説明

金属配線構造及びその製造方法

【課題】オーバーエッチングが十分に行えて、しかもアルミニウム配線層の片落ちを起こすことのない微細ピッチの金属配線構造及びその製造方法を提供する。
【解決手段】バリアメタル層11、実質的なアルミニウム配線層12、さらに破線で示すフォトレジスト層PRと接触する、最上層がタングステン膜(W)で構成されるキャップ層13が順に積層されている。このような配線パターンのエッチングに際し、オーバーエッチングによりフォトレジスト層PRが目減りしてエッジ部分が型崩れすることがあっても、アルミニウム配線層12の形状には影響ない。すなわち、最上層のタングステン膜(W)は、アルミニウム配線層12をエッチングする際のエッチングマスク(ハードマスク)となり得るからである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、微細で高集積化が要求される半導体集積回路装置に係り、特に集積回路上で微細ピッチを有してパターニングされる金属配線構造及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体集積回路の高集積化、半導体チップの縮小化が進む中で、集積回路の配線ピッチは微細化する一方である。微細化のあまり、配線をパターニングする際のフォトレジストマスクを高精度に保つことさえ容易ではなくなってきているのが現状である。
【0003】集積回路の配線ピッチが0.5μm以下になると、配線幅も非常に狭くなる。このような状態で低抵抗化を考慮すれば、配線の断面積は高さ(厚み)方向で稼ぐことになる。しかし、フォトレジストの解像度を考慮すると、配線の高さ(厚み)は制限される。その理由を以下に説明する。
【0004】フォトレジストマスクのパターニング、つまり解像度は、フォトレジスト層が厚くなるほど精度が落ちる。従って、微細化に対応したフォトレジストマスクを形成するにはフォトレジスト層は薄い方がよい。しかしながら、配線の高さ(厚み)に応じてフォトレジストの層厚は大きくしなければならない。フォトレジストは、必要な配線形状以外を除去するエッチング時に目減りし、そのパターン形状を保つことが困難になるからである。
【0005】結局、薄いフォトレジスト層で微細なパターンを形成しても、高さ(厚み)のある微細な配線のパターンをエッチング形成するには、フォトレジストマスクのパターン形状が保てない。この結果、微細な配線パターンを精度よく形成するには配線の高さ(厚み)は制限される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】図8は、従来の配線層の構造であり、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングする様子を示す断面図である。図示しない導電領域と接続する配線構造は、バリアメタル層31、実質的なアルミニウム配線層32、反射防止膜となるキャップ層33が順に積層されている。キャップ層上のフォトレジスト層(破線34)をマスクにして上記積層をRIE(Reactive Ion Etching)法を用いてエッチングすることによりパターニングする。
【0007】一般に、レジスト層(34)によりマスクした上記必要な配線形状以外を全て除去するために、オーバーエッチングが行われる。オーバーエッチングにより、アルミニウム配線層32に含有するCuや最下層のバリアメタル層31の残留をなくすのである。
【0008】上記配線パターンのエッチング、さらに続くオーバーエッチングを経て、フォトレジスト層34は図示のように目減りする。この結果、配線層のエッジはエッチングされて配線形状が崩れ(アルミニウム配線層32の片落ち)、その分だけ断面積が減少する。
【0009】配線の高さ(厚み)が制限される微細パターンでは、アルミニウム配線層32の片落ちによる断面積の減少は集積回路に悪影響を及ぼす。すなわち、配線容量が落ち、集積回路動作における回路遅延が顕著になる。この結果、設計どおりの性能が得られないといった集積回路の信頼性問題にまで発展しかねない。
【0010】このように、従来の配線層の構造に関し、配線パターン形成時のオーバーエッチングは、配線ショートの危険性をなくすためにある程度時間をかけなければならない。しかし、オーバーエッチングを増やすとアルミニウム配線層の片落ちが発生する。
【0011】本発明は上記事情を考慮してなされたもので、その課題は、オーバーエッチングを十分に行うことができ、しかもアルミニウム配線層の片落ちを起こすことのない微細ピッチの金属配線構造及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の金属配線構造は、アルミニウムを主成分とした金属配線において、前記金属配線の基板側に向く面に形成されたバリアメタル層と、前記金属配線の基板と反対側に向く面に形成されたキャップ層とを具備し、前記キャップ層に関し最上層はタングステン膜であることを特徴とする。
【0013】また、本発明は、アルミニウムを主成分とした金属配線構造の製造方法において、少なくとも導電領域と接続するバリアメタル層を形成する工程と、前記バリアメタル層上にアルミニウムを主成分とした金属配線層を形成する工程と、前記金属配線層上に最上層がタングステン膜となるキャップ層を形成する工程と、前記キャップ層上にフォトレジスト層による所定のパターンを形成する工程と、前記フォトレジスト層に従って少なくともタングステン膜を始めとする前記キャップ層を選択的にパターニング除去する工程と、前記フォトレジスト層及びタングステン膜のパターンをマスクとして前記金属配線層を選択的にパターニング除去し、さらに最下層の前記バリアメタルをパターニング除去する工程とを具備したことを特徴とする。
【0014】本発によれば、最上層のタングステン膜は、アルミニウムを主成分とした金属配線層のエッチングマスクとして作用する。これにより、エッチング工程の大部分はタングステン膜がハードマスクとして働き、配線形状を精度よく保つ。
【0015】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の第1実施形態に係り、フォトリソグラフィ技術によりパターニングした金属配線構造を示す断面図である。図示しない導電領域と接続する金属配線構造は、バリアメタル層11、実質的なアルミニウム配線層12、さらに破線で示すフォトレジスト層PRと接触する、最上層がタングステン膜(W)で構成されるキャップ層13が順に積層されている。
【0016】上記バリアメタル層11は、例として図示したTi、TiN、Tiの積層の他に、TiとTiNの2層やTiWを含む層など種々考えられる。アルミニウム配線層12は、例えばCuを1%未満(例えば0.5%)含有させたものを用いる。しかし、これに限らず、Siを含むAl−Si−Cu合金層など種々の主配線部材が考えられる。
【0017】上記キャップ層13は、最上層がタングステン膜(W)であることが本発明の特徴であるが、その下層は種々考えられる。図示のように、アルミニウム配線層12側からTi、TiNの積層を構成した反射防止膜であってもよい。その他、タングステン膜(W)の下層は、TiN層のみであってもよく、アルミニウム配線層12とタングステン膜(W)両者間の密着性を増大させる密着層であればよい。
【0018】上記構成によれば、上記のような配線パターンのエッチングに際し、フォトレジスト層PRが目減りしてエッジ部分が型崩れすることがあっても、アルミニウム配線層12の形状には影響ない。すなわち、最上層のタングステン膜(W)は、アルミニウム配線層12をエッチングする際のエッチングマスク(ハードマスク)となり得るからである。これにつき、以下詳細に説明する。
【0019】図2〜図4は、それぞれ上記第1実施形態の金属配線構造をフォトリソグラフィ技術によりパターニングする様子を工程順に示す断面図である。図1と同様の箇所は同一の符号を付す。
【0020】まず、図2に示すように、周知のスパッタリング技術等を用いて半導体集積回路の所定層上に第1実施形態で示すバリアメタル層11、実質的なアルミニウム配線層12、キャップ層13を順に積層する。もちろん、キャップ層13における最上層はタングステン膜(W)を積層する。キャップ層13におけるタングステン膜(W)の下層には上述のように、反射防止膜や、タングステン膜(W)と配線層12両者間の密着性を増大させる密着層を構成する。
【0021】因みに、バリアメタル層11は50〜100nm、アルミニウム配線層12は400〜800nm、キャップ層13は反射防止膜としての膜厚が20〜80nm、最上層のタングステン膜(W)は100〜300nm程度である。
【0022】次に、フォトレジスト層PRを、周知のフォトリソグラフィ技術を用いてパターニングする。このフォトレジスト層PRは、解像度が許容できる範囲の厚さを有する。ピッチは例えば0.5μm程度である。
【0023】次に、図3に示すように、RIE(Reactive Ion Etching)技術を用いて、フォトレジスト層PRをマスクにキャップ層13を選択的にエッチング除去する。このエッチングは、例えば、F(フッ素)系の反応ガスを用いて最上層のタングステン膜(W)、反射防止膜(Ti/TiN積層)をエッチングする。
【0024】次に、図4に示すように、再びRIE技術を用いて、フォトレジスト層PR及びタングステン膜(W)のパターンをマスクにアルミニウム配線層12を選択的にパターニング除去し、さらに最下層のバリアメタル11をパターニング除去する。このエッチングは、例えば、Cl(塩素)系の反応ガスを用いてアルミニウム配線層12を除去し、さらに、バリアメタル11をオーバーエッチングしながら必要な配線形状以外の部分を全て除去する。
【0025】以上、図3、図4に示したのような、選択的なエッチング工程に関しては、同じエッチングチャンバー内で行えば、工程のスループットにもそれほど影響しないで済む。
【0026】上記実施形態の方法によれば、アルミニウム配線層12を加工するエッチング工程の大部分はタングステン膜(W)がハードマスクとして作用する。これにより、配線形状を精度よく保つことができる。例えば、図5に示すように、オーバーエッチングを十分に行ったとして、フォトレジスト層PRが目減りしたとしても、最上層のタングステン膜(W)のエッジが片落ちする程度に留まる。従って、主配線層であるアルミニウム配線層12は微細ピッチ形成であっても、設計どおりの形状を保つことができる。さらにいえば、従来の配線構造に比べ、タングステン膜(W)の分だけ、導電線として有効な断面積が増加する。この結果、配線容量を落とすことなく、集積回路として設計どおりの性能が得られる。
【0027】図6は、本発明の第2実施形態に係り、フォトリソグラフィ技術によりパターニングした金属配線構造を示す断面図である。図示しない導電領域と接続する金属配線構造は、バリアメタル層11、実質的なアルミニウム配線層12、さらに破線で示すフォトレジスト層PRと接触する、タングステン膜(W)で構成されるキャップ層23が順に積層されている。
【0028】この第2実施形態は、図示のようにキャップ層23がタングステン膜(W)単一層で構成されている他は、第1実施形態による構成と変わらない。すなわち、バリアメタル層11、実質的なアルミニウム配線層12は前記第1実施形態で説明したとおり種々考えられる。
【0029】キャップ層23としてのタングステン膜(W)単一層は、アルミニウム配線層12との密着性をそれほど重要視しなければ、製造工程数も減り、経済的にも有利である。配線層としてのパターニングは、上記図2〜図4と同様であるので説明は省略する。
【0030】このような実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、アルミニウム配線層12を加工するエッチング工程の大部分はタングステン膜(W)がハードマスクとなり配線形状を精度よく保つ。また、たとえオーバーエッチングを十分に行ってフォトレジスト層が目減りしたとしても、タングステン膜(W)のエッジが片落ちする程度に留まる。この結果、微細ピッチで形成しても、導電線として有効な断面積が十分確保でき、配線容量を落とすことなく、集積回路として設計どおりの性能が得られる。
【0031】図7は、本発明を適用した多層配線によるタングステンプラグとの接続を示す断面図である。第1及び第2実施形態で示したような構造の金属配線AL1,AL2,AL3(バリアメタル層等は省略)がタングステンプラグWPにより接続されている。金属配線AL1,AL2,AL3それぞれは、最上層がタングステン膜(W)で構成されている。これにより、タングステンプラグWPとの接続も極めて良好で低抵抗が実現できる。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、配線パターンのエッチングに際し、フォトレジスト層が目減りしてエッジ部分が型崩れすることがあっても、最上層のタングステン膜がハードマスクとなるので、主導電配線であるアルミニウム配線層の形状には影響ない。この結果、微細ピッチでも導電配線として有効な断面積が十分確保でき、かつ、コンタクト抵抗の安定化に寄与する、集積回路として設計どおりの性能が得られる高信頼性の金属配線構造及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係り、フォトリソグラフィ技術によりパターニングした金属配線構造を示す断面図である。
【図2】図1で示した金属配線構造の製造方法を工程順に示す第1の断面図である。
【図3】図1で示した金属配線構造の製造方法を工程順に示す、図2に続く第2の断面図である。
【図4】図1で示した金属配線構造の製造方法を工程順に示す、図3に続く第3の断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係り、オーバーエッチングを十分に行った場合の金属配線構造の形状を示す断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係り、フォトリソグラフィ技術によりパターニングした金属配線構造を示す断面図である。
【図7】本発明を適用した多層配線によるタングステンプラグとの接続を示す断面図である。
【図8】従来の配線層の構造であり、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングする様子を示す断面図である。
【符号の説明】
11…バリアメタル層、12…アルミニウム配線層、13…最上層がタングステン膜(W)で構成されるキャップ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 アルミニウムを主成分とした金属配線において、前記金属配線の基板側に向く面に形成されたバリアメタル層と、前記金属配線の基板と反対側に向く面に形成されたキャップ層と、を具備し、前記キャップ層に関し最上層はタングステン膜であることを特徴とする金属配線構造。
【請求項2】 前記キャップ層は反射防止膜を含むことを特徴とする請求項1記載の金属配線構造。
【請求項3】 前記キャップ層は前記タングステン膜のみから構成されることを特徴とする請求項1記載の金属配線構造。
【請求項4】 前記キャップ層は前記金属配線と前記タングステン膜両者間の密着性を増大させる密着層を含むことを特徴とする請求項1記載の金属配線構造。
【請求項5】 アルミニウムを主成分とした金属配線構造の製造方法において、少なくとも導電領域と接続するバリアメタル層を形成する工程と、前記バリアメタル層上にアルミニウムを主成分とした金属配線層を形成する工程と、前記金属配線層上に最上層がタングステン膜となるキャップ層を形成する工程と、前記キャップ層上にフォトレジスト層による所定のパターンを形成する工程と、前記フォトレジスト層に従って少なくともタングステン膜を始めとする前記キャップ層を選択的にパターニング除去する工程と、前記フォトレジスト層及びタングステン膜のパターンをマスクとして前記金属配線層を選択的にパターニング除去し、さらに最下層の前記バリアメタルをパターニング除去する工程と、を具備したことを特徴とする金属配線構造の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2001−85432(P2001−85432A)
【公開日】平成13年3月30日(2001.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−255624
【出願日】平成11年9月9日(1999.9.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】