説明

金属酸化物フレークを生成するためのプロセス

本発明は、周期表の3〜15族から選択される一つ以上の金属の酸化物からなる少なくとも一つの絶縁層を含む、面平行な構造(プレートレット形状体またはフレーク)を作製するためのプロセスであって、方法が:(a)場合により、基材上に剥離材料の層を塗布する工程、(b)一つ以上の所望の金属酸化物の一つ以上の前駆体を含む組成物を前記剥離層上または剥離材料の層がない基材上に直接的に塗布する工程、(c)一つ以上の所望の金属酸化物の一つ以上の前駆体をマイクロ波放射に晒し、基材上または剥離材料の層上に金属酸化物層を形成する工程;および(d)結果として生じる金属酸化物層を面平行な構造として基材から分離する工程を含む、プロセスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の金属酸化物の前駆体をマイクロ波放射に晒し、基材上に金属酸化物層を形成し、結果として生じる金属酸化物層を面平行な構造として基材から分離することにより、周期表の3〜15族から選択される金属の一つ以上の酸化物からなる少なくとも一つの絶縁層を含む、面平行な構造(プレートレット形状体またはフレーク)を作製するためのプロセスに関する。
【0002】
対応する塩(すなわち、硫酸塩またはハロゲン化物)の液体相分解(加水分解)を介し、金属酸化物層を堆積させることを伴う方法は、それ自体が公知であり、半透明で非反射性のマイカコア材料を有する光沢または真珠光沢顔料を形成するために使用されている。しかし、例として米国特許第B−3,087,827号および米国特許第B−5,733,371号に記載されているそのような方法は、そのようなプロセスで必要となる高い酸(pH4未満)の水性溶液中において、反射性の金属性コアを持つエフェクト顔料を形成するために好適と考えられていない。米国特許第B−6,369,147号では、特定の金属コアを選択し、場合により、耐食性が高まるような方途で処理することにより、上記の問題を解決するプロセスを開示している。
【0003】
LEDデバイスに使用するガラスおよびインジウムスズ酸化物で被覆したガラス板に金属酸化物膜を堆積させるため、マイクロ波エネルギーを使用することが公知であり、多数の学術論文、例えば、E.Vigil、L.Saadoun、Thin Solid Films、2000年、365、pp12〜18およびE.Vigil、L.Saadoun、J.Materials Science Letters、1999年、18 pp 1067〜1069に開示されている。インジウムスズ酸化物で被覆したガラス板でのみ、良好な接着が得られ、著者らは、これがインジウムスズ酸化物被覆のいくつかの電子供与能力によるものであることを示唆した(Vigil,E.;Ayllon,J.A.;Peiro,A.M.;Rodriguez‐Clemente,R.;Domenech,X.;Peral,J.Langmuir、2001年、17、891を参照されたい)。
【0004】
マイクロ波照射による金属酸化物粒子のバルク沈殿が周知である。マイクロ波堆積を使用したバルク沈殿酸化物の例として、(1)Lerner,E.;Sarig,S.;Azoury,R.、Journal of Materials Science:Materials in Medicine、1991年、2、138、(2)Daichuan,D.;Pinjie,H.;Shushan,D.、Materials Research Bulletin、1995年、30、537、(3)Leonelli,C.ら、Microwaves:Theory and Applications in Materials Processing、2001年、111、321、(4)Girnus,Iら、Zeolites、1995年、15、33、(5)Rodriguez‐Clemente,R.ら、Journal of Crystal Growth、1996年、169、339および(6)Daichuan,D.;Pinjie,H.;Shushan,D.、Materials Research Bulletin、1995年、30、531を参照されたい。
【0005】
本発明は、マイクロ波放射を使用し、一つ以上の所望の金属酸化物の前駆体を基材上で金属酸化物層に変換し、金属酸化物層を基材から分離した後、所望の金属酸化物または金属酸化物からなる面平行な構造、例を挙げると、フレークを作成する方法を提供する。面平行な構造は、厚さが約500nm以下である薄い粒子として形成される。滑らかな鏡面表面および高アスペクト比を有するフレークを生成し、エフェクト顔料の基材材料として使用することができる。
【0006】
金属酸化物前駆体を含む組成物に可溶性ポリマー、特に、水可溶性ポリマーを取り込むことにより、本方法を介して多孔性構造を生成することもできる。
【0007】
面平行な構造は、干渉顔料およびエフェクト顔料を包含する多くの用途で有効である。多孔性構造は、様々な材料、例えば、触媒、着色剤、抗微生物化合物などのための優れたホストサイトを提供する。
【0008】
本発明は、周期表の3〜15族から選択される一つ以上の金属の酸化物からなる少なくとも一つの絶縁層を含む、面平行な構造(プレートレット形状体またはフレーク)を作製するためのプロセスであって、:
(a)場合により、基材上に剥離材料の層を塗布する工程、
(b)一つ以上の所望の金属酸化物の一つ以上の前駆体を含む組成物を前記剥離層上または剥離材料の層がない基材上に直接的に塗布する工程、
(c)一つ以上の所望の金属酸化物の一つ以上の前駆体をマイクロ波放射に晒し、基材上または剥離材料の層上に金属酸化物層を形成する工程;および
(d)結果として生じる金属酸化物層を面平行な構造として基材から分離する工程
を含むプロセスを提供する。
【0009】
一つ以上の所望の金属酸化物の一つ以上の前駆体を含む組成物は、本明細書において「前駆体組成物」としても言及し、その全体に金属酸化物の前駆体を含むことができるが、より一般的には、キャリヤー溶剤または分散媒、例えば、水および/または有機溶剤を含有し、かつ、触媒、フッ化スカベンジャー、界面活性剤および/または他のポリマー、例えば、水可溶性ポリマーを含有することができる。
【0010】
使用するキャリヤー溶剤または分散媒は、前駆体として用いる化合物に応じて変動するが、通常、以下の溶剤を使用する:水、アルコール(例を挙げると、メタノール、エタノール)、脂肪族または脂環式炭化水素(例を挙げると、ヘキサン、デカン、シクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例を挙げると、トルエン、キシレン)、ケトン(例を挙げると、アセトン)およびこれらの溶剤の混合系。
【0011】
前駆体組成物は、基材を被覆に浸漬するか、ドローダウン、ブラッシングなどを包含する標準技術を通じ、基材の表面に被覆製剤を拡散または噴霧するかのいずれかにより、基材に均等に塗布することができる所望の金属酸化物の一つ以上の前駆体を含む製剤である被覆であることができる。前駆体をマイクロ波放射に晒す前に被覆を乾燥させることができ、または被覆を未乾燥に残すことができる。被覆は、基材の表面全体に塗布することができ、または基材の一部に塗布することができ、例として、ポリマーシートもしくはガラスパネルの一方側に被覆を塗布することができ、または両方側を被覆することができる。
【0012】
前駆体組成物は、マイクロ波放射に晒される一方、その中に基材を置きまたは懸濁される、所望の金属酸化物の一つ以上の前駆体を含む製剤であることもできる。例として、基材は、所望の金属酸化物の一つ以上の前駆体を含有する溶液または懸濁液である前駆体組成物に懸濁される粒子であることができる。
【0013】
金属酸化物層を形成する基材は、ほぼ任意の有機または無機材料からなることができ、小さな粒子、プラーク(plaque)、シートなどを包含するほぼ任意の固体もしくは半固体形態であることができる。
【0014】
本明細書において使用する「所望の金属酸化物の前駆体」という語句は、周期表の3〜15族から金属が選択され、本プロセスの条件下において一つ以上の金属酸化物の層に変換される一つ以上の化合物または金属錯体を示す。混合金属酸化物層は、前駆体組成物から作製することができ、所望の金属酸化物の前駆体は異なる金属を含有する前駆体の混合物を含む。
【0015】
金属酸化物層の形成は、約15℃〜約95℃で都合良く実行することができる。マイクロ波マグネトロンの電力出力をチューニングするか、一定の電力出力を維持する一方、電力オンおよびオフの時間間隔を変化させることにより、温度を調整することができる。
【0016】
触媒またはフッ素スカベンジャーを使用し、所望の金属酸化物の前駆体を金属酸化物層に変換する。触媒もしくはフッ素スカベンジャーが前駆体組成物中に存在することができ、または剥離材料の層が存在する場合、剥離材料が触媒もしくはフッ素スカベンジャーを含むことができる。いくつか実例では、基材そのものが触媒またはフッ素スカベンジャーとして働くことができる。触媒またはフッ素スカベンジャーは、前駆体組成物および剥離材料の両方に存在することもできる。
【0017】
一つの態様では、触媒またはフッ素スカベンジャーが前駆体組成物の部分であり、剥離材料の層を使用しない。一つの詳細な態様では、酸触媒が前駆体組成物を含む被覆の部分であり、剥離材料の層を使用しない。
【0018】
もう一つの態様では、前駆体組成物を塗布する前に、剥離層としても言及される剥離材料の層を基材に塗布し、面平行な構造の形成中、剥離材料が触媒またはフッ素スカベンジャーの役割を果たす。
【0019】
触媒の例は、酸性化合物、例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸および強い鉱酸である。例として、触媒は、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸のコポリマーまたはポリビニルスルホン酸のコポリマーである。例として、触媒は、ポリ(4−スチレンスルホン酸)である。特定の態様では、塩基性触媒、例えば、ポリビニルアミンまたはポリビニルピリジンを使用することができる。複数の触媒を使用することができる。
【0020】
フッ素スカベンジャーの例は、ホウ酸、アルカリ金属ホウ酸、ホウ酸アンモニウム、ホウ素無水物または一酸化ホウ素を包含する。本発明の方法中、フッ素スカベンジャーおよび触媒の両方が存在することができる。
【0021】
本方法によって得られる単層フレークは、約1〜100ミクロンの粒子サイズおよび約10〜約500nmの厚さを特徴とする。
【0022】
本発明のプロセスにより、例として厚さが約10〜500nm、例として厚さが約80〜300nmである、非常に薄い粒子を生成することができる。多くの実例では、厚さが150nm、例として約120nmを下回るフレークが作製される。
【0023】
例えば、被覆として前駆体組成物を均等または均一な層に塗布することができるので、本発明のプロセスにより、一様な厚さの粒子を生成することもできる。例として、フレークの少なくとも90%の厚さが約90〜約200nmであり、例として、フレークの少なくとも90%の厚さが約90〜約150nmである金属酸化物フレークを作製することができる。
【0024】
本発明の一つの態様は、:
一つ以上の金属酸化物前駆体および酸触媒を含む被覆層を基材に塗布する工程;
被覆層をマイクロ波放射に晒し、前記基材上に金属酸化物層を形成する工程、および
結果として生じる金属酸化物層を面平行な構造として基材から分離する工程
を含む。
【0025】
例として、ドローダウン技術を介し、金属酸エステルおよび酸触媒を含む被覆を平坦な基材に塗布し、被覆した基材をマイクロ波放射で処理して金属酸化物層を形成し、金属酸化物層を面平行な構造として除去する。
【0026】
例として、酸触媒は、ポリスチレンスルホンまたはポリビニルスルホン酸である。例として、被覆は、水のキャリヤー溶剤もしくは分散媒または水および有機溶剤を含む。例として、マイクロ波処理した被覆基材を水または水および有機溶剤で洗浄することにより、金属酸化物層を除去する。
【0027】
例として、所望の金属酸化物の前駆体は、一般的な式:
MX
によって表され、ここで、Mは、周期表の3〜15族から選択される金属性元素であり;Xは、アルキル、アルコキシ、アシルオキシ、ヒドロキシおよびハロゲン原子からなる族から選択される一つ以上の要素であり;Oは、酸素であり、nおよびmは、それぞれn+2mが金属性元素、そのポリマーおよびその溶液の価数となる整数である。
【0028】
金属性元素は、二価または多価金属であり、例として、周期表のIIIa、IVa、IVbおよびVa族から選択される金属であり、例として、ホウ素、アルミニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウムおよびスズからなる群から選択される一つ以上の要素である。
【0029】
本発明で使用する金属性化合物の有機基のうち、アルキル基は、メチル、エチル、ブチル、ペンチル、ラウリルなどを包含し;アルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシなどを包含し;アシルオキシ基は、アセトキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシなどを包含する。アルキル基は、アミノ、アミノ塩、ヒドロキシ、アルコキシならびにカルボキシ酸、酸塩、エステルおよびアミドを包含する他の基に置換することもできる。例として、アルキル基は、アミノエチル、アミノプロピル、ジアルキルアミノプロピルまたはカルボキシ置換プロピル基であることができる。
【0030】
本発明のもう一つの態様は、:
塩基性または酸性触媒である剥離材料の層を基材上に塗布する工程、
所望の金属酸化物被覆の前駆体である一つ以上の金属酸エステルを含む被覆を前記剥離層上に塗布する工程;
前記被覆をマイクロ波放射に晒し、前記基材上に前駆体から金属酸化物層を形成する工程、および
結果として生じる金属酸化物層を面平行な構造として基材から分離する工程
のプロセスを含む。
【0031】
例として、剥離材料は、酸性触媒、例として、ポリスチレンスルホン酸またはポリビニルスルホン酸を含む。
【0032】
例として、被覆は、所望の金属酸化物の前駆体および界面活性剤として一つ以上の金属酸エステルを含む。
【0033】
例として、ここでもまた、所望の金属酸化物は、式:MXで表され、ここで、M、X、O、nおよびmは、先に記載の通りである。
【0034】
例として、ポリスチレンスルホン酸を含む触媒の溶液で可撓性ベルト、例えば、連続可撓性ベルトまたはシートを被覆する。その後、水と、金属酸エステル、例えば、テトラエチルオルソシリケートと、場合により、界面活性剤とを含む混合物を塗布し、基材をマイクロ波放射によって処理する。この例では、テトラエチルオルソシリケートの酸加水分解が発生し、水は、溶剤だけでなく反応剤でもある。
【0035】
本発明のもう一つの態様では、水可溶性ポリマーを前駆体組成物に包含させ、金属酸化物を含む多孔性フレークを提供する。例として、先のように一つ以上の金属酸エステルを含み、水可溶性ポリマーも含む被覆を基材上または基材上に塗布された剥離材料の層上に塗布し、被覆をマイクロ波放射に晒し、結果として生じる金属酸化物層を水で洗浄することによって分離させ、多孔性金属酸化物フレークを残す。
【0036】
先のプロセスで有効な前駆体化合物の例は、
トリアルコキシアルミニウム、例えば、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリブトキシアルミニウム、トリペントキシアルミニウムなど;
ハロゲン化アルミニウム、例えば、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウムなど;
アルキルアルコキシシラン、例えば、モノメチルトリメトキシシラン、モノブチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、モノエチルトリペントキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、トリブチルモノメトキシシランなど;
テトラアルコキシシラン、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシランなど;
テトラアシルオキシシラン、例えば、テトラアセトキシシラン、テトラプロピオニルオキシシラン、テトラブチリルオキシシラン、テトラペンタノイルオキシシランなど;
テトラアルコキシチタン、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラペントキシチタンなど;
ハロゲン化アルコキシチタン、例えば、モノクロロトリメトキシチタン、モノクロロトリブトキシチタン、モノブロモトリメトキシチタン、ジクロロジブトキシチタン、ジヨードジエトキシチタン、トリクロロモノメトキシチタン、トリクロロモノペントキシチタン、トリブロモモノメトキシチタンなど;
ハロゲン化チタン、例えば、四塩化チタン、四臭化チタン、三塩化チタンなど;
テトラアルコキシジルコニウム、例えば、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラペントキシジルコニウムなど;
ハロゲン化ジルコニウム、例えば、四塩化ジルコニウム、四臭化ジルコニウム、オキシ二塩化ジルコニウムなど;
テトラアシルオキシジルコニウム、例えば、テトラアセトキシジルコニウム、テトラプロピオニルオキシジルコニウム、テトラブチリルオキシジルコニウム、テトラペンタノイルオキシジルコニウムなど;
テトラアルキルスズ、例えば、テトラメチルスズ、テトラエチルスズ、テトライソプロピルスズ、テトラブチルスズ、テトラペンチルスズなど;
ハロゲン化スズ、例えば、塩化第二スズ、臭化第二スズ、塩化第一スズなど;
ジアシルオキシ亜鉛、例えば、ジアセトキシ亜鉛、ジプロピオニルオキシ亜鉛、ジブチリルオキシ亜鉛、ジペンタノイルオキシ亜鉛など;
ハロゲン化亜鉛、例えば、塩化亜鉛、臭化亜鉛など;
およびこれら化合物の混合物を包含する。
【0037】
好適な金属酸エステルは、バナジウム、チタン、ジルコニウム、ケイ素、アルミニウムおよびホウ素のアルキルおよびアリールアルコラート、カルボン酸塩ならびにカルボキシルラジカル、アルキルラジカルもしくはアリールラジカル置換アルキルアルコラートまたはカルボン酸塩を包含する。アルミン酸トリイソプロピル、チタン酸テトライソプロピル、ジルコン酸テトライソプロピル、テトラエチルオルソシリケートおよびホウ酸トリエチルを使用する。上述の金属のアセチルアセトネートおよびアセトアセチルアセトネート、例として、ジルコニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセトネ−ト、チタンアセチルアセトネ−トおよびアセトアセチルアルミン酸ジイソブチルオレイルまたはジイソプロピルオレイルアセトアセチルアセトネートならびに金属酸エステルの混合物、例として、アルミニウム/ケイ素の混合金属酸エステルであるDynasil(登録商標)(Huls)を使用することができる。
【0038】
前駆体化合物の他の例は、本開示の観点から明白である。
【0039】
本発明は、;
(a)酸触媒および/またはフッ素スカベンジャーを含む剥離材料の層を基材上に塗布する工程;
(b)所望の金属酸化物の前駆体として、一つ以上のフッ素含有金属錯体を含む被覆を前記剥離層上に塗布し、前駆体層を形成する工程;
(c)前記前駆体層をマイクロ波放射に晒し、前記基材上に金属酸化物層を形成する工程、および
(d)結果として生じる金属酸化物層を面平行な構造として基材から分離する工程
を含むプロセスも提供する。
【0040】
前記態様では、基材は、可撓性ベルト、具体的には、連続可撓性ベルトまたはシートである。場合により、可撓性ベルトを少なくとも一つの導電性材料の薄い膜でさらに被覆する。少なくとも一つの導電性材料は、金属または透明な導電性金属酸化物のいずれかである。導電性材料が金属である場合、前記金属は、好ましくは銅またはアルミニウムである。好ましい導電性金属酸化物は、ハロゲン原子が散在するスズまたはチタン酸化物である。導電性金属酸化物層の作製に好適な水性前駆体溶液が公知であり、例として、Vigilら、Thin Solid Films、2000年、365、12およびVigilら、J.Langmuir、2001年、17、891に記載されている。導電性層の導電率は、好ましくは、10‐2〜100オーム/スクエアであり、より好ましくは、1〜10オーム/スクエアである。導電性材料の改善された加熱特性のため、膜成長は、マイクロ波放射加熱によってより容易に活性化される。
【0041】
畝間の距離が30ミクロンであり、格子深さが150〜170nmである、2〜3ミクロン幅の畝の矩形格子を有するポリエステルホイルを使用することが可能である。
【0042】
剥離材料および金属酸化物前駆体層で基材を被覆し、被覆膜の厚さを調節し、薄い膜を形成するための方法に特に制限はなく、従来から周知である被覆方法および装置を使用する。例として、例えば、噴霧被覆、ブラッシングなどの方法がある。これに加え、コンテナ内に配置したベース液体に表面を浸す方法がある。
【0043】
基材としては、連続生成に好適な形状を有するもの、例えば、ロール、ベルト、シート、膜などが特に有効である。ベルトには、高分子材料を使用する。シートおよび膜には、高分子材料、特に、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレンなどを使用する。
【0044】
フッ素スカベンジャーは、水性溶液中のフッ素イオンをスカベンジすることができる任意の化合物、例えば、ホウ酸、アルカリ金属ホウ酸、例えば、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ素無水物または一酸化ホウ素、特に、好ましくはホウ酸アンモニウムである。本発明の一つの態様では、ホウ酸アンモニウムを使用する。ホウ酸アンモニウム溶液の濃度は、少なくとも、基材上への金属酸化物被覆の堆積中にフッ化イオンをスカベンジするのに必要なものである。一つの態様では、過剰のホウ酸アンモニウムを使用する。
【0045】
剥離材料は、好ましくは、ホウ酸、アルカリ金属ホウ酸、例えば、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ素無水物および一酸化ホウ素から選定されるフッ素スカベンジャーであり、所望の金属酸化物の前駆体は、ヘキサフルオロチタン酸アンモニウム;ヘキサフルオロスズ酸アンモニウム;ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム;塩化鉄(III)、フッ化水素酸およびフッ化アンモニウム混合物;塩化アルミニウム(III)、フッ化水素酸およびフッ化アンモニウム混合物;ヘキサフルオロゲルマン酸アンモニウム;フッ化インジウム(III)、フッ化水素酸およびフッ化アンモニウム混合物;ならびにフッ化インジウム(III)三水和物およびヘキサフルオロスズ酸アンモニウムの組み合わせから選定されるフッ素含有金属錯体である。
【0046】
所望の金属酸化物の前駆体であるフッ素含有金属錯体の溶液を塗布し、マイクロ波エネルギーを印加することにより、周期表の3〜15族の元素の酸化物、具体的には、TiO、ZrO、CoO、SiO、SnO、GeO、ZnO、Al、V、Fe、Sb、Cr、PbTiOもしくはCuOまたはその混合物を可撓性ベルト上に堆積させる。所望の金属酸化物を形成する前駆体溶液は、好ましくは、以下の材料の一つまたは組み合わせの水性溶液である:
(a)可溶性金属フッ化塩、
(b)可溶性金属フッ素錯体、または
(c)前記塩もしくは錯体を形成する任意の混合物。
【0047】
例は、ヘキサフルオロチタン酸アンモニウム;フッ化アンモニウムおよび塩化チタンまたは塩化チタン、フッ化アンモニウムおよびフッ化水素から作製される錯体;ヘキサフルオロスズ酸アンモニウム;ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム;ペンタフルオロケイ酸アンモニウム;塩化鉄(III)、フッ化水素酸およびフッ化アンモニウム混合物;塩化アルミニウム(III)、フッ化水素酸およびフッ化アンモニウム混合物;ヘキサフルオロゲルマン酸アンモニウム;ならびにフッ化インジウム(III)三水和物およびヘキサフルオロスズ酸アンモニウムの組み合わせを包含する。最後の例では、複数の元素を含む金属酸化物膜−インジウム/スズ酸化物膜を形成する。
【0048】
フッ素含有金属錯体の濃度は、重要ではなく、取り扱いの容易さによって決定する。したがって、濃度の領域は、約0.01Mから飽和溶液までであることができる。
【0049】
有利には、金属酸化物が二酸化チタンであり、フッ素含有金属錯体を、フッ化アンモニウムおよび塩化チタンまたは塩化チタン、フッ化アンモニウムおよびフッ化水素から作製される錯体であるヘキサフルオロチタン酸アンモニウムから選択するか、金属酸化物が鉄酸化物であり、フッ素含有金属錯体を、塩化鉄(III)、フッ化水素酸およびフッ化アンモニウム混合物の群から選択するか、金属酸化物が二酸化ケイ素であり、フッ素含有金属錯体がヘキサフルオロケイ酸アンモニウムまたはペンタフルオロケイ酸アンモニウムである。
【0050】
フッ素スカベンジャーの溶液と、その後、金属酸化物前駆体とをベルトまたはシートに順次塗布し、続いて、マイクロ波放射で処理する。
【0051】
本発明の特定の態様では、フッ素含有金属錯体は、ヘキサフルオロチタン酸アンモニウム、フルオロケイ酸アンモニウム塩または塩化鉄(III)/フッ化アンモニウムであり、基材からの分離後、TiO、SiOまたはFeの面平行な構造を生成する。
【0052】
本明細書において記載される任意の態様を介して混合干渉/吸収効果を生成するため、絶縁材料の金属酸化物層は、通常、5〜12族の元素の着色した(選択的な吸収であって、グレーまたはブラックではない)酸化物または着色した混合酸化物であり、例として、金属酸化物層は、Feを含む。
【0053】
金属酸化物の堆積を着色剤、特に、有機顔料またはカーボンブラックの存在下で実行すると、着色した金属酸化物層および/または着色した金属酸化物フレークを生成することができる。好適な有機顔料は、例として、W.HerbstおよびK.Hunger、VCH Verlagsgesellschaft mbH、Weinheim/New York、完全改訂第2版、1995年に記載されており、アゾ、アゾメチン、メチン、アントラキノン、フタロシアニン、ペリノン、ペリレン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、イミノイソインドリン、ジオキサジン、イミノイソインドリノン、キナクリドン、フラバントロン、インダントロン、アントラピリミジンおよびキノフタロン顔料またはその混合物もしくは固体溶液;具体的には、アゾ、ジオキサジン、ペリレン、ジケトピロロピロール、キナクリドン、フタロシアニン、インダントロンもしくはイミノイソインドリノン顔料またはその混合物もしくは固体溶液からなる群から選択される。
【0054】
本発明で有用な注目すべき顔料は、カラーインデックスに記載される顔料であり、C.I.顔料レッド202、C.I.顔料レッド122、C.I.顔料レッド179、C.I.顔料レッド170、C.I.顔料レッド144、C.I.顔料レッド177、C.I.顔料レッド254、C.I.顔料レッド255、C.I.顔料レッド264、C.I.顔料ブラウン23、C.I.顔料イエロー109、C.I.顔料イエロー110、C.I.顔料イエロー147、C.I.顔料イエロー191.1、C.I.顔料イエロー74、C.I.顔料イエロー83、C.I.顔料イエロー13、C.I.顔料オレンジ61、C.I.顔料オレンジ71、C.I.顔料オレンジ73、C.I.顔料オレンジ48、C.I.顔料オレンジ49、C.I.顔料ブルー15、C.I.顔料ブルー60、C.I.顔料バイオレット23、C.I.顔料バイオレット37、C.I.顔料バイオレット19、C.I.顔料グリーン7およびC.I.顔料グリーン36またはその混合物もしくは固体溶液からなる群を包含する。
【0055】
絶縁材料の金属酸化物層は、そこにルミネッセント材料を取り込むことにより、改質することもできる。
【0056】
「ルミネッセンス」という用語は、エネルギー入力後の可視、UVおよびIR領域における光の放出を意味する。ルミネッセント材料は、蛍光性材料、リン光材料、エレクトロルミネッセント材料、化学ルミネッセント材料、摩擦ルミネッセント材料または他の類似の材料であることができる。そのようなルミネッセント材料は、一般的に、温度が実質的に上昇することなく、エネルギー源に応答する電磁エネルギーの特徴的な放出を呈する。
【0057】
ルミネッセント化合物は、有機ルミネッセント化合物または組成物、すなわち、ルミネッセント着色剤であることができ、着色剤という用語は、顔料だけでなく、染料または無機蛍光体を含む。
【0058】
本発明で有効な蛍光性着色剤の例は、クマリン、ベンゾクマリン、キサンテン、ベンゾ[a]キサンテン、ベンゾ[b]キサンテン、ベンゾ[c]キサンテン、フェノキサジン、ベンゾ[a]フェノキサジン、ベンゾ[b]フェノキサジンおよびベンゾ[c]フェノキサジン、ナフタルイミド、ナフトラクタム、アズラクトン、メチン、オキサジンおよびチアジン、ジケトピロロピロール、ペリレン、キナクリドン、ベンゾキサンテン、チオエピンドリン、ラクタムイミド、ジフェニルマレイミド、アセトアセトアミド、イミダゾチアジン、ベンズアントロン、ペリレンモノイミド、ペリレン、フタルイミド、ベンゾトリアゾール、ピリミジン、ピラジンならびにトリアジンから選択される公知の着色剤に基づくものである。本発明の一つの態様では、ルミネッセント着色剤は、
【化1】


の縮合生成物であり、
ここで、R101およびR102は、単独で、水素またはC−C18アルキル、例えば、例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−アミル、tert−アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシルまたはオクタデシルである。例として、R101およびR102は、メチルである。縮合生成物の式は、
【化2】


である。
【0059】
有機ルミネッセント化合物は、例として、ジスチリルベンゼン、ジスチリルビフェニル、ジビニルスチルベン、トリアジニルアミノスチルベン、スチルベニル−2h−トリアゾール、ベンゾオキサゾール、フラン、ベンゾ[b]フランおよびベンズイミダゾール、1,3−ジフェニル−2−ピラゾリン、クマリン、ナフタルイミドならびに1,3,5−トリアジン−2−イル誘導体から選択される光学増白剤であることもできる。
【0060】
無機蛍光体は、例として、硫化物およびセレン化物、例えば、亜鉛およびカドミウム硫化物および硫セレン化物、アルカリ土類硫化物および硫セレン化物ならびに酸硫化物、酸素優位の蛍光体、例えば、ホウ酸、アルミン酸、ケイ酸、ハロリン酸およびリン酸、ゲルマン酸、酸化物、ヒ酸、バナジウム酸、硫酸およびタングステン酸およびモリブデン酸ならびに場合によっては活性剤、例えば、銅および銀、マンガン、金、希土類ならびに亜鉛を含むハロゲン化物蛍光体、具体的には、Zn1−xCdS(0≦x≦0.3);希土類、例えばユーロピウム、セリウムまたはサマリウムで活性化されたMgSまたはCaS;YS:Eu3+、YS:Tb3+、GdS:Tb3+、Sr1220:Eu2+、YAl12:Ce3+、Ce0.65Tb0.35MgAl1119、BaMgAl1627:Eu2+、YAlGa12:Tb3+、ZnSiO:Mn、YSiO:Ce3+、3Ca(PO・Ca(F,Cl):Sb3+、Mn2+、(Sr,Mg)(PO:Sn2+;LaPO:Ce3+、Tb3+;Zn(PO:Mn2+;CdCl(PO:Mn2+;Sr(PO・SrCl:Eu2+;およびBaTi4+、3Sr(PO・SrCl:Eu2+、Y:Eu3+、Y:Eu3+、Tb3+、ZnO:Zn、6MgO・As:Mn4+、YVO:Eu3+、Ce3+および場合によってはマンガンで活性化されるアルカリ金属およびアルカリ土類硫酸塩;MgWO、CaWO、場合により、Tl、GaまたはInを含むアルカリ金属ハロゲン化物、例えば、LiI/Eu、NaI/Tl、CsI/Tl、CsI/Na、LiF/Mg、LiF/Mg、TiおよびLiF/Mg、Na;CaF:Mn;CaF:Dy、(Zn,Mg)F:Mn2+、KMgF:Mn2+、MgF:Mn2+、(Zn,Mg)F:Mn2+、LaOCl:Tb3+、LaOBr:Tb3+およびLaOBr:Ceから選択される。
【0061】
本発明のもう一つの態様は、
b)所望の金属酸化物の一つ以上の前駆体を含む組成物を窒化ホウ素(BN)フレーク上に塗布する工程;
c)所望の金属酸化物の一つ以上の前駆体をマイクロ波放射に晒し、所望の金属酸化物を含む層を窒化ホウ素フレーク上に形成する工程、および
d)結果として生じる金属酸化物層を面平行な構造として基材から分離する工程
を含む。
【0062】
窒化ホウ素基材フレークは、その表面にフッ素スカベンジャーとして機能するホウ酸を有する。例として、ヘキサフルオロケイ酸および窒化ホウ素フレーク(ホウ酸)を基材として使用することにより、SiOフレークを得ることができる。
【0063】
特定の態様では、所望の金属酸化物の一つ以上の前駆体を含む組成物に窒化ホウ素フレークを懸濁させ、結果として生じる懸濁液をマイクロ波放射に晒す。
【0064】
窒化ホウ素基材フレークの代わりに、面平行な構造の形成中に触媒の役割を果たす周囲被覆を有するフレークを基材として使用することができる。
【0065】
そのような基材フレークの例は、ガラスフレーク、鉱フレーク、例えば、マイカ、グラファイト、BiOCl、AlおよびSiOフレーク;セラミックフレーク、例えば、TiB、BN、SIC、BCおよびSiフレークならびに不活性金属フレークである。
【0066】
面平行な構造の形成中、触媒、フッ素スカベンジャーおよび/または剥離層としての役割を果たす周囲被覆は、例として、マイクロカプセル化によって塗布することができる。
【0067】
原則として、すべての公知のマイクロカプセル化技術を使用することができ、内部コアにフレークを含有する外部ポリマーのシェルがもたらされる。
【0068】
ポリマーシェルを形成するための通常の技術は、実例として、英国特許第1,275,712号、1,475,229号および1,507,739号、ドイツ特許第3,545,803号ならびに米国特許第3,591,090号に記載されている。一般的に、これらのプロセスでは、シェル形成材料を溶解する連続水性相を用いる。
【0069】
とりわけ、本発明に好適なマイクロカプセル化プロセスは、a)コアセルベーション方法、b)界面ポリメリゼーション方法およびc)その場でのポリメリゼーション方法の三つのカテゴリに分類される。これらの方法により、フレークの周辺にポリマーのシェルを理想的に実現することができる。マイクロカプセル化プロセスでは、密閉するフレークと同程度のサイズである個別のマイクロカプセルを形成する。フレークは、連続ポリマーの材料のシェル内にマイクロカプセル化され、フレーク表面との共有またはイオン結合が形成されず、基材から分離して維持される。
【0070】
コアセルベーション方法では、水中油型エマルションの形成を利用する。濃度、pHおよび温度の慎重な管理を通じ、水性媒と、分散した油状液滴の周辺にカプセルシェルとして堆積したポリマーコロイドとにより、ポリマーのシェル材料をコアセルベート化し、マイクロカプセルを形成する。コアセルベーションに好適な材料は、米国特許第2800457号に記載されるように、ゼラチンおよびアカシアガムを包含する。国際公開公報第9220441号は、下限臨界溶液温度(LCST)ポリマーと、そのポリマーの可逆的な不溶化の温度のための水除去抑制剤とを含むコアセルベート被覆によって周囲を囲われたコアを含む、カプセル化粒子を記載している。ポリマーの溶液内で水不溶性のコア粒子の分散を形成し、溶液を加熱してコアセルベートとして沈殿させ、その後、抑制剤を追加することにより、組成物を作る。このプロセスでは、LCST壁構築材料は、外側からコアセルベート化する。使用される環境において、本発明のカプセル化粒子が凝固し、続けて、相分離することを防止するため、カプセル化の前に、エントロピー安定化ポリマー、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムまたはデンプンをLCST高分子成分に混合することができる。
【0071】
界面ポリメリゼーション方法は、水中油型エマルションの界面における二つの界面ポリメリゼーション可能モノマーの反応に依存する。一般的に、油可溶性である第一のモノマーを分散相で溶解し、第二の水可溶性モノマーを水性相に追加する。モノマーは、分散した油状液滴と周囲の水性媒との間の界面における重縮合反応によって反応し、油液滴の周辺にポリマーのメンブレンを形成する。形成されるポリマーのメンブレンは、米国特許第3429827号および米国特許第4428978号に記載されるように、ポリウレアおよびポリウレタンのものである。
【0072】
アミノ樹脂のその場でのポリメリゼーションを伴うカプセル形成のプロセスが公知である。一般的に、アミノプラスト前駆体、実例として、メラミンホルムアルデヒド樹脂を含有する水性液体に水不混和液体を分布させることにより、アミノプラストカプセルを形成する。アミノ樹脂プレポリマーが水不混和液体の液滴にその場でポリメリゼーションすることにより、カプセル壁が形成される。したがって、カプセル壁は、水性連続相からのプレポリマーの重縮合により、外側から構築される。その場での重合は周知の方法であり、その基本的な特長は、英国特許第1 507 739号にすでに記載されている。
【0073】
通常、シェルの壁厚さは、約20nm〜約2000nm、例として、約100nm〜約1000nmである。
【0074】
例として、マイクロカプセル形成材料のマイクロカプセル化フレークに対する重量比は、約0.001:1〜約1:1である。多くの場合、0.01:1〜約0.5:1が良好な選定である。
【0075】
本発明のプロセスは、多層顔料を生成するために使用することもできる。
【0076】
それゆえに、本発明のもう一つの態様は、さらに、:
(b1)工程(b)および(c)で形成される金属酸化物層に対し、所望の金属酸化物の一つ以上の前駆体を含む組成物を塗布する工程;および
(c1)前駆体をマイクロ波放射に晒し、すでに形成された金属酸化物層上に所望の金属酸化物を含む層を形成する工程
を含み、工程(c1)で形成される金属酸化物層が工程(c)で形成される金属酸化物と異なる。
【0077】
プロセスにより、金属酸化物の交互の層、例えば、例として、A、例としてTiOが工程(c)で得られる金属酸化物層であり、A’、例としてSiOが工程(c1)で得られる金属酸化物層であるA/A’/AもしくはA/A’/A/A’/A/A’/A;またはB、例としてSiOが工程(c)で得られる金属酸化物層であり、B’、例としてTiOが工程(c1)で得られる金属酸化物層であるB/B’/B/B’/Bを有する多層の面平行な構造を生成することができる。
【0078】
実施例
【0079】
以下の非限定的な例は、本発明の例証を助けるものである。
【0080】
例1、ケイ素酸化物フレーク
【0081】
3グラムのテトラエチルオルソシリケートと、0.03グラムのTomadol(登録商標)(非イオン性界面活性剤)と、水中における3グラムの1%ポリ(4−スチレンスルホン酸)溶液とをソニケーターで混合し、澄明な溶液を形成する。12グラムの水を追加し、混合物を希釈する。この溶液をNo2.5ドローダウンロッドで12×12”のポリエステルシート上に被覆する(湿潤厚さ:〜10ミクロン)。ポリエステルシートをマイクロ波オーブン内に置き、マイクロ波放射で2分間処理し、その後、水で洗浄してケイ素酸化物フレークを洗い落とす。フレークをビーカに収集し、乾燥させる。乾燥後、空気の屈折インデックスが湿潤フレークの周囲の水のそれと異なるにつれ、約120nmのフレークがより着色する。
【0082】
例2、ジルコニウム酸化物フレーク
【0083】
ポリスチレンスルホン酸を被覆したポリエステル膜に対し、n−ヘキサン内のジルコニウムテトラブトキシドの溶液を塗布する。その後、膜を乾燥機に通過させ、膜が120℃の窒素ガスの気流に曝され、n−ヘキサンの90%よりも多くを除去し、ジルコニウムテトラブトキシド膜を形成する。このように被覆されたポリエステル膜について、相対湿度が80%の条件状態にあるチャンバを通過させ、マイクロ波で処理し、ジルコニウムテトラブトキシドの加水分解および縮合を生起させ、水を含有する容器内に設置し、超音波によって処理し、膜からフレークを分離する。その後、剥れたフレークをフィルタによって水から回収し、約750℃でか焼し、フレーク状のジルコニアを得る。
【0084】
例3、チタン酸化物フレーク
【0085】
ジルコニウムテトラブトキシドの溶液の代わりにメタノール内のチタンテトラメトキシドの溶液を使用し、例2のプロセスを繰り返す。
【0086】
例4、アルミニウム酸化物フレーク
【0087】
ジルコニウムテトラブトキシドの代わりにトリブトキシアルミニウムを使用し、例2のプロセスを繰り返す。
【0088】
例5、アルミニウム酸化物フレーク
【0089】
ジルコニウムテトラブトキシドの代わりであるトリブトキシアルミニウムの代わりにモノアセトキシジブトキシアルミニウムを使用し、例4のプロセスを繰り返す。
【0090】
例6、スズ酸化物フレーク
【0091】
ジルコニウムテトラブトキシドの代わりにモノオクチルトリブトキシスズを使用し、例2のプロセスを繰り返す。
【0092】
例7、多孔性ケイ素酸化物フレーク
【0093】
3グラムのテトラエチルオルソシリケートの溶液と、0.03グラムのTomadol(登録商標)(非イオン性界面活性剤)と、0.11gのポリエチレングリコールを追加する、水中における3グラムの1%ポリ(4−スチレンスルホン酸)溶液とを使用し、例1のプロセスを繰り返す。多孔性ケイ素酸化物フレークを収集する。
【0094】
例8、多孔性ケイ素酸化物フレーク
【0095】
No.2.5ドローダウンロッドの代わりにNo.6ドローダウンロッド(湿潤厚さが〜15ミクロン)を使用し、例7のプロセスを繰り返す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期表の3〜15族から選択される一つ以上の金属の酸化物からなる少なくとも一つの絶縁層を含む、面平行な構造を作製するためのプロセスであって、:
(a)場合により、基材上に剥離材料の層を塗布する工程、
(b)一つ以上の所望の金属酸化物の一つ以上の前駆体を含む組成物を前記剥離層上または剥離材料の層がない基材上に直接的に塗布する工程、
(c)一つ以上の所望の金属酸化物の一つ以上の前駆体をマイクロ波放射に晒し、基材上または剥離材料の層上に金属酸化物層を形成する工程;および
(d)結果として生じる金属酸化物層を面平行な構造として基材から分離する工程
を含むプロセス。
【請求項2】
面平行な構造の形成中、剥離材料が触媒またはフッ化スカベンジャーとしての役割を果たす、請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
剥離材料がフッ化スカベンジャーを含み、所望の金属酸化物の前駆体がフッ素含有金属錯体である、請求項2記載のプロセス。
【請求項4】
フッ化スカベンジャーが、ホウ酸、アルカリ金属ホウ酸、ホウ酸アンモニウム、ホウ素無水物または一酸化ホウ素からなる群から選択され、フッ素含有金属錯体が、ヘキサフルオロチタン酸アンモニウム、ヘキサフルオロスズ酸アンモニウム、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム、塩化鉄(III)、フッ化水素酸およびフッ化アンモニウム混合物、塩化アルミニウム(III)、フッ化水素酸およびフッ化アンモニウム混合物、ヘキサフルオロゲルマン酸アンモニウム、フッ化インジウム(III)、フッ化水素酸およびフッ化アンモニウム混合物、ならびにフッ化インジウム(III)三水和物およびヘキサフルオロスズ酸アンモニウムの組み合わせからなる群から選択される、請求項3記載のプロセス。
【請求項5】
金属酸化物が二酸化チタンであり、フッ素含有金属錯体がヘキサフルオロチタン酸アンモニウムであり、錯体がフッ化アンモニウムおよび塩化チタンまたは塩化チタン、フッ化アンモニウムおよびフッ化水素から作製される、請求項3記載のプロセス。
【請求項6】
金属酸化物が鉄酸化物であり、フッ素含有金属錯体が塩化鉄(III)、フッ化水素酸およびフッ化アンモニウム混合物から作製される錯体である、請求項3記載のプロセス。
【請求項7】
金属酸化物が二酸化ケイ素であり、フッ素含有金属錯体がヘキサフルオロケイ酸アンモニウムまたはペンタフルオロケイ酸アンモニウムである、請求項3記載のプロセス。
【請求項8】
フッ素含有金属錯体がヘキサフルオロチタン酸アンモニウム、フルオロケイ酸アンモニウム塩または塩化鉄(III)/フッ化アンモニウムであり、剥離剤の分離後、TiO、SiOまたはFeの面平行な構造が生成される、請求項3記載のプロセス。
【請求項9】
剥離材料が酸性触媒を含み、所望の金属酸化物の前駆体が金属酸エステルである、請求項2記載のプロセス。
【請求項10】
酸性触媒がポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸のコポリマーまたはポリビニルスルホン酸のコポリマーである、請求項9記載のプロセス。
【請求項11】
酸触媒がポリ(4−スチレンスルホン酸)である、請求項10記載のプロセス。
【請求項12】
剥離材料がポリビニルアミンまたはポリビニルピリジンからなる群から選択される塩基性触媒を含み、所望の金属酸化物の前駆体が金属酸エステルである、請求項2記載のプロセス。
【請求項13】
所望の金属酸化物の前駆体を含む組成物が酸性触媒も含有し、剥離材料の層がない基材に直接的に塗布される、請求項1記載のプロセス。
【請求項14】
所望の金属酸化物の前駆体が金属酸エステルである、請求項13記載のプロセス。
【請求項15】
酸性触媒が、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸のコポリマーまたはポリビニルスルホン酸のコポリマーである、請求項14記載のプロセス。
【請求項16】
酸触媒がポリ(4−スチレンスルホン酸)であり、金属酸エステルが、アルミニウム、ホウ素、ケイ素、スズおよびジルコニウムのアリールアルコラート、カルボン酸塩、カルボキシルラジカルアルコラート、アルキルラジカルアルコラートおよびアリールラジカル置換アルキルアルコラートからなる群から選択される、請求項15記載のプロセス。
【請求項17】
金属酸エステルがオルソシリケートである、請求項16記載のプロセス。
【請求項18】
所望の金属酸化物の前駆体を含む組成物が、水または有機溶剤のいずれかに可溶性であるポリマーも含有し、多孔性面プレートレット構造が生成される、請求項13記載のプロセス。
【請求項19】
金属酸化物前駆体の混合物を使用し、複数の金属を含む面プレートレット構造を生成する、請求項1記載のプロセス。
【請求項20】
(b1)請求項1の工程(b)および(c)で形成される金属酸化物層に対し、所望の金属酸化物の一つ以上の前駆体を含む組成物を塗布する工程;および
(c1)前駆体をマイクロ波放射に晒し、すでに形成された金属酸化物層上に所望の金属酸化物を含む層を形成する工程
をさらに含み、工程(c1)で形成される金属酸化物層が工程(c)で形成される金属酸化物と異なる、請求項1記載のプロセス。
【請求項21】
工程(b1)および(c1)を繰り返し、金属酸化物の交互の層を有する多層の面平行な構造を形成する、請求項20記載のプロセス。

【公表番号】特表2009−533306(P2009−533306A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504684(P2009−504684)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053141
【国際公開番号】WO2007/115959
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(508120547)チバ ホールディング インコーポレーテッド (81)
【氏名又は名称原語表記】CIBA HOLDING INC.
【Fターム(参考)】