説明

金属酸化物およびペプチドコンディショナーを含んでなる長期持続性の耐水性サンスクリーン

本開示は、二酸化チタンナノ粒子および流体ビヒクルなど、ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤を含んでなるサンスクリーン製剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2003年12月16日に出願された米国特許出願第10/737,357号明細書の一部継続出願である、2004年12月14日に出願された米国特許出願第11/011,670号明細書の一部継続出願であり、それら双方はそれら全体が参照により本明細書中に援用される。
【0002】
本出願は、2004年9月7日に出願された米国特許出願第10/935,642号明細書の一部継続出願であり、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【技術分野】
【0003】
本発明は、サンスクリーン組成物に関する。より詳細には、本発明は、無機金属酸化物および皮膚結合ペプチドに基づくサンスクリーン用スクリーン組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
二酸化チタンおよび酸化亜鉛などの特定の金属酸化物では、それらが有するサンスクリーン特性については知られている。二酸化チタンは、低毒性を有し、皮膚に対して非刺激性である。
【0005】
ナノ構造粒子および物質は、現在、大きな注目を集めている。(一般に100nm未満の粒子を示すように用いられる)ナノ粒子の小さいサイズは、バルク材に対してナノ粒子およびナノ構造物質の異なる特性(電子的、光学的、電気的、磁気的、化学的、および機械的)を担う可能性があり、それらは新しい産業用途に適するものになる。多数のこれらの新規用途において、水、有機溶媒、ワックス、オイル、ポリマーまたはこれらの混合物などの流体ビヒクル中に十分に分散される粒子および物質を提供および維持することは不可欠である。
【0006】
二酸化チタン(TiO)ナノ粒子は、可視光に対して実質的に透明である、すなわち、透明であるが、紫外光を反射、散乱および吸収する。ナノ粒子は、色素サイズの二酸化チタン粒子と異なり、製剤の透明性が望ましい場合のサンスクリーン製剤において有益でありうる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現行のスキンケア組成物に伴う主な問題は、それらにおける長期持続効果に必要な耐久性が不足する点である。これが理由で、スキンケア剤の皮膚への結合を促進するための試みがなされている。
【0008】
長期持続効果における改善された耐久性をもたらすサンスクリーン製剤に対する需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の実施形態では、本開示は、
(a)ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤、および
(b)流体ビヒクル
を含んでなるサンスクリーン製剤を提供する。
【0010】
ペプチドに基づくスキンコンディショナーは、一般構造(SBP)n−SSA(式中、SBPは皮膚結合ペプチドであり、SSAは金属酸化物サンスクリーン剤であり、かつnは1〜約50、詳細にはnは約1〜約10の範囲である)を有するジブロック組成物でありうる。
【0011】
本発明の一実施形態では、ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤は、一般構造[(SBP)−S]−SSA(式中、SBPは皮膚結合ペプチドであり、Sは第1および第2の末端を有するスペーサーであり、SSAは金属酸化物サンスクリーン剤であり、mは1〜約50の範囲であり、かつnは1〜約500、詳細にはnは約1〜約10の範囲である)を有するトリブロック組成物でありうる。
【0012】
本発明の一実施形態では、金属酸化物サンスクリーン剤は、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムおよび酸化鉄よりなる群、より典型的には二酸化チタンおよび酸化亜鉛よりなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物、およびさらに典型的には二酸化チタンを含んでなる。金属酸化物は、色素のサイズ範囲内またはナノ粒子のサイズ範囲内であってもよい。
【0013】
金属酸化物サンスクリーン剤は、
(a)金属酸化物のスラリーを形成するステップと、
(b)金属酸化物のスラリーを高密度化剤と接触させるステップと、
(c)該スラリーをアルミナ源、シリカ源またはそれら双方よりなる群から選択される金属酸化物源と接触させて処理された金属酸化物を形成するステップと、
(d)ステップ(c)で形成された該処理された金属酸化物を回収するステップと、
を含んでなるプロセスによって調製されうる。
【0014】
典型的には、このプロセスによって調製される金属酸化物は、二酸化チタン、特に二酸化チタンナノ粒子である。このプロセスによって調製される金属酸化物粒子は、高い光安定性および/または高い化学的安定性を有することが判明している。さらに、ナノ粒子がサンスクリーン組成物に調合される場合、同粒子において凝集体(agglomerates)を形成する傾向が低下する。
【0015】
金属酸化物ナノ粒子は、プラズマプロセスまたはゾルゲルプロセスを含む(がこれらに限定されない)、当該技術分野で周知の任意のプロセスによって調製されうる。
【0016】
第2の実施形態では、本発明は、ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤と流体ビヒクルとを混合するステップを含む、サンスクリーン製剤を調製するためのプロセスを提供する。
【0017】
図面の簡単な説明および配列の説明
本発明は、本出願の一部を形成する、以下の詳細な説明および添付の配列の説明からより完全に理解されうる。
【0018】
以下の配列は、37C.F.R.1.821〜1.825(「ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列の開示を含む、特許出願のための要求事項−配列規則(Requirements for Patent Applications Containing Nucleotide Sequences and/or Amino Acid Sequence Disclosures−the Sequence Rules)」)に一致し、かつ世界知的所有権機関(WIPO)標準ST.25(1998年)ならびにEPOおよびPCTの配列リストへの要求事項(規則5.2および49.5(a−bis)、ならびに実施細則のセクション208および付録C)に一致する。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データのために用いられる記号および形式は、37C.F.R.§1.822に示される規則に従う。
【0019】
配列番号1〜8は、皮膚結合ペプチドのアミノ酸配列である。
【0020】
配列番号9は、カスパーゼ3切断部位のアミノ酸配列である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本開示は、長期持続性および耐久性、耐水性があり、かつ皮膚上でソフト感のあるサンスクリーン製剤を提供する。耐水性の改善により、皮膚の水への暴露後に再塗布する必要がなくなる。耐水性を与えるのに一般に用いられる重たいワックスおよびオイルを含有しない軽いスプレー式システムとして改善された製剤が提供されうる。
【0022】
本開示のサンスクリーン製剤は、
(a)ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤、および
(b)流体ビヒクル
を含んでなる。
【0023】
金属酸化物サンスクリーン剤
金属酸化物サンスクリーン剤は、サンスクリーン特性を有する任意の金属酸化物でありうる。かかる金属酸化物は、典型的には二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムおよび酸化鉄よりなる群、より典型的には二酸化チタンおよび酸化亜鉛よりなる群から選択され、かつさらにより典型的には二酸化チタンである。不透明なサンスクリーン製剤が好ましい場合には、直径が100nmより大きい粒子サイズを有する、二酸化チタンなどの色素サイズの金属酸化物粒子が特に有用でありうる。主要な粒子の測定により、粒子サイズ直径が判定される。
【0024】
金属酸化物ナノ粒子、特に二酸化チタンナノ粒子は、特にサンスクリーン製剤の半透明性が好ましい場合に有用でありうる。ナノ粒子金属酸化物の具体的な例は、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムおよび酸化鉄よりなる群、より典型的には二酸化チタンおよび酸化亜鉛よりなる群から選択され、かつさらにより典型的には二酸化チタンである。ナノ粒子は、典型的には直径が100nm未満の粒子サイズを有する。主要な粒子の直径の測定により、粒子サイズ直径が判定される。
【0025】
本発明の一実施形態では、金属酸化物粒子は、金属酸化物粒子のスラリー、水および高密度化剤への添加によって処理された金属酸化物が形成されうる、シリカ源およびアルミナ源の少なくとも1つで処理されうる。
【0026】
本発明は、高密度化剤の存在下でアモルファスアルミナで処理され、好ましくは表面処理される金属酸化物粒子を提供する。より詳細には、粒子は高密度化剤の存在下でアモルファスアルミナを用いる湿った処理プロセスにおいてコーティングされる。場合により、粒子は高密度化剤の存在下でアモルファスシリカによってもさらに処理され、好ましくは表面処理される。
【0027】
本発明は、高密度化剤の存在下でアモルファスシリカで処理され、好ましくは表面処理される金属酸化物粒子も提供しうる。より詳細には、粒子は高密度化剤の存在下でアモルファスシリカを用いる湿った処理プロセスにおいてコーティングされる。場合により、粒子は高密度化剤の存在下でアモルファスアルミナによってもさらに処理される。
【0028】
本発明の一実施形態では、金属酸化物粒子のスラリーが加熱され、高密度化剤がスラリーに添加される。スラリーは、不水溶性の金属酸化物粒子の水性混合物である。スラリーはpH調節により塩基性組成物を形成し、次いでアルミナ源またはシリカ源あるいはそれら双方、典型的にはアルミン酸ナトリウムまたはケイ酸ナトリウムで処理される。スラリーは、アルミナ源またはシリカ源あるいはそれら双方での処理後、特定のpHで保持され、粒子を硬化するのに十分な期間、昇温される。硬化ステップの目的は、アルミナおよび/またはシリカを粒子上に、より典型的には粒子をアルミナ層および/またはシリカ層でコーティングすることによって堆積させることである。
【0029】
本発明の一実施形態では、スラリーの初期温度は、最適には約30℃より高く、典型的には約35℃より高く、さらにより典型的には約50℃より高く、かつさらにより典型的には約60℃より高い。温度は、約30〜約100℃、より典型的には約40℃〜約100℃、およびさらにより典型的には約60℃〜約100℃の範囲内であってもよいが、より低い温度であっても有効でありうる。本発明の一実施形態では、スラリーの初期温度は、最適には約50℃より高く、典型的には約60℃より高く、より典型的には約60℃〜約100℃の範囲内であるが、より低い温度であっても有効でありうる。アルミナ源および/またはシリカ源の量は、最適には未処理の金属酸化物の重量を基準にしてAlとして約5〜約15%の範囲内である。
【0030】
アルミナおよび/またはシリカ処理の間、強い鉱酸を使用してもよい。HCl、HNOおよびHSOを含むがこれらに限定されない強い鉱酸であればいずれを使用してもよい。小さい実験室規模のバッチプロセスにおける最適な酸の添加時間は、添加される1%Alおよび/またはSiO当たり0.5分〜約2.0分の範囲である(大きい工場規模のバッチにおいて1%Alおよび/またはSiO当たり30分まで)。時間が長くなると、より優れた生成物が得られても割合が犠牲になる可能性がある。
【0031】
アルミナおよび/またはシリカの添加後、スラリーのpHは、典型的には中性レベルで保持される。最適には7+0.5である。値が高くなれば、特にアルミナにおいて望ましくない相がもたらされ、値が低くなれば、堆積が不完全なものになりうる。
【0032】
次いで、アルミナおよび/またはシリカで処理されたスラリーは、典型的には粒子上にアルミナおよび/またはシリカのコーティングを形成させることによってアルミナおよび/またはシリカを金属酸化物粒子上に堆積させるのに十分な時間保持される。保持時間は、典型的には小さい実験室規模のバッチにおいて1%アルミナおよび/またはシリカ当たり3分である(大きい工場規模のバッチにおいて1%アルミナおよび/またはシリカ当たり20分まで)。より短時間の適用は可能であるが、処理が有効なものではない可能性がある。この保持ステップは、典型的には中性pHを維持しながら行われ、昇温される。したがって、pHは通常7.0+0.5で維持される。本発明の一実施形態では、スラリーの温度は、最適には約30℃より高く、典型的には約35℃より高く、さらにより典型的には約50℃より高く、かつさらにより典型的には約60℃より高い。温度は、約30〜約100℃、より典型的には約40℃〜約100℃、およびさらにより典型的には約60℃〜約100℃の範囲内であってもよいが、より低い温度であっても有効でありうる。温度は、通常では約50℃、典型的には約45℃より高く、より典型的には約55〜約60℃で維持される。
【0033】
本発明の金属酸化物組成物、特にナノ粒子組成物は、一般に未処理の金属酸化物の重量を基準にして約3〜約20%、より典型的には約5〜約15%のアモルファスアルミナを含有する。本発明の粒子状組成物は、一般に未処理の金属酸化物の重量を基準にして約2〜約20、一般に約5〜約18%のアモルファスシリカを含有しうる。
【0034】
次いで、アルミナおよび/またはシリカで処理された金属酸化物粒子は、通常では濾過、洗浄および乾燥される。ナノ粒子が金属酸化物として用いられる場合、最終粒子は、色素より小さいサイズ範囲内にあり、典型的には、直径の平均粒子サイズは、走査電子顕微鏡などの当該技術分野で周知の技術による測定によると、約80〜約125ナノメーターであり、約100ナノメーター未満である場合がある。
【0035】
本発明の好ましい実施形態では、スラリーはシリカ源とアルミナ源の双方で処理される。本実施形態では、金属酸化物粒子のスラリーが加熱され、高密度化剤がスラリーに添加される。スラリーは、水不溶性の金属酸化物粒子の水性混合物である。次いで、スラリーはpH調節により塩基性組成物を形成し、次いでシリカ源、典型的にはケイ酸ナトリウムで処理される。pHは酸の添加によってより中性レベルに低下し、その後、スラリーはアルミナ源、典型的にはアルミン酸ナトリウムで処理される。シリカ源およびアルミナ源での処理後、スラリーは特定のpHで保持され、粒子を硬化するのに十分な時間、昇温される。硬化ステップの目的は、シリカおよびアルミナを粒子上に、より詳細には粒子をシリカ層およびアルミナ層でコーティングすることによって堆積させることである。
【0036】
処理は高密度化剤の存在下で行われる。高密度化剤は、シリカおよび/またはアルミナのコーティングを高密度化するのに重要である。適切な高密度化剤は、クエン酸またはリン酸などのリン酸イオン源または硫酸ナトリウムなどの硫酸イオン源を含有する。クエン酸は、その分散促進特性故に好ましい高密度化剤である。高密度化剤の有用量は、シリカおよびアルミナコーティングを適切に高密度化するのに十分な量である。過剰な高密度化剤は、シリカおよびアルミナコーティングの高密度化を最大化することになるが、高密度化剤の浪費につながる場合がある。
【0037】
高密度化剤の適量は、未処理の金属酸化物の重量を基準にして約0.5%〜約3.0%、より典型的には約0.8%〜約2.4%の範囲内であってもよい。スラリー中の金属酸化物の濃度は、約50g/l〜約500g/l、より典型的には約125〜250g/lの範囲であるが、より低いレベルも可能である。比較的低濃度のスラリーを使用するとコーティングが十分に均一になることが判明している。スラリーの温度は、通常、約30〜約100℃、典型的には約35〜約100℃、より典型的には約45〜約100℃、最適には約85〜約100℃の範囲であるが、仮に温度がそれらより上下しても有効でありうる。シリカ源の添加前に、スラリーはアルカリ性の範囲内に維持され、pHは典型的には8.5より高く、より典型的には9.0以上であるが、これは使用される機器に依存しうる(連続的な含水処理においてはより低いpHが可能な場合がある)。最適なシリカの堆積重量は、典型的には未処理の金属酸化物の重量を基準にしてSiOとして約2〜約20%、より典型的には約5〜約18%である。しかし、任意のシリカレベルで改善が見られる可能性がある。
【0038】
アルミナ処理に先立ち、HCl、HNOおよびHSOを含む任意の強い鉱酸を用いることでスラリーが中性化されうる。バッチプロセスに最適な酸の添加時間は、小さい実験室規模のバッチにおいて添加される1%SiO当たり0.5〜約4分の範囲である(大きい工場規模のバッチにおいて1%SiO当たり30分まで)。時間が長くなると、より優れた生成物が得られても割合が犠牲になる可能性がある。
【0039】
次いで、シリカで処理されたスラリーは、好ましくは金属酸化物粒子上でのシリカコーティングを堆積するのに十分な時間保持される。保持時間は、典型的には小さい実験室規模のバッチにおいて1%シリカ当たり5分である(大きい工場規模のバッチにおいて1%シリカ当たり20分まで)。より短時間の適用は可能であるが、コーティングは有効なものではない可能性がある。この保持ステップは、典型的には中性からアルカリ性pHを維持しながら行われ、昇温される。したがって、pHは通常、7.0+1.0以上、典型的には約10以下に維持される。温度は通常、約80℃より高く、典型的には約90℃より高く、より典型的には約95〜約100℃で維持される。
【0040】
アルミナ処理では、スラリーの初期温度は、最適には約80℃より高く、典型的には約90℃より高く、より典型的には約95℃〜約100℃の範囲内であるが、より低い温度であっても有効でありうる(またはさらにより有効であってもスラリーの冷却に必要なエネルギーおよび時間を犠牲にしうる)。アルミン酸塩の量は、最適には未処理の金属酸化物の重量を基準にしてAlとして約5〜約15%の範囲内である。
【0041】
HCl、HNOおよびHSOを含むアルミナ処理の間、任意の強い鉱酸を使用してもよい。小さい実験室規模のバッチプロセスにおける最適な酸の添加時間は、添加される1%Al当たり0.5〜約2.0分の範囲である(大きい工場規模のバッチにおいて1%Al当たり30分まで)。時間が長くなると、より優れた生成物が得られても割合が犠牲になる可能性がある。
【0042】
アルミナの添加後、スラリーのpHは、典型的には中性レベルで保持される。最適には7+0.5である。値が高くなれば、望ましくないアルミナ相がもたらされ、値が低くなれば、堆積が不完全なものになりうる。
【0043】
次いで、アルミナで処理されたスラリーは、シリカコーティングが堆積されている金属酸化物粒子上にアルミナコーティングを形成するのに十分な時間保持される。保持時間は、典型的には小さい実験室規模のバッチにおいて添加される1%アルミナ当たり3分である(大きい工場規模のバッチにおいて1%アルミナ当たり20分まで)。より短時間の適用は可能であるが、コーティングは有効なものではない可能性がある。この保持ステップは、典型的には中性pHを維持しながら行われ、昇温される。したがって、pHは通常では7.0+0.5で維持される。温度は通常では約50℃、典型的には約45℃より高く、より典型的には約55〜約60℃で維持される。
【0044】
本発明におけるシリカおよびアルミナで処理された粒子状組成物、特にナノ粒子組成物は、一般に未処理の金属酸化物の重量を基準にして約2〜約20%、一般に約5〜約18%のアモルファスシリカ、および未処理の金属酸化物の重量を基準にして約3〜約20%、より典型的には約5〜約15%のアモルファスアルミナを含有しうる。
【0045】
次いで、シリカおよびアルミナで処理された金属酸化物粒子は、通常では濾過、洗浄および乾燥される。ナノ粒子が金属酸化物として用いられる場合、最終粒子は色素未満のサイズ範囲内にあり、典型的には直径の平均粒子サイズは約80〜約125ナノメーター、さらには約100ナノメーター未満である。
【0046】
本発明における使用および上記シリカ−アルミナ処理プロセスにおいては、二酸化チタンナノ粒子が好ましい。任意の二酸化チタンナノ粒子が適切でありうる。例として、適切な二酸化チタンナノ粒子は、米国特許第5,451,390号明細書、米国特許第5,672,330号明細書および米国特許第5,762,914号明細書において記載されている。二酸化チタンP25は、デグッサ(Degussa)から入手可能な適切な市販品の一例である。二酸化チタンナノ粒子の他の商用供給者として、ケミラ(Kemira)、ザハトレーベン(Sachtleben)およびタイカ(Tayca)が挙げられる。
【0047】
二酸化チタンナノ粒子は、液体懸濁液中の粒子の粒子サイズ分布を測定する動的光散乱による測定によると、典型的には100ナノメーター(nm)未満の平均粒子サイズ直径を有する。粒子は、典型的には約3nm〜約6000nmの範囲でありうる凝集体である。当該技術分野で既知の任意のプロセスを用いることで、かかる粒子を調製可能である。プロセスは、二酸化チタンナノ粒子が生成されるという条件で、チタンハロゲン化物の気相酸化または可溶性チタン錯体からの溶液沈殿を含みうる。
【0048】
二酸化チタンナノ粒子を調製するための好ましいプロセスは、典型的には400〜2000℃の範囲で、酸素およびチタンハロゲン化物、好ましくは四塩化チタンの高温反応領域への注入によるものである。反応領域内に存在する高温条件下で、高い比表面積および狭いサイズ分布を有する二酸化チタンナノ粒子が形成される。リアクター内のエネルギー源は、プラズマトーチなどの任意の熱源でありうる。場合により、リアクターは、反応物質注入口からの供給物が高温ガス排出に誘導されて再循環領域の下流のリアクターチャンバーに入ることを保証するフローホモジナイザー(flow homogenizer)も含みうる。フローホモジナイザーは、2002年12月17日に出願された米国仮特許出願第60/434158号明細書(その全体が参照により本明細書中に援用される)において記載されている。
【0049】
金属酸化物、特に二酸化チタンは、実質的に純粋でありうるかまたは1つもしくはそれ以上の他の無機物質を含有しうる。金属酸化物の結晶格子は、ある元素でドープされて金属酸化物に対して新規のまたは改良された特性を与えうる。ドーパントの例として、シリコン、アルミニウム、ジルコニウム、鉄、マンガン、バナジウム、クロムまたはマグネシウムが挙げられる。結晶格子は、鉄またはマンガンでドープされて金属酸化物の色を変化させうる。例えば、金属酸化物、特に二酸化チタンの結晶格子は、鉄またはマンガンでドープされて二酸化チタンに「淡黄色(buff)」の色を与えうる。かかる着色された二酸化チタンは、皮膚に日焼けの外観を与えることがサンスクリーン製剤として望ましい場合、製剤として有用でありうる。金属酸化物、特に二酸化チタンの結晶格子はまた、マンガン、鉄、バナジウムまたはクロムなどの元素でドープされて、二酸化チタンの光活性を低下させうる。市販のドープされた二酸化チタン製品は、ザハトレーベン(Sachtleben)によって販売される、ホムビテック(Hombitec)(登録商標)RM300およびホムビテック(Hombitec)(登録商標)RM400である。オクソニカ(Oxonica Limited)は、製品の名称がオプティソル(Optisol)(商標)である、少量(1%未満)のマンガンを含有する超微細な二酸化チタンについて記述している。ドーパントは、典型的には少量、典型的には金属酸化物の総重量を基準にして約0.01%〜約5%、詳細には約0.1%〜約1%の範囲内で存在する。
【0050】
場合によりシリカおよび/またはアルミナで処理される金属酸化物は、1つもしくはそれ以上の追加の金属酸化物を含有してもよい。追加の金属酸化物は、1つもしくはそれ以上のシリカ、アルミナ、ジルコニアおよびマグネシアであってもよく、当業者にとって既知の技術を用いて金属酸化物粒子に混和してもよい。例として二酸化チタンの場合、これらの金属酸化物を混和できるのは、チタン化合物が他の金属酸化物化合物と共酸化または共沈殿される場合である。もしかかる共金属(co−metal)が存在する場合、それらは好ましくは金属酸化物の総重量を基準にして約0.1〜約5%の量で存在する。二酸化チタンはまた、上記のシリカ−アルミナ処理を含む任意の他の処理に先立ち、当業者に既知の技術を用いて適用される1つもしくはそれ以上のかかる金属酸化物のコーティングを有する場合がある。本発明の一実施形態では、実質的に純粋な二酸化チタンのスラリーは、スラリーとクエン酸の接触に先立ちアルミナで「前処理」される。前処理は、典型的には金属酸化物の総重量を基準にして約1〜約4%の量に対して行われる。
【0051】
典型的には、アルミナで前処理された二酸化チタンにおいて、本発明によって作製された生成物におけるアルミナの最終レベルは、もしTiOがアルミナで処理される場合、約2.5%高めである。コーティング中にアルミナ粒子を含有するかまたはアルミナ粒子に混和される二酸化チタンナノ粒子が上記のようにシリカ−アルミナで処理される場合、利点があることが判明している。例えば、シリカ処理ステップは、アルミナを含有する二酸化チタン粒子に適用される場合、より有効であることが判明している。さらに、(下記のビタミンC黄変試験によって判定される)化学的安定性がより高く、かつプロセスによって生成される特大粒子がより少ない、詳細にはアルミナを含有しない二酸化チタン出発物質に比べて約10%少ないことが判明している。「特大粒子」という用語は、マイクロトラック(MICROTRAC)超微粒子アナライザーによる測定として直径が約200nmより大きい凝集体を意味する。
【0052】
金属酸化物サンスクリーン剤に対する需要が高まっている1つの領域として、パーソナルケア製剤、特にサンスクリーン剤としてのサンスクリーンが挙げられる。二酸化チタンナノ粒子は、太陽の有害な紫外線(UV AおよびUV B放射)からの保護をもたらす。UV AとUV Bの双方の放射は、そばかす、日焼け(紅斑)、しわ、および早老の原因にまで及ぶ数多くの皮膚の問題に関与している。さらに、UV A放射は皮膚癌と関連している。
【0053】
分散剤は通常、流体ビヒクル中の金属酸化物、特に二酸化チタンナノ粒子を効果的に分散させるのに必要である。分散剤を注意深く選択することは重要である。二酸化チタンナノ粒子と併用させるのに典型的な分散剤は、脂肪族アルコール、飽和脂肪酸および脂肪酸アミンを含む。
【0054】
典型的には金属酸化物サンスクリーン剤、特にサンスクリーン製剤に混和される二酸化チタンナノ粒子の量は、製剤の重量を基準にして約25wt%まで、より典型的には約0.1wt%から約15wt%まで、およびさらにより典型的には約6wt%であってもよく、量は製剤の所望の太陽光線保護指数(SPF)に依存する。
【0055】
ペプチドに基づくスキンコンディショナー
以下の定義は、本明細書において用いられ、特許請求の範囲および明細書の解釈において言及されるべきである。
「SBP」は皮膚結合ペプチドを意味する。
「SSA」は金属酸化物サンスクリーン剤を意味する。
「S」はスペーサーを意味する。
【0056】
「ペプチド」という用語は、ペプチド結合または修飾されたペプチド結合によって互いに結合される2個もしくはそれより多数のアミノ酸を示す。
【0057】
本明細書において用いられる「皮膚」という用語は、ヒト皮膚、またはブタ皮膚、ヒト皮膚の代わりであるビトロ・スキン(Vitro−Skin)(登録商標)およびエピダーム(Epiderm)(商標)を示す。
【0058】
「ファージ−ペプチド−皮膚複合体」という用語は、ペプチド上の結合部位を介して皮膚に結合されたファージ−ペプチドを含んでなる構造を意味する。
【0059】
「非標的」という用語はある基質を示し、ここではそれに対する結合親和性を有するペプチドは望ましくない。スキンケア組成物に抵抗性を示す皮膚結合ペプチドの選択においては、非標的は毛髪およびプラスチックを含むがこれらに限定されない。
【0060】
「厳密」という用語は、本発明の皮膚結合ペプチドの選択に適用される際には、ペプチドを皮膚から溶出するのに用いられる溶出剤(通常は洗剤)の濃度を示す。溶出剤の濃度が高い場合には、より厳密な条件が得られる。
【0061】
「アミノ酸」という用語は、タンパク質またはポリペプチドの塩基性化学構造単位を示す。以下の略語は、特定のアミノ酸を同定するのに本明細書中で用いられる。
【0062】
【表1】

【0063】
「遺伝子」は、コーディング配列の上流(5’非コーディング配列)および下流(3’非コーディング配列)の調節配列を含む、特定のタンパク質を発現する核酸断片を示す。「天然遺伝子」は、それ自身の調節配列を伴う天然に見出される遺伝子を示す。「キメラ遺伝子」は、天然遺伝子ではない任意の遺伝子を示し、天然に共に見出されることのない調節およびコーディング配列を含んでなる。したがって、キメラ遺伝子は、異なるソース由来の調節配列およびコーディング配列、または同じソース由来であるが天然に見出される様式とは異なる様式で配列された調節配列およびコーディング配列を含みうる。
【0064】
「外来」遺伝子は、通常、宿主生物内に見出されることはないが遺伝子転移によって宿主生物に導入される遺伝子を示す。外来遺伝子は、非天然の生物に挿入される天然遺伝子またはキメラ遺伝子を含みうる。
【0065】
「合成遺伝子」は、当業者に既知の手順を用いて化学的に合成されるオリゴヌクレオチドビルディングブロックから構築されうる。これらのビルディングブロックは、ライゲートされてアニールされて遺伝子セグメントが形成され、それらは次いで酵素によって構築されて全遺伝子を作製する。DNA配列に関連する「化学的に合成された」とは、ヌクレオチド成分がインビトロで構築されたことを意味する。手動によるDNA化学合成については周知の手順を用いて行うことができる一方、自動化された化学合成については多数の市販の機械の1つを用いて行ってもよい。したがって、遺伝子をヌクレオチド配列の最適化に基づく最適な遺伝子発現に適合させることで宿主細胞のコドンバイアスを反映させてもよい。当業者は、もしコドンの使用が宿主にとって好ましいコドン群に向けてバイアスされる場合、遺伝子発現が成功する可能性について理解している。好ましいコドンについては、配列情報が得られる宿主細胞を由来とする遺伝子の調査に基づいて判定しうる。
【0066】
「コーディング配列」は、特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を示す。「適切な調節配列」は、コーディング配列の上流(5’非コーディング配列)、内部、または下流(3’非コーディング配列)に位置し、かつ関連するコーディング配列の転写、RNAプロセシングまたは安定性、あるいは翻訳に作用するヌクレオチド配列を示す。調節配列は、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位およびステムループ構造を含みうる。
【0067】
「プロモーター」は、コーディング配列または機能的RNAの発現を制御可能なDNA配列を示す。一般に、コーディング配列はプロモーター配列に対して3’方向に位置する。プロモーターは、それら全体が天然遺伝子由来であるか、天然に見出される異なるプロモーター由来の異なる要素からなるか、またはさらに合成DNAセグメントを含んでなる場合がある。異なるプロモーターが、異なる組織型内または細胞型内で、発生の異なる段階で、または異なる環境条件もしくは生理的条件に反応して遺伝子の発現を指示しうることが当業者によって理解されている。ほぼ常に大部分の細胞型内で遺伝子の発現を引き起こすプロモ−ターは、一般に「構成的プロモーター」と称される。さらに、ほとんどの場合、調節配列の正確な境界が完全に確定されていないことから、異なる長さのDNA断片が同一のプロモーター活性を有する場合があることが認識されている。
【0068】
本明細書中で用いられる「発現」という用語は、本発明の核酸断片由来のセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定な蓄積を示す。発現はmRNAのポリペプチドへの翻訳も示す場合がある。
【0069】
「形質転換」という用語は、核酸断片の宿主生物ゲノムへの転移により遺伝的に安定な形質がもたらされることを示す。形質転換された核酸断片を含む宿主生物は、「トランスジェニック」または「組み換え」または「形質転換された」生物と称される。
【0070】
「宿主細胞」という用語は、外来性のポリヌクレオチド配列により形質転換または形質移入されているか、あるいは形質転換または形質移入可能である細胞を示す。
【0071】
「プラスミド」、「ベクター」および「カセット」という用語は、細胞の中央代謝の一部ではない遺伝子を運搬することが多く、通常は環状二本鎖DNA分子の形態である特別な染色体要素を示す。かかる要素は、任意のソース由来の一本鎖もしくは二本鎖DNAまたはRNAの、自己複製配列、ゲノム融合配列、ファージまたはヌクレオチド配列、線形体または環状体である場合があり、ここでは多数のヌクレオチド配列が、適切な3’非翻訳配列を伴う選択された遺伝子産物におけるプロモーター断片およびDNA配列を細胞に導入することが可能な固有の作製物に連結または組み換えがなされている。「形質転換カセット」は、外来遺伝子を含みかつ特定の宿主細胞の形質転換を促進する外来遺伝子以外の要素を有する特定のベクターを示す。「発現カセット」は、外来遺伝子を含みかつ外来宿主内でのその遺伝子の発現の促進を可能にする外来遺伝子以外の要素を有する特定のベクターを示す。
【0072】
「ファージ」または「バクテリオファージ」という用語は、細菌に感染するウイルスを示す。本発明の目的にかなうように別の形態が使用される場合がある。好ましいバクテリオファージは、M13と称される「野生型」ファージ由来である。M13系は細菌内部で成長可能であることから、それが感染する細胞を破壊することはないが新たなファージを連続的に作る原因になる。それは一本鎖DNAファージである。
【0073】
「ファージディスプレイ」という用語は、バクテリオファージ粒子またはファージミド粒子の表面上の機能的な外来ペプチドまたは小タンパク質の提示を示す。遺伝子組み換えファージは、ペプチドをそれらの天然表面タンパク質のセグメントとして提示するのに使用されうる。異なる遺伝子配列を有するファージ集団により、ペプチドライブラリーが作製されうる。
【0074】
「PCR」または「ポリメラーゼ連鎖反応」は、特定のDNAセグメントの増幅において用いられる技術である(米国特許第4,683,195号明細書および米国特許第4,800,159号明細書)。
【0075】
本明細書中で用いられる標準の組み換えDNAおよび分子クローニング技術は、当該技術分野で周知であり、サンブルック J.(Sambrook J.)、フリッツ E.F.(Fritsch E.F.)およびマニアティス T.(Maniatis T.)、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)、ニューヨーク州(1989年)(以下、「マニアティス(Maniatis)」);およびシルハヴィ T.J.(Silhavy T.J.)、ベナン M.L.(Bennan M.L.)およびエンキスト L.W.(Enquist L.W.)、Experiments with Gene Fusions、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)、ニューヨーク州(1984年);およびアウスベル F.M.(Ausubel F.M.)ら、Current Protocols in Molecular Biology(グリーン・パブリッシング・アソシエイツ・アンド・ワイリー・インターサイエンス(Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience)(1987年)による出版)に記載されている。
【0076】
皮膚結合ペプチド
本明細書中で定義される皮膚結合ペプチド(SBP)は、親和性の高い皮膚に特異的に結合するペプチド配列である。本発明の皮膚結合ペプチドは、約7アミノ酸〜約45アミノ酸、より好ましくは約7アミノ酸〜約20アミノ酸、最も好ましくは約7〜約12アミノ酸である。
【0077】
適切な皮膚結合配列は、当該技術分野で周知の方法を用いて選択されうる。本発明のペプチドはランダムに作製され、次いでそれらの皮膚に対する結合親和性に基づき、特定の皮膚試料に対して選択される。ペプチドのランダムライブラリーの作製は、周知であり、細菌ディスプレイ(ケンプ d.j.(kemp d.j.);proc.Natl.Acad.Sci.Usa 78(7):4520−4524頁(1981年)、およびヘルフマン(helfman)ら、proc.Natl.Acad.Sci.Usa 80(1):31−35頁(1983年))、酵母ディスプレイ(チエン(chien)ら、proc natl acad sci usa 88(21):9578−82頁(1991年))、コンピナトリアル(combinatorial)固相ペプチド合成(米国特許第5,449,754号明細書、米国特許第5,480,971号明細書、米国特許第5,585,275号明細書、米国特許第5,639,603号明細書)、およびファージディスプレイ技術(米国特許第5,223,409号明細書、米国特許第5,403,484号明細書、米国特許第5,571,698号明細書、米国特許第5,837,500号明細書)を含む種々の技術によって実施される場合がある。かかる生体ペプチドライブラリーを作製するための技術は、当該技術分野で周知である。典型的な方法は、ダニ m.j.(dani m.j.)、Of receptor & signal transduction res.、21(4):447−468頁(2001年)、シドゥ(sidhu)ら、methods in enzymology 328:333−363頁(2000年)、phage display of peptides and proteins,a laboratory manual、ブライアン k.ケイ(brian k.Kay)、ジル・ウインター(jill winter)、およびジョン・マッカファーティ(john mccafferty)ら編;アカデミック・プレス(academic press)、ny、1996年において記載されている。さらに、ファージディスプレイライブラリーは、ニュー・イングランド・バイオラブズ(new england biolabs)(ビバリー(beverly)、マサチューセッツ州(MA))から購入可能である。
【0078】
ペプチドをランダムに作製するための好ましい方法は、ファージディスプレイによるものである。ファージディスプレイはインビトロ選択技術であり、ここではペプチドまたはタンパク質がバクテリオファージのコートタンパク質に遺伝的に融合されて、ファージビリオンの外表面上に融合ペプチドの提示がなされる一方、DNAはビリオン内で融合残基をコード化している。提示されたペプチドとそれをコード化するDNAの間のこの物理的な連結により、膨大な数のペプチド変異体のスクリーニングが可能になり、ここで各ペプチドは「バイオパニング(biopanning)」と称される単純なインビトロ選択手順により対応するDNA配列に連結されている。バイオパニングは、その最も単純な形態では、ファージディスプレイがなされた変異体のプールを目的の標的とともにインキュベートし、結合していないファージを洗い流し、かつファージと標的の間の結合相互作用の妨害によって特異的に結合されたファージを溶出することにより、行われる。次いで、溶出されたファージがインビボで増幅されかつプロセスが繰り返されて、最も緊密な結合配列を支持するファージプールの段階的濃縮がもたらされる。選択/増幅を3回以上行った後、各クローンがDNA配列決定により特徴づけられる。
【0079】
詳細には、適切なペプチドライブラリーが作製された後、ライブラリーは適量の皮膚試料と接触される。ヒト皮膚試料は、死体またはインビトロでヒト皮膚の培養物から入手されうる。さらに、ブタ皮膚のビトロ・スキン(Vitro−Skin)(登録商標)(IMS社(IMS inc.)、ミルフォード(Milford)、コネチカット州(CT)から入手可能)およびエピダーム(Epiderm)(商標)(マテック(Mattek corp.)、アシュランド(Ashland)、マサチューセッツ州(MA)から入手可能)は、ヒト皮膚の代用物として使用される場合がある。ペプチドライブラリーは、皮膚試料と接触するための適切な溶液中に溶解される。一実施形態では、ペプチドライブラリーは、界面活性剤を含有する緩衝生理食塩水溶液中に溶解される。適切な溶液は0.5%トゥイーン(tween)(登録商標)20を含有するトリス−緩衝生理食塩水(tbs)である。ペプチドの皮膚表面への物質移動速度を高めるために、溶液が任意の手段によって撹拌されることにより、最大の結合を得るのに必要な時間が短縮されうる。最大の結合を得るのに必要な時間は、皮膚試料の大きさ、ペプチドライブラリーの濃度、および撹拌速度などの多数の因子に依存して変化する。必要な時間は、当業者により、通常の実験を用いて容易に決定されうる。典型的には、接触時間は10分から1時間である。場合により、ファージディスプレイライブラリーを、皮膚試料との接触に先立ちまたはそれと同時に、毛髪またはプラスチックなどの非標的と接触させることで、非標的に結合する望ましくないファージ−ペプチドを除去することが可能である。
【0080】
多数のランダムに作製されたペプチドは、接触時に皮膚に結合してペプチド−皮膚複合体を形成することになる。未結合のペプチドは洗浄によって除去されうる。未結合の全物質が除去された後、試験基質に対して様々な程度の結合親和性を有するペプチドは、様々なストリンジェンシー(stringencies)を有する緩衝液での選択された洗浄によって分画されうる。用いられる緩衝液のストリンジェンシーを高めると、ペプチド−基質複合体において要求されるペプチドと基質の間の結合力が高まる。
【0081】
多数の物質を用い、ペプチド選択における緩衝溶液のストリンジェンシーが変化する場合があり、ここでは酸性pH(1.5〜3.0);塩基性ph(10〜12.5);MgCl(3〜5m)およびLiCl(5〜10m)などの高塩濃度;水;エチレングリコール(25〜50%);ジオキサン(5〜20%);チオシアン酸塩(1〜5m);グアニジン(2〜5m);尿素(2〜8m);およびSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、DOC(デオキシコール酸ナトリウム)、ノニデット(Nonidet)P−40、トリトン(Triton)X−100、より典型的であるトゥイーン(Tween)(登録商標)20などの異なる界面活性剤の様々な濃度が含まれるがこれらに限定されない。これらの物質は、トリス−HCl、トリス−緩衝生理食塩水、トリス−ホウ酸塩、トリス−酢酸、トリエチルアミン、リン酸緩衝液、およびグリシン−HC(ここではトリス−緩衝生理食塩水溶液が好ましい)を含むがこれらに限定されない緩衝溶液中で調製されうる。
【0082】
皮膚に対して高められた結合親和性を有するペプチドを、高められたストリンジェンシーを有する緩衝液を用いて選択プロセスを繰り返すことによって溶出可能であることが理解されるであろう。
【0083】
次いでファージ−ペプチド−皮膚複合体が、ある時間、典型的には1〜30分間、溶出剤と接触されて、皮膚からファージ−ペプチドが解離するが、ファージ−ペプチドの一部は、この処理後、依然として皮膚に結合された状態で残存しうる。場合により、ファージ−ペプチド−皮膚複合体は、溶出剤と接触する前に新しい容器に移される。溶出剤は、酸(pH1.5〜3.0);塩基(ph10〜12.5);MgCl(3〜5m)およびLiCl(5〜10m)などの高塩濃度;水;エチレングリコール(25〜50%);ジオキサン(5〜20%);チオシアン酸塩(1〜5m);グアニジン(2〜5m);および尿素(2〜8m)(ここでは酸による処理がより典型的である)を含むがこれらに限定されない任意の既知の溶出剤でありうる。もし使用される溶出緩衝液が酸または塩基である場合、中性緩衝液が添加されてphが中性範囲に調節される。任意の適切な緩衝液の使用が可能であり、酸溶出緩衝液を伴う使用については1m トリス−HCl ph9.2が好ましい。
【0084】
次いで、溶出されたファージ−ペプチドまたは残存する結合されたファージ−ペプチド、あるいは溶出されたファージ−ペプチドと残存する結合されたファージ−ペプチドの双方は、当該技術分野で既知の方法を用いて増幅される。例えば、溶出されたファージ−ペプチドおよび残存する結合されたファージ−ペプチドは、ファン(Huang)ら、上記に記載のように、大腸菌(E.coli)ER2738などの細菌宿主細胞に感染させることによって増幅されうる。感染された宿主細胞はLB(ルリア−ベルターニ(Luria−Bertani))培地などの適切な成長培地内で成長され、この培養物はIPTG(イソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシド)およびS−Gal(商標)(3,4−シクロヘキセノエスクレチン(cyclohexenoesculetin)−β−D−ガラクトピラノシド)を有するLB培地などの適切な成長培地を含む寒天上に広げられる。成長後、DNAの単離および配列決定のためにプラークが採取され、スキンケア組成物に抵抗性を示す皮膚結合ペプチド配列が同定される。あるいは、溶出されたファージ−ペプチドおよび残存する結合されたファージ−ペプチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの核酸増幅方法を用いて増幅されうる。そのアプローチにおけるPCRは、参照により本明細書中に援用される米国特許出願公開第2003/0152976号明細書中でのジャンセン(Janssen)らによる記載のように、溶出されたファージ−ペプチドおよび/または残存する結合されたファージ−ペプチド上で適切なプライマーを用いて行われる。
【0085】
一実施形態では、溶出されたファージ−ペプチドおよび残存する結合されたファージ−ペプチドは細菌宿主細胞に感染させることによって増幅され、増幅されたファージ−ペプチドは新しい皮膚試料に接触され、上記のプロセス全体が1回もしくはそれ以上の回数繰り返されてスキンケア組成物に抵抗性を示す皮膚結合ファージ−ペプチド内に集積された集団が得られる。バイオパニングサイクルを所望の回数行った後、増幅されたファージ−ペプチド配列が当該技術分野で周知の標準のDNA配列決定技術を用いて決定されて、スキンケア組成物に抵抗性を示す皮膚結合ペプチド配列が同定される。
【0086】
皮膚結合ペプチドの作製
本発明の皮膚結合ペプチドは、当該技術分野で周知の標準のペプチド合成方法(例えば、スチュワート(stewart)ら、solid phase peptide synthesis、ピアース・ケミカル社(Pierce Chemical Co.)、ロックフォード(Rockford)、イリノイ州(IL)、1984年;ボダンスズキー(Bodanszky)、Principles of Peptide Synthesis、シュプリンガー・フェアラーク(Springer−Verlag)、ニューヨーク(New York)、1984年;およびペニントン(Pennington)ら、Peptide Synthesis Protocols、ヒューマナ・プレス(Humana Press)、トトワ(Totowa)、ニュージャージー州、1994年を参照)を用いて調製されうる。さらに、多数の企業がカスタムペプチド合成サービスを提供している。
【0087】
あるいは、本発明のペプチドは、組み換えDNAおよび分子クローニング技術を用いて調製されうる。異種宿主細胞内、特に微生物宿主細胞内で皮膚結合ペプチドをコード化する遺伝子が生成されうる。
【0088】
本発明の結合ペプチドの発現において好ましい異種宿主細胞は、真菌または細菌のファミリー内で幅広く見出される可能性があり、かつ温度、pH値、および溶媒耐性の広範囲にわたり成長する微生物宿主である。転写、翻訳、およびそのタンパク質生合成装置は細胞供給原料(cellular feedstock)に関係なく同じであることから、細胞バイオマスを生成するのに用いられる炭素供給原料に関係なく機能的遺伝子が発現される。宿主株の例として、アスペルギルス(Aspergillus)、トリコデルマ(Trichoderma)、サッカロミセス(Saccharomyces)、ピキア(Pichia)、カンジダ(Candida)、ハンセヌラ(Hansenula)などの真菌種または酵母種、またはサルモネラ(Salmonella)、バチルス(Bacillus)、アシネトバクター(Acinetobacter)、ロードコッカス(Rhodococcus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、エスケリキア(Escherichia)、シュードモナス(Pseudomonas)、メチロモナス(Methylomonas)、メチロバクター(Methylobacter)、アルカリゲネス(Alcaligenes)、シネコシスティス(Synechocystis)、アナバエナ(Anabaena)、チオバチルス(Thiobacillus)、メタノバクテリウム(Methanobacterium)およびクレブシエラ(Klebsiella)などの細菌種が挙げられるがこれらに限定されない。
【0089】
種々の発現系を用いることで、本発明のペプチドを生成してもよい。かかるベクターは、染色体、エピソームおよびウイルス由来ベクター、例えば、細菌プラスミド由来ベクター、バクテリオファージ由来ベクター、トランスポゾン由来ベクター、挿入要素由来ベクター、酵母エピソーム由来ベクター、バキュロウイルス、レトロウイルスなどのウイルス由来ベクター、ならびにコスミッドやファージミドなど、プラスミドおよびバクテリオファージ遺伝要素由来ベクターなどのこれらの組み合わせを由来とするベクターを含むがこれらに限定されない。発現系コンストラクトは、発現を調節するとともに引き起こす調節領域を含む場合がある。一般に、宿主細胞内でのポリヌクレオチドまたはポリペプチドの維持、増殖または発現に適する任意の系またはベクターは、これに関連する発現のために使用される場合がある。微生物の発現系および発現ベクターは、宿主細胞の成長との関連において外来タンパク質の高レベルの発現を指示する調節配列を含む。調節配列は当業者に周知であり、例として、例えばエンハンサー配列といったベクター内の調節因子の存在を含む、化学的または物理的刺激に応答して遺伝子発現のオンまたはオフを誘発するものが挙げられるがこれらに限定されない。これらのいずれかを用いるならば、本発明の結合ペプチドのいずれかを生成するためのキメラ遺伝子の作製が可能である。次いで、これらのキメラ遺伝子が形質転換を介して適切な微生物に導入されるならば、ペプチドの高レベルの発現が可能である。
【0090】
適切な宿主細胞の形質転換にとって有用なベクターまたはカセットは、当該技術分野で周知である。典型的には、ベクターまたはカセットは、関連遺伝子の転写および翻訳を指示する配列、1つもしくはそれ以上の選択可能なマーカー、および自律的複製または染色体の統合を可能にする配列を含んでなる。適切なベクターは、転写開始制御を内在させる遺伝子の領域5’および転写終結を制御するDNA断片の領域3’を含む。それは、両方の制御領域が形質転換された宿主細胞に対して相同な遺伝子由来である場合に最も好ましいが、かかる制御領域が生成宿主として選択される特定の種に対して天然の遺伝子由来である必要がないものと理解されるべきである。選択可能なマーカー遺伝子は、大腸菌におけるテトラサイクリンまたはアンピシリン耐性など、形質転換された宿主細胞の選択における表現型形質をもたらす。
【0091】
所望の宿主細胞内でのキメラ遺伝子の発現を駆動するのに有用な開始制御領域またはプロモーターは多数存在し、当業者にとって周知である。遺伝子を駆動可能な事実上任意のプロモーターは、本発明の結合ペプチドの生成に適し、CYC1、HIS3、GAL1、GAL10、ADH1、PGK、PHO5、GAPDH、ADC1、TRP1、URA3、LEU2、ENO、TPI(サッカロミセス(Saccharomyces)における発現に有用);AOX1(ピキア(Pichia)における発現に有用);lac、ara、tet、trp、lP、lP、T7、tac、およびtrc(大腸菌(Escherichia coli)における発現に有用)、ならびにamy、apr、nprプロモーターおよびバチルス(Bacillus)における発現に有用な様々なファージプロモーターを含むがこれらに限定されない。
【0092】
終結制御領域はまた、好ましい宿主に対して天然の様々な遺伝子を由来とする場合がある。場合により、終結部位は不要である場合があるが、もしそれが含まれるとしたら最も好ましい。
【0093】
上記の適切なDNA配列を含むベクターおよび適切なプロモーターまたは制御配列を用いることで、適切な宿主を形質転換して宿主における本発明のペプチドの発現を可能にする場合がある。さらに細胞を伴わない翻訳系を用い、本発明のDNAコンストラクト由来のRNAを用いてかかるペプチドを生成してもよい。場合により、形質転換された宿主の分泌産物としてインスタント(instant)遺伝子産物を生成することが望ましいかもしれない。所望のタンパク質の成長培地への分泌は、精製手順における簡素化およびそのコスト低減という利点を有する。分泌シグナル配列が細胞膜を横切る発現可能なタンパク質の能動輸送の促進に有用なことが多いことは、当該技術分野で周知である。分泌可能な形質転換された宿主の構築は、生成宿主内で機能的な分泌シグナルをコードするDNA配列の取り込みによって行われる場合がある。適切なシグナル配列を選択するための方法は、当該技術分野で周知である(例えば、欧州特許第546049号明細書および国際公開第9324631号パンフレットを参照)。分泌シグナルDNAまたは促進因子(facilitator)は、発現を制御するDNAとインスタント遺伝子または遺伝子断片との間、および後者を有する同じリーディングフレーム内に位置する場合がある。
【0094】
ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤
本発明は、ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤を含んでなる。さらに、ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤は、皮膚結合ペプチドと金属酸化物サンスクリーン剤の反応生成物である。さらに、ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤を、金属酸化物サンスクリーン剤を皮膚結合ペプチドで処理することによって形成してもよい。さらに、ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤は、皮膚結合ペプチド(SBP)と金属酸化物サンスクリーン剤(SSA)との共役によって形成される。
【0095】
皮膚結合ペプチド部分が皮膚に強く結合することにより、サンスクリーン剤の皮膚への付着の保持による長期持続性のサンスクリーン効果が得られる。皮膚結合ペプチドは、配列番号1として与えられる、ファン(Huang)ら(同時係属および共有の米国特許出願第10/935642号明細書)にて開示された皮膚結合ペプチド配列を含む、上記方法のスクリーニングによって選択された皮膚結合ペプチドを含むがこれらに限定されない。さらに、米国特許出願公開第2003/0152976号明細書におけるジャンセン(Janssen)らおよび国際公開第04048399号パンフレットにおけるジャンセン(Janssen)ら(それら全体が参照により本明細書中に援用される)にてそれぞれ記載された配列番号2および配列番号3〜8を含むがこれらに限定されない任意の既知の皮膚結合ペプチドが使用される場合がある。
【0096】
本明細書中に記載の金属酸化物サンスクリーン剤は、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムおよび酸化鉄を含むがこれらに限定されない。
【0097】
ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤は、皮膚結合ペプチドを金属酸化物サンスクリーン剤に直接にまたはスペーサーを介して共有結合させることによって調製される。任意の既知のペプチドまたはタンパク質の化学抱合体(conjugation chemistry)を用い、本発明のペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤を形成することが可能である。化学抱合体は当該技術分野で周知である(例えば、ハーマンソン(Hermanson)、Bioconjugate Techniques、アカデミック・プレス(Academic Press)、ニューヨーク(New York)(1996年)を参照)。適切なカップリング剤は、ペプチド上の末端アミン基および/またはカルボン酸末端基ならびに金属酸化物上のヒドロキシ基または他の基、具体的には金属酸化物の処理表面のアルミナおよび/またはシリカに対して反応性を示す、カルボジイミドカップリング剤、塩化二酸、ジイソシアネートおよび他の二官能性カップリング試薬を含むがこれらに限定されない。好ましいカップリング剤は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)およびN,N’−ジシクロヘキシル−カルボジイミド(DCC)などのカルボジイミドカップリング剤であり、アルコールに共役するためのカルボン酸基、およびアミン基を活性化するのに使用される場合がある。
【0098】
さらに、ペプチド上の反応性アミン基またはカルボン酸基を保護し、ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤において所望の構造を作製することが必要な場合がある。t−ブチロキシカルボニル(t−Boc)など、アミノ酸における保護基の使用は、当該技術分野で周知である(例えばスチュワート(Stewart)ら、上記;ボダンスズキー(Bodanszky)、上記;およびペニントン(Pennington)ら、上記を参照)。場合により、皮膚結合ペプチドに対する共役のため、カルボン酸基、アルコール基、アミン基、またはアルデヒド基などの反応基をサンスクリーン剤上に導入することが必要でありうる。これらの修飾は、当該技術分野で周知の酸化、還元などの通常の化学反応を用いて行われる場合がある。
【0099】
皮膚結合ペプチドを金属酸化物サンスクリーン剤にスペーサーを介して共役することも望ましい場合がある。スペーサーがサンスクリーン剤をペプチドから分離するように機能することで、同剤がペプチドの皮膚への結合と干渉しないことが保証される。スペーサーは、アルキル鎖、フェニル化合物、エチレングリコール、アミド、エステルなどの種々の分子のいずれかでありうる。好ましいスペーサーは、親水性を示し、1〜約100原子、より好ましくは2〜約30原子の鎖長を有する。好ましいスペーサーの例として、エタノールアミン、エチレングリコール、6炭素原子の鎖長を有するポリエチレン、3〜6反復単位を有するポリエチレングリコール、フェノキシエタノール、プロパノールアミド、ブチレングリコール、ブチレングリコールアミド、プロピルフェニル、ならびにエチル、プロピル、ヘキシル、ステリル、セチル、およびパルミトイルアルキルの鎖が挙げられるがこれらに限定されない。スペーサーは、上記のカップリング化学物質のいずれかを用いてペプチドおよびサンスクリーン剤と共有結合されうる。スペーサーの取り込みを促進するため、ペプチドおよびサンスクリーン剤に対する共役において、スペーサーおよび反応基を両末端に含む二官能性架橋剤が使用される場合がある。適切な二官能性架橋剤は、当該技術分野で周知であり、1,6−ジアミノヘキサンなどのジアミン;グルタルアルデヒドなどのジアルデヒド;エチレングリコール−ビス(琥珀酸N−ヒドロキシサクシンイミドエステル)、ジサクシニミジルグルタレート(disuccinimidyl glutarate)、ジサクシニミジルスベレート(disuccinimidyl suberate)、およびエチレングリコール−ビス(サクシニミジルサクシネート(succinimidyl succinate))などのビスN−ヒドロキシサクシンイミドエステル;ヘキサメチレンジイソシアネートなどのジイソシアネート;1,4ブタンジイルジグリシジルエーテルなどのビスオキシラン;サクシニルジサリシレート(succinyldisalicylate)などのジカルボン酸などを含むがこれらに限定されない。異なる反応基を各末端に含むヘテロ二官能性架橋剤もまた使用される場合がある。ヘテロ二官能性架橋剤の例として、以下の構造を有する化合物が挙げられるがこれに限定されない。
【0100】
【化1】

【0101】
(式中、RはHまたは−SONa、−NO、または−Brなどの置換基であり、かつRは−CHCH(エチル)、−(CH(プロピル)、または−(CH(プロピルフェニル)などのスペーサーである)かかるヘテロ二官能性架橋剤の例として、3−マレイミドプロピオン酸N−ヒドロキシサクシンイミドエステルが挙げられる。これらの試薬のN−ヒドロキシサクシンイミドエステル基はコンディショナー上のアミン基またはアルコール基と反応する一方、マレイミド基はペプチド上に存在するチオール基と反応する。チオール基は、システイン基を結合ペプチド配列の少なくとも一方の末端に付加することによってペプチドに取り込まれうる。グリシンなどの数個のスペーサーのアミノ酸残基が結合ペプチド配列と末端システインの間に取り込まれることで、反応性のチオール基が結合配列から分離されうる。
【0102】
さらに、スペーサーは、任意のアミノ酸とその混合物とからなるペプチドでありうる。好ましいペプチドスペーサーは、アミノ酸のグリシン、アラニンおよびセリン、ならびにこれらの混合物からなる。さらに、ペプチドスペーサーは、配列番号2で与えられる、プロテアーゼカスパーゼの3部位などの特定の酵素切断部位を含む場合があり、皮膚からのサンスクリーン剤の酵素的除去が可能になる。ペプチドスペーサーは、1〜約50アミノ酸長、好ましくは1〜約20アミノ酸長でありうる。これらのペプチドスペーサーは、当該技術分野で既知の任意の方法によって結合ペプチド配列に連結されうる。例えば、結合ペプチド−ペプチドスペーサー−ジブロックの全体は、上記の標準のペプチド合成方法を用いて調製されうる。さらに、結合ペプチドとペプチドスペーサーブロックは、ペプチド上の末端アミンおよび/またはカルボン酸末端基に反応性を示す、カルボジイミドカップリング剤(例えば、ハーマンソン(Hermanson)、Bioconjugate Techniques、アカデミック・プレス(Academic Press)、ニューヨーク(New York)(1996年)を参照)、塩化二酸、ジイソシアネートおよび他の二官能性カップリング試薬を用いて結合されうる。あるいは、結合ペプチド−ペプチドスペーサー−ジブロックの全体は、上記の組み換えDNAおよび分子クローニング技術を用いて調製されうる。スペーサーはまた、ペプチドスペーサーと有機スペーサー分子の組み合わせである場合があり、上記の方法を用いて調製されうる。
【0103】
ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーンと皮膚の間の相互作用を高めるのに、複数の皮膚結合ペプチドを金属酸化物サンスクリーン剤に付着させることも望ましい場合がある。同じ皮膚結合ペプチドの複数のコピーまたは異なる皮膚結合ペプチドの組み合わせが使用されうる。大きな金属酸化物粒子および/または凝集体の場合、多数すなわち約1,000個までの皮膚結合ペプチドがサンスクリーン剤に付着されうる。より少数すなわち約50個までの皮膚結合ペプチドをより少ないサンスクリーンナノ粒子に付着させてもよい。したがって、本発明の一実施形態では、ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤は、一般構造(SBP)−SSA(式中、nは1〜約1,000、好ましくは1〜約50の範囲である)を有する、スキンケア組成物に抵抗性を示す皮膚結合ペプチド(SBP)と金属酸化物サンスクリーン剤(SSA)からなるジブロック組成物である。
【0104】
別の実施形態では、ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーンは、上記のように、スキンケア組成物に抵抗性を示す皮膚結合ペプチドをサンスクリーン剤から分離するスペーサー(S)を含む。皮膚結合ペプチドの複数のコピーは、単一のスペーサー分子に付着されうる。この実施形態では、ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤は、一般構造[(SBP)−S]−SSA(式中、nは1〜約1,000、好ましくはnは1〜約50の範囲、およびmは1〜約50、好ましくはmは1〜約10の範囲である)を有する、スキンケア組成物に抵抗性を示す皮膚結合ペプチド、スペーサー、およびサンスクリーン剤からなるトリブロック組成物である。
【0105】
本明細書で用いられるSBPは総称であり、単一の皮膚結合ペプチド配列に言及することを意味するものではないことが理解されるべきである。上で用いられたnまたはmが1より大きい場合、一連の異なる配列の皮膚結合ペプチドが組成物の一部を形成しうる場合の状況を設けることは本発明の範囲内で十分になされる。
【0106】
サンスクリーン製剤
本発明のサンスクリーン製剤は、典型的には製剤の総重量を基準にして約25wt%まで、典型的には約2wt%〜約10wt%まで、さらにより好ましくは8wt%までの範囲の量のペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤を含有することになり、同量は製剤の所望の太陽光線保護指数(SPF)に依存する。
【0107】
サンスクリーン製剤の均衡は、流体ビヒクルおよび任意の他の添加剤から構成されることになる。典型的には、流体ビヒクルは、鉱油および脂肪アルコールを制限なく含有しうる水および他の溶媒を含んでなる。
【0108】
サンスクリーン製剤は通常はエマルジョンであり、エマルジョンの油相は典型的には本発明の金属酸化物などのUV活性成分を含有する。サンスクリーン製剤は、典型的には水に加え、エモリエント、保湿剤、増粘剤、UV活性剤(actives)、キレート剤、乳化剤、懸濁化剤(典型的にはもし粒子状UV活性剤を使用する場合)、防水剤、被膜剤および防腐剤を含有する。
【0109】
防腐剤の具体例としてパラベンが挙げられる。エモリエントの具体例として、オクチルパルミテート、セテアリルアルコール、およびジメチコーンが挙げられる。保湿剤の具体例として、プロピレングリコール、グリセリン、およびブチレングリコールが挙げられる。増粘剤の具体例として、キサンタンガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、セルロースガム、および硬化ヒマシ油が挙げられる。キレート剤の具体例として、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)2ナトリウムおよびEDTA4ナトリウムが挙げられる。UV活性剤の具体例として、メトキシ桂皮酸エチルヘキシル、オクトクリレン、および二酸化チタンが挙げられる。乳化剤の具体例として、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸ポリエチレングリコール−100、およびセテアレス−20が挙げられる。懸濁化剤の具体例として、ジエタノールアミン−オレス−3−ホスフェートおよびネオペンチルグリコールジオクタノエートが挙げられる。防水剤の具体例として、C30〜38オレフィン/マレイン酸イソプロピル/MAコポリマーが挙げられる。被膜剤の具体例として、ヒドロキシエチルセルロースおよびカルボマーナトリウムが挙げられる。
【0110】
分散剤を含有する二酸化チタンナノ粒子の分散を調整することを目的として、多数の手段の利用が可能である。例えば、凝集体をより小さい粒子に分解するのに、製粉や粉砕など、激しい混合が必要な場合がある。二酸化チタンナノ粒子の製造者は、顧客による使用を容易にするのに流体ビヒクル中での粒子の分散を調製および提供でき、それにより製剤への取り込みが簡素化される。
【0111】
サンスクリーン製剤は、さらなるサンスクリーニング性能を意図して典型的なサンスクリーン活性成分も含有しうる。典型的なサンスクリーン活性成分は周知である。具体例として、アミノ安息香酸(PABA)、アボベンゾン、シノキセート、ジオキシベンゾン、ホモサレート、メチルアントラニレート、オクトクリレン、メトキシ桂皮酸オクチル、サリチル酸オクチル、オキシベンゾン、パディメートO、フェニルベンズイミダゾール、スルイソベンゾン、サリチル酸トロラミンが挙げられる。さらに、最終製剤は、二酸化チタンと酸化亜鉛の組み合わせなどの金属酸化物サンスクリーン剤の組み合わせを含有しうる。
【0112】
皮膚を処理するための方法
別の実施形態では、動物体、具体的には哺乳類体、さらにより具体的にはヒト体の皮膚または毛髪を本開示のサンスクリーン製剤で処理するための方法が提供される。サンスクリーンと粒子状UV活性成分との調合に関する当業者に周知の方法を用い、ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤のサンスクリーンへの取り込みを行ってもよい。サンスクリーン製剤は、ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤と流体ビヒクルを任意のさらなる添加剤とともに混合することによって調製される。ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤を、ホモジナイザーなどの任意の便利な手段により、約60℃〜約90℃、好ましくは約70℃〜約85℃の温度で流体ビヒクルに添加してもよい。
【0113】
本発明は、有効量のペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤を含んでなる上記組成物の1つを毛髪または皮膚に適用して保護膜の形成を可能にすることにより、体の毛髪または皮膚の表面上にサンスクリーン製剤の保護膜を形成するための方法も含む。本開示の組成物は、スプレー、ブラッシング、および手による適用を含むがこれらに限定されない様々な手段により、皮膚または毛髪に適用されうる。サンスクリーン製剤を、保護膜を形成するのに十分な時間、好ましくは少なくとも約0.1〜60分間、皮膚または毛髪と接触させたままにしてもよい。
【実施例】
【0114】
本発明は、以下の実施例においてさらに明らかにされる。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示す一方、あくまで図示目的で与えられることが理解されるべきである。上記の考察およびこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的な特徴を確認でき、その精神および範囲から逸脱することなく、本発明の様々な変更および改良を行うことでそれを様々な使用および条件に適合させることができる。
【0115】
試験方法
ビタミンCの化学的安定性に対する黄変試験
オクチルパルミテート(ヘキサデカン酸2−エチルヘキシルエステル、CAS#29806−73−3、ヴァンダイク(VanDyk)による「セラフィル(Ceraphyl)」の名称の下、使用可能)中、6.25%アスコルビン酸パルミテート(L−アスコルビン酸6−パルミテート、99%、CAS#137−66−6、アルファ・エイサー(Alfa Aesar)から市販)の標準溶液を調製する。へらおよびガラス板またはフーバーマーラー(Hoover Muller)モデルM5を使用し、溶液1.9+0.05mlを0.4+0.01gの試験対象の二酸化チタン試料と完全に混合する。混合物を、6ミルのバード(Bird)フィルムアプリケータを使用して白色のラッカー塗りの3”×5”カード上に引き落とし、試験フィルムを形成する。試験フィルムの色(L)を、色の読み取りに先立って暖められたビックガードナー(Byk−Gardner)モデルCB−6805などのハンドヘルド式分光比色計を使用して測定し、較正し、D65/10°(イルミナント/オブザーバー)を用いるように設定した。試験フィルムと同様に、ブランクフィルムを純粋なオクチルパルミテートおよび超微細な二酸化チタンを用いて調製する。ブランクフィルムの色を試験フィルムの色と同様に測定する。試験およびブランクフィルムの色を比較することにより、デルタb値を判定する。デルタb値は化学的活性の測定値である。
【0116】
UPA粒子のサイズ分布
マイクロトラック・ウルトラファイン・パーティクル・アナライザー(MICROTRAC ULTRAFINE PARTICLE ANALYZER)(UPA)(リーズ・アンド・ノースラップ(Leeds and Northrup)の商標、ノースウェールズ(North Wales)、ペンシルバニア州(PA))では、動的光散乱の原理を用いて液体懸濁液中粒子の粒子サイズ分布が測定される。リーズ・アンド・ノースラップ(Leeds and Northrup)、ペンシルバニア州(PA)ノースウェールズ(North Wales)は、その器具を製造している。測定されるサイズ範囲は0.003μm〜6μm(3nm〜6000nm)である。UPA分析を設定する場合、TiOの屈折率として2.55を使用する。乾燥粒子試料を分散液体中に調製して測定を行う必要がある。手順例は以下のとおりである。
(1)0.08gの乾燥粉末を検量する。
(2)79.92gの0.1%ピロリン酸四ナトリウム(TSPP)溶液を水に添加し、0.1wt%懸濁液を作製する。
(3)懸濁液を超音波プローブを使用して10分間超音波処理する。超音波処理の間、懸濁液を水で満たされた(water−jacketed)ビーカー内で冷却する必要がある。
(4)超音波処理が完了すると、分析用に一定分量を抜き取る。
注として、疎水性粒子を、TSPPの溶液への添加前にまず数滴のエタノールで湿らさなければならない。
【0117】
これら試験の結果を下記各実施例において報告した。
【0118】
実施例1
米国特許出願公開第2002/0155059A1号明細書に記載のRFプラズマ酸化によって作製した100gの二酸化チタンナノ粒子を含有する半ガロンのプラスチック製ジャグに、全容量800mlの研磨用の脱イオン水を添加し、混合物を撹拌した。二酸化チタンナノ粒子の出発物質は、マイクロトラック(Microtrac)UPA動的光散乱機器による測定によると、90nmの平均粒子サイズ、10wt%の50nm未満の粒子サイズ、90%の150nm未満の粒子サイズを有した。混合物を7の出力で10分間超音波処理し、325メッシュのふるいを通して選別した。選別された混合物を、電気撹拌器、温度プローブおよびpHプローブを具備する2000mlのステンレス鋼製ビーカーに添加した。混合物をプロペラ羽根を使用して速やかに撹拌した。
【0119】
初期pHは1であった。混合物を60℃に加熱し、pHを50%NaOH溶液(8.2g)を用いて7.1に調節した。次いで、9.0gアルミン酸ナトリウム(27.8wt%アルミナ)を添加した。pHは10.8であった。混合物を15分間撹拌した。
【0120】
混合物を92℃に加熱した。pHは10.0であった。次いで、1.6gの50%クエン酸溶液を添加した。クエン酸添加後のpHは8.8であった。pHを50%NaOH溶液を用いて10.7に調節した。次いで、21.5gのケイ酸ナトリウム(27wt%シリカ)を強く撹拌しながら添加した。pHは10.7であった。約15分にわたり、濃縮した(38%)塩酸溶液を添加し、pHを7に低下させた(17.7gHCl)。混合物を92〜95℃で45分間撹拌した。加熱を停止し、15分にわたり18.0gのアルミン酸ナトリウムを滴下添加しながら濃縮した(38%HCl)(13.5g)を用いてpHを6〜8の範囲に低下させた。pHを7に維持しながら混合物を20分間撹拌した。20分後の温度は60℃であった。pHを濃縮した(38%)HClを用いて6.0±0.3に調節した。混合物を再び5分間撹拌した。最終混合物を濾過し、研磨用の脱イオン水で洗浄し、143mhos/cm未満の伝導度(約3リットルの水、106μmhos/cm)にした。混合物を約30分間真空乾燥して固形物を形成し、次いで固形物を約15分間覆うようにエタノールを添加した。次いで固形物を再び約30分間真空乾燥した。固形物をトレイ上、125℃のオーブン内で一晩乾燥した。乾燥粒子を挽き、35メッシュスクリーンを通してふるい分けし、再び乾燥した。
測定されたSiO:3.9%
測定されたAl:5.7%
【0121】
実施例2
50.00gのデグッサ(Degussa)製P25チタンおよび400mlの研磨用の脱イオン水といった物質を1000mlのプラスチック製ビーカーに添加した。混合物を撹拌し、次いで7の出力で3分間超音波処理した。次いで、混合物を、電気撹拌器、温度プローブおよびpHプローブを具備する600mlのステンレス鋼製ビーカーに注いだ。混合物をプロペラ羽根を使用して撹拌した。混合物の初期pHは3.3であった。混合物を約95℃に加熱し、0.8gのクエン酸50%溶液を添加した。pHは2.7であった。pHを、3.8gの50%NaOH溶液の添加により、10%NaOHを用いて9〜9.5の範囲に調節した。10.75gのケイ酸ナトリウムを14分にわたり滴下添加しながら8.1gの濃縮した(38%)HClの添加によって中性pHを維持した。混合物を約2600rpmで撹拌しながら1時間、pH9.5、95℃で加熱した。9gのアルミン酸ナトリウムを10分にわたり滴下添加しながら8.1gの濃縮した(38%)HClの添加によってpHを7に低下させた。加熱を停止し、混合物をpH7で20分間撹拌した。20分後の温度は75.5℃であった。pHをHClを用いて6.0±0.3に調節し、5分間撹拌した。
【0122】
実施例1のように、混合物を濾過し、洗浄し、乾燥し、乾燥粒子を形成した。
測定されたSiO:4.4%
測定されたAl:3.2%
【0123】
実施例3
ケイ酸ナトリウムの添加に先立ちアルミン酸ナトリウムを全く添加しない点を除き、実施例1に記載のように処理を行った。
測定されたSiO:4.1%
測定されたAl:4.4%
【0124】
実施例4
実施例1に記載のように、二酸化チタンの水性混合物を調製し、撹拌し、次いで超音波処理し、pHを調節した。初期pHは1.5であった。混合物を60℃に加熱し、pHを50%NaOH溶液(8.2g)を用いて7.3に調節した。次いで、9.0gのアルミン酸ナトリウム(27.8wt%アルミナ)を添加した。pHは11.4であった。混合物を15分間撹拌した。
【0125】
混合物を92℃に加熱した。pHは10.9であった。次いで、4.8gの50%クエン酸溶液を添加した。クエン酸添加後のpHは9.7であった。pHを50%NaOH溶液を用いて10.9に調節した。次いで、64.5gのケイ酸ナトリウム(27wt%シリカ)を強く撹拌しながら添加した。pHは11.0であった。約15分にわたり濃縮した(38%)塩酸溶液を添加してpHを7に低下させた(23.5g.HCl)。混合物を2〜95℃で45分間撹拌した。加熱を停止し、54.0gのアルミン酸ナトリウムを13分間滴下添加しながら濃縮した(38%HCl)(37.4g)を用いてpHを6〜8の範囲に低下させた。pHを7に維持しながら混合物を20分間撹拌した。20分後の温度は44℃であった。pHを濃縮した(38%)HClを用いて6.0±0.3に調節した。混合物を再び5分間撹拌した。最終混合物を濾過し、研磨用の脱イオン水で洗浄し、143mhos/cm未満の伝導度(約3リットルの水、100μmhos/cm)にした。混合物を約30分間真空乾燥して固形物を形成し、次いで固形物を約15分間覆うようにエタノールを添加した。次いで固形物を再び約30分間真空乾燥した。固形物をトレイ上で125℃のオーブン内で一晩乾燥した。乾燥粒子を挽き、35メッシュスクリーンを通してふるい分けし、再び乾燥した。
測定されたSiO:10.1%
測定されたAl:14.5%
【0126】
実施例5
実施例1に記載のように、二酸化チタンの水性混合物を調製し、撹拌し、超音波処理し、pHを調節した。次いで、実施例1に記載のように、それを60℃に加熱し、15分間撹拌し、次いで濾過し、洗浄し、乾燥した。
測定されたSiO:0.0%
測定されたAl:0.0%
【0127】
実施例6
50.00gのデグッサ(Degussa)製P25チタンおよび400mlの研磨用の脱イオン水といった物質を1000mlのプラスチック製ビーカーに添加した。混合物を撹拌し、次いで7の出力で3分間超音波処理した。次いで、混合物を、電気撹拌器用モーターで撹拌し、92℃に加熱した。初期pHは3.2であった。pHを1.4gの10%NaOHを用いて9.2に調節した。18.5gのケイ酸ナトリウム溶液(27wt%SiO)を8分にわたり滴下添加しながらHCl(18%、10.3g、50%希釈物)を用いて混合物のpHを9〜10の範囲内に維持した。混合物を1時間加熱した。
【0128】
実施例1に記載のように、混合物を濾過し、洗浄し、乾燥し、かつ粒子を挽き、メッシュスクリーンを通してふるい分けし、再び乾燥した。
測定されたSiO:8.33%
【0129】
実施例7
実施例2に記載のように、二酸化チタンの水性混合物を調製し、撹拌し、次いで超音波処理した。初期pHは3.3〜3.6の範囲内であった。混合物を約91℃に加熱した。pHを1.24gの10%NaOHを用いて9.4に調節した。37.04gのケイ酸ナトリウム溶液(27wt%SiO)を約40分にわたり滴下添加しながらHCl(18%、20.63g、50%希釈物)を用いて混合物のpHを9〜9.5の範囲内に維持した。混合物を、約2700rpmで混合しながら1時間、pH9.3で91〜97℃に加熱した。
【0130】
実施例1に記載のように、混合物を濾過し、洗浄し、乾燥し、かつ粒子を挽き、100メッシュスクリーンを通してふるい分けし、再び乾燥した。
測定されたSiO:13.0%
【0131】
実施例8
実施例2に記載のように、二酸化チタンの水性混合物を調製し、撹拌し、次いで超音波処理した。初期pHは3.4〜3.8の範囲内であった。混合物を92℃に加熱した。pHを1.1gの10%NaOHを用いて9.2に調節した。55.56gのケイ酸ナトリウム溶液(27wt%SiO)を約27分にわたり滴下添加しながらHCl(38%、39.20g、50%希釈物)を用いて混合物のpHを9〜9.5の範囲内に維持した。混合物を、約3500rpmで混合しながら1時間、pH9.4で94℃に加熱した。
【0132】
実施例1に記載のように、混合物を濾過し、洗浄し、乾燥し、かつ粒子を挽き、100メッシュスクリーンを通してふるい分けし、再び乾燥した。
測定されたSiO:20.0%
【0133】
実施例9
実施例2に記載のように、二酸化チタンの水性混合物を調製し、撹拌し、次いで超音波処理した。初期pHは3.0〜3.1の範囲内であった。混合物を92℃に加熱した。pHを約1.6gの10%NaOHを用いて9.1〜9.5に調節し、そのpHで維持した。混合物を1時間、pH9.5で90〜98℃に加熱した。実施例1に記載のように、混合物を濾過し、洗浄し、乾燥したが、濾過および洗浄がケイ酸ナトリウムを使用してなされた実施例の場合よりも時間がかかる点は注目された。乾燥された物質は小麦色をしていた。粒子を挽き、100メッシュスクリーンを通してふるい分けし、再び乾燥した。
測定されたSiO=0%
測定されたAl=0%
【0134】
実施例10
実施例1に記載のように、二酸化チタンの水性混合物を調製し、撹拌し、次いで超音波処理し、pHを調節した。混合物を60℃に加熱した。
【0135】
次いで、19.5gの濃縮した(38%)HClを用いてpHを6〜8の範囲内に保持しながら27.0gのアルミン酸ナトリウム(27.8wt%アルミナ)を添加した。次いで、pHおよび温度を維持しながら混合物を20分間撹拌した。
【0136】
次いで、実施例1に記載のように、物質を濾過し、洗浄し、乾燥し、破砕した。
【0137】
測定されたAl=4.7%
【0138】
【表2】

【0139】
実施例6、7および8に記載のデルタb(化学的活性の指標)値は、%シリカの増加によってデルタb値が低下することからシリカのレベルが高まることが示され、これにより化学的に安定化した生成物がもたらされることを示す。しかし、シリカ含有量が増加するにつれ、PSD値によって示されるように粒子が凝集体を形成する傾向が高まる。実施例2は、シリカおよびアルミナのコーティングを有する二酸化チタン粒子が、特に未処理の物質(実施例5)と比べて良好な化学的安定性があることを示す低いデルタb値を有し、さらに、PSD値によって示されるように凝集体が実質的に低下することを示す。したがって、シリカおよびアルミナでコーティングされた、低い表面処理レベルを有する二酸化チタンナノ粒子は、高レベルのシリカを含有する二酸化チタン粒子と同程度に良好な(もしより良好でない場合)化学的安定性を示す特性を有する。実施例1、2および3は、この処理が、優れた有効性を有する異なるプロセスによって形成された二酸化チタンナノ粒子にも適用されて、特に未処理物質(実施例5)と比べて化学的に安定な粒子を生成する可能性があり、同粒子はシリカのみで処理された粒子(実施例8)と比べて凝集体を低下させていることを示す。
【0140】
実施例11
本実施例の目的は、皮膚に対して高い結合親和性を有するファージペプチドの同定における好ましい実施形態について記載することである。フアン(Huang)ら(同時係属および公有の米国特許出願第10/935642号明細書)による記載のように改良されたバイオパニング方法を用いることで、高親和性の皮膚結合ファージペプチドクローンを同定した。ブタ皮膚はプロセスにおけるヒト皮膚についてのモデルとして機能し、上記参考文献にて引用された方法によって調製した。全部で28個の単一の黒色のファージプラークをDNAの単離および配列決定分析のためにランダムに採取し、1つの複製されたクローンを同定した。このファージペプチドのアミノ酸配列は、28個の配列から9回認められたもので、配列番号1として与えられるTPFHSPENAPGSであった。配列番号2は、カスパーゼ3の切断部位のLESGDEVDを示す。
【0141】
実施例12−予測
本実施例の目的は、実施例1〜10に記載のように調製された、配列番号1として与えられる皮膚結合ペプチドの二酸化チタン粒子の表面との共有結合によって金属酸化物サンスクリーン剤を調製するための方法を記載することである。二酸化チタンの表面をアルミナおよびシリカでコーティングすることで光活性を低下させる。これらのコーティングにより、良好な表面化学反応が可能になり、特定の皮膚結合ペプチドとの共有結合が生じる。
【0142】
二酸化チタン(87mg)、ペプチド(80mg)およびジシクロヘキシルカルボジイミド(22mg)をテトラヒドロフラン(THF)3mLに添加できた。数滴のTHF中のジメチルアミノピリジンの溶液(17μL)を、この混合物に撹拌しながら滴下添加した。得られた懸濁液を撹拌しながら6時間で40℃に加熱した後、室温で一晩撹拌できた。トリフルオロ酢酸(0.6mL)を生成物に添加し、混合物をさらに6時間、撹拌できた。次いで、脱イオン水5mLを反応混合物に添加できた。次いで、混合物を3,5000rpmで2分間遠心し、上清をデカントできた。遠心管内に残存する固体を脱イオン水で洗浄し、再び遠心できた。この洗浄を上清のpHが約6.0に至るまで繰り返すことができた。
【0143】
実施例13−予測
本実施例の目的は、ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤を含有するサンスクリーンを調製する方法を記載することである。長期持続性の耐水性サンスクリーンを、まずシクロペンタシロキサン(10g)およびシクロメチコン(10g)を約75℃まで加熱することによって調製できたと推測される。実施例12で記載のように調製した、最終製剤を基準にして約5wt%のペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤を、完全に混合されるまで混合物に撹拌できた。次いで水(60g)を混合物にゆっくりと添加し、次いでホモジナイザー上で約5分間挽き、次いで冷却しておくことができた。
【0144】
本開示の例示的でかつ好ましい実施形態の説明は、本発明の範囲を限定することを意図されていない。添付の特許請求の範囲の真の精神および範囲から逸脱することなく、様々な改良、代替構造物および等価物を用いることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤、および
(b)流体ビヒクル
を含んでなるサンスクリーン製剤。
【請求項2】
ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤の金属酸化物が二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムおよび酸化鉄ならびにこれらの組み合わせよりなる群から選択される請求項1に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項3】
ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤の金属酸化物が二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムおよび酸化鉄ならびにこれらの組み合わせよりなる群から選択される金属酸化物ナノ粒子を含んでなる請求項1に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項4】
ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤の金属酸化物が二酸化チタンナノ粒子を含んでなる請求項1に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項5】
ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤の金属酸化物がシリカ源またはアルミナ源あるいはこれらの組み合わせで処理される請求項1に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項6】
ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤の金属酸化物が高密度化剤の存在下で処理される請求項5に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項7】
高密度化剤がクエン酸である請求項6に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項8】
ペプチドをベースとする金属酸化物の金属酸化物が二酸化チタンナノ粒子である請求項7に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項9】
ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤がサンスクリーン製剤の総重量の25wt%までを含んでなる請求項1に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項10】
ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤が、一般構造(SBP)−SSA(ここで、SBPは皮膚結合ペプチドであり、SSAは金属酸化物サンスクリーン剤であり、かつnは1〜約50の範囲である)を有するジブロック組成物を含んでなる請求項1に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項11】
nが約1〜約10である請求項10に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項12】
ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤が、一般構造[(SBP)−S]−SSA(ここで、SBPは皮膚結合ペプチドであり、Sは第1および第2の末端を有するスペーサーであり、SSAは前記金属酸化物サンスクリーン剤であり、mは1〜約50の範囲であり、かつnは1〜約500の範囲である)を有するトリブロック組成物を含んでなる請求項1に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項13】
nが約1〜約10である請求項12に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項14】
SBPが配列番号1である請求項10または12に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項15】
SBPが配列番号2、3、4、5、6、7および8よりなる群から選択されるペプチドである請求項10または12に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項16】
スペーサーが配列番号9を有するプロテアーゼカスパーゼである請求項12に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項17】
スペーサーがアルキル鎖、フェニル化合物、エチレングリコール、アミド、およびエステルから選択される請求項12に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項18】
スペーサーが親水性を示し、かつ1〜約100原子鎖長を有する請求項12に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項19】
スペーサーが親水性を示し、かつ約2〜約30原子鎖長を有する請求項12に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項20】
スペーサーが、エタノールアミン、エチレングリコール、6個の炭素の原子鎖長を有するポリエチレン、3〜6反復単位を有するポリエチレングリコール、フェノキシエタノール、プロパノールアミド、ブチレングリコール、ブチレングリコールアミド、プロピルフェニル、エチル、プロピル、ヘキシル、ステリル、セチル、およびパルミトイルアルキルの鎖から選択される請求項12に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項21】
スペーサーが前記SBPおよびSSAに共有結合され、かつ反応基を含んでなる請求項12に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項22】
スペーサーおよび反応基が二官能性架橋剤を含んでなる請求項21に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項23】
二官能性架橋剤が、ジアミン、ジアルデヒド、ビスN−ヒドロキシサクシンイミドエステル、ジイソシアネート、ビスオキシラン、およびジカルボン酸よりなる群から選択される請求項22に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項24】
スペーサーの各末端上の前記反応基が異なる請求項22に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項25】
架橋剤が以下の構造
【化1】


(式中、RはHまたは−SONa、−NO、および−Brから選択される置換基であり、ならびにRは−CHCH(エチル)、−(CH(プロピル)、または−(CH(プロピルフェニル)を含んでなるスペーサーである)を有する請求項22に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項26】
架橋剤が3−マレイミドプロピオン酸N−ヒドロキシサクシンイミドエステルである請求項22に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項27】
請求項1に記載の前記サンスクリーン製剤を皮膚または毛髪に適用するステップを含んでなる、前記皮膚または毛髪の処理方法。
【請求項28】
ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤の金属酸化物の結晶格子が前記金属酸化物の金属とは異なる元素でドープされて前記金属酸化物の色を変更する請求項1に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項29】
格子が鉄またはマンガンでドープされている請求項28に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項30】
ペプチドをベースとする金属酸化物サンスクリーン剤の金属酸化物の結晶格子が前記金属酸化物とは異なる元素でドープされて前記金属酸化物の光活性を低下させる請求項1に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項31】
金属酸化物の結晶格子がマンガン、鉄、バナジウム、またはクロムでドープされている請求項30に記載のサンスクリーン製剤。
【請求項32】
ドーパントが前記金属酸化物の総重量を基準にして約0.01%〜約5%の範囲の量で存在する請求項28または30に記載のサンスクリーン製剤。

【公表番号】特表2008−535788(P2008−535788A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−558197(P2007−558197)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/007365
【国際公開番号】WO2006/094095
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】