説明

金属錯体

次式、すなわち[LMOを有する錯体を合成する方法であって、式中、Lは三座配位子を表し、MはTcおよびReから選択される金属を表し、nは−2から+1の電荷であり、該方法は、a)過テクネチウム酸塩若しくは過レニウム酸塩と還元剤及びLとの反応、又はb)過テクネチウム酸塩若しくは過レニウム酸塩とルイス酸及びLとの反応を含み、合成(a)又は(b)が水性媒質中で行われる、方法が、本発明により提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属錯体に関する。特に、それだけに限らないが、本発明は、[TcO核を含むテクネチウム錯体、及び[ReO核を含むレニウム錯体に関し、特にテクネチウムがTc−99m同位体の形であり、レニウムがRe−186又はRe−188同位体の形である、[TcO核を含むテクネチウム錯体、及び[ReO核を含むレニウム錯体に関する。
【背景技術】
【0002】
[TcO核は、恐らく、テクネチウム化学反応において存在する最も小さい部分であって、共配位子によって安定化され得る部分である。この簡単な核構造を含む錯体への好都合な接近方法を見いだすことは極めて望ましいであろう。
【0003】
Braband及びAbram(非特許文献1)は、三座配位子のトリアザシクロノナンを使用した[TcO含有錯体の調製を記述している。対応するグリコラト誘導体もその調製における中間体として開示されている。しかし、基底状態のTc−99のみが使用され、出発Tc含有材料は、大規模核医学用途には不適切である。Thomas及びDavison(非特許文献2)は、[TcO核を含むトリス−ピラゾリルボラート錯体の調製を記述している。やはり、基底状態のTc−99が錯体出発材料の形で使用された。さらに、濃酸の使用を含む厳しい条件が合成に使用される。かかる条件は、核医学用途には不適切である。Banberry等(非特許文献3)も、基底状態のTc−99を有する[TcO核を含む錯体を開示している。やはり、厳しい条件(過酢酸)が使用される。Tooyama等(非特許文献4)は、配位子ビス(3,5−ジメチル−1H−ピラゾール−1−イル)アセタート及び1,1,1−メタントリイルトリス(3,5−ジメチル−1H−ピラゾール)との[TcO及び[ReO錯体の調製を記述している。合成は、強ルイス酸を活性化剤として使用して非水媒質中で行われる。実際、使用される活性化剤は、水と反応するので、水性媒質に不適合である。
【0004】
対象候補となるTc含有核であるにもかかわらず、[99mTcO含有錯体の調製の合成的取り組みは、今まで記述されていない。というのは、[99mTcO自体は、99mTcの核医学用途に最も好都合な形であり、典型的には発生体溶出物中に含まれるが、特に水中で、一般に余りにも非反応性であり、活性化が困難であるとみなされるからである。さらに、上記従来技術の手法は、核/錯体の合成に有機溶媒を使用するが、かかる溶媒は、ヒト又は動物における核医学用途の製造規模合成に不適合である。さらに、上記従来技術の錯体においては、金属三酸化物核の錯体形成に使用される配位子は、標的部分を持たず、かかる標的部分の付加に適切であるスペーサー又はリンカー基を持たない。したがって、従来技術の錯体は、特定の細胞又は組織への金属のターゲッティングが画像化目的で頻繁に要求されるin vivo放射性医薬品用途への使用が限られる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Inorg.Chem.,2006,45,6589−6591
【非特許文献2】Inorg.Chim.Acta,1991,190.231−235
【非特許文献3】Polyhedron,1990,9,2549−2551
【非特許文献4】Inorg.Chem.,2008,47,257−264
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、次式を有する錯体を合成する方法が提供される。
【0007】
[LMO
式中、Lは三座配位子を表し、MはTc及びReから選択される金属を表し、nは−2から+1の電荷であり、該方法は、
a)過テクネチウム酸塩(pertechnetate)若しくは過レニウム酸塩(perrhenate)と還元剤及びLとの反応、又は
b)過テクネチウム酸塩若しくは過レニウム酸塩とルイス酸及びLとの反応
を含み、合成(a)又は(b)が水性媒質中で行われる。
【0008】
ある実施形態においては、本発明の方法は、
a)i)過テクネチウム酸塩若しくは過レニウム酸塩と還元剤の反応、ii)Lと生成したTc若しくはRe種それぞれとの配位、及びiii)(VII)酸化状態への前記Tc若しくはRe種の酸化、
又は
b)i)過テクネチウム酸塩若しくは過レニウム酸塩とルイス酸の反応、及びii)Lと生成したTc若しくはRe種それぞれとの配位を含む。
【0009】
本発明の合成方法は、[TcO又は[ReO核を含む錯体を水/食塩水から直接調製することができる。これは、核を含む錯体を発生体溶出物から直接調製することができるので、重大な意味がある。生成錯体は、最高酸化状態のTc又はReを含むので、+Vなどのより低酸化状態の放射性医薬品にとって特に関連した問題である後続の酸化を受けにくい。この方法に使用されるTc及びReの好ましい同位体としては、99mTc、186Re及び188Reが挙げられる。好ましい同位体99mTcの比較的短い半減期(約6時間)を考慮すると、複数の時間のかかる処理ステップを必要とせずに、核医学用途に有用である錯体を溶出物から直接調製する能力は、重要な利点を与えることが明白である。錯体の諸性質、例えば酸化安定性は、この点でも極めて重要である。これらの方法は、核医学における使用に不適合である潜在的に有毒な溶媒及び試薬の使用も回避する。
【0010】
本発明の合成方法は、[TcO又は[ReO核を有する錯体の調製に2つの可能性を示す。第1の可能性(a)によれば、過テクネチウム酸塩からTc(V)への還元は、ルイス塩基であり得る還元剤によって行われ、還元種と配位子Lが配位し、TcO含有錯体への後続の酸化が続く。酸化ステップは、空気(例えば、反応器中の空気)を使用して行うことができる。同じ手法を過レニウム酸塩でも使用することができる。第2の可能性(b)によれば、過テクネチウム酸塩又は過レニウム酸塩は、配位子置換又は配位が起こる前に、まず、水溶液適合性ルイス酸との反応によって(例えば、エステル、混合無水物又は類似構造単位の形成によって)活性化されるべきである。種々の活性化戦略が当業者には明白であるが、III、IV又はV族非還元性元素に基づくルイス酸を挙げることができる。これらの戦略はいずれも、従来技術においてこれまで探究されておらず、示唆されてもいない。
【0011】
本発明の合成方法に使用される還元性ルイス塩基としては、ホスフィンを挙げることができる。反応は、例えばホスフィン酸又は水溶性ホスフィン若しくは置換ホスフィンの溶液を使用して、均一にすることができ、又は例えば無機若しくは有機高分子に結合したホスフィン若しくは置換ホスフィンを使用して、不均一にすることができる。高分子(例えば、樹脂系)還元剤(ホスフィンなど)又は活性化ルイス酸は、例えばろ過によって、反応生成物から容易に分離することができる利点を有する。本発明によって使用される、高分子に結合した還元剤又は活性化ルイス酸の高分子支持体は、無機又は有機高分子に基づくことができ、その各々はビーズの形で提供することができる。高分子還元剤及びルイス酸は、市販されており、例えば、ビーズの形とすることができる、ポリスチレンなどの有機高分子に基づくことができる。適切な無機高分子支持体の例としては、シリカに基づく支持体が挙げられる。高分子支持体は、還元剤又は活性化ルイス酸が付加する(ポリ(アルキレングリコール)鎖などの)スペーサー基を含むことができる。
【0012】
ある実施形態においては、ホスフィンは、例えばアルキル(好ましくはC1〜5)又はアリール基で置換され、アルキル又はアリール基自体も更に置換することができる。特に、ホスフィンをフェニル置換することができる。好ましいホスフィンとしては、ジ及びトリフェニルホスフィンが挙げられる。更なる実施形態としては、3,3’,3”−ホスフィントリプロパン酸に基づくホスフィンを挙げることができる。
【0013】
別の実施形態においては、合成(a)に使用される還元剤は、亜リン酸塩、亜硫酸塩、次亜リン酸塩及び水素化物から選択される。やはり、かかる還元剤の固相又は無機若しくは有機高分子形態が、ある実施形態においては好ましいことがある。
【0014】
本発明の方法のある実施形態においては、Lと還元剤、又はLとルイス酸を、これら2成分の付加体又は複合体の形で同時に提供することができる。したがって、ホウ化水素、ボランとトリアザシクロノナンなどの三座配位子との付加体を使用することができる。例えば(トリアザシクロノナン、アミノホスホイリドの例における)ホスホイリドの形の、かかる配位子とホスフィン(例えば、トリフェニルホスフィン)の付加体を使用することもできる。
【0015】
本発明の合成方法は、食塩水中で実施することができる。特に、この方法は、Tc又はRe発生体からの食塩水主体の溶出物中で実施することができる。
【0016】
合成方法のある実施形態においては、Lは、標的部分の付加を容易にするのに適切な1個以上の官能基を有する、又はかかる官能基を有し得る1個以上のリンカー基を有する、三座配位子を表す。前記官能基は、さらに、又はその代わりに、生成錯体の物理化学的性質を改変するのに、又は諸性質を改変可能な更なる部分の付加を容易にするのに、有用であり得る。かかる更なる部分としては、例えば、ポリ(アルキレングリコール)基又は炭水化物を挙げることができる。本明細書では「標的部分の付加を容易にするのに適切な官能基」という用語は、生成錯体の物理化学的性質を改変可能な更なる部分の付加を容易にするのに適切な官能基を含む。
【0017】
官能基を用いてLを改変する能力によって、錯体の物理化学的性質(したがって、薬理学的挙動)を高度に制御することができる。官能基が標的部分上の対応する基との反応に適切であるときには、錯体と標的部分を複合化(conjugation)することができる。それによって、特定の生物学的部位に錯体を向かわせることができる。標的部分とLの複合化は、錯体の形成前又は形成後に行うことができるが、好ましくは形成前に行われる。同じことが、生成錯体の物理化学的性質を改変可能な部分の複合化の場合にも当てはまる。
【0018】
が1個以上のリンカー基を有し、そのいずれも標的部分の付加に適切な官能基を持たないときには、リンカー基は少なくとも3個の炭素原子を含むことができる。
【0019】
は、通常、TcO/ReO核のTc又はRe原子との配位に利用可能な孤立電子対を有する、少なくとも3個の酸素及び/又は窒素原子を含む。ある実施形態においては、Lは、孤立電子対を含む2又は3個の窒素原子を含む。特に、Lの窒素原子は、第一級又は第二級アミノ基の一部を形成することができる。ある配位子Lにおいては、第一級又は第二級アミノ基は、介在する基又は原子によって連結された別々の環状部分上に存在することができ、又は該環状部分の一部として存在することができる。その代わりに、又はそれに加えて、第一級又は第二級アミノ基の2個以上は、同じ環状部分上に存在することができ、又は該環状部分の一部として存在することができる。特定の実施形態においては、Lをトリアザシクロノナン、トリアミノシクロヘキサン、トリスピラゾリルメタン、ビスピラゾリルアセタート、トリスピラゾリルボラート又は対応するイミダゾリル種とすることができる。かかる実施形態においては、又は実際にLが窒素原子を含む別の実施形態においては、Lは、標的部分の付加を容易にするのに適切であり得る1個以上の官能基でN置換することができ、又はかかる官能基を有し得る1個以上のリンカー基でN置換することができる。
【0020】
本発明による使用に適切なリンカー基としては、以下を挙げることができる:アルキル(例えば、C、C、C、C又はCアルキル)、アルケニル(例えば、C、C、C、C又はCアルケニル)、アリール(例えば、5、6、又は7員環などの5から9員の芳香環)、ヘテロアリール(例えば、1、2又は3個のヘテロ原子を含む5から9員環)、シクロアルキル(例えば、5、6、又は7員環などの5から9員の非芳香環)、ヘテロシクロアルキル(例えば、1、2又は3個のヘテロ原子を含む5から9員の非芳香環)、アラルキル(例えば、5、6、又は7員環などの1個以上の5から9員の芳香環を有する、例えば、C、C、C、C又はCアルキル)、及びアルカリール(例えば、1個以上の例えばC、C、C、C又はCアルキル基を有する、5、6、又は7員環などの1個以上の5から9員の芳香環)基。これらのリンカー基はいずれも、標的部分の付加を容易にするのに適切な官能基で更に置換することができる。さらに、Lは、非反応性にもかかわらず錯体の薬理学的挙動を改変可能である1個以上の本質的に非反応性の基で置換することができる。かかる基としては、短い(例えば、C又はC)アルキル置換基、又は更なる官能基を含まないアリール置換基が挙げられ、文脈上他の意味が要求されないかぎり、「リンカー基」の定義に含まれるものとする。したがって、ある実施形態においては、かかるリンカー基は、官能基をLに連結するのではなく、単にL上の置換基として作用することができる。
【0021】
標的部分の付加を容易にするのに適切な官能基は、ある実施形態においては、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ、アミド、ハロゲン、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルホニルアミド、アリールスルホニルアミド、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、ホスホニル、ホスファート及びシアノ基から選択することができる。
【0022】
関連する第2の態様においては、本発明は、次式を有する錯体の水溶液を含む組成物も提供する。
【0023】
[LMO
式中、Lは三座配位子を表し、MはTc及びReから選択される金属を表し、nは−2から+1の電荷である。この組成物は、上述したように本発明による方法によって得られ、又は得ることができる。
【0024】
本発明の第3の態様によれば、次式を有する錯体が提供される。
【0025】
[LMO
式中、Lは三座配位子を表し、MはTc及びReから選択される金属を表し、nは−2から+1の電荷であり、ただしLは、ジ−1H−ピラゾール−1−イルアセタート、ビス(3,5−ジメチル−1H−ピラゾール−1−イル)アセタート、1,1,1−メタントリイルトリス(1H−ピラゾール)、1,1,1−メタントリイルトリス(3,5−ジメチル−1H−ピラゾール)、1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,7−トリメチルトリアザシクロノナン、1,4,7−トリチアシクロノナン、ヒドロトリス(1−ピラゾリル)ボラート又は[(η−C)Co{P(OR)(=O)}ではなく、Rはメチル又はエチルである。
【0026】
本発明の関連する一態様によれば、次式を有する錯体が提供される。
【0027】
[LMO
式中、Lは三座配位子を表し、MはTc及びReから選択される金属を表し、nは−2から+1の電荷であり、Lは、標的部分の付加を容易にするのに適切な1個以上の官能基を有する、又はかかる官能基を有し得る1個以上のリンカー基を有する、三座配位子を表し、MはTc及びReから選択される金属を表し、nは−2から+1の電荷であり、ただし、Lが1個以上のリンカー基を有し、そのいずれも標的部分の付加に適切な官能基を持たないときには、リンカー基の少なくとも1個は少なくとも3個の炭素原子を含む。
【0028】
ある例示的錯体をスキーム1に示す。
【0029】
【化1】

本発明は、通常の放射性医薬品目的で利用可能な[99mTcO又は対応する186Re若しくは188Re核を有する錯体を作製する新しい戦略に基づく。しかし、Tc及びReの別の同位体も必要に応じて使用することができる。Tcの別の同位体としては、94m、94、95m、96、97、97m、98及び99(すなわち基底状態)が挙げられる。本発明は、新しい核の方がかなり小さく、親油性もはるかに低いことを除いて、対応する公知のトリカルボニル前駆体[99mTc(CO)及び[Re(CO)の化学的性質の背後にある原理に幾らか関連する。物理化学的性質のこの変化は、新しい核を含む錯体の新しい応用分野を潜在的に切り開くものである。さらに、本発明の錯体は、レドックス活性を発揮することができ、例えば、低酸素検出における、又は標的分子の標識化のための、更なる潜在的使用を可能にし得る。本発明の錯体は、比較的低分子量である。上記従来技術の錯体と比較して、本発明のある種の錯体は、標的部分上の適切な基(又は上で概説したように、錯体の物理化学的性質を改変可能な基)との反応に利用可能である官能基であって、それによって錯体を特定の細胞、組織などにin vivoで向かわせることができる官能基を含むという利点も有する。あるいは、又はさらに、本発明のある種の錯体は、錯体へのかかる官能基の組入れを容易にするリンカー基を含む。標的部分の付加を容易にする官能基は、好ましくは、ターゲティング性を妨害するのを避けるために錯体の残りの部分から離れている。したがって、本発明のある種の錯体は、好ましくは、少なくとも3個の炭素原子を有するリンカー基を含む。
【0030】
99mTcO及び[ReO核を有する錯体を作製するための本明細書に開示する新しい戦略は、これらの核を通常の放射性医薬品目的で利用可能にする。
【0031】
本発明の錯体の特定の実施形態においては、Tcは99mTcである。Reを使用するときには、Reは、特定の実施形態においては、186Re又は188Reとすることができる。
【0032】
ある実施形態においては、標的部分の付加を容易にするのに適切な1個以上の官能基は、リンカー基によってLに結合している。上述したように、標的部分の付加又は複合化を容易にするのに適切な官能基と、官能基とLの間に介在するリンカー基との組合せは、標的部分のターゲティング性が妨害されるのを回避する。
【0033】
は、Tc(VII)又はRe(VII)を有する錯体が水に対して安定であるという条件で、(錯体の全電荷の対応する変化を伴う)多種多様な中性又は陰イオン性配位子を表す。適切な配位子Lは、本発明の第1の態様に関連して上記されている。水中での錯体の安定性は、当業者が、例えば錯体のLC分析によって、容易に決定することができる。トリアザシクロノナン(tacn)及び幾つかのトリスピラゾリルメタン系システムを含めて、幾つかの配位子に基づく錯体の安定性は、本発明者らによって確認された。対応するイミダゾール系配位子を含む錯体も安定性を示す。本発明によって調製された錯体は、血清タンパク質の存在下で安定性を示すことも確認された。
【0034】
配位子Lを介して導入することができる変化のために、多種多様な錯体を生成することができる。例えば、これらは、例えば心筋機能不全又は低酸素検出の診断のための、血流製剤として有用であり得る。その代わりに、又はそれに加えて、配位子Lは1個以上の標的部分と複合化することができる。
【0035】
本発明の例示的実施形態においては、Lは、トリアザシクロノナン、トリアミノシクロヘキサン、トリスピラゾリルメタン、ビスピラゾリルアセタート、トリスピラゾリルボラート又は対応するイミダゾリル種である。ピラゾール又はイミダゾール含有配位子においては、ピラゾール又はイミダゾール基は、配位基を表し、更なる官能基を有することができる。Lが1個以上の窒素原子を含む実施形態などの実施形態においては、Lは、標的部分の付加を容易にするのに適切な1個以上の官能基でN置換することができ、又はかかる官能基を有し得る1個以上のリンカー基でN置換することができる。その代わりに、又はそれに加えて、Lは、非反応性にもかかわらず錯体の薬理学的挙動を改変可能である1個以上の本質的に非反応性の基で置換、例えばN置換することができる。かかる基としては、短い(例えば、C又はC)アルキル置換基、又は更なる官能基を含まないアリール置換基が挙げられる。
【0036】
N置換リンカー基などの適切なリンカー基は、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル及びアルカリール基から選択することができ、リンカー基はいずれも、標的部分の付加を容易にするのに適切な官能基で更に置換することができる。適切なリンカー基は、上でより詳細に記述されている。かかる基は、非反応性にもかかわらず錯体の薬理学的挙動を改変可能である本質的に非反応性の上記基としても適切であることが理解されるであろう。したがって、ある実施形態においては、かかるリンカー基は、官能基をLに連結するのではなく、単にL上の置換基として作用することができる。
【0037】
標的部分の付加を容易にするのに適切な官能基(又は錯体の物理化学的性質を変化させるのに適切な部分)は、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ、アミド、ハロゲン、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルホニルアミド、アリールスルホニルアミド、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、ホスホニル、ホスファート及びシアノから選択することができる。ある実施形態においては、官能基は、標的部分上の求核基との反応に適している。別の実施形態においては、官能基は、標的部分上の求電子基との反応に適している。
【0038】
本明細書では「標的部分」という用語は、受容体又は酵素などの生物学的標的に選択的に結合可能である任意の基を意味する。多数のかかる部分は、当業者に周知であり、(例えば、ポリペプチド、ペプチド、アミノ酸、糖、多糖、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴ及びポリヌクレオチド、成長因子、ホルモン、抗体、抗体断片、内因性神経伝達物質、並びにビタミンから選択することができる)生体分子、及び生物学的標的の配位子である合成又は半合成薬剤が挙げられる。当業者は、さらに、(例えば、バイオセンサー技術又は放射性配位子結合試験によって)所与の化合物が生物学的標的に選択的に結合可能であり、したがって本発明の状況において標的部分として作用し得るかどうか容易に判定することができる。
【0039】
本発明の合成方法及び錯体の特定の実施形態においては、N置換基として付加したリンカー基などのL上の少なくとも1個のリンカー基は、ベンジル部分又はフェニル部分を含むことができる。ベンジルリンカー基は、ある実施形態においては好ましいことがある。かかるベンジル又はフェニル部分は、例えば、標的部分の付加を容易にするのに適切な官能基としてのカルボキシル基で置換することができる。前記官能基は、好ましくは、かかる場合における環置換基として存在する。かかる環置換基は、リンカー基の残部又はLへの環の付加位置に対してパラ位に存在することができる。
【0040】
本発明のある種の錯体においては、配位子Lは、その付加を容易にするのに適切な官能基(単数又は複数)によって、1個以上の標的部分(又は錯体の物理化学的性質を改変可能な部分)と複合化することによって改変される。
【0041】
かかる標的部分は、上記のものから選択することができる。
【0042】
本発明の錯体の好ましい実施形態においては、Tcは99mTcである。上述したように、99mTcは、核医学分野において最も有用なTcの形である。かかる設定においては、99mTcは、典型的には、テクネチウム発生体溶出物中の[99mTcO(過テクネチウム酸イオン)の形で得られる。本発明は、激しい試薬又は厳しい酸化若しくは還元条件を使用せずに、[TcO核を含む錯体を食塩水から直接合成するのに過テクネチウム酸塩を直接使用することができる。したがって、本発明は、この核を核医学用途における通常の使用に利用できるようにする。同じ考察が、[ReO核を含む本発明の錯体にも当てはまる。
【0043】
本発明の別の一態様によれば、次式を有する錯体が提供される。
【0044】
[LMO
式中、Lは三座配位子を表し、MはTc及びReから選択される金属を表し、nは−2から+1の電荷であり、ただしLは1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,7−トリメチルトリアザシクロノナン、1,4,7−トリチアシクロノナン、ヒドロトリス(1−ピラゾリル)ボラート又は[(η−C)Co{P(OR)(=O)}ではなく、Rはメチル又はエチルである。
【0045】
本発明の別の一態様によれば、1種類以上の薬学的に許容される賦形剤と一緒に、上述した錯体を含む、薬剤組成物が提供される。
【0046】
本発明の薬剤組成物は、任意の薬学的に許容される担体、補助剤又はビヒクルと一緒に、本発明の錯体又は薬学的に許容されるその塩及びエステルのいずれかを含む。本発明の薬剤組成物は、種々の剤形をとることができる。しかし、一般に、本発明の薬剤組成物は、例えば、静脈内、動脈内(例えば、冠循環又は肺動脈中)、心臓内、脳室内又は細動脈内注射による、非経口投与に適切な剤形であろう。したがって、この組成物は、錯体水溶液などの錯体溶液の剤形とすることができる。薬剤組成物は、無菌注射製剤、例えば、無毒の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の無菌注射溶液又は懸濁液の剤形とすることができる。使用可能な許容されるビヒクル及び溶媒としては、マンニトール溶液、水、リンゲル液及び等張性塩化ナトリウム溶液(すなわち等張食塩溶液)が挙げられる。必要に応じて、錯体の溶解性を高める追加の賦形剤、例えば、非イオン界面活性剤(例えば、Span又はTween化合物グループから選択される界面活性剤)又はポリアルキレングリコールを添加することができる。
【0047】
本発明の薬剤組成物は溶液の形であり、溶液のpHは約5から約9、特に約6から約8とすることができる。本発明の錯体は、広範囲のpH値にわたって安定であることが判明した。重要なことには、本発明の錯体は、核医学における使用に最も関連したpH範囲(すなわち5から9)で特に安定であることが判明した。かかる安定性の説明については、本明細書の図6を参照することができる。
【0048】
本発明の別の一態様によれば、次式を有する錯体を精製する方法が提供される。
【0049】
[LMO
式中、Lは三座配位子を表し、MはTc及びReから選択される金属を表し、nは−2から+1の電荷である。この方法は、錯体の非精製溶液を[LTcO又は[LReOと反応可能な官能基を有する無機又は有機高分子基質と接触させ、続いて高分子基質を洗浄して非結合材料を除去することを含む。
【0050】
本発明による錯体は、適切に官能性を持たせた無機又は有機高分子と反応することができる。高分子基質が有する官能基は、特定の実施形態においては、[LMOとの反応において還元剤又はルイス酸として作用する能力を有する。例えば、錯体は、ホスフィン官能基を有する無機又は有機高分子と反応する。かかる反応後、すべての他の材料を、固相に結合した錯体から洗浄除去することができる。錯体は、次いで、曝気水などの穏和な酸化剤を使用して高分子から切断することができる。好ましい同位体99mTcを含む錯体の場合には、錯体を無機又は有機高分子に結合させ、次いで、非放射性材料を結合錯体から洗浄除去する。したがって、続いて曝気水又は別の穏和な酸化剤を用いて切断すると、担体無添加の放射性医薬品を生成することができる。
【0051】
本発明は、更に別の一態様においては、[LMOのジオラト誘導体を合成する方法も提供する。この方法は、上述した本発明の第2の態様による組成物、又は上述した第3の態様による錯体と、アルケン、アルキン又はアルケニル若しくはアルキニル基含有種との反応を含む。式中、L、M及びnは、第1の態様に関して上で定義したのと同じ意味を有する。
【0052】
基底状態のTc−99を有する巨視的計量可能な量の錯体[LMOは、有機溶媒(又は水性媒質)中でアルケンと反応して、対応する水に安定なジオラト誘導体を受け取る。この反応は、「クリック」ケミストリーの一種である([2+3]付加環化)。この反応は、内在性アルケン(例えば、不飽和脂肪酸)を有する、又は任意の種類の結合アルケン若しくはアルキンを有する、標的部分及び生体分子の直接標識化の可能性をもたらす。この方法の特定の実施形態においては、アルケニル又はアルキニル基は、標的部分の一部を形成し、又は標的部分に結合する。本発明の他の態様と同様に、Tcの好ましい同位体は99mTcであり、Reの好ましい同位体は186Re又は188Reである。反応から得られるジオラト誘導体は、水中で極めて安定である。さらに、アルケニル又はアルキニル基が、標的部分に付加する、又は標的部分の一部として存在するときには、生成するジオラト誘導体を、診断及び/又は画像化目的で特定の器官器官又は組織に99mTcを向かわせるために使用することができる。例示的反応をスキーム2に示す。
【0053】
【化2】

関連する一態様においては、本発明は、式[LMO(OC(R1R2)C(R3R4)O)]又は[LMO(OC(R1)=C(R2)O)]を有する[LMOのジオラト誘導体も提供する。式中、M、L及びnは本発明の第3の態様に関して上で定義したのと同じ意味を有し、第3の態様の条件が適用され、R1、R2、R3及びR4はH、標的部分、標的部分に付加した又は標的部分の付加を容易にするのに適切な官能基、及びかかる官能基を有する又は有し得るリンカー基から独立に選択される。
【0054】
本発明のこの態様の特定の実施形態においては、R1、R2、R3及び/又はR4は、リンカー基を介して錯体に結合することができる標的部分、標的部分の付加を容易にするのに適切な官能基、又はその組合せである。したがって、標的部分は、官能基R1、R2、R3若しくはR4を介して錯体に結合することができ、又はリンカー基R1、R2、R3若しくはR4の末端に官能基を介して結合できることが理解されるであろう。あるいは、アルケニル基が(内在性生体分子などの)標的部分の一部を形成する場合、R1、R2、R3及び/又はR4は、その標的部分のすべて又は一部を含むことが理解されるであろう。特に99mTcに関連して、標的部分を有する錯体の利点は、上で概説されている。
【0055】
別の関連した一態様においては、本発明は、式[LMO(OC(R1R2)C(R3R4)O)]又は[LMO(OC(R1)=C(R2)O)]を有する[LMOのジオラト誘導体の水溶液を含む組成物も提供する。M、L及びnは、本発明の第1の態様に関して上で定義したのと同じ意味を有し、R1、R2、R3及びR4は、H、標的部分、標的部分に付加した又は標的部分の付加を容易にするのに適切な官能基、及びかかる官能基を有する又は有し得るリンカー基から独立に選択される。この組成物は、上記ジオラト誘導体を合成する方法によって得られる又は得ることができ、この方法は、水性媒質中で実施される。
【0056】
ジオラト誘導体の水溶液を含む組成物は、ある実施形態においては、Lが1,4,7−トリアザシクロノナンではない錯体を含むことができる。
【0057】
本発明は、療法又は診断に使用される、上述した本発明による錯体又は組成物も提供する。
【0058】
本発明は、器官血液潅流障害及び/又は低酸素状態の診断及び/又は画像化、又は腫よう血液潅流及び/又は低酸素の測定及び/又は画像化に使用される、上述した本発明による錯体又は組成物も提供する。
【0059】
類似の一態様においては、本発明は、器官血液潅流障害及び/又は低酸素状態の診断及び/又は画像化、又は腫よう血液潅流及び/又は低酸素の測定及び/又は画像化のための医薬品の調製における、上述した本発明による錯体又は組成物の使用も提供する。
【0060】
さらに、本発明は、関連する一態様においては、被験体における器官血液潅流障害及び/又は低酸素状態の診断、又は腫よう血液潅流及び/又は低酸素の測定及び/又は画像化の方法も提供する。この方法は、上述した本発明による錯体又は組成物の被験体への投与を含む。
【0061】
この方法のある実施形態においては、方法は、投与後に被験体内の錯体の位置に関連したデータの取得を更に含む。さらに、この方法は、取得データに基づく画像の作成を更に含むことができる。
【0062】
更なる関連した一態様においては、本発明は、被験体における器官血液潅流及び/又は低酸素状態、又は腫よう血液潅流及び/又は低酸素を画像化する方法も提供する。この方法は、上述した本発明による錯体又は組成物の被験体への投与、投与後の被験体内の錯体の位置に関連したデータの取得、及び取得データに基づく画像の作成の各ステップを含む。
【0063】
本明細書に記載の本発明の錯体の診断、画像化及び/又は治療上の使用においては、血液潅流が検討されている器官は、特定の実施形態においては、心臓及び肺から選択することができる。
【0064】
本発明を単なる例として、添付の図面を参照して、以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1a】図1(a)及び図1(b)は、γ放射能(99mTcを含む化合物1)及びUV吸収(基底状態99Tcを含む対応する錯体)によって検出して、過テクネチウム酸塩と本発明の錯体を識別するために、2つの移動相条件下で、本発明の方法([TcO+トリアザシクロノナン.3HCl+PPh(担持高分子)の反応)によって生成された錯体(化合物1)の分析(HPLC)結果を示す。図1(a)は、移動相TEAP/MeCNの使用に関する(実験設定のために、γ信号はuv信号よりも0.56分遅い。)。
【図1b】図1(a)及び図1(b)は、γ放射能(99mTcを含む化合物1)及びUV吸収(基底状態99Tcを含む対応する錯体)によって検出して、過テクネチウム酸塩と本発明の錯体を識別するために、2つの移動相条件下で、本発明の方法([TcO+トリアザシクロノナン.3HCl+PPh(担持高分子)の反応)によって生成された錯体(化合物1)の分析(HPLC)結果を示す。図1(b)は、移動相TFA/MeCNの使用に関する(γ信号は、uv信号よりも0.54分遅い。)。
【図2】図2(a)および図2(b)は、TFA/MeCN移動相を使用して、γ放射能(99mTcを含む化合物2)及びUV(基底状態99Tcを含む対応する錯体)によって検出された、本発明の更なる錯体(化合物2)([TcO+N−ベンジル−トリアザシクロノナン+PPh(担持高分子)の反応)のHPLC結果を示す。実験設定のために、γ信号はuv信号よりも0.57分遅い。
【図3】図3は、TEAP/MeCN移動相を使用して、(a)γ放射能(99mTcを含む化合物3)及び(b)β放射能(基底状態99Tcを含む対応する錯体)によって検出された、本発明の第3の錯体(化合物3)([TcO+N−(4−カルボキシ)ベンジル−トリアザシクロノナン.3HCl+PPh(担持高分子)の反応)のHPLC結果を示すグラフである。異なる検出器システムのために、β信号はγ信号よりも約1.5分遅れて検出される。
【図4】図4は、[TcO+トリアザシクロノナン.3HCl+HPOの均一反応によって調製された化合物1(TEAP/MeCN)のγトレースを示す。
【図5】図5は、[TcO+トリアザシクロノナン.3HCl+P(EtOOH)(担持高分子)の反応によって調製された化合物1(TEAP/MeCN)のγトレースを示す。
【図6】図6は、pH=7における化合物1の安定性試験を示した一連のトレースを示す(γトレース、TEAP/MeCN)。
【図7】図7は、(a)[TcO(tacn)]+スチレンSONa、95℃で1.5hの反応によって調製されたジオラト誘導体化合物4(TEAP/MeCN)のγトレース、及び(b)そのβトレースを示す。
【図8】図8は、アルブミン存在下での化合物4の安定性試験を示す(TEAP/MeCN)。
【図9】図9は、血しょう存在下での化合物4の安定性試験を示す(TEAP/MeCN)。
【図10】図10は、[TcO及びトリアザシクロノナンとボランの付加体の均一反応によって調製された化合物1のγトレースを示す。
【図11】図11は、[TcO及びトリアザシクロノナンとトリフェニルホスフィンの付加体の均一反応によって調製された化合物1のγトレースを示す。
【図12】図12は、[TcO、トリアザシクロノナン及び水素化ホウ素ナトリウムの均一反応によって調製された化合物1のγトレースを示す。
【発明を実施するための形態】
【0066】
本発明者らは、一般組成[LTcOの錯体を水(食塩水)から直接調製する合成方法を開発した(式中、Lは上で定義したとおりである(Lの例示的実施形態についてはスキーム1を参照されたい。)。)。幾つかのTc(VII)錯体が従来技術において基底状態99Tcについて記述されたが、これらのいずれも99mTcを用いて、又は水性媒質から、調製されていない。従来技術の基底状態99Tc錯体の反応条件は、極めて粗く、濃硝酸、濃硫酸又は30%過酸化物溶液を含み、核医学用途に由来する通常の要件に適合させるのに不適切な条件である。
【0067】
化合物1は、基底状態99Tcについて公知であり、化合物2及び3は以前に記述されておらず、特に3は、生体分子などの標的部分と容易に複合化することができるカルボキシラート官能基を有する。これらの化合物はいずれも、99mTcについては従来技術から公知ではない。化合物1〜3(スキーム1)は、今回、以下に概説する方法によって、発生体溶出物から直接合成された。
【0068】
合成手法
本発明の錯体の調製に使用された2つの異なる経路は、以下のとおりである:i)配位子置換が起こる前に、ルイス酸(通常、強ルイス酸、すなわち、過テクネチウム酸塩がルイス塩基として作用し、反応が過テクネチウム酸塩の酸素原子で起こるような)を用いたエステル又は類似構造単位の形成によって、過テクネチウム酸塩を活性化する、又はii)Tc(V)への還元及び配位子の配位、それに続く空気酸化。配位は還元と本質的に同時に起こると考えられるが、本発明者らはこの考えに拘泥するつもりはない。同じ手順(i)及び(ii)を過レニウム酸塩でも使用することができる。
【0069】
有機又は無機高分子に結合したホスフィンは、場合によっては、両方の経路に使用することができる(下記スキーム2参照)。ホスフィンとテクネチウム含有種の説明のための反応、及び還元剤としてのその使用は、それぞれ米国特許出願公開第20040042963号並びにGreenland及びBlower(Bioconjugate Chem.,2005,16,939−48)に記載されている。
【0070】
手短に述べると、発生体溶出物を配位子Lの存在下で無機又は有機高分子と混合する。加熱すると[99mTcO核を有する所望の錯体1〜3が生成する。化合物は、良好な放射化学的純度で受け取られる。この合成手法の利点は、[99mTcO及び配位子Lを除いて、他の物質が不要なことである。したがって、従来技術と異なり、追加の還元剤、溶媒及び補助的配位子が不要である。本発明者らは、正確な機構的詳細に関して任意の特定の理論に拘泥するつもりはないが、結果は、[99mTcOが無機又は有機高分子と反応し得るが、配位子Lの非存在下では無機又は有機高分子に持続的に結合しないことを意味している。
【0071】
【化3】

本発明の合成は、均一反応によって、すなわち還元剤又は活性化ルイス酸を用いて水溶液中で、等しく実施できることが当業者によって理解されるであろう(図4)。
【実施例】
【0072】
(実施例1)
例として過テクネチウム酸塩を使用した、均一合成と不均一合成の両方の説明のための詳細は以下のとおりである。
【0073】
1.1 高分子に結合したホスフィン
キット1:
− 高分子に結合したトリフェニルホスピン(triphenylphospine)(200〜400メッシュ、標識化度:約3.0mmol/g添加、ジビニルベンゼンによる2%架橋、Aldrich)10mg
− 1,4,7−トリアザシクロノナン三塩酸塩23.5mg(10−4mol)
− HSO 2.81μl
プロトコル1:
調製したキット1にNを10分間流した。溶出された[TcO溶液1mlを添加し、反応混合物を95℃で4時間加熱した。反応溶液をろ過し、NaOH(0.1M)を添加して中和した。
【0074】
収率:48%
キット2:
− 高分子に結合したトリス(2−カルボキシ−エチル)ホスフィン塩酸塩(NovaSyn(登録商標)アミノ樹脂(90μm)、標識化度:約0.3mmol/g、標準SPPS技術によって添加、樹脂はポリエチレングリコールと低架橋ポリスチレンゲルタイプ樹脂の複合体、水中で良好な膨潤性、Novabiochem)10mg
− 1,4,7−トリアザシクロノナン三塩酸塩23.5mg(10−4mol)
プロトコル2:
調製したキット2にNを10分間流した。溶出された[TcO溶液1mlを添加し、反応混合物を95℃で1時間加熱した。反応溶液をろ過し、NaOH(0.1M)を添加して中和した。
【0075】
収率:70%
1.2 ホスフィン酸(すなわち均一合成)
キット:
− 50%(5.7 10−5mol)ホスフィン酸(Fluka)0.62μl
− 1,4,7−トリアザシクロノナン三塩酸塩23.5mg(10−4mol)
− HSO 2.81μl
プロトコル
調製したキットにNを10分間流した。溶出された[TcO溶液1mlを添加し、反応混合物を95℃で4時間加熱した。2時間後、バイアルを開け、反応器に空気を入れた。反応溶液にNaOH(0.1M)を添加して中和した。
【0076】
収率:64%
配位ステップ後に不均一反応器に追加の空気を入れる必要はないことが判明した。最終酸化/切断ステップに備えるのに既に十分な空気がバイアル中に存在したと考えられる。
【0077】
不均一反応は、発生体溶出物及びLが溶液状態で導入された、無機又は有機高分子ホスフィン(又は別の還元剤/活性化ルイス酸)を充填したカラムの形のキット中で実施できることを当業者は理解するであろう。
【0078】
1.3 アミンのボラン付加体(すなわち均一合成)
キット:以下の構造を有するHB(tacn)(10−4mol)14.3mg
【0079】
【化4】

プロトコル:HB(tacn)を含むキットにNを10分間流した。溶出された[TcO溶液1mlを添加し、反応混合物を95℃で15分間加熱した。
【0080】
収率:96%。生成物のHPLCトレースを図10に示す。
【0081】
1.4 過テクネチウム酸塩とtacnのアミノ−ホスホイリドとの反応
キット:以下の構造を有する(PhP(tacn))Br(2・10−5mol)10mg
【0082】
【化5】

プロトコル:(PhP(tacn))Brを含むキットにNを10分間流した。溶出された[TcO溶液1mlを添加し、反応混合物を95℃で6時間加熱した。
【0083】
収率:95%。生成物のHPLCトレースを図11に示す。
【0084】
1.5 還元剤としてのNa[BH]の使用
キット:
− 1,4,7−トリアザシクロノナン三塩酸塩(10−5mol)2.4mg
− NaBH(6.9・10−5mol)2.6mg
− NaOH(1.4・10−4mol)5.6mg
プロトコル:調製したキットにNを10分間流した。溶出された[TcO溶液1mlを添加し、室温で15分間撹拌した。反応混合物にHCl(0.1M)を添加して中和した。
【0085】
収率:97%。生成物のHPLCトレースを図12に示す。
【0086】
(実施例2)
本発明のジオラト誘導体を以下のように調製することができる。
【0087】
化合物4(化合物1と4−ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩の反応):
不均一方法に従って、高分子に結合したトリス(2−カルボキシ−エチル)ホスフィン塩酸塩を還元試薬として使用して、化合物1を調製した。4−ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩水和物3.2mg(1.55×10−5mol)を、ろ過され中和された溶液(0.8ml)に添加した。反応混合物を95℃に1.5時間加熱した。
【0088】
収率:78%
(実施例3)
安定性
アルブミンを用いた安定性試験:
ウシ血清由来のアルブミン(溶解性:40mg/ml)38mgを化合物4の溶液(1ml)に添加した。化合物4の分解は37℃で3時間認められなかった(図8)。
【0089】
血しょうを用いた安定性試験:
(ウシ)血しょう0.1mlを化合物4の溶液に添加した。化合物4の分解は25℃で24時間認められなかった(図9)。
【0090】
錯体の特性分析
HPLC条件の詳細
Uv/vis検出よりも約0.5分遅延させるテフロン(登録商標)管によって分離された、Merck Hitachi LaChrom L7200同調可能UV検出器と放射線検出器(radiodetector)に連結されたMerck Hitachi LaChrom L7100ポンプ上でHPLC分析を行った。Uv/vis検出を250nmで行った。放射性99mTc錯体の検出は、NaI(Tl)シンチレーション検出器を備えたBerthold LB506放射線検出器を用いて行われた。検出器設定のために、99mTc信号は、対応する99Tc錯体のUV信号よりも一般に0.4〜0.7分遅れて出現する。分離はMacherey−Nagel C18逆相カラム(Nucleosil 10lm、250 4mm)によってMeCN/0.1%CFCOOH又はMeCN/50mM TEAP勾配を溶離剤として用いて、流量0.5mL/分で行われた。方法1(化合物1及び2):t=0〜3分:0%MeCN;3〜3.1分:0〜25%MeCN;3.1〜9分:25%MeCN;9〜9.1分:25〜34%MeCN;9.1〜18分:34〜100%MeCN;18〜25分:100%MeCN、25〜25.1分:100〜0%MeCN;25.1〜30分:0%MeCN。方法2(化合物3及び4):t=0〜3分:0%MeCN;3〜3.1分:0〜25%MeCN;3.1〜9分:25%MeCN;9〜9.1分:25〜34%MeCN;9.1〜12分:34%MeCN;12.〜12.1分:34〜100%MeCN、12.1〜15分:100%MeCN;15〜15.1分:100〜0%MeCN;15.1〜18分:100%MeCN。
【0091】
99mTc化合物と対応する99Tc化合物とのHPLC保持時間を比較して、同一性を確認する(図1から3)。1は移動相の前部で極めて早く、過テクネチウム酸塩の近くで実際に溶出するので、1の比較(図1)はやや困難である。しかし、1でも、異なるHPLC勾配及び溶媒を適用することによって形成が見られる。すなわち、(トリフルオロ酢酸(TFA)/MeCN移動相ではなく)過塩素酸テトラエチルアンモニウム/アセトニトリル(TEAP/MeCN)移動相を使用することによって、錯体と過テクネチウム酸塩の分離が改善された。99mTcと99Tc錯体(化合物1の場合には図1a及び1b)の保持時間差は、一般に約0.4から0.7分であったことに留意されたい。
【0092】
続いて、TEAP/MeCN移動相を化合物2及び3に使用した。化合物2及び3の確認は明白である(図2及び3。図2における15.38のピークは、カラムの人工産物であることに留意されたい。)。特に化合物3に関して、HPLCデータ(図3(a)は、化合物1の形成も意味している(3.12分のピーク)。
【0093】
化合物1から3は、pH6から8の食塩水中で数時間安定であり、過テクネチウム酸塩に加水分解しないことが見いだされた(例えば、化合物1については図6を参照されたい。)。さらに、化合物1を使用し99Tcを使用しないモデル実験によれば、錯体は、pH1で数日間さほど加水分解せずに維持することができた。
【0094】
結論として、本明細書に開示する調製経路は、従来技術によって示唆されておらず、基底状態99Tcに対して以前に記述された手法よりもはるかに好都合な手法を公知と新規の両方の所望の錯体の調製にもたらす。本発明は、潜在的に、放射性医薬品用途に潜在的に有用な多種多様な新しい容易に調製される化合物を製造することができる。本発明は、本発明の錯体とアルケン、アルキン及びアルケニル又はアルキニル基との反応によって標識化する方法、並びに担体無添加放射性医薬品の直接の調製ももたらす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式を有する錯体を合成する方法であって、
[LMO
式中、Lは三座配位子であり、MはTc及びReから選択される金属であり、nは−2から+1の電荷であり、前記方法は、
a)過テクネチウム酸塩若しくは過レニウム酸塩と還元剤及びLとの反応、又は
b)過テクネチウム酸塩若しくは過レニウム酸塩とルイス酸及びLとの反応
を含み、合成(a)又は(b)が水性媒質中で行われる、方法。
【請求項2】
a)i)過テクネチウム酸塩若しくは過レニウム酸塩と還元剤の反応、ii)Lと生成したTc若しくはRe種それぞれとの配位、及びiii)(VII)酸化状態への該Tc若しくはRe種の酸化、
又は
b)i)過テクネチウム酸塩若しくは過レニウム酸塩とルイス酸の反応、及びii)Lと生成したTc若しくはRe種それぞれとの配位
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)で使用される前記還元剤がルイス塩基である、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(a)で使用される前記還元剤がホスフィンである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ホスフィンが無機又は有機高分子に結合した、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ホスフィンがアルキル又はアリール置換された、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記還元剤が、亜リン酸塩、亜硫酸塩、次亜リン酸塩及び水素化物から選択される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記反応が食塩水中で行われる、いずれかの先行請求項に記載の方法。
【請求項9】
が、標的部分の付加を容易にするのに適切な1個以上の官能基を有する、又はかかる官能基を有し得る1個以上のリンカー基を有する、三座配位子を表す、いずれかの先行請求項に記載の方法。
【請求項10】
が1個以上のリンカー基を有し、そのいずれも標的部分の付加に適切な官能基を持たないときには、該リンカー基は少なくとも2個の炭素原子を含むという前提の、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
がトリアザシクロノナン、トリアミノシクロヘキサン、トリスピラゾリルメタン、ビスピラゾリルアセタート、トリスピラゾリルボラート又は対応するイミダゾリル種である、いずれかの先行請求項に記載の方法。
【請求項12】
が、標的部分の付加を容易にするのに適切な1個以上の官能基でN置換され、又はかかる官能基を有し得る1個以上のリンカー基でN置換された、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記リンカー基の少なくとも1個が、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル及びアルカリール基から選択され、該リンカー基のいずれも、標的部分の付加を容易にするのに適切な官能基で更に置換することができる、請求項9又は請求項12に記載の方法。
【請求項14】
標的部分の付加を容易にするのに適切な前記官能基が、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ、アミド、ハロゲン、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルホニルアミド、アリールスルホニルアミド、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、ホスホニル、ホスファート及びシアノから選択される、請求項9、12及び13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
と前記還元剤、又はLと前記ルイス酸が、これら2成分の付加体又は複合体の形で同時に提供される、いずれかの先行請求項に記載の方法。
【請求項16】
次式を有する錯体の水溶液を含む組成物であって、
[LMO
式中、Lは三座配位子を表し、MはTc及びReから選択される金属を表し、nは−2から+1の電荷であり、該組成物が、請求項1から15のいずれかに記載の方法によって得られる、又は得ることができる、組成物。
【請求項17】
次式を有する錯体であって、
[LMO
式中、Lは三座配位子を表し、MはTc及びReから選択される金属を表し、nは−2から+1の電荷であり、ただしLは、ジ−1H−ピラゾール−1−イルアセタート、ビス(3,5−ジメチル−1H−ピラゾール−1−イル)アセタート、1,1,1−メタントリイルトリス(1H−ピラゾール)、1,1,1−メタントリイルトリス(3,5−ジメチル−1H−ピラゾール)、1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,7−トリメチルトリアザシクロノナン、1,4,7−トリチアシクロノナン、ヒドロトリス(1−ピラゾリル)ボラート又は[(η−C)Co{P(OR)(=O)}ではなく、Rはメチル又はエチルである、錯体。
【請求項18】
次式を有する錯体であって、
[LMO
式中、Lは、標的部分の付加を容易にするのに適切な1個以上の官能基を有する、又はかかる官能基を有し得る1個以上のリンカー基を有する、三座配位子を表し、MはTc及びReから選択される金属を表し、nは−2から+1の電荷であり、ただし、Lが1個以上のリンカー基を有し、そのいずれも標的部分の付加に適切な官能基を持たないときには、該リンカー基の少なくとも1個は少なくとも3個の炭素原子を含む、錯体。
【請求項19】
前記Tcが99mTc、94Tc又は94mTcである、請求項17又は請求項18に記載の錯体。
【請求項20】
前記Reが186Re又は188Reである、請求項17又は請求項18に記載の錯体。
【請求項21】
標的部分の付加を容易にするのに適切な1個以上の官能基が、場合によってはリンカー基によって、Lに結合している、請求項17から20のいずれかに記載の錯体。
【請求項22】
がトリアザシクロノナン、トリスピラゾリルメタン、ビスピラゾリルアセタート、トリスピラゾリルボラート又は対応するイミダゾリル種である、請求項17から21のいずれかに記載の錯体。
【請求項23】
が、場合によってはリンカー基によって、標的部分の付加を容易にするのに適切な1個以上の官能基でN置換されたか、又はかかる官能基を有し得る1個以上のリンカー基でN置換された、請求項22に記載の錯体。
【請求項24】
前記N置換基の少なくとも1個が、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル及びアルカリール基から選択されるリンカー基であり、該リンカー基のいずれも、標的部分の付加を容易にするのに適切な官能基で更に置換することができる、請求項23に記載の錯体。
【請求項25】
標的部分の付加を容易にするのに適切な前記官能基が、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ、アミド、ハロゲン、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルホニルアミド、アリールスルホニルアミド、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、ホスホニル、ホスファート及びシアノから選択される、請求項18及び21から24のいずれかに記載の錯体。
【請求項26】
前記リンカー基の少なくとも1個がベンジル又はフェニル部分を含む、請求項18及び21から25のいずれかに記載の錯体。
【請求項27】
前記ベンジル部分がカルボキシル基で置換された、請求項26に記載の錯体。
【請求項28】
前記配位子Lが、標的部分の付加を容易にするのに適切な官能基によって標的部分と複合化することによって改変された、請求項18及び21から27のいずれかに記載の錯体。
【請求項29】
前記標的部分が、ポリペプチド、ペプチド、アミノ酸、糖、多糖、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴ及びポリヌクレオチド、成長因子、ホルモン、抗体、抗体断片、内因性神経伝達物質、ビタミン、並びに生物学的標的に対する配位子である合成又は半合成薬剤からなる群から選択される、請求項28に記載の錯体。
【請求項30】
1種類以上の薬学的に許容される賦形剤と一緒に請求項17から29のいずれかに記載の錯体を含む、薬剤組成物。
【請求項31】
前記錯体の水溶液の形である、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記溶液のpHが約5から約9である、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
次式を有する錯体を精製する方法であって、
[LMO
式中、Lは三座配位子を表し、MはTc及びReから選択される金属を表し、nは−2から+1の電荷であり、該方法が、錯体の非精製溶液を、[LTcO又は[LReOと反応可能な官能基を有する無機又は有機高分子基質と接触させ、続いて該高分子基質を洗浄して非結合材料を除去することを含む、方法。
【請求項34】
前記無機又は有機高分子基質が有する前記官能基が、[LMOとの反応において還元剤又はルイス酸として作用する能力を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
酸化条件下で前記無機又は有機高分子基質からの前記錯体のその後の切断を更に含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
切断が曝気水を使用して行われる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
[LMOのジオラト誘導体を合成する方法であって、該方法が、請求項14に記載の組成物又は請求項17に記載の錯体と、アルケン、アルキン又はアルケニル若しくはアルキニル基含有種との反応を含み、L、M及びnが請求項1と同じ意味を有する、方法。
【請求項38】
前記アルケニル又はアルキニル基が、標的部分の一部を形成する、又は標的部分と結合した、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
式[LMO(OC(R1R2)C(R3R4)O)]又は[LMO(OC(R1)=C(R2)O)]を有する[LMOのジオラト誘導体の水溶液を含む組成物であって、M、L及びnは請求項1で定義されたのと同じ意味を有し、R1、R2、R3及びR4は、H、標的部分、標的部分に付加した又は標的部分の付加を容易にするのに適切な官能基、及びかかる官能基を有する又は有し得るリンカー基から独立に選択され、該組成物が請求項37に記載の方法によって得られる又は得ることができ、該方法が水性媒質中で実施される、組成物。
【請求項40】
式[LMO(OC(R1R2)C(R3R4)O)]又は[LMO(OC(R1)=C(R2)O)]を有する[LMOのジオラト誘導体であって、M、L及びnは請求項17と同じ意味を有し、請求項17の条件が適用され、R1、R2、R3及びR4はH、標的部分、標的部分に付加した又は標的部分の付加を容易にするのに適切な官能基、及びかかる官能基を有する又は有し得るリンカー基から独立に選択される、ジオラト誘導体。
【請求項41】
R1、R2、R3及び/又はR4が、リンカー基を介して前記錯体に結合することができる標的部分、該標的部分の付加を容易にするのに適切な官能基、又はその組合せである、それぞれ請求項39又は請求項40に記載のジオラト誘導体又は組成物。
【請求項42】
療法又は診断に使用される、請求項17から29、40及び41のいずれかに記載の錯体、又は請求項16若しくは請求項39に記載の組成物。
【請求項43】
器官血液潅流障害及び/又は低酸素状態の診断及び/又は画像化、又は腫よう血液潅流及び/又は低酸素の測定及び/又は画像化に使用される、請求項17から29、40及び41のいずれかに記載の錯体、又は請求項16若しくは請求項39に記載の組成物。
【請求項44】
器官血液潅流障害及び/又は低酸素状態の診断及び/又は画像化、又は腫よう血液潅流及び/又は低酸素の測定及び/又は画像化のための医薬品の調製における、請求項17から29、40及び41のいずれかに記載の錯体又は請求項16若しくは請求項39に記載の組成物の使用。
【請求項45】
被験体における器官血液潅流障害及び/又は低酸素状態の診断、又は腫よう血液潅流及び/又は低酸素の測定及び/又は画像化の方法であって、請求項17から29、40及び41のいずれかに記載の錯体又は請求項16若しくは請求項39に記載の組成物の該被験体への投与を含む、方法。
【請求項46】
前記方法は、投与後に前記被験体内の前記錯体の位置に関連したデータの取得を更に含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記方法は、前記取得データに基づく画像の作成を更に含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
被験体における器官血液潅流及び/又は低酸素状態、又は腫よう血液潅流及び/又は低酸素を画像化する方法であって、請求項17から29、40及び41のいずれかに記載の錯体又は請求項16若しくは請求項39に記載の組成物の該被験体への投与、投与後の該被験体内の該錯体の位置に関連したデータの取得、及び該取得データに基づく画像の作成のステップを含む、方法。
【請求項49】
前記器官が心臓及び肺から選択される、請求項43に記載の錯体、請求項44に記載の使用、又は請求項45から48のいずれかに記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−515346(P2011−515346A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−550255(P2010−550255)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【国際出願番号】PCT/GB2009/000650
【国際公開番号】WO2009/112823
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(500466924)ウニヴェルジテート チューリッヒ (2)
【Fターム(参考)】