説明

金属酸化物微粒子分散体及びその製造方法

【課題】 アクリル系樹脂に配合しても凝集せず、製膜後の透明性及び機械特性に優れた金属酸化物微粒子分散体を提供する。
【解決手段】 有機溶剤中でシランカップリング剤を用いて金属酸化物をビーズミル処理し、更にこの分散体に重合性基を有するイソシアネート化合物を添加し超音波処理することにより金属酸化物微粒子表面に重合性官能基を修飾した金属酸化物微粒子分散体を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物粒子の分散媒となる有機溶媒やアクリルモノマー、アクリルオリゴマー、およびアクリルポリマーなどに対して分散性の高い金属酸化物微粒子分散体、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチックフィルムコーティング材料には優れた光学特性や機械特性が要求されており、無機微粒子の複合化により有機材料の持つ加工性に加え、種々の機能を付与できることが期待されている。例えば、無機物である金属酸化物のナノ粒子を、樹脂にナノオーダーで分散、配合することにより、有機物と無機物両方の利点を備えたハイブリッド素材になる。このようなハイブリット素材は、光学的、電磁気的、機械的、熱的機能の飛躍的向上が期待できる材料として注目されている。例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウムは高屈折率の特性があり、また酸化亜鉛、酸化セリウムは紫外線吸収などの特性が挙げられ、樹脂への複合化により容易にこれらの機能付与が可能となる。
【0003】
例えばFPD(フラットパネルディスプレイ)には、プリズムシートや輝度向上フィルムなどの光学フィルムが使用されているが、金属酸化物微粒子を用いることによって高屈折率化が得られることから、検討されている。また、紫外線カットフィルムや赤外線カットフィルムなどの透明フィルムの機能付与や透明導電膜の電気特性向上には、金属酸化物微粒子が検討されている。
【0004】
この種の金属酸化物微粒子に関する先行技術文献としての、例えば、特許文献1、特許文献2に記載の発明は、粒子の分散性、塗膜の透明性を目的として開示されている。特許文献3の発明は、ポリシロキサンによる分散体が報告されているが、相溶性の面で好ましくない。特許文献4、特許文献5の発明は、重合性官能基を有するイソシアネート化合物を分散体に後添加するものであり、アルコール系溶媒などに対しての使用ができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−96400号公報
【特許文献2】特開2006−36854号公報
【特許文献3】特開2007−270054号公報
【特許文献4】特開2006−316223号公報
【特許文献5】特開2008−184596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のような金属酸化物微粒子の粒子径がナノサイズになると、サブミクロン程度の粒子とは異なる粒子表面特性、相互作用が発現し、粒子は凝集しやすく、安定な分散状態を得るには特別な工夫が必要となる。これは、粒子径が小さくなることにより、比表面積が極めて大きくなり、全原子数中に占める表面原子数の割合が大きくなり、大きな表面自由エネルギーを持つからである。このため、微粒子分散体を得るためには、粒子表面の改質が必要となる。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、アクリル系樹脂に配合しても凝集せず、製膜後の透明性及び機械特性の優れた金属酸化物分散体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る金属酸化物微粒子分散体は、金属酸化物微粒子、シランカップリング剤、重合性官能基を有するイソシアネート化合物、有機溶媒を含み、ビーズミル処理後に超音波処理することによって得られる。
【0009】
粒子表面を改質し、分散させるものとしては、シランカップリング剤、金属キレート剤等がある。また、水酸基、リン酸基、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシ基等を粒子への吸着成分とし、ポリエステル、ポリエーテル、アクリル、ウレタン、エポキシ、シリコーン等を主骨格とした分散剤が市販されている。
【0010】
請求項1に記載の発明である重合性官能基を有する金属酸化物分散体は、重合性官能基を有する表面処理剤または重合性官能基を有する表面修飾剤により表面が修飾された一次粒子径が、5nm〜60nm以下の金属酸化物粒子を含有してなることを特徴とする。
【0011】
このようにすれば、金属酸化物分散体が表面処理剤に重合性官能基を有することにより、アクリル系コーティング材料との相溶性が改善でき、また、アクリル系コーティング材料と金属酸化物微粒子の共重合が可能となるので、フィルムコーティング特性に優れた材料の提供が可能となる。
【0012】
請求項2に記載のように、請求項1に記載の重合性官能基を有する金属酸化物分散体において、前記金属酸化物分散体に含まれる金属酸化物微粒子の配合量を1〜50wt%にすることができる。
【0013】
このようにすれば、上記の範囲で作製された分散体を用いることにより、フィルムコーティング材料への添加量が自由になり、機能化が効率よくできる。一方、1wt%以下の場合、フィルムコーティング材料に複合化しても、コーティング膜中には金属酸化物が低濃度でしか充填されず粒子による機能化が困難である。また、50wt%以上になると、組成の増粘により分散処理が困難になりコーティング膜の透明性が失われる。
【0014】
請求項3に記載の発明である重合性官能基を有する金属酸化物分散体は、前記表面処理剤としてシランカップリング剤を使用し、ビーズミルにより表面処理されたことを特徴とする。
【0015】
このようにすれば、ビーズミルにより処理された粒子は、ビーズの衝突力により粒子が一次粒子に解れ、一次粒子の状態でシランカップリング剤処理されることで、粒子に対して均一な処理が可能となる。
【0016】
請求項4に記載のように、請求項3に記載の重合性官能基を有する金属酸化物分散体において、前記金属酸化物分散体に含まれるシランカップリング剤の配合量を0.5〜10wt%にすることができる。
【0017】
このようにすれば、シランカップリング剤により処理された粒子は、表面水酸基が低減することで、未処理の粒子よりも分散媒への濡れ性が改善され、処理効率が上がるとともに、分散粒子濃度を高くすることができる。
【0018】
一方、0.5wt%以下の場合、処理が不十分であり、シランカップリング剤の効果が見られず、10wt%以上の場合、金属酸化物微粒子の表面水酸基が著しく減少し、分散工程での重合性官能基を有するイソシアネートとの反応性が低下する。
【0019】
請求項5に記載の発明である重合性官能基を有する金属酸化物微粒子分散体は、請求項1または2に記載の重合性官能基を有する金属酸化物微粒子分散体において、前記表面修飾剤として重合性官能基を有するイソシアネート化合物を使用し、超音波により分散されたことを特徴とする。
【0020】
このようにすれば、シランカップリング剤によって適度に有機化された金属酸化物微粒子は、分散状態ではなく、粒子表面に残った水酸基に重合性官能基を有するイソシアネートを反応させることで分散性が発現する。また、反応と分散を兼ねるという観点からビーズミルより超音波の方が好ましい。
【0021】
請求項6に記載のように、請求項5に記載の重合性官能基を有する金属酸化物分散体において、前記金属酸化物分散体に含まれる重合性官能基を有するイソシアネート化合物の配合量を、0.5〜10wt%にすることができる。
【0022】
上記配合量にすることにより、分散安定化およびフィルムコーティング材料に複合化したときの金属酸化物微粒子による機能化が可能となる。
【0023】
一方、0.5wt%以下であると、分散安定化が不十分であり、10wt%以上になると金属酸化物分散体組成中の重合性官能基を有するイソシアネート化合物の影響が大きくなり、金属酸化物微粒子分散体によるフィルムコーティングの機能化が困難となる。
【0024】
請求項7に記載の分散方法は、請求項1〜6のいずれか1に記載の重合性官能基を有する金属酸化物分散体の金属酸化物表面をビーズミルにより有機化し、その後に超音波を用いて重合性官能基を処理することを特徴とする。
【0025】
このようにすれば、ビーズミルを用いることによって、シランカップリング剤で有機化された金属酸化物微粒子は分散状態ではないが一次粒子レベルで均一に処理されている。そのため処理された粒子は、凝集力が弱まり解れやすく、ビーズミルによる分裂破壊では分散力が強すぎるため、重合性官能基を有するイソシアネート化合物を添加後にビーズミル処理すると、過分散に起因する沈降の発生をまねく。
【0026】
一方、超音波を用いると、ビーズミルに比べ弱い分散力である浸食破壊で分散安定化させることが可能となり、金属酸化物微粒子を一次粒子で分散安定化させることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、アクリル系樹脂に配合しても凝集せず、製膜後の透明性及び機械特性の優れた金属酸化物分散体及びその製造方法が提供できる。
【0028】
本発明による金属酸化物微粒子分散体と特にアクリル系樹脂を複合化することで、透明性を維持しつつ粒子による特性、例えば、高屈折率、低屈折率、導電性、紫外線遮蔽、赤外線遮蔽などを得ることが可能となり、また、金属酸化物微粒子の添加による効果と、粒子表面に重合性官能基を有することによる効果によるハードコート化が透明材料として可能となる。
【0029】
また、本発明による製造方法であれば、工業的手法であるビーズミルを使用するので、一次粒子で安定に制御された金属酸化物微粒子分散体を大量に生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】重合性官能基を有するイソシアネート化合物を添加後の超音波処理前と処理後の赤外吸収スペクトルを示す線図である。2270cm−1付近に見られるイソシアネートのピークが分散後に減少していることがわかる。これは金属酸化物微粒子表面の水酸基に対してウレタン結合したためである。
【図2】重合性官能基を有するイソシアネート化合物によって分散された酸化ジルコニウムの透過型電子顕微鏡(TEM)による画像である。粒子が分散状態で存在しており、一次粒子径に分散できていることが確認できる。
【図3】本発明の実施例1によって得られた酸化ジルコニウム粒子分散体の分散初期の動的光散乱法による粒度分布を示す図面である。
【図4】本発明の実施例1によって得られた酸化ジルコニウム粒子分散体の分散化から2週間経過後の動的光散乱法による粒度分布を示す図面である。
【図5】本発明の実施例5によって得られた酸化亜鉛粒子分散体の分散初期の動的光散乱法による粒度分布を示す図面である。
【図6】本発明の実施例5によって得られた酸化亜鉛粒子分散体の分散化から2週間経過後の動的光散乱法による粒度分布を示す図面である。
【図7】比較例3によって得られた酸化ジルコニウム粒子分散体の分散初期の動的光散乱法による粒度分布を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の金属酸化物微粒子分散体及びその製造方法について詳細に説明する。
【0032】
本発明の金属酸化物分散体は、金属酸化物微粒子、有機溶媒、シランカップリング剤、重合性官能基を有するイソシアネート化合物を含有してなる。
【0033】
本発明に適用される金属酸化物微粒子としては、一次粒子径が5〜60nm、好ましくは10〜40nmのものを用いることができる。粒子径がこれ(5nm)より小さくなると、金属酸化物の分散安定化が困難になり、これ(60nm)より粒子径が大きくなると、製膜後の透明性が悪化する。
【0034】
金属酸化物の種類としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、リンドープ酸化錫(PTO)、アンチモン酸亜鉛(AZO)、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化錫を挙げることができる。
【0035】
市販品には、石原産業製:SN−100P(ATO)、FS−10P(ATO)、SN−102P(ATO)、FS−12P(ATO)、TTO−55(酸化チタン)、TTO−51(酸化チタン)、TTO−S−1(酸化チタン)、TTO−S−2(酸化チタン)、TTO−S−3(酸化チタン)、TTO−S−4(酸化チタン)、ST−01(酸化チタン)、ST−21(酸化チタン)、ST−31(酸化チタン)、住友大阪セメント製:OZC−3YC(酸化ジルコニウム)、OZC−3YD(酸化ジルコニウム)、OZC−3YFA(酸化ジルコニウム)、OZC−8YC(酸化ジルコニウム)、OZCー0S100(酸化ジルコニウム)、日本電工製PCS(酸化ジルコニウム)、T−01(酸化ジルコニウム)、第一稀元素製:UEP(酸化ジルコニウム)、UEP−100(酸化ジルコニウム)三菱マテリアル製:T−1(ITO)、S−1200(酸化錫)、三井金属製:パストラン(ITO、ATO)、シーアイ化成製:ナノテックITO、ナノテックSnO、ナノテックTiO、ナノテックSiO、ナノテックAlナノテックZnO、触媒化成製:TL−20(ATO)、TL−30(ATO)、TL−30S(PTO)、TL−120(ITO)、TL130(ITO)、ハクスイテック製:PazetCK(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、PazetGK(ガリウムドープ酸化亜鉛)、堺化学製:SC−18(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、FINEX−25(酸化亜鉛)、FINEX−25LP(酸化亜鉛)、FINEX−50(酸化亜鉛)、FINEX−50LP2(酸化亜鉛)、FINEX−75(酸化亜鉛)STR−60C(酸化チタン)、STR−60C−LP(酸化チタン)、STR−100C(酸化チタン)、日本アエロジル製:Aluminium Oxide C(酸化アルミニウム)等がある。
【0036】
本発明に用いるシランカップリング剤は、分散体の粘度の低下、重合性官能基を有するウレタン化合物を効果的に結合させるために配合する。金属酸化物微粒子の表面は親水性を有しており、表面に存在する水酸基によるものと考えられている。シランカップリング剤は粒子表面と反応しうるアルコキシ基を複数有しており、粒子表面を効率的に有機化することができる。
【0037】
表面処理するための最適量としては、粒子に対して1〜30wt%が好ましく、さらには5〜20%が好ましい。シランカップリング剤の量が1%以下の場合、分散体の粘度低下や有機化が十分でなく超音波処理による分散が難しくなる。また、30%以上の場合、シランカップリング剤同士の水素結合により分散性が低下し、分散体を用いたコーティング膜の機能付与の面でも好ましくない。
【0038】
【化1】

【0039】
本発明に使用できるシランカップリング剤は、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。

本発明における重合性官能基を有するイソシアネート化合物は、金属酸化物微粒子の分散過程で用いられ、シランカップリング剤により表面の水酸基が減少した金属酸化物微粒子に対して効率的に結合すると考えられる。最適量としては金属酸化物微粒子に対して1〜50wt%で、さらに好ましくは5〜20wt%である。1wt%より少ない場合は分散体を得ることが困難であり、50wt%以上になると金属酸化物微粒子によるコーティングの機能化が困難になる。また、シランカップリング剤で処理されていない金属酸化物微粒子に対して重合性官能基を有するイソシアネート化合物で分散処理をすると、分散に必要な添加量の増大に伴い、ウレタン結合同士の水素結合により粒子の分散が困難である。
【0040】
【化2】

【0041】
重合性官能基を有するイソシアネート化合物の具体例として、アクリロキシメチルイソシアネート、メタクリロキシメチルイソシアネート、アクリロキシエチルイソシアネート、メタクリロキシエチルイソシアネート、アクリロキシプロピルイソシアネート、メタクリロキシプロピルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロキシメチル)エチルイソシアネートが挙げられる。
【0042】
有機溶媒は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、iso−ブタノール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類、ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0043】
本発明の分散液は、ビーズミルにより有機溶媒中で金属酸化物微粒子をシランカップリング剤により表面処理したものと重合性官能基を有するウレタン化合物を超音波分散させて製造する。
【0044】
ビーズミルでの処理は、周速5〜15m/sで粘度の低下が確認できるまで継続する。分散の際はガラスビーズ、アルミナビーズ、ジルコニアビーズ等のメディアビーズを使用することができる。ビーズ径は0.015〜0.5mmである。好ましくは0.03〜0.1mmである。
【0045】
重合性官能基を有するイソシアネート化合物を添加した後にビーズミル処理を行うと、分散化は可能であるが沈降が発生する。これは、ビーズミル超音波処理は、超音波洗浄機、超音波ホモジナイザー、超音波分散機等を用いることができる。
【0046】
重合性官能基を有するイソシアネート化合物を添加後の超音波処理前と処理後の赤外吸収スペクトルを示す(図1参照)。超音波処理前には2270cm−1にイソシアネートのビークが観測されるのに対して超音波処理後にはイソシアネートのビークが減少しウレタン結合の形成が進行していることがわかる。
【0047】
以上のように本発明は、金属酸化物微粒子をビーズミル処理時にシランカップリング剤で有機化し、超音波処理時に重合性官能基を有するイソシアネート化合物が金属酸化物微粒子と反応することで分散化させることができる(図2参照)。

以下、本発明を実施例、比較例により詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【実施例1】
【0048】
酸化ジルコニウム粒子(第一稀元素製、UEP−100、一次粒子径10〜20nm)20gに対し、ビニルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング製、SZ6300)を2g、及びメチルエチルケトン78g配合し、ビーズミル条件周速8m/sにて30分処理し回収した。次いで、処理液100gに対して2−メタクリロキシオキシエチルイソシアネート(昭和電工製、カレンズMOI)を2g配合し、超音波分散機で30分処理して累積50%粒径14.2nmの金属酸化物分散液を得た(図3参照)。また、2週間後の累積50%粒径は12.7nmであった(図4参照)。
【実施例2】
【0049】
酸化ジルコニウム粒子(第一稀元素製、UEP−100、一次粒子径10〜20nm)20gに対し、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング製、Z6030)を2g、及びメチルエチルケトン78g配合し、ビーズミル条件周速8m/sにて30分処理し回収した。次いで、処理液100gに対して2−メタクリロキシオキシエチルイソシアネート(昭和電工製、カレンズMOI)を2g配合し、超音波分散機で30分処理して累積50%粒径24.2nmの酸化ジルコニウム20wt%の金属酸化物分散液を得た。
【実施例3】
【0050】
酸化ジルコニウム粒子(第一稀元素製、UEP−100、一次粒子径10〜20nm)20gに対し、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング製、Z6030)を2g、及びメチルエチルケトン78g配合し、ビーズミル条件周速8m/sにて30分処理し回収した。次いで、処理液100gに対して2−アクリロキシオキシエチルイソシアネート(昭和電工製、カレンズAOI)を2g配合し、超音波分散機で30分処理して累積50%粒径12.3nmの金属酸化物分散液を得た。
【実施例4】
【0051】
酸化ジルコニウム粒子(第一稀元素製、UEP−100、一次粒子径10〜20nm)20gに対し、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング製、Z6030)を2g、及びメチルエチルケトン78g配合し、ビーズミル条件周速8m/sにて30分処理し回収した。次いで、処理液100gに対して3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、Y5187)を2g配合し、超音波分散機で30分処理して累積50%粒径17.2nmの金属酸化物分散液を得た。
【実施例5】
【0052】
酸化亜鉛粒子(堺化学工業製、FINEX50S−LP2、一次粒子径20nm)20gに対し、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング製、Z6030)を2g、及びメチルエチルケトン78g配合し、ビーズミル条件周速8m/sにて30分処理し回収した。次いで、処理液100gに対して2−メタクリロキシオキシエチルイソシアネート(昭和電工製、カレンズMOI)を2g配合し、超音波分散機で30分処理して累積50%粒径50.7nmの金属酸化物分散液を得た(図5参照)。また、2週間後の累積50%粒径は55.0nmであった(図6参照)。
【比較例1】
【0053】
酸化ジルコニウム粒子(第一稀元素製、UEP−100、一次粒子径10〜20nm)20gに対し、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング製、Z6030)を2g、及びメチルエチルケトン78g配合し、ビーズミル条件周速8m/sにて30分処理した。次いで、処理液100gに対して2−メタクリロキシオキシエチルイソシアネート(昭和電工製、カレンズMOI)を2g配合し、超音波分散機は用いずに、引き続きビーズミルで30分処理した。こうして金属酸化物分散液を得た。
【比較例2】
【0054】
酸化ジルコニウム粒子(第一稀元素製、UEP−100、一次粒子径10〜20nm)20gに対し、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング製、Z6030)を2g、及びメチルエチルケトン78g配合し、ビーズミルは用いずに超音波分散機にて30分処理した。次いで、処理液100gに対して2−メタクリロキシオキシエチルイソシアネート(昭和電工製、カレンズMOI)を2g配合し、超音波分散機で30分処理した。こうして金属酸化物分散液を得た。
【比較例3】
【0055】
酸化ジルコニウム粒子(第一稀元素製、UEP−100、一次粒子径10〜20nm)20gに対し、ビニルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング製、SZ6300)を4g、及びメチルエチルケトン76g配合し、ビーズミル条件周速8m/sにて30分処理し回収した。次いで、処理液100gを何も添加せずに超音波分散機で30分処理した。こうして金属酸化物分散液を得た(図7参照)。また、2週間後には完全に沈降分離していた。
【比較例4】
【0056】
酸化ジルコニウム粒子(第一稀元素製、UEP−100、一次粒子径10〜20nm)20gに対し、メチルエチルケトン80g配合し、ビーズミル条件周速8m/sにて30分処理し回収した。次いで、処理液100gに対して2−メタクリロキシオキシエチルイソシアネート(昭和電工製、カレンズMOI)を2g配合し、超音波分散機で30分処理した。こうして金属酸化物分散液を得た。
【比較例5】
【0057】
酸化ジルコニウム粒子(第一稀元素製、UEP−100、一次粒子径10〜20nm)20gに対し、アセチルアセトンを2g、及びメチルエチルケトン78g配合し、ビーズミル条件周速8m/sにて30分処理し回収した。次いで、処理液100gに対して2−メタクリロキシオキシエチルイソシアネート(昭和電工製、カレンズMOI)を2g配合し、超音波分散機で30分処理した。こうして金属酸化物分散液を得た。
【比較例6】
【0058】
酸化ジルコニウム粒子(第一稀元素製、UEP−100、一次粒子径10〜20nm)20gに対し、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート(味の素ファインケミカル製、プレンアクトAL−M)を2g、及びメチルエチルケトン78g配合し、ビーズミル条件周速8m/sにて30分処理し回収した。次いで、処理液100gに対して2−メタクリロキシオキシエチルイソシアネート(昭和電工製、カレンズMOI)を2g配合し、超音波分散機で30分処理した。こうして金属酸化物分散液を得た。

(評価方法)
(外観)
作製した金属酸化物微粒子分散体の外観を観察し、分散性の確認を行った。分散し透明性のあるものを○、沈降はあるが分散しているものを△、透明性がなく、分散していないものを×とした。
(金属酸化物微粒子の粒度分布)
作製した金属酸化物微粒子分散体の累積50%粒径、累積90%粒径を以下の条件で測定した。
測定機器:日機装 動的光散乱式粒度分布測定装置
解析条件: 粒子径基準 体積
分散粒子屈折率 酸化ジルコニウム:2.17
酸化亜鉛:2.03
分散媒屈折率 メチルエチルケトン:1.38
【0059】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性官能基を有する表面処理剤または重合性官能基を有する表面修飾剤により表面が修飾された一次粒子径が、5nm〜60nm以下の金属酸化物粒子を含有してなることを特徴とする重合性官能基を有する金属酸化物分散体。
【請求項2】
前記金属酸化物分散体に含まれる金属酸化物粒子の配合量が、1〜50wt%であることを特徴とする請求項1に記載の重合性官能基を有する金属酸化物分散体。
【請求項3】
前記表面処理剤としてシランカップリング剤を使用し、ビーズミルにより表面処理されたことを特徴とする請求項1または2に記載の重合性官能基を有する金属酸化物分散体。
【請求項4】
前記金属酸化物分散体に含まれるシランカップリング剤の配合量が、0.5〜10wt%であることを特徴とする請求項3に記載の重合性官能基を有する金属酸化物分散体。
【請求項5】
前記表面修飾剤として重合性官能基を有するイソシアネート化合物を使用し、超音波により分散されたことを特徴とする請求項1または2に記載の重合性官能基を有する金属酸化物分散体金属酸化物微粒子分散体。
【請求項6】
前記金属酸化物分散体に含まれる重合性官能基を有するイソシアネート化合物の配合量が、0.5〜10wt%であることを特徴とする請求項5に記載の重合性官能基を有する金属酸化物分散体。
【請求項7】
金属酸化物表面をビーズミルにより有機化し、その後に超音波を用いて重合性官能基を処理することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載の重合性官能基を有する金属酸化物分散体の分散方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−254889(P2010−254889A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109049(P2009−109049)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 刊行物名 「第27回無機高分子研究討論会●講演要旨集」(2008年11月6日、7日開催「第27回無機高分子研究討論会」の予稿集) 発行者名 「社団法人高分子学会」 発行年月日 「2008年10月31日」
【出願人】(500314382)株式会社ソーラー (5)
【出願人】(508114454)地方独立行政法人 大阪市立工業研究所 (60)
【Fターム(参考)】