説明

金属酸化物粒子分散体

【課題】
分散安定性(凝集防止性)に優れた金属酸化物粒子含有分散体を提供することである。
【解決手段】
金属酸化物粒子(A)、水性液体(B)及び凝集防止剤(C)を含んでなる分散体であって、凝集防止剤(C)がリン原子含有化合物であることを特徴とする分散体を用いる。凝集防止剤(C)は酸性リン化合物及び/又はこの塩が好ましく、さらに好ましくはリン酸、ピロリン酸、メタリン酸、リン酸エステル、ホスホン酸、ジホスホン酸、トリホスホン酸、テトラホスホン酸、ペンタホスホン酸、モノホスホン酸、ホスホン酸エステル、ホスフィン酸、ジホスフィン酸、モノホスフィン酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物粒子分散体に関する。さらに詳しくは、水性塗料や水性インク等に好適な分散体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物粒子を含む分散体(意匠性印刷や磁性インク等)として、(1)1000から25000の分子量を有し、ポリアクリレート、アクリル酸/アクリルアミド共重合体およびポリビニルホスホン酸のうちから選ばれる少くとも1種類の高分子電解質と、これら化合物のアルカリ金属塩を含有する分散剤の存在下に、超常磁性固体粒子を水もしくはアルコール中に分散させた分散液を含有し、22℃で測定して10cP以下の粘度、32mT以上の飽和磁化を有することを特徴とする磁気インキ組成物(特許文献1)や、(2)共重合体、両親媒性化合物および磁性超微粒子を含む水性磁性分散体において、該磁性超微粒子が、乾燥工程を含まない水系反応で合成されて水系懸濁液の状態でかつ結晶質であり、該共重合体が、スチレンとアクリル酸を含み、該両親媒性化合物が、ポリエチレンオキサイドと芳香環を含み、さらに該水性磁性分散体が、一価の金属イオンおよびアンモニウムイオンを少なくとも一種以上含有することを特徴とする水性磁性分散体(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−140492
【特許文献2】特開2001−354883
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の分散体では、分散安定性(凝集防止性)が不十分であり、分散安定性を向上させるため添加量を増やすと、分散体の粘度が上昇するという問題がある他に、分散体を印刷等した後金属酸化物がブリードアウトするという問題もある。
本発明の目的は、分散安定性(凝集防止性)に優れた金属酸化物粒子含有分散体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者はこれらの問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下の発明に到達した。
すなわち、本発明の分散体の特徴は、金属酸化物粒子(A)、水性液体(B)及び凝集防止剤(C)を含んでなる分散体であって、凝集防止剤(C)がリン原子含有化合物である点を要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の分散体は、分散安定性(凝集防止性)に優れているため、長期間、優れた分散安定性を維持し金属酸化物粒子の凝集を発生しない。したがって、各種塗料やインク等の金属酸化物粒子含有分散体として好適に使用でき、特に低粘度でかつ長期間の分散安定性が求められる分散体(インクジェット用インク等)として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
金属酸化物粒子(A)としては、金属元素の酸化物であれば特に限定されないが、分散体としての使用用途等から、二〜七価(好ましくは二〜四価)の金属原子を含んで構成されるもの等が好適であり、たとえば、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等)の酸化物、4族金属元素(チタン及びジルコニウム等)の酸化物、5族金属元素(バナジウム及びニオブ等)の酸化物、6〜14族の金属元素(クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛、アルムニウム、ケイ素及び錫等)の酸化物等が含まれる。
【0008】
金属酸化物粒子(A)には、二種類以上の金属原子を含む酸化物、すなわち、複合酸化物であってもよいし、異なる種類の金属酸化物粒子を二種類以上配合してなるものであってもよい。
また、金属酸化物粒子(A)には、金属原子と酸素原子との化合物以外に、金属原子と酸素原子以外の原子(硫黄原子、窒素原子及びハロゲン原子等)との化合物(酸化物)も含まれる。
【0009】
以上の金属酸化物粒子(A)の例としては、二酸化チタン(TiO)、二酸化クロム(CrO)、二酸化モリブデン(MoO)、三酸化モリブデン(MoO)、二酸化マンガン(MnO)、二酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化鉄(II)(FeO)、酸化鉄(III)(Fe)、四酸化三鉄(Fe)、二酸化コバルト(CoO)、酸化銅(II)(CuO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(アルミナ、Al)、酸化スズ(II)(SnO)、酸化スズ(IV)(SnO)、酸化スズ(VI)(SnO)、チタン酸バリウム(BaOTi)、チタン酸鉛(PbTiO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、ニオブ酸カリウム(KNbO)、アルミン酸ストロンチウム(SrAl)、クロム酸アンモニウム((NHCr)及びチタン酸アンモニウム((NHTiO)等が挙げられる。これらのうち、6〜14族の金属元素の酸化物からなる金属酸化物粒子が好ましく、さらに好ましくはコバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、鉄又はモリブデンの酸化物である。金属酸化物粒子(A)は磁性粒子であることがより望ましい。
【0010】
磁性粒子としては、公知の磁性粒子が含まれ、米国特許4810401号明細書に記載されているような超常磁性固体粒子や、γ・Fe、二酸化クロム、各種フェライト(スピネル型フェライト(マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライト及び銅亜鉛フェライト等)、マグネトプランバイト型フェライト(バリウムフェライト及びストロンチウムフェライト等)、ガーネット型フェライト(イットリウム鉄ガーネットフェライト等)等)等が使用できる。また磁性粒子の形状、結晶性等についても特に制約はない。
【0011】
金属酸化物粒子(A)の大きさには特に限定されないが、金属酸化物粒子(A)の一次粒子の数平均粒径(μm)は、0.01〜10が好ましく、さらに好ましくは0.03〜8、特に好ましくは0.05〜5μmである。なお、金属酸化物粒子の一次粒子の数平均粒径は、JIS Z8825−1:2001に準拠して測定された粒子径分布の測定値を用いて、JIS Z8819−2:2001に規定される方法でその数平均粒子径(個数規準算術平均長さ径)を求める。測定装置としては、特に制約はないが、例えば株式会社堀場製作所製のレーザ解析/散乱式粒度分布測定装置LA−950V2等を用いて測定される。また、測定に使用する金属酸化物粒子の測定試料は、JIS Z8824:2004に準じて一次粒子にまで分散させた状態で測定する。測定溶媒は、水及び/又はエタノール等が使用でき、測定濃度は0.1〜5重量%程度であり、測定温度は15〜40℃程度である。測定データの処理は、測定装置付属のコンピューターにて自動で行われる。
【0012】
金属酸化物粒子(A)の形状としては特に限定はされないが、針状形状が好ましいが、球状や回転楕円体状(紡錘状)、多面体状又は不定形状等の形状であってもよい。
【0013】
水性液体(B)としては、水及び水溶液(水性溶媒と水とからなる水溶液)が含まれる。
水性溶媒としては、モノオール(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール及び1−ブタノール等)、ポリオール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビット及びソルビタン等)、グリコールエーテル(メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、カルビトール及びブチルカルビトール等)、グリコールエステル(メチルセロソルブアセテート及びセロソルブアセテート等)、ケトン(アセトン及びメチルエチルケトン等)、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン等)、その他の極性溶媒(ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン及びジメチルスルホオキシド等)及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0014】
水性液体(B)が水溶液である場合、水性溶媒の含有量(重量%)は水性液体(B)の重量に基づいて、1〜80が好ましく、さらに好ましくは3〜60、特に好ましくは5〜50である。
【0015】
凝集防止剤(C)としては、その構造にリン原子を含有する化合物(リン原子含有化合物)であれば、特に限定はされないが、酸性リン化合物及び/又はこの塩であることが望ましい。
【0016】
酸性リン酸化合物とは、水溶液中でのpHが7未満であるリン酸化合物である。
pHは、JIS K0400−12−10:2000に準拠して(5重量%水溶液、25℃)で測定される。
【0017】
酸性リン酸化合物及び/又はこの塩としては、リン酸、ピロリン酸、メタリン酸、リン酸エステル、ホスホン酸、ジホスホン酸、トリホスホン酸、テトラホスホン酸、ペンタホスホン酸、モノホスホン酸、ホスホン酸エステル、ホスフィン酸、ジホスフィン酸、モノホスフィン酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が含まれる。
【0018】
リン酸エステルとしては、リン酸エチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸ジイソオクチル、リン酸ジエチル、リン酸ジフェニル、リン酸ジ−n−ブチル、リン酸ラウリル、リン酸オレイル、リン酸ベヘニル及びブタノールエチレンオキシド3モル付加物のリン酸エステル等が挙げられる。
【0019】
ジホスホン酸としては、メチレンジホスホン酸、エチレンジホスホン酸、エチリデンジホスホン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ブチレン−1,1−ジホスホン酸及びフェニレン−1,4−ジホスホン酸等が挙げられる。
【0020】
トリホスホン酸としては、ニトリロトリスエチレンホスホン酸<N(CHCHPO(OH)>及び1,3,5−トリ(ホスホノメチル)ペンタン<(HO)P(O)−CH−)>等が挙げられる。
【0021】
テトラホスホン酸としては、1,2,3,4−テトラ(ホスホノエチル)シクロヘキサン<((HO)P(O)−CHCH−)10>及びエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸){N,N,N’,N’−テトラキス(ホスホノメチル)エチレンジアミン<((HO)P(O)−CH−)NCHCHN(−CH−PO(OH)>}等が挙げられる。
【0022】
ペンタホスホン酸としては、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸){N,N,N’,N’,N”−ペンタキス(ホスホノエチル)ジエチレントリアミン<((HO)P(O)−CH−)NCHCHN(−CH−PO(OH))CHCHN(−CH−PO(OH)>}等が挙げられる。
【0023】
モノホスホン酸としては、メチルホスホン酸、ペンチル−1−ホスホン酸、2−メチルヘキシル−1−ホスホン酸、フェニルホスホン酸、アミドメチルホスホン酸及びクロロ(フェニル)ホスホン酸等が挙げられる。
【0024】
ホスホン酸エステルとしては、ホスホン酸メチル、ホスホン酸ヘキシル、ホスホン酸フェニル、ホスホン酸オレイル及びラウリルアルコールエチレンオキシド5モル付加物のホスホン酸エステル等が挙げられる。
【0025】
ジホスフィン酸としては、メチレンジホスフィン酸及びブチレンジホスフィン酸等が挙げられる。
【0026】
モノホスフィン酸としては、エチルホスフィン酸、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、メチル−n−プロピレンホスフィン酸、メタンジ(メチルホスフィン酸)、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)、メチルフェニルホスフィン酸及びジフェニルホスフィン酸等が挙げられる。
【0027】
これらの塩としては、上記の化合物のアルカリ金属(ナトリウム及びカリウム等)塩、アルカリ土類金属(マグネシウム及びカルシウム等)塩、アンモニウム塩、アミン(メチルアミン、ジメチルアミン、ラウリルアミン、オレイルアミン、エチレンジアミン、フェニルアミン、ジエチレントリアミン、シクロヘキシルアミン)塩、又はヒドロキシアミン(エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−1−ブタノール及び4−アミノ−1−オクタノール等)塩が含まれる。これらのうち、アルカリ金属塩、アミン塩及びヒドロキシアミン塩が好ましく、さらに好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、炭素数2〜12のアミン塩及び炭素数2〜12のヒドロキシアミン塩、特に好ましくはナトリウム塩、カリウム塩及び炭素数2〜10のヒドロキシアミン塩である。
【0028】
これらのうち、リン酸、ピロリン酸、リン酸エステル、ホスホン酸、ジホスホン酸、アルキルホスホン酸、ホスフィン酸、ジホスフィン酸及びこれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、さらに好ましくはピロリン酸、リン酸エステル、ジホスホン酸、ジホスフィン酸及びこれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0029】
凝集防止剤(C)が酸性リン化合物の塩である場合、この塩は、酸性リン化合物とアルカリとの中和反応から得られる。
アルカリとしては、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等)、アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウム等)、アンモニア、アミン(メチルアミン、ジメチルアミン、ラウリルアミン、オレイルアミン、エチレンジアミン、フェニルアミン、ジエチレントリアミン及びシクロヘキシルアミン等)及びヒドロキシアミン(エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−1−ブタノール及び4−アミノ−1−オクタノール等)等が挙げられる。これらのうち、アルカリ金属の水酸化物、アミン及びヒドロキシアミンが好ましく、さらに好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭素数2〜12のアミン及び炭素数2〜12のヒドロキシアミン、特に好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び炭素数2〜10のヒドロキシアミン類である。
【0030】
凝集防止剤(C)が酸性リン化合物とアルカリとの塩である場合、公知の方法により中和でき、水性液体(B)等で希釈してから中和することもできる。水性液体(B)等を使用する場合、酸性リン化合物の濃度は10〜80重量%程度である。また、中和温度は、通常20〜40℃(発熱が激しい場合冷却しながら)程度である。また、中和度は目的とする分散体のpHに合わせて適時選択すれば良いが、腐食性や安全性を考慮すると、通常pH5〜8となるような中和度に調整するのが好ましい。
【0031】
金属酸化物粒子(A)と凝集防止剤(C)との含有重量比(A:C)は特に限定されないが、分散安定性の観点から、100:0.01〜50が好ましく、さらに好ましくは100:0.05〜35、特に好ましくは100:0.1〜30であることが最も望ましい。
【0032】
金属酸化物粒子(A)の含有量(重量%)は特に限定されないが、分散体としての作業性の観点から適切な粘度を保持するために、金属酸化物粒子(A)、水性液体(B)及び凝集防止剤(C)の重量に基づいて、10〜90が好ましく、さらに好ましくは15〜85、特に好ましくは20〜80である。
【0033】
水性液体(B)の含有量(重量%)は特に限定されないが、金属酸化物粒子(A)、水性液体(B)及び凝集防止剤(C)の重量に基づいて、1〜90が好ましく、さらに好ましくは5〜70、特に好ましくは8〜60である。
【0034】
凝集防止剤(C)の含有量(重量%)は特に限定されないが、金属酸化物粒子(A)、水性液体(B)及び凝集防止剤(C)の重量に基づいて、0.001〜30が好ましく、さらに好ましくは0.05〜25、特に好ましくは0.1〜20である。
【0035】
本発明の分散体には、その目的に応じて公知の添加剤{以下の各種の色素(色剤)、樹脂等}を含有させることができる。
(1)色剤
分散染料、酸性染料、直接染料、塩基性染料、各種有機又は無機顔料等
(2)水性樹脂
アクリル樹脂、アクリル−スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、アクリル変成アルキド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ヘキサメチロールメラミン樹脂、尿素−ホルムアルデヒド縮合物、尿素−メラミン共縮合物等
(3)増粘剤
ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム等
(4)湿潤剤
(5)紫外線吸収剤
(6)酸化防止剤
(7)防かび剤
(8)消泡剤
(9)乾燥防止剤
(10)耐水性付与剤
(11)にじみ防止剤
(12)ハジキ防止剤
(13)その他界面活性剤
【0036】
添加剤を含有させる場合、これらの添加量(重量%)は特に限定されないが、金属酸化物粒子(A)、水性液体(B)及び凝集防止剤(C)の重量に基づいて、0.1〜40が好ましく、さらに好ましくは1〜30である。
【0037】
本発明の分散体は、公知の分散方法を用いて製造できる。分散機にも特に制約はなく、一般に使用される混合機や分散機を適用でき、ペイントシェーカー、ホモミクサー、ディスパー等の一般分散機の他、ロールミル、ボールミル、遠心ミル、遊星ボールミル等の容器駆動媒体ミル、サンドミル等の高速回転ミル、攪拌槽型ミル等の媒体攪拌ミル等を使用できる。
【0038】
本発明の分散体の粘度は特に制約はないが、一般に低粘度であることが好ましく、さらに好ましくは25℃の回転粘度が0.2〜1000mPa・s、特に好ましくは0.5〜800mPa・s、最も好ましくは1〜500mPa・sである。また、特にインクジェットプリンタ用のインク等として使用する場合、その印字性や目詰まり防止のため、回転粘度(25℃)は0.4〜10mPa・sが好ましく、さらに好ましくは1〜7mPa・sである。なお、インクジェット用インクとして使用される場合のインクジェット方式についても特に制約はなく、公知の方式に適用可能である。
回転粘度はJIS R1652:2003(ブルックフィールド形単一円筒回転粘度計)に準拠して測定される。
【0039】
また、分散体のpHは一般には中性付近であることが好ましいが、特にインクジェットプリンタ用のインク等として使用される場合には、ヘッドの腐食防止や分散安定性保持の観点から、そのpHは6〜10であることが好ましく、7〜9であることがさらに好ましい。pHを上記範囲とするために、分散体の性能を阻害しない範囲で公知のpH調整剤等を添加してもよい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
金属酸化物粒子(A)及び水性液体(B)と、凝集防止剤(C)又は比較凝集防止剤(HC)とを用い、攪拌脱泡機(株式会社シンキー、AR−250型)にて5分間攪拌脱泡して、実施例1〜24の分散体、並びに比較例1〜5の分散体を得た。実施例及び比較例の配合比率をそれぞれ表1〜4に示す(表中の数字は重量部である)。
【0042】
<金属酸化物粒子(A)>
(A1)四酸化三鉄(Fe)(LA−950V2(株式会社堀場製作所製)による数平均粒子径測定値=4.3μm、以下同じ)(試薬1級、ナカライテスク株式会社製;以下特記しない限り同じ)
(A2)酸化クロム(III)(Cr)(数平均粒子径=2μm)
【0043】
<水性液体(B)>
(B1)水(脱イオン水)
(B2)エタノール
【0044】
<凝集防止剤(C)>
(C1)リン酸
(C2a)ピロリン酸
(C2b)ピロリン酸ナトリウム
(C3)ラウリルリン酸エステル
(C4)ホスホン酸
(C5a)メチレンジホスホン酸
(C5b)メチレンジホスホン酸カリウム
(C6a)ニトリロトリスエチレンホスホン酸
(C6b)ニトリロトリスエチレンホスホン酸アンモニウム
(C7)フェニルホスホン酸
(C8)ホスフィン酸
(C9)ブチレンジホスフィン酸
(C−10)メタリン酸
(C−11a)エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)
(C−11b)エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)カリウム
(C−12a)ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)
(C−12b)ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)アンモニウム
(C−13)ホスホン酸メチル
(C−14a)メチレンジホスフィン酸
(C−14b)メチレンジホスフィン酸ナトリウム
(C−15)メチルフェニルホスフィン酸
【0045】
<比較凝集防止剤(HC)>
(HC1)ポリアクリル酸ナトリウム(製品名「ノプコスパース44−C」、サンノプコ株式会社製、「ノプコスパース」は同社の登録商標である)
(HC2)ポリエチレングリコール(製品名「PEG−1000」、三洋化成工業株式会社製)
【0046】
【表1】



A:Cは、金属酸化物粒子(A)100に対する凝集剤(C)の含有比率である(以下同様)。
【0047】
【表2】



【0048】
【表3】



【0049】
【表4】



【0050】
実施例及び比較例で得た分散体について、分散安定性(初期、1週間放置後)、凝集性及び回転粘度を以下の方法で評価した。これらの結果を表5に示す。
【0051】
<分散安定性>
分散体100gを、直径1cm、高さ20cmの試験管に入れ密閉して、1時間室温(約25℃)にて放置した後、生じた上澄み部分の液全体の高さに対する割合(%)を求め、初期分散安定性とした。その後、そのまま60℃の恒温乾燥機に1週間放置した後、同様に生じた上澄み部分の液全体の高さに対する割合(%)を求め、1週間放置後の分散安定性とした。値が大きいほど分散安定性が悪いことを意味する(0%は、分離が全く発生していないことを意味する)。
【0052】
<凝集性>
上記分散安定性の評価において、60℃で1週間放置した後に沈降した凝集物の固さを、触感にて以下の判定基準で判定した(再分散は試験管の上下を穏やかに数回(○容易)又は激しく数十回(△困難)反転させることによる)。
◎:沈降物発生なし
○:発生した沈降物が柔らかく、容易に再分散できた
△:発生した沈降物がやや固く、再分散が困難
×:発生した沈降物が固く、再分散できない
【0053】
<回転粘度>
分散体の25℃における粘度を、BM型粘度計を用いて測定し分散体の粘度(mPa・s)とした。「調製直後」は分散体を調製した直後に測定した値であり、「放置後」は60℃で1週間放置した後の値である。なお、分離しているものは約5分間再度、攪拌脱泡して均一にしてから測定した。値が大きいほど粘度が高い(=不良)であることを示す。
【0054】
【表5】




【0055】
表5から明らかなように、本発明の分散体は、比較用の分散体に比べて、分散安定性に優れ、しかも低粘度であった。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物粒子(A)、水性液体(B)及び凝集防止剤(C)を含んでなる分散体であって、凝集防止剤(C)がリン原子含有化合物であることを特徴とする分散体。
【請求項2】
凝集防止剤(C)が、酸性リン化合物及び/又はこの塩である請求項1に記載の分散体。
【請求項3】
凝集防止剤(C)が、リン酸、ピロリン酸、メタリン酸、リン酸エステル、ホスホン酸、ジホスホン酸、トリホスホン酸、テトラホスホン酸、ペンタホスホン酸、モノホスホン酸、ホスホン酸エステル、ホスフィン酸、ジホスフィン酸、モノホスフィン酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の分散体。
【請求項4】
金属酸化物粒子(A)が、二〜七価の金属原子を含んで構成される請求項1〜3のいずれかに記載の分散体。
【請求項5】
金属酸化物粒子(A)の1次粒子の数平均粒径が0.01〜10μmである請求項1〜4のいずれかに記載の分散体。
【請求項6】
金属酸化物粒子(A)と凝集防止剤(C)との含有重量比(A:C)が100:0.01〜50である請求項1〜5のいずれかに記載の分散体。
【請求項7】
金属酸化物粒子(A)の含有量が、金属酸化物粒子(A)、水性液体(B)及び凝集防止剤(C)の重量に基づいて、10〜90重量%である請求項1〜6のいずれかに記載の分散体。



【公開番号】特開2011−219611(P2011−219611A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89802(P2010−89802)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000106438)サンノプコ株式会社 (124)
【Fターム(参考)】