説明

金属酸化物ナノファイバー/多糖複合体

【課題】 水溶液中にシリカに代表される金属酸化物のナノファイバーを形成させる新しい技術を提供する。
【解決手段】 一本鎖のβ−1,3−グルカン(例えばシゾフィラン)を含有する非プロトン性極性溶媒溶液中で、金属アルコキシドと水を混合し、ゾルゲル反応を進めることによってβ−1,3−グルカンの疎水性内部空間に金属酸化物のナノファイバーを取り込んだ状態の複合体を調製する。金属酸化物としてシリカを製造する場合の好適な例として、原料にトリメトキシプロピルシラン、非プロトン性極性溶媒にジメチルスルホキシドを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノテクノロジーの分野に属し、詳細にはシリカに代表される金属酸化物のナノファイバーとβ−1,3−グルカンとから成る水溶性複合体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機化合物には無い構造安定性、化学的安定性を持った無機の機能性材料の創製に興味が向けられている。特に、ナノメートルレベルで精密に構造が制御されたナノ粒子や超薄膜の研究が盛んに行われている。カーボンナノチューブに代表される一次元ナノ構造体は高密度の電子的、光学的デバイスや化学反応の触媒、分離や吸着材料、バイオセンサーなど様々な分野の応用が期待されている。
【0003】
しかしながら、金属酸化物の一次元ナノ構造体を作ることは容易ではない。研削、研磨押出し、圧延のような物理的手段では大きさに限界があり、通常、サブミクロンレベルに留まる。ゾルゲル法は、低温で微粒子や薄膜の製造に向くとされているが、ファイバー状の構造体の製造は困難である。比較的高温で行う、CVD法や水熱合成法でも同様に容易ではない。
【0004】
有機材料を鋳型に用いる無機物質の合成も最近報告例が増えている。高分子繊維の表面に金属酸化物の薄膜を付着させ、あとで鋳型を焼却する方法などである。しかし、この手法には、鋳型の形状も消えやすい欠点がある。
【0005】
一方、有機物の鋳型は使用せずに、溶液中でpHコントロールなどにより、酸化数の高い金属イオンの電荷を制御しつつ、金属表面に電荷を保持したファイバー状に縮合を進める方法も報告されている。この手法は、比較的簡単な操作で可能なため、カチオン性が高く、水にとける、ある種の金属の酸化物に対しては興味ある方法と考えられる。
【非特許文献1】Zheng Wei Panet al., Science, 291, 1947(2001)
【非特許文献2】Zhou Gui et al., Chemistry of Materials, 14,5053(2002)
【特許文献1】特開2004-262692
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、溶液、特に水溶液中にシリカに代表される金属酸化物のナノファイバーを製造する新しい技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、天然多糖の一種で、免疫賦活剤としても使用されているシゾフィラン(以下、SPGと略記することがある)およびSPGが属するβ−1,3−グルカン類が一次元状のナノ空間を有すること、およびその空間を利用することによってカーボンナノチューブや導電性ポリマーおよびそのモノマーなどの各種機能性物質と安定な複合体を形成することを明らかにしてきた。
【非特許文献3】M.Numata,M.Asai, K.Kaneko, T.Hasegawa, N.Fujita, Y.Kitada, K.Sakurai and S.Shinkai;Chem. Lett., 232 (2004)
【非特許文献4】T. Hasegawa,T. Fujisawa, M. Numata, M. Umeda, T. Matsumoto, T. Kimura, S. Okumura, K.Sakurai and S. Shinkai, Chem. Commun., 2004,2150-2151
【非特許文献5】M. Numata, T.Hasegawa, T. Fujisawa, K. Sakurai and S. Shinkai, Org. Lett., 6(24), 447-4450(2004)
【非特許文献6】T. Hasegawa, S.Haraguchi, M. Numata T. Fujisawa, C. Li, K. Kaneko, K. Sakurai and S. Shinkai,Chem. Lett. , 34,40-41 (2005)
【特許文献2】特願2003-339569
【特許文献3】特願2004-138260
【特許文献4】特願2004-321757
【特許文献5】特願2004-349277
【特許文献6】特願2005-20532
【0008】
ゾルゲル反応は無機化合物である金属酸化物をそのモノマー単位である金属アルコキシドから容易に調製できる方法であり、反応条件が穏和であるという理由から有機化合物との複合化に広く用いられてきた。本発明者は、このたび、このβ−1,3−グルカンの形成するナノ空間をゾルゲル反応の重合場として利用することによって、ファイバー状(繊維状)の金属酸化物(金属酸化物のナノファイバー)を調製可能なことを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、シリカなど金属酸化物のナノファイバーとβ−1,3−グルカンとから成ることを特徴とする一次元複合体とその製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、金属酸化物のナノファイバーを、安全性の高い天然の素材であるβ−1,3−グルカンに包接(ラッピング)された状態の複合体として、温和な条件下で、水溶液中に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において用いられるβ−1,3−グルカンとは、よく知られているように、グルコースがβ−(1→3)−グルコシド結合により結合された多糖である。β−1,3−グルカンは、天然に存在する状態では、一般に三重のらせん構造を形成していることが知られている。また、非プロトン性極性溶媒またはアルカリ水溶液の中で一本鎖のランダムコイル状に解離すること、そして、そのランダムコイル状のβ−1,3−グルカンは水中で三重のらせん状に巻き戻ること、さらにその際に一本鎖の核酸などが共存すると、共存物を巻き込みながら、らせん状の複合体を形成することが本発明者らにより発見されている。
【特許文献7】再表2001−034207
【0011】
本発明は、β−1,3−グルカンのこのような特性を利用したものであり、本発明に従えば、予め非プロトン性極性溶媒に溶解させて一本鎖に解離させたβ−1,3−グルカンの溶液に金属酸化物源となる金属アルコキシドと水を加える。この簡単な工程により金属アルコキシドの加水分解、およびそれに続く縮合(重縮合)反応、いわゆるゾルゲル反応が起こり金属酸化物が生成する。得られる金属酸化物は、β−1,3−グルカンによって形成される疎水性内部空間に取り込まれた状態を呈し、ファイバー状の金属酸化物がβ−1,3−グルカンの内部に包接されている金属酸化物ナノファイバー/β−1,3−グルカン複合体が形成される。本発明の複合体が、このような構造を有することはTEM(透過型電子顕微鏡)、EDX(エネルギー散乱X線分析)−TEMなどを用いる分析により確認されている(後述の実施例参照)。
β−1,3−グルカンを用いる本発明の方法においては、金属アルコキシドのゾルゲル反応に好適な反応場が形成されているものと考えられる:一本鎖の状態に解離したβ−1,3−グルカンが中性の水に接触すると、既述のように、らせん状に巻き戻ろうとするが、この際、ナノ物質(金属アルコキシド)が共存すると、そのナノ物質へのβ−1,3−グルカンの巻き付き・ラッピングが起こり、当該金属アルコキシドは鎖状(線状)に配列されながらβ−1,3−グルカンと複合体を形成し、この線状に配列された金属アルコキシドは、その加水分解・重縮合反応の進行にとっても、好都合となり、常温付近の温和な条件下でゾルゲル反応を完結させることが可能とする(図1の模式図参照)。さらに、本発明の方法を実施するに際しては、一般のゾルゲル反応のようにゾルゲル反応触媒(酸、アルカリ、アミンなど)を必要としない。これは、本発明に従えば、反応物(金属アルコキシド)がβ−1,3−グルカンの内部空間に取り込まれて濃縮されるため、触媒を用いなくてもゾルゲル反応が円滑に進行するためと理解される。
【0012】
なお、β−1,3−グルカンを溶解させる非プロトン性極性溶媒として用いられるのに特に好適な例はジメチルスルホキシド(DMSO)であるが、これに限定されるものではない。
【0013】
また、本発明が適用される、ナノファイバーにおける金属の種類は特に限定されるものではなく、アルコキシドを形成しうるものとして従来より知られた各種の金属、例えば、珪素、チタン、バリウムなどが挙げられる。そして、それらの金属のアルコキシドの代表的な化合物、例えば、珪素の場合のテトラエトキシシラン(TEOS)、チタンの場合のチタンエトキサイドなどが使用される。
本発明が適用されるのに特に好ましい金属は珪素であり、この場合、β−1,3−グルカンの内部に配向し易い点から、好ましいアルコキシドは、アルコキシオルガノシランである。その場合、アルコキシ基のアルキルは特に限定されるものではないが、メチルまたはエチル基のトリアルコキシが一般的である。またオルガノ基に関しても特に限定されるものではないが、あまり嵩張らず疎水性を有するものが好ましく、例えばエチル、プロピル、イソプロビル、ブチルなどが使われる。かくして、本発明において用いられるのに好ましい金属アルコキシド化合物としてトリメトキシプロピルシラン(TMPS)が挙げられ、これは、疎水性相互作用によってシゾフィランなどのβ−1,3−グルカン内部に配向しやすく、好適に使用できる。
【0014】
本発明で使用するβ−1,3−グルカンには多くの種類のものが知られており、そのいずれもナノファイバー化に効果を示すが、中でも、シゾフィラン、レンチナンまたはスクレログルカンのような天然に産出するもので、6位の炭素にグルコース置換基を30%程度以上有するものは、水に良く溶けて取り扱いやすいため、好適に使用される。さらには、これらのグルカンの側鎖の一部が適当な官能基で修飾されたものを用いることにより、その官能基に対応した機能を、複合体中の金属酸化物ナノファイバーに付与することも可能である。カードランのように側鎖のないβ−1,3−グルカンは、低分子量化し水に対する溶解性を付与して使用する。
【0015】
生成する金属酸化物ナノファイバーとβ−1,3−グルカンの複合体は、通常、水に安定に分散・溶解している。必要に応じて、この複合体を酵素処理や酸処理を行うことにより、β−1,3−グルカンを除くことが可能である。
以下、金属酸化物としてシリカを使った実施例に沿って本発明の詳細を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
シゾフィランの調製 三重らせん構造のシゾフィランを文献記載の定法に従って製造した。すなわち、ATCC(American Type Culture Collection)から入手したSchizophyllum commune. Fries(ATCC 44200)を、最小培地を用いて7日間静置培養した後、細胞成分および不溶残渣を遠心分離して得られた上清を超音波処理して分子量45万の三重らせんシゾフィランを得た。
【非特許文献7】Gregory G.Martin, Michael F. Richardson, Gordon C. Cannon and Charles L. McCormick, Am.Chem. Soc. Poly. Prep., 38, 253(1997)
【非特許文献8】Kengo Tabata,Wataru Ito, Takemasa Kojima, Shozo Kawabata and Akira Misaki, CarbohydrateRes., 89, 121(1981)
【実施例2】
【0017】
低分子化カードランの調製 分子量120万のカードラン(Wako Pure Chemical Industries, Ltd., CAS登録番号9051-97-2)3.0gを乾燥DMF(ジメチルホルムアミド)50mlに加え、溶液を50℃に加熱し一晩かけて溶解させた。ここに、パラトルエンスルホン酸0.3gを加え加水分解反応を開始した。50℃にて加熱攪拌を行いながら、反応の進行をゲル浸透液体クロマトグラフィー(GPC)にて追跡し、目的の分子量にまで加水分解された時点で反応溶液15mlを分取した。この分取した反応溶液にメタノール200mlを加え、再沈殿操作により精製を行った。得られた白色繊維状沈殿物を乾燥させ、低分子量カードランを得た。
生成物の分子量をプルラン標準物質(Pullulan
Standard, SHOWA DENKO K.K.)を基準にGPC法で測定した。測定条件は、送液システム:日本分光、PU-1580、カラムオーブン:日本分光、CO-2060、検出器:日本分光、RI-2031、カラム:TOSOH TSK-gel α-4000、移動層:DMF、流速:0.6ml/min、温度:40℃で、その結果Mn=19,000、Mw=33,300、Mw/Mn=1.75であることがわかり、生成物は水に対して溶解性を持っていることも確認された。
【実施例3】
【0018】
シゾフィランを用いたシリカナノファイバーの調製 まず、実施例1で調製した三重らせんシゾフィランをDMSO中で一本鎖のランダムコイル状に解離させた。次に、この一本鎖のシゾフィランのDMSO溶液(5mg/ml)100μlをTMPS(Wako Pure Chemical Industries, Ltd)0.4μlと混合し軽く撹拌を行った。TMPSはシゾフィランの主鎖グルコースに対して1当量となるように加えてある。この溶液を激しく攪拌させながら蒸留水1900μlを少しずつ溶液が均一性を保つように加えTMPSをシゾフィランの空孔に取り込ませた。この溶液を室温で7日間静置し、ゾルゲル反応を行なわせた。ゾルゲル反応の進行はIRスペクトルを用いて確認した。IRスペクトルの1030-1050 cm-1にかけてのピークは生成したSi-O-Si結合に由来するものであり、ゾルゲル反応が進行しシリカが生成していることを示している。IRスペクトルを図2に示す。
その後、溶液を蒸留水に対して透析操作(分画:3500)を行いDMSOの除去を行った。得られた水溶液は均一であることが目視により確認できた。この溶液をTEMのグリッドに滴下、真空乾燥を6時間行うことによりその形態観察を行った。その結果は図3に示す。染色剤による染色を行っていないため、得られたTEM像におけるコントラストは全てシリカファイバーに起因すると考えられる。TEM観察の結果、直径15nm程度のファイバーを形成していることが確認できる。図3Cの拡大図において特に内部にSPG(シゾフィラン)と考えられるテンプレート部分は認められない。よって、ゾルゲル反応は少なくとも多糖の外で起こったのではなく、内部の空間で優先的に起こっていることが理解される。
【実施例4】
【0019】
カードランを用いた実験 実施例2で調製した低分子量のカードランを用い実施例3と同様の操作によりシリカナノファイバーの調製を試みたところ、シゾフィランの場合と同様に、直径約15nmのファイバーが形成され、内部にカードランと考えられるテンプレート部分は認められないことがTEM観察により確認された。また、得られたシリカファイバーは水溶性を有していることも解った。この結果は低分子化し水溶性を付与したカードランであればシゾフィランと同等に扱えることを示している。
【0020】
〔比較例1〕
アミロースを用いた実験 シゾフィラン、カードラン以外の多糖としてアミロースを用いた同様の実験を行った。サンプルの調製はシゾフィラン、カードランの場合と全く同様である。得られた溶液のTEM観察を行ったが明確な構造を持ったファイバーは観察出来なかった。
【0021】
〔比較例2〕
三重鎖シゾフィランを用いた実験 シゾフィラン内部でゾルゲル反応が起こるためにはシゾフィランがランダムコイルから3本鎖に巻き戻る過程が必須であると考えられる。このことを確認するために3本鎖シゾフィランを用いて同様のゾルゲル反応を検討した。TMPS 0.4μlをDMSO 100μlに溶解し、ここに三重鎖シゾフィランの水溶液(5mg/ml)100μlと蒸留水1800μlを加え軽く撹拌を行った。TMPSはシゾフィランの主鎖グルコースに対して1当量となるように加えた。この溶液を室温で7日間静した。得られた溶液から透析によりDMSOを除去した。その後得られた水溶液のTEM観察を行ったが、明確な構造を持ったものは全く確認出来なかった。
以上の結果より、シゾフィランおよびカードランがランダムコイルから、らせん構造に巻き戻る過程でTMPSを疎水空間に取り込むことがファイバー形成の第一段階として必須である。また、このようなファイバー形成はβ−1,3−グルカンを用いた場合のみ特異的に認められる現象であり、一次元疎水空間で縮合が起こることが重要である。
【実施例5】
【0022】
チオール修飾シゾフィランを用いた実験 シリカ表面をシゾフィランが被覆していることを確認するために金ナノ粒子と特異的に相互作用することが知られているチオールを修飾したシゾフィラン(SH-SPG)を用い、同様の実験を行った。サンプルの調製は次のようになった:まず、チオール修飾シゾフィラン(SH-SPG)を用いてシリカナノファイバーの調製を行ったが、その調製法は実施例3におけるシゾフィランの代わりに単にSH-SPGを用いただけのものである。7日間静置させたサンプルに直径5nmの金ナノ粒子(粒子径は約5ナノメートル、塩化金酸(HAuCl4)をクエン酸ナトリウムで還元して調製したもの(BBInternationalから水分散液として購入)、濃度は5×1013粒子/ml)を100μl程加えさらに6時間静置後、過剰のナノ粒子を透析(分画:3500)で除去し、得られた水溶液をTEMにより観察した。その結果、図5に示すように、シリカファイバー表面に直径5ナノメートルの金ナノ粒子が吸着しているのが確認された。このことは得られたシリカファイバーがSPGで被覆されていることを示していると同時に、SPGなどのβ−1,3−グルカンを介して得られたファイバーに種々の機能が付与できることを示している。
【実施例6】
【0023】
シリカファイバーのEDX-TEMによる分析 SPG存在下に調製したシリカファイバーのEDX-TEMによる分析を行った。結果を図6に示す。図6A中の横線で示した部分の元素成分を分析した。図6BにそのEDXスペクトルを示す。図6Bより珪素元素が検出され、ファイバーがシリカファイバーであることが解る。さらに、図6Dより珪素元素の強度がシャープな山型になっていることから、ファイバーの断面が円形であり、シリカファイバーは柱状の形態をとっていると結論できる。また、珪素の分布がシャープであるのに対し、図6Cの酸素分布は比較的なだらかでその分布範囲は珪素の分布範囲より広範囲になっていることが解る。このことはシリカファイバーがSPGにより被覆されていることを示すものである。得られたシリカファイバーはSPGなどのβ−1,3−グルカンにより被覆されているため高い親水性を有している。実際、ゾルゲル反応はVw(含水率)=95%という条件で進行し、反応終了後も溶液は均一である。さらにゾルゲル反応後の溶媒を水に置換した場合もファイバーが沈殿することはなかった。このことはシリカファイバーが多糖により包接(ラッピング)されているという上記の実験結果を裏付けている。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明により、ナノテクノロジー分野での新規素材として期待されている、シリカに代表される金属酸化物のナノファイバーを、β−1,3−グルカンとの複合体として形成させることができる。本発明の金属酸化物のナノファイバー/β−1,3−グルカン複合体は水溶性であり、各種用途に好適に利用することができる。また、官能基で修飾されたβ−1,3−グルカンを使用すれば、その官能基に対応する機能を金属酸化物に付与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に従うシリカナノファイバー/SPG複合体の生成模式図。
【図2】本発明に従うゾルゲル反応中の溶液のIRスペクトル例(実施例3)。
【図3】本発明に従うゾルゲル反応後の透過型電子顕微鏡(TEM)観察図(実施例3)。
【図4】比較のために示すアミロース存在下でのゾルゲル反応後の透過型電子顕微鏡(TEM)観察図(比較例1)。
【図5】本発明に従う金ナノ粒子(←の位置)により標識されたシリカナノファイバーのTEM像(左)と吸着した金ナノ粒子の拡大図(右)およびチオール修飾シゾフィランの構造(実施例5)。
【図6】本発明に従うシリカナノファイバー/SPG複合体のEDX-TEMによる分析結果(実施例6)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバー状の金属酸化物がβ−1,3−グルカンの内部に包接されていることを特徴とする金属酸化物ナノファイバー/多糖水溶性複合体。
【請求項2】
金属酸化物がシリカであることを特徴とする請求項1の複合体。
【請求項3】
β−1,3−グルカンが、シゾフィラン、スクレログルカンまたはレンチナンから選ばれたものであることを特徴とする請求項1または2の複合体。
【請求項4】
β−1,3−グルカンが側鎖に機能性官能基を有するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの複合体。
【請求項5】
請求項1に記載の複合体を製造する方法であって、一本鎖のβ−1,3−グルカンを含有する非プロトン性極性溶媒溶液に金属酸化物源となる金属アルコキシドと水を加えてゾルゲル反応を進行させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
非プロトン性極性溶媒として、ジメチルスルホキシドを用いることを特徴とする請求項5の方法。
【請求項7】
金属アルコキシドがアルコキシオルガノシランであることを特徴とする請求項5の方法。
【請求項8】
アルコキシオルガノシランがトリアルコキシオルガノシランであることを特徴とする請求項7の方法。
【請求項9】
トリアルコキシオルガノシランがトリメトキシ-プロピルシランであることを特徴とする請求項8の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−248819(P2006−248819A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−65127(P2005−65127)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(501190941)三井製糖株式会社 (52)
【Fターム(参考)】