説明

金属酸化物粒子分散組成物

【課題】成膜後の金属酸化物粒子の緻密性を改善することができ、所望の性能を有する金属酸化物半導体薄膜や透明導電膜を形成することが可能な金属酸化物粒子分散組成物を提供する。
【解決手段】金属酸化物粒子と、金属塩及び/又は有機金属化合物と、溶媒とを含有する透明導電膜形成用の金属酸化物粒子分散組成物であって、前記金属酸化物粒子は、Zn、Ga、In、Sn、Al、Sb、Cd及びFeからなる群より選択される少なくとも1種の金属の酸化物を含有し、かつ、前記金属塩及び/又は有機金属化合物は、Zn、Ga、In、Sn、Al、Sb、Cd及びFeからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属塩及び/又はZn、Ga、In、Sn、Al、Sb、Cd及びFeからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む有機金属化合物である金属酸化物粒子分散組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜後の金属酸化物粒子の緻密性を改善することができ、所望の性能を有する金属酸化物半導体薄膜や透明導電膜を形成することが可能な金属酸化物粒子分散組成物に関する。更に、本発明は、該金属酸化物粒子分散組成物を用いた透明導電膜及び薄膜トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属酸化物の微細化技術の進歩とともに多くの金属酸化物が製造され、透明電極、帯電防止剤等の種々の用途に用いられている。例えば、酸化スズにインジウムをドープしたITOは、プラズマディスプレイパネル、液晶ディスプレイパネル等を製造するための透明電極材料として注目されている。
従来、これらの金属酸化物を用いて金属酸化物薄膜や金属酸化物半導体薄膜を形成する方法としては、例えば、特許文献1に記載のように、真空蒸着やスパッタリングが用いられていた。より具体的には、透明電極を形成する場合、真空蒸着により金属酸化物を基材表面へ付着させ、光反応性材料を用いて現像したり、マスキングを施したりすることによって、電極パターンを形成する方法が用いられていた。
しかし、真空蒸着等の物理的方法は、真空化に要する時間がかかり、また、装置を厳密に制御する必要があった。また、特殊な加熱装置やイオン発生加速装置等が必要となり、大型の製品を作製する場合には、複雑で大型の製造装置を要していた。従って、大規模な製造施設を要することなく、量産性に優れた生産効率の良い代替方法が望まれていた。
【0003】
このような問題を解決するため、印刷法でも透明電極を製造可能な透明導電材料が検討されている。例えば、特許文献2には、塗布型の透明導電材料として金属酸化物ナノ粒子を用いた透明導電材料、及び、該透明導電材料を用いた透明導電膜が記載されている。
しかしながら、得られる透明導電膜は、表示素子等に適用可能な程度に充分な透明性を有するものではなかった。
【0004】
また、金属酸化物半導体薄膜を形成する方法の量産性に優れた代替方法として、例えば、特許文献3には、平均粒子径が50nm以下の金属酸化物ナノ粒子を含有するナノ粒子分散液を用いて、半導体薄膜層を形成する方法が開示されている。
この方法では、低コストで簡便に半導体薄膜層を製造することができるとしているが、金属酸化物ナノ粒子を用いるのみでは、実際の半導体薄膜層の製造に用いた場合に、粒子間の融合が不充分となり、所望の性能を有する半導体薄膜層を安定して製造することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2005/088726号パンフレット
【特許文献2】特開平6−12920号公報
【特許文献3】特開2007−42690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、成膜後の金属酸化物粒子の緻密性を改善することができ、所望の性能を有する金属酸化物半導体薄膜や透明導電膜を形成することが可能な金属酸化物粒子分散組成物を提供することを目的とする。更に、本発明は、該金属酸化物粒子分散組成物を用いた透明導電膜及び薄膜トランジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、金属酸化物粒子と、金属塩及び/又は有機金属化合物と、溶媒とを用いて得られる透明導電膜形成用の金属酸化物粒子分散組成物であって、前記金属酸化物粒子は、Zn、Ga、In、Sn、Al、Sb、Cd及びFeからなる群より選択される少なくとも1種の金属の酸化物を含有し、かつ、前記金属塩及び/又は有機金属化合物は、Zn、Ga、In、Sn、Al、Sb、Cd及びFeからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属塩及び/又はZn、Ga、In、Sn、Al、Sb、Cd及びFeからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む有機金属化合物である金属酸化物粒子分散組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、所定の金属を含有し、かつ、金属酸化物粒子に、所定の金属塩及び/又は有機金属化合物を加えて分散させた金属酸化物粒子分散組成物を用いて金属酸化物薄膜を作製した場合、所望の特性を有する透明導電膜及び薄膜トランジスタを簡便に製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の金属酸化物粒子分散組成物では、金属酸化物粒子を用いる。
上記金属酸化物粒子は、平均粒子径が1〜100nmが好ましい。平均粒子径が1nm未満の粒子は製造が困難であり、平均粒子径が100nmを超えると、得られる金属酸化物粒子分散組成物を用いて印刷しても、所望の膜厚、平滑性等を有する金属酸化物薄膜を製造することが難しい。
【0010】
本発明において、金属酸化物粒子は、Zn、Ga、In、Sn、Al、Sb、Cd及びFeからなる群より選択される少なくとも1種の金属の酸化物を含有するものである。
具体的には例えば、酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄及びこれらに他の金属をドープした金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。特に、酸化インジウム−酸化ガリウム−酸化亜鉛(IGZO)、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO)、酸化亜鉛−酸化スズ(ZTO)、酸化亜鉛(ZO)が好ましい。
また、酸化インジウム−酸化スズ−酸化亜鉛(ITZO)、酸化インジウム−酸化スズ(ITO)、酸化ガリウム−酸化亜鉛(GZO)等を用いてもよい。
【0011】
上記金属酸化物粒子は、結晶性粒子であることが好ましい。上記結晶性粒子とは、アモルファス粒子とは異なり、粒子を構成する金属が規則性を有していることを意味する。上記結晶性粒子である場合の構造は特に限定されず、例えば、単結晶、複数の結晶組成が相分離した混晶、相分離の観察されない混合結晶の何れでもよい。
【0012】
特に、本発明の金属酸化物粒子分散組成物を薄膜トランジスタの製造に使用する場合は、上記金属酸化物粒子として、金属酸化物半導体粒子を用いる。これにより、所望の性能を有する金属酸化物半導体薄膜を形成することができる。
なお、上記金属酸化物半導体粒子とは、上記金属酸化物粒子のうち、半導体特性を有するものをいう。また、上記半導体特性の指標としては、電子の移動のしやすさを示す値である移動度を用いることができる。一般的には移動度が高いほど半導体特性に優れていると言える。
【0013】
本発明の金属酸化物粒子分散組成物において、上記金属酸化物粒子の添加量の好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は70重量%である。上記金属酸化物粒子の添加量が0.1重量%未満であると、得られる金属酸化物粒子分散組成物を用いて製膜した場合に、均一な薄膜を製造できないことがある。上記金属酸化物粒子の添加量が70重量%を超えると、得られる金属酸化物粒子分散組成物において、上記金属酸化物粒子の分散安定性が充分に得られないことがある。
【0014】
上記金属酸化物粒子を製造する方法としては特に限定されず、噴霧火炎熱分解法、CVD法、PVD法、粉砕法等の乾式法や、還元法、マイクロエマルション法、水熱反応法、ゾルゲル法等の湿式法等が適用可能である。
【0015】
本発明の金属酸化物粒子分散組成物では、Zn、Ga、In、Sn、Al、Sb、Cd及びFeからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属塩及び/又はZn、Ga、In、Sn、Al、Sb、Cd及びFeからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む有機金属化合物を用いる。
上記金属塩及び/又は有機金属化合物を用いることで、成膜後の粒界が緻密化し、特性の向上が可能となる。
【0016】
上記金属塩としては、例えば、Zn、Ga、In、Sn、Al、Sb、Cd及びFeからなる群より選択される少なくとも1種の金属の塩化物、オキシ塩化物、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、アンモニウム塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、水酸化物、過酸化物等が挙げられる。また、上記金属塩の水和物も含まれる。
具体的には、例えば、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、塩化ガリウム、硝酸ガリウム八水和物、塩化インジウム、硝酸インジウム三水和物、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化スズ、硝酸スズ、塩化アンチモン、硝酸アンチモン、塩化カドミウム、硝酸カドミウム四水和物、塩化鉄、硝酸鉄六水和物、硝酸鉄九水和物等が挙げられる。
【0017】
上記有機金属化合物としては、例えば、Zn、Ga、In、Sn、Al、Sb、Cd及びFeからなる群より選択される少なくとも1種の金属のカルボン酸、ジカルボン酸、オリゴカルボン酸、ポリカルボン酸の塩化合物が挙げられる。より具体的には、上述した金属の酢酸、ギ酸、プロピオン酸、オクチル酸、ステアリン酸、シュウ酸、クエン酸、乳酸等の塩化合物等が挙げられる。また、メチル基、エチル基等の置換基を有するアルキル金属、アセチルアセトネート、テトラメチルアセトアセトネート、エチレンジアミン、ビピリジン等が配位結合した金属錯体等が挙げられる。
上記有機金属化合物としては、具体的には例えば、酢酸亜鉛二水和物、亜鉛アセチルアセトン塩、オクチル酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ガリウムアセチルアセトン塩、オクチル酸ガリウム、ステアリン酸ガリウム、酢酸ガリウム、酢酸インジウム、インジウムアセチルアセトン塩、オクチル酸インジウム、ステアリン酸インジウム、スズアセチルアセトン塩、酢酸スズ、アルミニウムアセチルアセトン塩、酢酸アルミニウム、酢酸アンチモン、酢酸カドミウム、酢酸鉄等が挙げられる。
【0018】
本発明の金属酸化物粒子分散組成物において、上記金属塩及び/又は有機金属化合物の添加量の好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は30重量%である。上記金属塩及び/又は有機金属化合物の添加量が0.1重量%未満であると、得られる金属酸化物粒子分散組成物を用いて製膜した場合に、均一な薄膜を製造できないことがある。上記金属塩及び/又は有機金属化合物の添加量が30重量%を超えると、得られる金属酸化物粒子分散組成物において、上記金属酸化物粒子の分散安定性が充分に得られないことがある。
【0019】
また、本発明の金属酸化物粒子分散組成物には、更に、Zn、Ga、In、Sn、Al、Sb、Cd及びFeからなる群より選択される少なくとも1種の金属からなる粒子を添加してもよい。これにより、粒子界面の抵抗を低減する等により、特性の向上が可能となる。
【0020】
本発明の金属酸化物粒子分散組成物では、溶媒を用いる。
上記溶媒は水であってもよく、有機溶剤であってもよいが、有機溶剤が好ましい。
上記有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、シクロヘキサノール、テルピネオール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、アセトン、エチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ベンジル等のエステル類、メトキシエタノール、エトキシエタノール等のエーテルアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド等の酸アミド類、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ドデシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、トリメチルペンタン等の長鎖アルカン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン等の環状アルカン等が挙げられる。
【0021】
本発明の金属酸化物粒子分散組成物は、更にバインダー樹脂を適量添加してもよい。上記バインダー樹脂を添加することにより、グラビア印刷等に更に適したものとすることができる。
上記バインダー樹脂は特に限定されないが、例えば、セルロース樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。なかでも、セルロース樹脂が特に好ましい。
【0022】
上記セルロース樹脂は特に限定されないが、例えば、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、が好ましい。
上記ポリエーテル樹脂は特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
上記ポリアセタール樹脂は特に限定されないが、上記ポリエーテル樹脂と同様にエチレン、プロピレン、テトラメチレン等のユニットを有するポリアセタール樹脂が好ましい。
【0023】
上記(メタ)アクリル樹脂として、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリルモノマーの単独重合体、及び、これらの(メタ)アクリルモノマーとポリオキシアルキレン構造を有する(メタ)アクリルモノマーとの共重合体が挙げられる。上記ポリオキシアルキレン構造として、例えば、ポリプロピレンオキシド、ポリメチルエチレンオキシド、ポリエチルエチレンオキシド、ポリトリメチレンオキシド、ポリテトラメチレンオキシドが挙げられる。なお、本明細書中、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
【0024】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、アルデヒドによりポリビニルアルコールをアセタール化することで得られるポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。
上記ポリビニルアルコールは、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のビニルエステルの重合体をケン化することで得られるポリビニルアルコールであることが好ましい。上記ビニルエステルは、経済的にみると、酢酸ビニルであることがより好ましい。
【0025】
本発明の金属酸化物粒子分散組成物において、上記バインダー樹脂の添加量の好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は20重量%である。上記バインダー樹脂の添加量が0.1重量%未満であると、バインダー樹脂の添加による増粘効果が充分に得られないことがある。上記バインダー樹脂の添加量が20重量%を超えると、成膜後の性能が低下することがある。
【0026】
本発明の金属酸化物粒子分散組成物を製造する方法は特に限定されず、例えば、金属酸化物粒子、金属塩及び/又は有機金属化合物並びに溶媒に、必要に応じて、バインダー樹脂及び種々の添加剤を添加し、3本ロールミル等を用いて更に分散処理を行う方法が挙げられる。また、上記金属酸化物粒子、金属塩及び/又は有機金属化合物並びに溶媒を、ビーズミル、ボールミル、ブレンダーミル、3本ロールミル等の混合機を用いて混合した後、更に上記バインダー樹脂を添加して上記混合機により混合してもよい。
更に、上記金属塩及び/又は有機金属化合物は、直接添加してもよく、溶液とした後に添加してもよい。
【0027】
本発明の金属酸化物粒子分散組成物を所定の印刷工程を用いて印刷した後、乾燥又は焼結等の工程を行うことで、金属酸化物薄膜を形成することができる。このような金属酸化物薄膜を用いた透明導電膜もまた本発明の1つである。
本発明の透明導電膜を製造する方法としては、特に、本発明の金属酸化物粒子分散組成物を印刷する工程、及び、紫外線を照射することにより、前記金属酸化物粒子分散組成物を乾燥又は焼結する工程を有する方法を用いることが好ましい。
【0028】
本発明の金属酸化物粒子分散組成物の用途としては特に限定されないが、例えば、プラズマディスプレイパネル、液晶ディスプレイパネル、太陽電池等の透明電極として形成される金属酸化物薄膜を製造するための材料として用いることができる。
【0029】
また、本発明の金属酸化物粒子分散組成物として、金属酸化物半導体粒子分散組成物を用いた場合、本発明の金属酸化物粒子分散組成物を所定の印刷工程を用いて印刷した後、乾燥又は焼結等の工程を行うことで、金属酸化物半導体薄膜を形成することができる。このような金属酸化物半導体薄膜を用いた薄膜トランジスタもまた本発明の1つである。
【0030】
本発明の金属酸化物粒子分散組成物を印刷(塗工)する方法としては、例えば、スピンコート法、スプレー法、浸漬法、ロールコート法、スクリーン印刷法、コンタクトプリント法、スリットコート法、インクジェット法(インクジェット印刷法)等が挙げられる。上記印刷は、所望の膜厚を得ることができれば、一度塗りでもよく、重ね塗りでもよい。
【0031】
上記乾燥又は焼結する方法は特に限定されず、例えば、赤外線加熱、マイクロ波加熱、高周波加熱など既知の活性光線やエネルギー線による処理が挙げられるが、紫外線を照射することで乾燥又は焼結を行うことが好ましい。
上記紫外線を照射により乾燥又は焼結を行うことで、基板等の他部材の温度上昇を抑えて乾燥又は焼結を行うことが可能となる。また、必要に応じて、不活性雰囲気で上記処理を行ってもよい。
【0032】
上記紫外線の照射により乾燥又は焼結を行う場合、エキシマレーザを用いて紫外線を照射することが好ましい。
特に、ArF(193nm)、KrCl(222nm)、XeF(351nm)、XeCl(308nm)、KrF(248nm)、F(157nm)、Ar(126nm)、Kr(146nm)、Xe(172nm)等のエキシマレーザを用いた場合、赤外線や可視光線等の紫外線以外の長波長光が非常に少ないために基板等の他部材の温度上昇を抑えて乾燥又は焼結を行うことが可能となり、例えば、プラスチック製基板を用いる場合等でも好適に乾燥又は焼結する工程を行うことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、成膜後の金属酸化物粒子の緻密性を改善することができ、所望の性能を有する金属酸化物半導体薄膜や透明導電膜を形成することが可能な金属酸化物粒子分散組成物を提供することができる。更に、本発明は、該金属酸化物粒子分散組成物を用いた透明導電膜及び薄膜トランジスタを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0035】
(実施例1)
(金属酸化物粒子の製造)
エタノールに、亜鉛の含有量がそれぞれ0.07mol/Lとなるように硝酸亜鉛を添加し、3Lの噴霧溶液を調製した。
次いで、得られた噴霧溶液を、二流体ノズルを用いて1000℃の火炎中に噴霧、熱分解させた。ノズルエア流量は25m/min、キャリアエア流量は20m/min、原液噴霧量は1.6kg/hとした。生成した粉体はバグフィルターで回収した。
なお、得られた粉体のBET比表面積をマイクロメトリックス フローソーブ2300を用いて測定したところ、43m/gであった。また、RINT−1000(リガク社製)を用いてXRD測定を行ったところ、酸化亜鉛(ZnO)を含有する金属酸化物粒子であることが確認できた。
更に、平均粒子径を走査型電子顕微鏡を用いて測定したところ、約15nmであった。
【0036】
(金属酸化物粒子分散組成物の製造)
得られた金属酸化物粒子10gを、メタノール40gに酢酸亜鉛二水和物5gを溶解した溶液に添加した後、超音波洗浄機にて分散処理を行うことにより、金属酸化物粒子分散組成物を得た。
【0037】
(実施例2)
(金属酸化物粒子の製造)
蒸留水に、アルミニウム、亜鉛の含有量がそれぞれ0.001及び0.04mol/Lとなるように硝酸アルミニウム、硝酸亜鉛を添加し、500mLの混合溶液を調製した。
次いで、得られた混合溶液に、0.4mol/Lのアンモニア水を滴下し、沈殿を生成させた。これを水洗し、200mLのオートクレーブを使用して180℃、2気圧で1時間処理することにより、粒子を得た。
なお、得られた粒子のBET比表面積をマイクロメトリックス フローソーブ2300を用いて測定したところ、28m/gであった。また、RINT−1000(リガク社製)を用いてXRD測定を行ったところ、酸化アルミニウム−酸化亜鉛(AZO)を含有する金属酸化物粒子であることが確認できた。
更に、平均粒子径を走査型電子顕微鏡を用いて測定したところ、約50nmであった。
【0038】
(金属酸化物粒子分散組成物の製造)
得られた金属酸化物粒子10gを、メタノール40gに酢酸亜鉛二水和物4gを溶解した溶液に添加した後、超音波洗浄機にて分散処理を行うことにより、金属酸化物粒子分散組成物を得た。
【0039】
(比較例1)
実施例1の(金属酸化物粒子分散組成物の製造)において、酢酸亜鉛二水和物を添加しなかった以外は実施例1と同様にして金属酸化物粒子分散組成物を作製した。
【0040】
(比較例2)
実施例2の(金属酸化物粒子分散組成物の製造)において、酢酸亜鉛二水和物を添加しなかった以外は実施例2と同様にして金属酸化物粒子分散組成物を作製した。
【0041】
(比較例3)
実施例1の(金属酸化物粒子分散組成物の製造)において、金属酸化物粒子を添加しなかった以外は実施例1と同様にして金属酸化物粒子分散組成物を作製した。
【0042】
<評価>
実施例及び比較例で得られた金属酸化物粒子分散組成物について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0043】
(導電性)
[薄膜1の作製]
ガラス基板に、実施例及び比較例で得られた金属酸化物粒子分散組成物をスピンコーターを用いて塗布し、500℃で30分間熱処理することにより、厚さ約250μmの薄膜1を作製した。
【0044】
[薄膜2の作製]
ポリエチレンテレフタレート(PET)基板に、実施例及び比較例で得られた金属酸化物粒子分散組成物をスピンコーターを用いて塗布し、ArFエキシマパルスレーザー(Lamda Physik社製、COMPex 102、193nm)で20Hz、1分間処理することにより、厚さ約300μmの薄膜2を作製した。
【0045】
[表面抵抗の測定]
得られた薄膜1及び薄膜2の表面抵抗を表面抵抗計ロレスタAP(MCP−T400、三菱化学社製)を用いて測定した。
【0046】
(透明性)
「(導電性)」で得られた薄膜1及び薄膜2の全光線透過率とヘイズ値を測定した。なお、全光線透過率及びヘイズ値は、ヘイズメーター(HR−200、村上色彩技術研究所社製)を用いて測定した。
【0047】
【表1】

【0048】
表1に示すように、実施例で得られた金属酸化物粒子分散組成物を用いた薄膜では、比較例で得られた金属酸化物粒子分散組成物を用いた薄膜と比べて高い導電性が認められた。
なお、実施例で得られた金属酸化物粒子分散組成物を用いた薄膜2では、PET基板の劣化は認められなかった。
【0049】
(実施例3)
(金属酸化物半導体粒子の製造)
エタノールに、インジウム、ガリウム、亜鉛の含有量がそれぞれ0.07mol/Lとなるように硝酸インジウム、硝酸ガリウム、硝酸亜鉛を添加し、3Lの噴霧溶液を調製した。
次いで、得られた噴霧溶液を、二流体ノズルを用いて1000℃の火炎中に噴霧、熱分解させた。ノズルエア流量は25m/min、キャリアエア流量は20m/min、原液噴霧量は1.6kg/hとした。生成した粉体はバグフィルターで回収した。
なお、得られた粉体のBET比表面積をマイクロメトリックス フローソーブ2300を用いて測定したところ、43m/gであった。また、RINT−1000(リガク社製)を用いてXRD測定を行ったところ、酸化インジウム−酸化ガリウム−酸化亜鉛(IGZO)を含有する金属酸化物半導体粒子であることが確認できた。
更に、平均粒子径を走査型電子顕微鏡を用いて測定したところ、約20nmであった。
【0050】
(金属酸化物半導体粒子分散組成物の製造)
得られた金属酸化物半導体粒子10gを、メタノール40gに酢酸亜鉛二水和物4g、硝酸インジウム三水和物7g、硝酸ガリウム八水和物8gを溶解した溶液に添加した後、超音波洗浄機にて分散処理を行うことにより、金属酸化物半導体粒子分散組成物を得た。
【0051】
(実施例4)
(金属酸化物半導体粒子の製造)
蒸留水に、インジウム、ガリウム、亜鉛の含有量がそれぞれ0.04mol/Lとなるように硝酸インジウム、硝酸ガリウム、硝酸亜鉛を添加し、500mLの混合溶液を調製した。
次いで、得られた混合溶液に、0.4mol/Lのアンモニア水を滴下し、沈殿を生成させた。これを水洗し、200mLのオートクレーブを使用して180℃、2気圧で1時間処理することにより、粒子を得た。
なお、得られた粒子のBET比表面積をマイクロメトリックス フローソーブ2300を用いて測定したところ、32m/gであった。また、RINT−1000(リガク社製)を用いてXRD測定を行ったところ、酸化インジウム−酸化ガリウム−酸化亜鉛(IGZO)を含有する金属酸化物半導体粒子であることが確認できた。
更に、平均粒子径を走査型電子顕微鏡を用いて測定したところ、約60nmであった。
【0052】
(金属酸化物半導体粒子分散組成物の製造)
得られた金属酸化物半導体粒子10gを、メタノール40gに酢酸亜鉛二水和物4g、硝酸インジウム三水和物7g、硝酸ガリウム八水和物8gを溶解した溶液に添加した後、超音波洗浄機にて分散処理を行うことにより、金属酸化物半導体粒子分散組成物を得た。
【0053】
(比較例4)
実施例3の(金属酸化物半導体粒子分散組成物の製造)において、酢酸亜鉛二水和物、硝酸インジウム三水和物、硝酸ガリウム八水和物を添加しなかった以外は実施例3と同様にして金属酸化物半導体粒子分散組成物を作製した。
【0054】
(比較例5)
実施例4の(金属酸化物半導体粒子分散組成物の製造)において、酢酸亜鉛二水和物、硝酸インジウム三水和物、硝酸ガリウム八水和物を添加しなかった以外は実施例4と同様にして金属酸化物半導体粒子分散組成物を作製した。
【0055】
(比較例6)
実施例3の(金属酸化物半導体粒子分散組成物の製造)において、金属酸化物半導体粒子を添加しなかった以外は実施例3と同様にして金属酸化物半導体粒子分散組成物を作製した。
【0056】
<評価>
実施例及び比較例で得られた金属酸化物半導体粒子分散組成物について、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0057】
(移動度)
[薄膜1の作製]
ガラス基板に、実施例及び比較例で得られた金属酸化物半導体粒子分散組成物をスピンコーターを用いて塗布し、500℃で15分間熱処理することにより、厚さ約300μmの薄膜1を作製した。
【0058】
[薄膜2の作製]
ポリエチレンテレフタレート(PET)基板に、実施例及び比較例で得られた金属酸化物半導体粒子分散組成物をスピンコーターを用いて塗布し、ArFエキシマパルスレーザー(Lamda Physik社製、COMPex 102、193nm)で20Hz、1分間処理することにより、厚さ約300μmの薄膜2を作製した。
【0059】
[移動度の測定]
得られた薄膜1及び薄膜2の半導体特性として移動度をResiTest8310(東洋テクニカ社製)を用いて測定した。
【0060】
【表2】

【0061】
表2に示すように、実施例で得られた金属酸化物半導体粒子分散組成物を用いた薄膜では、比較例と比べて高い移動度が認められた。
なお、実施例で得られた金属酸化物半導体粒子分散組成物を用いた薄膜2では、PET基板の劣化は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、成膜後の金属酸化物粒子の緻密性を改善することができ、所望の性能を有する金属酸化物半導体薄膜や透明導電膜を形成することが可能な金属酸化物粒子分散組成物を提供することができる。更に、本発明は、該金属酸化物粒子分散組成物を用いた透明導電膜及び薄膜トランジスタを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物粒子と、金属塩及び/又は有機金属化合物と、溶媒とを含有する透明導電膜形成用の金属酸化物粒子分散組成物であって、
前記金属酸化物粒子は、Zn、Ga、In、Sn、Al、Sb、Cd及びFeからなる群より選択される少なくとも1種の金属の酸化物を含有し、かつ、
前記金属塩及び/又は有機金属化合物は、Zn、Ga、In、Sn、Al、Sb、Cd及びFeからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属塩及び/又はZn、Ga、In、Sn、Al、Sb、Cd及びFeからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む有機金属化合物である
ことを特徴とする金属酸化物粒子分散組成物。
【請求項2】
更に、バインダー樹脂を含有することを特徴とする請求項1記載の金属酸化物粒子分散組成物。
【請求項3】
金属酸化物粒子は、結晶性粒子であることを特徴とする請求項1又は2記載の金属酸化物粒子分散組成物。
【請求項4】
金属酸化物粒子は、金属酸化物半導体粒子であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の金属酸化物粒子分散組成物。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の金属酸化物粒子分散組成物を用いて得られることを特徴とする透明導電膜。
【請求項6】
請求項4記載の金属酸化物粒子分散組成物を用いて得られることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項7】
請求項5記載の透明導電膜を製造する方法であって、
請求項1、2、3又は4記載の金属酸化物粒子分散組成物を印刷する工程、及び、
紫外線を照射することにより、前記金属酸化物粒子分散組成物を乾燥又は焼結する工程を有することを特徴とする透明導電膜の製造方法。
【請求項8】
金属酸化物粒子分散組成物を乾燥又は焼結する工程において、エキシマレーザを用いて紫外線を照射することを特徴とする請求項7記載の透明導電膜の製造方法。

【公開番号】特開2012−212642(P2012−212642A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149386(P2011−149386)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】