説明

金属錯体を用いたエポキシドと二酸化炭素との交互共重合

【課題】二酸化炭素とエポキシドモノマーとの交互共重合を、大気圧に近い低圧の二酸化炭素雰囲気下で実施することができる、新規のポリカルボキシナート製造方法およびそのための重合触媒を提供する。
【解決手段】配位原子としてO、N、N、Oを有する四座配位子と1個の中心金属からなる金属錯体の存在下、エポキシド化合物をモノマー原料として、二酸化炭素と共重合させることによりポリカルボナート交互共重合体を製造する方法であって、前記金属錯体が式(I):


で表される化合物であることを特徴とする製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシドと二酸化炭素との交互共重合によりポリカルボナートを製造する方法及び該製造方法のために使用するための触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素の有効利用のための技術として、エポキシドと二酸化炭素との共重合により製造されるポリカルボナート材料が注目を集めている。また、エポキシドと二酸化炭素の交互共重合により得られるポリカルボナートは、透明性・ガスバリア性・生分解性などの機能を有し、汎用樹脂としてのみならず様々な先端技術分野での応用が期待されている。
【0003】
ポリカルボナートの製造法に関する研究も精力的に進められており、例えば、近年、下記式のシッフ塩基−クロム錯体化合物を重合触媒として用いることにより、従来よりも高い重合活性が得られ、非常に高い収量でポリカルボナートが生成することが報告されている(非特許文献1)。
【0004】
【化1】

【0005】
本金属錯体を用いて高い重合活性を実現するためには、エポキシドと触媒の混合物に、二酸化炭素ガスを約3.5 MPa(約35気圧)の高圧下で接触させる必要がある。しかし、一般に高圧条件を用いる工業的な反応プロセスを実施する場合、高コスト化は避けられないため、本金属錯体を用いたポリカルボナートの製造方法には実用性の点で問題がある。
【0006】
他方、1気圧の二酸化炭素雰囲気下で、エポキシドと二酸化炭素との共重合を実現することができるマンガン−ポリフィリン錯体が報告されている。しかしながら、その触媒活性は低い(非特許文献2)。
【非特許文献1】Darensbourg, D. J.; Mackiewicz, R. M.; Billodeaux, D. R. Organometallics(オルガノメタリックス) 2005, 24, 144-148.
【非特許文献2】Sugimoto, H.; Ohshima, H.; Inoue, S. J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. (ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス、パート・エイ、ポリマー・ケミストリー)2003, 41, 3549-3555.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、ポリカルボナートの製造技術において、原料として導入する二酸化炭素の圧力の低圧化と重合触媒の高活性化との両立は十分に実現されておらず、この課題を解決するための新たな触媒及び製法の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、配位原子としてO、N、N、Oを有する四座配位子、特にサラレン(salalen)及びサラン(salan)と呼ばれる化合物群に分類される配位子と、周期律表第3族及び第6〜10族に属する金属元素から選択される中心金属とからなる配位化合物を重合触媒とすることによって上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明の一態様は、
配位原子としてO、N、N、Oを有する四座配位子と1個の中心金属からなる金属錯体の存在下、エポキシド化合物をモノマー原料として、二酸化炭素と共重合させることによりポリカルボナート交互共重合体を製造する方法であって、
前記金属錯体が、式(I):
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、Mは周期律表第3族及び第6〜10族に属する金属元素から選択され、
Qは、C1−20アルキレン基及びC6−40アリーレン基からなる群から選択され、前記アルキレン基は炭素鎖中に不飽和結合を含んでもよく;
及びXは、少なくともいずれか一方は存在することを条件に、独立に、Xは水素、C1−20アルキル及びC6−20アリールからなる群から選択される置換基を表し、
また、式中に点線が付されたC−N間の結合は、Nに結合するXが存在する場合には、単結合であり、Nに結合するXが存在しない場合には二重結合であり;
及びYは、同一でも異なっていてもよく、独立に、H、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C6−20アリールオキシ、C6−20アリール、C1−20カルボキシレート、C1−20アシル、C1−20フルオロアルキル、SiG、NO、NG’G’、シアノ、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される置換基を表し;
及びZは、同一でも異なっていてもよく、独立に、H、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C6−20アリールオキシ、C6−20アリール、C1−20カルボキシレート、C1−20アシル、C1−20フルオロアルキル、SiG、Si(OG)(OG)(OG)、NO、NG、シアノ、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される置換基を表し;
ただし、前記C1−20アルキレン、C6−40アリーレン、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C6−20アリールオキシ、C6−20アリール、C1−20カルボキシレート、C1−20アシル、C1−20フルオロアルキル、SiG及びNG’G’に含まれる炭素原子はOH、CN、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される1個以上の基で置換されていてもよく、
また、前記C1−20アルキレン、C6−30アリーレン、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C6−20アリールオキシ、C6−20アリール、C1−20カルボキシレート、C1−20アシル、C1−20フルオロアルキル、SiG及びNG’G’に含まれる炭素原子の間には、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−C(=O)−S−、−C(=O)−NH−からなる群から選択される部分構造が介在してもよく;
、G及びGは、同一でも異なっていてもよく、独立に、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C6−20アリール及びC6−20アリールオキシから選択される基を表し、他方、G’及びG’は、同一でも異なっていてもよく、独立に、H、C1−20アルキル及びC6−20アリールから選択される基を表し、
Tは脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシラート、フェノキシラート、N、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される1種類のアニオン配位子である。)
で表される化合物であることを特徴とする、前記製造方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、別の態様として、上記式(I)の化合物からなるポリカルボナート製造用の重合触媒も提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の触媒を用いたポリカルボナートの製造方法では、大気圧程度の低い圧力で二酸化炭素をエポキシドと接触させることにより高い重合活性を実現することができ、二酸化炭素圧力の低圧化によるポリカルボナート製造プロセスの低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明において重合触媒として用いられる金属錯体は、中心金属として、周期律表第3族及び第6〜10族に属する金属元素から選択される金属を含む。好ましい金属の例としては、特に限定するものではないが、クロム、コバルト及びニッケルが挙げられる。より好ましい金属としてはクロム及びコバルトが挙げられる。中心金属の酸化数は、金属元素の種類により異なるが、1〜3価である場合が多い。例えば、コバルトとクロムは通常、2価と3価のいずれの酸化状態もとることができ、特に3価が好ましい。また、ニッケルの場合には、通常2価で安定している。
【0015】
金属錯体の配位子には、配位原子としてO、N、N、Oを含む四座配位子であり、サレン(salen,N,N’−ビス(サリチリデン)エチレンジアミン)タイプのシッフ塩基に含まれる2個のイミン(>C=N−)結合の一方が単結合に置き換わった構造を有するサラレン(salalen)及び両方共に単結合に置き換わった構造を有するサラン(salan)が含まれる。
【0016】
サラレン及びサランはいずれも、既知の合成法に従い又は既知の合成法を適宜変更することによって製造することができる(例えば、サランの合成に関しては、Balsells, J. らの原著論文(Inorg. Chem. 2001, 40, 5568)がある。また、サラレンの合成に関しては、Saito, B. らの原著論文(Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 4600)やBerkessel, A. らの原著論文(Adv. Synth. Catal. 2007, 349, 2385)などがある)。
【0017】
本発明において、上記のサラレン及びサラン配位子が金属に配位して形成されるの金属錯体の例は、以下の式(I)で表される。
式(I):
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、Mは周期律表第3族及び第6〜10族に属する金属元素から選択され、
Qは、C1−20アルキレン基及びC6−40アリーレン基からなる群から選択され、前記アルキレン基は炭素鎖中に不飽和結合を含んでもよく;
及びXは、少なくともいずれか一方は存在することを条件に、独立に、Xは水素、C1−20アルキル及びC6−20アリールからなる群から選択される置換基を表し、
また、式中に点線が付されたC−N間の結合は、Nに結合するXが存在する場合には、単結合であり、Nに結合するXが存在しない場合には二重結合であり;
及びYは、同一でも異なっていてもよく、独立に、H、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C6−20アリールオキシ、C6−20アリール、C1−20カルボキシレート、C1−20アシル、C1−20フルオロアルキル、SiG、NO、NG’G’、シアノ、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される置換基を表し;
及びZは、同一でも異なっていてもよく、独立に、H、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C6−20アリールオキシ、C6−20アリール、C1−20カルボキシレート、C1−20アシル、C1−20フルオロアルキル、SiG、NO、NG’G’、シアノ、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される置換基を表し;
ただし、前記C1−20アルキレン、C6−40アリーレン、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C6−20アリールオキシ、C6−20アリール、C1−20カルボキシレート、C1−20アシル、C1−20フルオロアルキル、SiG及びNG’G’に含まれる炭素原子はOH、CN、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される1個以上の基で置換されていてもよく、
また、前記C1−20アルキレン、C6−30アリーレン、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C6−20アリールオキシ、C6−20アリール、C1−20カルボキシレート、C1−20アシル、C1−20フルオロアルキル、SiG及びNG’G’、に含まれる炭素原子の間には、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−C(=O)−S−、−C(=O)−NH−からなる群から選択される部分構造が介在してもよく;
、G及びGは、同一でも異なっていてもよく、独立に、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C6−20アリール及びC6−20アリールオキシから選択される基を表し、他方、G’及びG’は、同一でも異なっていてもよく、独立に、H、C1−20アルキル及びC6−20アリールから選択される基を表し、
Tは脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシラート、フェノキシラート、N、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される1種類のアニオン配位子である。)
なお、Tは電気的中性を保つために必要に応じて又必要な数だけ存在するものと理解すべきである。すなわち、中心金属Mの酸化数によって金属錯体全体の電荷も変動し得ることから、Tの数は本来可変的であるが、本明細書中では、便宜的にTを見掛け上1個記載しているにすぎない。例えば、Tが1価のアニオンであると仮定すると、Mが3価の場合Tは1個存在すればよいが、Mが2価の場合Tは存在しないことになる。本発明の金属錯体においては、本明細書中に記載された中心金属とアニオン配位子のいかなる組み合わせも包含するものと理解すべきである。
【0020】
本発明のポリカーボネートの製造方法に用いられる金属錯体は、上記式(I)中、
Qが式(II)で表されるアルキレン基又はアリーレン基であることが好ましい。
【0021】
【化4】

【0022】
(式中、R、R、R、Rは独立に水素、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C6−30アリール、F、Cl、Br及びIからなる群から選択されるか;又は、RとR若しくはRとが一緒になって、又は、RとR若しくはRとが一緒になって、飽和又は不飽和の単環式又は縮合多環式構造を形成し、環を形成しない残りのRは水素であるか若しくは存在せず、
ここで、前記環を構成する炭素原子の数は20個以下であり、ただし、縮合多環式構造の場合には、2個以上の脂肪族環及び/又は芳香族環からなり、1個の環を構成する炭素原子の数は4〜8個であり、
また、環構造を構成する炭素は、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C1−20アリールオキシ、C6−20アリール、C1−20カルボキシレート、C1−20アシル、C1−20フルオロアルキル、SiG、NO、NG’G’、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される基によって置換されていてもよく、ここでG、G、G、G’及びG’は前記の通りの基を表す。)。
【0023】
さらに好ましくは、Qはエチレン、フェニレン及びシクロへキセンからなる群から先学される。
本発明の別の態様として、本発明のポリカーボネートの製造方法に用いられる金属錯体は、上記式(I)中、Y及びYが、同一でも異なっていてもよく、独立に、H、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される置換基であることが好ましく、特に特にt-ブチルであることが好ましく、
他方、Z及びZについては、同一でも異なっていてもよく、独立に、H、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される置換基であることが好ましく、特にt-ブチルであることが好ましい。
【0024】
本発明のさらに別の態様として、本発明のポリカーボネートの製造方法に用いられる金属錯体は、上記式(I)中、X及びXが、少なくともいずれか一方は存在することを条件に、独立に、水素、C1−6アルキル及びC6−20アリールからなる群から選択される置換基であることが好ましく、特に水素、メチル又はエチルであることが好ましい。
【0025】
好ましい金属錯体の例としては、特に以下に限定するものではないが、式(III)及び(IV)で表される化合物を挙げることができる。
【0026】
【化5】

【0027】
本発明の具体的な態様に包含される金属錯体は、場合によっては助触媒の共存下で使用してもよい。助触媒としては、例えばオニウム塩化合物が好ましく、特に[NR’R’R’R’、[PR’R’R’R’及び[R’R’R’P=N=PR’R’R’からなる群から選択されるカチオンと、F-、Cl-、Br-、I-及びカルボキシラートから選択されるアニオンとからなるオニウム塩化合物(R’、R’、R’、R’、R’及びR’は、同一でも異なっていてもよく、独立して、C1−20アルキル及びC6−20アリールから選択される基を表す)が好ましい。さらに、前記カルボキシラートには、テトラフルオロベンゾアート(OC(=O)C6F5)が好ましい。また、前記オニウム塩化合物の具体例として、特に限定するものではないが、[PhP=N=PPh]Cl、[PhP=N=PPh][OC(=O)C]などを挙げることができる。
【0028】
本発明の触媒を用いた重合反応は、エポキシドが液体である場合には、溶媒を使用することなく実施することができる。固体のエポキシドを用いる場合など、溶媒が特に必要な場合には、適宜有機溶媒を選択して使用してもよい。
【0029】
本発明の製造方法に使用可能なエポキシド化合物には、特に制限はなく、所望の生成物に応じて、適宜選択可能である。例えば、エチレンオキシドのようなアキラルのエポキシド、プロピレンオキシドのようなキラルのエポキシド、およびシクロへキセンオキシドのようなメソエポキシドのいずれもが包含される。例えば、使用可能なエポキシドは式(V):
【0030】
【化6】

【0031】
(式中、R”、R”、R”、R”は独立に水素、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C6−20アリールオキシ、C6−20アリール、C1−20カルボキシレート、C1−20アシル、C1−20フルオロアルキル、SiG”G”G”、NO、NG’’’G’’’、シアノ、F、Cl、Br及びIからなる群から選択されるか;又は、R”とR”若しくはR”とが一緒になって、又は、R”とR”若しくはR”とが一緒になって、飽和又は不飽和の単環式又は縮合多環式構造を形成し、環を形成しない残りのR”は水素であるか若しくは存在せず、
ここで、前記環を構成する炭素原子の数は20個以下であり、ただし、縮合多環式構造の場合には、2個以上の脂肪族環及び/又は芳香族環からなり、1個の環を構成する炭素原子の数は4〜8個であり、
また、前記環を構成する炭素原子は、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C6−20アリールオキシ、C6−20アリール、C1−20カルボキシレート、C1−20アシル、C1−20フルオロアルキル、SiG”G”G”、NO、NG’’’G’’’、シアノ、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される基によって置換されていてもよく;
G”、G”及びG”は、同一でも異なっていてもよく、独立に、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C6−20アリール及びC6−20アリールオキシから選択される基を表し、他方、G’’’及びG’’’は、同一でも異なっていてもよく、独立に、H、C1−20アルキル及びC6−20アリールから選択される基を表す。)
で表される化合物である。
【0032】
エポキシドと共重合させる二酸化炭素は、気体のまま反応容器に導入して反応に使用する。また、本発明では、共重合反応の実施の際に不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましく、二酸化炭素は不活性ガスとともに反応容器内に共存させてもよい。反応容器内の二酸化炭素の圧力は、通常0.1〜5MPa、好ましくは0.1〜3.5MPaである。本発明の金属錯体は、従来のポリカルボナート重合触媒では高い重合活性を示さなかった大気圧に近い低圧(約0.1MPa程度)の二酸化炭素雰囲気下においても、高い重合活性が得られる点に特徴がある。
【0033】
反応に使用するエポキシドと二酸化炭素のモル比は、特に制限はないが、典型的には1:1.0〜1:10であるが、好ましくは1:1.0〜1:3.0、より好ましくは1:1.0〜1:2.0である。
【0034】
本発明における交互共重合は、約0〜80℃の温度範囲で実施可能であるが、通常は70℃で実施される。交互共重合反応は、過剰量の二酸化炭素の存在下では、エポキシドが完全に消費されるまで続けることができるが、数時間〜数十時間にわたって反応を十分に進行させた後に適当な反応停止剤で反応を停止させてもよい。反応停止剤は、ポリカルボナートの重合反応を停止させる慣用の試薬であれば、特に制限なく使用してよい。例えば、アルコール(例えばメタノール)、水、酸(例えば塩酸)などの活性プロトンをもつ化合物を使用することができる。交互共重合の終了後、未反応物および溶媒(溶媒を用いた場合)を留去し、生成した反応生成物を再沈殿その他の適切な方法で精製することができる。
【0035】
本発明のより製造されるポリカルボナートの分子量は、ゲルパミエーションクロマトグラフィー(GPC;ポリスチレン換算)によって測定した典型的な数平均分子量Mでは1000以上、好ましくは2,000〜100,000、さらに好ましくは3,000
〜10,000である。
【0036】
本発明の製造方法により得られるポリカルボナートは比較的狭い分子量分布(M/M)を有し得る。具体的には4未満であり、好ましくは2.5未満、最も好ましくは、約1.0〜約1.2である。
【実施例】
【0037】
以下の実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本実施例で得られた化合物のHNMRスペクトルの測定は、JEOL社製JNM−ECP500(500 MHz)を用いて行った
ポリカルボナートの分子量測定は、ジーエルサイエンス社製高速液体クロマトグラフィーシステム(DG660B・PU713・UV702・RI704・CO631A)とSHODEX社製KF−804Fカラム2本を用いてテトラヒドロフランを溶出液として(40℃,1.0 mL/分)、ポリスチレン標準を基準に換算して測定し、解析
ソフトウェア(Scientific Software社製EZChrom Elite)で処理して求めた
(1)触媒の調製
以下の合成例に反応溶媒として使用したメタノールやエタノールは関東化学株式会社から入手した脱水グレードの試薬を用いた。反応溶媒として使用したテトラヒドロフランはは関東化学株式会社から入手した脱水グレードの試薬をGlassContour社製溶媒精製装置に通したものを使用した。
【0038】
(1R,2R)−1,2−ジアミノシクロヘキサン、水素化ホウ素ナトリウムは、東京化成工業株式会社から入手した試薬をそのまま使用した。塩化水素ジエチルエーテル溶液、3,5-ジ-t-ブチルサリチルアルデヒド、塩化クロム(II) はAldrich社から入手した試薬をそのままもちいた。
【0039】
また、サラレン配位子(1b)は、文献(Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 4600)記載の方法で合成した。
合成例A: 新規サラレン配位子(1a)の合成
【0040】
【化7】

【0041】
アルゴンガス雰囲気下、20 mL容のシュレンク管に(R, R)-ジアミノシクロヘキサン(314 mg, 2.8 mmol)と脱水エタノール(4 mL)を入れ、0℃で脱水エタノール(5 mL)に溶解させた1 M 塩化水素ジエチルエーテル溶液(2.7 mmol, 2.7 mL)をゆっくり加えた。加え終わったら、室温で12 時間攪拌後、液量が5 mL程度になるまで濃縮し、ジエチルエーテルを加え、生じた沈殿をろ別し、減圧下で乾燥した。
【0042】
アルゴンガス雰囲気下、20 mL容のシュレンク管に得られた(R, R)-ジアミノシクロヘキサン塩酸塩と脱水メタノール(3 mL)を入れ、脱水メタノール(8 mL)に溶解させた3,5-ジ-t-ブチルサリチルアルデヒド(582 mg, 2.5 mmol)を加えて、室温で19時間攪拌する。反応溶液を濃縮したのち、メタノール/エタノール(1:1)に溶解させ、不溶成分をろ別した。ろ液を濃縮し、ジエチルエーテルを加え、生じた沈殿をろ別した。得られた固体を減圧下で乾燥させて組成生物を得た。
【0043】
得られた粗生成物を100 mLナスフラスコに入れ、脱水メタノール(35 mL)に溶解させて、0℃に冷却した。ここに、水素化ホウ素ナトリウム(純度90%, 474 mg, 11.3 mmol)を少しずつ加えると、直ちに黄色溶液が無色透明に変化した。室温で45分攪拌後、水を加えて反応を終了させ、ジエチルエーテルで3回抽出した。有機層を飽和食塩水で3回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮したのち、減圧下で乾燥した。
【0044】
得られた粗成生物をメタノール(20 mL)に溶解させ、3,5-ジ-t-ブチルサリチルアルデヒド(531 mg, 2.3 mmol)を加えて、室温で17時間攪拌後、生じた白色沈殿をろ別する。得られた沈殿を冷メタノールで洗浄したのち、減圧下で乾燥させて、目的の配位子(1a)を得た(918 mg, 収率75%)。
【0045】
1H NMR (CDCl3, 500 MHz) d 13.48 (s, 1H), 10.82 (br, 1H), 8.41 (s, 1H), 7.37 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.16 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.06 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 6.82 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 4.04 (d, J = 13.4 Hz, 1H), 3.81 (d, J = 13.4 Hz, 1H), 3.06-3.01 (m, 1H), 2.83-2.78 (m, 1H), 2.27-2.22 (m, 1H), 1.85-1.52 (m, 6H), 1.44 (s, 9H), 1.41-1.36 (m, 2H), 1.34 (s, 9H), 1.28 (s, 9H), 1.24 (s, 9H).
合成例B: 金属触媒の調製
B−1: 金属錯体(2a)
【0046】
【化8】

【0047】
アルゴンガス雰囲気下、20 mL容のシュレンク管にサラレン配位子(1a)(151 mg, 0.28 mmol)と二塩化クロム(37 mg, 0.30 mmol)を入れ、脱水THF(約 5 mL)を加えて室温で24時間攪拌した。その後、シュレンク管の蓋を開け、空気下でさらに24時間攪拌する。ジエチルエーテルを加え、飽和塩化アンモニウム水溶液で3回、続いて飽和食塩水で3回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮・減圧乾燥して、目的のクロム錯体(2a)を得る(206 mg)。MS-FAB+ (m/z) calcd for C36H54ClCrN2O2(M+) 633.3 and C36H54CrN2O2([M-Cl]+) 598.4, found 633.3, 598.3。
【0048】
B−2: 金属触媒(2b)
【0049】
【化9】

【0050】
アルゴンガス雰囲気下、20 mL容のシュレンク管にsalalen-Me配位子(107 mg, 0.19 mmol)と二塩化クロム(26 mg, 0.21 mmol)を入れ、脱水THF(約. 5 mL)を加えて室温で24時間攪拌した。その後、シュレンク管の蓋を開け、空気下でさらに24時間攪拌した。ジエチルエーテルを加え、飽和塩化アンモニウム水溶液で3回、続いて飽和食塩水で3回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮・減圧乾燥して、目的のクロム錯体(2b)を得た(133 mg)。MS-FAB+ (m/z) calcd for C37H56ClCrN2O2(M+) 647.3 and C37H56CrN2O2([M-Cl]+) 612.4, found 648.1, 613.0。
(2)重合反応の実施
以下の重合実験に使用したシクロヘキセンオキシドは、Aldrich社から入手した試薬を水素化カルシウムで脱水後、アルゴン雰囲気下で蒸留して得られたものである。
【0051】
以下の比較例で用いた錯体(3)は、Darensbourg, D. J.; Mackiewicz, R. M.; Rodgers, J. L.; Fang, C. C.; Billodeaux, D. R.; Reibenspies, J. H. Inorg. Chem., 2004, 43, 6024.に従って調製したものを使用した。
【0052】
また、以下の比較例でもちいた錯体(4)は、Cohen, C. T.; Chu, T.; Coates, G. W.J. Am. Chem. Soc., 2005, 127, 10869.)に従って調製したものを使用した。
各金属錯体の触媒活性は、単位時間および錯体1 molあたり生成共重合体に取り込まれたエポキシドの物質量(mol)によって評価した。なお、取り込まれたエポキシドの量は、以下のようにして決定した。すなわち、重合終了後、反応混合物に内部標準としてフェナントレンを加え、生じた混合物の一部を抜き取り、1H NMR測定をおこなった。フェナントレンと共重合体それぞれのピーク面積から共重合体に取り込まれたエポキシドの量を算出した。
【0053】
また,各金属錯体を用いた場合の共重合体/環状カーボナート比は、上記の1H NMRスペクトルによって、それぞれに帰属されるピークの面積比により算出した。
また,各金属錯体から得られる共重合体中のカーボナート結合/エーテル結合の比は、上記の1H NMRスペクトルによって、それぞれのユニットに帰属されるピークの面積比から算出した。
【0054】
実施例1:金属/サラレン錯体(2b)を重合触媒に用いたポリカーボナートの製造
【0055】
【化10】

【0056】
アルゴンガス雰囲気下、クロム錯体(2b)(6 mg, 10 mmol)とビスホスホラニリデンアンモニウムクロリド([Ph3P=N=PPh3]Cl, 6 mg, 10 mmol)を耐圧反応容器に入れ、1時間真空乾燥させた。シクロヘキセンオキシド(1.0 mL, 9.9 mmol)を耐圧反応容器に入れ、二酸化炭素を圧入して70℃で5時間攪拌した。氷水で冷却した後、二酸化炭素圧を抜き、フェナントレンと重クロロホルムを加え、1H NMRを測定する[活性:95 (mol of epoxide)・(mol of 2b)-1・h-1]。反応容器内に残った粗生成物をジクロロメタンを用いて丸底フラスコに移した後、濃縮し、メタノールで再沈殿して共重合体を得た。
【0057】
実施例2:金属/サラレン錯体(2b)の触媒活性の圧力依存性の検討
【0058】
【化11】

【0059】
アルゴンガス雰囲気下、クロム錯体(2b)(6 mg, 10 mmol)とビスホスホラニリデンアンモニウムクロリド([Ph3P=N=PPh3]Cl, 6 mg, 10 mmol)を耐圧反応容器に入れ、1時間真空乾燥させた。シクロヘキセンオキシド(1.0 mL, 9.9 mmol)を耐圧反応容器に入れ、二酸化炭素を圧入して70℃で2時間攪拌した。氷水で冷却した後、二酸化炭素圧を抜き、フェナントレンと重クロロホルムを加え、1H NMRを測定する[活性:100 (mol of epoxide)・(mol of 2b)-1・h-1]。反応容器内に残った粗生成物をジクロロメタンを用いて丸底フラスコに移した後、濃縮し、メタノールで再沈殿して共重合体を得た。
【0060】
以下、同様の反応条件で、異なる二酸化炭素圧下での重合結果を下表に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
実施例3:金属/サラレン錯体(2a)を重合触媒に用いたポリカーボナートの製造
【0063】
【化12】

【0064】
アルゴンガス雰囲気下、クロム錯体(2a)(6 mg, 10 mmol)とビスホスホラニリデンアンモニウムクロリド([Ph3P=N=PPh3]Cl, 6 mg, 10 mmol)を耐圧反応容器に入れ、1時間真空乾燥させた。シクロヘキセンオキシド(1.0 mL, 9.9 mmol)を耐圧反応容器に入れ、二酸化炭素を圧入して70℃で2時間攪拌した。氷水で冷却した後、二酸化炭素圧を抜き、フェナントレンと重クロロホルムを加え、1H NMRを測定した[活性:114 (mol of epoxide)・(mol of 2a)-1・h-1]。反応容器内に残った粗生成物をジクロロメタンを用いて丸底フラスコに移した後、濃縮し、メタノールで再沈殿して共重合体を得た。
【0065】
比較例:金属/サレン錯体を重合触媒に用いたポリカルボナートの製造
(1)クロム−サレン錯体を用いた場合
【0066】
【化13】

【0067】
アルゴンガス雰囲気下、クロム錯体(3)(6 mg, 10 mmol)とビスホスホラニリデンアンモニウムクロリド([Ph3P=N=PPh3]Cl, 6 mg, 10 mmol)を耐圧反応容器に入れ、1時間真空乾燥させた。シクロヘキセンオキシド(1.0 mL, 9.9 mmol)を耐圧反応容器に入れ、二酸化炭素を圧入(0.1MPa)して70℃で5時間攪拌した。氷水で冷却した後、二酸化炭素圧を抜き、フェナントレンと重クロロホルムを加え、1H NMRを測定した[活性:52 (mol of epoxide)・(mol of (3))-1・h-1]。反応容器内に残った粗生成物をジクロロメタンを用いて丸底フラスコに移した後、濃縮し、メタノールで再沈殿して共重合体を得た。
(2)コバルト−サレン錯体を用いた場合
【0068】
【化14】

【0069】
アルゴンガス雰囲気下、コバルト錯体(4)(8 mg, 10 mmol)とビスホスホラニリデンアンモニウムクロリド([Ph3P=N=PPh3]Cl, 6 mg, 10 mmol)を耐圧反応容器に入れ、1時間真空乾燥させた。シクロヘキセンオキシド(1.0 mL, 9.9 mmol)を耐圧反応容器に入れ、二酸化炭素を圧入(0.1MPa)して70℃で5時間攪拌した。氷水で冷却した後、二酸化炭素圧を抜き、フェナントレンと重クロロホルムを加え、1H NMRを測定した[活性: 2 (mol of epoxide)・(mol of (4))-1・h-1]。反応容器内に残った粗生成物をジクロロメタンを用いて丸底フラスコに移した後、濃縮し、メタノールで再沈殿して共重合体を得た。
【0070】
【表2】

【0071】
Sugimoto, H.; Ohshima, H.; Inoue, S. J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 2003, 41, 3549-3555.
** Sugimotoらの上記論文3553頁Table 1, run 12に記載された触媒活性データを換算して得られた値。
*** Darensbourg, D. J.; Mackiewicz, R. M.; Billodeaux, D. R. Organometallics 2005, 24, 144-148.
**** Darensbourgらの上記論文146頁Table 2に記載されたデータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配位原子としてO、N、N、Oを有する四座配位子と1個の中心金属からなる金属錯体の存在下、エポキシド化合物をモノマー原料として、二酸化炭素と共重合させることによりポリカルボナート共重合体を製造する方法であって、
前記金属錯体が式(I)で表される化合物であることを特徴とする前記方法。
【化1】

(式中、Mは周期律表第3族及び第6〜10族に属する金属元素から選択され、
Qは、C1−20アルキレン基及びC6−40アリーレン基からなる群から選択され、前記アルキレン基は炭素鎖中に不飽和結合を含んでもよく;
及びXは、少なくともいずれか一方は存在することを条件に、独立に、Xは水素、C1−20アルキル及びC6−20アリールからなる群から選択される置換基を表し、
また、式中に点線が付されたC−N間の結合は、Nに結合するXが存在する場合には、単結合であり、Nに結合するXが存在しない場合には二重結合であり;
及びYは、同一でも異なっていてもよく、独立に、H、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C6−20アリールオキシ、C6−20アリール、C1−20カルボキシレート、C1−20アシル、C1−20フルオロアルキル、SiG、NO、NG’G’、シアノ、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される置換基を表し;
及びZは、同一でも異なっていてもよく、独立に、H、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C6−20アリールオキシ、C6−20アリール、C1−20カルボキシレート、C1−20アシル、C1−20フルオロアルキル、SiG、Si(OG)(OG)(OG)、NO、NG、シアノ、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される置換基を表し;
ただし、前記C1−20アルキレン、C6−40アリーレン、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C1−20アリールオキシ、C6−20アリール、C1−20カルボキシレート、C1−20アシル、C1−20フルオロアルキル、SiG及びNG’G’に含まれる炭素原子はOH、CN、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される1個以上の基で置換されていてもよく、
また、前記C1−20アルキレン、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C1−20カルボキシレート、C1−20アシル、C1−20フルオロアルキル、SiG及びNG’G’、に含まれる炭素原子の間には、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−C(=O)−S−、−C(=O)−NH−からなる群から選択される部分構造が介在してもよく、
、G及びGは、同一でも異なっていてもよく、独立に、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ及びC6−20アリールから選択される基を表し、他方、G’及びG’は、同一でも異なっていてもよく、独立に、H、C1−20アルキル及びC6−20アリールから選択される基を表し、
Tは脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシラート、フェノキシラート、N、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される1種類のアニオン配位子である。)
【請求項2】
Qが式(II)で表されるアルキレン基又はアリーレン基である、請求項1に記載の方法。
【化2】

(式中、R、R、R、Rは独立に水素、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C6−30アリール、F、Cl、Br及びIからなる群から選択されるか;あるいは、RとR若しくはRとが一緒になって、又は、RとR若しくはRとが一緒になって、飽和又は不飽和の単環式又は縮合多環式構造を形成し、環を形成しない残りのRは水素であるか若しくは存在せず、
ここで、前記環を構成する炭素原子の数は20個以下であり、ただし、縮合多環式構造の場合には、2個以上の脂肪族環及び/又は芳香族環からなり、1個の環を構成する炭素原子の数は4〜8個であり、
また、環構造を構成する炭素は、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C1−20アリールオキシ、C6−20アリール、C1−20カルボキシレート、C1−20アシル、C1−20フルオロアルキル、SiG、NG’G’、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される基によって置換されていてもよく、ここでG、G、G、G’及びG’は請求項1に記載した通りの基を表す。)
【請求項3】
Qがエチレン、フェニレン、シクロへキセンからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
及びYは、同一でも異なっていてもよく、独立に、H、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される置換基を表し、
及びZは、同一でも異なっていてもよく、独立に、H、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される置換基を表す、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
及びXは、少なくともいずれか一方は存在することを条件に、独立に、水素、C1−6アルキル及びC6−20アリールからなる群から選択される置換基を表す、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
MがCr、Co又はNiである請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記金属錯体が式(III):
【化3】

で表される化合物である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記金属錯体が式(IV):
【化4】

で表される化合物である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記金属錯体が助触媒とともに存在し、前記助触媒は[NR’R’R’R’、[PR’R’R’R’及び[R’R’R’P=N=PR’R’R’からなる群から選択されるカチオンと、F-、Cl-、Br-、I-及びカルボキシラートから選択されるアニオンからなるオニウム塩化合物であって、R’、R’、R’、R’、R’及びR’は、同一でも異なっていてもよく、独立して、C1−20アルキル及びC6−20アリールから選択される基を表す、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
二酸化炭素とエポキシドとの重合を、大気圧に等しい圧力の二酸化炭素雰囲気下で実施する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
式(I):
【化5】

(式中、Mは周期律表第3族及び第6〜10族に属する金属元素から選択され、
Qは、C1−20アルキレン基及びC6−40アリーレン基からなる群から選択され、前記アルキレン基は炭素鎖中に不飽和結合を含んでもよく;
及びXは、少なくともいずれか一方は存在することを条件に、独立に、水素、C1−20アルキル及びC6−20アリールからなる群から選択される置換基を表し、
また、式中に点線が付されたC−N間の結合は、Nに結合するXが存在する場合には、単結合であり、Nに結合するXが存在しない場合には二重結合であり;
及びYは、同一でも異なっていてもよく、独立に、H、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C6−20アリールオキシ、C6−20アリール、C1−20カルボキシレート、C1−20アシル、C1−20フルオロアルキル、SiG、NO、NG’G’、シアノ、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される置換基を表し;
及びZは、同一でも異なっていてもよく、独立に、H、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C6−20アリールオキシ、C6−20アリール、C1−20カルボキシレート、C1−20アシル、C1−20フルオロアルキル、SiG、NO、NG’G’、シアノ、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される置換基を表し;
ただし、前記C1−20アルキレン、C6−40アリーレン、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C6−20アリールオキシ、C6−20アリール、C1−20カルボキシレート、C1−20アシル、C1−20フルオロアルキル、SiG及びNG’G’に含まれる炭素原子はOH、CN、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される1個以上の基で置換されていてもよく、
また、前記C1−20アルキレン、C6−30アリーレン、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C6−20アリールオキシ、C6−20アリール、C1−20カルボキシレート、C1−20アシル、C1−20フルオロアルキル、SiG及びNG’G’に含まれる炭素原子の間には、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−C(=O)−S−、−C(=O)−NH−からなる群から選択される部分構造が介在してもよく;
、G及びGは、同一でも異なっていてもよく、独立に、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C6−20アリール及びC6−20アリールオキシから選択される基を表し、他方、G’及びG’は、同一でも異なっていてもよく、独立に、H、C1−20アルキル及びC6−20アリールから選択される基を表し、
Tは脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、N、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される1種類のアニオン配位子である。)
で表される化合物からなる、ポリカルボナートの製造のための重合触媒。
【請求項12】
Qが式(II)で表されるアルキレン基又はアリーレン基である、請求項11に記載の重合触媒。
【化6】

(式中、R、R、R、Rは独立に水素、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C6−30アリール、F、Cl、Br及びIからなる群から選択されるか;あるいは、RとR若しくはRとが一緒になって、又は、RとR若しくはRとが一緒になって、飽和又は不飽和の単環式又は縮合多環式構造を形成し、環を形成しない残りのRは水素であるか若しくは存在せず、
ここで、前記環を構成する炭素原子の数は20個以下であり、ただし、縮合多環式構造の場合には、2個以上の脂肪族環及び/又は芳香族環からなり、1個の環を構成する炭素原子の数は4〜8個であり、
また、環構造を構成する炭素は、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C6−20アリールオキシ、C6−20アリール、C1−20カルボキシレート、C1−20アシル、C1−20フルオロアルキル、SiG、NG’G’、NO、NG、シアノ、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される基によって置換されていてもよく、ここでG、G、G、G’及びG’は請求項11に記載した通りの基を表す。)
【請求項13】
Qがエチレン、フェニレン、シクロへキセンからなる群から選択される、請求項12に記載の重合触媒。
【請求項14】
及びYは、同一でも異なっていてもよく、独立に、H、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される置換基を表し、
及びZは、同一でも異なっていてもよく、独立に、H、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される置換基を表す、
請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
及びXは、少なくともいずれか一方は存在することを条件に、独立に、水素、C1−6アルキル及びC6−20アリールからなる群から選択される置換基を表す、請求項11〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
MがCr、Co又はNiである請求項11〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記金属錯体が式(III):
【化7】

で表される化合物である、請求項16に記載の重合触媒。
【請求項18】
前記金属錯体が式(IV):
【化8】

で表される化合物である、請求項16に記載の重合触媒。

【公開番号】特開2009−215471(P2009−215471A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61869(P2008−61869)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】