金属錯体及びそれからなる分離材
【課題】優れたガス吸着性能、ガス吸蔵性能及びガス分離性能を有する金属錯体を提供する。
【解決手段】下記一般式(I);
で表されるジカルボン酸化合物(I)と、マグネシウムイオン及び亜鉛イオン等から選択される少なくとも1種の金属イオンと、1つの金属イオンに対してキレート配位し得ない構造を有する該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とからなる金属錯体。
【解決手段】下記一般式(I);
で表されるジカルボン酸化合物(I)と、マグネシウムイオン及び亜鉛イオン等から選択される少なくとも1種の金属イオンと、1つの金属イオンに対してキレート配位し得ない構造を有する該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とからなる金属錯体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属錯体及びその製造方法、並びに該金属錯体からなる分離材に関する。さらに詳しくは、特定のジカルボン酸化合物と、少なくとも1種の金属イオンと、該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とからなる金属錯体に関する。本発明の金属錯体は、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン、水蒸気または有機蒸気などの吸着材、吸蔵材および分離材として好ましく、特に、メタンと二酸化炭素、水素と二酸化炭素、窒素と二酸化炭素、メタンとエタンまたは空気とメタンなどの分離材として好ましい。
【背景技術】
【0002】
これまで、脱臭、排ガス処理などの分野で種々の吸着材が開発されている。活性炭はその代表例であり、活性炭の優れた吸着性能を利用して、空気浄化、脱硫、脱硝、有害物質除去など各種工業において広く使用されている。近年は半導体製造プロセスなどへ窒素の需要が増大しており、かかる窒素を製造する方法として、分子ふるい炭を使用して圧力スイング吸着法や温度スイング吸着法により空気から窒素を製造する方法が使用されている。また、分子ふるい炭は、メタノール分解ガスからの水素精製など各種ガス分離精製にも応用されている。
【0003】
圧力スイング吸着法や温度スイング吸着法により混合ガスを分離する際には、一般に、分離吸着材として分子ふるい炭やゼオライトなどを使用し、その平衡吸着量または吸着速度の差により分離を行っている。しかしながら、平衡吸着量の差によって混合ガスを分離する場合、これまでの吸着材では除去したいガスのみを選択的に吸着することができないため分離係数が小さくなり、装置の大型化は不可避であった。また、吸着速度の差によって混合ガスを分離する場合、ガスの種類によっては除去したいガスのみを吸着できるが、吸着と脱着を交互に行う必要があり、この場合も装置は依然として大型にならざるを得なかった。
【0004】
一方、より優れた吸着性能を与える吸着材として、外部刺激により動的構造変化を生じる高分子金属錯体が開発されている(非特許文献1、非特許文献2参照)。この新規な動的構造変化高分子金属錯体をガス吸着材として使用した場合、ある一定の圧力まではガスを吸着しないが、ある一定圧を越えるとガス吸着が始まるという特異な現象が観測されている。また、ガスの種類によって吸着開始圧が異なる現象が観測されている。
【0005】
この現象を、例えば圧力スイング吸着方式のガス分離装置における吸着材に応用した場合、非常に効率良いガス分離が可能となる。また、圧力のスイング幅を狭くすることができ、省エネルギーにも寄与する。さらに、ガス分離装置の小型化にも寄与し得るため、高純度ガスを製品として販売する際のコスト競争力を高めることができることは勿論、自社工場内部で高純度ガスを用いる場合であっても、高純度ガスを必要とする設備に要するコストを削減できるため、結局最終製品の製造コストを削減する効果を有する。
【0006】
しかしながら、さらなる装置小型化によるコスト削減が求められているのが現状であり、これを達成するために吸着性能や吸蔵性能、或いは分離性能のさらなる向上が求められている。
【0007】
2,7−ナフタレンジカルボン酸と亜鉛イオンと4,4’−ビピリジルからなる高分子金属錯体は、IUPACの分類におけるI型の吸着プロファイルを示すが、二酸化炭素、窒素、酸素の混合気体の吸着試験において、二酸化炭素を選択的に吸着することが知られている(非特許文献3参照)。しかしながら、開示されている金属錯体について本発明者らが二酸化炭素とメタンの分離性能を評価したところ、その分離性能は満足できるものではなかった。
【0008】
イソフタル酸誘導体、2,7−ナフタレンジカルボン酸誘導体または4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸誘導体と金属イオンと該金属イオンに二座配位可能な有機配位子から構成される高分子金属錯体は、不飽和有機分子と親和性を有しており、不飽和有機分子の分離に有効であることが知られている(特許文献1参照)。しかしながら、開示されている金属錯体について本発明者らが二酸化炭素とメタンの分離性能を評価したところ、その分離性能は満足できるものではなかった。4,4‘−ジカルボニルビフェニルスルホン(H2dbsf)とCu(非特許文献4)、Cd、NiまたはMn(非特許文献5、6、7、8)などの錯体が知られているが、これらは金属イオン若しくは二座配位可能な有機配位子が相違し、それら錯体のガス吸着、吸蔵、分離の性質については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−247884公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】植村一広、北川進、未来材料、第2巻、44〜51頁(2002年)
【非特許文献2】松田亮太郎、北川進、ペトロテック、第26巻、97〜104頁(2003年)
【非特許文献3】中川啓史、田中大輔、下村悟、北川進、第61回コロイドおよび界面化学討論会講演要旨集、462頁(2008年)
【非特許文献4】Polyhedron 26 (2007) 1123-1132
【非特許文献5】Inorg. Chem. 2007, 46, 4158-4166
【非特許文献6】Inorganica Chimica Acta 362 (2009) 543-550
【非特許文献7】CrystEngComm, 2008, 10, 905-914
【非特許文献8】Solid State Sciences,11(2009)364-367
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、従来よりも有効吸着量が大きいガス吸着材、従来よりも有効吸蔵量が大きいガス吸蔵材、或いは従来よりも高い選択性を発現するガス分離材として使用できる金属錯体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意検討し、特定のジカルボン酸化合物と、少なくとも1種の金属イオンと、該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とからなる金属錯体により、上記目的を達成することができることを見出し、本発明に至った。
【0013】
すなわち、本発明によれば、以下のものが提供される。
(1)下記一般式(I);
【0014】
【化1】
(式中、Xは窒素、ケイ素、リン、硫黄、ゲルマニウム、ヒ素、セレンから選ばれ、他原子と結合していてもよいヘテロ原子であり、R1、R2、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ同一または異なって水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基もしくはハロゲン原子を示すか、R1とR2、或いはR5とR6が一緒になって置換基を有していてもよいアルキレン基、オキシアルキレン基またはアルケニレン基である。)で表されるジカルボン酸化合物(I)と、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、クロムイオン、モリブデンイオン、タングステンイオン、鉄イオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、パラジウムイオン及び亜鉛イオンから選択される少なくとも1種の金属イオンと、1つの金属イオンに対してキレート配位し得ない構造を有する該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とからなる金属錯体。
(2)該二座配位可能な有機配位子が1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピラジン、2,5−ジメチルピラジン、4,4’−ビピリジル、2,2’−ジメチル−4,4’−ビピリジン、1,2−ビス(4−ピリジル)エチン、1,4−ビス(4−ピリジル)ブタジイン、1,4−ビス(4−ピリジル)ベンゼン、3,6−ジ(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、2,2’−ビ−1,6−ナフチリジン、フェナジン、ジアザピレン、トランス−1,2−ビス(4−ピリジル)エテン、4,4’−アゾピリジン、1,2−ビス(4−ピリジル)エタン、1,2−ビス(4−ピリジル)−グリコール、N−(4−ピリジル)イソニコチンアミド、1,2−ビス(4−ピリジル)プロパン、4,4’−ビス(4−ピリジル)ビフェニル、N,N’−ジ(4−ピリジル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミド、2,6−ジ(4−ピリジル)−ベンゾ[1,2−c:4,5−c’]ジピロール−1,3,5,7(2H,6H)−テトロン及びN,N’−ジ(4−ピリジル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミドから選択される少なくとも1種である(1)に記載の金属錯体。
(3)該金属イオンが亜鉛イオンである(1)または(2)に記載の金属錯体。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の金属錯体からなる吸着材。
(5)該吸着材が、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン、水蒸気または有機蒸気を吸着するための吸着材である(4)に記載の吸着材。
(6)(1)〜(3)のいずれかに記載の金属錯体からなる吸蔵材。
(7)該吸蔵材が、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、水蒸気または有機蒸気を吸蔵するための吸蔵材である(6)に記載の吸蔵材。
(8)(1)〜(3)のいずれかに記載の金属錯体からなる分離材。
(9)該分離材が、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン、水蒸気または有機蒸気を分離するための分離材である(8)に記載の分離材。
(10)該分離材が、メタンと二酸化炭素、水素と二酸化炭素、窒素と二酸化炭素、メタンとエタンまたは空気とメタンを分離するための分離材である(8)に記載の分離材。
(11)ジカルボン酸化合物(I)と、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、クロムイオン、モリブデンイオン、タングステンイオン、鉄イオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、パラジウムイオン及び亜鉛イオンの塩から選択される少なくとも1種の金属塩と、1つの金属イオンに対してキレート配位し得ない構造を有する該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とを溶媒中で反応させ、析出させる、(1)に記載の金属錯体の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、特定のジカルボン酸化合物と、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、クロムイオン、モリブデンイオン、タングステンイオン、鉄イオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、パラジウムイオン及び亜鉛イオンから選択される少なくとも1種の金属イオンと、1つの金属イオンに対してキレート配位し得ない構造を有する該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とからなる金属錯体を提供することができる。
【0016】
本発明の金属錯体は、各種ガスの吸着性能に優れているので、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン、水蒸気または有機蒸気などを吸着するための吸着材として使用することができる。
【0017】
また、本発明の金属錯体は、各種ガスの吸蔵性能に優れているので、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、水蒸気または有機蒸気などを吸蔵するための吸蔵材としても使用することができる。
【0018】
さらに、本発明の金属錯体は、各種ガスの分離性能に優れているので、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン、水蒸気または有機蒸気などを分離するための分離材としても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】合成例1で得た金属錯体の粉末X線回折パターンである。
【図2】比較合成例1で得た金属錯体の粉末X線回折パターンである。
【図3】比較合成例2で得た金属錯体の粉末X線回折パターンである。
【図4】合成例1で得た金属錯体について、二酸化炭素及びメタンの273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図5】比較合成例2で得た金属錯体について、二酸化炭素及びメタンの273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図6】比較合成例3で得た金属錯体の粉末X線回折パターンである。
【図7】合成例1で得た金属錯体について、二酸化炭素及び窒素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図8】比較合成例2で得た金属錯体について、二酸化炭素及び窒素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図9】比較合成例3で得た金属錯体について、二酸化炭素及び窒素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図10】合成例2で得た金属錯体の粉末X線回折パターンである。
【図11】比較合成例4で得た金属錯体の粉末X線回折パターンである。
【図12】比較合成例5で得た金属錯体の粉末X線回折パターンである。
【図13】合成例2、比較合成例4及び比較合成例5で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸着等温線を容量法により測定した結果である。
【図14】合成例2、比較合成例4及び比較合成例5で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図15】合成例3で得た金属錯体の粉末X線回折パターンである。
【図16】比較合成例6で得た金属錯体の粉末X線回折パターンである。
【図17】合成例3及び比較合成例6で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸着等温線を容量法により測定した結果である。
【図18】合成例3及び比較合成例6で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図19】合成例4で得た金属錯体の粉末X線回折パターンである。
【図20】比較合成例7で得た金属錯体の粉末X線回折パターンである。
【図21】合成例4及び比較合成例7で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸着等温線を容量法により測定した結果である。
【図22】合成例4及び比較合成例7で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の金属錯体は、ジカルボン酸化合物(I)と、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、クロムイオン、モリブデンイオン、タングステンイオン、鉄イオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、パラジウムイオン及び亜鉛イオンから選択される少なくとも1種の金属イオンと、1つの金属イオンに対してキレート配位し得ない構造を有する該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とからなる。
【0021】
金属錯体は、ジカルボン酸化合物(I)と、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、クロムイオン、モリブデンイオン、タングステンイオン、鉄イオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、パラジウムイオン及び亜鉛イオンの塩から選択される少なくとも1種の金属塩と、1つの金属イオンに対してキレート配位し得ない構造を有する該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とを、常圧下、溶媒中で数時間から数日間反応させ、析出させて製造することができる。例えば、金属塩の水溶液または有機溶媒溶液と、ジカルボン酸化合物(I)及び1つの金属イオンに対してキレート配位し得ない構造を有する二座配位可能な有機配位子を含有する有機溶媒溶液とを、常圧下で混合して反応させることにより得ることができる。
【0022】
本発明に用いられるジカルボン酸化合物(I)は下記一般式(I);
【化2】
で表される。式中、Xは窒素、ケイ素、リン、硫黄、ゲルマニウム、ヒ素、セレンから選ばれ、他原子と結合していてもよいヘテロ原子であり、R1、R2、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ同一または異なって水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基もしくはハロゲン原子であるか、R1とR2、或いはR5とR6が一緒になって置換基を有していてもよいアルキレン基、オキシアルキレン基またはアルケニレン基である。
【0023】
上記Xとしては、例えば、アミノ基、モノアルキルアミノ基(メチルアミノ基、エチルアミノ基など)、ジアルキルシランジイル基(ジメチルシランジイル基(−Si(CH3)2−)、ジエチルシランジイル基(−Si(CH2CH3)2−)など)、ヒドロキシホスホリル基(−P(O)(OH)−)、硫黄原子、スルホニル基、ジアルキルゲルマンジイル基(ジメチルゲルマンジイル基(−Ge(CH3)2−)、ジエチルゲルマンジイル基(−Ge(CH2CH3)2−)など)、アルサンジイル基(−AsH−)、アルキルアルサントリル基(メチルアルサントリル基(−As(CH3)−)、エチルアルサントリル基(−As(CH2CH3)−)など)、セレン原子、セレノニル基(−SeO2−)などが挙げられる。
【0024】
上記R1、R2、R3、R4、R5及びR6を構成することのできる置換基の内、アルキル基の炭素原子数は1〜5が好ましい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基などの直鎖または分岐を有するアルキル基が、ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が、それぞれ挙げられる。また、該アルキル基が有していてもよい置換基の例としては、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基,n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基など)、アミノ基、ホルミル基、エポキシ基、アシロキシ基(アセトキシ基、n−プロパノイルオキシ基、n−ブタノイルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基など)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基など)、カルボン酸無水物基(−CO−O−CO−R基)(Rは炭素数1〜5のアルキル基である)などが挙げられる。アルキル基の置換基の数は、1〜3個が好ましく、1個がより好ましい。
【0025】
上記アルキレン基の炭素数は、3〜6が好ましく、3〜4がより好ましい。アルキレン基の炭素数が3〜6の場合、R1とR2、或いはR5とR6はそれらが結合している炭素原子と一緒になって5〜8員環(シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環)を構成する。
【0026】
上記オキシアルキレン基の炭素と酸素の合計の原子数は、3〜6が好ましく、3〜4がより好ましい。アルキレン基の炭素と酸素の合計の原子数が3〜6の場合、オキシアルキレン基として、−O−CH2−O−、−CH2−O−CH2−、−O−CH2−CH2−O−、−O−CH2−CH2−CH2−、−CH2−O−CH2−CH2−、−O−CH2−CH2−CH2−CH2−、−O−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−などが挙げられる。
【0027】
上記アルケニレン基の炭素数は、3〜6が好ましく、3〜4がより好ましい。アルキレン基の炭素数が3〜6の場合、R1とR2、或いはR5とR6はそれらが結合している炭素原子と一緒になって5〜8員環(シクロペンテン環、シクロヘキセン環(1つの二重結合を有する場合)、或いはベンゼン環(2つの二重結合を有する場合)、シクロヘプテン環、シクロオクテン環)を示す。
【0028】
また、該アルキレン基、オキシアルキレン基、アルケニレン基が有していてもよい置換基の例としては、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基,n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基など)、アミノ基、ホルミル基、エポキシ基、アシロキシ基(アセトキシ基、n−プロパノイルオキシ基、n−ブタノイルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基など)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基など)、カルボン酸無水物基(−CO−O−CO−R基)(Rは炭素数1〜5のアルキル基である)などが挙げられる。
【0029】
本発明に用いられるジカルボン酸化合物(I)は、R1=R6、R2=R5、R3=R4、である対称化合物が好ましい。
【0030】
ジカルボン酸化合物(I)としては、4,4’−ジカルボキシジフェニルスルホンが好ましい。
【0031】
金属錯体の製造に用いる金属イオンの塩としては、マグネシウム塩、アルミニウム塩、カルシウム塩、クロム塩、モリブデン塩、タングステン塩、鉄塩、ルテニウム塩、ロジウム塩、パラジウム塩及び亜鉛塩を使用することができ、亜鉛塩が好ましい。金属塩は単一の金属塩を使用することが好ましいが、2種以上の金属塩を混合して用いてもよい。また、本発明の金属錯体は、単一の金属イオンからなる金属錯体を2種以上混合して使用することもできる。これらの金属塩としては、酢酸塩、ギ酸塩などの有機酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩などの無機酸塩を使用することができる。
【0032】
本発明に用いられる1つの金属イオンに対してキレート配位し得ない構造を有する二座配位可能な有機配位子としては、例えば、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピラジン、2,5−ジメチルピラジン、4,4’−ビピリジル、2,2’−ジメチル−4,4’−ビピリジン、1,2−ビス(4−ピリジル)エチン、1,4−ビス(4−ピリジル)ブタジイン、1,4−ビス(4−ピリジル)ベンゼン、3,6−ジ(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、2,2’−ビ−1,6−ナフチリジン、フェナジン、ジアザピレン、トランス−1,2−ビス(4−ピリジル)エテン、4,4’−アゾピリジン、1,2−ビス(4−ピリジル)エタン、1,2−ビス(4−ピリジル)−グリコール、N−(4−ピリジル)イソニコチンアミド、1,2−ビス(4−ピリジル)プロパン、4,4’−ビス(4−ピリジル)ビフェニル、N,N’−ジ(4−ピリジル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミド、2,6−ジ(4−ピリジル)−ベンゾ[1,2−c:4,5−c’]ジピロール−1,3,5,7(2H,6H)−テトロン及びN,N’−ジ(4−ピリジル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミドなどを挙げることができ、中でも4,4’−ビピリジル、1,2−ビス(4−ピリジル)エチン、1,4−ビス(4−ピリジル)ベンゼン及び3,6−ジ(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジンが好ましい。ここで、1つの金属イオンに対してキレート配位し得ない構造を有する二座配位可能な有機配位子とは、非共有電子対で金属イオンに対して配位する部位を2箇所以上有し、かつ1つの金属イオンに対してキレート配位し得ない中性配位子を意味する。1つの金属イオンに対してキレート配位可能な構造を有する有機配位子としては、エチレンジアミン、2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントロリンなど、一つの金属イオンに対してシス型で二座配位可能な有機配位子が挙げられる。該キレート配位可能な構造を有する有機配位子を用いた場合、中心金属イオンは五配位四方錘形をとり、水分子が配位座を一つ埋めることで金属錯体は三次元集積構造を形成する。そのため、ガス吸着を行うための前処理を行うと、この水分子が脱離し、金属錯体は集積構造を維持することができない。
【0033】
金属錯体を製造するときのジカルボン酸化合物(I)と二座配位可能な有機配位子との混合比率は、ジカルボン酸化合物(I):二座配位可能な有機配位子=1:5〜8:1のモル比の範囲内が好ましく、1:3〜6:1のモル比の範囲内がより好ましい。これ以外の範囲で反応を行っても目的とする金属錯体は得られるが、収率が低下し、副反応も増えるために好ましくない。
【0034】
金属錯体を製造するときの金属塩と二座配位可能な有機配位子の混合比率は、金属塩:二座配位可能な有機配位子=3:1〜1:3のモル比の範囲内が好ましく、2:1〜1:2のモル比の範囲内がより好ましい。これ以外の範囲では目的とする金属錯体の収率が低下し、また、未反応の原料が残留して得られた金属錯体の精製が困難になる。
【0035】
金属錯体を製造するための溶媒におけるジカルボン酸化合物(I)のモル濃度は、0.01〜5.0mol/Lが好ましく、0.05〜2.0mol/Lがより好ましい。これより低い濃度で反応を行っても目的とする金属錯体は得られるが、収率が低下するため好ましくない。また、これより高い濃度では溶解性が低下し、反応が円滑に進行しない。
【0036】
金属錯体を製造するための溶媒における金属塩のモル濃度は、0.01〜5.0mol/Lが好ましく、0.05〜2.0mol/Lがより好ましい。これより低い濃度で反応を行っても目的とする金属錯体は得られるが、収率が低下するため好ましくない。また、これより高い濃度では未反応の金属塩が残留し、得られた金属錯体の精製が困難になる。
【0037】
金属錯体を製造するための溶媒における二座配位可能な有機配位子のモル濃度は、0.01〜5.0mol/Lが好ましく、0.05〜2.0mol/Lがより好ましい。これより低い濃度で反応を行っても目的とする金属錯体は得られるが、収率が低下するため好ましくない。また、これより高い濃度では溶解性が低下し、反応が円滑に進行しない。
【0038】
金属錯体の製造に用いる溶媒としては、有機溶媒、水またはそれらの混合溶媒を使用することができる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、アセトン、酢酸エチル、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、水またはこれらの混合溶媒を使用することができる。反応温度としては、253〜423Kが好ましい。
【0039】
結晶性の良い金属錯体は、純度が高くて吸着性能が良い。反応が終了したことはガスクロマトグラフィーまたは高速液体クロマトグラフィーにより原料の残存量を定量することにより確認することができる。反応終了後、得られた混合液を吸引濾過に付して沈殿物を集め、有機溶媒による洗浄後、373K程度で数時間真空乾燥することにより、本発明の金属錯体を得ることができる。
【0040】
以上のようにして得られる本発明の金属錯体は、ジカルボン酸化合物(I)と金属イオン(例えば、亜鉛イオン)とからなる一次元鎖中の金属のアキシャル位に二座配位可能な有機配位子が配位し、ジカルボン酸化合物(I)と金属イオンとからなる一次元鎖間を連結することで層状の二次元構造が形成される。そして、この二次元構造が互いに貫入した構造であり、細孔(一次元チャンネル)を有する。
【0041】
細孔を有する金属錯体は、細孔表面と物質の相互作用(相互作用の強さは物質のLennard−Jonesポテンシャルの大きさに比例)により、高いガス吸着性能、高い吸蔵性能及び高い選択性を発現する。本発明では、一般式(I)で表されるジカルボン酸化合物を用いて細孔表面の電荷密度を制御することで、高いガス吸着性能、高い吸蔵性能及び高い選択性が発現する。
【0042】
前記の選択吸着メカニズムは推定ではあるが、例え前記メカニズムに従っていない場合でも、本発明で規定する要件を満足するのであれば、本発明の技術的範囲に包含される。
【0043】
本発明の金属錯体は、各種ガスの吸着性能に優れているので、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素(メタン、エタン、エチレン、アセチレンなど)、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなど)、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン(ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなど)、水蒸気または有機蒸気などを吸着するための吸着材として好ましい。有機蒸気とは、常温、常圧で液体状の有機物質の気化ガスを意味する。このような有機物質としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類;トリメチルアミンなどのアミン類;アセトアルデヒドなどのアルデヒド類;炭素数5〜16の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;塩化メチル、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
【0044】
また、本発明の金属錯体は、各種ガスの吸蔵性能に優れているので、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素(メタン、エタン、エチレン、アセチレンなど)、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなど)、硫化水素、アンモニア、水蒸気または有機蒸気などを吸蔵するための吸蔵材としても好ましい。有機蒸気とは、常温、常圧で液体状の有機物質の気化ガスを意味する。このような有機物質としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類;トリメチルアミンなどのアミン類;アセトアルデヒドなどのアルデヒド類;炭素数5〜16の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;塩化メチル、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
【0045】
さらに、本発明の金属錯体は、各種ガスの分離性能に優れているので、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素(メタン、エタン、エチレン、アセチレンなど)、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなど)、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン(ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなど)、水蒸気または有機蒸気などを分離するための分離材としても好ましく、特に、メタン中の二酸化炭素、水素中の二酸化炭素、窒素中の二酸化炭素、メタン中のエタンまたは空気中のメタンなどを、圧力スイング吸着法や温度スイング吸着法により分離するのに適している。有機蒸気とは、常温、常圧で液体状の有機物質の気化ガスを意味する。このような有機物質としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類;トリメチルアミンなどのアミン類;アセトアルデヒドなどのアルデヒド類;炭素数5〜16の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;塩化メチル、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の実施例および比較例における分析および評価は次のようにして行った。
【0047】
(1)粉末X線回折パターンの測定
X線回折装置を用いて、回折角(2θ)=5〜50°の範囲を走査速度1°/分で走査し、対称反射法で測定した。測定条件の詳細を以下に示す。
<分析条件>
装置:株式会社リガク製RINT2400
X線源:CuKα(λ=1.5418Å) 40kV 200mA
ゴニオメーター:縦型ゴニオメーター
検出器:シンチレーションカウンター
ステップ幅:0.02°
スリット:発散スリット=0.5°
受光スリット=0.15mm
散乱スリット=0.5°
【0048】
(2)吸脱着等温線の測定
高圧ガス吸着量測定装置を用いて容量法で測定を行った。このとき、測定に先立って試料を373K、50Paで10時間乾燥し、吸着水などを除去した。測定条件の詳細を以下に示す。
<分析条件>
装置:日本ベル株式会社製BELSORP−HP
平衡待ち時間:500秒
【0049】
(3)0.1MPaにおけるガス吸着速度の測定
三方コックとセプタムを装着したガラス製10mL二口フラスコを用意し、三方コックの一方の口に別の三方コックを介して100mLのシリンジをチューブで接続した。測定は、二口フラスコに試料を入れ、373K、4.0x10−3Paで3時間乾燥し、吸着水などを除去した後に、フラスコに装着している三方コックを閉じ、続いてシリンジ側の三方コックを通じてシリンジに100mLの混合ガスを導入し、最後にフラスコに装着している三方コックを開き、試料に混合ガスを吸着させた。このとき、吸着量はシリンジの目盛りの減少分から算出した(死容積はあらかじめヘリウムを用いて測定)。
【0050】
<合成例1>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物5.00g(17mmol)、4,4’−ジカルボキシジフェニルスルホン5.18g(17mmol)及び4,4’−ビピリジル2.65g(17mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド200mLに溶解させ、393Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、エタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体6.95g(収率99%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図1に示す。
【0051】
<比較合成例1>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物5.00g(17mmol)、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル4.36g(17mmol)及び4,4’−ビピリジル2.65g(17mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド200mLに溶解させ、393Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、エタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体6.01g(収率74%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図2に示す。
【0052】
<実施例1>
合成例1で得た金属錯体について、273K、0.1MPaにおける二酸化炭素及びメタンの吸着速度を測定した。吸着開始10分後の二酸化炭素とメタンの吸着量の比を表1に示す。
【0053】
<比較例1>
比較合成例1で得た金属錯体について、273K、0.1MPaにおける二酸化炭素及びメタンの吸着速度を測定した。吸着開始10分後の二酸化炭素とメタンの吸着量の比を表1に示す。
【0054】
【表1】
表1より、本発明の金属錯体は高い二酸化炭素選択吸着能を有するので、メタンと二酸化炭素の分離材として優れていることは明らかである。
【0055】
<比較合成例2>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物5.00g(17mmol)、2,7−ナフタレンジカルボン酸3.68g(17mmol)及び4,4’−ビピリジル2.65g(17mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド200mLに溶解させ、393Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、エタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体7.02g(収率95%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図3に示す。
【0056】
<実施例2>
合成例1で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素及びメタンの吸脱着等温線を測定した。結果を図4に示す。
【0057】
<比較例2>
比較合成例2で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素及びメタンの吸脱着等温線を測定した。結果を図5に示す。
【0058】
図4と図5より、本発明の金属錯体は高い二酸化炭素選択吸着能を有するので、メタンと二酸化炭素の分離材として優れていることは明らかである。
【0059】
<比較合成例3>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物5.00g(17mmol)、イソフタル酸2.80g(17mmol)及び4,4’−ビピリジル2.65g(17mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド200mLに溶解させ、393Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、エタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体6.35g(収率98%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図6に示す。
【0060】
<実施例3>
合成例1で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素及び窒素の吸脱着等温線を測定した。結果を図7に示す。また、0.2、0.4及び0.6MPaでの二酸化炭素と窒素の吸着量比を表2に示す。
【0061】
<比較例3>
比較合成例2で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素及び窒素の吸脱着等温線を測定した。結果を図8に示す。また、0.2、0.4及び0.6MPaでの二酸化炭素と窒素の吸着量比を表2に示す。
【0062】
<比較例4>
比較合成例3で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素及び窒素の吸脱着等温線を測定した。結果を図9に示す。また、0.2、0.4及び0.6MPaでの二酸化炭素と窒素の吸着量比を表2に示す。
【0063】
【表2】
表2より、本発明の金属錯体は高い二酸化炭素選択吸着能を有するので、窒素と二酸化炭素の分離材として優れていることは明らかである。
【0064】
<合成例2>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物3.21g(11mmol)、4,4’−ジカルボキシジフェニルスルホン3.31g(11mmol)及び1,2−ビス(4−ピリジル)エチン0.97g(5.4mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド130mLに溶解させ、393Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、エタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体4.09g(収率82%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図10に示す。
【0065】
<比較合成例4>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物5.00g(17mmol)、イソフタル酸2.80g(17mmol)及び1,2−ビス(4−ピリジル)エチン3.03g(17mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド200mLに溶解させ、393Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体3.50g(収率51%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図11に示す。
【0066】
<比較合成例5>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物2.81g(9.5mmol)、テレフタル酸1.57g(9.5mmol)及び1,2−ビス(4−ピリジル)エチン0.852g(4.7mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド:エタノール=1:1からなるN,N−ジメチルホルムアミドとエタノールの混合溶媒800mLに溶解させ、363Kで48時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体2.65g(収率88%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図12に示す。
【0067】
<実施例4>
合成例2で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸着等温線を測定した。結果を図13に示す。
【0068】
<比較例5>
比較合成例4で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸着等温線を測定した。結果を図13に示す。
【0069】
<比較例6>
比較合成例5で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸着等温線を測定した。結果を図13に示す。
【0070】
図13より、本発明の金属錯体は二酸化炭素の有効吸着量が多いので、二酸化炭素の吸着材として優れていることは明らかである。
【0071】
<実施例5>
合成例2で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸脱着等温線を測定した。結果を図14に示す。
【0072】
<比較例7>
比較合成例4で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸脱着等温線を測定した。結果を図14に示す。
【0073】
<比較例8>
比較合成例5で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸脱着等温線を測定した。結果を図14に示す。
【0074】
図14より、本発明の金属錯体は二酸化炭素の有効吸蔵量が多いので、二酸化炭素の吸蔵材として優れていることは明らかである。
【0075】
<合成例3>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物1.94g(6.5mmol)、4,4’−ジカルボキシジフェニルスルホン2.00g(6.5mmol)及び1,4−ビス(4−ピリジル)ベンゼン0.76g(3.3mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド80mLに溶解させ、393Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体2.82g(収率89%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図15に示す。
【0076】
<比較合成例6>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物2.81g(9.5mmol)、テレフタル酸1.57g(9.5mmol)及び1,4−ビス(4−ピリジル)ベンゼン1.10g(4.7mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド:エタノール=1:1からなるN,N−ジメチルホルムアミドとエタノールの混合溶媒800mLに溶解させ、363Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体3.01g(収率92%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図16に示す。
【0077】
<実施例6>
合成例3で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸着等温線を測定した。結果を図17に示す。
【0078】
<比較例9>
比較合成例6で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸着等温線を測定した。結果を図17に示す。
【0079】
図17より、本発明の金属錯体は二酸化炭素の有効吸着量が多いので、二酸化炭素の吸着材として優れていることは明らかである。
【0080】
<実施例7>
合成例3で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸脱着等温線を測定した。結果を図18に示す。
【0081】
<比較例10>
比較合成例6で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸脱着等温線を測定した。結果を図18に示す。
【0082】
図18より、本発明の金属錯体は二酸化炭素の有効吸蔵量が多いので、二酸化炭素の吸蔵材として優れていることは明らかである。
【0083】
<合成例4>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物3.21g(11mmol)、4,4’−ジカルボキシジフェニルスルホン3.31g(11mmol)及び3,6−ジ(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン1.28g(5.4mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド130mLに溶解させ、393Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体2.70g(収率51%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図19に示す。
【0084】
<比較合成例7>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物5.00g(17mmol)、イソフタル酸2.80g(17mmol)及び3,6−ジ(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン3.97g(17mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド200mLに溶解させ、393Kで24時間攪拌した。吸引濾過の後、エタノールで3回洗浄し、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体4.18g(収率53%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図20に示す。
【0085】
<実施例8>
合成例4で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸着等温線を測定した。結果を図21に示す。
【0086】
<比較例11>
比較合成例7で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸着等温線を測定した。結果を図21に示す。
【0087】
図21より、本発明の金属錯体は二酸化炭素の有効吸着量が多いので、二酸化炭素の吸着材として優れていることは明らかである。
【0088】
<実施例9>
合成例4で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸脱着等温線を測定した。結果を図22に示す。
【0089】
<比較例12>
比較合成例7で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸脱着等温線を測定した。結果を図22に示す。
【0090】
図22より、本発明の金属錯体は二酸化炭素の有効吸蔵量が多いので、二酸化炭素の吸蔵材として優れていることは明らかである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属錯体及びその製造方法、並びに該金属錯体からなる分離材に関する。さらに詳しくは、特定のジカルボン酸化合物と、少なくとも1種の金属イオンと、該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とからなる金属錯体に関する。本発明の金属錯体は、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン、水蒸気または有機蒸気などの吸着材、吸蔵材および分離材として好ましく、特に、メタンと二酸化炭素、水素と二酸化炭素、窒素と二酸化炭素、メタンとエタンまたは空気とメタンなどの分離材として好ましい。
【背景技術】
【0002】
これまで、脱臭、排ガス処理などの分野で種々の吸着材が開発されている。活性炭はその代表例であり、活性炭の優れた吸着性能を利用して、空気浄化、脱硫、脱硝、有害物質除去など各種工業において広く使用されている。近年は半導体製造プロセスなどへ窒素の需要が増大しており、かかる窒素を製造する方法として、分子ふるい炭を使用して圧力スイング吸着法や温度スイング吸着法により空気から窒素を製造する方法が使用されている。また、分子ふるい炭は、メタノール分解ガスからの水素精製など各種ガス分離精製にも応用されている。
【0003】
圧力スイング吸着法や温度スイング吸着法により混合ガスを分離する際には、一般に、分離吸着材として分子ふるい炭やゼオライトなどを使用し、その平衡吸着量または吸着速度の差により分離を行っている。しかしながら、平衡吸着量の差によって混合ガスを分離する場合、これまでの吸着材では除去したいガスのみを選択的に吸着することができないため分離係数が小さくなり、装置の大型化は不可避であった。また、吸着速度の差によって混合ガスを分離する場合、ガスの種類によっては除去したいガスのみを吸着できるが、吸着と脱着を交互に行う必要があり、この場合も装置は依然として大型にならざるを得なかった。
【0004】
一方、より優れた吸着性能を与える吸着材として、外部刺激により動的構造変化を生じる高分子金属錯体が開発されている(非特許文献1、非特許文献2参照)。この新規な動的構造変化高分子金属錯体をガス吸着材として使用した場合、ある一定の圧力まではガスを吸着しないが、ある一定圧を越えるとガス吸着が始まるという特異な現象が観測されている。また、ガスの種類によって吸着開始圧が異なる現象が観測されている。
【0005】
この現象を、例えば圧力スイング吸着方式のガス分離装置における吸着材に応用した場合、非常に効率良いガス分離が可能となる。また、圧力のスイング幅を狭くすることができ、省エネルギーにも寄与する。さらに、ガス分離装置の小型化にも寄与し得るため、高純度ガスを製品として販売する際のコスト競争力を高めることができることは勿論、自社工場内部で高純度ガスを用いる場合であっても、高純度ガスを必要とする設備に要するコストを削減できるため、結局最終製品の製造コストを削減する効果を有する。
【0006】
しかしながら、さらなる装置小型化によるコスト削減が求められているのが現状であり、これを達成するために吸着性能や吸蔵性能、或いは分離性能のさらなる向上が求められている。
【0007】
2,7−ナフタレンジカルボン酸と亜鉛イオンと4,4’−ビピリジルからなる高分子金属錯体は、IUPACの分類におけるI型の吸着プロファイルを示すが、二酸化炭素、窒素、酸素の混合気体の吸着試験において、二酸化炭素を選択的に吸着することが知られている(非特許文献3参照)。しかしながら、開示されている金属錯体について本発明者らが二酸化炭素とメタンの分離性能を評価したところ、その分離性能は満足できるものではなかった。
【0008】
イソフタル酸誘導体、2,7−ナフタレンジカルボン酸誘導体または4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸誘導体と金属イオンと該金属イオンに二座配位可能な有機配位子から構成される高分子金属錯体は、不飽和有機分子と親和性を有しており、不飽和有機分子の分離に有効であることが知られている(特許文献1参照)。しかしながら、開示されている金属錯体について本発明者らが二酸化炭素とメタンの分離性能を評価したところ、その分離性能は満足できるものではなかった。4,4‘−ジカルボニルビフェニルスルホン(H2dbsf)とCu(非特許文献4)、Cd、NiまたはMn(非特許文献5、6、7、8)などの錯体が知られているが、これらは金属イオン若しくは二座配位可能な有機配位子が相違し、それら錯体のガス吸着、吸蔵、分離の性質については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−247884公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】植村一広、北川進、未来材料、第2巻、44〜51頁(2002年)
【非特許文献2】松田亮太郎、北川進、ペトロテック、第26巻、97〜104頁(2003年)
【非特許文献3】中川啓史、田中大輔、下村悟、北川進、第61回コロイドおよび界面化学討論会講演要旨集、462頁(2008年)
【非特許文献4】Polyhedron 26 (2007) 1123-1132
【非特許文献5】Inorg. Chem. 2007, 46, 4158-4166
【非特許文献6】Inorganica Chimica Acta 362 (2009) 543-550
【非特許文献7】CrystEngComm, 2008, 10, 905-914
【非特許文献8】Solid State Sciences,11(2009)364-367
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、従来よりも有効吸着量が大きいガス吸着材、従来よりも有効吸蔵量が大きいガス吸蔵材、或いは従来よりも高い選択性を発現するガス分離材として使用できる金属錯体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意検討し、特定のジカルボン酸化合物と、少なくとも1種の金属イオンと、該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とからなる金属錯体により、上記目的を達成することができることを見出し、本発明に至った。
【0013】
すなわち、本発明によれば、以下のものが提供される。
(1)下記一般式(I);
【0014】
【化1】
(式中、Xは窒素、ケイ素、リン、硫黄、ゲルマニウム、ヒ素、セレンから選ばれ、他原子と結合していてもよいヘテロ原子であり、R1、R2、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ同一または異なって水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基もしくはハロゲン原子を示すか、R1とR2、或いはR5とR6が一緒になって置換基を有していてもよいアルキレン基、オキシアルキレン基またはアルケニレン基である。)で表されるジカルボン酸化合物(I)と、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、クロムイオン、モリブデンイオン、タングステンイオン、鉄イオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、パラジウムイオン及び亜鉛イオンから選択される少なくとも1種の金属イオンと、1つの金属イオンに対してキレート配位し得ない構造を有する該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とからなる金属錯体。
(2)該二座配位可能な有機配位子が1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピラジン、2,5−ジメチルピラジン、4,4’−ビピリジル、2,2’−ジメチル−4,4’−ビピリジン、1,2−ビス(4−ピリジル)エチン、1,4−ビス(4−ピリジル)ブタジイン、1,4−ビス(4−ピリジル)ベンゼン、3,6−ジ(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、2,2’−ビ−1,6−ナフチリジン、フェナジン、ジアザピレン、トランス−1,2−ビス(4−ピリジル)エテン、4,4’−アゾピリジン、1,2−ビス(4−ピリジル)エタン、1,2−ビス(4−ピリジル)−グリコール、N−(4−ピリジル)イソニコチンアミド、1,2−ビス(4−ピリジル)プロパン、4,4’−ビス(4−ピリジル)ビフェニル、N,N’−ジ(4−ピリジル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミド、2,6−ジ(4−ピリジル)−ベンゾ[1,2−c:4,5−c’]ジピロール−1,3,5,7(2H,6H)−テトロン及びN,N’−ジ(4−ピリジル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミドから選択される少なくとも1種である(1)に記載の金属錯体。
(3)該金属イオンが亜鉛イオンである(1)または(2)に記載の金属錯体。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の金属錯体からなる吸着材。
(5)該吸着材が、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン、水蒸気または有機蒸気を吸着するための吸着材である(4)に記載の吸着材。
(6)(1)〜(3)のいずれかに記載の金属錯体からなる吸蔵材。
(7)該吸蔵材が、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、水蒸気または有機蒸気を吸蔵するための吸蔵材である(6)に記載の吸蔵材。
(8)(1)〜(3)のいずれかに記載の金属錯体からなる分離材。
(9)該分離材が、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン、水蒸気または有機蒸気を分離するための分離材である(8)に記載の分離材。
(10)該分離材が、メタンと二酸化炭素、水素と二酸化炭素、窒素と二酸化炭素、メタンとエタンまたは空気とメタンを分離するための分離材である(8)に記載の分離材。
(11)ジカルボン酸化合物(I)と、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、クロムイオン、モリブデンイオン、タングステンイオン、鉄イオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、パラジウムイオン及び亜鉛イオンの塩から選択される少なくとも1種の金属塩と、1つの金属イオンに対してキレート配位し得ない構造を有する該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とを溶媒中で反応させ、析出させる、(1)に記載の金属錯体の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、特定のジカルボン酸化合物と、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、クロムイオン、モリブデンイオン、タングステンイオン、鉄イオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、パラジウムイオン及び亜鉛イオンから選択される少なくとも1種の金属イオンと、1つの金属イオンに対してキレート配位し得ない構造を有する該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とからなる金属錯体を提供することができる。
【0016】
本発明の金属錯体は、各種ガスの吸着性能に優れているので、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン、水蒸気または有機蒸気などを吸着するための吸着材として使用することができる。
【0017】
また、本発明の金属錯体は、各種ガスの吸蔵性能に優れているので、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、水蒸気または有機蒸気などを吸蔵するための吸蔵材としても使用することができる。
【0018】
さらに、本発明の金属錯体は、各種ガスの分離性能に優れているので、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン、水蒸気または有機蒸気などを分離するための分離材としても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】合成例1で得た金属錯体の粉末X線回折パターンである。
【図2】比較合成例1で得た金属錯体の粉末X線回折パターンである。
【図3】比較合成例2で得た金属錯体の粉末X線回折パターンである。
【図4】合成例1で得た金属錯体について、二酸化炭素及びメタンの273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図5】比較合成例2で得た金属錯体について、二酸化炭素及びメタンの273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図6】比較合成例3で得た金属錯体の粉末X線回折パターンである。
【図7】合成例1で得た金属錯体について、二酸化炭素及び窒素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図8】比較合成例2で得た金属錯体について、二酸化炭素及び窒素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図9】比較合成例3で得た金属錯体について、二酸化炭素及び窒素の273Kにおける吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図10】合成例2で得た金属錯体の粉末X線回折パターンである。
【図11】比較合成例4で得た金属錯体の粉末X線回折パターンである。
【図12】比較合成例5で得た金属錯体の粉末X線回折パターンである。
【図13】合成例2、比較合成例4及び比較合成例5で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸着等温線を容量法により測定した結果である。
【図14】合成例2、比較合成例4及び比較合成例5で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図15】合成例3で得た金属錯体の粉末X線回折パターンである。
【図16】比較合成例6で得た金属錯体の粉末X線回折パターンである。
【図17】合成例3及び比較合成例6で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸着等温線を容量法により測定した結果である。
【図18】合成例3及び比較合成例6で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【図19】合成例4で得た金属錯体の粉末X線回折パターンである。
【図20】比較合成例7で得た金属錯体の粉末X線回折パターンである。
【図21】合成例4及び比較合成例7で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸着等温線を容量法により測定した結果である。
【図22】合成例4及び比較合成例7で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸脱着等温線を容量法により測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の金属錯体は、ジカルボン酸化合物(I)と、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、クロムイオン、モリブデンイオン、タングステンイオン、鉄イオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、パラジウムイオン及び亜鉛イオンから選択される少なくとも1種の金属イオンと、1つの金属イオンに対してキレート配位し得ない構造を有する該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とからなる。
【0021】
金属錯体は、ジカルボン酸化合物(I)と、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、クロムイオン、モリブデンイオン、タングステンイオン、鉄イオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、パラジウムイオン及び亜鉛イオンの塩から選択される少なくとも1種の金属塩と、1つの金属イオンに対してキレート配位し得ない構造を有する該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とを、常圧下、溶媒中で数時間から数日間反応させ、析出させて製造することができる。例えば、金属塩の水溶液または有機溶媒溶液と、ジカルボン酸化合物(I)及び1つの金属イオンに対してキレート配位し得ない構造を有する二座配位可能な有機配位子を含有する有機溶媒溶液とを、常圧下で混合して反応させることにより得ることができる。
【0022】
本発明に用いられるジカルボン酸化合物(I)は下記一般式(I);
【化2】
で表される。式中、Xは窒素、ケイ素、リン、硫黄、ゲルマニウム、ヒ素、セレンから選ばれ、他原子と結合していてもよいヘテロ原子であり、R1、R2、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ同一または異なって水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基もしくはハロゲン原子であるか、R1とR2、或いはR5とR6が一緒になって置換基を有していてもよいアルキレン基、オキシアルキレン基またはアルケニレン基である。
【0023】
上記Xとしては、例えば、アミノ基、モノアルキルアミノ基(メチルアミノ基、エチルアミノ基など)、ジアルキルシランジイル基(ジメチルシランジイル基(−Si(CH3)2−)、ジエチルシランジイル基(−Si(CH2CH3)2−)など)、ヒドロキシホスホリル基(−P(O)(OH)−)、硫黄原子、スルホニル基、ジアルキルゲルマンジイル基(ジメチルゲルマンジイル基(−Ge(CH3)2−)、ジエチルゲルマンジイル基(−Ge(CH2CH3)2−)など)、アルサンジイル基(−AsH−)、アルキルアルサントリル基(メチルアルサントリル基(−As(CH3)−)、エチルアルサントリル基(−As(CH2CH3)−)など)、セレン原子、セレノニル基(−SeO2−)などが挙げられる。
【0024】
上記R1、R2、R3、R4、R5及びR6を構成することのできる置換基の内、アルキル基の炭素原子数は1〜5が好ましい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基などの直鎖または分岐を有するアルキル基が、ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が、それぞれ挙げられる。また、該アルキル基が有していてもよい置換基の例としては、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基,n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基など)、アミノ基、ホルミル基、エポキシ基、アシロキシ基(アセトキシ基、n−プロパノイルオキシ基、n−ブタノイルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基など)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基など)、カルボン酸無水物基(−CO−O−CO−R基)(Rは炭素数1〜5のアルキル基である)などが挙げられる。アルキル基の置換基の数は、1〜3個が好ましく、1個がより好ましい。
【0025】
上記アルキレン基の炭素数は、3〜6が好ましく、3〜4がより好ましい。アルキレン基の炭素数が3〜6の場合、R1とR2、或いはR5とR6はそれらが結合している炭素原子と一緒になって5〜8員環(シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環)を構成する。
【0026】
上記オキシアルキレン基の炭素と酸素の合計の原子数は、3〜6が好ましく、3〜4がより好ましい。アルキレン基の炭素と酸素の合計の原子数が3〜6の場合、オキシアルキレン基として、−O−CH2−O−、−CH2−O−CH2−、−O−CH2−CH2−O−、−O−CH2−CH2−CH2−、−CH2−O−CH2−CH2−、−O−CH2−CH2−CH2−CH2−、−O−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−などが挙げられる。
【0027】
上記アルケニレン基の炭素数は、3〜6が好ましく、3〜4がより好ましい。アルキレン基の炭素数が3〜6の場合、R1とR2、或いはR5とR6はそれらが結合している炭素原子と一緒になって5〜8員環(シクロペンテン環、シクロヘキセン環(1つの二重結合を有する場合)、或いはベンゼン環(2つの二重結合を有する場合)、シクロヘプテン環、シクロオクテン環)を示す。
【0028】
また、該アルキレン基、オキシアルキレン基、アルケニレン基が有していてもよい置換基の例としては、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基,n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基など)、アミノ基、ホルミル基、エポキシ基、アシロキシ基(アセトキシ基、n−プロパノイルオキシ基、n−ブタノイルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基など)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基など)、カルボン酸無水物基(−CO−O−CO−R基)(Rは炭素数1〜5のアルキル基である)などが挙げられる。
【0029】
本発明に用いられるジカルボン酸化合物(I)は、R1=R6、R2=R5、R3=R4、である対称化合物が好ましい。
【0030】
ジカルボン酸化合物(I)としては、4,4’−ジカルボキシジフェニルスルホンが好ましい。
【0031】
金属錯体の製造に用いる金属イオンの塩としては、マグネシウム塩、アルミニウム塩、カルシウム塩、クロム塩、モリブデン塩、タングステン塩、鉄塩、ルテニウム塩、ロジウム塩、パラジウム塩及び亜鉛塩を使用することができ、亜鉛塩が好ましい。金属塩は単一の金属塩を使用することが好ましいが、2種以上の金属塩を混合して用いてもよい。また、本発明の金属錯体は、単一の金属イオンからなる金属錯体を2種以上混合して使用することもできる。これらの金属塩としては、酢酸塩、ギ酸塩などの有機酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩などの無機酸塩を使用することができる。
【0032】
本発明に用いられる1つの金属イオンに対してキレート配位し得ない構造を有する二座配位可能な有機配位子としては、例えば、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピラジン、2,5−ジメチルピラジン、4,4’−ビピリジル、2,2’−ジメチル−4,4’−ビピリジン、1,2−ビス(4−ピリジル)エチン、1,4−ビス(4−ピリジル)ブタジイン、1,4−ビス(4−ピリジル)ベンゼン、3,6−ジ(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、2,2’−ビ−1,6−ナフチリジン、フェナジン、ジアザピレン、トランス−1,2−ビス(4−ピリジル)エテン、4,4’−アゾピリジン、1,2−ビス(4−ピリジル)エタン、1,2−ビス(4−ピリジル)−グリコール、N−(4−ピリジル)イソニコチンアミド、1,2−ビス(4−ピリジル)プロパン、4,4’−ビス(4−ピリジル)ビフェニル、N,N’−ジ(4−ピリジル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミド、2,6−ジ(4−ピリジル)−ベンゾ[1,2−c:4,5−c’]ジピロール−1,3,5,7(2H,6H)−テトロン及びN,N’−ジ(4−ピリジル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミドなどを挙げることができ、中でも4,4’−ビピリジル、1,2−ビス(4−ピリジル)エチン、1,4−ビス(4−ピリジル)ベンゼン及び3,6−ジ(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジンが好ましい。ここで、1つの金属イオンに対してキレート配位し得ない構造を有する二座配位可能な有機配位子とは、非共有電子対で金属イオンに対して配位する部位を2箇所以上有し、かつ1つの金属イオンに対してキレート配位し得ない中性配位子を意味する。1つの金属イオンに対してキレート配位可能な構造を有する有機配位子としては、エチレンジアミン、2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントロリンなど、一つの金属イオンに対してシス型で二座配位可能な有機配位子が挙げられる。該キレート配位可能な構造を有する有機配位子を用いた場合、中心金属イオンは五配位四方錘形をとり、水分子が配位座を一つ埋めることで金属錯体は三次元集積構造を形成する。そのため、ガス吸着を行うための前処理を行うと、この水分子が脱離し、金属錯体は集積構造を維持することができない。
【0033】
金属錯体を製造するときのジカルボン酸化合物(I)と二座配位可能な有機配位子との混合比率は、ジカルボン酸化合物(I):二座配位可能な有機配位子=1:5〜8:1のモル比の範囲内が好ましく、1:3〜6:1のモル比の範囲内がより好ましい。これ以外の範囲で反応を行っても目的とする金属錯体は得られるが、収率が低下し、副反応も増えるために好ましくない。
【0034】
金属錯体を製造するときの金属塩と二座配位可能な有機配位子の混合比率は、金属塩:二座配位可能な有機配位子=3:1〜1:3のモル比の範囲内が好ましく、2:1〜1:2のモル比の範囲内がより好ましい。これ以外の範囲では目的とする金属錯体の収率が低下し、また、未反応の原料が残留して得られた金属錯体の精製が困難になる。
【0035】
金属錯体を製造するための溶媒におけるジカルボン酸化合物(I)のモル濃度は、0.01〜5.0mol/Lが好ましく、0.05〜2.0mol/Lがより好ましい。これより低い濃度で反応を行っても目的とする金属錯体は得られるが、収率が低下するため好ましくない。また、これより高い濃度では溶解性が低下し、反応が円滑に進行しない。
【0036】
金属錯体を製造するための溶媒における金属塩のモル濃度は、0.01〜5.0mol/Lが好ましく、0.05〜2.0mol/Lがより好ましい。これより低い濃度で反応を行っても目的とする金属錯体は得られるが、収率が低下するため好ましくない。また、これより高い濃度では未反応の金属塩が残留し、得られた金属錯体の精製が困難になる。
【0037】
金属錯体を製造するための溶媒における二座配位可能な有機配位子のモル濃度は、0.01〜5.0mol/Lが好ましく、0.05〜2.0mol/Lがより好ましい。これより低い濃度で反応を行っても目的とする金属錯体は得られるが、収率が低下するため好ましくない。また、これより高い濃度では溶解性が低下し、反応が円滑に進行しない。
【0038】
金属錯体の製造に用いる溶媒としては、有機溶媒、水またはそれらの混合溶媒を使用することができる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、アセトン、酢酸エチル、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、水またはこれらの混合溶媒を使用することができる。反応温度としては、253〜423Kが好ましい。
【0039】
結晶性の良い金属錯体は、純度が高くて吸着性能が良い。反応が終了したことはガスクロマトグラフィーまたは高速液体クロマトグラフィーにより原料の残存量を定量することにより確認することができる。反応終了後、得られた混合液を吸引濾過に付して沈殿物を集め、有機溶媒による洗浄後、373K程度で数時間真空乾燥することにより、本発明の金属錯体を得ることができる。
【0040】
以上のようにして得られる本発明の金属錯体は、ジカルボン酸化合物(I)と金属イオン(例えば、亜鉛イオン)とからなる一次元鎖中の金属のアキシャル位に二座配位可能な有機配位子が配位し、ジカルボン酸化合物(I)と金属イオンとからなる一次元鎖間を連結することで層状の二次元構造が形成される。そして、この二次元構造が互いに貫入した構造であり、細孔(一次元チャンネル)を有する。
【0041】
細孔を有する金属錯体は、細孔表面と物質の相互作用(相互作用の強さは物質のLennard−Jonesポテンシャルの大きさに比例)により、高いガス吸着性能、高い吸蔵性能及び高い選択性を発現する。本発明では、一般式(I)で表されるジカルボン酸化合物を用いて細孔表面の電荷密度を制御することで、高いガス吸着性能、高い吸蔵性能及び高い選択性が発現する。
【0042】
前記の選択吸着メカニズムは推定ではあるが、例え前記メカニズムに従っていない場合でも、本発明で規定する要件を満足するのであれば、本発明の技術的範囲に包含される。
【0043】
本発明の金属錯体は、各種ガスの吸着性能に優れているので、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素(メタン、エタン、エチレン、アセチレンなど)、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなど)、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン(ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなど)、水蒸気または有機蒸気などを吸着するための吸着材として好ましい。有機蒸気とは、常温、常圧で液体状の有機物質の気化ガスを意味する。このような有機物質としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類;トリメチルアミンなどのアミン類;アセトアルデヒドなどのアルデヒド類;炭素数5〜16の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;塩化メチル、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
【0044】
また、本発明の金属錯体は、各種ガスの吸蔵性能に優れているので、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素(メタン、エタン、エチレン、アセチレンなど)、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなど)、硫化水素、アンモニア、水蒸気または有機蒸気などを吸蔵するための吸蔵材としても好ましい。有機蒸気とは、常温、常圧で液体状の有機物質の気化ガスを意味する。このような有機物質としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類;トリメチルアミンなどのアミン類;アセトアルデヒドなどのアルデヒド類;炭素数5〜16の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;塩化メチル、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
【0045】
さらに、本発明の金属錯体は、各種ガスの分離性能に優れているので、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素(メタン、エタン、エチレン、アセチレンなど)、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなど)、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン(ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなど)、水蒸気または有機蒸気などを分離するための分離材としても好ましく、特に、メタン中の二酸化炭素、水素中の二酸化炭素、窒素中の二酸化炭素、メタン中のエタンまたは空気中のメタンなどを、圧力スイング吸着法や温度スイング吸着法により分離するのに適している。有機蒸気とは、常温、常圧で液体状の有機物質の気化ガスを意味する。このような有機物質としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類;トリメチルアミンなどのアミン類;アセトアルデヒドなどのアルデヒド類;炭素数5〜16の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;塩化メチル、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の実施例および比較例における分析および評価は次のようにして行った。
【0047】
(1)粉末X線回折パターンの測定
X線回折装置を用いて、回折角(2θ)=5〜50°の範囲を走査速度1°/分で走査し、対称反射法で測定した。測定条件の詳細を以下に示す。
<分析条件>
装置:株式会社リガク製RINT2400
X線源:CuKα(λ=1.5418Å) 40kV 200mA
ゴニオメーター:縦型ゴニオメーター
検出器:シンチレーションカウンター
ステップ幅:0.02°
スリット:発散スリット=0.5°
受光スリット=0.15mm
散乱スリット=0.5°
【0048】
(2)吸脱着等温線の測定
高圧ガス吸着量測定装置を用いて容量法で測定を行った。このとき、測定に先立って試料を373K、50Paで10時間乾燥し、吸着水などを除去した。測定条件の詳細を以下に示す。
<分析条件>
装置:日本ベル株式会社製BELSORP−HP
平衡待ち時間:500秒
【0049】
(3)0.1MPaにおけるガス吸着速度の測定
三方コックとセプタムを装着したガラス製10mL二口フラスコを用意し、三方コックの一方の口に別の三方コックを介して100mLのシリンジをチューブで接続した。測定は、二口フラスコに試料を入れ、373K、4.0x10−3Paで3時間乾燥し、吸着水などを除去した後に、フラスコに装着している三方コックを閉じ、続いてシリンジ側の三方コックを通じてシリンジに100mLの混合ガスを導入し、最後にフラスコに装着している三方コックを開き、試料に混合ガスを吸着させた。このとき、吸着量はシリンジの目盛りの減少分から算出した(死容積はあらかじめヘリウムを用いて測定)。
【0050】
<合成例1>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物5.00g(17mmol)、4,4’−ジカルボキシジフェニルスルホン5.18g(17mmol)及び4,4’−ビピリジル2.65g(17mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド200mLに溶解させ、393Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、エタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体6.95g(収率99%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図1に示す。
【0051】
<比較合成例1>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物5.00g(17mmol)、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル4.36g(17mmol)及び4,4’−ビピリジル2.65g(17mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド200mLに溶解させ、393Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、エタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体6.01g(収率74%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図2に示す。
【0052】
<実施例1>
合成例1で得た金属錯体について、273K、0.1MPaにおける二酸化炭素及びメタンの吸着速度を測定した。吸着開始10分後の二酸化炭素とメタンの吸着量の比を表1に示す。
【0053】
<比較例1>
比較合成例1で得た金属錯体について、273K、0.1MPaにおける二酸化炭素及びメタンの吸着速度を測定した。吸着開始10分後の二酸化炭素とメタンの吸着量の比を表1に示す。
【0054】
【表1】
表1より、本発明の金属錯体は高い二酸化炭素選択吸着能を有するので、メタンと二酸化炭素の分離材として優れていることは明らかである。
【0055】
<比較合成例2>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物5.00g(17mmol)、2,7−ナフタレンジカルボン酸3.68g(17mmol)及び4,4’−ビピリジル2.65g(17mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド200mLに溶解させ、393Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、エタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体7.02g(収率95%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図3に示す。
【0056】
<実施例2>
合成例1で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素及びメタンの吸脱着等温線を測定した。結果を図4に示す。
【0057】
<比較例2>
比較合成例2で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素及びメタンの吸脱着等温線を測定した。結果を図5に示す。
【0058】
図4と図5より、本発明の金属錯体は高い二酸化炭素選択吸着能を有するので、メタンと二酸化炭素の分離材として優れていることは明らかである。
【0059】
<比較合成例3>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物5.00g(17mmol)、イソフタル酸2.80g(17mmol)及び4,4’−ビピリジル2.65g(17mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド200mLに溶解させ、393Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、エタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体6.35g(収率98%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図6に示す。
【0060】
<実施例3>
合成例1で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素及び窒素の吸脱着等温線を測定した。結果を図7に示す。また、0.2、0.4及び0.6MPaでの二酸化炭素と窒素の吸着量比を表2に示す。
【0061】
<比較例3>
比較合成例2で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素及び窒素の吸脱着等温線を測定した。結果を図8に示す。また、0.2、0.4及び0.6MPaでの二酸化炭素と窒素の吸着量比を表2に示す。
【0062】
<比較例4>
比較合成例3で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素及び窒素の吸脱着等温線を測定した。結果を図9に示す。また、0.2、0.4及び0.6MPaでの二酸化炭素と窒素の吸着量比を表2に示す。
【0063】
【表2】
表2より、本発明の金属錯体は高い二酸化炭素選択吸着能を有するので、窒素と二酸化炭素の分離材として優れていることは明らかである。
【0064】
<合成例2>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物3.21g(11mmol)、4,4’−ジカルボキシジフェニルスルホン3.31g(11mmol)及び1,2−ビス(4−ピリジル)エチン0.97g(5.4mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド130mLに溶解させ、393Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、エタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体4.09g(収率82%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図10に示す。
【0065】
<比較合成例4>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物5.00g(17mmol)、イソフタル酸2.80g(17mmol)及び1,2−ビス(4−ピリジル)エチン3.03g(17mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド200mLに溶解させ、393Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体3.50g(収率51%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図11に示す。
【0066】
<比較合成例5>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物2.81g(9.5mmol)、テレフタル酸1.57g(9.5mmol)及び1,2−ビス(4−ピリジル)エチン0.852g(4.7mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド:エタノール=1:1からなるN,N−ジメチルホルムアミドとエタノールの混合溶媒800mLに溶解させ、363Kで48時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体2.65g(収率88%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図12に示す。
【0067】
<実施例4>
合成例2で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸着等温線を測定した。結果を図13に示す。
【0068】
<比較例5>
比較合成例4で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸着等温線を測定した。結果を図13に示す。
【0069】
<比較例6>
比較合成例5で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸着等温線を測定した。結果を図13に示す。
【0070】
図13より、本発明の金属錯体は二酸化炭素の有効吸着量が多いので、二酸化炭素の吸着材として優れていることは明らかである。
【0071】
<実施例5>
合成例2で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸脱着等温線を測定した。結果を図14に示す。
【0072】
<比較例7>
比較合成例4で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸脱着等温線を測定した。結果を図14に示す。
【0073】
<比較例8>
比較合成例5で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸脱着等温線を測定した。結果を図14に示す。
【0074】
図14より、本発明の金属錯体は二酸化炭素の有効吸蔵量が多いので、二酸化炭素の吸蔵材として優れていることは明らかである。
【0075】
<合成例3>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物1.94g(6.5mmol)、4,4’−ジカルボキシジフェニルスルホン2.00g(6.5mmol)及び1,4−ビス(4−ピリジル)ベンゼン0.76g(3.3mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド80mLに溶解させ、393Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体2.82g(収率89%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図15に示す。
【0076】
<比較合成例6>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物2.81g(9.5mmol)、テレフタル酸1.57g(9.5mmol)及び1,4−ビス(4−ピリジル)ベンゼン1.10g(4.7mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド:エタノール=1:1からなるN,N−ジメチルホルムアミドとエタノールの混合溶媒800mLに溶解させ、363Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体3.01g(収率92%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図16に示す。
【0077】
<実施例6>
合成例3で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸着等温線を測定した。結果を図17に示す。
【0078】
<比較例9>
比較合成例6で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸着等温線を測定した。結果を図17に示す。
【0079】
図17より、本発明の金属錯体は二酸化炭素の有効吸着量が多いので、二酸化炭素の吸着材として優れていることは明らかである。
【0080】
<実施例7>
合成例3で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸脱着等温線を測定した。結果を図18に示す。
【0081】
<比較例10>
比較合成例6で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸脱着等温線を測定した。結果を図18に示す。
【0082】
図18より、本発明の金属錯体は二酸化炭素の有効吸蔵量が多いので、二酸化炭素の吸蔵材として優れていることは明らかである。
【0083】
<合成例4>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物3.21g(11mmol)、4,4’−ジカルボキシジフェニルスルホン3.31g(11mmol)及び3,6−ジ(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン1.28g(5.4mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド130mLに溶解させ、393Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体2.70g(収率51%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図19に示す。
【0084】
<比較合成例7>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物5.00g(17mmol)、イソフタル酸2.80g(17mmol)及び3,6−ジ(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン3.97g(17mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド200mLに溶解させ、393Kで24時間攪拌した。吸引濾過の後、エタノールで3回洗浄し、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体4.18g(収率53%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを図20に示す。
【0085】
<実施例8>
合成例4で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸着等温線を測定した。結果を図21に示す。
【0086】
<比較例11>
比較合成例7で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸着等温線を測定した。結果を図21に示す。
【0087】
図21より、本発明の金属錯体は二酸化炭素の有効吸着量が多いので、二酸化炭素の吸着材として優れていることは明らかである。
【0088】
<実施例9>
合成例4で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸脱着等温線を測定した。結果を図22に示す。
【0089】
<比較例12>
比較合成例7で得た金属錯体について、273Kにおける二酸化炭素の吸脱着等温線を測定した。結果を図22に示す。
【0090】
図22より、本発明の金属錯体は二酸化炭素の有効吸蔵量が多いので、二酸化炭素の吸蔵材として優れていることは明らかである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I);
【化1】
(式中、Xは窒素、ケイ素、リン、硫黄、ゲルマニウム、ヒ素、セレンから選ばれ、他原子と結合していてもよいヘテロ原子であり、R1、R2、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ同一または異なって水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基もしくはハロゲン原子であるか、R1とR2、R5とR6が一緒になって置換基を有していてもよいアルキレン基、オキシアルキレン基またはアルケニレン基である。)で表されるジカルボン酸化合物(I)と、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、クロムイオン、モリブデンイオン、タングステンイオン、鉄イオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、パラジウムイオン及び亜鉛イオンから選択される少なくとも1種の金属イオンと、1つの金属イオンに対してキレート配位し得ない構造を有する該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とからなる金属錯体。
【請求項2】
該二座配位可能な有機配位子が1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピラジン、2,5−ジメチルピラジン、4,4’−ビピリジル、2,2’−ジメチル−4,4’−ビピリジン、1,2−ビス(4−ピリジル)エチン、1,4−ビス(4−ピリジル)ブタジイン、1,4−ビス(4−ピリジル)ベンゼン、3,6−ジ(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、2,2’−ビ−1,6−ナフチリジン、フェナジン、ジアザピレン、トランス−1,2−ビス(4−ピリジル)エテン、4,4’−アゾピリジン、1,2−ビス(4−ピリジル)エタン、1,2−ビス(4−ピリジル)−グリコール、N−(4−ピリジル)イソニコチンアミド、1,2−ビス(4−ピリジル)プロパン、4,4’−ビス(4−ピリジル)ビフェニル、N,N’−ジ(4−ピリジル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミド、2,6−ジ(4−ピリジル)−ベンゾ[1,2−c:4,5−c’]ジピロール−1,3,5,7(2H,6H)−テトロン及びN,N’−ジ(4−ピリジル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミドから選択される少なくとも1種である請求項1に記載の金属錯体。
【請求項3】
該金属イオンが亜鉛イオンである請求項1又は2に記載の金属錯体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の金属錯体からなる吸着材。
【請求項5】
該吸着材が、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン、水蒸気または有機蒸気を吸着するための吸着材である請求項4に記載の吸着材。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の金属錯体からなる吸蔵材。
【請求項7】
該吸蔵材が、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、水蒸気または有機蒸気を吸蔵するための吸蔵材である請求項6に記載の吸蔵材。
【請求項8】
請求項1〜3いずれかに記載の金属錯体からなる分離材。
【請求項9】
該分離材が、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン、水蒸気または有機蒸気を分離するための分離材である請求項8に記載の分離材。
【請求項10】
該分離材が、メタンと二酸化炭素、水素と二酸化炭素、窒素と二酸化炭素、メタンとエタンまたは空気とメタンを分離するための分離材である請求項8に記載の分離材。
【請求項11】
ジカルボン酸化合物(I)と、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、クロムイオン、モリブデンイオン、タングステンイオン、鉄イオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、パラジウムイオン及び亜鉛イオンの塩から選択される少なくとも1種の金属塩と、該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とを溶媒中で反応させ、析出させる、請求項1に記載の金属錯体の製造方法。
【請求項1】
下記一般式(I);
【化1】
(式中、Xは窒素、ケイ素、リン、硫黄、ゲルマニウム、ヒ素、セレンから選ばれ、他原子と結合していてもよいヘテロ原子であり、R1、R2、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ同一または異なって水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基もしくはハロゲン原子であるか、R1とR2、R5とR6が一緒になって置換基を有していてもよいアルキレン基、オキシアルキレン基またはアルケニレン基である。)で表されるジカルボン酸化合物(I)と、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、クロムイオン、モリブデンイオン、タングステンイオン、鉄イオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、パラジウムイオン及び亜鉛イオンから選択される少なくとも1種の金属イオンと、1つの金属イオンに対してキレート配位し得ない構造を有する該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とからなる金属錯体。
【請求項2】
該二座配位可能な有機配位子が1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピラジン、2,5−ジメチルピラジン、4,4’−ビピリジル、2,2’−ジメチル−4,4’−ビピリジン、1,2−ビス(4−ピリジル)エチン、1,4−ビス(4−ピリジル)ブタジイン、1,4−ビス(4−ピリジル)ベンゼン、3,6−ジ(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、2,2’−ビ−1,6−ナフチリジン、フェナジン、ジアザピレン、トランス−1,2−ビス(4−ピリジル)エテン、4,4’−アゾピリジン、1,2−ビス(4−ピリジル)エタン、1,2−ビス(4−ピリジル)−グリコール、N−(4−ピリジル)イソニコチンアミド、1,2−ビス(4−ピリジル)プロパン、4,4’−ビス(4−ピリジル)ビフェニル、N,N’−ジ(4−ピリジル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミド、2,6−ジ(4−ピリジル)−ベンゾ[1,2−c:4,5−c’]ジピロール−1,3,5,7(2H,6H)−テトロン及びN,N’−ジ(4−ピリジル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミドから選択される少なくとも1種である請求項1に記載の金属錯体。
【請求項3】
該金属イオンが亜鉛イオンである請求項1又は2に記載の金属錯体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の金属錯体からなる吸着材。
【請求項5】
該吸着材が、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン、水蒸気または有機蒸気を吸着するための吸着材である請求項4に記載の吸着材。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の金属錯体からなる吸蔵材。
【請求項7】
該吸蔵材が、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、水蒸気または有機蒸気を吸蔵するための吸蔵材である請求項6に記載の吸蔵材。
【請求項8】
請求項1〜3いずれかに記載の金属錯体からなる分離材。
【請求項9】
該分離材が、二酸化炭素、水素、一酸化炭素、酸素、窒素、炭素数1〜4の炭化水素、希ガス、硫化水素、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物、シロキサン、水蒸気または有機蒸気を分離するための分離材である請求項8に記載の分離材。
【請求項10】
該分離材が、メタンと二酸化炭素、水素と二酸化炭素、窒素と二酸化炭素、メタンとエタンまたは空気とメタンを分離するための分離材である請求項8に記載の分離材。
【請求項11】
ジカルボン酸化合物(I)と、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、クロムイオン、モリブデンイオン、タングステンイオン、鉄イオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、パラジウムイオン及び亜鉛イオンの塩から選択される少なくとも1種の金属塩と、該金属イオンに二座配位可能な有機配位子とを溶媒中で反応させ、析出させる、請求項1に記載の金属錯体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2011−93894(P2011−93894A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220830(P2010−220830)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】
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