説明

金属錯体を含む素子

【課題】本発明の目的は、発光ピークが可視光領域に位置し、可視光領域において十分に発光するセリウム錯体を提供し、更にこの錯体を用いて可視光領域において十分に発光する素子を提供することである。
【解決手段】本発明は、セリウムと、式(1)で表される窒素原子含有環式化合物との金属錯体を含有する素子を提供する。
【化1】


(A1は置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を、nは3以上の整数を、Z1は、−O−、−S−、−NR1−、又は−PR2−であって1つ以上は−NR1−である基を、R1及びR2は、水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セリウムと窒素原子含有環式化合物との金属錯体を含む素子に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素原子を骨格中に含む環式化合物(クラウンエーテル)は、様々なイオンを強く捕捉できる化合物である。クラウンエーテルにセリウムイオンを取り込んだ錯体が、セリウムイオンの5d−4f遷移に基づく発光を示すことが報告されており、有機EL材料としての応用が検討されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】T.Yu et al.Solid−State Electronics.51,894−899(2007).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1に記載されているクラウンエーテルを用いる従来のセリウム錯体では、最大の発光スペクトル(発光ピーク)が紫外光領域に位置し、ディスプレイ用途及び照明用途での利用が困難であるという問題があった。本発明の目的は、発光ピークが可視光領域に位置し、可視光領域において十分に発光するセリウム錯体を提供し、更にこの錯体を用いて可視光領域において十分に発光する素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述した課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を進めたところ、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は下記の[1]から[10]を提供するものである。
【0006】
[1]セリウムと、下記式(1)で表される窒素原子含有環式化合物との金属錯体を含有する素子。
【化1】

(式中、A1は、置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を表す。複数あるA1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。nは3以上の整数を表す。Z1は、−O−、−S−、−NR1−、又は−PR2−を表すが、1つ以上は−NR1−である。複数あるZ1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R1及びR2は、水素原子、又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。R1及びR2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R1が複数ある場合、複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R2が複数ある場合、複数のR2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
[2]A1、R1又はR2が、置換基として1つ以上の窒素原子含有ヘテロシクリル基を有する上記[1]に記載の素子。
[3]窒素原子含有環式化合物が下記式(2)で表される、上記[1]又は[2]に記載の素子。
【化2】

(式中、A2及びA3は、置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を表す。A2及びA3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。A2が複数ある場合、複数のA2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。A3が複数ある場合、複数のA3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Z2は、−O−、−S−、−NR1−、又は−PR2−を表す。Z2が複数ある場合、複数のZ2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。mは1以上の整数を表し、pは0以上の整数を表し、m+pは3以上の整数である。R10は置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を表す。R10が複数ある場合、複数のR10はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。L10は、置換基を有していてもよい窒素原子含有ヘテロシクリル基を表す。L10が複数ある場合、複数のL10はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
[4]上記式(2)において、m+pが3〜6の整数である上記[3]に記載の素子。
[5]上記式(2)において、pが0である上記[3]又は[4]に記載の素子。
[6]窒素原子含有環式化合物が下記式(3)で表される、上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の素子。
【化3】

(式中、L11、L12、L13及びL14は、置換基を有していてもよい窒素原子含有ヘテロシクリル基を表す。L11、L12、L13及びL14はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。A11、A12、A13及びA14は、置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を表す。A11、A12、A13及びA14はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R11、R12、R13及びR14は、置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を表す。R11、R12、R13及びR14はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
[7]上記金属錯体が、下記組成式(11)で表される金属錯体である[6]に記載の素子。
【化4】

(式中、Lは上記式(3)で表される窒素原子含有環式化合物を表す。Lが複数ある場合、複数のLはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは対イオンを表す。Xが複数ある場合、複数のXはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。L’は上記式(3)で表される窒素原子含有環式化合物以外の2座以下の配位子を表す。a’は正の数であり、b’及びc’は0以上の数である。b’及びc’はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
[8]上記素子が電界発光素子である上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の素子。
[9]下記組成式(4)で表される金属錯体。
【化5】

(式中、Lは上記式(3)で表される窒素原子含有環式化合物を表す。Lが複数ある場合、複数のLはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは対イオンを表す。Xが複数ある場合、複数のXはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。L’は上記式(3)で表される窒素原子含有環式化合物以外の2座以下の配位子を表す。L’が複数ある場合、複数のL’はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。aは0.5を超える数であり、b及びcは0以上の数である。b及びcはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
[10]下記式(5)で表される窒素原子含有環式化合物。
【化6】

(式中、A11、A12、A13及びA14は、置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を表す。A11、A12、A13及びA14はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R21、R22、R23及びR24は、水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。R21、R22、R23及びR24はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、発光ピークが可視光領域に位置し、可視光領域において十分に発光するセリウム錯体を提供することができ、この錯体を用いて可視光領域において十分に発光する素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について、説明する。
【0009】
本明細書において、「置換基を有していてもよい」とは、その直後に記載された化合物又は基を構成する水素原子が無置換の場合及び水素原子の一部又は全部が置換基によって置換されている場合の双方を含む。
【0010】
本明細書における「置換基」とは、特に説明がない場合、以下の意味で用いられる。炭素原子に結合する置換基としては、例えば、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基、ヘテロシクリル基、ハロゲン原子、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルコキシホスホリル基、ホスフィノ基、ホスフィンオキシド基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、亜リン酸基、及びニトロ基;アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、及び亜リン酸基からなる群から選ばれる基から水素原子を除いたアニオン性基が挙げられ、好ましくは、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基、ヘテロシクリル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、又はリン酸基であり、より好ましくは、ヒドロカルビル基である。また、窒素原子に結合する置換基としては、例えば、ヒドロカルビル基が挙げられる。置換基が複数個存在する場合、それらは、同一であっても異なっていてもよい。
【0011】
上記置換基が炭素原子を含み、かつ、芳香環を含まない基である場合には、該置換基の炭素原子数は、通常、1〜30であり、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜10であり、更に好ましくは1〜6であり、特に好ましくは1〜4である。
【0012】
上記置換基が炭素原子を含み、かつ、芳香環を含む基である場合には、該置換基の炭素原子数は、通常、2〜30であり、好ましくは3〜20であり、より好ましくは4〜10であり、更に好ましくは4〜6であり、特に好ましくは6である。
【0013】
ヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ノルボルニル基、アンモニウムエチル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、ターフェニリル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、及びコロニル基が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、ターフェニリル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、又は2−ナフチル基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、1−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、ビニル基、ブテニル基、フェニル基、2−トリル基、又は4−トリル基であり、更に好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、ヘキシル基、又はビニル基であり、特に好ましくは、メチル基、エチル基、又はビニル基である。
【0014】
ヒドロカルビルオキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−プロピルオキシ基、2−プロピルオキシ基、1−ブチルオキシ基、2−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、1−アダマンチルオキシ基、2−アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、アンモニウムエチトキシ基、トリフルオロメトキシ基、ベンジロキシ基、α,α−ジメチルベンジロキシ基、2−フェネチルオキシ基、1−フェネチルオキシ基、フェノキシ基、メトキシフェノキシ基、オクチルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、及びペンタフルオロフェニルオキシ基が挙げられ、好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、1−プロピルオキシ基、2−プロピルオキシ基、1−ブチルオキシ基、2−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、又は3,7−ジメチルオクチルオキシ基であり、より好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、又は1−プロピルオキシ基である。
【0015】
ヒドロカルビルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、1−プロピルチオ基、2−プロピルチオ基、1−ブチルチオ基、2−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、シクロプロピルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、1−アダマンチルチオ基、2−アダマンチルチオ基、ノルボルニルチオ基、アンモニウムエチルチオ基、トリフルオロメチルチオ基、ベンジルチオ基、α,α−ジメチルベンジルチオ基、2−フェネチルチオ基、1−フェネチルチオ基、フェニルチオ基、メトキシフェニルチオ基、オクチルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、及びペンタフルオロフェニルチオ基が挙げられ、好ましくは、メチルチオ基、エチルチオ基、1−プロピルチオ基、2−プロピルチオ基、1−ブチルチオ基、2−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、又は3,7−ジメチルオクチルチオ基であり、より好ましくは、メチルチオ基、エチルチオ基、又は1−プロピルチオ基である。
【0016】
ヘテロシクリル基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を1又は2以上含有するものがあり、例えば、ピペリジニル基、ピペラジニル基、ベンゾフリル基、フリル基、ベンゾチエニル基、チエニル基、ベンゾピロリル基、ピロリル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ピラゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、チアゾリル基、キノリル基、及びピリジル基が挙げられ、好ましくは、ベンゾフリル基、フリル基、ベンゾチエニル基、チエニル基、ベンゾピロリル基、ピロリル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ピラゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、チアゾリル基、キノリル基、又はピリジル基であり、より好ましくは、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ピラゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、チアゾリル基、キノリル基、又はピリジル基であり、更に好ましくは、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、又はピリジル基である。
【0017】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、好ましくは、フッ素原子、又は塩素原子である。
【0018】
アミド基としては、例えば、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、及びジペンタフルオロベンズアミド基が挙げられ、好ましくは、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、又はベンズアミド基である。
【0019】
イミド基は、イミドからその窒素原子に結合した水素原子を除いて得られる基である。
このようなイミド基としては、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基、及びベンゾフェノンイミド基が挙げられ、好ましくは、N−フタルイミド基である。
【0020】
シリル基は、アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基からなる群から選ばれる1〜3個の置換基を有していてもよいシリル基である。このようなシリル基は、好ましくは、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリ−i−プロピルシリル基、ジメチル−i−プロピリシリル基、ジエチル−i−プロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリル基、ラウリルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、又はジメチルフェニルシリル基であり、より好ましくは、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、又はトリプロピルシリル基であり、更に好ましくは、トリメチルシリル基である。
【0021】
アシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、及びペンタフルオロベンゾイル基が挙げられ、好ましくは、アセチル基、又はベンゾイル基である。
【0022】
アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル基、及びドデシルオキシカルボニル基が挙げられ、好ましくは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、又はイソブトキシカルボニル基であり、より好ましくは、メトキシカルボニル基、又はエトキシカルボニル基である。
【0023】
アルコキシスルホニル基としては、例えば、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基、プロピルオキシスルホニル基、イソプロピルオキシスルホニル基、ブトキシスルホニル基、イソブトキシスルホニル基、sec−ブトキシスルホニルル基、tert−ブトキシスルホニルル基、ペンチルオキシスルホニル基、ヘキシルオキシスルホニル基、ヘプチルオキシスルホニル基、オクチルオキシスルホニル基、2−エチルヘキシルオキシスルホニル基、ノニルオキシスルホニル基、デシルオキシスルホニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシスルホニル基、及びドデシルオキシスルホニル基が挙げられ、好ましくは、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基、プロピルオキシスルホニル基、イソプロピルオキシスルホニル基、ブトキシスルホニル基、又はイソブトキシスルホニル基であり、より好ましくは、メトキシスルホニル基、又はエトキシスルホニル基である。
【0024】
アルコキシホスホリル基としては、例えば、ジメトキシホスホリル基、ジエトキシホスホリル基、ジプロポキシホスホリル基、ジイソプロポキシホスホリル基、ジブトキシホスホリル基、及びエチレンジオキシホスホリル基が挙げられ、好ましくは、ジメトキシホスホリル基である。
【0025】
ホスフィノ基は、アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基からなる群から選ばれる1又は2個の置換基を有していてもよいホスフィノ基である。このようなホスフィノ基としては、例えば、フェニルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルホスフィノ基、ジメチルホスフィノ基、エチルホスフィノ基、ジエチルホスフィノ基、プロピルホスフィノ基、ジプロピルホスフィノ基、ブチルホスフィノ基、及びジブチルホスフィノ基が挙げられ、好ましくは、ジフェニルホスフィノ基、ジメチルホスフィノ基、ジエチルホスフィノ基、ジプロピルホスフィノ基、又はジブチルホスフィノ基であり、より好ましくは、ジフェニルホスフィノ基、又はジメチルホスフィノ基であり、特に好ましくはジフェニルホスフィノ基である。
【0026】
ホスフィンオキシド基は、アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基からなる群から選ばれる1又は2個の置換基を有していてもよいホスフィンオキシド基である。このようなホスフィンオキシド基としては、例えば、フェニルホスフィンオキシド基、ジフェニルホスフィンオキシド基、メチルホスフィンオキシド基、ジメチルホスフィンオキシド基、エチルホスフィンオキシド基、ジエチルホスフィンオキシド基、プロピルホスフィンオキシド基、ジプロピルホスフィンオキシド基、ブチルホスフィンオキシド基、及びジブチルホスフィンオキシド基が挙げられ、好ましくは、ジフェニルホスフィンオキシド基、ジメチルホスフィンオキシド基、ジエチルホスフィンオキシド基、ジプロピルホスフィンオキシド基、又はジブチルホスフィンオキシド基であり、より好ましくは、ジフェニルホスフィンオキシド基、又はジメチルホスフィンオキシド基であり、特に好ましくはジフェニルホスフィンオキシド基である。
【0027】
アミノ基は、アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基からなる群から選ばれる1〜3個の置換基を有していてもよいアミノ基、又は−NH2である。このようなアミノ基としては、例えば、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、及びジブチルアミノ基が挙げられ、好ましくは、ジフェニルアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、又はジブチルアミノ基であり、より好ましくは、メチルアミノ基、エチルアミノ基、又はジフェニルアミノ基である。
【0028】
アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、及び亜リン酸基から水素原子を除いたアニオン性基は、対イオンを有していてもよい。対イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、及びアンモニウムイオンが挙げられ、好ましくは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はアンモニウムイオンである。
【0029】
1.本発明の素子
<1.1 本発明の素子に用いられる金属錯体>
一実施形態では、窒素原子含有環式化合物は下記式(1)で表される。
【化7】

【0030】
式(1)において、A1は置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を表す。複数あるA1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0031】
ヒドロカーボンジイル基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、オクチレン基、メチルエチレン基、メチルプロピレン基、エチルエチレン基、エチルプロピレン基、メチルブチレン基、エチルヘキシレン基、ジメチルオクチレン基、シクロプロピレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンタンジイル基、ノルボルナンジイル基、フェニレンメチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ジフェニルビニレン基、フェニルビニレン基、フェニルプロペニレン基、フェニレン基、メチルフェニレン基、トリフルオロメチルフェニレン基、シアノフェニレン基、ビフェニルジイル基、ターフェニルジイル基、テトラフェニルフェニレン基、(2,2−ジフェニルビニル)フェニレン基、(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニレン基、フルオレンジイル基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、及びピレンジイル基が挙げられ、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、メチルエチレン基、メチルプロピレン基、エチルエチレン基、エチルプロピレン基、メチルブチレン基、エチルヘキシレン基、フェニレンメチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、又はフェニレン基であり、より好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、メチルエチレン基、メチルプロピレン基、ビニレン基、又はプロペニレン基であり、更に好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、メチルエチレン基、又はメチルプロピレン基であり、特に好ましくは、メチレン基、エチレン基、又はプロピレン基である。
【0032】
nは3以上の整数を表し、好ましくは3〜10の整数であり、より好ましくは3〜6の整数であり、更に好ましくは4である。
【0033】
1は、−O−、−S−、−NR1−、又は−PR2−を表す。複数あるZ1のうち1つ以上は−NR1−である。複数あるZ1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよいが、好ましくは全てのZ1が−NR1−である。
【0034】
1は、水素原子、又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。ヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ノルボルニル基、アンモニウムエチル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、ターフェニリル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、及びコロニル基が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、ターフェニリル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、又は2−ナフチル基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、1−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、ビニル基、ブテニル基、フェニル基、2−トリル基、又は4−トリル基であり、更に好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、ヘキシル基、又はビニル基であり、特に好ましくは、メチル基、エチル基、又は1−プロピル基である。
【0035】
2は、水素原子、又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。ヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、ターフェニリル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、6−クリセニル基、1−ベンゾ[c]フェナントリル基、2−ベンゾ[c]フェナントリル基、3−ベンゾ[c]フェナントリル基、4−ベンゾ[c]フェナントリル基、5−ベンゾ[c]フェナントリル基、6−ベンゾ[c]フェナントリル基、1−ベンゾ[g]クリセニル基、2−ベンゾ[g]クリセニル基、3−ベンゾ[g]クリセニル基、4−ベンゾ[g]クリセニル基、5−ベンゾ[g]クリセニル基、6−ベンゾ[g]クリセニル基、7−ベンゾ[g]クリセニル基、8−ベンゾ[g]クリセニル基、9−ベンゾ[g]クリセニル基、10−ベンゾ[g]クリセニル基、11−ベンゾ[g]クリセニル基、12−ベンゾ[g]クリセニル基、13−ベンゾ[g]クリセニル基、14−ベンゾ[g]クリセニル基、ベンゾフルオレニル基、及びジベンゾフルオレニル基が挙げられ、好ましくはフェニル基、2−トリル基、4−トリル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、又は4−ピレニル基であり、より好ましくはフェニル基、2−トリル基、4−トリル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、又は9−アントリル基であり、更に好ましくはフェニル基、2−トリル基、又は4−トリル基であり、特に好ましくはフェニル基である。
【0036】
1及びR2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R1が複数ある場合、複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R2が複数ある場合、複数のR2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0037】
窒素原子含有環式化合物の好適な形態としては、上記式(1)におけるA1、R1又はR2が、置換基として、1つ以上の窒素原子含有ヘテロシクリル基を有する形態が挙げられる。窒素原子含有ヘテロシクリル基とは、ヘテロ原子として窒素原子を1個又は2個以上含むヘテロシクリル基を意味する。窒素原子含有ヘテロシクリル基は、窒素原子を1個又は2個以上有していれば、窒素原子以外のヘテロ原子を有していてもよい。窒素原子含有ヘテロシクリル基の具体的な例及び好ましい例は、含有置換基の例として上述したヘテロシクリル基のうち窒素原子を含むものの具体的な例及び好ましい例の説明と同様である。窒素原子含有ヘテロシクリル基としては、下記式(6)〜(10)で表される基が好ましく、下記式(8)又は(10)で表される基がより好ましい。
【0038】
【化8】

式(6)において、R3は水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表し、ヒドロカルビル基の具体的な例及び好ましい例は、上記R1における説明と同様である。R4は、置換基を表し、eは0〜2の整数である。R3が結合する窒素原子とR4が結合する炭素原子とが互いに隣接位にある場合、R3及びR4は、結合して環を形成していてもよい。eが2であり、2つのR4が互いに隣接する炭素原子にそれぞれ結合している場合、2つのR4は結合して環を形成していてもよい。eが2である場合、2つのR4はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0039】
【化9】

式(7)において、R5は、置換基を表し、fは0〜3の整数である。fが2以上の整数であり、複数のR5が互いに隣接する炭素原子にそれぞれ結合している場合、複数のR5は結合して環を形成していてもよい。fが2以上の整数である場合、複数のR5はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0040】
【化10】

式(8)において、X1は、酸素原子、硫黄原子、又は−NR6−であり、好ましくは−NR6−である。R6は水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表し、ヒドロカルビル基の具体的な例及び好ましい例は、上記R1における説明と同様である。
【0041】
7は、置換基を表し、gは0〜2の整数である。R6が結合する窒素原子とR7が結合する炭素原子とが互いに隣接位にある場合、R6及びR7は、結合して環を形成していてもよい。gが2であり、2つのR7が互いに隣接する炭素原子にそれぞれ結合している場合、2つのR7は結合して環を形成していてもよい。gが2である場合、2つのR7はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0042】
【化11】

式(9)において、R8は、置換基を表し、hは0〜3の整数である。hが2以上の整数であり、複数のR8が互いに隣接する炭素原子にそれぞれ結合している場合、複数のR8は結合して環を形成していてもよい。hが2以上の整数である場合、複数のR8はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0043】
【化12】

式(10)において、R9は、置換基を表し、iは0〜4の整数である。iが2以上の整数であり、複数のR9が互いに隣接する炭素原子にそれぞれ結合している場合、複数のR9は結合して環を形成していてもよい。
【0044】
本発明において好適に適用できる窒素原子含有環式化合物は、下記式(2)の構造で表される。
【化13】

【0045】
2及びA3は、置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を表す。ヒドロカーボンジイル基の具体的な例及び好ましい例は、上記A1における説明と同様である。A2及びA3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。A2が複数ある場合、複数のA2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。A3が複数ある場合、複数のA3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0046】
2は、−O−、−S−、−NR1−又は−PR1−を表し、好ましくは−NR1−である。R1の具体的な例及び好ましい例は上述したとおりである。Z2が複数ある場合、複数のZ2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0047】
mは1以上の整数を表し、好ましくは2〜10の整数であり、より好ましくは2〜6の整数であり、更に好ましくは4である。
【0048】
pは0以上の整数を表す。m+pは3以上の整数であり、好ましくは3〜10の整数であり、より好ましくは3〜6の整数であり、更に好ましくは4である。
【0049】
10は置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を表す。ヒドロカーボンジイル基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、シクロプロピレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンタンジイル基、ノルボルナンジイル基、フェニレンメチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ジフェニルビニレン基、フェニルビニレン基、フェニルプロペニレン基、フェニレン基、ビフェニルジイル基、ターフェニルジイル基、テトラフェニルフェニレン基、フルオレンジイル基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、及びピレンジイル基が挙げられ、好ましくは、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、シクロヘキシレン基、フェニレンメチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、フェニルビニレン基、フェニルプロペニレン基、又はフェニレン基であり、より好ましくは、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、シクロヘキシレン基、フェニルビニレン基、又はフェニレン基であり、更に好ましくは、メチレン基、エチレン基、又はトリメチレン基であり、特に好ましくは、メチレン基である。R10が複数ある場合、複数のR10はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0050】
10は、窒素原子含有ヘテロシクリル基を表す。窒素原子含有ヘテロシクリル基としては、上記式(6)〜(10)で表される基が好ましい。L10が複数ある場合、複数のL10はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0051】
本発明において用いられる窒素原子含有環式化合物のより好適な形態は、下記式(3)の構造で表される。
【化14】

【0052】
11、L12、L13及びL14は、置換基を有していてもよい窒素原子含有ヘテロシクリル基を表し、好ましくは、上記式(6)〜(10)で表される基、又は水素原子であり、より好ましくは、上記式(8)〜(10)で表される基である。L11、L12、L13及びL14はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0053】
11、A12、A13及びA14は、置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を表す。ヒドロカーボンジイル基の具体的な例及び好ましい例は、上記A1における説明と同様である。A11、A12、A13及びA14はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0054】
11、R12、R13及びR14は、置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を表す。ヒドロカーボンジイル基の具体的な例及び好ましい例は、上記R10における説明と同様である。R11、R12、R13及びR14はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0055】
本発明においてより好適に適用できる窒素原子含有環式化合物の別の形態は、下記式(5)の構造で表される。
【化15】

【0056】
11、A12、A13及びA14は、置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を表す。A11、A12、A13及びA14はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0057】
21、R22、R23及びR24は、水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。R21、R22、R23及びR24はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R21、R22、R23及びR24のヒドロカルビル基の具体的な例及び好ましい例は、上記R1における説明と同様である。
【0058】
上記窒素原子含有環式化合物としては、例えば、下記式(A−1)〜(A−18)で表される配位子が挙げられ、これらのうち、好ましくは下記式(A−5)〜(A−15)で表される配位子であり、より好ましくは下記式(A−7)〜(A−14)で表される配位子であり、更に好ましくは下記式(A−9)〜(A−13)で表される配位子である。
【化16】

【化17】

【化18】

【0059】
本発明の素子に用いられる金属錯体は、セリウムと、上記窒素原子含有環式化合物との金属錯体である。なお、上記窒素原子含有環式化合物は、1種のみであっても、2種以上を1分子中に混在させてもよい。
【0060】
本発明の素子に用いられる金属錯体は、上記窒素原子含有環式化合物の他に、2座以下(1座又は2座)の配位子(L’)及び/又は対イオン(X)を1個もしくは複数含有していてもよい。配位子(L’)は上記窒素原子含有環式化合物以外の配位子であればよい。
【0061】
配位子(L’)としては、酸素原子、窒素原子及びリン原子からなる群から選ばれる原子を含む原子団が好ましく、例えば、水、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、トリアリールホスフィンオキシド、トリアルキルホスフィンオキシド、ピリジン、キノリン、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、トリアジン、ピリミジン、ピラジン、ビピリジン、ビキノリン、フェナントロリン、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン、及びトリアルキルアミンが挙げられる。配位子(L’)はこれらのうち1種であるか、又は2種以上を1分子中に混在させてもよい。
【0062】
対イオン(X)としては、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、酢酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ヘキサフルオロアンチモンイオン、ヘキサフルオロヒ素イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、テトラフェニルボレートイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン等のイオン;これらのイオンから選ばれるいずれかのイオンを有する繰り返し単位を含む高分子化合物が挙げられる。配位子(L’)はマイナスに帯電していてもよく、その場合、対イオン(X)はカチオンであってもよい。カチオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、及びアンモニウムイオンが挙げられる。対イオン(X)としては、好ましくは、フッ化物イオン、塩化物イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ヘキサフルオロアンチモンイオン、ヘキサフルオロヒ素イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、テトラフェニルボレートイオン、又はテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオンであり、より好ましくは、塩化物イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、テトラフェニルボレートイオン、又はテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオンであり、更に好ましくは、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、又はテトラフェニルボレートイオンであり、特に好ましくは、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、又はテトラフェニルボレートイオンである。対イオン(X)はこれらのうち1種であるか、又は2種以上を1分子中に混在させてもよい。
【0063】
具体的には、本発明の素子に用いられる金属錯体は、下記組成式(11)で表される組成により構成されていてもよい。
【化19】

【0064】
式(11)において、Lは上記窒素原子含有環式化合物を表し、好ましくは、上記式(3)で表される窒素原子含有環式化合物である。Xは対イオンを表す。L’は上記Lで表される化合物以外の2座以下の配位子を表し、好ましくは上記式(3)で表される窒素原子含有環式化合物以外の2座以下の配位子である。L’及びXの具体的な例及び好ましい例は、上記説明と同様である。中でも、Lが上記式(3)で表される窒素原子含有環式化合物であり、L’が上記式(3)で表される窒素原子含有環式化合物以外の2座以下の配位子であることが好ましい。
【0065】
式(11)において、a’、b’及びc’は、配位子の配位原子数及び合成時の仕込み比によって決まる。a’は正の数であり、好ましくは0.5を超える数であり、より好ましくは0.5<a’<1.5を満たす数であり、更に好ましくは0.7<a’<1.2を満たす数であり、特に好ましくは0.9<a’<1.1を満たす数である。b’は0以上の数であり、好ましくは、0≦b’≦4を満たす数であり、より好ましくは0≦b’≦3を満たす数である。c’は0以上の数であり、好ましくは、0≦c’≦6を満たす数であり、より好ましくは0≦c’≦3を満たす数であり、更に好ましくは0≦c’≦2を満たす数であり、特に好ましくは0である。
【0066】
本発明の素子に用いられる金属錯体の例としては、具体的には、下記式(B−1)〜(B−6)で表される組成により構成される金属錯体が挙げられる。
【化20】

【化21】

【化22】

【0067】
<1.2 本発明の素子に用いられる金属錯体の製造方法>
本発明の素子に用いられる金属錯体は、例えば、窒素原子含有環式化合物と金属塩(例えば、塩化セリウム(III)又はトリフルオロメタンスルホン酸セリウム(III))とを、溶媒(例えば、メタノール又はアセトニトリル)中で室温下混合させ、得られた沈殿を回収するか又は得られた溶液の溶媒を留去することで、容易に得ることができる。
【0068】
上述の混合を行う際には、金属塩、及び窒素原子含有環式化合物を溶媒中に均一に溶解させるために、又は溶液の粘度が高い場合には撹拌を容易にするために、溶媒(例:緩衝液等の水系溶媒、有機溶媒)を用いてもよく、有機溶媒を用いることが好ましい。
【0069】
有機溶媒としては、例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0070】
<1.3 本発明の素子>
本発明の素子は、セリウムと、上記窒素原子含有環式化合物との金属錯体を含有する。
【0071】
本発明の素子としては、例えば、陽極と陰極とからなる1対の電極と、該1対の電極間に挟持された有機化合物を含む層を1層又は複数層有する素子において、上記有機化合物を含む層のうちの少なくとも1層が上記金属錯体を含有している素子が挙げられる。
【0072】
本発明の素子は、発光素子及び光電変換素子のいずれであってもよい。本発明の素子が発光素子である場合についてまず説明した後に、光電変換素子である場合について説明する。
【0073】
<1.3.1 発光素子>
発光素子は、通常、陽極及び陰極からなる電極間に、発光する機能を有する層、すなわち発光層が含まれている。また、発光効率及び耐久性を向上させるために、発光する機能以外の機能を有する公知の層を一つ以上含んでいてもよい。このような層としては、例えば、電荷輸送層、電荷阻止層、電荷注入層及びバッファ層が挙げられる。なお、本発明の素子が発光素子の場合において、発光層、電荷輸送層、電荷阻止層、電荷注入層、バッファ層等の層は、各々、一層からなるものでも二層以上からなるものでもよい。上記金属錯体は、上記層のうちの1層以上に含まれていることが好ましく、発光層に含まれていることが好ましい。
【0074】
発光層は、発光する機能を有する層である。正孔輸送層は、正孔を輸送する機能を有する層である。電子輸送層は、電子を輸送する機能を有する層である。これら電子輸送層と正孔輸送層を総称して電荷輸送層と言う。また、電荷阻止層は、正孔又は電子を発光層に閉じ込める機能を有する層である。電荷阻止層のうち、電子を輸送し、かつ正孔を閉じ込める層を正孔阻止層と言い、正孔を輸送し、かつ電子を閉じ込める層を電子阻止層と言う。
【0075】
バッファ層としては、例えば、陽極に隣接して導電性高分子化合物を含む層が挙げられる。
【0076】
本発明の素子が発光素子の場合、発光素子の構造としては、以下のa)〜q)の構造が挙げられる。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
c)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
d)陽極/発光層/正孔阻止層/陰極
e)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
f)陽極/電荷注入層/発光層/陰極
g)陽極/発光層/電荷注入層/陰極
h)陽極/電荷注入層/発光層/電荷注入層/陰極
i)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
j)陽極/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
k)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
l)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/陰極
m)陽極/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
n)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
o)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
p)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
q)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
(ここで、「/」は各層が隣接して積層されていることを示す。なお、発光層、正孔輸送層、電子輸送層は、それぞれ独立に2層以上用いてもよい。)
【0077】
電極に隣接して設けた電荷輸送層のうち、電極からの電荷注入効率を改善する機能を有し、素子の駆動電圧を下げる効果を有するものは、一般に電荷注入層(すなわち、正孔注入層及び電子注入層)と呼ばれることがある。電荷注入層を備える素子としては、例えば、陰極に隣接して電荷注入層を備える素子、及び、陽極に隣接して電荷注入層を備える素子が挙げられる。
【0078】
本発明の素子では、電極との密着性向上のために、又は電極からの電荷注入の改善のために、電極に隣接して絶縁層を設けてもよい。前記絶縁層に用いる材料としては、例えば、金属フッ化物、金属酸化物、及び有機絶縁材料が挙げられる。絶縁層の厚みは、通常、2nm以下である。絶縁層を備える素子としては、例えば、陰極に隣接して前記絶縁層を備える素子、及び、陽極に隣接して前記絶縁層を備える素子が挙げられる。
【0079】
本発明の素子が発光素子の場合において、発光層は、電界印加時に陽極側の隣接する層より正孔を注入することができ、陰極側の隣接する層より電子を注入することができる機能、注入した電荷(すなわち、電子と正孔)を電界の力で移動させる機能、電子と正孔の再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能を有するものである。本発明の素子の発光層は、上記金属錯体を含有することが好ましく、この金属錯体をゲスト材料とするホスト材料を含有していてもよい。
【0080】
ホスト材料としては、例えば、フルオレン骨格を有する化合物、カルバゾール骨格を有する化合物、ジアリールアミン骨格を有する化合物、ピリジン骨格を有する化合物、ピラジン骨格を有する化合物、トリアジン骨格を有する化合物及びアリールシラン骨格を有する化合物が挙げられる。ホスト材料のT1(最低三重項励起状態のエネルギーレベル)は、ゲスト材料のT1より大きいことが好ましく、その差が0.2eVよりも大きいことが更に好ましい。また、層の均一性及び機械的特性を高めるために、電荷輸送性を有しない高分子化合物を含有していてもよい。前記電荷輸送性を有しない高分子化合物としては、例えば、非共役高分子化合物が挙げられ、電荷輸送性を極度に阻害しないもの、可視光の吸収が強くないものが好ましい。前記非共役高分子化合物としては、例えば、ポリスチレン類(ポリスチレン、アイソタクチックポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)等)、ポリエチレン類(HDポリエチレン等)、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、及びポリ塩化ビニル;これらの非共役高分子化合物から選ばれる化合物を構成している繰り返し単位を有するコポリマー(ランダムコポリマー、ブロックコポリマー等)が挙げられる。ホスト材料は低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよい。また、ホスト材料と金属錯体等の発光材料とを混合して塗布する、又は共蒸着することによって、発光材料がホスト材料にドープされた発光層を形成することができる。
【0081】
素子中の金属錯体を含有する層中の上記金属錯体の含有量は、当該層全体に対し、通常0.01〜100重量%であり、0.1〜50重量%が好ましく、1〜50重量%がより好ましい。
【0082】
前記正孔輸送層に用いる材料としては、例えば、特開昭63−70257号公報、特開昭63−175860号公報、特開平2−135359号公報、特開平2−135361号公報、特開平2−209988号公報、特開平3−37992号公報、特開平3−152184号公報等の文献に記載されている化合物が挙げられる。具体的には、例えば、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリアミノフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、並びにポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体が挙げられる。
【0083】
正孔輸送層の厚さは、発光効率又は光電効率と駆動電圧とが適度な値となるように設定され、用いる材料によって最適値が異なるが、ピンホールが発生しない厚さが必要である。厚さが厚すぎる正孔輸送層は素子の駆動電圧が高くなる傾向がある。従って、正孔輸送層の厚さは1nm〜1μmであることが好ましく、2nm〜500nmであることがより好ましく、5nm〜200nmであることが更に好ましい。
【0084】
電子輸送層に用いる材料としては、例えば、特開昭63−70257号公報、特開昭63−175860号公報、特開平2−135359号公報、特開平2−135361号公報、特開平2−209988号公報、特開平3−37992号公報、特開平3−152184号公報等の文献に記載されている化合物が挙げられる。具体的には、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、並びにポリフルオレン及びその誘導体が挙げられる。
【0085】
電子輸送層の厚さは、発光効率又は光電効率と駆動電圧とが適度な値となるように設定され、用いる材料によって最適値が異なるが、ピンホールが発生しない厚さが必要である。厚さが厚すぎる電子輸送層は素子の駆動電圧が高くなる傾向がある。従って、電子輸送層の厚さは1nm〜1μmであることが好ましく、2nm〜500nmであることがより好ましく、5nm〜200nmであることが更に好ましい。
【0086】
各層は隣接する層又は基板上に形成される。形成方法としては、例えば、真空蒸着法〔抵抗加熱蒸着法、電子ビーム法等〕、スパッタリング法、LB法、分子積層法、塗布法が挙げられ、製造プロセスを簡略化できるので、塗布法が好ましい。
【0087】
塗布法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、ディップコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法及びインクジェット法が挙げられ、これらのうち、スピンコート法、キャスティング法、ロールコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法又はインクジェット法が好ましく、ロールコート法、スプレーコート法又はフレキソ印刷法がより好ましい。
【0088】
本発明の素子は、通常、基板を用いて形成される。基板の一方の面には電極が形成され、他方の面に素子の各層を形成する。本発明に用いる基板は電極及び素子の各層を形成する際に化学的に変化しないものであればよく、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フイルム、及びシリコンからなる群から選ばれる材料よりなる基板が挙げられる。この基板が不透明のものである場合には反対の電極として透明又は半透明のものを形成することが好ましい。
【0089】
通常、本発明の素子に含まれる陽極及び/又は陰極は、透明又は半透明のものであり、陽極が透明又は半透明のものであることが好ましい。
【0090】
陽極に用いる材料としては、例えば、導電性の金属酸化物膜、及び、半透明の金属薄膜が挙げられる。具体的には、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体(インジウム・スズ・オキサイド(ITO)及びインジウム・亜鉛・オキサイド等)、アンチモン・スズ・オキサイド、NESA、金、白金、銀、及び銅が挙げられる。これらのうち、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、及び酸化スズが好ましい。また、陽極として、有機の透明導電膜(ポリアニリン及びその誘導体、ポリアミノフェン及びその誘導体等)を用いてもよい。
【0091】
陽極の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、及びメッキ法が挙げられる。
【0092】
陽極の厚さは、光の透過性と電気伝導度とを考慮して設定することができ、10nm〜10μmであることが好ましく、20nm〜1μmであることがより好ましく、50nm〜500nmであることが更に好ましい。
【0093】
陰極に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましく、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属;それらの金属からなる群から選ばれる2つ以上の金属の合金;それらの金属からなる群から選ばれる1個以上の金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、及び錫からなる群から選ばれる1個以上の金属との合金;グラファイト;グラファイト層間化合物が挙げられる。前記合金として、例えば、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、及びカルシウム−アルミニウム合金が挙げられる。
【0094】
陰極の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、及び金属薄膜を熱圧着するラミネート法が挙げられる。また、2層以上の積層構造の陰極を形成してもよい。
【0095】
陰極の厚さは、電気伝導度及び/又は耐久性を考慮して設定することができ、10nm〜10μmであることが好ましく、20nm〜1μmであることがより好ましく、50nm〜500nmであることが更に好ましい。また、陰極と有機物層との間に、導電性高分子からなる層、又は金属酸化物、金属フッ化物、若しくは有機絶縁材料等からなる平均厚さ2nm以下の層を設けてもよい。
【0096】
本発明の素子では、素子を外部から保護して長期安定的に使用するために、陰極形成後、素子を保護する保護層及び/又は保護カバーを形成していてもよい。
【0097】
このような保護層に用いる材料としては、例えば、高分子化合物、金属酸化物、金属フッ化物、及び金属ホウ化物が挙げられる。また、保護カバーとしては、例えば、ガラス板、及び、表面に低透水率処理を施したプラスチック板が挙げられる。これらのうち、保護カバーを、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を用いて素子と貼り合わせて、素子を密閉することが好ましい。
【0098】
電荷注入層としては、例えば、導電性高分子を含む層、陽極材料と正孔輸送層に含まれる正孔輸送材料との中間の値のイオン化ポテンシャルを有する材料を含む層(陽極と正孔輸送層との間に設けられる場合)、及び、陰極材料と電子輸送層に含まれる電子輸送材料との中間の値の電子親和力を有する材料を含む層(陰極と電子輸送層との間に設けられる場合)が挙げられる。
【0099】
電荷注入層に用いる材料は、電極の材料及び/又は該電荷注入層と隣接する層の材料との関係に応じて選択すればよい。具体的には、例えば、ポリアニリン及びその誘導体、ポリアミノフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、芳香族アミン構造を主鎖又は側鎖に含む重合体等の導電性高分子、金属フタロシアニン(銅フタロシアニン等)、並びにカーボンが挙げられる。
【0100】
電荷注入層の厚さは、1nm〜100nmであることが好ましく、1nm〜50nmであることがより好ましく、1nm〜10nmであることがより好ましい。
【0101】
本発明の素子が発光素子の場合、この発光素子は面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置、液晶表示装置のバックライト、又は照明に使用することができる。
【0102】
上記発光素子を用いて面状の発光を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。また、パターン状の発光を得るためには、面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、有機物層の一部を極端に厚く形成して実質的に非発光部を形成する方法、陽極及び陰極のいずれか一方又は両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にON/OFFできるように配置することにより、数字、文字、簡単な記号等を表示できるセグメント表示装置が得られる。更に、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置することによりドットマトリックス表示装置が得られる。
【0103】
このドットマトリックス表示装置において、複数の種類の発光色の異なる発光材料を塗り分けたり、カラーフィルター又は発光変換フィルターを用いることより、部分カラー表示又はマルチカラー表示が可能となる。また、ドットマトリックス表示装置は、パッシブ駆動も可能であり、TFT等と組み合わせることによりアクティブ駆動も可能となる。これらの表示装置は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダー等に用いることができる。
【0104】
面状の発光素子は自発光薄型であり、液晶表示装置のバックライト用の面状光源、又は面状の照明用光源として好適に用いることができる。また、フレキシブルな基板を用いることにより、曲面状の光源又は表示装置としても使用できる。
【0105】
本発明の素子がスイッチング素子の場合、このスイッチング素子はアクティブマトリックス駆動回路を有する液晶表示装置に使用することができる。
【0106】
<1.3.2 光電変換素子>
続いて本発明の素子が光電変換素子の場合について以下説明する。
【0107】
光電変換素子は、通常、陽極、陰極、及び電荷分離層を有する。電荷分離層は、陽極と陰極との間に位置する。光電変換素子は、陽極と陰極との間に、電荷分離層以外の任意の構成要素を備えていてもよい。上記金属錯体を含む層は、電荷分離層に含まれていてもよいし、該任意の構成要素として有していてもよい。
【0108】
陰極及び陽極の、材料及び形状の具体的な例及び好ましい例は、発光素子における説明と同様である。陽極及び/又は陰極を櫛型に形成してもよい。この場合、電極は不透明のものであってもよいが、透明又は半透明のものであることが好ましい。
【0109】
本発明の素子が光電変換素子の場合、光電変換素子の電荷分離層には、通常、電子供与性化合物と電子受容性化合物とが含まれている。電子供与性化合物としては、例えば、共役高分子化合物が挙げられ、該共役高分子化合物としては、例えば、チオフェンジイル基を含む共役高分子化合物及びフルオレンジイル基を含む共役高分子化合物が挙げられる。また、電子受容性化合物としては、例えば、フラーレン及びフラーレン誘導体が挙げられる。
【0110】
光電変換素子は、通常は基板上に形成される。基板の具体的な例及び好ましい例は、上記発光素子における基板の説明と同様である。
【0111】
本発明の素子が光電変換素子の場合、この光電変換素子は太陽電池に使用することができる。
【0112】
2.本発明の新規化合物
本発明は、下記組成式(4)で表される金属錯体を提供する。
【化23】

式(4)中、Lは下記式(3):
【化24】

で表される窒素原子含有環式化合物を表す。
【0113】
11、L12、L13及びL14は、置換基を有していてもよい窒素原子含有ヘテロシクリル基を表す。A11、A12、A13及びA14は、置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を表す。R11、R12、R13及びR14は、置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を表す。R11、R12、R13、R14、L11、L12、L13及びL14ならびにA11、A12、A13及びA14の具体的な例及び好ましい例は、上記素子に含まれる金属錯体に関する式(3)における説明と同様である。
【0114】
Xは対イオンを、L’は上記式(3)で表される窒素原子含有環式化合物以外の2座以下の配位子を表す。aは0.5を超える数であり、b及びcは、0以上の数である。対イオン(X)及び配位子(L’)の具体的な例及び好ましい例は、上記素子に含まれる金属錯体に関する式(11)における説明と同様である。
【0115】
式(4)において、a、b及びcは、配位子の配位原子数及び合成時の仕込み比によって決まる。aは0.5を超える数であり、好ましくは0.5<a<1.5を満たす数であり、より好ましくは0.7<a<1.2を満たす数であり、更に好ましくは0.9<a<1.1を満たす数である。bは0以上の数であり、好ましくは、0≦b≦4を満たす数であり、より好ましくは0≦b≦3を満たす数である。cは0以上の数であり、好ましくは、0≦c≦6を満たす数であり、より好ましくは0≦c≦3を満たす数であり、更に好ましくは0≦c≦2を満たす数であり、特に好ましくは0である。
【0116】
本発明は、下記式(5)で表される窒素原子含有環式化合物を提供する。
【化25】

11、A12、A13及びA14は、置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を表す。A11、A12、A13及びA14はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R21、R22、R23及びR24は、水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。R21、R22、R23及びR24はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0117】
11、A12、A13、A14、R21、R22、R23及びR24の具体的な例及び好ましい例は、上記素子に含まれる金属錯体に関する式(5)における説明と同様である。
【0118】
本発明の金属錯体は、磁気材料として有用であるので、生体プローブ、造影剤としても有用である。また、本発明の金属錯体は、添加剤、改質剤、触媒等の材料としても有用である。さらに本発明の窒素原子含有環式化合物は、上記金属錯体の配位子として有用である。
【実施例】
【0119】
以下、本発明について、実施例を用いて詳細に説明する。
【0120】
紫外可視吸収スペクトルは、吸収分光光度計(Varian社製、Cary5E)で測定して求めた。発光スペクトルは、励起波長を389nmとして、蛍光分光光度計(日本分光株式会社製、商品名:FP−6500)により測定した。発光量子収率は標準試料硫酸キニーネ1N硫酸水溶液中における発光量子収率(55%)と比較し算出した。励起寿命は、蛍光分光光度計(JOBINYVON−SPEX社製、商品名:Fluorolog−Tau3)により、発光スペクトルの発光ピーク波長における励起寿命として求めた。
【0121】
<実施例1>
<窒素原子含有環式化合物(A−13)の合成例>
【化26】

原料の2−(クロロメチル)−1−メチルベンズイミダゾールは、Inorganic Chemistry 32,2056−2067(1993)の記載に準じて合成した。すなわち、N−メチル−1,2−ジアミノベンゼンとクロロ酢酸を6N塩酸中にて8時間加熱還流し反応させ、アンモニア水にて中和することにより、2−(クロロメチル)−1−メチルベンズイミダゾールを得た。
【0122】
50mLのシュレンク管に、2−(クロロメチル)−1−メチルベンズイミダゾール(500mg、2.77mmol)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン(114mg、0.660mmol)、無水炭酸ナトリウム(294mg、2.77mmol)及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF、10mL)を入れ、アルゴン雰囲気下、100℃にて13時間加熱撹拌した。溶媒を真空下にて留去し、残渣をアルミナカラムクロマトグラフィーで精製することにより、白色固体の窒素原子含有環式化合物(A−13)を得た(213mg、収率47%)。
【0123】
1H NMR(300MHz、CDCl3/MeOD-d4):δ(ppm)=7.66(d、J=6.9Hz、4H)、7.27(m、12H)、3.67(s、8H)、3.39(s、12H)、2.76(s、16H).
【0124】
<金属錯体(B−1)の合成例>
【化27】

窒素原子含有環式化合物(A−13)(20mg、0.029mmol)のアセトニトリル懸濁溶液(4mL)に、セリウムトリフルオロメタンスルホネート(15mg、0.026mmol)のエタノール溶液(4mL)を加えて、室温で1.5時間撹拌し、均一透明溶液を得た。ここにゆっくりとジエチルエーテル(約6mL)を加えて放置したところ、固体が析出した。この固体を回収し、真空下にて乾燥させ、白色固体の金属錯体(B−1)を得た(23mg、収率70%)。
【0125】
元素分析 Found(%)C:46.15、H:4.71、N:13.81、S:6.89、Calcd for 金属錯体(B−1)(%)C:46.32、H:4.37、N:14.00、S:6.16
【0126】
<実施例2>
<金属錯体(B−2)の合成例>
【化28】

原料の窒素原子含有環式化合物(A−9)は、Journal of the Chemical Society,Dalton Transactions 1743−1745(1986)の記載に準じて合成した。すなわち、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカンと2−(クロロメチル)ピリジン塩酸塩を、水酸化ナトリウム存在下、ジクロロメタン中にて室温下24時間反応させ、窒素原子含有環式化合物(A−9)(不純物としてHClを含む)を得た。
【0127】
窒素原子含有環式化合物(A−9)(500mg、0.932mmol以下)とセリウムトリフルオロメタンスルホネート(547mg、0.932mmol)に脱水メタノール(25mL)を加え、5時間加熱還流した。反応溶液を室温下にてゆっくり加熱濃縮したところ、無色結晶が析出した。この結晶を回収し、真空下にて乾燥させ、金属錯体(B−2)を得た(335mg、収率34%)。
【0128】
元素分析 Found(%)C:39.26、H:3.94、N:10.71、S:7.00、Cl:3.04、Calcd for 金属錯体(B−2)(%)C:39.51、H:3.86、N:10.64、S:7.08、Cl:2.35
【0129】
金属錯体(B−2)は、紫外線励起(365nm)により固体粉末状態、溶液状態(アセトニトリル)で黄緑色に発光した。
【0130】
アセトニトリル中での発光スペクトルは475nmにピークを持ち、その発光量子収率は12%であり、励起寿命は26.3nsであった。
【0131】
<電界発光素子の作製例>
スパッタリング法にて150nmの厚みでITO膜を形成したガラス基板に、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(重量平均分子量 Mw 20000以下)に、金属錯体(B−2)を50重量%混合し、スピンコート法にて成膜した。厚さは120nmであった。成膜された膜を60℃にて20分乾燥させた後、フッ化リチウムを約0.5nm、更にアルミニウムを約80nm蒸着して陰極とし、電界発光素子を作製した。得られた素子に電圧を印加したところ黄緑色の発光が観測された。
【0132】
ヘテロ原子としては酸素原子のみを骨格中に含む環式化合物のセリウム錯体では紫外光励起により376nm付近に発光ピークを、またそれを用いる電界発光素子で382nm付近に発光ピークを示す(Solid−State Electronics.51,894−899(2007))。すなわち、酸素原子のみを骨格に含む環式化合物のセリウム錯体では、紫外光領域に発光を示す。これに対して、セリウムと上記窒素原子含有環式化合物とを含む金属錯体を含有する本発明の電界発光素子は、上記実施例に示すように、発光ピークが可視光領域に位置し、可視光領域において十分な発光を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリウムと、下記式(1)で表される窒素原子含有環式化合物との金属錯体を含有する素子。
【化1】

(式中、A1は、置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を表す。複数あるA1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。nは3以上の整数を表す。Z1は、−O−、−S−、−NR1−、又は−PR2−を表すが、1つ以上は−NR1−である。複数あるZ1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R1及びR2は、水素原子、又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。R1及びR2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R1が複数ある場合、複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R2が複数ある場合、複数のR2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
1、R1又はR2が、置換基として1つ以上の窒素原子含有ヘテロシクリル基を有する請求項1に記載の素子。
【請求項3】
窒素原子含有環式化合物が下記式(2)で表される、請求項1又は2に記載の素子。
【化2】

(式中、A2及びA3は、置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を表す。A2及びA3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。A2が複数ある場合、複数のA2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。A3が複数ある場合、複数のA3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Z2は、−O−、−S−、−NR1−、又は−PR2−を表す。Z2が複数ある場合、複数のZ2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。mは1以上の整数を表し、pは0以上の整数を表し、m+pは3以上の整数である。R10は置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を表す。R10が複数ある場合、複数のR10はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。L10は、置換基を有していてもよい窒素原子含有ヘテロシクリル基を表す。L10が複数ある場合、複数のL10はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項4】
上記式(2)において、m+pが3〜6の整数である請求項3に記載の素子。
【請求項5】
上記式(2)において、pが0である請求項3又は4に記載の素子。
【請求項6】
窒素原子含有環式化合物が下記式(3)で表される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の素子。
【化3】

(式中、L11、L12、L13及びL14は、置換基を有していてもよい窒素原子含有ヘテロシクリル基を表す。L11、L12、L13及びL14はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。A11、A12、A13及びA14は、置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を表す。A11、A12、A13及びA14はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R11、R12、R13及びR14は、置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を表す。R11、R12、R13及びR14はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項7】
上記金属錯体が、下記組成式(11)で表される金属錯体である請求項6に記載の素子。
【化4】

(式中、Lは下記式(3)で表される窒素原子含有環式化合物を表す。Lが複数ある場合、複数のLはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは対イオンを表す。Xが複数ある場合、複数のXはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。L’は上記式(3)で表される窒素原子含有環式化合物以外の2座以下の配位子を表す。a’は正の数であり、b’及びc’は0以上の数である。b’及びc’はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【化5】

(式中、L11、L12、L13及びL14は、置換基を有していてもよい窒素原子含有ヘテロシクリル基を表す。L11、L12、L13及びL14はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。A11、A12、A13及びA14は、置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を表す。A11、A12、A13及びA14はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R11、R12、R13及びR14は、置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を表す。R11、R12、R13及びR14はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項8】
上記素子が電界発光素子である請求項1〜7のいずれか1項に記載の素子。
【請求項9】
下記組成式(4)で表される金属錯体。
【化6】

(式中、Lは下記式(3)で表される窒素原子含有環式化合物を表す。Lが複数ある場合、複数のLはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは対イオンを表す。Xが複数ある場合、複数のXはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。L’は上記式(3)で表される窒素原子含有環式化合物以外の2座以下の配位子を表す。aは0.5を超える数であり、b及びcは0以上の数である。b及びcはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【化7】

(式中、L11、L12、L13及びL14は、置換基を有していてもよい窒素原子含有ヘテロシクリル基を表す。L11、L12、L13及びL14はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。A11、A12、A13及びA14は、置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を表す。A11、A12、A13及びA14はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R11、R12、R13及びR14は、置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を表す。R11、R12、R13及びR14はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項10】
下記式(5)で表される窒素原子含有環式化合物。
【化8】

(式中、A11、A12、A13及びA14は、置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を表す。A11、A12、A13及びA14はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R21、R22、R23及びR24は、水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。R21、R22、R23及びR24はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)

【公開番号】特開2012−124252(P2012−124252A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272417(P2010−272417)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】