち、各々の接合開始位置付近の所定長さLとLの範囲では、B1、B1を行った後に逆接合方向の接合B2、B2が行われていた。
第3実施形態では、一方の対向辺接合工程においては、前述のA1、A1の接合とA2、A2の接合は、各々の接合開始位置付近において重ならないようにしており、同様に他方の対向辺接合工程においても、前述のB1、B1の接合とB2、B2の接合は、各々の接合開始位置付近において重ならないものである。
即ち、一方の対向辺接合工程では、接合A1、A1を行った後に逆接合方向の接合A2、A2が行われる重なり部分はなく、B1、B1を行った後に逆接合方向の接合B2、B2が行われる重なり部分はないのである。つまり、各辺においては、上記A1、A1の接合、A2、A2の接合、B1、B1の接合、B2、B2の接合だけが行われるものである。より詳細には、第3実施形態は、一方の対向辺接合工程の前述のA1、A1の接合とA2、A2の接合の接合開始位置は各々ほぼ同一とし、他方の対向辺接合工程の前述のB1、B1の接合とB2、B2の接合の接合開始位置は各々ほぼ同一である。
【0071】
図12において、リッド303において、左辺アーイの中点オ、右辺エーウの中点カ、上辺アーエの中点キ、下辺イーウの中点クでは、仮接合が行われている。
その場合、リッド303の対向辺にローラー電極を押し当てて通電し各辺をパッケージ本体に接合するにあたり、左辺と右辺との接合A1、A1の接合開始箇所は中点オ及びカであり端部ア、エに向かって接合され、接合A2、A2の接合開始箇所は中点オ及びカであり端部イ、ウに向かって接合される。
同様に上辺と下辺との接合B1、B1の接合開始箇所は中点キ及びクであり端部エ、ウに向かって接合され、接合B2、B2の接合開始箇所は中点キ及びクであり端部ア、イに向かって接合される。
従って、各接合が接合開始付近では重なることがない。
【0072】
第3実施形態では、各接合が接合開始付近では重なることがないため、リッドをパッケージ本体に接合する時間が短くなり、消費電力も少なく出来る。
なお、各接合が接合開始付近では重なることがないが、各接合開始時の加熱によりその付近も加熱される。このため、後から行われる他端方向接合工程の接合開始位置の温度はある程度高温となる。なお、接合材は、加熱温度が低くなっても接合が良好に行われるタイプを採用することがこのましい。
なお、仮接合箇所は、上記のように全辺に施す以外に、対向辺のみに施してもよく、あるいは、各辺の中点以外の箇所に施してもよい。
また、一方の対向辺接合工程では、図12のように前述のA1、A1の接合とA2、A2の接合が各々の接合開始位置付近において重ならないようにしているが、他方の対向辺接合工程では、第1実施形態のように前述のB1、B1の接合とB2、B2の接合は、各々の接合開始位置付近において所定距離重なるように接合しても良い。
【0073】
〔第4実施形態〕
第4実施形態は、各辺の接合方法を第3実施形態に対して変更したものであり、その他は第3実施形態と同様である。
第3実施形態では、一方の対向辺接合工程の前述のA1、A1の接合とA2、A2の接合の接合開始位置は各々ほぼ同一とし、他方の対向辺接合工程の前述のB1、B1の接合とB2、B2の接合の接合開始位置は各々ほぼ同一としていた。
第4実施形態は、一方の対向辺接合工程の前述のA1、A1の接合とA2、A2の接合の接合開始位置は所定距離だけ離れており、他方の対向辺接合工程の前述のB1、B1の接合とB2、B2の接合の接合開始位置は所定距離だけ離れているようにしたものである。
【0074】
図13は、第4実施形態のリッドの403の平面図で、リッド403の各辺の接合方向・接合順序を表示した図である。
図13において、一方の対向辺接合工程の前述のA1、A1の接合とA2、A2の接合の接合開始位置は、中点オ、カから各々所定距離P、Pだけ離れており、他方の対向辺接合工程の前述のB1、B1の接合とB2、B2の接合の接合開始位置は、中点キ、クから各々所定距離P、Pだけ離れている。
【0075】
このため第4実施形態では、各接合が接合開始付近では重なることがなく、各接合の接合開始位置が所定距離だけ離れているので、リッドをパッケージ本体に接合する時間が短くなり、消費電力も少なくなる。
なお、各接合が接合開始付近では重なることがなく所定距離だけ離れていても、各接合開始時の加熱によりその付近も加熱されるから接合されるものであるが、第1実施形態のように各接合の接合開始部分が重なる場合に比べて加熱温度が低くなっても接合が良好に行われる接合材を採用することが好ましい。
なお、仮接合箇所は、上記のように全辺に施す以外に、対向辺のみに施してもよく、あるいは、各辺の中点以外の箇所に施してもよい。
また、一方の対向辺接合工程では、図13のように前述のA1、A1の接合とA2、A2の接合の各々の接合開始位置は所定距離だけ離れているが、他方の対向辺接合工程では、第3実施形態のように前述のB1、B1の接合とB2、B2の接合は、各々の接合開始位置付が一致していてもよいし、或いは第1実施形態のように前述のB1、B1の接合とB2、B2の接合は、各々の接合開始位置付近において所定距離重なるように接合しても良い。
【0076】
〔第5実施形態〕
第5実施形態は、各辺の接合方法を第4実施形態に対して変更したものであり、その他は第3実施形態と同様である。
第4実施形態は、一方の対向辺接合工程の前述のA1、A1の接合とA2、A2の接合の接合開始位置は所定距離だけ離れており、他方の対向辺接合工程の前述のB1、B1の接合とB2、B2の接合の接合開始位置は所定距離だけ離れているものであった。
第5実施形態は、第4実施形態のように、一方の対向辺接合工程の前述のA1、A1の接合とA2、A2の接合の接合開始位置は所定距離だけ離れており、他方の対向辺接合工程の前述のB1、B1の接合とB2、B2の接合の接合開始位置は所定距離だけ離れているように接合した後に、上記両接合の接合開始位置が離れている所定距離の部分を第3の接合で補完接合するものである。
【0077】
図14は、第5実施形態のリッド503の平面図で、リッド503の各辺の接合方向・接合順序を表示した図である。
図14において、一方の対向辺接合工程の前述のA1、A1の接合とA2、A2の接合の接合開始位置が各々の中点から各々所定距離だけ離れて接合が行われる。その後で、その所定距離だけ離れた部分は少なくともカバーするように第3の接合A3が施される。
同様に、図14において、他方の対向辺接合工程の前述のB1、B1の接合とB2、B2の接合の接合開始位置が各々の中点から各々所定距離だけ離れて接合が行われる。その後で、その所定距離だけ離れた部分は少なくともカバーするように第4の接合B3が施される。
上記第3の接合A3の接合方向、第4の接合B3の接合方向は、図14のように、接合A2、接合B2と同方向としてもよく、あるいは図14とは逆に接合A1、接合B1と同方向としてもよい。
そこで、第5実施形態では、各接合により接合開始位置が前述のように所定距離だけ離れていても、第3接合A3、第3の接合B3により接合カバーされるので、リッド503の各辺の全長で接合が確実に行われることになる。
なお、一方の対向辺接合工程は、図14のようにA1、A1の接合とA2、A2の接合及び第3の接合A3が行われるが、他方の対向辺接合工程は、第1実施形態、第3実施形態、第4実施形態各々の他方の対向辺接合工程の接合を採用してもよい。
【0078】
〔応用形態〕
本応用形態は、前述の第1実施形態から第5実施形態の本発明を応用したものである。
第1実施形態から第5実施形態は、リッドの対向辺を一対のローラー電極で押圧し両電極間に接合用交流電流を流してリッドのメッキ層やシールリングのメッキ層などを溶融しリッドをパッケージ本体に接合する、いわゆるパラレルシーム熔接であった。
本応用形態は、リッドの一方の辺に一つのローラー電極を押圧し、このローラー電極とパッケージ本体側との間に接合用交流電流を流して接合材を溶融しリッドをパッケージ本体に接合するものである。
【0079】
図15は、本応用形態の接合を行う接合装置の断面図、図16はそのリッド603の平面図である。
図15において、リッド603、左方図示のローラー電極604の各々の構造、材質は、概ね第1実施形態と同様である。
但し、シールリングに替えてメタライズ層608を用い、リッド603の下表面にろう材609を形成し、パッケージ本体602は、金属からなり導電性材料に変更したことが異なる。
なお、パッケージ本端602の底部には、図1と同様に、半導体装置が接合され、リード電極が配置され、導電ワイヤーが半導体装置とリード電極を同通接続しているが、それらの図示は省略した。
上記メタライズ層608は、予めパッケージ本体602の表面にタングステン粒子を混ぜたペーストを印刷してから加熱硬化させる等によりタングステン膜を20〜30μm形成し、その表面にNi無電解メッキを3〜5μm、その表面にAu無電解メッキを0.3〜0.5μm形成する。
上記ろう材609は、リッド603の下表面にAu―Sn合金メッキを50μmほどに形成しておくものである。上記ろう材609は、上記以外の金属、例えばAu―Cu合金やSn−Pb合金等のろう材であってもよい。
【0080】
610は、接合用交流電源であり、上記ローラー電極604とパッケージ本体602との間に配置されている。
ここでリッド603の一辺を接合するには、まず上記ローラー電極604により各辺に仮接合を施しておく。
次に、図15のように、上記ローラー電極604をリッド603の一辺の外端に押圧し、接合用交流電源610からの接合用交流電流を流すと、上記ローラー電極604、リッド603、ろう材609、メタライズ層608、パッケージ本体602に電流が流れ、そのジュール熱によりろう材609のAu―Sn合金メッキ部及びメタライズ層608のNiメッキ部とAuメッキ部とが融合することにより、リッド604がパッケージ本体602に接合するようになる。
なお、上記リッド603のろう材609の下表面のAu―Sn合金メッキ部分等とメタライズ層608の表面のNiメッキ部分及びAuメッキ部分は、ジュール熱により溶解してリッド603をパッケージ本体602に接合させる接合材である。
上記の接合の場合、図15の右側に二点差線で記載されたように、ローラー電極604が押圧している一辺の対向辺に補助ローラ611を押圧し、ローラー電極604が一辺上を回転するのに同期して対向辺を回転するようにしてもよい。
【0081】
上記ローラー電極604によるリッド603の各辺の接合は、図16のように行う。
まず、長方形のリッド603において、左辺で接合A1を行い次に逆向きにA2を行う。次に対向辺の右辺で接合A1と同方向に接合A3を、次に逆向きに接合A4を行い、次に上辺で接合B1を行い次に逆向きで接合B2を行い、次の下辺で接合B1と同方向で接合B3を行い次に逆向きで接合B4を行う。
上記接合A1とA2、接合A3とA4、接合B1とB2、接合B3とB4は、各々の接合開始位置が各辺の中央付近であり、各接合方向は各々の矢印の接合方向にある端部に向かって行う。その際、各接合の接合開始位置付近では、各々の接合が重なるようになる。この重なり長さは、第1実施形態の場合、例えば図2のA1とA2の重なり長さ2Lと同様である。
【0082】
このため、前述のように各接合を各辺の中点付近の接合開始位置から端部の終点位置まで加熱しながら行うので、従来の図17のように各辺の一方の端部の接合開始位置から他方の端部の終点位置まで行う場合に比べ、接合開始位置から終点位置までの距離が短くなり、従って終点位置でのリッドの温度は従来のように高温になることを抑制できる。しかも、各端部ア、イ、ウ、エにおいて、一方の辺の接合(例えばA1)と隣接辺の接合(例えばB1)の温度とが重ね合わされるのであるが、各端部(例えば端部ア)での重ね合わせ温度が高温になることが抑制される。また各端部ア、イ、ウ、エの上記重ね合わせ温度は、ほぼ同等になる。以上から、各端部ア、イ、ウ、エでのリッドの膨張、冷却時の収縮の量が少なくなるので、リッドの亀裂や破壊を防止することが出来る。
加えて、本実施形態では、各辺において、接合A1とA2、A3とA4、B1とB2、B3とB4の接合開始位置付近は両接合が重なって行われるので、各々の接合開始による加熱温度が低くても、両者の加熱温度が重なることから、それらの加熱温度が重ね合わせされ、接合にふさわしい温度を確保しやすくなるものである。従って、本実施形態では、各辺の端部及び中点付近は無論のこと、全辺において、接合に適した加熱温度に保つことが出来、膨張量、収縮量にバラツキが少なくなり、よって内部応力が少なく、リッド等の亀裂や破壊が生じることもなく、しかも長期にわたって良好な接合状態が維持されるものである。
【0083】
そこで、本応用形態の発明を汎用的に表現すると、次の様になる。
本応用形態の金属部材の接合方法は、平面視が略矩形状の一方金属部材及び他方部材の各辺を接合するにあたり、前記一方金属部材の各辺において、前記辺のほぼ中央付近から当該辺の一方の端である一端の付近までローラー電極を押圧移動させながらローラー電極と前記他方部材とを通電させ前記一方金属部材と前記他方部材との接触部で前記押圧移動させた部分にほぼ対応する部分を接合する一端方向接合工程と、前記一方金属部材で前記一端方向接合工程を行った辺のほぼ中央付近から当該辺の他方の端である他端の付近までローラー電極を押圧移動させながらローラー電極と前記他方部材とを通電させ前記一方金属部材と前記他方部材との接触部で前記押圧移動させた部分にほぼ対応する部分を接合する他方方向接合工程と、を有することを特徴とする。
また、本応用形態の接合金属部材ユニットは、平面視が略矩形状の一方金属部材及び他方部材を有し、前記一方金属部材の各辺において、前記辺のほぼ中央付近から当該辺の一方の端である一端の付近までローラー電極を押圧移動させながらローラー電極と前記他方部材とを通電させ前記一方金属部材と前記他方部材との接触部で前記押圧移動させた部分にほぼ対応する部分が接合されており、前記一方金属部材で前記辺のほぼ中央付近から当該辺の他方の端である他端の付近までローラー電極を押圧移動させながらローラー電極と前記他方部材とを通電させ前記一方金属部材と前記他方部材との接触部で前記押圧移動させた部分にほぼ対応する部分が接合されている、ことを特徴とする。
【0084】
〔変形例8〕
各実施形態及び各変形例において、シールリングに替えて図15のようにメタライズ層608を採用し、メタライズ層608をパッケージ本体に接合させておき、リッドの下表面に図15のろう材609としてのAu―Sn合金メッキを施すようにしてもよい。
また、各実施形態及び各変形例において、パッケージ本体に接合されるシールリングまたはメタライズ層や、リッドの下表面に形成するNiメッキ層及びAuメッキ層またはAu―Sn合金メッキ層の他に、通電によるジュール熱により溶融してリッドをパッケージ本体に接合することができるならばどのような接合材でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の金属部材の接合方法、接合金属部材ユニットは、半導体装置を固定したパッケージ本体にリッドを接合する上述のパッケージに適用できるだけでなく、パッケージ本体に半導体装置以外の電子部品、例えば水晶振動子を振動可能に装着して、そのパッケージ本体にリッドを接合するパッケージに適用することが出来る。
また本発明の金属部材の接合方法、接合金属部材ユニットは、上記以外の一方金属部材及び他方部材に適用してもよい。
【符号の説明】
【0086】
1、201:パッケージ、2、202:パッケージ本体(他方部材)、3、203、303、403、503、803、903:リッド(一方金属部材)、4:ローラー電極、4a:円錐部、4b:回転軸、5:半導体装置、6:リード電極、7:導電ワイヤー、8、205:シールリング、9:ろう材、204、904:ガラス板、A1、A1、B1、B1:一端方向接合工程、A2、A2、B2、B2:他端方向接合工程、L、P:所定距離、A11、A21、B11、B21:接合開始位置、ア、イ、ウ、エ:端部、オ、カ、キ、ク:中点(仮接合位置、幅狭部位置)、m、n:仮接合位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で平行状の対向2辺を有した一方金属部材を他方部材に接合するにあたり、
前記一方金属部材の前記対向2辺の各々において、各辺の中央付近から当該辺に沿った一方の端部の付近までローラー電極を押圧移動させ、その際、各辺のローラー電極同士を前記一方金属部材を介して通電させて前記一方金属部材と前記他方部材とを接合する一端方向接合工程と、
各辺の前記中央付近から当該辺に沿って前記一方とは反対方向にある他方の端部の付近までローラー電極を押圧移動させ、その際、各辺のローラー電極同士を前記一方金属部材を介して通電させて前記一方金属部材と前記他方部材とを接合する他端方向接合工程と、
を有することを特徴とする金属部材の接合方法。
【請求項2】
請求項1に記載された金属部材の接合方法であって、
前記他端方向接合工程の接合開始位置は、前記一端方向接合工程の接合開始位置より前記一端側に近づいており、各辺の前記中央付近では前記一端方向接合工程と他端方向接合工程の両接合が行われる
ことを特徴とする金属部材の接合方法。
【請求項3】
請求項1から請求項2のうちいずれかに記載された金属部材の接合方法であって、
前記一方金属部材及び他方部材は平面視で略矩形に形成され、前記対向2辺にほぼ直交して平行状の第2対向2辺が形成されており、前記第2対向2辺においても前記一端方向接合工程と前記他端方向接合工程とを行う
ことを特徴とする金属部材の接合方法。
【請求項4】
請求項3に記載された金属部材の接合方法であって、
前記対向2辺での前記一端方向接合工程と前記他端方向接合工程の前に、前記第2対向2辺において前記ローラー電極同士を前記第2対向2辺の所定位置に停止させ前記ローラー電極同士を前記一方金属部材を介して通電させて前記一方金属部材と前記他方部材とを仮接合する仮止め接合工程を行い、
しかる後、前記対向2辺において前記一端方向接合工程と前記他端方向接合工程とを行い、
この後、前記第2対向2辺において前記一端方向接合工程と前記他端方向接合工程とを行う
ことを特徴とする金属部材の接合方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちいずれかに記載された金属部材の接合方法であって、
前記一端方向接合工程及び前記他端方向接合工程の前に、各々のローラー電極を対向する2辺の所定位置に停止させ各々のローラー電極同士を前記一方金属部材を介して通電させて前記一方金属部材と前記他方部材とを仮接合する仮止め接合工程を行い、
前記一端方向接合工程及び前記他端方向接合工程の各々の接合開始位置は、前記仮接合の位置とずれている、
ことを特徴とする金属部材の接合方法。
【請求項6】
請求項1または請求項5のうちいずれかに記載された金属部材の接合方法であって、
前記一方金属部材の中央側に外形形状が略円形の別部材が配設され、前記別部材の略円形外形部と前記一方金属部材の前記対向2辺との間には、両者の間隔が周囲より狭い幅狭部が形成されており、
前記一端方向接合工程及び前記他端方向接合工程は、前記幅狭部を構成する当該辺の幅狭部位置とずれた位置から接合を開始する、
ことを特徴とする金属部材の接合方法。
【請求項7】
平面視で平行状の対向2辺を有した一方金属部材及び他方部材を有し、
前記一方金属部材の前記対向2辺の各々において、各辺の中央付近から当該辺に沿った一方の端部の付近までローラー電極が押圧移動しながら各辺のローラー電極同士が前記一方金属部材を介して通電して前記一方金属部材と前記他方部材とが接合されており、
各辺の前記中央付近から当該辺に沿って前記一方とは反対方向にある他方の端部の付近までローラー電極が押圧移動しながら各辺のローラー電極同士が前記一方金属部材を介して通電して前記一方金属部材と前記他方部材とが接合されている、
ことを特徴とする接合金属部材ユニット。
【請求項8】
請求項7に記載された接合金属部材ユニットであって、
前記一方金属部材の中央側に外形形状が略円形の別部材が配設され、前記別部材の略円形外形部と前記一方金属部材の前記対向2辺との間には、両者の間隔が周囲より狭い幅狭部が形成されており、
各ローラー電極が、当該辺に沿った一方の端部の付近まで押圧移動し始める位置、及び当該辺に沿った他方の端部の付近まで押圧移動し始める位置は、前記幅狭部を構成する当該辺の幅狭部位置からずれた位置である、
ことを特徴とする接合金属部材ユニット。
【請求項1】
平面視で平行状の対向2辺を有した一方金属部材を他方部材に接合するにあたり、
前記一方金属部材の前記対向2辺の各々において、各辺の中央付近から当該辺に沿った一方の端部の付近までローラー電極を押圧移動させ、その際、各辺のローラー電極同士を前記一方金属部材を介して通電させて前記一方金属部材と前記他方部材とを接合する一端方向接合工程と、
各辺の前記中央付近から当該辺に沿って前記一方とは反対方向にある他方の端部の付近までローラー電極を押圧移動させ、その際、各辺のローラー電極同士を前記一方金属部材を介して通電させて前記一方金属部材と前記他方部材とを接合する他端方向接合工程と、
を有することを特徴とする金属部材の接合方法。
【請求項2】
請求項1に記載された金属部材の接合方法であって、
前記他端方向接合工程の接合開始位置は、前記一端方向接合工程の接合開始位置より前記一端側に近づいており、各辺の前記中央付近では前記一端方向接合工程と他端方向接合工程の両接合が行われる
ことを特徴とする金属部材の接合方法。
【請求項3】
請求項1から請求項2のうちいずれかに記載された金属部材の接合方法であって、
前記一方金属部材及び他方部材は平面視で略矩形に形成され、前記対向2辺にほぼ直交して平行状の第2対向2辺が形成されており、前記第2対向2辺においても前記一端方向接合工程と前記他端方向接合工程とを行う
ことを特徴とする金属部材の接合方法。
【請求項4】
請求項3に記載された金属部材の接合方法であって、
前記対向2辺での前記一端方向接合工程と前記他端方向接合工程の前に、前記第2対向2辺において前記ローラー電極同士を前記第2対向2辺の所定位置に停止させ前記ローラー電極同士を前記一方金属部材を介して通電させて前記一方金属部材と前記他方部材とを仮接合する仮止め接合工程を行い、
しかる後、前記対向2辺において前記一端方向接合工程と前記他端方向接合工程とを行い、
この後、前記第2対向2辺において前記一端方向接合工程と前記他端方向接合工程とを行う
ことを特徴とする金属部材の接合方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちいずれかに記載された金属部材の接合方法であって、
前記一端方向接合工程及び前記他端方向接合工程の前に、各々のローラー電極を対向する2辺の所定位置に停止させ各々のローラー電極同士を前記一方金属部材を介して通電させて前記一方金属部材と前記他方部材とを仮接合する仮止め接合工程を行い、
前記一端方向接合工程及び前記他端方向接合工程の各々の接合開始位置は、前記仮接合の位置とずれている、
ことを特徴とする金属部材の接合方法。
【請求項6】
請求項1または請求項5のうちいずれかに記載された金属部材の接合方法であって、
前記一方金属部材の中央側に外形形状が略円形の別部材が配設され、前記別部材の略円形外形部と前記一方金属部材の前記対向2辺との間には、両者の間隔が周囲より狭い幅狭部が形成されており、
前記一端方向接合工程及び前記他端方向接合工程は、前記幅狭部を構成する当該辺の幅狭部位置とずれた位置から接合を開始する、
ことを特徴とする金属部材の接合方法。
【請求項7】
平面視で平行状の対向2辺を有した一方金属部材及び他方部材を有し、
前記一方金属部材の前記対向2辺の各々において、各辺の中央付近から当該辺に沿った一方の端部の付近までローラー電極が押圧移動しながら各辺のローラー電極同士が前記一方金属部材を介して通電して前記一方金属部材と前記他方部材とが接合されており、
各辺の前記中央付近から当該辺に沿って前記一方とは反対方向にある他方の端部の付近までローラー電極が押圧移動しながら各辺のローラー電極同士が前記一方金属部材を介して通電して前記一方金属部材と前記他方部材とが接合されている、
ことを特徴とする接合金属部材ユニット。
【請求項8】
請求項7に記載された接合金属部材ユニットであって、
前記一方金属部材の中央側に外形形状が略円形の別部材が配設され、前記別部材の略円形外形部と前記一方金属部材の前記対向2辺との間には、両者の間隔が周囲より狭い幅狭部が形成されており、
各ローラー電極が、当該辺に沿った一方の端部の付近まで押圧移動し始める位置、及び当該辺に沿った他方の端部の付近まで押圧移動し始める位置は、前記幅狭部を構成する当該辺の幅狭部位置からずれた位置である、
ことを特徴とする接合金属部材ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−119338(P2011−119338A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273421(P2009−273421)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(591093494)株式会社ミスズ工業 (58)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(591093494)株式会社ミスズ工業 (58)
【Fターム(参考)】
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