説明

金属酸化物の分散方法

【課題】予備分散の必要性を避けるために日焼け止めやその他の調合品に直接、有機UVフィルターを安定的に分散させる便利な方法を提供する。
【解決手段】(i)金属酸化物が250ナノメーター以下の平均粒子サイズをもち、(ii)金属酸化物が鉄酸化物以外のもので、(iii)コロイド状のミクロ結晶性セルロースがポリマーバインダーで共処理されておりそして(iv)金属酸化物が分散物の合計重量の少なくとも0.6wt%の量で存在することを特徴とする、金属酸化物を添加する前に或いは同時にコロイド状のミクロ結晶性セルロースを水中に分散させそして安定な金属酸化物の分散物を回収する金属酸化物の水中への安定的分散方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄酸化物以外の金属酸化物を分散させる方法に関する。別の態様においては、本発明は本方法によって調製された組成物である。さらに別の態様においては、本発明は本方法によって調製された組成物を含む化粧品、日焼け止め、薬剤、塗料、コーティング剤、又は食品組成物である。さらに別の態様においては、本発明はコロイド状のミクロ結晶性セルロースと無機UVフィルター金属酸化物からなる粉体組成物である。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物は幾つかの用途で利点がある。例えば、鉄酸化物は工業的な塗料及びコーティング剤中の及び装飾化粧品中の顔料として広範に使用されている。二酸化チタンは工業的な塗料及びコーティング剤及び化粧品、食品及び薬剤用途で透明化剤又は白化剤として使用されている。酸化亜鉛は装飾化粧品や髭剃り後用製品を含む幾つかの化粧品用途で活性成分又は透明化剤として使用されている。
【0003】
日焼け止め用組成物は、紅班、一般には日焼けとして知られている皮膚の赤化を生じさせる太陽の紫外線から肌を保護するために肌に塗布される。波長290nm−320nm(“UV−B”)の範囲の紫外線照射(“UVR”)は、皮膚の表面近くで吸収され、日焼けの主原因となる。波長320nm−400nm(“UV−A”)の紫外線照射は皮膚にもっと深く入り込みそして現実により長い期間にわたる損傷を与える。長い時間そして一定時間、太陽に曝されると、化学線角質や癌腫、それに肌の皺、ヒビ、弾力性の低下などで特徴付けられる肌の老化の原因となる。
【0004】
UVフィルターは、二つのクラス、有機及び無機に分類され、紫外線照射の影響から肌や髪を保護するために広範に使用されている。これらのUVフィルターは、クリーム、ローション、スティック、ゲル及びスプレーを含む化粧用製品の種々のフォーマットで調合することができる。
【0005】
酸化亜鉛及び二酸化チタンはその調合において日焼け防止係数(SPF)を増大させる能力のために日焼け止め用途において特に有用である。過去においては、これらの金属酸化物の保護的性質は限定されそしてそれらを使用すると肌に白い残留物を生じさせた。近年になって、日焼け止め用の酸化亜鉛及び二酸化チタンの両者のより効果的な形態の開発において本質的な進歩が成し遂げられてきた。この進歩はこれらの金属酸化物のより小さな粒子の開発を含んでいる。典型的には、日焼け止めに使用されるとき、これらのUVフィルターは100ナノメーター以下の粒子サイズをもつ。無機UVフィルターは特に広範囲のUV波長に対して与える保護能力のために日焼け止めや他の化粧品で使用すると価値がある。さらに、それらは一般に化粧品としての使用が安全で、多くの有機UVフィルターの場合にある肌のべた付き感の欠点がない。
【0006】
日焼け止め又は化粧品調合の製造過程で、無機UVフィルターは油相又は水相に分散することができる。保護的性質は粒子サイズを100ナノメーター以下に減少させることによって改良されるが、これらの金属酸化物の分散はより難しくなる。無機UVフィルターを個々の粒子中に分散させることに失敗すると、凝集した粒子は個々の粒子よりUV照射を吸収する能力が低いのでUV照射の吸収は減少する。この困難に部分的に又は完全に打ち勝つための幾つかの方法が知られている。例えば、金属酸化物はポリヒドロキシステアリン酸のような分散助剤を使用して水中に分散させることができる。この方法は分散の困難性を減少させるが、それは分散助剤のような他の機能をもたない付加的な成分を導入することになる。さらに、文献公知の分散助剤は無機UVフィルターの沈降に対して安定性を与えない。その代りに、金属酸化物はシリコーン油のような油中に分散することができる。しかしながら、この方法はやはり追加成分及び製造プロセスに追加の工程を導入することになる。この分散剤はそれから日焼け止め調製過程で油相に添加することができる。
【0007】
無機UVフィルターを含む日焼け止め、又は他の化粧品の製造は調合において無機UVフィルターを如何にして含ませるかについて二通りのアプローチを選択することができる。製造者等は粉体形状の無機UVフィルターを購入しそしてこれを直接水相又は油相に分散させることができる。これらの粉体形状の無機UVフィルターは商業的に容易に購入可能でありそしてしばしば分散性を改善するための物質でコートされている。しかしながら、このコーティングと所望による分散助剤の使用は分散の困難性を部分的に減少させるのみである。結果として、多くの製造においては粉体UVフィルターでの製造問題に遭遇することがわかる。二次アプローチとしては油又は水中の無機UVフィルターの予備分散物を購入することも含む。このアプローチは分散問題をかなり克服するが、予備分散物は典型的には粉体製品より高価なので製造コストが高くなる。さらに、製造者等は限定された数多くの利用可能な予備分散組成物から選択しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、予備分散の必要性を避けるために日焼け止めやその他の調合品に直接、有機UVフィルターを分散させる便利な方法を提供することである。さらに、本発明の課題は、有機UVフィルターの水分散における安定性を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、金属酸化物を水中に安定に分散させる方法において、該金属酸化物を添加する前に或いは同時にコロイド状のミクロ結晶性セルロースを水中に分散させそして該安定な金属分散物を回収する:ここで、(i)該金属酸化物が250ナノメーター以下の平均粒子サイズをもち、(ii)該金属酸化物が鉄酸化物以外のもので、(iii)該コロイド状のミクロ結晶性セルロースがポリマーバインダーで処理されておりそして(iv)該金属酸化物が分散物の合計重量の少なくとも0.6wt%の量で存在する、金属酸化物の水中への安定的分散方法である。この安定な分散物はパッケージ化され、販売されそして後刻に調合を完成させるために使用される。別の態様においては、本発明は本方法によって調製された組成物である。さらに別の態様においては、本発明は、本方法によって調製された組成物を含む化粧品、日焼け止め、薬剤、塗料、コーティング剤、又は食品組成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の金属酸化物は、金属酸化物の分散がコロイド状のミクロ結晶性セルロースを該水に分散させた後又は同時であるときに水に容易に分散できることを発見した。分散した金属酸化物は貯蔵過程で安定に存在しそして後刻に日焼け止め又はその他の化粧品調合に容易に組み込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ミクロ結晶性セルロースは、繊維質の木からのパルプ形態のセルロース源、好ましくはアルファーセルロースを鉱酸、好ましくは塩酸で処理することによって製造されるセルロースを精製し、部分的に解重合したものである。酸はセルロースポリマー鎖の整列が不十分な領域を選択的に攻撃し、それによって結晶サイトを露出させそして遊離させ、ミクロ結晶性セルロースを構成している結晶凝集体を生成させる。
【0012】
コロイド状のミクロ結晶性セルロースは粉砕し及び粉砕された粒子を強度の凝集の形成を避けるために安定化することによってミクロ結晶性セルロースの粒子サイズを減少させることによって得られる。乾燥方法は究極的に再構成可能な粉体を作る如何なる方法であってもよい。そのような方法の一つはスプレードライであり、ナトリウムカルボキシルセルロース、カラギーナン、アルギネート、ペクチン及びペクテート、及びキサンタンのようなポリマーバインダーで共処理されたミクロ結晶性セルロースを製造するために使用できる。ミクロ結晶性セルロースの粒子サイズを減少させる技術及び/又はミクロ結晶性セルロースをスプレードライする技術は特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4に開示されている。レオロジーを制御するために十分なコロイド状のミクロ結晶性セルロースが組成物中に存在する限り、その組成物はまた大きなミクロ結晶粒子、例えば、組成物が粒状にならない限り、粉砕されていない又は部分的にのみ粉砕されている粒子をも含む。
【0013】
本発明のコロイド状のミクロ結晶性セルロースはポリマー状バインダーと共処理される。そのようなポリマー状バインダーはカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩を含む。
【0014】
ミクロ結晶性セルロースとカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩を含むコロイド状のミクロ結晶性セルロースは市販されている。商標名AVICEL RC−581及び商標名AVICEL RC−591はそれぞれミクロ結晶性セルロースとカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩をおおよそ89/11の重量比で含む。商標名AVICEL CL−611及び商標名AVICEL PC−611はそれぞれミクロ結晶性セルロースとカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩をおおよそ85/15の重量比で含む。好ましいコロイド状のミクロ結晶性セルロースは商標名AVICEL CL−611及び商標名AVICEL PC−611である。コロイド状の粒子サイズは一般的には約1ミクロン以下である。
【0015】
コロイド状のミクロ結晶性セルロースは水中に分散するとき3次元構造ネットワークを形成する。分散は、典型的には粉体として市販されているミクロ結晶性セルロースを水に加えそして個々のミクロ結晶を分離させるに十分なせん断を与えることによって達成される。コロイド状のミクロ結晶性セルロースが水中に少なくとも部分的に分散していることが本発明では必須である。コロイド状のミクロ結晶性セルロースが少なくとも部分的に分散していることを証明するために、分散物のサンプルは偏光を使用した顕微鏡で100倍の倍率で観察できる。もし、ミクロ結晶が適切に分散しているなら、それらは黒い背景に均一に分散した個々の白い斑点として見える筈である。
【0016】
コロイド状のミクロ結晶性セルロースは分散物の合計重量の約0.1wt%−約5wt%、より特定的には、約0.2wt%−約2wt%で存在する。
本発明の金属酸化物は鉄の酸化物以外の如何なる酸化物でもよく、日焼け止め、化粧品、パーソナルケア用品、薬剤、塗料、コーティング剤、食品及び印刷用途で利用される。金属酸化物の例は二酸化チタン及び酸化亜鉛である。好ましい二酸化チタンとしては250ナノメーター以下、200ナノメーター以下、完全に分散するときには好ましくは100ナノメーター以下の平均粒子サイズのものを含む。好適な二酸化チタンの例としてはケミラ社の商標名UV−チタンとして販売されているものを含む。二酸化チタンは皮膚上で光酸化反応を防ぐために表面コーティング剤で処理される。二酸化チタンはさらに疎水性、親水性又は中性コーティング剤のような水又は油への分散性を改善するために表面材料で処理される。好ましい酸化亜鉛としては250ナノメーター以下、200ナノメーター以下、完全に分散するときには好ましくは100ナノメーター以下の平均粒子サイズのものを含む。好適な酸化亜鉛の例としてはBASF社の商標名Z−コート及びハーマンアンドライマー社の商標名酸化亜鉛ニュートラルとして販売されているものを含む。酸化亜鉛は水又は油への分散性を改善するために表面材料、例えば、疎水性、親水性又は中性コーティング剤で処理される。好ましくは、金属酸化物は粉体である。
【0017】
ここで使用されるときは、%によって示される全ての量は特に別の断りがない限り、水を含む分散物の合計重量基準である。本発明の水を含む分散物中の金属酸化物の量は合計重量の少なくとも0.6wt%、より特定的には合計重量の約0.6wt%−約99wt%、より特定的には合計重量の約0.6wt%−約80wt%、より特定的には合計重量の約0.6wt%−約50wt%、より特定的には合計重量の約1wt%−約50wt%、より特定的には合計重量の約2wt%−約40wt%である。金属酸化物は合計重量の約10wt%の量で存在してもよい。
【0018】
一態様においては、本発明は、酸化鉄を除く金属酸化物をコロイド状ミクロ結晶性セルロースの分散の後又は同時に水中に分散させることからなる酸化鉄を除く金属酸化物を分散させる方法である。
【0019】
別の態様においては、本発明は本発明の方法による製品である。この製品は所望の調合を後で完成させるためにパッケージ化され販売されている。
さらなる態様においては、本発明は本発明の方法で作られた製品からの日焼け止め、化粧品、薬剤、食品、布帛、塗料又はコーティング剤組成物である。本発明の安定な分散物及び安定な分散物から作られる調合品は両方とも有機の日焼け止め剤、分散助剤、緩和剤、表面活性剤、着色剤、湿潤剤、二次安定剤、防腐剤、活性成分、フィルム形成剤、固定化剤、又は防水剤のいずれかを含んでいてもよい。二次安定剤の例としては、アクリレートポリマー、ポリビニルピロリドン及び変性カルボキシメチルセルロースのような合成ポリマー;アルギネート、カラギーナン、ペクチン、グアール及びキサンタンガムのようなポリサッカライドを含む。二次安定剤は一般的には合計重量の0−3wt%、より特定的には合計重量の0.075−0.5wt%の量で存在する。
【0020】
さらに別の態様においては、本発明は本発明の方法によって作られた粉体組成物である。本発明の粉体組成物中に存在するコロイド状ミクロ結晶性セルロースの量は金属酸化物の重量の約1%−約200%、好ましくは金属酸化物の重量の約5%−約100%、より好ましくは金属酸化物の重量の約10%−約50%である。
【0021】
本発明の方法、及びそれによる製品は、望ましくは日焼け止め製造用途である。それは無機UVフィルターの安価な粉体形状を利用してより高価な予備分散剤の必要性を避けることができる日焼け止め剤の製造を可能にすることにより無機UVフィルターのコスト優位性のある取り込み方法を提供する。同様の用途はその他の化粧用製品の製造においてもある。UVフィルターは有害な日光の影響から保護するための広範囲の化粧品に急激に使用されてきている。そのような化粧品の例としては、デイクリーム、日光なしの日焼け(タンニング)処理、ヘアケア製品及び口紅、マスカラ、顔用粉末、アイシャドー、アイライナー及びリップ光沢剤を含む装飾化粧品を包含する。さらなる用途は塗料及びコーティング工業、特に自動車塗装、及び薬品、食品及び布帛印刷工業にある。
【0022】
本発明の粉体組成物は日焼け止め及び他の化粧用製品の調製に用途がある。本発明の有利な性質は以下の実施例(説明用で本発明を限定するものではない)を参照することによって明らかになるであろう。
【0023】
〔実施例〕材料
全てのケースで使用される水は脱イオン水である。
【0024】
【表1】

【0025】
全ての実施例において、他の記載がなければ、用語‘分散処理’は以下の手順を意味する。約30秒の時間で、粉体成分を水中に、シルバーソンローター−ステーターミキサーで低速(2,000rpm)で撹拌しながらゆっくりと添加する。全ての粉体を添加し終わった後で、分散物を10分間高速(8,000rpm)で撹拌し、それから室温(約20℃)で評価するときまで保管した。全ての濃度は(w/w)%である。
【0026】
[比較実施例1]
この比較実施例は、酸化亜鉛のUV吸収能力は上記の手順によって、もし水中に単独(コロイド状ミクロ結晶性セルロースを含まないか分散させていない)で分散させるなら低いことを示す。17.5gの酸化亜鉛ニュートラルを482.5gの水中に分散させることによって、3.5%の酸化亜鉛を含む分散物を調製した。
【0027】
[比較実施例2]
この比較実施例はミクロ結晶性セルロースが非常に低いUV照射吸収能力であることを示す。7.5gの商標名AVICEL CL−611を492.5gの水に分散させることによって1.5%のミクロ結晶性セルロース分散物を調製した。
【0028】
[比較実施例3]
この比較実施例は、もし、ミクロ結晶性セルロースと酸化亜鉛が後で一緒にされることになる別々の水中に分散させるなら、ミクロ結晶性セルロースは酸化亜鉛のUV吸収能力にインパクトを与えないことを示している。酸化亜鉛の7%分散物は35gの酸化亜鉛ニュートラルを465gの水中に分散させることによって調製した。ミクロ結晶性セルロースの3%分散物は15gの商標名AVICEL CL−611を485gの水に分散させることによって調製した。3.5%の酸化亜鉛と1.5%のミクロ結晶性セルロースを含む混合分散物は250gの酸化亜鉛7%分散物を250gのミクロ結晶性セルロース3%分散物に添加しそしてプロペラミキサーで低速(300rpm)で3分間混合させることによって調製した。
【実施例1】
【0029】
この実施例はミクロ結晶性セルロースを水に分散させる前に酸化亜鉛粉末とブレンドしたときに酸化亜鉛の分散が改善されることを示す。酸化亜鉛/ミクロ結晶性セルロースの粉体ブレンドは17.5gの酸化亜鉛ニュートラルと7.5gの商標名AVICEL CL−611を混合しそしてプラスチックポットに入れ蓋をして3分間激しく振ルことによって調製した。3.5%の酸化亜鉛と1.5%のミクロ結晶性セルロースを含む混合分散物はそれから粉体ブレンドを475gの水に分散させて調製した。
【実施例2】
【0030】
この実施例は酸化亜鉛をミクロ結晶性セルロース分散物に分散させたときに酸化亜鉛の分散が改善されることを示す。3.5%の酸化亜鉛と1.5%のミクロ結晶性セルロースとのブレンドの分散物は最初に7.5gの商標名AVICEL CL−611を475gの水に分散させ、それから17.5gの酸化亜鉛を分散させることによって調製した。
【実施例3】
【0031】
この実施例もまた酸化亜鉛をミクロ結晶性セルロース分散物に分散させたときに酸化亜鉛の分散が改善されることを示す。3.5%の酸化亜鉛と0.5%のミクロ結晶性セルロースとのブレンド物分散物は最初に2.5gの商標名AVICEL CL−611を480gの水に分散させそれから17.5gの酸化亜鉛を分散させることによって調製した。
【実施例4】
【0032】
この実施例は酸化亜鉛を水への分散の前にミクロ結晶性セルロースと共処理したときに酸化亜鉛の分散が改善されることを示す。酸化亜鉛とミクロ結晶性セルロースの共処理混合物は酸化亜鉛ニュートラルと商標名AVICEL CL−611を30重量部のAVICEL CL−611/70重量部の酸化亜鉛ニュートラルの重量比で、水中で高せん断を使用して混合しそれからスプレードライヤーを使用して乾燥させることによって調製した。
3.5%の酸化亜鉛と1.5%のミクロ結晶性セルロースとの分散物は25gの共処理混合物を475gの水中で分散させることによって調製した。
【0033】
[比較実施例4]
この比較実施例は、二酸化チタンのUV吸収能力は、もし、それを水中に分散させるときは、低いことを示している。3.5%の二酸化チタンを含む分散物は17.5gのUV−チタンM212を482.5gの水に分散させることによって調製した。
【実施例5】
【0034】
この実施例は二酸化チタンをミクロ結晶性セルロース分散物に分散させたときに二酸化チタンの分散が改善されることを示す。3.5%の二酸化チタンと1.5%のミクロ結晶性セルロースとのブレンドの分散物は最初に7.5gの商標名AVICEL CL−611を475gの水に分散させ、それから17.5gのUV−チタンM212を分散させることによって調製した。
【0035】
評価方法
安定性テスト
実施例で調製された分散物のサンプルを室温(約20℃)で貯蔵した。サンプルは、もし1ヵ月後に目に見える沈殿物が存在しなければ、安定であると決定された。
【0036】
分光光度テスト
UVフィルターが良く分散しているかどうかを決定するために分光光度測定法を使用した。改良された分散物はUV領域での高い吸収を生じさせる。実施例で調製された分散物は2gの分散物を248gの水に添加しそしてマグネチックスターラーで3分間ゆっくりと混合させて希釈した。これらの希釈した分散物の吸収は、通路長1cmの石英セルとヒューレットパッカード8453分光光度計を使用して、280nmと500nmの波長範囲において1nm間隔で測定した。各波長における吸光係数は吸光量/濃度(g/L)として計算した。
【0037】
分光光度測定結果
図1及び2は比較実施例1−3及び実施例1−4の吸光係数対波長のプロットを示す。UV領域での吸収の増大は、酸化亜鉛が比較実施例1及び3に較べて実施例1−4でよく分散していることを示している。比較実施例2はコロイド状のミクロ結晶性セルロースがUV領域での照射をほとんど吸収しないことを示している。
【0038】
図3は比較実施例4と実施例5の吸光係数対波長のプロットを示す。UV領域での吸収の増大は、二酸化チタンが比較実施例4に較べて実施例5でよく分散していることを示している。
【実施例6】
【0039】
表1及び表2の分散組成物は次のようにして調製された。
商標名AVICEL PC−611を、シルバーソンホモジナイザーを使用して水中に分散させ3500rpmで10分間混合を続けた。二次安定剤を使用するときは、添加後5分間撹拌した。防腐剤を添加しそして3分間撹拌した。顔料を約1時間撹拌しながら渦状に滴下した。撹拌速度を、渦状を維持するのに必要な5000−8000rpmに増加させた。滴下終了後、懸濁液を10分間撹拌した。それから撹拌を止めそして分散物サンプルを0.1mmHgの真空で10分間引いて脱ガスを行い巻き込みガスを取除いた。それから、サンプルを貯蔵容器に入れ室温で一昼夜貯蔵した。サンプルのブルックフィールド粘度を翌日に測定した。サンプルを室温(約20℃)、40℃及び50℃で貯蔵した。サンプルは一週間ごとにテストした。サンプルは試験前に室温に戻した。全てのサンプルは8週間のテスト期間中、分離せず安定に維持され、即ち液体分離又は粒子分離も観察されなかった。
【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
【特許文献1】USP3,539,365
【特許文献2】USP6,025,037
【特許文献3】USP6,037,080
【特許文献4】USP6,392,368
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の金属酸化物は鉄の酸化物以外の如何なる酸化物でもよく、日焼け止め、化粧品、パーソナルケア用品、薬剤、塗料、コーティング剤、食品及び印刷用途で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は比較例1−3の波長に対する吸光係数のプロットを示す。
【図2】図2は実施例1−4の波長に対する吸光係数のプロットを示す。
【図3】図3は比較例4と実施例5の波長に対する吸光係数のプロットを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物を水中に安定に分散させる方法において、該金属酸化物を添加する前に或いは同時にコロイド状のミクロ結晶性セルロースを水中に分散させそして該安定な金属酸化物の分散物を回収する:ここで、(i)該金属酸化物が250ナノメーター以下の平均粒子サイズをもち、(ii)該金属酸化物が鉄酸化物以外のもので、(iii)該コロイド状のミクロ結晶性セルロースがポリマーバインダーで共処理されておりそして(iv)該金属酸化物が分散物の合計重量の少なくとも0.6wt%の量で存在する;ことを特徴とする金属酸化物の水中への安定的分散方法。
【請求項2】
金属酸化物が二酸化チタン及び酸化亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1成分を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
金属酸化物が二酸化チタン及び酸化亜鉛から選ばれる無機UVフィルターを含む請求項2記載の方法。
【請求項4】
コロイド状のミクロ結晶性セルロースが約0.1wt%−約5wt%そして金属酸化物が約0.6wt%−約50wt%の量で存在する請求項1記載の方法。
【請求項5】
コロイド状のミクロ結晶性セルロースが約0.2wt%−約2wt%そして金属酸化物が約2wt%−約40wt%の量で存在する請求項1記載の方法。
【請求項6】
請求項1に従って調製されたコロイド状のミクロ結晶性セルロースと金属酸化物の分散組成物。
【請求項7】
さらに防腐剤を含む請求項6記載の分散組成物。
【請求項8】
請求項6記載の分散組成物を含む組成物。
【請求項9】
該組成物が化粧品、日焼け止め、薬剤、塗料、コーティング剤、布帛又は食品である請求項8記載の組成物。
【請求項10】
コロイド状のミクロ結晶性セルロースと二酸化チタン及び酸化亜鉛の少なくとも一つからなる無機UVフィルター金属酸化物からなる粉体組成物であって、(i)該金属酸化物が250ナノメーター以下の平均粒子サイズをもち、(ii)該金属酸化物が鉄酸化物以外のもので、(iii)該コロイド状のミクロ結晶性セルロースがポリマーバインダーで共処理されておりそして(iv)該金属酸化物が分散物の合計重量の少なくとも0.6wt%の量で存在する;粉体組成物。
【請求項11】
コロイド状のミクロ結晶性セルロースが無機UVフィルターの約1wt%−約200wt%の量で存在する請求項10記載の粉体組成物。
【請求項12】
コロイド状のミクロ結晶性セルロースが無機UVフィルターの約5wt%−約100wt%の量で存在する請求項11記載の粉体組成物。
【請求項13】
コロイド状のミクロ結晶性セルロースが無機UVフィルターの約10wt%−約50wt%の量で存在する請求項12記載の粉体組成物。
【請求項14】
該金属酸化物を添加する前に分散物に二次安定剤を添加する請求項1記載の方法。
【請求項15】
該二次安定剤が合成ポリマー及びポリサッカライドからなる群から選ばれる少なくとも一つの成分を含む請求項14記載の方法。
【請求項16】
該合成ポリマーがアクリレートポリマー、ポリビニルピロリドン及び変性カルボキシルメチルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも一つの成分を含み、そして該ポリサッカライドがカラギーナン、アルギネート、ペクチン、グアール、プルラン及びキサンタンガムからなる群から選ばれる少なくとも一つの成分を含む請求項15記載の方法。
【請求項17】
該金属酸化物が疎水性表面コーティング剤で被覆されている請求項1記載の方法。
【請求項18】
該金属酸化物が200ナノメーター又はそれ以下の平均粒子サイズをもつ請求項1記載の方法。
【請求項19】
コロイド状のミクロ結晶性セルロースと金属酸化物が分散前に一緒に共処理される請求項1記載の方法。
【請求項20】
該金属酸化物が100ナノメーター又はそれ以下の平均粒子サイズをもつ請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−505816(P2007−505816A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527064(P2006−527064)
【出願日】平成16年9月20日(2004.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/030533
【国際公開番号】WO2005/072078
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(391022452)エフ エム シー コーポレーション (74)
【氏名又は名称原語表記】FMC CORPORATION
【Fターム(参考)】