説明

金属錯体及びその製造方法

【課題】優れたガス吸蔵性能及びガス分離性能を有する金属錯体を提供すること。
【解決手段】構造式内でカルボキシル基が互いに最も遠い位置にあり、かつ環状に共役しているπ電子を10個以上有し、かつ芳香環を構成する炭素原子が10〜18個である芳香族ジカルボン酸化合物(I)と、周期表の2族及び7〜12族に属する金属のイオンから選択される少なくとも1種の金属イオンと、点群がD∞hであり、かつ長軸方向の長さが8.0Å以上16.0Å未満であり、かつヘテロ原子を2〜5個有する該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とからなる金属錯体によって上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属錯体及びその製造方法、並びに該金属錯体からなる吸蔵材および分離材に関する。さらに詳しくは、特定のジカルボン酸化合物と、少なくとも1種の金属イオンと、該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とからなる金属錯体に関する。本発明の金属錯体は、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、水蒸気または有機蒸気などを吸蔵するための吸蔵材及び分離するための分離材として好ましい。
【背景技術】
【0002】
これまで、脱臭、排ガス処理などの分野で種々の吸着材が開発されている。活性炭はその代表例であり、活性炭の優れた吸着性能を利用して、空気浄化、脱硫、脱硝、有害物質除去など各種工業において広く使用されている。近年は半導体製造プロセスなどへ窒素の需要が増大しており、かかる窒素を製造する方法として、分子ふるい炭を使用して圧力スイング吸着法や温度スイング吸着法により空気から窒素を製造する方法が使用されている。また、分子ふるい炭は、メタノール分解ガスからの水素精製など各種ガス分離精製にも応用されている。
【0003】
圧力スイング吸着法や温度スイング吸着法により混合ガスを分離する際には、一般に、分離吸着材として分子ふるい炭やゼオライトなどを使用し、その平衡吸着量または吸着速度の差により分離を行っている。しかしながら、平衡吸着量の差によって混合ガスを分離する場合、これまでの吸着材では除去したいガスのみを選択的に吸着することができないため分離係数が小さくなり、装置の大型化は不可避であった。また、吸着速度の差によって混合ガスを分離する場合、ガスの種類によっては除去したいガスのみを吸着できるが、吸着と脱着を交互に行う必要があり、この場合も装置は依然として大型にならざるを得なかった。
【0004】
一方、より優れた吸着性能を与える吸着材として、外部刺激により動的構造変化を生じる高分子金属錯体が開発されている(非特許文献1、非特許文献2参照)。この新規な動的構造変化高分子金属錯体をガス吸着材として使用した場合、ある一定の圧力まではガスを吸着しないが、ある一定圧を越えるとガス吸着が始まるという特異な現象が観測されている。また、ガスの種類によって吸着開始圧が異なる現象が観測されている。
【0005】
この現象を、例えば圧力スイング吸着方式のガス分離装置における吸着材に応用した場合、非常に効率良いガス分離が可能となる。また、圧力のスイング幅を狭くすることができ、省エネルギーにも寄与する。さらに、ガス分離装置の小型化にも寄与し得るため、高純度ガスを製品として販売する際のコスト競争力を高めることができることは勿論、自社工場内部で高純度ガスを用いる場合であっても、高純度ガスを必要とする設備に要するコストを削減できるため、結局最終製品の製造コストを削減する効果を有する。しかしながら、さらなる装置小型化によるコスト削減が求められているのが現状であり、これを達成するために分離性能のさらなる向上が求められている。
【0006】
芳香族ジカルボン酸誘導体と金属イオンと該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とからなる高分子金属錯体が開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、実施例に記載されているのはテレフタル酸と銅イオンとピラジンとからなる高分子金属錯体であり、ジカルボン酸化合物がガス吸蔵性能及び混合ガス分離性能に与える効果ついては何ら言及されていない。
【0007】
芳香族ジカルボン酸誘導体と金属イオンと該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とからなる高分子金属錯体が開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、実施例に記載されているのは4,4’−ビフェニルジカルボン酸と銅イオンと1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンとからなる高分子金属錯体であり、二座配位可能な有機配位子がガス吸蔵性能及び混合ガス分離性能に与える効果については何ら言及されていない。
【0008】
テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,7−ピレンジカルボン酸または4,5,9,10−テトラヒドロピレン−2,7−ジカルボン酸と金属イオンと該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とからなる高分子金属錯体が開示されている(特許文献3参照)。しかしながら、実施例に記載されているのはテレフタル酸と銅イオンと1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンとからなる高分子金属錯体、2,6−ナフタレンジカルボン酸と銅イオンと1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンとからなる高分子金属錯体及びテレフタル酸とロジウムイオンと1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンとからなる高分子金属錯体であり、混合ガス分離性能については何ら言及されていない。
【0009】
2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,7−ピレンジカルボン酸または4,5,9,10−テトラヒドロピレン−2,7−ジカルボン酸と金属イオンと該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とからなる高分子金属錯体が開示されている(特許文献4参照)。しかしながら、実施例に記載されているのは2,6−ナフタレンジカルボン酸と銅イオンと1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンとからなる高分子金属錯体及び4,4’−ビフェニルジカルボン酸と銅イオンと1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンとからなる高分子金属錯体であり、二座配位可能な有機配位子がガス吸蔵性能及び混合ガス分離性能に与える影響については何ら言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−109485公報
【特許文献2】特開2001−348361公報
【特許文献3】特開2006−328051公報
【特許文献4】特開2008−208110公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】植村一広、北川進、未来材料、第2巻、44〜51頁(2002年)
【非特許文献2】松田亮太郎、北川進、ペトロテック、第26巻、97〜104頁(2003年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、従来よりも有効吸蔵量が大きいガス吸蔵材及び従来よりも混合ガスの分離性能が優れるガス分離材として使用できる金属錯体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは鋭意検討し、特定のジカルボン酸化合物と、少なくとも1種の金属イオンと、該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とからなる金属錯体により、上記目的を達成することができることを見出し、本発明に至った。
【0014】
すなわち、本発明によれば、以下のものが提供される。
(1)構造式内でカルボキシル基が互いに最も遠い位置にあり、かつ環状に共役しているπ電子を10個以上有し、かつ芳香環を構成する炭素原子が10〜18個である芳香族ジカルボン酸化合物と、周期表の2族及び7〜12族に属する金属のイオンから選択される少なくとも1種の金属イオンと、点群がD∞hであり、かつ長軸方向の長さが8.0Å以上16.0Å未満であり、かつヘテロ原子を2〜5個有する該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とからなる金属錯体。
(2)該芳香族ジカルボン酸化合物が下記一般式(I);
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ同一または異なって水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基、ホルミル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アシルアミノ基またはハロゲン原子である。)で表される芳香族ジカルボン酸化合物(I)である(1)に記載の金属錯体。
(3)該芳香族ジカルボン酸化合物が下記一般式(II);
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、R、R、R、R10、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ同一または異なって水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基、ホルミル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アシルアミノ基またはハロゲン原子であるか、RとR、或いはR12とR13が一緒になって置換基を有していてもよいアルキレン基またはアルケニレン基を形成してもよい。)で表されるジカルボン酸化合物(II)である(1)に記載の金属錯体。
(4)該二座配位可能な有機配位子が1,2−ビス(4−ピリジル)エチン、1,4−ビス(4−ピリジル)ベンゼン及び4,4’−ビス(4−ピリジル)ビフェニルから選択される少なくとも1種である(1)に記載の金属錯体。
(5)該金属イオンが亜鉛イオンである(1)〜(4)いずれかに記載の金属錯体。
(6)(1)〜(5)いずれかに記載の金属錯体からなる吸蔵材。
(7)該吸蔵材が、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、水蒸気または有機蒸気を吸蔵するための吸蔵材である(6)に記載の吸蔵材。
(8)(1)〜(5)いずれかに記載の金属錯体からなる分離材。
(9)該分離材が、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン、水蒸気または有機蒸気を分離するための分離材である(8)に記載の分離材。
(10)該分離材が、メタンと二酸化炭素、水素と二酸化炭素、窒素と二酸化炭素、メタンとエタンまたは空気とメタンを分離するための分離材である(8)に記載の分離材。
(11)構造式内でカルボキシル基が互いに最も遠い位置にあり、かつ環状に共役しているπ電子を10個以上有し、かつ芳香環を構成する炭素原子が10〜18個である芳香族ジカルボン酸化合物と、周期表の2族及び7〜12族に属する金属の塩から選択される少なくとも1種の金属塩と、点群がD∞hであり、かつ長軸方向の長さが8.0Å以上16.0Å未満であり、かつヘテロ原子を2〜5個有する該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とを溶媒中で反応させ、金属錯体を析出させる、(1)に記載の金属錯体の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、構造式内でカルボキシル基が互いに最も遠い位置にあり、かつ環状に共役しているπ電子を10個以上有し、かつ芳香環を構成する炭素原子が10〜18個である芳香族ジカルボン酸化合物と、少なくとも1種の金属と、点群がD∞hであり、かつ長軸方向の長さが8.0Å以上16.0Å未満であり、かつヘテロ原子を2〜5個有する該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とからなる金属錯体を提供することができる。
【0020】
本発明の金属錯体は、各種ガスの吸蔵性能に優れているので、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、水蒸気または有機蒸気などを吸蔵するための吸蔵材として使用することができる。
【0021】
また、本発明の金属錯体は、ガス種によって吸着開始圧が異なるので、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン、水蒸気または有機蒸気などを分離するための分離材としても使用することでき、特に、メタンと二酸化炭素、水素と二酸化炭素、窒素と二酸化炭素、メタンとエタンまたは空気中の二酸化炭素などの分離材として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ジカルボン酸化合物(I)のカルボキシレートイオンと金属イオンとからなるパドルホイール骨格中の金属イオンのアキシャル位に二座配位可能な有機配位子(II)が配位して形成されるジャングルジム骨格の模式図である。
【図2】ジャングルジム骨格が二重に相互貫入した場合の三次元構造の模式図である。
【図3】本発明の金属錯体の吸脱着に伴う構造変化の模式図である。
【図4】合成例1で得た金属錯体の結晶構造である。
【図5】合成例1で得た金属錯体の真空乾燥前の粉末X線回折パターンである。
【図6】合成例1で得た金属錯体の真空乾燥後の粉末X線回折パターンである。
【図7】合成例2で得た金属錯体の真空乾燥後の粉末X線回折パターンである。
【図8】合成例3で得た金属錯体の真空乾燥後の粉末X線回折パターンである。
【図9】比較合成例1で得た金属錯体の真空乾燥後の粉末X線回折パターンである。
【図10】比較合成例2で得た金属錯体の真空乾燥後の粉末X線回折パターンである。
【図11】比較合成例3で得た金属錯体の真空乾燥後の粉末X線回折パターンである。
【図12】比較合成例4で得た金属錯体の真空乾燥後の粉末X線回折パターンである。
【図13】比較合成例5で得た金属錯体の真空乾燥後の粉末X線回折パターンである。
【図14】比較合成例6で得た金属錯体の真空乾燥後の粉末X線回折パターンである。
【図15】比較合成例で得た金属錯体の真空乾燥後の粉末X線回折パターンである。
【図16】合成例1で得た金属錯体について、二酸化炭素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図17】比較合成例1で得た金属錯体について、二酸化炭素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図18】比較合成例3で得た金属錯体について、二酸化炭素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図19】比較合成例4で得た金属錯体について、二酸化炭素の273Kにおける吸 脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図20】比較合成例6で得た金属錯体について、二酸化炭素の273Kにおける吸 脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図21】合成例1で得た金属錯体について、エタンの273Kにおける吸脱着 等温線を容量法により測定した結果である。
【図22】比較合成例1で得た金属錯体について、エタンの273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図23】比較合成例4で得た金属錯体について、エタンの273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図24】合成例1で得た金属錯体について、エチレンの273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図25】比較合成例1で得た金属錯体について、エチレンの273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図26】比較合成例4で得た金属錯体について、エチレンの273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図27】合成例2で得た金属錯体について、二酸化炭素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図28】比較合成例2で得た金属錯体について、二酸化炭素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図29】比較合成例5で得た金属錯体について、二酸化炭素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図30】合成例3で得た金属錯体について、二酸化炭素の195Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図31】比較合成例7で得た金属錯体について、二酸化炭素の195Kにおける吸 脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図32】合成例1で得た金属錯体について、エタン及びメタンの273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図33】比較合成例1で得た金属錯体について、エタン及びメタンの273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図34】比較合成例4で得た金属錯体について、エタン及びメタンの273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図35】合成例1で得た金属錯体について、二酸化炭素及び窒素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図36】比較合成例1で得た金属錯体について、二酸化炭素及び窒素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。・
【図37】比較合成例4で得た金属錯体について、二酸化炭素及び窒素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図38】比較合成例6で得た金属錯体について、二酸化炭素及び窒素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図39】合成例2で得た金属錯体について、二酸化炭素及び窒素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図40】比較合成例2で得た金属錯体について、二酸化炭素及び窒素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の金属錯体は、構造式内でカルボキシル基が互いに最も遠い位置にあり、かつ環状に共役しているπ電子を10個以上有し、かつ芳香環を構成する炭素原子が10〜18個である芳香族ジカルボン酸化合物と、周期表の2族及び7〜12族に属する金属のイオンから選択される少なくとも1種の金属イオンと、点群がD∞hであり、かつ長軸方向の長さが8.0Å以上16.0Å未満であり、かつヘテロ原子を2〜5個有する該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とからなる。
【0024】
本発明の金属錯体は、構造式内でカルボキシル基が互いに最も遠い位置にあり、かつ環状に共役しているπ電子を10個以上有し、かつ芳香環を構成する炭素原子が10〜18個である芳香族ジカルボン酸化合物と、周期表の2族及び7〜12族に属する金属の塩から選択される少なくとも1種の金属塩と、点群がD∞hであり、かつ長軸方向の長さが8.0Å以上16.0Å未満であり、かつヘテロ原子を2〜5個有する該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とを、常圧下、溶媒中で数時間から数日間反応させ、析出させて製造することができる。例えば、金属塩の水溶液または有機溶媒溶液と、ジカルボン酸化合物及び二座配位可能な有機配位子を含有する有機溶媒溶液とを、常圧下で混合して反応させることにより本発明の金属錯体を得ることができる。
【0025】
芳香族ジカルボン酸化合物の、該化合物から2つのカルボキシル基及びR〜R14を除いた芳香族炭化水素環部分は、多環式であるのが好ましい。多環式芳香族炭化水素環の例としては、ナフタレン、アズレン、フェナントレン、アントラセン、トリフェニレン、クリセン、ナフタセン、ピセン、ペンタフェン、ペンタセン、ビフェニルなどが挙げられる。これらの中では、ナフタレンまたはビフェニルが好ましい。「構造式内でカルボキシル基が互いに最も遠い位置にある」とは、2つのカルボキシル基がそれぞれ結合している炭素原子間の直線距離が最も長くなる位置関係にあることを意味し、例えば、ナフタレンの場合には2位と6位もしくは3位と7位の位置関係にあることを意味し、ビフェニルの場合には4位と4’位の位置関係にあることを意味する。
【0026】
芳香族ジカルボン酸化合物の環状に共役しているπ電子数は、該芳香族ジカルボン酸化合物の2つのカルボキシル基及びR〜R14以外の芳香族炭化水素環に存在する共役π電子の数を指し、10〜18個が好ましい。π電子数が10個より少ない芳香族ジカルボン酸化合物を用いると、吸蔵量及び分離性能が低下し、π電子数が18個より多い芳香族ジカルボン酸化合物を用いると、得られる金属錯体の安定性、結晶性、収率が低下することがある。
【0027】
芳香族ジカルボン酸化合物としては、下記一般式(I)及び(II);
【0028】
【化3】

【0029】
【化4】

【0030】
で表される化合物が好ましい。式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ同一または異なって水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基、ホルミル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アシルアミノ基またはハロゲン原子であるか、RとR、並びに/或いはR12とR13が一緒になって置換基を有していてもよいアルキレン基またはアルケニレン基を形成してもよい。
【0031】
上記R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13及びR14、を構成することのできる置換基の内、アルキル基またはアルコキシ基の炭素原子数は1〜5が好ましい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基などの直鎖または分岐を有するアルキル基が、アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基,n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基が、アシロキシ基の例としては、アセトキシ基、n−プロパノイルオキシ基、n−ブタノイルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基が、アルコキシカルボニル基の例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基が、モノアルキルアミノ基の例としては、メチルアミノ基が、ジアルキルアミノ基の例としては、ジメチルアミノ基が、アシルアミノ基の例としては、アセチルアミノ基が、ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が、それぞれ挙げられる。また、該アルキル基等が有していてもよい置換基の例としては、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基,n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基など)、アミノ基、モノアルキルアミノ基(メチルアミノ基など)、ジアルキルアミノ基(ジメチルアミノ基など)、ホルミル基、エポキシ基、アシロキシ基(アセトキシ基、n−プロパノイルオキシ基、n−ブタノイルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基など)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基など)、カルボン酸無水物基(−CO−O−CO−R基)(Rは炭素数1〜5のアルキル基である)などが挙げられる。アルキル基の置換基の数は、1〜3個が好ましく、1個がより好ましい。
【0032】
ジカルボン酸化合物(I)の例としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。
【0033】
上記アルキレン基の炭素数は、2が好ましい。アルキレン基の炭素数が2の場合、RとR、並びに/或いはR12とR13はそれらが結合している炭素原子と一緒になって6員環(シクロヘキサジエン環)を構成する。このようなジカルボン酸化合物の例(II)の例としては、置換基を有していてもよい4,5,9,10−テトラヒドロピレン−2,7−ジカルボン酸が挙げられる。
【0034】
上記アルケニレン基の炭素数は、2が好ましい。アルケニレン基の炭素数が2の場合、RとR、並びに/或いはR12とR13はそれらが結合している炭素原子と一緒になって6員環(ベンゼン環)を構成する。このようなジカルボン酸化合物(II)としては、置換基を有していてもよい2,7−ピレンジカルボン酸が挙げられる。
【0035】
また、該アルキレン基、該アルケニレン基が有していてもよい置換基の例としては、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基,n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基など)、アミノ基、モノアルキルアミノ基(メチルアミノ基など)、ジアルキルアミノ基(ジメチルアミノ基など)、ホルミル基、エポキシ基、アシロキシ基(アセトキシ基、n−プロパノイルオキシ基、n−ブタノイルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基など)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基など)、カルボン酸無水物基(−CO−O−CO−R基)(Rは炭素数1〜5のアルキル基である)などが挙げられる。
【0036】
ジカルボン酸化合物(II)としては、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,7−ピレンジカルボン酸または4,5,9,10−テトラヒドロピレン−2,7−ジカルボン酸を使用することができ、中でも4,4’−ビフェニルジカルボン酸が好ましい。
【0037】
金属錯体の製造に用いる金属の塩としては、マグネシウム塩、カルシウム塩、マンガン塩、鉄塩、ルテニウム塩、コバルト塩、ロジウム塩、ニッケル塩、パラジウム塩、銅塩、亜鉛塩またはカドミウム塩を使用することができ、マグネシウム塩、マンガン塩、コバルト塩、ニッケル塩、銅塩、亜鉛塩またはカドミウム塩が好ましく、亜鉛塩がより好ましい。金属塩は、単一の金属塩を使用することが好ましいが、2種以上の金属塩を混合して用いてもよい。また、本発明の金属錯体は、単一の金属イオンからなる金属錯体を2種以上混合して使用することもできる。また、これらの金属塩としては、酢酸塩、ギ酸塩などの有機酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩などの無機酸塩を使用することができる。
【0038】
本発明に用いられる二座配位可能な有機配位子は点群がD∞hであり、かつ長軸方向の長さが8.0Å以上16.0Å未満であり、かつヘテロ原子を2〜5個有する。ここで、二座配位可能な有機配位子とは非共有電子対で金属イオンに対して配位する原子を2つ以上有する中性配位子を意味する。
【0039】
二座配位可能な有機配位子の点群は、下記参考文献1に記載の方法に従って決定することができる。
参考文献1:中崎昌雄、分子の対称と群論、39〜40頁(1973年、東京化学同人)
【0040】
例えば、1,2−ビス(4−ピリジル)エチン、1,4−ビス(4−ピリジル)ベンゼン及び4,4’−ビス(4−ピリジル)ビフェニルは左右対称な直線分子であり、かつ対称心を有するので、点群はD∞hとなる。また、1,2−ビス(4−ピリジル)エテンは2回回転軸とその軸に垂直な対称面を有するので、その点群はC2hとなる。
【0041】
二座配位可能な有機配位子の点群がD∞h以外の場合、対称性が低いために無駄な空隙が生じてしまい、吸着量が低下する。
【0042】
本明細書における二座配位可能な有機配位子の長軸方向の長さは、富士通株式会社製Scigress Explorer Professional Version 7.6.0.52を用い、分子力学法MM3で配座解析を行った後、半経験的分子軌道法PM5で構造最適化を行うことで求めた最安定構造における、金属イオンに対して配位する原子のうち構造式内で最も離れた位置にある2原子中心間の距離と定義する。
【0043】
例えば、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンの窒素原子間距離は2.609Å、ピラジンの窒素原子間距離は2.810Å、4,4’−ビピリジルの窒素原子間距離は7.061Å、1,2−ビス(4−ピリジル)エチンの窒素原子間距離は9.583Å、1,4−ビス(4−ピリジル)ベンゼンの窒素原子間距離は11.315Å、3,6−ジ(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジンの窒素原子間距離は11.204Å、4,4’−ビス(4−ピリジル)ビフェニレンの窒素原子間距離は15.570Å、N,N’−ジ(4−ピリジル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミドの窒素原子間距離は15.533Åとなる。
【0044】
二座配位可能な有機配位子の長軸方向の長さが8.0Å未満の場合は、細孔径が小さくなり過ぎ、ガス分子と細孔壁の相互作用が大きくなるため、選択性が低下する。一方、長軸方向の長さが16.0Å以上の場合は細孔径が大きくなり過ぎ、ガス分子と細孔壁の相互作用が小さくなるため、吸着量が低下する。
【0045】
本明細書における二座配位可能な有機配位子が有するヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子などが挙げられる。
【0046】
例えば、1,2−ビス(4−ピリジル)エチンが有するヘテロ原子数は2個、1,4−ビス(4−ピリジル)ベンゼンが有するヘテロ原子数は2個、3,6−ジ(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジンが有するヘテロ原子数は6個、N,N’−ジ(4−ピリジル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミドが有するヘテロ原子数は8個となる。
【0047】
有機配位子の有するヘテロ原子数が1個の場合は、金属イオンに対して二座配位することができず、目的とする金属錯体の三次元構造を構築することができない。一方、二座配位可能な有機配位子が有するヘテロ原子数が6個以上の場合は、細孔壁を構成する配位子上の電荷密度が大きくなり、ガス分子と細孔壁の相互作用が大きくなるため、選択性が低下する。
【0048】
二座配位可能な有機配位子としては、例えば、1,2−ビス(4−ピリジル)エチン、1,4−ビス(4−ピリジル)ベンゼンまたは4,4’−ビス(4−ピリジル)ビフェニルを挙げることができ、中でも1,2−ビス(4−ピリジル)エチンが好ましい。
【0049】
金属錯体を製造するときの芳香族ジカルボン酸化合物と二座配位可能な有機配位子の混合比率は、芳香族ジカルボン酸化合物:二座配位可能な有機配位子=1:5〜8:1のモル比の範囲内が好ましく、1:3〜6:1のモル比の範囲内がより好ましい。この範囲以外で反応を行っても目的とする金属錯体は得られるが、収率が低下し、副反応も増えるために好ましくない。
【0050】
金属錯体を製造するときの金属塩と二座配位可能な有機配位子の混合比率は、金属塩:二座配位可能な有機配位子=3:1〜1:3のモル比の範囲内が好ましく、2:1〜1:2のモル比の範囲内がより好ましい。この範囲以外では目的とする金属錯体の収率が低下し、また、未反応の原料が残留して得られた金属錯体の精製が困難になる。
【0051】
金属錯体を製造するための溶媒における芳香族ジカルボン酸化合物のモル濃度は、0.005〜5.0mol/Lが好ましく、0.01〜2.0mol/Lがより好ましい。これより低い濃度で反応を行っても目的とする金属錯体は得られるが、収率が低下するため好ましくない。また、これより高い濃度では溶解性が低下し、反応が円滑に進行しない。
【0052】
金属錯体を製造するための溶媒における金属塩のモル濃度は、0.005〜5.0mol/Lが好ましく、0.01〜2.0mol/Lがより好ましい。これより低い濃度で反応を行っても目的とする金属錯体は得られるが、収率が低下するため好ましくない。また、これより高い濃度では未反応の金属塩が残留し、得られた金属錯体の精製が困難になる。
【0053】
金属錯体を製造するための溶媒における二座配位可能な有機配位子のモル濃度は、0.001〜5.0mol/Lが好ましく、0.005〜2.0mol/Lがより好ましい。これより低い濃度で反応を行っても目的とする金属錯体は得られるが、収率が低下するため好ましくない。また、これより高い濃度では溶解性が低下し、反応が円滑に進行しない。
【0054】
金属錯体の製造に用いる溶媒としては、有機溶媒、水またはそれらの混合溶媒を使用することができる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、アセトン、酢酸エチル、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、水またはこれらの混合溶媒を使用することができる。反応温度としては、253〜423Kが好ましい。
【0055】
結晶性の良い金属錯体は、純度が高くて吸着性能が良い。反応が終了したことはガスクロマトグラフィーまたは高速液体クロマトグラフィーにより原料の残存量を定量することにより確認することができる。反応終了後、得られた混合液を吸引濾過に付して沈殿物を集め、有機溶媒による洗浄後、373K程度で数時間真空乾燥することにより、本発明の金属錯体を得ることができる。
【0056】
以上のようにして得られる本発明の金属錯体は、芳香族ジカルボン酸化合物のカルボキシレートイオンと金属イオンとからなるパドルホイール骨格中の金属イオンのアキシャル位に二座配位可能な有機配位子が配位して形成されるジャングルジム骨格が多重に相互貫入した三次元構造を有する。ジャングルジム骨格の模式図を図1に、ジャングルジム骨格が二重に相互貫入した場合の三次元構造の模式図を図2に示す。
【0057】
本明細書において、「ジャングルジム骨格」とは、ジカルボン酸化合物のカルボキシレートイオンと金属イオンとからなるパドルホイール骨格中の金属イオンのアキシャル位に二座配位可能な有機配位子が配位し、ジカルボン酸化合物と金属イオンとからなる二次元格子状シート間を連結することで形成されるジャングルジム様の三次元構造と定義する。
【0058】
本明細書において、「ジャングルジム骨格が多重に相互貫入した構造」とは、複数のジャングルジム骨格が互いの細孔を埋める形で貫入し合った三次元集積構造と定義する。
【0059】
金属錯体が「ジャングルジム骨格が多重に相互貫入した構造を有する」ことは、例えば単結晶X線結晶構造解析、粉末X線結晶構造解析などにより確認することができる。
【0060】
本発明の金属錯体における三次元構造は、合成後の結晶においても変化できるため、その変化に伴って、細孔の構造や大きさも変化する。この構造が変化する条件は、吸着される物質の種類、吸着圧力、吸着温度に依存する。すなわち、細孔表面と物質の相互作用の差に加え(相互作用の強さは物質のLennard−Jonesポテンシャルの大きさに比例)、吸着する物質により構造変化の程度が異なるため、高いガス吸蔵性能及び高いガス分離選択性が発現する。吸脱着に伴う構造変化の模式図を図3に示す。吸着された物質が脱着した後は、元の構造に戻るので、細孔の大きさも元に戻る。また、本発明の金属錯体は、常時アクセス可能な細孔とある圧力以上で開く細孔の二種類の細孔を有しているため、二段階吸着挙動を示す。
【0061】
前記の選択吸着メカニズムは推定ではあるが、例え前記メカニズムに従っていない場合でも、本発明で規定する要件を満足するのであれば、本発明の技術的範囲に包含される。
【0062】
本発明の金属錯体は、吸蔵される物質の種類、吸蔵圧力または吸蔵温度により、金属錯体の集積構造が変化すると共に細孔の大きさが変化するので、一定の圧力になると吸蔵量が急激に増加し、瞬時に最大吸蔵量に達する。その圧力は、吸蔵される物質の種類または吸蔵温度により異なるので、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素(メタン、エタン、エチレン、アセチレンなど)、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなど)、硫化水素、アンモニア、水蒸気または有機蒸気などを吸蔵するための吸蔵材として好ましい。有機蒸気とは、常温、常圧で液体状の有機物質の気化ガスを意味する。このような有機物質としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類;トリメチルアミンなどのアミン類;アセトアルデヒドなどのアルデヒド類;炭素数5〜16の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;塩化メチル、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
【0063】
また、本発明の金属錯体は、各種ガスを選択的に吸着することができるので、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素(メタン、エタン、エチレン、アセチレンなど)、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなど)、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン(ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなど)、水蒸気または有機蒸気などを分離するための分離材としても好ましく、特に、メタン中の二酸化炭素、水素中の二酸化炭素、窒素中の二酸化炭素、メタン中のエタンまたは空気中のメタンなどを、圧力スイング吸着法や温度スイング吸着法により分離するのに適している。有機蒸気とは、常温、常圧で液体状の有機物質の気化ガスを意味する。このような有機物質としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類;トリメチルアミンなどのアミン類;アセトアルデヒドなどのアルデヒド類;炭素数5〜16の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;塩化メチル、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の実施例および比較例における分析および評価は次のようにして行った。
【0065】
(1)単結晶X線結晶構造解析
得られた単結晶をゴニオヘッドにマウントし、単結晶X線回折装置を用いて測定した。
測定条件の詳細を以下に示す。
<分析条件>
装置:ブルカー・エイエックスエス株式会社製SMART APEX II Ultra
X線源:MoKα(λ=0.71073Å) 50kV 24mA
集光ミラー:Helios
検出器:CCD
コリメータ:Φ0.42mm
解析ソフト:SHELXTL
【0066】
(2)粉末X線回折パターンの測定
X線回折装置を用いて、回折角(2θ)=5〜50°の範囲を走査速度1°/分で走査し、対称反射法で測定した。分析条件の詳細を以下に示す。
<分析条件>
装置:株式会社リガク製RINT2400
X線源:CuKα(λ=1.5418Å) 40kV 200mA
ゴニオメーター:縦型ゴニオメーター
検出器:シンチレーションカウンター
ステップ幅:0.02°
スリット:発散スリット=0.5°
受光スリット=0.15mm
散乱スリット=0.5°
【0067】
(3)吸脱着等温線の測定(273K)
高圧ガス吸着量測定装置を用いて容量法で測定を行った。このとき、測定に先立って試料を373K、50Paで8時間真空乾燥し、吸着水などを除去した。分析条件の詳細を以下に示す。
<分析条件>
装置:日本ベル株式会社製BELSORP−HP
平衡待ち時間:500秒
【0068】
(4)吸脱着等温線の測定(195K)
高精度ガス吸着量測定装置を用いて容量法で測定を行った。このとき、測定に先立って試料を373K、50Paで8時間真空乾燥し、吸着水などを除去した。分析条件の詳細を以下に示す。
<分析条件>
装置:日本ベル株式会社製BELSORP−max
平衡待ち時間:500秒
【0069】
<合成例1>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物2.81g(9.5mmol)、2,6−ナフタレンジカルボン酸2.05g(9.5mmol)及び1,2−ビス(4−ピリジル)エチン0.852g(4.7mmol)を容量比でN,N−ジメチルホルムアミド:エタノール=1:1からなるN,N−ジメチルホルムアミドとエタノールの混合溶媒800mLに溶解させ、363Kで48時間攪拌した。得られた結晶について、単結晶X線構造解析を行った結果を以下に示す。また、結晶構造を図4に示す。図4より、本錯体はジャングルジム骨格が三重に相互貫入した三次元構造を形成していることが分かる。また、得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図5に示す。
Triclinic(P−1)
a=13.1196(15)Å
b=13.1238(15)Å
c=16.5456(19)Å
α=99.412(2)°
β=92.340(2)°
γ=91.763(2)°
V=2806.1(6)Å
Z=4
R=0.0739
Rw=0.2127
析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間真空乾燥し、目的の金属錯体2.97g(収率85%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図6に示す。図5と図6の比較から、合成溶媒の吸脱着前後で粉末X線回折パターンが異なるので、本発明の金属錯体は吸脱着に伴い、構造が動的に変化していることが分かる。
【0070】
<合成例2>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物4.37g(15mmol)、2,6−ナフタレンジカルボン酸3.18g(15mmol)及び1,4−ビス(4−ピリジル)ベンゼン1.72g(7.5mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド:ベンゼン=1:1からなるN,N−ジメチルホルムアミドとベンゼンの混合溶媒600mLに溶解させ、373Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間真空乾燥し、目的の金属錯体4.02g(収率68%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図7に示す。
【0071】
<合成例3>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物1.89g(6.3mmol)、4,4’−ビフェニルジカルボン酸1.54g(6.3mmol)及び1,4−ビス(4−ピリジル)ベンゼン0.74g(3.2mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド:エタノール=1:1からなるN,N−ジメチルホルムアミドとエタノールの混合溶媒540mLに溶解させ、373Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間真空乾燥し、目的の金属錯体2.39g(収率90%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図8に示す。
【0072】
<比較合成例1>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物2.81g(9.5mmol)、テレフタル酸1.57g(9.5mmol)及び1,2−ビス(4−ピリジル)エチン0.852g(4.7mmol)を容量比でN,N−ジメチルホルムアミド:エタノール=1:1からなるN,N−ジメチルホルムアミドとエタノールの混合溶媒800mLに溶解させ、363Kで48時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間真空乾燥し、目的の金属錯体2.65g(収率88%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図9に示す。
【0073】
<比較合成例2>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物2.81g(9.5mmol)、テレフタル酸1.57g(9.5mmol)及び1,4−ビス(4−ピリジル)ベンゼン1.10g(4.7mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド:エタノール=1:1からなるN,N−ジメチルホルムアミドとエタノールの混合溶媒800mLに溶解させ、373Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間真空乾燥し、目的の金属錯体3.01g(収率92%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図10に示す。
【0074】
<比較合成例3>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物4.28g(15mmol)、2,6−ナフタレンジカルボン酸3.18g(15mmol)及びトランス−1,2−ビス(4−ピリジル)エテン1.34g(7.4mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド600mLに溶解させ、373Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間真空乾燥し、目的の金属錯体4.61g(収率85%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図11に示す。
【0075】
<比較合成例4>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物2.81g(9.5mmol)、2,6−ナフタレンジカルボン酸2.05g(9.5mmol)及び4,4’−ビピリジル0.739g(4.7mmol)を容量比でN,N−ジメチルホルムアミド:エタノール=1:1からなるN,N−ジメチルホルムアミドとエタノールの混合溶媒800mLに溶解させ、363Kで48時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間真空乾燥し、目的の金属錯体3.09g(収率91%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図12に示す。
【0076】
<比較合成例5>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物2.81g(9.5mmol)、2,6−ナフタレンジカルボン酸2.05g(9.5mmol)及び3,6−ジ(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン1.10g(4.7mmol)を容量比でN,N−ジメチルホルムアミド:エタノール=1:1からなるN,N−ジメチルホルムアミドとエタノールの混合溶媒800mLに溶解させ、363Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間真空乾燥し、目的の金属錯体3.65g(収率97%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図13に示す。
【0077】
<比較合成例6>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物5.35g(18mmol)、2,6−ナフタレンジカルボン酸0.778g(3.6mmol)及びN,N’−ジ(4−ピリジル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミド1.51g(3.6mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド1800mLに溶解させ、353Kで72時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間真空乾燥し、目的の金属錯体1.16g(収率66%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図14に示す。
【0078】
<比較合成例7>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物2.81g(9.5mmol)、4,4’−ビフェニルジカルボン酸2.29g(9.5mmol)及び3,6−ジ(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン1.12g(4.7mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド:エタノール=1:1からなるN,N−ジメチルホルムアミドとエタノールの混合溶媒800mLに溶解させ、373Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間真空乾燥し、目的の金属錯体3.37g(収率84%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図15に示す。
【0079】
<比較合成例8>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物2.81g(9.5mmol)、4,4’−テルフェニルジカルボン酸2.05g(9.5mmol)及び1,2−ビス(4−ピリジル)エチン0.852g(4.7mmol)を容量比でN,N−ジメチルホルムアミド:エタノール=1:1からなるN,N−ジメチルホルムアミドとエタノールの混合溶媒800mLに溶解させ、363Kで24時間攪拌した。しかしながら、目的の金属錯体は得られなかった。
【0080】
<実施例1>
合成例1で得た金属錯体について、二酸化炭素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果を図16に示す。
【0081】
<比較例1>
比較合成例1で得た金属錯体について、二酸化炭素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果を図17に示す。
【0082】
<比較例2>
比較合成例3で得た金属錯体について、二酸化炭素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果を図18に示す。
【0083】
<比較例3>
比較合成例4で得た金属錯体について、二酸化炭素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果を図19に示す。
【0084】
<比較例4>
比較合成例6で得た金属錯体について、二酸化炭素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果を図20に示す。
【0085】
図16と図17〜20の比較より、本発明の金属錯体は0.1MPa以上の圧力領域での二酸化炭素の有効吸蔵量が多く、吸着させた二酸化炭素の取り出しを0.1MPa(常圧)で行うことができ、0.1MPa以下に減圧する必要がないため、再生に要するエネルギーが少なくて済む。そのため、二酸化炭素の吸蔵材として優れていることが明らかである。
【0086】
<実施例2>
合成例1で得た金属錯体について、エタンの273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果を図21に示す。
【0087】
<比較例5>
比較合成例1で得た金属錯体について、エタンの273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果を図22に示す。
【0088】
<比較例6>
比較合成例4で得た金属錯体について、エタンの273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果を図23に示す。
【0089】
図21と図22〜23の比較より、本発明の金属錯体はエタンの吸蔵量が多く、その吸蔵量を低圧でも維持することができるので、エタンの吸蔵材として優れていることが明らかである。
【0090】
<実施例3>
合成例1で得た金属錯体について、エチレンの273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果を図24に示す。
【0091】
<比較例7>
比較合成例1で得た金属錯体について、エチレンの273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果を図25に示す。
【0092】
<比較例8>
比較合成例4で得た金属錯体について、エチレンの273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果を図26に示す。
【0093】
図24と図25〜26の比較より、本発明の金属錯体はエチレンの吸蔵量が多く、その吸蔵量を低圧でも維持することができるので、エチレンの吸蔵材として優れていることが明らかである。
【0094】
<実施例4>
合成例2で得た金属錯体について、二酸化炭素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果を図27に示す。
【0095】
<比較例9>
比較合成例2で得た金属錯体について、二酸化炭素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果を図28に示す。
【0096】
<比較例10>
比較合成例5で得た金属錯体について、二酸化炭素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果を図29に示す。
【0097】
図27と図28〜29の比較より、本発明の金属錯体は二酸化炭素の吸蔵量が多いので、二酸化炭素の吸蔵材として優れていることが明らかである。
【0098】
<実施例5>
合成例3で得た金属錯体について、二酸化炭素の195Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果を図30に示す。
【0099】
<比較例11>
比較合成例7で得た金属錯体について、二酸化炭素の195Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果を図31に示す。
【0100】
図30と図31の比較より、本発明の金属錯体は二酸化炭素の吸蔵量が多いので、二酸化炭素の吸蔵材として優れていることが明らかである。
【0101】
<実施例6>
合成例1で得た金属錯体について、エタン及びメタンの273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果を図32に示す。
【0102】
<比較例12>
比較合成例1で得た金属錯体について、エタン及びメタンの273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果を図33に示す。
【0103】
<比較例13>
比較合成例4で得た金属錯体について、エタン及びメタンの273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果を図34に示す。
【0104】
図32と図33〜34の比較より、本発明の金属錯体はエタンを選択的に吸着し、かつエタンの吸着量が多いので、エタンとメタンの分離材として優れていることが明らかである。
【0105】
<実施例7>
合成例1で得た金属錯体について、二酸化炭素及び窒素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果を図35に示す。
【0106】
<比較例14>
比較合成例1で得た金属錯体について、二酸化炭素及び窒素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果を図36に示す。
【0107】
<比較例15>
比較合成例4で得た金属錯体について、二酸化炭素及び窒素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果を図37に示す。
【0108】
<比較例16>
比較合成例6で得た金属錯体について、二酸化炭素及び窒素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果を図38に示す。
【0109】
図35と図36〜38の比較より、本発明の金属錯体は二酸化炭素を選択的に吸着し、かつその脱着を0.1MPa(常圧)で行うことができ、0.1MPa以下に減圧する必要がないため、再生に要するエネルギーが少なくて済む。そのため、二酸化炭素と窒素の分離材として優れていることが明らかである。
【0110】
<実施例8>
合成例2で得た金属錯体について、二酸化炭素及び窒素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果を図39に示す。
【0111】
<比較例17>
比較合成例2で得た金属錯体について、二酸化炭素及び窒素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果を図40に示す。
【0112】
図39と図40の比較より、本発明の金属錯体は二酸化炭素を選択的に吸着し、かつ二酸化炭素の吸着量が多いので、窒素と二酸化炭素の分離材として優れていることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式内でカルボキシル基が互いに最も遠い位置にあり、かつ環状に共役しているπ電子を10個以上有し、かつ芳香環を構成する炭素原子が10〜18個である芳香族ジカルボン酸化合物と、周期表の2族及び7〜12族に属する金属のイオンから選択される少なくとも1種の金属イオンと、点群がD∞hであり、かつ長軸方向の長さが8.0Å以上16.0Å未満であり、かつヘテロ原子を2〜5個有する該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とからなる金属錯体。
【請求項2】
該芳香族ジカルボン酸化合物が下記一般式(I);
【化1】


(式中、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ同一または異なって水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基、ホルミル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アシルアミノ基またはハロゲン原子である。)で表される芳香族ジカルボン酸化合物(I)である(1)に記載の金属錯体。
【請求項3】
該芳香族ジカルボン酸化合物が下記一般式(II);
【化2】


(式中、R、R、R、R10、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ同一または異なって水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基、ホルミル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アシルアミノ基またはハロゲン原子であるか、RとR、或いはR12とR13が一緒になって置換基を有していてもよいアルキレン基またはアルケニレン基を形成してもよい。)で表されるジカルボン酸化合物(II)である請求項1に記載の金属錯体。
【請求項4】
該二座配位可能な有機配位子が1,2−ビス(4−ピリジル)エチン、1,4−ビス(4−ピリジル)ベンゼン及び4,4’−ビス(4−ピリジル)ビフェニルから選択される少なくとも1種である請求項1〜3いずれかに記載の金属錯体。
【請求項5】
該金属イオンが亜鉛イオンである請求項1〜4いずれかに記載の金属錯体。
【請求項6】
請求項1〜5いずれかに記載の金属錯体からなる吸蔵材。
【請求項7】
該吸蔵材が、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、水蒸気または有機蒸気を吸蔵するための吸蔵材である請求項6記載の吸蔵材。
【請求項8】
請求項1〜5いずれかに記載の金属錯体からなる分離材。
【請求項9】
該分離材が、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン、水蒸気または有機蒸気を分離するための分離材である請求項8に記載の分離材。
【請求項10】
該分離材が、メタンと二酸化炭素、水素と二酸化炭素、窒素と二酸化炭素、メタンとエタンまたは空気とメタンを分離するための分離材である請求項8に記載の分離材。
【請求項11】
構造式内でカルボキシル基が互いに最も遠い位置にあり、かつ環状に共役しているπ電子を10個以上有し、かつ芳香環を構成する炭素原子が10〜18個である芳香族ジカルボン酸化合物と、周期表の2族及び7〜12族に属する金属の塩から選択される少なくとも1種の金属塩と、点群がD∞hであり、かつ長軸方向の長さが8.0Å以上16.0Å未満であり、かつヘテロ原子を2〜5個有する該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とを溶媒中で反応させ、金属錯体を析出させる、請求項1に記載の金属錯体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−195575(P2011−195575A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37819(P2011−37819)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構『グリーン・サステイナブルケミカルプロセス基盤技術開発』「副生ガス高効率分離・精製プロセス基盤技術開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】