説明

金属酸化物微粒子含有シリコーン樹脂組成物

【課題】透明性、光透過性及び耐熱性に優れ、かつ、高屈折率を有する金属酸化物微粒子含有シリコーン樹脂組成物、その製造方法を提供する。
【解決手段】式(I)の熱硬化性シリコーン誘導体と、微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子とを重合反応させて得られる金属酸化物微粒子含有シリコーン樹脂組成物。


(式中、Xは、それぞれ独立して、アルコキシ基又はアルキル基を、mは1以上の整数を、nは0又は1以上の整数を示し、但し、3m個のXのうち、少なくとも1つはアルコキシ基である)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物微粒子含有シリコーン樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、透明性、光透過性及び耐熱性に優れ、かつ、高屈折率を有するシリコーン樹脂組成物、その製造方法、該組成物のシート状成形体及び該組成物で封止している光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、白色発光ダイオード(LED)が、大幅な省エネを実現する新しい照明光源として注目されている。照明用LEDは、表示用LEDとは異なってチップ1個あたりの輝度が非常に高いことから、それを封止する樹脂には透明性に加えて、優れた耐光性、耐熱性が求められる。
【0003】
これに対して、表示用LEDの封止に汎用されているエポキシ樹脂よりも高い耐久性を有するシリコーン樹脂が、照明用LEDの封止に利用されている。しかし、シリコーン樹脂は概して屈折率が1.4程度と低く、チップの屈折率(約2.5)との差が大きくなり、スネルの法則より封止樹脂とチップの界面で全光反射が増えるため、光取り出し効率が低下するという問題がある。
【0004】
これを解決するためには、シリコーン樹脂を透明性と耐熱性を維持しながら高屈折率化することが求められるが、その一つの手段として、例えば、屈折率が高く、かつ、光散乱が無視できるほどに微小な金属酸化物微粒子をシリコーン樹脂に分散させる方法が提案されている。親水性の高い金属酸化物微粒子を疎水性の高いシリコーン樹脂に分散させるためには、例えば、特許文献1及び2に示されているように、金属酸化物微粒子の表面を予めシランカップリング剤等で修飾して疎水化処理する方法が例示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−106186号公報
【特許文献2】特開2007−308345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2の方法に拠るシリコーン樹脂の高屈折率化は、金属酸化物微粒子の「表面処理」と「分散」の二段階の工程を要し、さらに、「分散」には特殊な装置による高速攪拌処理を必要とするため、工程の簡便性からは必ずしも満足できるものではなかった。また、一般に使用されるシランカップリング剤は反応性官能基を多く含有するために、シランカップリング剤によって表面処理された金属酸化物微粒子を含有するシリコーン樹脂は耐熱性に劣る。
【0007】
本発明の課題は、透明性、光透過性及び耐熱性に優れ、かつ、高屈折率を有する金属酸化物微粒子含有シリコーン樹脂組成物、その製造方法、該組成物のシート状成形体及び該組成物で封止している光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
〔1〕 熱硬化性シリコーン誘導体と、微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子とを重合反応させて得られる金属酸化物微粒子含有シリコーン樹脂組成物であって、前記熱硬化性シリコーン誘導体が、式(I):
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、Xは、それぞれ独立して、アルコキシ基又はアルキル基を、mは1以上の整数を、nは0又は1以上の整数を示し、但し、3m個のXのうち、少なくとも1つはアルコキシ基である)
で表わされる化合物を含有してなる、金属酸化物微粒子含有シリコーン樹脂組成物。
〔2〕 式(I):
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、Xは、それぞれ独立して、アルコキシ基又はアルキル基を、mは1以上の整数を、nは0又は1以上の整数を示し、但し、3m個のXのうち、少なくとも1つはアルコキシ基である)
で表わされる化合物を含有する熱硬化性シリコーン誘導体と、微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子とを重合反応させる工程を含む、金属酸化物微粒子含有シリコーン樹脂組成物の製造方法。
〔3〕 前記〔1〕記載の金属酸化物微粒子含有シリコーン樹脂組成物を基材の上に塗工し、乾燥して成形させてなる、シリコーン樹脂シート、ならびに
〔4〕 前記〔1〕記載の金属酸化物微粒子含有シリコーン樹脂組成物、あるいは前記〔3〕記載のシリコーン樹脂シートを用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の金属酸化物微粒子含有シリコーン樹脂組成物は、透明性、光透過性及び耐熱性に優れ、かつ、高屈折率を有するという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の金属酸化物微粒子含有シリコーン樹脂組成物(以下、本発明のシリコーン樹脂組成物ともいう)は、熱硬化性シリコーン誘導体と、微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子とを重合反応させて得られる金属酸化物微粒子含有シリコーン樹脂組成物であって、前記熱硬化性シリコーン誘導体が、式(I):
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、Xは、それぞれ独立して、アルコキシ基又はアルキル基を、mは1以上の整数を、nは0又は1以上の整数を示し、但し、3m個のXのうち、少なくとも1つはアルコキシ基である)
で表わされる化合物(以下、本発明におけるアルコキシ基含有ポリメチルシロキサンともいう)を含有することに大きな特徴を有する。
【0017】
本発明においては、シリコーン樹脂組成物を構成するシリコーン樹脂の骨格上にアルコキシ基を有する特定の化合物と、微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子とを用いる。シリコーン樹脂のアルコキシ基と金属酸化物微粒子の反応性官能基とを反応させることにより両者は化学結合して、金属酸化物微粒子が該結合を介してシリコーン樹脂上に存在することになる。この方法は、金属酸化物微粒子をシランカップリング剤で表面処理した後に高速攪拌装置を用いてシリコーン樹脂中に分散させるという方法に比べて、シリコーン樹脂と金属酸化物微粒子とを反応させるのみでよいことから、特殊な装置も要せずに、かつ、「表面処理」と「分散」の二段階を経ることなく簡便にシリコーン樹脂を高屈折率化することができる。
【0018】
また、式(I)中のXは、それぞれ独立して、アルコキシ基又はアルキル基を示し、但し、3m個のXのうち、少なくとも1つはアルコキシ基である。従って、式(I)で表わされる化合物にはXのアルコキシ基以外には反応性官能基が存在しないことから、耐熱性が損なわれることもない。
【0019】
アルコキシ基の炭素数は、微粒子表面での反応性、加水分解速度の観点から、1〜4が好ましく、1〜2がより好ましい。具体的には、メトキシ基、エトキシ基等が例示される。一方、アルキル基の炭素数は、微粒子表面の親水性/疎水性制御、アルコキシシランの重縮合反応の効率などの観点から、1〜18が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が例示される。
【0020】
としては、トリメトキシ基、ジメトキシメチル基、メトキシジメチル基、トリエトキシ基、ジエトキシエチル基、エトキシジエチル基等が例示される。これらのなかでは、透明性及び耐熱性の観点から、トリメトキシ基、ジメトキシメチル基、及びトリエトキシ基が好ましい。
【0021】
式(I)中のmは、1以上の整数を示すが、金属酸化物微粒子との反応性や相溶性の観点から、好ましくは1〜50、より好ましくは1〜20の整数である。
【0022】
式(I)中のnは、0又は1以上の整数を示すが、金属酸化物微粒子との反応性や相溶性の観点から、好ましくは0〜30、より好ましくは0〜20の整数である。
【0023】
かかる式(I)で表される化合物としては、トリメトキシ基含有ポリメチルシロキサン、ジメトキシメチル基含有ポリメチルシロキサン、トリエトキシ基含有ポリメチルシロキサン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
式(I)で表される化合物は、安定性や取り扱い性の観点から、分子量は好ましくは300〜13000、より好ましくは300〜6000であることが望ましい。なお、本明細書において、シリコーン誘導体の分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0025】
また、アルコキシ基の含有量は、式(I)で表される化合物1分子中、好ましくは10重量%以上、より好ましくは14〜60重量%である。なお、本明細書において、アルコキシ基含有量は、1H−NMRによる定量及び加熱による重量減少から求めることができる。
【0026】
本発明に用いられる式(I)で表される化合物は、公知の方法に従って合成されたものや市販品を用いてもよいが、例えば、以下に示される方法により合成することができる。
【0027】
具体的には、アルコキシ基含有ビニルシラン、触媒及び相溶化剤を混合したものに、側鎖型メチルハイドロジェンシリコーンオイルを滴下して、好ましくは90℃未満の温度で混合後、要すれば窒素雰囲気下で反応させることにより得られる。なお、得られた反応物は減圧濃縮してもよい。
【0028】
アルコキシ基含有ビニルシランとしては、トリメトキシビニルシラン、ジメトキシビニルシラン、メトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ジエトキシビニルシラン、エトキシビニルシラン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
触媒としては、アルコキシ基含有ビニルシランのビニル基と側鎖型メチルハイドロジェンシリコーンオイルのヒドロシリル基との付加反応を触媒するものであればよく、白金黒、塩化白金、塩化白金酸、白金−ジビニルシロキサン触媒等の白金−オレフィン錯体、白金−カルボニル錯体、白金−アセチルアセテート等の白金触媒;パラジウム触媒、ロジウム触媒等が例示される。
【0030】
触媒の存在量は、例えば、白金触媒を用いる場合には、反応速度の観点から、白金含有量が、アルコキシ基含有ビニルシランと側鎖型メチルハイドロジェンシリコーンオイルの総量100重量部に対して、1.0×10-4〜0.5重量部が好ましく、1.0×10-3〜0.05重量部がより好ましい。
【0031】
相溶化剤としては、アルコキシ基含有ビニルシランと側鎖型メチルハイドロジェンシリコーンオイルに両親媒性の溶剤であればよく、酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤の他、ヘキサン、オクタン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0032】
相溶化剤の存在量は、側鎖型メチルハイドロジェンシリコーンオイルの総量100重量部に対して、50〜1000重量部が好ましく、100〜200重量部がより好ましい。
【0033】
側鎖型メチルハイドロジェンシリコーンオイルとしては、側鎖にメチル基と水素原子を有するシリコーンオイルであれば公知のものを使用することができるが、公知の方法に従って合成したものを用いてもよい。
【0034】
具体的には、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、及びヘキサメチルジシロキサンの混合物にamberlyst 15(シグマアルドリッチ社製)等の固体酸触媒を添加して、窒素気流下において、70℃で18時間加熱後、得られた生成物をろ過して90℃で3時間減圧濃縮することにより得ることができる。なお、得られた生成物は、1H−NMRによって、側鎖型メチルハイドロジェンシリコーンオイルであることを確認することができる。
【0035】
側鎖型メチルハイドロジェンシリコーンオイルの官能基当量は、1〜30g/mmolが好ましく、3〜20g/mmolがより好ましい。なお、本明細書において、シラノール誘導体の官能基当量は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0036】
アルコキシ基含有ビニルシランと側鎖型メチルハイドロジェンシリコーンオイルの重量比は、アルコキシ基含有ビニルシランのビニル基と側鎖型メチルハイドロジェンシリコーンオイルのヒドロシリル基を過不足なく反応させる観点から、前記官能基のモル比(ビニル基/ヒドロシリル基)が、20/1〜0.1/1が好ましく、10/1〜0.2/1がより好ましく、10/1〜0.5/1がさらに好ましく、実質的に当量(1/1)であることがさらに好ましい。
【0037】
アルコキシ基含有ビニルシランと側鎖型メチルハイドロジェンシリコーンオイルとの反応は、好ましくは60〜100℃、より好ましくは70〜80℃で、好ましくは1〜8時間、より好ましくは2〜4時間攪拌して行うことができる。
【0038】
減圧濃縮は、好ましくは25〜80℃、より好ましくは50〜60℃で、好ましくは1〜8時間、より好ましくは2〜4時間公知の方法に従って行うことができる。また、減圧濃縮は2段階に分けて行ってもよく、その場合、1段階目の減圧濃縮は60〜80℃で30〜60分間、2段階目の減圧濃縮は40〜60℃で60〜240分間することが好ましい。
【0039】
なお、アルコキシ基含有ビニルシランのビニル基と側鎖型メチルハイドロジェンシリコーンオイルのヒドロシリル基との付加反応の進行度は、H−NMR測定によって、ヒドロシリル基に由来するピークの消失程度によって確認することができる。
【0040】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、前記式(I)で表される化合物以外の他のシリコーン誘導体を含有していてもよい。他のシリコーン誘導体としては、金属酸化物微粒子との反応に供されなかった式(I)で表される化合物におけるアルコキシ基と縮合反応を生じるものであれば特に限定はなく、公知のシリコーン誘導体が挙げられるが、樹脂の過度な架橋を抑制する観点から、トリメチルメトキシシランが好ましい。熱硬化性シリコーン誘導体における式(I)で表される化合物の含有量は、70〜100重量%が好ましく、80〜100重量%がより好ましく、90〜100重量%がさらに好ましい。
【0041】
熱硬化性シリコーン誘導体の含有量は、組成物中、50〜99重量%が好ましく、60〜99重量%がより好ましい。
【0042】
微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、チタン酸鉛、二酸化ケイ素等が挙げられ、これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、高屈折率の観点から、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、及び二酸化ケイ素からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが望ましい。なお、酸化チタンとしては、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタンのいずれを用いてもよい。
【0043】
金属酸化物微粒子における反応性官能基としては、ヒドロキシ基、イソシアネート基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシ基、エポキシ基、ビニル型不飽和基、ハロゲン基、イソシアヌレート基などが例示される。
【0044】
金属酸化物微粒子の微粒子表面における反応性官能基の含有量は、微粒子量、微粒子の表面積、反応した表面処理剤量などから求めることができるが、本発明では、後述の実施例の反応性官能基の含有量の測定方法における表面処理剤との反応量が微粒子重量の0.1重量%以上となる微粒子を「微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子」という。ここで、該反応量を反応性官能基の含有量とし、金属酸化物微粒子における含有量は0.1重量%以上であれば、特に限定されない。なお、本明細書において、金属酸化物微粒子表面における反応性官能基の含有量は、後述の実施例の方法により測定することができ、「反応性官能基の含有量」とは、反応性官能基の「含有量」及び/又は「存在量」のことを意味する。
【0045】
また、金属酸化物微粒子の微粒子表面における反応性官能基の含有量は、例えば、メチルトリメトキシシランを有機溶媒に溶解した溶液と微粒子を反応させることにより低減することができる。また、微粒子を高温で焼成することにより、微粒子表面の反応性官能基量を低減させることができる。
【0046】
金属酸化物微粒子は、公知の方法で製造されたものを用いることできるが、なかでも、粒子の大きさの均一性や微粒子化の観点から、水熱合成法、ゾル−ゲル法、超臨界水熱合成法、共沈法、及び均一沈殿法からなる群より選ばれる少なくとも1つの製造方法により得られたものが好ましい。
【0047】
粒子の可視光領域(波長380〜780nm)における光散乱の影響を抑制するためには、該粒子が光の波長の1/10以下の粒子径を有することが好ましい。従って、金属酸化物微粒子の平均粒子径は、好ましくは1〜100nm、より好ましくは1〜70nm、さらに好ましくは1〜20nmである。本明細書において、金属酸化物微粒子の平均粒子径は、動的光散乱法での粒子分散液の粒子径測定あるいは透過型電子顕微鏡による直接観察により測定することができる。
【0048】
金属酸化物微粒子の屈折率は、LED光取出し効率向上の観点から、好ましくは1.4〜2.7、より好ましくは2.0〜2.7である。本明細書において、屈折率は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0049】
なお、金属酸化物微粒子は、凝集を抑制する観点から、分散液中に調製されたものを用いてもよい(「金属酸化物微粒子分散液」ともいう)。分散媒としては水、アルコール、ケトン系溶媒、アセトアミド系溶媒などが挙げられ、水、メタノール、メチルブチルケトン、ジメチルアセトアミドを用いることが好ましい。分散液中の金属酸化物微粒子の量(固形分濃度)は、効率的に微粒子表面で反応を行う観点から、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは20〜40重量%、さらに好ましくは30〜40重量%である。このような金属酸化物微粒子分散液は、酸化チタンとして触媒化成社のNEOSUNVEILあるいはQUEEN TITANICシリーズ、多木化学社のタイノック、酸化ジルコニウムとして第一希元素化学工業社のZSLシリーズ、住友大阪セメント社のNZDシリーズ、日産化学社のナノユースシリーズなどの市販のものを用いることができる。
【0050】
金属酸化物微粒子の含有量は、熱硬化性シリコーン誘導体100重量部に対して、好ましくは1〜70重量部、より好ましくは1〜60重量部、さらに好ましくは1〜40重量部である。
【0051】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、前記熱硬化性シリコーン誘導体、及び金属酸化物微粒子に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、老化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有してもよい。
【0052】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、例えば、前記金属酸化物微粒子分散液に有機溶剤を添加して攪拌した液に、式(I)で表わされる化合物を有機溶剤に溶解して調製した樹脂溶液を滴下混合して重合反応させ、あるいは、式(I)で表わされる化合物を有機溶剤に溶解して調製した樹脂溶液に、前記金属酸化物微粒子分散液に有機溶剤を添加して攪拌した液を滴下混合して重合反応させ、要すれば、得られた重合物に、さらに、前記以外の熱硬化性シリコーン誘導体を有機溶剤に溶解して調製した樹脂溶液を滴下混合して縮重合反応させることにより調製することができる。なお、得られた反応液は、減圧濃縮してもよい。
【0053】
金属酸化物微粒子分散液としては、微粒子の分散性の観点から、予めpH調整を行ったものを用いてもよい。金属酸化物微粒子分散液のpHは、1.0〜4.0が好ましく、2.0〜3.0がより好ましい。
【0054】
金属酸化物微粒子分散液に添加する有機溶剤とシリコーン誘導体〔式(I)で表わされる化合物と式(I)以外の熱硬化性シリコーン誘導体〕に添加する有機溶剤は、両親媒性の溶剤であることが好ましく、具体的には、メタノール、エタノール、2-メトキシエタノール、2-プロパノール、テトラヒドロフラン等が例示される。
【0055】
金属酸化物微粒子分散液に有機溶剤を添加する際には、金属酸化物微粒子の有機溶剤総量における濃度が、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは1〜2重量%になるようにすることが望ましい。
【0056】
各シリコーン誘導体は、有機溶剤に好ましくは10〜50重量%、より好ましくは30〜50重量%の濃度になるように溶解して樹脂溶液を調製する。
【0057】
式(I)で表わされる化合物と金属酸化物微粒子との反応は、好ましくは40〜80℃、より好ましくは50〜60℃、好ましくは1〜8時間、より好ましくは2〜4時間攪拌して行うことができる。
【0058】
式(I)で表わされる化合物と金属酸化物微粒子との反応物に、前記以外の熱硬化性シリコーン誘導体を反応させる温度は、好ましくは40〜80℃、より好ましくは50〜60℃である。反応時間は、好ましくは1〜8時間、より好ましくは1〜4時間である。
【0059】
減圧濃縮は、好ましくは25〜80℃、より好ましくは50〜60℃で、好ましくは1〜8時間、より好ましくは2〜4時間公知の方法に従って行うことができる。
【0060】
かくして得られた熱硬化性シリコーン樹脂組成物は、例えば、ガラス基板上にキャスティング、スピンコーティング、ロールコーティングなどの方法により、適当な厚さに塗工し、溶媒の除去が可能な程度の温度で乾燥することによりシート状に成形することができる。従って、本発明は、本発明の熱硬化性シリコーン樹脂組成物を基材の上に塗工し、乾燥して成形する、シリコーン樹脂シートを提供する。シートとしては、厚さが10〜1000μm程度のものが例示され、100〜200μmのものが好ましい。なお、樹脂溶液を乾燥させる温度は、樹脂や溶媒の種類によって異なるため一概には決定できないが、80〜150℃が好ましい。乾燥時間は、5〜60分が好ましく、10〜20分がより好ましい。
【0061】
本発明の樹脂組成物は、透明性に優れることから光透過性が高く、例えば、10〜500μm厚のシート状に成形された場合、400〜700nmの波長を有する入射光に対する透過率が、好ましくは80%以上、より好ましくは82%以上、さらに好ましくは85〜100%である。なお、本明細書において、光透過率は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0062】
また、本発明の樹脂組成物は、金属酸化物微粒子を含まない樹脂組成物に比べて屈折率が0.02〜0.10程度高く、例えば、10〜500μm厚のシート状に成形された場合、400nm以上550nm未満の波長を有する入射光に対する屈折率は、好ましくは1.43〜1.53、より好ましくは1.47〜1.53、さらに好ましくは1.51〜1.53である。550〜700nmの波長を有する入射光に対する屈折率は、好ましくは1.43〜1.52、より好ましくは1.46〜1.52、さらに好ましくは1.50〜1.52であり、高波長であっても高い屈折率を示す。
【0063】
本発明のシリコーン樹脂組成物の好ましい製造方法は、式(I)で表わされる化合物と金属酸化物微粒子とを重合反応させる工程〔工程(1)〕を含む方法である。
【0064】
工程(1)の具体例としては、例えば、金属酸化物微粒子分散液に、メタノール、エタノール、2-メトキシエタノール、2-プロパノール、テトラヒドロフラン等の有機溶剤を添加攪拌して、金属酸化物微粒子が好ましくは1〜10重量%の濃度になるように調製した液に、式(I)で表わされる化合物をメタノール、エタノール、2-プロパノール、テトラヒドロフラン等の有機溶剤に好ましくは40〜60重量%の濃度になるように溶解して調製した樹脂溶液を滴下混合し、好ましくは40〜80℃、より好ましくは50〜60℃、好ましくは1〜8時間、より好ましくは2〜4時間反応させる工程等が挙げられる。
【0065】
また、本発明のシリコーン樹脂組成物の架橋度を調整する観点から、本発明のシリコーン樹脂組成物の好ましい製造方法は、工程(1)で得られた反応物に、式(I)で表わされる化合物以外の熱硬化性シリコーン樹脂組成物を縮重合反応させる工程〔工程(2)〕を含んでもよい。
【0066】
工程(2)の具体例としては、例えば、工程(1)で得られた反応物に、式(I)で表わされる化合物以外の熱硬化性シリコーン樹脂組成物、例えば、トリメチルメトキシシランをメタノール、エタノール、2-プロパノール、テトラヒドロフラン等の有機溶剤に好ましくは40〜60重量%の濃度になるように溶解して調製した樹脂溶液を滴下混合し、好ましくは40〜80℃、より好ましくは50〜60℃、好ましくは1〜8時間、より好ましくは1〜4時間反応させる工程等が挙げられる。
【0067】
なお、得られた反応液は、減圧下にて溶媒を留去して濃縮させる工程等に供して、濃度及び粘度を調整することができる。
【0068】
かくして得られるシリコーン樹脂組成物は、透明性、光透過性及び耐熱性に優れ、かつ、高屈折率を有することから、例えば、青色又は白色LED素子を搭載した光半導体装置(液晶画面のバックライト、信号機、屋外の大型ディスプレイ、広告看板等)に用いられる光半導体素子封止材として好適に使用し得るものである。従って、本発明はまた、前記シリコーン樹脂組成物を用いて光半導体素子を封止する光半導体装置を提供する。
【0069】
本発明の光半導体装置は、本発明のシリコーン樹脂組成物を光半導体素子封止材として用いて、LED素子を封止することにより製造することができる。具体的には、LED素子が搭載された基板の上に、キャスティング、スピンコーティング、ロールコーティングなどの方法により適当な厚さに本発明のシリコーン樹脂組成物をそのまま塗布し、加熱、乾燥することにより、光半導体装置を製造することができる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
【0071】
〔シリコーン誘導体の分子量〕
ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算にて求める。
【0072】
〔シリコーン誘導体のアルコキシ基含有量〕
内部標準物質を用いた1H−NMRによる定量及び示差熱熱重量分析による重量減少の値から算出する。
【0073】
〔シリコーン誘導体の官能基当量〕
内部標準物質を用いた1H−NMRにより測定する。
【0074】
〔金属酸化物微粒子の平均粒子径〕
本明細書において、金属酸化物微粒子の平均粒子径とは一次粒子の平均粒子径を意味し、金属酸化物微粒子の粒子分散液について動的光散乱法で測定して算出される体積中位粒径(D50)のことである。
【0075】
〔金属酸化物微粒子表面における反応性官能基の含有量〕
微粒子分散液に表面処理剤としてエチルトリメトキシシランを加えて反応させ、遠心分離もしくはpH変動によって微粒子を凝集沈降させて、濾別回収、洗浄、乾燥し、示差熱熱重量分析によって重量減量を求めて含有量を算出する。
【0076】
〔金属酸化物微粒子の屈折率〕
プリズムカップラー(SPA-4000、サイロン社製)を用いて、25℃、633nmにおける屈折率を測定する。なお、金属酸化物微粒子は水分散したものをサンプル液として測定する。
【0077】
〔シリコーン樹脂組成物の光透過性〕
分光光度計(U-4100、日立ハイテク社製)を用いて、400〜800nmの可視光領域の透過スペクトルを測定し、400nmにおける透過率を算出する。
【0078】
式(I)で表わされる化合物の合成例1
表1に示すアルコキシ基含有ビニルシラン、相溶化剤、及び白金触媒の混合物を80℃に加熱し、窒素気流下、側鎖型メチルハイドロジェンシリコーンオイルを徐々に滴下した。添加終了後、80℃でさらに4時間攪拌した。得られた混合物は80℃で30分間、続いて60℃で4時間減圧濃縮して、無色透明のアルコキシ基含有ポリメチルシロキサンA〜Eを得た。
【0079】
式(I)で表わされる化合物の合成例2
オクタメチルシクロテトラシロキサン14.0g、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(商品名「LS-8600」、信越化学社製)7.6g、ヘキサメチルジシロキサン(商品名「LS-7130」、信越化学社製)0.3g、及びamberlyst 15(シグマアルドリッチ社製)4.4gの混合物を窒素気流下において、70℃で18時間加熱した後に、生成物をろ過して90℃で3時間減圧濃縮して、側鎖型メチルハイドロジェンシリコーンオイル(シリコーンオイルA)を得た。官能基当量は4.5mmol/gであった。なお、得られた生成物(シリコーンオイルA)は、1H−NMRにて、側鎖型メチルハイドロジェンシリコーンオイルであることを確認した。
【0080】
得られた側鎖型メチルハイドロジェンシリコーンオイル(シリコーンオイルA)5.8gを、表1に示すアルコキシ基含有ビニルシラン、相溶化剤、及び白金触媒の混合物を80℃に加熱したところに、窒素気流下で徐々に滴下した。添加終了後、80℃でさらに3時間攪拌して、無色透明のアルコキシ基含有ポリメチルシロキサンFを得た。なお、得られたアルコキシ基含有ポリメチルシロキサンFには、相溶化剤が残存しているため、シリコーン誘導体濃度としては80重量%程度である。
【0081】
【表1】

【0082】
実施例1
攪拌機、還流冷却機、及び窒素導入管を備えた容器に、式(I)で表わされる化合物として、アルコキシ基含有ポリメチルシロキサンA10gを2-プロパノール10gに溶解したもの(シリコーン誘導体濃度50重量%)を60℃に加熱したところに、平均粒子径7nmの酸化ジルコニウムの水分散液(商品名「NZD-3007-NDO」、住友大阪セメント社製、固形分濃度40重量%、反応性官能基として水酸基を含有、反応性官能基含有量0.1重量%、屈折率2.1)をpH2.0〜3.0に調整した酸化ジルコニウム分散pH調整液9.23g(酸化ジルコニウムの含有量はシリコーン誘導体の総量、即ち、式(I)で表わされる化合物と式(I)で表わされる化合物以外の総量100重量部に対して34重量部)、メタノール87g、2-メトキシエタノール87gの混合物(金属酸化物微粒子濃度2重量%)を、滴下ロートを用いて1滴/1秒の速度で滴下した。添加終了後、60℃で3時間攪拌して反応させたところに、さらに、式(I)で表わされる化合物以外の化合物として、トリメチルメトキシシラン1gを2-プロパノール1gに溶解した液(シリコーン誘導体濃度50重量%)を、滴下ロートを用いて1滴/1秒の速度で滴下した。添加終了後、60℃でさらに1時間攪拌して反応させてシリコーン樹脂組成物を得た。
【0083】
実施例2
実施例1において、アルコキシ基含有ポリメチルシロキサンA10gを用いる代わりに、アルコキシ基含有ポリメチルシロキサンB10gを用いる以外は、実施例1と同様にしてシリコーン樹脂組成物を得た。
【0084】
実施例3
実施例1において、酸化ジルコニウム分散pH調整液9.23g、メタノール87g、2-メトキシエタノール87gの混合物を用いる代わりに、酸化ジルコニウム分散pH調整液1.24g(酸化ジルコニウムの含有量はシリコーン誘導体の総量100重量部に対して5重量部)、メタノール12g、2-メトキシエタノール12gの混合物(金属酸化物微粒子濃度2重量%)を用いる以外は、実施例1と同様にしてシリコーン樹脂組成物を得た。
【0085】
実施例4
実施例3において、アルコキシ基含有ポリメチルシロキサンA10gを用いる代わりに、アルコキシ基含有ポリメチルシロキサンC10gを用いる以外は、実施例3と同様にしてシリコーン樹脂組成物を得た。
【0086】
実施例5
実施例3において、アルコキシ基含有ポリメチルシロキサンA10gを用いる代わりに、アルコキシ基含有ポリメチルシロキサンD10gを用いる以外は、実施例3と同様にしてシリコーン樹脂組成物を得た。
【0087】
実施例6
実施例2において、酸化ジルコニウム分散pH調整液9.23g、メタノール87g、2-メトキシエタノール87gの混合物を用いる代わりに、酸化ジルコニウム分散pH調整液1.24g(酸化ジルコニウムの含有量はシリコーン誘導体の総量100重量部に対して5重量部)、メタノール12g、2-メトキシエタノール12gの混合物(金属酸化物微粒子濃度2重量%)を用いる以外は、実施例2と同様にしてシリコーン樹脂組成物を得た。
【0088】
実施例7
実施例3において、アルコキシ基含有ポリメチルシロキサンA10gを用いる代わりに、アルコキシ基含有ポリメチルシロキサンE10gを用いる以外は、実施例3と同様にしてシリコーン樹脂組成物を得た。
【0089】
実施例8
攪拌機、還流冷却機、及び窒素導入管を備えた容器に、式(I)で表わされる化合物として、アルコキシ基含有ポリメチルシロキサンF10gを溶媒留去せずに、2-プロパノール2gを加えて混合したもの(シリコーン誘導体濃度65重量%)に、酸化ジルコニウム分散pH調整液1.24g(酸化ジルコニウムの含有量はシリコーン誘導体の総量100重量部に対して5重量部)、メタノール12g、2-メトキシエタノール12gの混合物(金属酸化物微粒子濃度2重量%)を、滴下ロートを用いて1滴/1秒の速度で滴下した。添加終了後、60℃で3時間攪拌して反応させたところに、さらに、式(I)で表わされる化合物以外の化合物として、トリメチルメトキシシラン1gを2-プロパノール1gに溶解した液(シリコーン誘導体濃度50重量%)を、滴下ロートを用いて1滴/1秒の速度で滴下した。添加終了後、60℃でさらに1時間攪拌して反応させてシリコーン樹脂組成物を得た。
【0090】
実施例9
実施例1において、トリメチルメトキシシランを用いない以外は、実施例1と同様にしてシリコーン樹脂組成物を得た。なお、酸化ジルコニウムの含有量はシリコーン誘導体の総量、即ち、式(I)で表わされる化合物100重量部に対して37重量部であった。
【0091】
比較例1
実施例1において、酸化ジルコニウム分散pH調整液9.23g、メタノール87g、2-メトキシエタノール87gの混合物を用いる代わりに、塩酸希釈液(pH2.0〜3.0)1.24g、メタノール12g、2-メトキシエタノール12gの混合物を用いる以外は、実施例1と同様にしてシリコーン樹脂組成物を得た。
【0092】
比較例2
実施例2において、酸化ジルコニウム分散pH調整液9.23g、メタノール87g、2-メトキシエタノール87gの混合物を用いる代わりに、塩酸希釈液(pH2.0〜3.0)1.24g、メタノール12g、2-メトキシエタノール12gの混合物を用いる以外は、実施例2と同様にしてシリコーン樹脂組成物を得た。
【0093】
比較例3
実施例8において、酸化ジルコニウム分散pH調整液9.23g、メタノール87g、2-メトキシエタノール87gの混合物を用いる代わりに、塩酸希釈液(pH2.0〜3.0)1.24g、メタノール12g、2-メトキシエタノール12gの混合物を用いる以外は、実施例8と同様にしてシリコーン樹脂組成物を得た。
【0094】
比較例4
実施例1において、アルコキシ基含有ポリメチルシロキサンA10gを用いる代わりに、シリコーン誘導体(信越化学社製、商品名「X-21-5841」、シラノール、官能基当量500g/mol)10gを用い、また、トリメチルメトキシシランを用いない以外は、実施例1と同様にしてシリコーン樹脂組成物を得た。なお、酸化ジルコニウムの含有量はシリコーン誘導体の総量、即ち、シリコーン誘導体(X-21-5841)100重量部に対して37重量部であった。
【0095】
比較例5
pH2.0〜3.0に調整した酸化ジルコニウム分散pH調整液(NZD-3007-NDO)9.23gにエタノール10gを添加したものに、シランカップリング剤(信越化学社製、商品名「KBM-3103」、デシルトリメトキシシラン)8gと2-プロパノール2gを加えて混合したものを添加し、室温(25℃)で3時間攪拌した。得られた溶液を1000r/minで10分間遠心分離し、沈殿物を回収後、沈殿物に2-プロパノール10gを加えて再度1000r/minで10分間遠心分離し、沈殿物を回収した。得られた沈殿物4gをトルエン10gに溶解して、表面修飾された酸化ジルコニウム分散液を得た。
【0096】
次に、実施例1において、酸化ジルコニウム分散pH調整液9.23g用いる代わりに、前記で調製した表面修飾された酸化ジルコニウム分散液14gを用いて、また、トリメチルメトキシシランを用いない以外は、実施例1と同様にしてシリコーン樹脂組成物を得た。なお、酸化ジルコニウムの含有量はシリコーン誘導体の総量、即ち、式(I)で表わされる化合物100重量部に対して30重量部であった。
【0097】
シートの調製
上記で得られた組成物を用いて、シートを調製した。具体的には、前記組成物をガラス板上に100〜200μmの厚さに塗工し、150℃で10分加熱して、組成物の半硬化物(シート)を調製した。
【0098】
得られたシートについて、以下の試験例1〜4に従って、特性を評価した。結果を表1に示す。
【0099】
試験例1(透明性)
JIS7105に従って、各シートにD65光を当てた際のヘイズを、ヘイズメーター(HR-100、村上色彩社製)を用いて測定した。ヘイズが低いほど透明性が高いことを示す。
【0100】
試験例2(光透過性)
各シートの波長450nmにおける光透過率(%)を、分光光度計(U-4100、日立ハイテク社製)を用いて測定した。光透過率が高いほど光透過性が高いことを示す。
【0101】
試験例3(耐熱性)
各シートを150℃の温風型乾燥機内に静置し、15時間経過後のシートの外観を目視で観察し、保存前の状態から変色のないものを「○」、あるものを「×」とした。保存後の外観の変化がない場合に耐熱性が優れることを示す。
【0102】
試験例4(屈折率)
各シートの波長533nm及び632.8nmにおける屈折率(%)を、プリズムカップラー(SPA-4000、SAIRON TECHNOLOGY社製)を用いて測定した。屈折率が高いほど高屈折率を有すると評価することができ、いずれの屈折率も高いことが好ましい。
【0103】
【表2】

【0104】
結果、実施例の組成物は、比較例に比べて、透明性、光透過性及び耐熱性に優れ、かつ、高屈折率を有することが分かる。なお、比較例4は、シリコーン誘導体と金属酸化物微粒子を反応させた際に白濁が生じたので、光透過率以外の特性を評価することは出来なかった。これは、シリコーン誘導体と金属酸化物微粒子との反応性が遅いために金属酸化物微粒子が凝集したためと考えられる。また、比較例5は、金属酸化物微粒子がシランカップリング剤によって表面修飾されているので良好に分散するものの、シランカップリング剤が多くの反応性官能基を有するために、耐熱性に劣ると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の金属酸化物微粒子含有シリコーン樹脂組成物は、例えば、液晶画面のバックライト、信号機、屋外の大型ディスプレイや広告看板等の半導体素子を製造する際に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性シリコーン誘導体と、微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子とを重合反応させて得られる金属酸化物微粒子含有シリコーン樹脂組成物であって、前記熱硬化性シリコーン誘導体が、式(I):
【化1】

(式中、Xは、それぞれ独立して、アルコキシ基又はアルキル基を、mは1以上の整数を、nは0又は1以上の整数を示し、但し、3m個のXのうち、少なくとも1つはアルコキシ基である)
で表わされる化合物を含有してなる、金属酸化物微粒子含有シリコーン樹脂組成物。
【請求項2】
金属酸化物微粒子の平均粒子径が1〜50nmである、請求項1記載の金属酸化物微粒子含有シリコーン樹脂組成物。
【請求項3】
式(I):
【化2】

(式中、Xは、それぞれ独立して、アルコキシ基又はアルキル基を、mは1以上の整数を、nは0又は1以上の整数を示し、但し、3m個のXのうち、少なくとも1つはアルコキシ基である)
で表わされる化合物を含有する熱硬化性シリコーン誘導体と、微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子とを重合反応させる工程を含む、金属酸化物微粒子含有シリコーン樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載の金属酸化物微粒子含有シリコーン樹脂組成物を基材の上に塗工し、乾燥して成形させてなる、シリコーン樹脂シート。
【請求項5】
請求項1又は2記載の金属酸化物微粒子含有シリコーン樹脂組成物、あるいは請求項4記載のシリコーン樹脂シートを用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置。

【公開番号】特開2010−241935(P2010−241935A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91243(P2009−91243)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】