説明

金属鋳造用耐火成形体、金属鋳造用耐火成形体の製造方法、不定形耐火組成物及び金属鋳造用溶湯保持部材

【課題】コーティング等の後処理の必要が無く、金属溶湯の浸透や表面反応による金属の貼り付きが抑制され、保温性(断熱性)が高く、かつ軽量な金属鋳造用耐火成形体を提供する。
【解決手段】無機繊維を9〜95質量%、シリカバインダーを4〜20質量%、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム及び硫酸バリウムから選ばれる1種以上のイオン結合性物質を1〜87質量%含む材料からなることを特徴とする金属鋳造用耐火成形体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム、マグネシウム等の鋳造装置において、金属溶湯と直接接する部位に好適に使用し得る金属鋳造用耐火成形体、金属鋳造用耐火成形体の製造方法、不定形耐火組成物及び金属鋳造用溶湯保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムなどの非鉄金属の鋳造装置において、例えば樋、溶湯保持炉、取鍋等の溶湯と接触する溶湯保持部材を構築するための内張材として金属鋳造用の耐火成形体が広く利用されている。金属鋳造用耐火成形体としては、現在ではアルミナセメントを含む耐火キャスタブルやその焼成物が主流であり、金属鋳造用の耐火成形体は、耐火煉瓦等とも称されている。
【0003】
金属溶湯と直接接触する部位に使用される金属鋳造用耐火成形体は、使用時における金属溶湯との反応や金属溶湯の浸透によって表面に金属が貼り付いてしまい、この表面に貼り付いた金属を剥がそうとすると、耐火成形体も一緒に剥がれて、損傷を引き起こすという技術課題が存在していた。
【0004】
上記技術課題を解決する手段として、アルミナセメントに粒径1μm以下の耐火原料微粉末を加えて、気孔率及び気孔径を小さくすることにより、金属溶湯の浸透を抑制しようとする耐火成形体が報告されている(特許文献1(特公昭59−37431号公報)参照)。
【0005】
また、特許文献2(特開2002−274959号公報)には、シャモット等の耐火性粉末素材と、超微粉シリカ等の結合材と、フッ素化合物を含有するアルミニウム及びアルミニウム合金用耐火成形体が開示されており、このアルミニウム及びアルミニウム合金用耐火成形体によれば、アルミ溶湯の浸透を防止して、しかも溶湯酸化物などの耐火成形体表面への付着を十分に防止するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭59−37431号公報
【特許文献2】特開2002−274959号公報(請求項3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されているような、気孔率や気孔径を小さくした耐火成形体においては、金属溶湯の貼り付きを防止するのは困難である。また、特許文献2記載のアルミニウム及びアルミニウム合金用耐火成形体は、金属溶湯の浸透を抑制するものであり、耐火成形体表面への溶湯酸化物の付着を防止することを目的とするものであるが、その付着防止効果は未だ十分でない。
【0008】
このような状況下、上記金属溶湯との反応や金属溶湯の浸透を抑制するために、耐火成形体表面に施工する様々なコーティング剤が存在するが、コーティング剤は繰り返し使用すると剥離してしまうことから、定期的な補修が必須になる。このため、耐火物と金属溶湯との反応や耐火物への金属溶湯の浸透を効果的に抑制する方法は存在しないのが実情である。
【0009】
一方、本技術分野において、鋳造装置を構成する耐火物の保温性(断熱性)を高めてエネルギー消費量を抑制する努力は、従来ほとんどなされてこなかった。これは、機械的強度や溶融金属に対する耐侵食性といった信頼性の点において、アルミナセメント含有耐火キャスタブルやその焼成物に代替する耐火成形体が存在しなかったこと等に依るものであるが、近年、CO排出量の削減や省エネ化が叫ばれている中で、保温性(断熱性)を高めてエネルギー消費量を抑制し得る金属鋳造用の耐火成形体が必要とされつつある。
また、アルミナセメント含有耐火キャスタブルやその焼成物は、嵩密度が1.0〜3.0g/cmと比較的高い(重い)ことから、搬送用取鍋等の軽量性が求められる用途においては適当でないという技術課題が存在していた。
【0010】
さらに、耐火成形体を複数連結して、樋、溶湯保持炉、取鍋等の溶湯と接触する部材の内張材として使用する場合には、目地等にペースト状の不定形耐火組成物が用いられているが、このペースト状の不定形耐火組成物についても、耐火成形体と同様に、コーティング等の後処理の必要が無く、金属溶湯の浸透や表面反応による金属の貼り付きが抑制され、保温性(断熱性)が高く、かつ軽量であることが求められる。
【0011】
従って、本発明は、コーティング等の後処理の必要が無く、金属溶湯の浸透や表面反応による金属の貼り付きが抑制され、保温性(断熱性)が高く、かつ軽量な金属鋳造用耐火成形体を提供するとともに、該金属鋳造用耐火成形体を簡便に製造する方法、不定形耐火組成物および金属鋳造用溶湯保持部材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明者等が鋭意検討を行った結果、無機繊維を
9〜95質量%、シリカバインダーを4〜20質量%、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム及び硫酸バリウムから選ばれる1種以上のイオン結合性物質を1〜87質量%含む材料からなる金属鋳造用耐火成形体により、上記目的を達成し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、
(1)無機繊維を9〜95質量%、シリカバインダーを4〜20質量%、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム及び硫酸バリウムから選ばれる1種以上のイオン結合性物質を1〜87質量%含む材料からなることを特徴とする金属鋳造用耐火成形体、
(2)金属鋳造用耐火成形体を製造する方法であって、
固形分中に、無機繊維を9〜95質量%、コロイダルシリカをシリカ換算で4〜20質量%、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム又はその前駆体、酸化マグネシウム又はその前駆体、酸化バリウム又はその前駆体及び硫酸バリウムから選ばれる1種以上のイオン結合性物質を1〜87質量%含むスラリーを、
脱水成形する
ことを特徴とする金属鋳造用耐火成形体の製造方法、
(3)前記コロイダルシリカの粒度が、メディアン径0.1μm未満、90%積算径0.2μm未満である上記(2)に記載の金属鋳造用耐火成形体の製造方法、
(4)固形分中に、無機繊維を9〜95質量%、コロイダルシリカをシリカ換算で4〜20質量%、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム又はその前駆体、酸化マグネシウム又はその前駆体、酸化バリウム又はその前駆体及び硫酸バリウムから選ばれる1種以上のイオン結合性物質を1〜87質量%含むことを特徴とする不定形耐火組成物、
(5)上記(1)に記載の金属鋳造用耐火成形体または上記(2)または(3)に記載の方法により得られた金属鋳造用耐火成形体を内張材として有することを特徴とする金属鋳造用溶湯保持部材
を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐火成形体が、イオン結合性の高いイオン結合性物質とシリカバインダーとを所定量含む材料からなるものであることから、還元力の高い金属溶湯と金属溶湯への酸素供給源であるシリカの酸化還元反応が素早く進み、耐火物表面に金属酸化膜を迅速に形成することができる。その結果、金属溶湯の浸透が生じる前に表面に金属酸化物が形成されるため、金属の貼り付き及び金属溶湯の浸透が抑制され、更に金属酸化物自体剥がれ易いものであるために、損傷の発生を抑制してなる耐火成形体を提供することができる。
また、本発明によれば、耐火成形体が、イオン結合性物質およびシリカバインダーとともに所定量の無機繊維を含む材料からなるものであることから、必要最低限の強度および耐侵食性を有しつつ、保温性(断熱性)及び軽量性に優れた耐火成形体を提供することができる。
さらに、本発明によれば、上記耐火成形体を簡便に製造する方法を提供することができる。
加えて、本発明によれば、耐火成形体の目地等として使用したときに、施工後において、コーティング等の後処理の必要が無く、金属溶湯の浸透や表面反応による金属の貼り付きが抑制され、保温性(断熱性)が高く、かつ軽量な不定形耐火組成物を提供することができる。
本発明によれば、上記耐火成形体を内張材として有する、保温性(断熱性)や軽量性に優れた金属鋳造用溶湯保持部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(金属鋳造用耐火成形体)
先ず、本発明の金属鋳造用耐火成形体について説明する。
本発明の金属鋳造用耐火成形体は、無機繊維を9〜95質量%、シリカバインダーを4〜20質量%、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム及び硫酸バリウムから選ばれる1種以上のイオン結合性物質を1〜87質量%含む材料からなることを特徴とするものである。
【0016】
無機繊維は、得られる耐火成形体の骨材としての機能を発揮するものであり、この機能を発揮するものであれば特に制限されないが、例えば、ガラス繊維、グラスウール、セラミックウール、ロックウール、アルミナ質繊維、ジルコニア質繊維、アルミノシリケート繊維、生体溶解性無機繊維等から選ばれる1種以上を挙げることができる。
【0017】
本出願書類において、生体溶解性無機繊維とは、40℃における生理食塩水溶解率が1%以上である無機繊維を意味する。生体溶解性無機繊維としては、例えば、特開2000−220037号公報、特開2002−68777号公報、特開2003−73926号公報、あるいは特開2003−212596号公報に記載されている無機繊維、すなわち、SiO及びCaOの合計含有量が85質量%以上であり、0.5〜3.0質量%のMgO及び2.0〜8.0質量%のPを含有し、かつドイツ危険物質規制による発癌性指数(KI値)が40以上である無機繊維や、SiO、MgO及びTiOを必須成分とする無機繊維や、SiO、MgO及び酸化マンガンを必須成分とする無機繊維や、SiO52〜72質量%、Al 3質量%未満、MgO 0〜7質量%、CaO 7.5〜9.5質量%、B0〜12質量%、BaO 0〜4質量%、SrO 0〜3.5質量%、NaO 10〜20.5質量%、KO 0.5〜4.0質量%及びP0〜5質量%を含む無機繊維や、SiO 75〜80質量%、CaO+MgO 19〜25質量%、Al1〜3質量%を含む無機繊維から選ばれる1種以上を挙げることができる。
【0018】
無機繊維の平均繊維径は1〜50μmであることが好ましく、1.5〜10μmであることがより好ましく、2〜6μmであることがさらに好ましい。平均繊維径が1μm未満であると繊維が破断し易くなるので、得られる耐火成形体の強度が低くなり易く、また50μmを超えると耐火成形体の密度が低くなるため、得られる耐火成形体の強度が低くなり易い。また、無機繊維の平均繊維長は1〜200mmであることが好ましく、2〜50mmであることがより好ましく、10〜50mmであることがさらに好ましい。平均繊維長が上記範囲内にあることにより、適切な密度を有する耐火成形体を得易くなる。
なお、本出願書類において、平均繊維径は、電子顕微鏡による観察画像にて、繊維200本の直径を測定したときの平均値を意味する。また、平均繊維長は、繊維200本の繊維長をノギスで測定したときの平均値を意味する。
【0019】
本発明の耐火成形体において、無機繊維は、9〜95質量%含まれ、15〜90質量%含まれることが好ましく、20〜90質量%含まれることがより好ましい。
無機繊維の含有割合が9〜95質量%であることにより、必要最低限の強度および耐侵食性を有しつつ、保温性(断熱性)及び軽量性に優れた耐火成形体を提供することができる。
【0020】
無機繊維は軽量で低密度であるといった性質を有することから、従来、耐火成形体の構成材料として用いた場合、機械強度的に脆く、アルミニウム等の金属溶湯の侵食を受け易い耐火成形体しか得られないと考えられていた。しかしながら、本発明者等が鋭意検討したところ、イオン結合性物質およびシリカバインダーとともに所定量の無機繊維を耐火成形体の構成材料として用いることにより、必要最低限の強度および耐侵食性を有しつつ、保温性(断熱性)に優れ、軽量化された耐火成形体を作製し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0021】
本発明の耐火成形体において、シリカバインダーとしては、後述するコロイダルシリカの乾燥物ないしは焼成物であることが好ましい。
【0022】
シリカバインダーは、特に、原料を脱水成形、乾燥処理および焼成処理して得られた耐火成形体に十分な保形性および強度を付与するものであり、無機繊維同士を結着させる機能を発揮するとともに、金属溶湯への酸素供給源として、耐火物と金属溶湯が接触する界面で、金属溶湯の酸化膜(金属がアルミニウムの場合、酸化アルミニウム膜)形成機能を発揮する。
【0023】
本発明の耐火成形体は、シリカバインダー(シリカ)を4〜20質量%含むものであり、4〜18質量%含むものであることが好ましく、7〜15質量%含むものであることがより好ましい。
【0024】
本発明の耐火成形体において、シリカバインダーの含有割合が4質量%未満であると、耐火物表面に酸化膜が迅速に形成され難くなることに加えて、焼成後の強度も得られ難い。また、20質量%を超えると後述する脱水成形時の濾水性が低下して、製造効率が低下し易くなる。
【0025】
本発明の耐火成形体は、イオン結合性物質として、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム及び硫酸バリウムから選ばれる1種以上を含んでいる。イオン結合性物質としては、フッ化カルシウムが最もイオン結合性が強いため、好適である。
【0026】
本発明の耐火成形体において、イオン結合性物質は、接触する溶湯金属の酸化物、例えば、酸化アルミニウムと同等以上の強いイオン結合性を有しており、耐火成形体と金属溶湯が接触する界面で、金属溶湯の酸化膜を形成させる目的で使用される。イオン結合性物質は、イオン結合性が強いほど酸化膜形成効果が大きいため、混合物中の含有量が少量であっても充分な酸化膜形成効果を発現することができる。
【0027】
イオン結合性物質は、粒径が小さいものが好ましく、具体的には、平均粒径0.15mm以下のものが好ましく、平均粒径0.10mm以下のものがより好ましく、平均粒径0.050mm以下のものがさらに好ましい。また、上記平均粒径は、0.001mm以上であることが好ましい。
粒径の小さなイオン結合性物質を使用した場合には、イオン結合性物質の比表面積を全体として大きくすることができるため、適度な剥離性を有する酸化膜を耐火成形体の表面に迅速に形成することができる。
【0028】
なお、本出願書類において、イオン結合性物質の平均粒径は、粒度分布計を用いてレーザ回折・散乱法により測定した値を意味する。
【0029】
また、イオン結合性物質は純度90%以上のものを使用することが好ましく、純度99%以上のものを使用することがさらに好ましい。
【0030】
本発明の耐火成形体において、イオン結合性物質は、1〜87質量%含まれ、4〜30質量%含まれることが好ましく、7〜20質量%含まれることがより好ましい。
【0031】
イオン結合性物質の含有割合が、1質量%未満であると、耐火物と金属溶湯が接触する界面に金属溶湯の酸化膜を迅速に形成させ難くなる。また、87質量%を超えると、イオン結合性の強い材料は、一般に加熱による体積膨張が大きいため、耐熱衝撃性が低下して、熱衝撃で得られる耐火成形体が割れ易くなる。加えて、無機繊維の含有割合に対するイオン結合性物質(無機粉末)の含有割合が高くなり過ぎるため、後述する耐火成形体の製造時に脱水成形性に支障をきたす。また、シリカバインダーの含有割合も減少するため、焼成後の強度も得られ難い。本発明の耐火成形体は、イオン結合性物質とシリカバインダーとを特定の割合で含むことによって、得られる耐火成形体と金属溶湯が接触する界面に金属溶湯の酸化膜を迅速に形成することができる。
【0032】
本発明の耐火成形体は、任意成分として、粉体状の充填材や骨材、有機バインダーを含んでいてもよく、これにより、耐火成形体の機械的強度を向上させることができる。
【0033】
充填材や骨材としては、シリカ、アルミナ、シャモット、チタニア、ジルコニア、窒化珪素、炭化珪素、コージェライト、ワラストナイト等が挙げられる。
【0034】
有機バインダーとしては、澱粉、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド等を挙げることができる。本発明の耐火成形体が有機バインダーを含むことにより、後述するように、原料を脱水成形、乾燥処理して得られた耐火成形体に十分な保形性および強度を付与することができる。上記有機バインダーのうち、ポリアクリルアミドは、脱水成形の際に凝集剤としても機能するためポリアクリルアミドを使用することが好ましい。
【0035】
本発明の耐火成形体は、充填材や骨材を、0.1〜80質量%含有することが好ましく、0.1〜70質量%含有することがより好ましい。また、有機バインダーを、0.05〜15質量%含有することが好ましく、0.5〜5質量%含有することがより好ましい。
【0036】
本発明の耐火成形体は、イオン結合性の高いイオン結合性物質とシリカバインダーとを所定量含む材料からなるものであることから、還元力の高い金属溶湯と金属溶湯への酸素供給源であるシリカの酸化還元反応が素早く進み、耐火成形体表面に金属酸化膜を迅速に形成することができる。その結果、金属溶湯の浸透が生じる前に耐火成形体表面に金属酸化物が形成されるため、耐火成形体に対する金属の貼り付きを抑制し得るとともに、耐火成形体に対する金属溶湯の浸透が抑制され、更に金属酸化物自体、剥がれ易いものであるために、耐火成形体へ生じる損傷を抑制することができる。
【0037】
本発明の耐火成形体は、例えば、嵩密度が0.2〜0.9g/cmで、好適には0.4〜0.8g/cmである。アルミナセメントを用いた通常の耐火成形体は、通常、嵩密度が1.0〜3.0g/cmであるが、本発明の耐火成形体は、イオン結合性物質およびシリカバインダーとともに所定量の無機繊維を含む材料からなるものであることから、軽量化を図ることができる。
【0038】
また、本発明の耐火成形体は、例えば、700℃における熱伝導率が0.1〜0.3W/mKで、好適には0.2〜0.3W/mKである。
【0039】
アルミナセメントを用いた従来の耐火成形体は、通常、700℃における熱伝導率が0.4〜1.7W/mKであるが、本発明の耐火成形体は、イオン結合性物質およびシリカバインダーとともに所定量の無機繊維を含む材料からなるものであることから、耐火成形体の熱伝導率を低減して保温性(断熱性)を向上させることができる。
【0040】
また、本発明の耐火成形体は、例えば、曲げ強度が0.2〜2.0MPaで、好適には0.6〜2.0MPaである。
【0041】
このように、本発明の耐火成形体は、イオン結合性物質およびシリカバインダーとともに所定量の無機繊維を含む材料からなるものであることから、必要最低限の強度および耐侵食性を有しつつ、優れた保温性(断熱性)および軽量性を発揮することができる。
【0042】
本発明の耐火成形体は、後述する耐火成形体の製造方法において、原料を脱水成形することにより作製することができ、本出願において、耐火成形体には、脱水成形後に乾燥処理したものの他、さらに焼成処理した焼成物も含まれる。脱水成形後に焼成処理を施さない耐火成形体であっても、耐火材として所望位置に配設し、金属鋳造時に同時に耐火材を加熱することによって焼成物とすることもできる。
【0043】
本発明の耐火成形体は、本発明の耐火成形体の製造方法により好ましく作製することができる。
【0044】
本発明の耐火成形体は、例えば、アルミニウムやマグネシウムなどの非鉄金属の鋳造装置において、例えば樋、溶湯保持炉、取鍋等の溶湯と接触する金属鋳造用溶湯保持部材を構築する内張材として好適に使用することができる。
【0045】
(金属鋳造用耐火成形体の製造方法)
次に、本発明の金属鋳造用耐火成形体の製造方法について説明する。
本発明の金属鋳造用耐火成形体の製造方法は、固形分中に、無機繊維を9〜95質量%、コロイダルシリカをシリカ換算で4〜20質量%、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム又はその前駆体、酸化マグネシウム又はその前駆体、酸化バリウム又はその前駆体及び硫酸バリウムから選ばれる1種以上のイオン結合性物質を1〜87質量%含むスラリーを、脱水成形することを特徴とするものである。
【0046】
本発明の耐火成形体の製造方法において、無機繊維は、得られる耐火成形体の骨材としての機能を発揮するものであり、上述したものと同様のものを挙げることができる。
【0047】
本発明の耐火成形体の製造方法において、無機繊維は、スラリーを構成する固形分中に、9〜95質量%含まれ、15〜90質量%含まれることが好ましく、20〜90質量%含まれることがより好ましい。
後述するように、本発明の耐火成形体の製造方法において、上記混合物中の無機繊維の含有割合はスラリー中の水分を除いた固形分全体に占める割合を意味する。
【0048】
本発明の耐火成形体の製造方法において、コロイダルシリカとしては、シリカ粒子またはその水和物が水中にコロイド状に分散された、メディアン径(d50)が0.1μm未満、90%積算径(d90)が0.2μm未満であるものが好ましく、メディアン径(d50)が0.01μm以上0.1μm未満、90%積算径(d90)が0.02μm以上0.2μm未満であるものがより好ましい。
【0049】
コロイダルシリカは、特に、原料を脱水成形、乾燥処理および焼成処理して耐火成形体を作製する場合に、得られる耐火成形体に十分な保形性および強度を付与するものであり、成形後にシリカバインダーとして無機繊維同士を結着させる機能を発揮するとともに、金属溶湯への酸素供給源として、耐火物と金属溶湯が接触する界面で、金属溶湯の酸化膜(金属がアルミニウムの場合、酸化アルミニウム膜)形成機能を発揮する。コロイダルシリカのメディアン径(d50)が0.1μm未満、90%積算径(d90)が0.2μm未満であると、成形後にシリカの表面積が大きくなって、還元力の高い金属溶湯とシリカの酸化還元反応が素早く進み易くなり、耐火物表面に酸化膜が迅速に形成され易くなる。一方、コロイダルシリカのメディアン径(D50)が0.1μm以上であったり、90%積算径(d90)が0.2μm以上であると、酸化膜が迅速に形成し難くなり、得られる耐火成形体表面に金属が貼り付き易くなる。
【0050】
本出願書類において、メディアン径(D50)とは、粒度分布に対して、細かい方から積算で50%になる粒径を言い、90%積算径(d90)とは、粒度分布に対して、細かい方から積算で90%になる粒径を意味する。コロイダルシリカの粒径は、粒子から散乱した光強度分布から粒度分布(粒径)を算出するレーザ回析・散乱法により求めることができる。
【0051】
本発明の耐火成形体の製造方法において、コロイダルシリカは、スラリーを構成する固形分中にシリカ換算で、4〜20質量%含まれ、4〜18質量%含まれることが好ましく、7〜15質量%含まれることがより好ましい。
【0052】
コロイダルシリカは、シリカ粒子またはその水和物が水中に分散したコロイド状物であるが、本出願書類において、上記コロイダルシリカの含有割合は、スラリーの水分を除いた固形分全体に占めるシリカ換算した質量割合を意味する。
【0053】
スラリーを構成する固形分中におけるコロイダルシリカの含有割合が、シリカ換算で4質量%未満であると、耐火物表面に酸化膜が迅速に形成され難くなることに加えて、焼成後の強度も得られ難い。また、20質量%を超えると脱水成形時の濾水性が低下して、製造効率が低下し易くなる。
【0054】
本発明の耐火成形体の製造方法においては、スラリーが、イオン結合性物質として、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム又はその前駆体、酸化マグネシウム又はその前駆体、酸化バリウム又はその前駆体及び硫酸バリウムから選ばれる1種以上を含んでいる。イオン結合性物質としては、フッ化カルシウムが最もイオン結合性が強いため、好適である。
【0055】
酸化カルシウムの前駆体としては、炭酸カルシウムが挙げられる。また、酸化マグネシウムの前駆体としては、炭酸マグネシウムが挙げられる。また、酸化バリウムの前駆体としては、炭酸バリウムが挙げられる。これらの前駆体は加熱により容易に分解するため、乾燥後の耐火成形体中、あるいは加熱後の耐火焼成体中において、それぞれ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウムとして存在することになる。
【0056】
本発明の耐火成形体の製造方法において、イオン結合性物質は、接触する溶湯金属の酸化物、例えば、酸化アルミニウムと同等以上の強いイオン結合性を有しており、耐火成形体と金属溶湯が接触する界面で、金属溶湯の酸化膜を形成させる目的で使用される。イオン結合性物質は、イオン結合性が強いほど酸化膜形成効果が大きいため、混合物中の含有量が少量であっても充分な酸化膜形成効果を発現することができる。
【0057】
イオン結合性物質の粒径、粒径の測定方法および純度の詳細については、本発明の耐火成形体の説明で説明した内容と同様である。
【0058】
本発明の耐火成形体の製造方法において、イオン結合性物質は、スラリーを構成する固形分中に、1〜87質量%含まれ、4〜30質量%含まれることが好ましく、7〜20質量%含まれることがより好ましい。
【0059】
イオン結合性物質の含有割合が、1質量%未満であると、耐火物と金属溶湯が接触する界面に金属溶湯の酸化膜を迅速に形成させ難くなる。また、87質量%を超えると、イオン結合性の強い材料は、一般に加熱による体積膨張が大きいため、耐熱衝撃性が低下して、熱衝撃で得られる耐火成形体が割れ易くなる。加えて、無機繊維の含有割合に対するイオン結合性物質(無機粉末)の含有割合が高くなり過ぎ、脱水成形性に支障をきたす。また、シリカバインダー量も減少するため、焼成後の強度も得られ難い。本発明の耐火成形体の製造方法においては、スラリー中にイオン結合性物質とコロイダルシリカを特定の割合で配合することによって、得られる耐火成形体と金属溶湯が接触する界面に金属溶湯の酸化膜を迅速に形成することができる。
なお、本発明の耐火成形体の製造方法において、イオン結合性物質の含有割合はスラリーの水分を除いた固形分全体に占める質量割合を意味する。
【0060】
本発明の耐火成形体の製造方法において、スラリー中には、任意成分として、粉体状の充填材や骨材、有機バインダーが含まれていてもよく、これにより、耐火成形体の機械的強度を向上させることができる。
充填材や骨材、有機バインダーの具体例や配合量は、本発明の耐火成形体の説明で述べた内容と同様である。
【0061】
本発明の耐火成形体の製造方法において、スラリーを形成する液体媒体としては、特に制限されないが、水及び極性有機溶媒が挙げられ、極性有機溶媒としては、エタノール、プロパノール等の1価のアルコール類、エチレングリコール等の2価のアルコール類が挙げられる。これ等の液体媒体うち、作業環境や環境負荷を考慮すると、水が好ましい。また、水としては特に制限されず、蒸留水、イオン交換水、水道水、地下水、工業用水等が挙げられる。
【0062】
スラリー中の固形分濃度は、0.1〜10質量%が好ましく、0.3〜10質量%がより好ましく、1〜8質量%がさらに好ましい。上記スラリー濃度が、0.1質量%未満であると脱水成形工程で除去する水の量が多くなり過ぎるので非効率であり、また、10質量%を越えると、スラリーに固形分が均一に分散し難くなる。なお、上記スラリー中の固形分には、以下に記載する被膜層形成剤も含まれるものとする。
【0063】
スラリーは、被覆層形成剤が更に配合されたものであってもよい。
被覆層形成剤としては、リン酸塩、モリブデン化合物、亜鉛化合物等の無機化合物、ポリアミジン化合物、エチレンイミン化合物等の有機化合物が挙げられる。上記リン酸塩としては、トリポリリン酸アルミニウム、トリポリリン酸二水素アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム等が挙げられ、上記モリブデン化合物としては、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム、リンモリブデン酸カルシウム、リンモリブデン酸アルミニウム等が挙げられ、上記亜鉛化合物としては酸化亜鉛が挙げられ、上記ポリアミジン化合物としては、アクリルアミド、アクリロニトリル、N−ビニルアクリルアミジン塩酸塩、N−ビニルアクリルアミド、ビニルアミン塩酸塩、N−ビニルホルムアミド共重合体等が挙げられ、上記エチレンイミン化合物としては、アミノエチレン、ジメチレンイミン等が挙げられる。
【0064】
本発明の耐火成形体の製造方法において、無機繊維として生体溶解性無機繊維を用いる場合、スラリー中に被覆層形成剤を配合することにより、生体溶解性無機繊維の表面に速やかに被覆層が形成されて、水等の液体媒体と接触による劣化を抑制することができる。
【0065】
本発明の耐火成形体の製造方法において、スラリー形成時に、液体媒体中に、無機繊維、コロイダルシリカ、イオン結合性物質等の原料を混合する順序は特に制限されず、これ等を順次または同時に液体媒体中に混合すればよい。一方、スラリーが上記被覆層形成剤を含むものである場合は、スラリーの調製時に、予め液体媒体に被覆層形成剤を混合した上で、無機繊維等の原料を混合することが好ましく、被覆層形成材を予め混合することにより、無機繊維表面に迅速に被覆層を形成することができる。
【0066】
本発明の耐火成形体の製造方法において、上記スラリーは脱水成形処理され、液体媒体が除去される。
本発明の耐火成形体の製造方法において、スラリーは液体媒体として水以外の媒体を含む場合もあるが、本出願書類においては、水以外の液体媒体を除去する場合も脱水成形と称することとする。
【0067】
脱水成形は、例えば、底部に網が設置された成形型中に該スラリーを流し込み、上記水等の液体媒体を吸引する吸引脱水成形法や、加圧脱水成形法、吸引加圧脱水法により行うことができる。
【0068】
本発明の耐火成形体の製造方法において、スラリーを成形型等に搬送する際には、ポンプ等を用いてもよいし、上記スラリーを含む槽の下部に成形型を配置する等して、スラリーの自重により搬送してもよい。
脱水成形物は、得ようとする耐火成形体に相似する形状を有するものが適当であり、例えば、円筒状、有底筒状、ボード状、ブロック状のものを挙げることができる。
【0069】
得られた脱水成形物は、乾燥機等を用いて乾燥させることが好ましい。乾燥温度は、40〜180℃が好ましく、60〜150℃がより好ましく、80〜120℃がさらに好ましい。また、乾燥時間は、6〜48時間が好ましく、8〜40時間がより好ましく、10〜36時間がさらに好ましい。また、乾燥時の雰囲気は、空気雰囲気、酸素雰囲気、窒素雰囲気等を挙げることができる。
【0070】
本発明の耐火成形体の製造方法においては、上記脱水成形物を乾燥処理した後、さらに焼成処理を施してもよい。
焼成温度は、600〜1300℃であることが好ましく、700〜900℃であることがより好ましい。また、焼成時の雰囲気は、特に制限されないが、空気雰囲気、酸素雰囲気または窒素雰囲気であることが好ましい。焼成時間は、0.5〜4時間が好ましい。
【0071】
焼成処理を施すことによって、成形体中の脱脂及び実使用時の収縮を防止することができる。
【0072】
このようにして、耐熱衝撃性、強度、耐侵食性及び耐浸透性に優れた所望形状を有する耐火成形体を得ることができる。
【0073】
イオン結合性物質として、酸化カルシウムの前駆体、酸化マグネシウムの前駆体及び酸化バリウムの前駆体を用いた場合には、これ等のイオン結合性物質は、耐火成形体中で、それぞれ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及び酸化バリウムとして存在する。
得られる耐火成形体の詳細は、本発明の耐火成形体の説明で述べたとおりである。
本発明の耐火成形体の製造方法によれば、コーティング等の後処理の必要が無く、金属溶湯の浸透や表面反応による金属の貼り付きが抑制され、保温性(断熱性)が高く、かつ軽量な金属鋳造用耐火成形体を簡便に製造することができる。
【0074】
(不定形耐火組成物)
次に、本発明の不定形耐火組成物について説明する。
本発明の不定形耐火組成物は、固形分中に、無機繊維を9〜95質量%、コロイダルシリカをシリカ換算で4〜20質量%、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム又はその前駆体、酸化マグネシウム又はその前駆体、酸化バリウム又はその前駆体及び硫酸バリウムから選ばれる1種以上のイオン結合性物質を1〜87質量%含むことを特徴とするものである。
【0075】
本発明の不定形耐火組成物において、無機繊維としては、本発明の耐火成形体の説明で挙げたものと同様のものを挙げることができ、コロイダルシリカとしては、本発明の耐火成形体の製造方法の説明で挙げたものと同様のものを挙げることができ、イオン結合性物質としては、本発明の耐火成形体の説明や本発明の耐火成形体の製造方法の説明で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0076】
本発明の不定形耐火物は、無機繊維を、固形分中に9〜95質量%含み、15〜90質量%含むことが好ましく、20〜90質量%含むことがより好ましい。
無機繊維の含有割合が、固形分中9〜95質量%であることにより、施工後に施工物(耐火物)に必要最低限の強度および耐侵食性を付与しつつ、保温性(断熱性)及び軽量性を付与し得る不定形耐火組成物を提供することができる。
【0077】
本発明の不定形耐火組成物は、コロイダルシリカを、シリカ換算で、固形分中に4〜20質量%含み、4〜18質量%含むことが好ましく、7〜15質量%含むことがより好ましい。
コロイダルシリカは、特に、不定形耐火組成物の施工時または施工後の使用時に高温で処理することによって、施工物に十分な保形性および強度を付与するものであり、無機繊維同士を結着させる機能を発揮するとともに、金属溶湯への酸素供給源として、施工物と金属溶湯が接触する界面で、金属溶湯の酸化膜(金属がアルミニウムの場合、酸化アルミニウム膜)形成機能を発揮する。
【0078】
本発明の不定形耐火組成物において、コロイダルシリカの含有割合が、固形分中、シリカ換算で4質量%未満であると、施工後に施工物表面に酸化膜が迅速に形成され難くなることに加えて焼成後の強度も得られ難くなり、また、20質量%を超えると製造効率が低下し易くなる。
【0079】
本発明の不定形耐火物は、イオン結合性物質を、シリカ換算で、固形分中に1〜87質量%含み、4〜30質量%含むことが好ましく、7〜20質量%含むことがより好ましい。
【0080】
イオン結合性物質の含有割合が、1質量%未満であると、施工物と金属溶湯が接触する界面に金属溶湯の酸化膜を迅速に形成させ難くなる。また、87質量%を超えると、イオン結合性の強い材料は、一般に加熱による体積膨張が大きいため、耐熱衝撃性が低下して熱衝撃により得られる施工物が割れ易くなるとともに、シリカバインダーの含有割合も減少するため、焼成後に所望の強度が得られ難くなる。本発明の不定形耐火組成物は、イオン結合性物質とシリカバインダーとを特定の割合で含むことによって、得られる耐火成形体と金属溶湯が接触する界面に金属溶湯の酸化膜を迅速に形成することができる。
【0081】
本発明の耐火成形体において、イオン結合性物質は、接触する溶湯金属の酸化物、例えば、酸化アルミニウムと同等以上の強いイオン結合性を有しており、施工物と金属溶湯が接触する界面で、金属溶湯の酸化膜を形成させる目的で使用される。イオン結合性物質は、イオン結合性が強いほど酸化膜形成効果が大きいため、混合物中の含有量が少量であっても充分な酸化膜形成効果を発現することができる。
【0082】
本発明の不定形耐火組成物は、任意成分として、粉体状の充填材や骨材、有機バインダー、凝集剤を含んでいてもよく、これにより、耐火成形体の機械的強度を向上させることができる。
充填材や骨材、有機バインダー、凝集剤の具体例は、本発明の耐火成形体の説明で述べた内容と同様であり、充填材や骨材、有機バインダーの固形分換算した配合量は、本発明の耐火成形体の説明で述べた内容と同様である。
【0083】
また、本発明の不定形耐火組成物は、被覆層形成剤、pH調整剤、増粘材、分散剤、防腐剤等の添加物を含んでもよい。
【0084】
被覆層形成剤としては、本発明の耐火成形体の製造方法の説明で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
pH調整剤としては、pH4標準溶液であるフタール酸塩標準溶液(セーレンセン緩衝液)、pH7標準溶液である中性リン酸塩標準溶液等の緩衝溶液を挙げることができ、酸としては、酢酸、蟻酸等を挙げることができる。
緩衝溶液や酸の含有量は、不定形耐火組成物のpHを4〜8.5にする量であることが好ましい。
増粘材としては、ヒドロキシエチルセルロース、アクリル酸ナトリウム重合物等を挙げることができ、分散剤としては、カルボン酸類、多価アルコール、アミン類等を挙げることができ、防腐剤としては、窒素原子又は硫黄原子を有する無機化合物または有機化合物を挙げることができる。
【0085】
さらに、本発明の不定形耐火組成物において、無機繊維が生体溶解性繊維である場合には、有機繊維を含むことが好ましい。有機繊維としては、パルプ、綿、麻等の天然繊維や、ビニロン、レーヨン、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成繊維の疎水処理物を挙げることができる。
【0086】
本発明の不定形耐火組成物において、耐火物形状である不定形状としては、固形分に液体溶媒を混合してなるペースト状が挙げられる。
【0087】
ペースト状物を形成する液体溶媒としては、特に制限されないが、水及び極性有機溶媒が挙げられ、極性有機溶媒としては、エタノール、プロパノール等の1価のアルコール類、エチレングリコール等の2価のアルコール類が挙げられる。これ等の液体媒体うち、作業環境や環境負荷を考慮すると、水が好ましい。また、水としては特に制限されず、蒸留水、イオン交換水、水道水、地下水、工業用水等が挙げられる。
【0088】
ペースト状物の粘度、すなわち、溶媒中の固形分濃度は、使用目的や作業性などを考慮して適宜決定される。例えば、溶媒の含有量が、本発明の不定形耐火組成物の固形物100質量%に対して、50〜800質量%であることが好ましく、100〜800質量%であることがより好ましく、100〜500質量%であることがさらに好ましい。上記溶媒含有量が、50質量%未満であると不定形耐火組成物の流動性が低くなるので施工性が悪くなり、また、施工物の機械的強度、特に曲げ強度が低下してしまう。また、上記溶媒含有量が、800質量%を超えると不定形耐火組成物のちょう度が高くなるので施工時にペースト状の組成物が垂れ、また、乾燥による目地等の施工物の収縮が大きくなる。
【0089】
本発明の不定形耐火組成物は、例えば、樋、溶湯保持炉、取鍋等の溶湯と接触する部材の内張材に用いられる耐火成形体の目地として使用され、乾燥あるいは焼成処理することにより、任意形状を有する施工物とすることができる。この施工物は、不定形耐火組成物の施工時に任意形状を採りつつ施工されるものである点を除けば、構成材料の組成や物性は本発明の耐火成形体と同視することができ、イオン結合性の高いイオン結合性物質とシリカとを所定量含む材料からなるものであることから、還元力の高い金属溶湯と金属溶湯への酸素供給源であるシリカの酸化還元反応が素早く進み、目地等の施工物表面に金属酸化膜を迅速に形成することができる。その結果、金属溶湯の浸透が生じる前に施工物表面に金属酸化物が形成されるため、施工物に対する金属の貼り付きを抑制し得るとともに、施工物に対する金属溶湯の浸透が抑制され、更に金属酸化物自体、剥がれ易いものであるために、施工物へ生じる損傷を抑制することができる。
【0090】
本発明の不定形耐火組成物は、例えば、アルミニウムやマグネシウムなどの非鉄金属の鋳造装置において、樋、溶湯保持炉、取鍋等の溶湯と接触する部材を構築するための内張材の目地として好適に使用することができる。
【0091】
次に、本発明の不定形耐火組成物を製造する方法について説明する。
本発明の不定形耐火組成物を製造する方法としては、上記無機繊維、コロイダルシリカ、イオン結合性物質等の構成材料を液体溶媒と混合することにより製造することができる。
【0092】
不定形耐火組成物の構成材料や溶媒の配合量は、上述したとおりである。
【0093】
本発明の不定形耐火組成物の好ましい製造方法としては、液体溶媒と被覆層形成剤の混合液に、無機繊維を添加し、その後、コロイダルシリカ、イオン結合性物質を加え、さらに所望により有機繊維、増粘材、防腐剤など他の配合成分を添加する方法が好ましい。また、pH調整剤を配合する場合は、溶媒、被覆層形成剤及びpH調整剤の混合液に、無機繊維を添加し、その後、他の配合成分を添加する方法が好ましい。
【0094】
上記構成材料と溶媒との混合方法としては、ニーダーや加圧ニーダー等の混練装置で混練する方法を挙げることができる。混練時間は0.1〜1.0時間とすることが好ましく、混練温度は5〜40℃とすることが好ましい。
【0095】
(金属鋳造用溶湯保持部材)
次に、本発明の金属鋳造用溶湯保持部材について説明する。
本発明の金属鋳造用溶湯保持部材は、本発明の金属鋳造用耐火成形体または本発明の方法により得られた金属鋳造用耐火成形体を内張材として有することを特徴とするものである。
【0096】
本発明の金属鋳造用溶湯保持部材は、金属鋳造装置において溶湯と接触する箇所に用いられる部材であり、具体的には、樋、溶湯保持炉、取鍋等を挙げることができる。
【0097】
金属鋳造用溶湯保持部材は、通常、金属製ケーシングと内張材を構成部材として有している。
金属製ケーシングの形状は、金属鋳造用溶湯保持部材の形状に対応した任意形状とすることができ、例えば、金属鋳造用溶湯保持部材が取鍋である場合には、厚み2〜10mmの金属製ケーシングに対して、厚み50〜200mmの内張材を用いたものであることが好ましい。
【0098】
金属鋳造用溶湯保持部材が取鍋である場合を例にとって説明すると、取鍋としては、溶湯の注入口および注出口を有する有底筒状の鍋本体と、溶湯の注入口を密封し得る開閉自在な上蓋と、溶湯の抽出口を密封し得る開閉自在な注ぎ蓋を有するものであって、上記鍋本体、注入口および注出口において、その内面の全部または一部に、内張材として本発明の金属鋳造用耐火成形体または本発明の方法により得られた金属鋳造用耐火成形体を有するものを挙げることができる。上記取鍋としては、鍋本体、注入口および注出口の内面全部に上記内張材を有するものが好ましい。
【0099】
本発明の金属鋳造用溶湯保持部材は、本発明の耐火成形体または本発明の方法により得られた耐火成形体を内張剤として有することから、必要最低限の強度および耐侵食性を有しつつ、保温性(断熱性)を向上させ、軽量化を図ることができる。
【0100】
次に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
なお、以下の実施例及び比較例において、コロイド状シリカの粒径およびイオン結合性物質の平均粒径は、ナノ粒子径分布測定装置 SALD-7100(測定範囲;0.01〜300μm)(島津製作所製)を使用し、レーザ回折・散乱法により測定したものである。また、曲げ強度(MPa)はJIS R 2553に準じて測定したものであり、700℃熱伝導率(W/mK)はJIS A 1412(保護熱板法)に準じて測定したものである。
【0101】
(実施例1)
1.スラリー形成工程
表1に示すように、アルミノシリケート繊維(ニチアス(株)製ファインフレックスバルクファイバー)77.9質量%、メディアン径(d50)が0.02μmで90%積算径(d90)が0.04μmのコロイド状シリカをシリカ換算で8.7質量%、フッ化カルシウム(平均粒径45μm)8.7質量%、澱粉(日澱化学社製ペトロサイズJ)4.3質量%、ポリアクリルアミド(荒川化学工業社製ポリストロン311)0.4質量%からなる原料100質量部に対し、更に、スラリー濃度が3質量%となるように、水を加えて攪拌し、スラリーを作製した。
【0102】
2.成形工程
底部に網が設置された成形型中に上記スラリーを流し込み、スラリー中の水を吸引することにより脱水成形を行い、平板状の脱水成形物を得た。
次いで、100℃で24時間乾燥することにより、平板状の乾燥処理物を得た。
【0103】
3.焼成工程
得られた乾燥処理物を加熱炉中で、空気雰囲気下、700℃で3時間焼成処理することにより、目的とする平板状耐火成形体(縦200mm、横200mm、厚さ50mm)を得た。
得られた耐火成形体の組成を表2に示す。また、得られた耐火成形体における、嵩密度(g/cm)と、曲げ強度(MPa)と、700℃熱伝導率(W/mK)を表2に示す。
【0104】
(実施例2)
スラリー形成工程において、フッ化カルシウム8.7質量%に代えてフッ化マグネシウム8.7質量%を用いた以外は、実施例1と同様にして耐火成形体を得た。
得られた耐火成形体の組成を表2に示す。また、得られた耐火成形体における、嵩密度(g/cm)と、曲げ強度(MPa)と、700℃熱伝導率(W/mK)を表2に示す。
【0105】
(実施例3)
スラリー形成工程において、アルミノシリケート繊維の配合量を77.9質量%から69.3質量%に変更し、フッ化カルシウム8.7質量%に代えて酸化カルシウム17.3質量%を用いた以外は、実施例1と同様にして耐火成形体を得た。
得られた耐火成形体の組成を表2に示す。また、得られた耐火成形体における、嵩密度(g/cm)と、曲げ強度(MPa)と、700℃熱伝導率(W/mK)を表2に示す。
【0106】
(実施例4)
スラリー形成工程において、アルミノシリケート繊維の配合量を77.9質量%から69.3質量%に変更し、フッ化カルシウム8.7質量%に代えて酸化マグネシウム17.3質量%を用いた以外は、実施例1と同様にして耐火成形体を得た。
得られた耐火成形体の組成を表2に示す。また、得られた耐火成形体における、嵩密度(g/cm)と、曲げ強度(MPa)と、700℃熱伝導率(W/mK)を表2に示す。
【0107】
(実施例5)
スラリー形成工程において、アルミノシリケート繊維の配合量を77.9質量%から69.3質量%に変更し、フッ化カルシウム8.7質量%に代えて硫酸バリウム17.3質量%を用いた以外は、実施例1と同様にして耐火成形体を得た。
得られた耐火成形体の組成を表2に示す。また、得られた耐火成形体における、嵩密度(g/cm)と、曲げ強度(MPa)と、700℃熱伝導率(W/mK)を表2に示す。
【0108】
(実施例6)
スラリー形成工程において、アルミノシリケート繊維の配合量を77.9質量%から69.3質量%に変更し、フッ化カルシウム8.7質量%に代えて酸化バリウム17.3質量%を用いた以外は、実施例1と同様にして耐火成形体を得た。
得られた耐火成形体の組成を表2に示す。また、得られた耐火成形体における、嵩密度(g/cm)と、曲げ強度(MPa)と、700℃熱伝導率(W/mK)を表2に示す。
【0109】
(実施例7)
スラリー形成工程において、アルミノシリケート繊維の配合量を77.9質量%から43.3質量%に変更し、さらにシリカ粒子(平均粒径6μm)34.6質量%を用いた以外は、実施例1と同様にして耐火成形体を得た。
得られた耐火成形体の組成を表2に示す。また、得られた耐火成形体における、嵩密度(g/cm)と、曲げ強度(MPa)と、700℃熱伝導率(W/mK)を表2に示す。
【0110】
(実施例8)
スラリー形成工程において、アルミノシリケート繊維の配合量を77.9質量%から17.3質量%に変更し、さらにシリカ粒子(平均粒径6μm)60.6質量%を用いた以外は、実施例1と同様にして耐火成形体を得た。
得られた耐火成形体の組成を表2に示す。また、得られた耐火成形体における、嵩密度(g/cm)と、曲げ強度(MPa)と、700℃熱伝導率(W/mK)を表2に示す。
【0111】
(比較例1)
スラリー形成工程において、アルミノシリケート繊維の配合量を77.9質量%から86.6質量%に変更し、フッ化カルシウムを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして耐火成形体を得た。
得られた耐火成形体の組成を表2に示す。また、得られた耐火成形体における、嵩密度(g/cm)と、曲げ強度(MPa)と、700℃熱伝導率(W/mK)を表2に示す。
【0112】
(比較例2)
スラリー形成工程において、コロイド状シリカに代えてアルミナゾル(日産化学社製)をアルミナ換算で8.7質量%用いたこと以外は、実施例1と同様にして耐火成形体を得た。
得られた耐火成形体の組成を表2に示す。また、得られた耐火成形体における、嵩密度(g/cm)と、曲げ強度(MPa)と、700℃熱伝導率(W/mK)を表2に示す。
【0113】
(比較例3)
スラリー形成工程において、アルミノシリケート繊維の配合量を77.9質量%から86.6質量%に変更し、フッ化カルシウムを使用せず、さらにコロイド状シリカに代えてアルミナゾル(日産化学社製)をアルミナ換算で8.7質量%用いたこと以外は、実施例1と同様にして耐火成形体を得た。
得られた耐火成形体の組成を表2に示す。また、得られた耐火成形体における嵩密度(g/cm)と、曲げ強度(MPa)と、700℃熱伝導率(W/mK)を表2に示す。
【0114】
【表1】

【0115】
(評価)
実施例1〜実施例8および比較例1〜比較例3で得られた耐火成形体を試験体として、以下に示すアルミ溶湯滴下試験とアルミ溶湯浸漬試験を行った。結果を表2に示す。
【0116】
<アルミ溶湯滴下試験>
アルミニウムの溶湯を滴下した際、試験体とアルミ溶湯との界面でアルミニウムの酸化膜を短時間で形成するか否かを測定した。
先ず、電気炉内に板状の試験体が水平となるように設置し、700℃の温度条件下、アルミニウム溶湯を試験体上に至近距離から滴下して、1時間保持した。その後、電気炉内が室温に達してから試験体を取り出し、滴下したアルミニウムの酸化状態を目視で観察した。
滴下したアルミニウムが試験体の表面で酸化すると、試験体のアルミニウム滴下部分は光沢がなくなり、灰色に変色する。このような場合を「「○」(灰色)」と評価した。また、滴下したアルミニウムが試験体の表面で酸化しない場合、試験体のアルミニウム滴下部分は光沢が生じる。このような場合を「「×」(光沢)」と評価した。
本試験方法によれば、試験体と接触する直前のアルミニウム溶湯表面には酸化膜層がほとんど形成されないため、酸化膜層が形成されていないアルミニウム溶湯を実質的に直接試験体に接触させることができる。
【0117】
<アルミ溶湯浸漬試験>
試験体をアルミニウム溶湯に浸漬させ、その後試験体を引き上げた後、アルミニウムが試験体に貼り付くか否かを測定した。
先ず、るつぼ状の電気炉内に、アルミニウムを投入した後、700℃で溶解させた。溶解したアルミニウムに、角柱状の試験体を浸漬させる。この時、試験体上面部はアルミニウム溶湯面から出すようにする。浸漬中、電気炉は700℃に保持し、浸漬開始24時間後に試験体を引き上げ、引き上げた試験体を室温で冷却し、目視確認することにより、次のとおり評価した。
アルミ溶湯浸漬試験において、試験体にアルミニウムの貼り付きが観察されない場合、「「○」(無し)」と評価し、試験体にアルミニウムの貼り付きが観察される場合、「「×」(全面貼り付き)」と評価した。
アルミ溶湯滴下試験では、試験時間(700℃保持時間)が1時間と短いため、アルミニウムが酸化しなくても、アルミが試験体には、殆ど貼り付かない。但し、浸漬試験のようなアルミ溶湯と試験体が接する時間が長い試験の場合、アルミニウムが短時間で酸化しないものは、試験体にアルミニウムが貼り付くようになる。
【0118】
【表2】

【0119】
表2から、実施例1〜実施例8で得られた耐火成形体は、曲げ強度0.3〜
2.0MPaという十分な強度を有しつつ、700℃熱伝導率が0.11〜0.29W/mKと低いことから十分な保温性(断熱性)を有し、また、嵩密度が0.29〜0.75g/cmと軽量であることが分かる。
【0120】
また、表2から、実施例1〜実施例8で得られた耐火成形体は、アルミ滴下試験において、アルミニウム溶湯の滴下部分に、いずれも適度な酸化膜を形成するとともに、アルミ浸漬試験においては、試験体表面にアルミニウムの貼り付きが認められなかった。このように、実施例1〜8で得られた耐火成形体は、いずれも還元力の高い金属溶湯と、金属溶湯への酸素供給源であるシリカ及びイオン結合性材料との酸化還元反応が素早く進み、耐火物とアルミ溶湯との界面にアルミニウムの酸化膜が迅速に形成されることが分かる。
このため、本発明によれば、コーティング等の後処理の必要が無く、金属溶湯の浸透や表面反応による金属の貼り付きが抑制され、保温性(断熱性)が高く、かつ軽量で、取鍋等の金属鋳造用溶湯保持部材の内張材として好適に使用することができる耐火成形体を簡便に製造し得ることが分かる。
【0121】
これに対して、比較例1〜比較例3で得られた耐火成形体は、アルミ滴下試験において、アルミニウム溶湯の滴下部分に、いずれも適度な酸化膜を形成することができず、アルミ浸漬試験においては、試験体全面にアルミニウムの貼り付きが認められるものであった。このため、比較例1〜比較例3で得られた耐火成形体は、いずれも耐火物とアルミ溶湯との界面にアルミニウムの酸化膜が迅速に形成されないものであることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明によれば、アルミニウムやマグネシウムなどの非鉄金属の鋳造装置において、例えば樋、溶湯保持炉、取鍋等の溶湯と接触する部材を構築するための内張材として好適に使用することができる耐火成形体、該耐火成形体を簡便に製造する方法、不定形耐火組成物および金属鋳造用溶湯保持部材を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維を9〜95質量%、シリカバインダーを4〜20質量%、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム及び硫酸バリウムから選ばれる1種以上のイオン結合性物質を1〜87質量%含む材料からなることを特徴とする金属鋳造用耐火成形体。
【請求項2】
金属鋳造用耐火成形体を製造する方法であって、
固形分中に、無機繊維を9〜95質量%、コロイダルシリカをシリカ換算で4〜20質量%、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム又はその前駆体、酸化マグネシウム又はその前駆体、酸化バリウム又はその前駆体及び硫酸バリウムから選ばれる1種以上のイオン結合性物質を1〜87質量%含むスラリーを、
脱水成形する
ことを特徴とする金属鋳造用耐火成形体の製造方法。
【請求項3】
前記コロイダルシリカの粒度が、メディアン径0.1μm未満、90%積算径0.2μm未満である請求項2に記載の金属鋳造用耐火成形体の製造方法。
【請求項4】
固形分中に、無機繊維を9〜95質量%、コロイダルシリカをシリカ換算で4〜20質量%、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム又はその前駆体、酸化マグネシウム又はその前駆体、酸化バリウム又はその前駆体及び硫酸バリウムから選ばれる1種以上のイオン結合性物質を1〜87質量%含むことを特徴とする不定形耐火組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の金属鋳造用耐火成形体または請求項2または請求項3に記載の方法により得られた金属鋳造用耐火成形体を内張材として有することを特徴とする金属鋳造用溶湯保持部材。

【公開番号】特開2011−93726(P2011−93726A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247424(P2009−247424)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】