説明

金属顔料およびインク組成物、ならびに記録方法

【課題】 インク組成物を用いて記録媒体上に金属光沢画像を形成する場合において、記録媒体に対する定着性を高めることが可能な金属顔料およびそれを用いたインク組成物、ならびに記録方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係る金属顔料は、金属粒子に、下記一般式(1)で示される化合物を化学結合させた構造を有することを特徴とする。
【化5】


(式(1)中、pは1〜3の整数を表し、qはp+q=3の関係を満たす整数を表し、rは2〜10の整数を表す。RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、アクリル基、アクリロイル基またはメタアクリロイル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属顔料およびそれを用いたインク組成物、ならびに記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷物上に金属光沢を有する画像を形成する手法としては、真鍮、アルミニウム粒子、銀粒子等から作製された金粉、銀粉を顔料に用いた印刷インキや金属箔を用いた箔押し印刷、金属箔を用いた熱転写方式等が用いられてきた。
【0003】
近年、印刷におけるインクジェット方式への応用例が数多く見受けられ、その中の一つの応用例として、メタリック印刷がある。例えば、特許文献1には、アルキレングリコール等の有機溶媒をベースとしたアルミニウム顔料分散液およびそれを含有する非水系インク組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−174712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、金属顔料を含有するインク組成物を用いて記録媒体上に金属光沢画像を形成した場合、インク組成物中の水や有機溶剤等の主要成分は、記録媒体内部への浸透や揮発によって記録媒体の表面にはほとんど存在しないことになる。そうすると、記録媒体の表面に金属顔料が晒された状態となるが、金属顔料の記録媒体への定着性があまり良好でないために該金属光沢画像の耐擦性が悪くなるという課題があった。
【0006】
本発明に係る幾つかの態様は、前記課題を解決することで、インク組成物を用いて記録媒体上に金属光沢画像を形成する場合において、記録媒体に対する定着性を高めることが可能な金属顔料およびそれを用いたインク組成物、ならびに記録方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0008】
[適用例1]
本発明に係る金属顔料の一態様は、
金属粒子に、下記一般式(1)で示される化合物を化学結合させた構造を有することを特徴とする。
【0009】
【化1】

(式(1)中、pは1〜3の整数を表し、qはp+q=3の関係を満たす整数を表し、rは2〜10の整数を表す。RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、アクリル基、アクリロイル基またはメタアクリロイル基を表す。)
【0010】
適用例1の金属顔料によれば、金属粒子に化学結合させた上記一般式(1)で示される化合物の末端に位置する重合性反応基が重合反応することで、記録媒体に対する定着性を高めることができる。したがって、適用例1の金属顔料をインク組成物に適用した場合、金属顔料自体に記録媒体との定着性を高める効果が得られ、ひいては記録された金属光沢画像の耐擦性を向上させることができる。
【0011】
[適用例2]
適用例1の金属顔料において、
前記金属粒子は、金、銀、白金およびアルミニウムから選択される1種を含むことができる。
【0012】
[適用例3]
適用例2の金属顔料において、
前記金属粒子は、アルミニウムを含み、
その形状が、0.5μm以上3μm以下の50%平均粒子径を有し、且つ、5nm以上30nm以下の平均厚みを有する平板状粒子であることができる。
【0013】
[適用例4]
本発明に係るインク組成物の一態様は、
適用例1ないし適用例3のいずれか一例に記載の金属顔料と、水または有機溶剤と、を少なくとも含有することを特徴とする。
【0014】
適用例4のインク組成物によれば、上述した金属顔料自体に記録媒体との定着性を高める効果が得られるので、該インク組成物により記録された金属光沢画像の耐擦性を向上させることができる。
【0015】
[適用例5]
適用例4のインク組成物において、
さらに、1箇所以上の不飽和結合を有する樹脂を含有することができる。
【0016】
[適用例6]
適用例5のインク組成物において、
前記樹脂は、ウレタン系オリゴマーおよびアクリル樹脂から選択される少なくとも1種を含有することができる。
【0017】
[適用例7]
適用例4ないし適用例6のいずれか一例のインク組成物において、
さらに、重合開始剤を含有することができる。
【0018】
[適用例8]
本発明に係る記録方法の一態様は、
記録媒体上に適用例4ないし適用例7のいずれか一例に記載のインク組成物を付着させる工程(a)と、
前記記録媒体上に付着されたインク組成物に対して、光源から所定の発光ピーク波長を有する光を照射する工程(b)と、
を含むことを特徴とする。
【0019】
[適用例9]
適用例8の記録方法において、
前記工程(a)において、前記記録媒体上に前記インク組成物を付着させる手段が、インクジェット印刷であることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態に係る記録方法に使用可能なインクジェット記録装置の斜視図。
【図2】図1に示した光照射装置の正面図。
【図3】図2のA−A矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の好適な実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
【0022】
1.金属顔料
本実施の形態に係る金属顔料は、金属粒子に、下記一般式(1)で示される化合物を化学結合させた構造を有することを特徴とする。
【0023】
【化2】

(式(1)中、pは1〜3の整数を表し、qはp+q=3の関係を満たす整数を表し、rは2〜10の整数を表す。RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、アクリル基、アクリロイル基またはメタアクリロイル基を表す。)
【0024】
以下、本実施の形態に係る金属顔料の製造方法の一例について説明する。
【0025】
1.1.金属粒子用意工程
まず、金属粒子を用意する。金属粒子としては、良好な金属光沢性を確保する観点から、金、銀、白金、アルミニウム、またはこれらの合金が使用できる。合金を用いる場合、前記例示した金属元素以外に添加し得る他の金属元素または非金属元素としては、例えば、ニッケル、クロム、錫、銅、亜鉛、インジウム、チタン等が挙げられる。以下、銀粒子、アルミニウム粒子、その他の金属粒子の製造方法の具体例についてこの順に説明する。
【0026】
1.1.1.銀粒子の製造方法
銀粒子の製造方法は、特に制限されないが、例えば以下に示す第1ないし第3の方法が挙げられる。以下に示す手法は、銀粒子が水系分散媒中にコロイド状に分散したコロイド液として製造される。
【0027】
(1)第1の方法
第1の手法は、少なくともビニルピロリドンのポリマーと多価アルコールとを含む第1溶液を用意する第1溶液用意工程と、銀(金属)に還元することが可能な銀前駆体を溶媒に溶解した第2溶液を用意する第2溶液用意工程と、第1溶液を所定の温度に加熱する第1溶液加熱工程と、加熱した第1溶液と第2溶液とを混合し混合液を得る混合工程と、混合液を所定の温度で一定時間保持する反応進行工程と、反応が進行した混合液から銀粒子(銀コロイド粒子)を取り出し、水系分散媒に分散する分散工程と、を有している。
【0028】
<第1溶液用意工程>
まず、ビニルピロリドンのポリマーと多価アルコールとを少なくとも含む第1溶液を用意する。
【0029】
第1溶液に含まれるビニルピロリドンのポリマーの機能の一つとしては、本例の製造方法により製造される銀粒子の表面に吸着することにより、銀粒子の凝集を防止し、銀コロイド粒子を形成することが挙げられる。
【0030】
使用するビニルピロリドンのポリマーには、ビニルピロリドンの単独重合体(ポリビニルピロリドン)および/またはビニルピロリドンの共重合体が含まれてもよい。
【0031】
ビニルピロリドンの共重合体としては、例えば、ビニルピロリドンとα−オレフィンとの共重合体、ビニルピロリドンと酢酸ビニルとの共重合体、ビニルピロリドンとジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートとの共重合体、ビニルピロリドンと(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドとの共重合体、ビニルピロリドンとビニルカプロラクタムジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートとの共重合体、ビニルピロリドンとスチレンとの共重合体、ビニルピロリドンと(メタ)アクリル酸との共重合体等が挙げられる。
【0032】
ビニルピロリドンのポリマーとしてポリビニルピロリドンを用いる場合、ポリビニルピロリドンの重量平均分子量は、3000以上60000以下であることが好ましい。
【0033】
多価アルコールは、第2溶液中に含まれる銀前駆体を銀(金属)に還元する機能を有する化合物である。
【0034】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリエタノールアミン、トリヒドロキシメチルアミノメタン等が挙げられる。
【0035】
上記のようなビニルピロリドンのポリマーを上記多価アルコールに溶解させることにより、第1溶液を用意する。
【0036】
なお、ビニルピロリドンのポリマーは、余分な水分や不純物等を取り除く目的で、70℃以上120℃以下に加熱されていることが好ましい。また、この場合の加熱時間は、8時間以上であることが好ましい。
【0037】
また、第1溶液中には、多価アルコールとは別に、第2溶液中の銀前駆体を還元する還元剤が含まれていてもよい。
【0038】
このような還元剤としては、例えば、ヒドラジンおよびその誘導体;ヒドロキシルアミンおよびその誘導体;メタノール、エタノール等の一価のアルコール;ホルムアルデヒド、ギ酸、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドおよびこれらのアンモニウム塩等のアルデヒド;次亜リン酸塩;亜硫酸塩;テトラヒドロホウ酸塩(例えば、Li、Na、Kのテトラヒドロホウ酸塩);水素化アルミニウムリチウム(LiAlH);水素化ホウ素ナトリウム(NaBH);ヒドロキノン、アルキル置換したヒドロキノン、カテコールおよびピロガロール等のポリヒドロキシベンゼン;フェニレンジアミンおよびその誘導体;アミノフェノールおよびその誘導体;アスコルビン酸、クエン酸、アスコルビン酸ケタール等のカルボン酸およびその誘導体;3−ピラゾリドンおよびその誘導体;ヒドロキシテトロン酸、ヒドロキシテトロン酸アミドおよびその誘導体;ビス・ナフトール類およびその誘導体;スルホンアミドフェノールおよびその誘導体;Li、NaおよびK等が挙げられる。これらの中でも、ギ酸アンモニウム塩、ギ酸、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、アスコルビン酸、クエン酸、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、トリエチル水素化ホウ素リチウムを用いることが好ましく、ギ酸アンモニウム塩を用いることがより好ましい。
【0039】
<第2溶液用意工程>
次に、銀に還元することが可能な銀前駆体を溶媒に溶解させた第2溶液を用意する。
【0040】
銀前駆体とは、上述した多価アルコールや還元剤によって還元することにより、銀(金属)を生成する化合物である。
【0041】
このような銀前駆体としては、例えば、銀の、酸化物、水酸化物(水和した酸化物を含む)、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物(例えばフッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物)、炭酸塩、リン酸塩、アジ化物、ホウ酸塩(フルオロホウ酸塩、ピラゾリルホウ酸塩等を含む)、スルホン酸塩、カルボン酸塩(例えばギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸エステルおよびクエン酸塩)、置換されたカルボン酸塩(トリフルオロアセテート等のハロゲン化カルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、アミノカルボン酸塩等を含む)、ヘキサクロロ白金酸塩、テトラクロロ金酸塩、タングステン酸塩等の銀の無機および有機酸塩等、銀アルコキシド、銀錯体等が挙げられる。
【0042】
溶媒としては、上述した銀前駆体が溶解するものであれば特に限定されず、例えば、上記第1溶液用意工程で説明した多価アルコール、脂肪族、脂環式、芳香族のアルコール類(本明細書において、単に「アルコール」と示した場合「一価のアルコール」のことを指す)、エーテルアルコール類、アミノアルコール類等を用いることができる。
【0043】
上記のような銀前駆体を溶媒に溶解させることにより、第2溶液を得る。
【0044】
<混合工程>
次に、第1溶液と第2溶液とを混合し、混合液を得る。
【0045】
この際、第1溶液の温度は、100℃以上140℃以下であることが好ましく、101℃以上130℃以下であることがより好ましく、115℃以上125℃以下であることがさらに好ましい。これにより、第2溶液中の銀前駆体をより効率よく還元することができると共に、形成される銀粒子の表面にビニルピロリドンを効率よく吸着させることができる。
【0046】
<反応進行工程>
次に、第1溶液と第2溶液とを混合して得られた混合液を所定の温度で一定時間加熱し、銀前駆体の還元反応を進行させる。
【0047】
この際の加熱温度は、100℃以上140℃以下であることが好ましく、101℃以上130℃以下であることがより好ましく、115℃以上125℃以下であることがさらに好ましい。これにより、銀前駆体をより効率よく還元することができると共に、形成される銀粒子の表面にビニルピロリドンを効率よく吸着させることができる。
【0048】
また、加熱時間(反応時間)は、加熱温度にもよるが、30分以上180分以下であることが好ましく、30分以上120分以下であることがより好ましく、60分以上120分以下であることがさらに好ましい。これにより、銀前駆体をより確実に還元することができると共に、形成される銀粒子の表面にビニルピロリドンをより効果的に吸着させることができる。
【0049】
<分散工程>
その後、必要に応じて、形成された銀粒子(銀コロイド粒子)を濾過や遠心分離等の手段によって分離し、分離した銀粒子を水系分散媒に所望の濃度で分散させる。このようにして、銀粒子水分散液が得られる。
【0050】
(2)第2の手法
第2の手法は、まず、分散剤と還元剤とを溶解した水溶液を調製する。分散剤としては、特に限定されないが、COOH基とOH基とを合わせて3個以上有し、かつ、COOH基の数がOH基と同じか、それよりも多いヒドロキシ酸またはその塩を含むものとする。これらの分散剤の機能の一つとしては、銀粒子の表面に吸着してコロイド粒子を形成し、分散剤中に存在するCOOH基の電気的反発力によって銀コロイド粒子を水溶液中に均一に分散させてコロイド液を安定化することが挙げられる。分散剤を配合することにより、銀コロイド粒子が安定して分散媒中に存在することができるようになるため、例えば、より分散安定性を高めることができる。
【0051】
このような分散剤としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三リチウム、クエン酸三アンモニウム、リンゴ酸二ナトリウム、タンニン酸、ガロタンニン酸、五倍子タンニン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせたものが挙げられる。
【0052】
また、分散剤は、COOH基とSH基とを合わせて2個以上有するメルカプト酸またはその塩を含んでいてもよい。これらの分散剤は、メルカプト基の銀粒子の表面に吸着する能力が、水酸基と同程度または水酸基よりも強いことがあるため、コロイド粒子をさらに形成しやすく、分散剤中に存在するCOOH基の電気的反発力によってコロイド粒子を水溶液中に均一に分散させてコロイド液を安定化する働きが高まる場合がある。このような分散剤としては、例えば、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、チオジプロピオン酸、メルカプトコハク酸、チオ酢酸、メルカプト酢酸ナトリウム、メルカプトプロピオン酸ナトリウム、チオジプロピオン酸ナトリウム、メルカプトコハク酸二ナトリウム、メルカプト酢酸カリウム、メルカプトプロピオン酸カリウム、チオジプロピオン酸カリウム、メルカプトコハク酸二カリウム等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせたものが挙げられる。
【0053】
分散剤の配合量としては、出発物質である硝酸銀のような銀塩中の銀と分散剤とのモル比が1:1以上1:100以下程度となるように配合することが好ましい。銀塩に対する分散剤のモル比が大きくなると、銀粒子の粒径が小さくなって分散性をより高めることができる。
【0054】
還元剤の機能の一つとしては、出発物質である硝酸銀(AgNO)のような銀塩中のAgイオンを還元して銀粒子を生成させることが挙げられる。
【0055】
還元剤としては、特に限定されず、例えば、ヒドラジン、ジメチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン系;水酸化ホウ素ナトリウム、水素ガス、ヨウ化水素等の水素化合物系;一酸化炭素、亜硫酸次亜リン酸等の酸化物系、Fe(II)化合物、Sn(II)化合物等の低原子価金属塩系、D−グルコースのような糖類、ホルムアルデヒド等の有機化合物系、あるいはヒドロキシ酸であるクエン酸、リンゴ酸や、ヒドロキシ酸塩であるクエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三リチウム、クエン酸三アンモニウム、リンゴ酸二ナトリウムやタンニン酸等が挙げられる。これらの中でも、タンニン酸やヒドロキシ酸は、還元剤として機能すると同時に分散剤としての効果を発揮するため、より好適に用いることができる。または、銀表面で安定した結合を形成する分散剤として上記に挙げたメルカプト酸であるメルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、チオジプロピオン酸、メルカプトコハク酸、チオ酢酸やメルカプト酸塩であるメルカプト酢酸ナトリウム、メルカプトプロピオン酸ナトリウム、チオジプロピオン酸ナトリウム、メルカプトコハク酸ナトリウム、メルカプト酢酸カリウム、メルカプトプロピオン酸カリウム、チオジプロピオン酸カリウム、メルカプトコハク酸カリウム等は、還元剤として好適に用いることができる。
【0056】
これらの分散剤や還元剤は、いずれも単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。また、これらの分散剤や還元剤を使用する際には、光や熱を加えて還元反応を促進させるようにしてもよい。
【0057】
還元剤の配合量としては、上記出発物質である銀塩を完全に還元できる量があれば十分であるが、過剰な還元剤は不純物として銀コロイド液中に残存して成膜後の導電性を悪化させる等の原因となることがあるため、できるだけ少ない量を配合することが好ましい。具体的な配合量としては、上記銀塩と還元剤とのモル比が1:1以上1:3以下程度であることが好ましい。
【0058】
この製造方法の例では、分散剤と還元剤とを溶解して水溶液を調製した後、この水溶液のpHは6以上12以下に調整することが好ましい。これは、以下のような理由による。例えば、分散剤であるクエン酸三ナトリウムと還元剤である硫酸第一鉄とを混合した場合、全体の濃度にもよるがpHは大体4以上5以下程度と、上記したpH6を下回る。このとき存在する水素イオンは、下記反応式(2)で表される反応の平衡を右辺に移動させ、COOHの量が多くなる。したがって、その後、銀塩溶液を滴下して得られる銀粒子表面の電気的反発力が減少し、銀粒子(コロイド粒子)の分散性が低下してしまう。
【0059】
−COO+H ←→ −COOH…(2)
そこで、分散剤と還元剤とを溶解して水溶液を調製した後、この水溶液にアルカリ性の化合物を添加し、水素イオン濃度を低下させることにより、このような分散性の低下を抑制することができる。
【0060】
添加するアルカリ性の化合物としては、特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水や、上述したアルカノールアミン等を用いることができる。これらの中でも、アルカノールアミンを用いた場合、pHを容易に調整できると共に、形成される銀コロイド粒子の分散安定性をより向上させることができる。
【0061】
なお、アルカリ性の化合物の添加量が多すぎて、pHが12を超えると、鉄イオンのような残存している還元剤のイオンの水酸化物の沈殿が起こりやすくなるため、好ましくない。
【0062】
次に、この製造方法の例では、調製した分散剤と還元剤とが溶解した水溶液に銀塩を含む水溶液を滴下する。銀塩としては、特に限定されず、例えば、酢酸銀、炭酸銀、酸化銀、硫酸銀、亜硝酸銀、塩素酸銀、硫化銀、クロム酸銀、硝酸銀、二クロム酸銀等を用いることができる。これらの中では、水への溶解度が大きい点で硝酸銀が特に好ましい。
【0063】
また、銀塩の量は、目的とするコロイド粒子の含有量、および、還元剤により還元される割合を考慮して定められるが、例えば、硝酸銀の場合、水溶液100質量部に対して15質量部以上70質量部以下程度とするのが好ましい。
【0064】
銀塩水溶液は、上記銀塩を純水に溶かすことにより調製し、調製した銀塩の水溶液を徐々に前述した分散剤と還元剤とが溶解した水溶液中に滴下する。この工程において、銀塩は還元剤により銀粒子に還元され、さらに、該銀粒子の表面に分散剤が吸着して銀コロイド粒子が形成される。これにより、銀コロイド粒子が水溶液中にコロイド状に分散した水溶液が得られる。
【0065】
得られた溶液中には、コロイド粒子のほかに、還元剤の残留物や分散剤が存在しており、液全体のイオン濃度は高くなっている。このような状態の液は、一般に凝析が起こり、沈殿を生じやすい。そこで、このような水溶液中の余分なイオンを取り除いてイオン濃度を低下させるために、洗浄を行うことがより望ましい。
【0066】
洗浄の方法としては、例えば、得られたコロイド粒子を含む水溶液を一定期間静置し、生じた上澄み液を取り除いた上で、純水を加えて再度攪拌し、さらに一定期間静置して生じた上澄み液を取り除く工程を幾度が繰り返す方法、上記静置の代わりに遠心分離を行う方法、限外濾過等でイオンを取り除く方法等を挙げることができる。
【0067】
または、次のような方法で洗浄を行ってもよい。溶液を製造した後に溶液のpHを5以下の酸性領域に調整し、上記反応式(2)の反応の平衡を右辺に移動させることで銀粒子表面の電気的反発力を減少させ、積極的に銀コロイド粒子を凝集させた状態で洗浄を行い、塩類や溶媒を除去することができる。メルカプト酸のような低分子量の硫黄化合物を分散剤として粒子表面に有する銀コロイド粒子であれば金属表面で安定した結合を形成するため、凝集した銀コロイド粒子は、溶液のpHを6以上のアルカリ性の領域に再調整することにより、容易に再分散し、分散安定性に優れた金属コロイド液を得ることができる。
【0068】
この製造方法の例では、上記工程の後、必要により銀コロイド粒子が分散した水溶液に水酸化アルカリ金属水溶液を添加し最終的なpHを6〜11に調整することが好ましい。これは、この製造方法の例では、還元後に洗浄を行っているため、電解質イオンであるナトリウム濃度が減少している場合があり、このような状態の溶液では、下記反応式(3)で表される反応の平衡が右辺へ移動することになる。このままでは、銀コロイドの電気的反発力が減少して銀粒子の分散性が低下するおそれがあるため、適当量の水酸化アルカリを添加することにより、反応式(3)の平衡を左辺に移動させ、銀コロイドを安定化させるのである。
【0069】
−COONa+HO ←→ −COOH+Na+OH…(3)
このときに使用する水酸化アルカリ金属としては、例えば、最初にpHを調整する際に用いた化合物と同様の化合物を挙げることができる。pHが6未満では、反応式(3)の平衡が右辺に移動するため、コロイド粒子が不安定化し、一方、pHが11を超えると、鉄イオンのような残存しているイオンの水酸化塩の沈殿が起こりやすくなるため好ましくない。ただし、予め鉄イオン等を取り除いておけば、pHが11を超えても大きな問題はない。
【0070】
なお、ナトリウムイオン等の陽イオンは水酸化物の形で加えるのが好ましい。これは、水の自己プロトリシスを利用できるため最も効果的にナトリウムイオン等の陽イオンを水溶液中に加えることができるからである。また、pHを6〜11に調整する上記工程において、水酸化アルカリ金属水溶液の代わりに、アルカノールアミンを用いてもよい。
【0071】
(3)第3の手法
第3の手法は、フェノール化合物の酸化重合物が溶媒に溶解した酸化重合物溶液を用意する酸化重合物水溶液用意工程と、銀化合物が溶解した銀化合物溶液を用意する銀化合物溶液用意工程と、酸化重合物水溶液と銀化合物溶液とを混合し、銀化合物を還元し、銀の微粒子を得る混合・還元工程とを有している。
【0072】
<酸化重合物溶液用意工程>
本工程では、フェノール化合物の酸化重合物が溶媒に溶解した酸化重合物溶液を用意する。
【0073】
フェノール化合物の酸化重合物は、還元力があって、後述する銀化合物を還元することができる。さらに、フェノール化合物の酸化重合物の還元反応等で酸化されたものや過剰なものが、配位や吸着等に、生成した銀の微粒子の表面に存在することができ、これにより、銀コロイド粒子が分散した銀コロイド溶液を得ることができる。
【0074】
フェノール化合物の酸化重合物としては、フェノール化合物分子の一部を酸化しながら分子2個以上が結合し重合して生成した炭素縮合多環性化合物を用いることができる。
【0075】
具体的には、下記の(a)〜(d)から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。(a)水酸基の置換位置が1〜4位から選ばれる2ヶ所であり、カルボニル基の置換位置が5〜8位から選ばれる2ヶ所であるジヒドロキシ−ジベンゾフラン−ジオン、およびそれらの誘導体、例えば1,2−ジヒドロキシ−ジベンゾフラン−7,8−ジオン、2,4−ジヒドロキシ−ジベンゾフラン−5,7−ジオン、1,2−ジヒドロキシ−4,5−ジカルボキシ−ジベンゾフラン−7,8−ジオン等、(b)水酸基の置換位置が1〜3位から選ばれる2ヶ所、4位の1ヶ所、および6位、7位から選ばれる1ヶ所であるテトラヒドロキシ−5H−ベンゾ[7]アンヌレン−5−オンおよびそれらの誘導体、例えば2,3,4,6−テトラヒドロキシ−5H−ベンゾ[7]アンヌレン−5−オン(一般名プルプロガリン)等、(c)上記(a)または上記(b)の化合物をさらに酸化重合した化合物、(d)上記(a)〜(c)から選ばれる少なくとも1種の化合物と2価および3価のフェノール化合物およびそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物とを酸化重合した化合物。ここで、誘導体とは、酸化重合物の分子内の小部分の変化によって生成する化合物をいい、例えば、酸化重合物に含まれる水素原子をアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基等で置換したものである。
【0076】
フェノール化合物の酸化重合物は、フェノール化合物を酸化剤で酸化することにより得ることができ、酸化剤の添加量、酸化反応時間等でその重合度を制御することかできる。具体的には、フェノール化合物と酸化剤を混合したり、あるいはフェノール化合物を水系溶媒、アルコール等の有機溶媒または水溶媒とアルコール等の有機溶媒との混合溶媒に溶解させた後、この溶液と酸化剤とを混合することで得ることができる。
【0077】
酸化剤としては、例えば、空気、酸素等の酸化性ガスや、過酸化水素、過マンガン酸、過マンガン酸カリウム、ヨウ素酸ナトリウム等の化合物を用いることができ、特に空気を用いるのが経済的に有利で好ましい。
【0078】
酸化剤として酸化性ガスを用いる場合、フェノール化合物が溶媒に溶解した溶液(フェノール化合物溶液)と空気等の酸化性ガスとの混合は、開放系で溶液を撹拌して行っても、溶液中に空気等の酸化性ガスをバブリングして行ってもよい。
【0079】
溶媒としては、後述する金属化合物溶液と同様に、取り扱い易さや経済性の点で水系溶媒を用いるのが好ましい。フェノール化合物が酸化されると、透明な溶液が赤褐色、茶褐色、黒褐色等に変色し、重合が進むとさらに濃色に変化するので、目視より酸化重合物の生成を確認できる。フェノール化合物溶液のpHを6以上に調整すると、重合が進み易いので好ましく、6以上13以下の範囲がより好ましく、8以上11以下の範囲がさらに好ましい。
【0080】
また、酸化重合物は、2価または3価のフェノール化合物やそれらの誘導体を前記の条件で酸化重合させたものが好ましい。2価のフェノール化合物としては、ヒドロキノン、カテコール、レソルシノール等が、3価のものとしては、ピロガロール、フロログルシノール、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン等が、誘導体としてはピロガロールの誘導体である没食子酸等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。上述した中でも水酸基が3個のものが好ましく、ピロガロール、フロログルシノール、1,2,4−トリヒドロキシベンゼンを用いるのがより好ましい。
【0081】
具体的には、ピロガロールの酸化重合物としては、1,2−ジヒドロキシ−ジベンゾフラン−7,8−ジオン、プルプロガリン(2,3,4,6−テトラヒドロキシ−5H−ベンゾ[7]アンヌレン−5−オン)等の炭素縮合多環性化合物が挙げられる。また、フロログルシノールの酸化重合物としては、2,4−ジヒドロキシ−ジベンゾフラン−5,7−ジオン等の炭素縮合多環性化合物が挙げられる。また、1,2,4−トリヒドロキシベンゼンの酸化重合物としては、1,3−ジヒドロキシ−ジベンゾフラン−6,8−ジオン、1,3,4,7−テトラヒドロキシ−5H−ベンゾ[7]アンヌレン−5−オン等の炭素縮合多環性化合物が挙げられる。
【0082】
また、2価または3価のフェノール化合物の誘導体としては、例えば、没食子酸の酸化重合物である1,2−ジヒドロキシ−4,5−ジカルボキシ−ジベンゾフラン−7,8−ジオン等の炭素縮合多環性化合物が挙げられる。
【0083】
また、前記多環性化合物をさらに酸化重合したもの、あるいは、前記多環性化合物またはその酸化重合物と2価および3価のフェノール化合物およびそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物とを酸化重合したもの、さらにはそれらの誘導体を作製して用いてもよい。
【0084】
<銀化合物溶液用意工程>
一方、銀化合物が溶解した銀化合物溶液を用意する。
【0085】
銀化合物は、還元されることにより銀(金属)となる化合物で、銀粒子を製造するための原料である。
【0086】
銀化合物は、例えば、銀の、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩等を用いることができる。銀化合物を溶解する溶媒は、水、アルコール等の有機化合物または水とアルコール等の有機化合物との混合物を用いることができ、取り扱い易さや経済性の点で水を溶媒として用いることが好ましい。銀化合物の溶媒中の濃度は、銀化合物が溶解する範囲であれば特に制約はないが、工業的には5mmol/L以上とすることが好ましい。
【0087】
<混合・還元工程>
次に、上記のような酸化重合物溶液と銀化合物溶液とを撹拌下で混合し、銀化合物を還元して、銀の粒子を製造する。
【0088】
酸化重合物の使用量は、特に限定されないが、フェノール化合物の単体を基準として銀化合物のモル比で0.1以上10以下の範囲の量が好ましく、0.2以上5以下の範囲の量がより好ましい。
【0089】
還元温度は、適宜設定することができるが、5℃以上105℃以下程度の範囲で行うことが好ましく、10℃以上80℃以下程度で行うことがより好ましい。
【0090】
なお、前記の還元反応には補助的に別の還元剤、例えば、アルコール類やアミン類を添加してもよい。このようにして銀粒子が製造することができ、必要に応じて透析、固液分離、洗浄して余剰成分や不要なイオン成分を除去したり、更に必要に応じて乾燥等を行うことができる。
【0091】
このような還元反応によって製造した銀粒子は、その表面に上記フェノール化合物の酸化重合物およびその酸化重合物の酸化体の少なくとも一方が存在しており、銀コロイド粒子を構成している。その結果、例えば水に分散させることにより、容易に銀コロイド液を得ることができる。
【0092】
1.1.2.アルミニウム粒子の製造方法
まず、シート状基材面に剥離用樹脂層とアルミニウムまたはアルミニウム合金層(以下、単に「アルミニウム層」という)とが、順次積層された構造からなる複合化顔料原体を用意する。
【0093】
前記シート状基材としては、特に制限されないが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ナイロン66、ナイロン6等のポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセテートフィルム、ポリイミドフィルム等の離型性フィルムが挙げられる。これらのうち、ポリエチレンテレフタレートまたはその共重合体が好ましい。
【0094】
前記シート状基材の厚さは、特に制限されないが、好ましくは10〜150μmである。10μm以上であれば、工程等で取扱い性に問題がなく、150μm以下であれば、柔軟性に富み、ロール化、剥離等に問題がない。
【0095】
前記剥離用樹脂層は、アルミニウム層のアンダーコート層であり、シート状基材面との剥離性を向上させるための剥離層である。この剥離用樹脂層に用いる樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、セルロース誘導体、アクリル酸重合体または変性ナイロン樹脂が好ましい。
【0096】
前記例示した樹脂の1種または2種以上の混合物の溶液をシート状基材に塗布し乾燥させることにより、剥離用樹脂層を形成することができる。塗布後は、粘度調整剤等の添加剤を添加してもよい。
【0097】
前記剥離用樹脂層の塗布は、一般的に用いられているグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布、ディップ塗布、スピンコート法等の公知の技術を用いることができる。塗布・乾燥後、必要であればカレンダー処理により表面の平滑化を行ってもよい。
【0098】
剥離用樹脂層の厚さは、特に制限されないが、好ましくは0.5〜50μmであり、より好ましくは1〜10μmである。0.5μm未満では後述する分散樹脂としての量が不足し、50μmを超えるとロール化した場合、アルミニウム層との界面で剥離しやすいものとなってしまう。
【0099】
前記剥離用樹脂層にアルミニウム層を積層させる手段としては、真空蒸着、イオンプレーティングまたはスパッタリング法を適用することが好ましい。
【0100】
また、前記アルミニウム層は、特開2005−68250号公報に例示されるように、保護層で挟まれていてもよい。該保護層としては、酸化ケイ素層、保護用樹脂層が挙げられる。
【0101】
前記酸化ケイ素層としては、酸化ケイ素を含有する層であれば特に制限されるものではないが、ゾルゲル法によってテトラアルコキシシラン等のシリコンアルコキシドまたはその重合体から形成されたものであることが好ましい。シリコンアルコキシドまたはその重合体を溶解したアルコール溶液を塗布し、加熱焼成することにより、酸化ケイ素層の塗膜を形成することができる。
【0102】
前記保護用樹脂層としては、分散媒に溶解しない樹脂であれば特に制限されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、セルロース誘導体等が挙げられる。これらのうち、ポリビニルアルコールまたはセルロース誘導体から形成されることが好ましい。前記例示した樹脂1種または2種以上の混合物の水溶液を塗布し乾燥させると、前記保護用樹脂層を形成することができる。塗布液には、粘度調整剤等の添加剤を添加することができる。前記酸化ケイ素および樹脂の塗布は、前記剥離用樹脂層の塗布と同様の手法により行われる。
【0103】
前記保護層の厚さは、特に制限されないが、50〜150nmの範囲が好ましい。50nm未満では機械的強度が不足であり、150nmを超えると強度が高くなりすぎるため粉砕・分散が困難となり、またアルミニウム層との界面で剥離してしまう場合がある。
【0104】
また、特開2005−68251号公報に例示されるように、前記「保護層」と「アルミニウム層」との間に色材層を有していてもよい。
【0105】
色材層は、任意の着色複合顔料を得るために導入するものであり、本実施の形態に使用するアルミニウム粒子の金属光沢、光輝性、背景隠蔽性に加え、任意の色調、色相を付与できる色材を含有できるものであれば特に制限されるものではない。この色材層に用いる色材としては、染料、顔料のいずれでもよい。また、染料、顔料としては、公知のものを適宜使用することができる。
【0106】
この場合、色材層に用いられる「顔料」とは、一般的な工学の分野で定義される、天然顔料、合成有機顔料、合成無機顔料等を意味する。
【0107】
前記色材層の形成方法としては、特に制限されないが、コーティングにより形成することが好ましい。また、色材層に用いられる色材が顔料の場合は、色材分散用樹脂をさらに含むことが好ましく、該色材分散用樹脂としては、顔料と、色材分散用樹脂と、必要に応じてその他の添加剤等と、を溶媒に分散または溶解させ、溶液としてスピンコートで均一な液膜を形成した後、乾燥させて樹脂薄膜として作製されることが好ましい。なお、複合化顔料原体の製造において、前記の色材層と保護層の形成がともにコーティングにより行われることが、作業効率上好ましい。
【0108】
前記複合化顔料原体としては、前記剥離用樹脂層とアルミニウム層との順次積層構造を複数有する層構成も可能である。その際、複数のアルミニウム層からなる積層構造の全体の厚み、すなわち、シート状基材とその直上の剥離用樹脂層を除いた、アルミニウム層−剥離用樹脂層−アルミニウム層、または剥離用樹脂層−アルミニウム層の厚みは5000nm以下であることが好ましい。5000nm以下であると、複合化顔料原体をロール状に丸めた場合でも、ひび割れ、剥離を生じ難く、保存性に優れる。また、顔料化した場合においても金属光沢性に優れており好ましい。また、シート状基材面の両面に、剥離用樹脂層とアルミニウム層とが順次積層された構造も挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0109】
次いで、前記複合化顔料原体を有機溶媒中で、前記複合化顔料原体のシート状基材面と剥離用樹脂層との界面を境界として剥離し、それを粉砕または微細化処理することにより、粗大粒子を含むアルミニウム粒子分散液を調製する。さらに、得られたアルミニウム粒子分散液をろ過し粗大粒子を除去することで、アルミニウム粒子分散液を得ることができる。
【0110】
前記有機溶媒としては、アルミニウム粒子の分散安定性を損なわないものであれば制限されないが、極性有機溶媒であることが好ましい。極性有機溶媒としては、例えば、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、フッ化アルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、カルボン酸エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)等が挙げられる。
【0111】
以上例示した極性有機溶媒の中でも、常温常圧下で液体であるアルキレングリコールモノエーテルまたはアルキレングリコールジエーテルであることがより好ましい。
アルキレングリコールモノエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0112】
アルキレングリコールジエーテルとしては、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
【0113】
これらの中でも、アルミニウム粒子の分散安定性に優れる観点から、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルであることがさらに好ましい。また、アルミニウム粒子の金属光沢性を確保する観点から、ジエチレングリコールジエチルエーテルであることが特に好ましい。
【0114】
前記シート状基材からの剥離処理法としては、特に制限されないが、前記複合化顔料原体を液体中に浸漬することによりなされる方法や、液体中に浸漬すると同時に超音波処理を行い剥離処理と剥離した複合化顔料の粉砕処理を行う方法が好ましい。
【0115】
前記のようにして得られたアルミニウム粒子は、剥離用樹脂層が保護コロイドの役割を有し、有機溶媒中での分散処理を行うだけで安定な分散液を得ることが可能である。
【0116】
以上の工程により得られたアルミニウム粒子の形状は、特に限定されないが、良好な金属光沢性を有する観点から、平板状粒子であることが好ましい。平板状粒子とは、アルミニウム粒子の平面上の長径をX、短径をY、厚みをZとした場合、略平坦な面(X−Y平面)を有し、且つ、厚み(Z)が略均一である粒子をいう。より詳しくは、該アルミニウム粒子の略平坦な面(X−Y平面)の面積より求めた円相当径の50%平均粒子径R50が0.5μm以上3μm以下であって、且つ、厚み(Z)が5nm以上30nm以下であることを満たすものをいう。
【0117】
円相当径とは、アルミニウム粒子の略平坦な面(X−Y平面)を、該アルミニウム粒子の投影面積と同じ投影面積を持つ円と想定したときの当該円の直径である。例えば、アルミニウム粒子の略平坦な面(X−Y平面)が多角形である場合、その多角形の投影面を円に変換して得られた当該円の直径を、そのアルミニウム粒子の円相当径という。
【0118】
前記平板状粒子の略平坦な面(X−Y平面)の面積より求めた円相当径の50%平均粒子径(R50)は、良好な金属光沢性および印字安定性を確保する観点から、好ましくは0.5μm以上3μm以下であり、より好ましくは0.75μm以上2μm以下である。
【0119】
前記平板状粒子の略平坦な面(X−Y平面)の面積より求めた円相当径の最大粒子径は、10μm以下であることが好ましい。最大粒子径を10μm以下にすることで、インクジェット記録装置のノズルや、インク流路内に設けられた異物除去フィルター等に該平板状粒子が目詰まりすることを防止することができる。
【0120】
前記平板状粒子の平面上の長径X、短径Y、円相当径は、粒子像分析装置を用いて測定することができる。粒子像分析装置としては、例えば、フロー式粒子像分析装置FPIA−2100、FPIA−3000、FPIA−3000S(以上、シスメックス株式会社製)が挙げられる。
【0121】
前記平板状粒子の粒度分布(CV値)は、下記式(4)より求めることができる。
CV値=粒度分布の標準偏差/粒子径の平均値×100 …(4)
【0122】
ここで、得られるCV値は、好ましくは60以下であり、より好ましくは50以下であり、特に好ましくは40以下である。CV値が60以下の平板状粒子を選択することで、印字安定性に優れるという効果が得られる。
【0123】
前記厚み(Z)は、金属光沢性を確保する観点から、好ましくは5nm以上30nm以下であり、より好ましくは10nm以上25nm以下である。
【0124】
1.1.3.その他の金属粒子
本実施の形態に係る金属顔料は、前記例示した金属粒子の他にも種々の金属粒子を用いることができる。例えば、(a)溶解したアルミニウムを霧状に吹き出し形成された球状アルミニウム粒子、(b)ポリオレフィンフィルム等の基材フィルムに、金属蒸着薄膜層を形成し金属蒸着体とし、該金属蒸着薄膜層形成の前および/または後に金属蒸着薄膜層と基材フィルムとの間に適性密着度を付与し、その後金属蒸着体を延伸し、金属蒸着薄膜層を基材フィルムから剥離し必要に応じて破砕することによって得られる金属箔粉等が挙げられる。
【0125】
1.2.反応工程
次に、得られた金属粒子分散液中に、下記一般式(1)で示される化合物を含有する表面処理剤を必要量添加して十分に撹拌する。これにより、金属粒子の表面に存在するヒドロキシル基と下記一般式(1)で示される化合物のアルコキシル基とが加水分解反応することにより、金属粒子の表面に下記一般式(1)で示される化合物を化学結合させることができる。
【0126】
【化3】

(式(1)中、pは1〜3の整数を表し、qはp+q=3の関係を満たす整数を表し、rは2〜10の整数を表す。RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、アクリル基、アクリロイル基またはメタアクリロイル基を表す。)
【0127】
前記一般式(1)で示される化合物は、末端(R)にアクリル基、アクリロイル基またはメタアクリロイル基のような重合性反応基を有している。したがって、金属粒子に前記一般式(1)で示される化合物を化学結合させることにより、金属粒子自体に重合反応性を付与することができる。
【0128】
前記一般式(1)で示される化合物の具体例としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0129】
表面処理剤は、少なくとも前記一般式(1)で示される化合物および水を混合して、さらに40℃で1〜2時間程度撹拌することにより調製することができる。水の添加量は、特に制限されないが、表面処理剤の全質量に対して、好ましくは0.5〜50質量%、より好ましくは0.8〜40質量%である。前記範囲で水を添加することにより、前記一般式(1)で示される化合物の末端基をシラノール化することができる。
【0130】
前記金属粒子と前記表面処理剤との加水分解反応における反応温度は、好ましくは10〜60℃、より好ましくは15〜40℃、特に好ましくは20〜30℃である。加水分解反応温度が前記範囲であると、加水分解反応を円滑に進行させることができる。
【0131】
また、前記金属粒子と前記表面処理剤との加水分解反応における反応時間は、好ましくは0.5〜100時間、より好ましくは1〜72時間である。
【0132】
2.インク組成物
本実施の形態に係るインク組成物は、上述した金属顔料と、水または有機溶媒と、を少なくとも含有することを特徴とする。上述した金属顔料の表面には、末端(R)にアクリル基、アクリロイル基またはメタアクリロイル基のような重合性反応基を有する化合物が修飾されている。かかる重合性反応基が反応することで記録媒体に対する定着性を高めることができる。すなわち、上述した金属顔料をインク組成物に適用した場合、金属顔料自体に記録媒体との定着性を高める効果が得られ、ひいては記録された金属光沢画像の耐擦性を向上させることができるのである。
【0133】
前記金属顔料の含有量(固形分)は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以上15質量%以下である。金属顔料の含有量が前記範囲であれば、記録媒体上に金属光沢を有する画像を記録することができる。
【0134】
前記水としては、特に限定されないが、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水が好ましい。水には、金属顔料の分散の妨げにならない程度であればイオン等が存在してもよい。
【0135】
前記有機溶媒としては、特に限定されないが、極性有機溶媒、例えば、アルコール類(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、フッ化アルコール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、カルボン酸エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等)、またはエーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)の他、2−ピロリドン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等を用いることができる。
【0136】
本実施の形態に係るインク組成物には、必要に応じて、以下に例示するような添加剤(重合性化合物、重合開始剤、保湿剤、樹脂、界面活性剤、防腐剤、pH調整剤等)を別途添加してもよい。
【0137】
本実施の形態に係るインク組成物には、重合性化合物を添加してもよい。重合性化合物としては、特に限定されないが、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル等のアリルエステル類;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン含有単量体;メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル等のビニルエーテル;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;エチレン、プロピレン等のオレフィン類等が挙げられる。
【0138】
本実施の形態に係るインク組成物には、金属顔料の重合性反応基(R)の反応性を高める観点から、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては、特に限定されないが、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、またはこれらの混合物等の公知の重合開始剤が挙げられる。これらの重合開始剤は通常水に不溶性または難溶性であるため、水系インク組成物である場合には、重合開始剤が微粒子状に分散された水分散体として添加することが好ましい。重合開始剤の水分散体の市販品としては、例えば、IRGACURE 819DW(ビスアシルフォスフィンオキサイドの水分散体)等が挙げられる。なお、本明細書において、水系インク組成物とは、水を少なくとも50質量%以上含有するインク組成物のことをいう。
【0139】
前記重合性化合物の添加量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。前記重合性化合物の添加量が前記範囲であると、重合性反応基(R)の反応性を高めることで、金属顔料と記録媒体との定着性をより一層高めることができる。
【0140】
本実施の形態に係るインク組成物には、インクの乾燥によるノズルの目詰まりを防止すると共に、金属光沢画像の光沢度を高める観点から、保湿剤を添加してもよい。保湿剤としては、グリセロール類、グリコール類、糖質等が挙げられる。
【0141】
グリセロール類としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、C1〜10のアルキルグリセリルエーテル、C1〜10のアルキルジグリセリルエーテル、C1〜10のアルキルトリグリセリルエーテル等が挙げられる。これらのグリセロール類の中でも、画像の金属光沢度をより向上できる点で、グリセリン、トリメチロールプロパンが好ましい。
【0142】
グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらのグリコール類の中でも、画像の金属光沢度をより向上できる点で、1,2−ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールが好ましい。
【0143】
糖質としては、グルコース、フルクトース、ガラクトース等の単糖類;マルトース、スクロース、セロビオース、ラクトース、トレハロース、イルマルトース、ゲンチオビース等の二糖類;ゲンチアノース、ラフィノース、パノース等の三糖類;その他の多糖類;糖アルコール等が挙げられる。糖質としては、市販されているHS−500(株式会社林原商事製)等の還元澱粉糖化物(糖アルコールを含む混合物)を用いてもよい。
【0144】
前記例示した保湿剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0145】
前記保湿剤の添加量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは5質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上18質量%以下である。前記保湿剤の添加量が前記範囲であると、記録媒体上に印刷されたときに金属光沢度に優れた画像を記録することができる。
【0146】
本実施の形態に係るインク組成物には、記録媒体に対する金属顔料の定着性を向上させる観点から、樹脂を添加してもよい。樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、繊維系樹脂(セルロースアセテートブチレート、ヒドロキシプロピルセルロース等)、ポリビニルブチラール、ポリアクリルポリオール、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0147】
これらの樹脂の中でも、記録媒体に対する金属顔料の定着性をより一層向上させる観点から、1箇所以上の不飽和結合を有する樹脂であることが好ましく、アクリル樹脂およびウレタン系オリゴマーから選択される少なくとも1種であることがより好ましい。ここで、ウレタン系オリゴマーとは、分子中にウレタン結合とラジカル重合可能な不飽和二重結合とを一以上有するものをいう。なお、オリゴマーとは、相対分子質量(分子量と同義である)の小さい分子から実質的あるいは概念的に得られる単位の少数回、一般的には約2回ないし20回程度の繰り返し構造をもつ中程度の大きさの相対分子質量を有する分子をいう。本実施の形態において用いられるオリゴマーとは、光重合性プレポリマー、ベースレジン、またはウレタンオリゴマーと呼ばれるものである。
【0148】
本実施の形態に係るインク組成物に用いられるウレタン系オリゴマーとしては、ポリオールと、ポリイソシアネートおよびポリハイドロオキシ化合物と、の付加反応により生じるオリゴマーが挙げられる。また、ウレタン系オリゴマーとしては、例えば、ポリエステル系ウレタンアクリレート、ポリエーテル系ウレタンアクリレート、ポリブタジエン系ウレタンアクリレート、ポリオール系ウレタンアクリレート等が挙げられる。ウレタン系オリゴマーの具体的な市販品としては、U−4HA、U−15HA、UA−7200(いずれも新中村化学工業株式会社から入手可能)等が挙げられる。
【0149】
前記ウレタン系オリゴマーの分子量は、好ましくは500〜20,000程度、より好ましくは500〜10,000程度の範囲のものを好適に用いることができる。
【0150】
本実施の形態に係るインク組成物に用いられるアクリル樹脂やウレタン系オリゴマーは、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を有しているため、光照射等により前記金属顔料や必要に応じて添加される重合性化合物と重合反応を生じ、架橋重合する性質を有している。これにより、記録媒体に対する金属顔料の定着性をより一層向上させることができる。
【0151】
また、非水系エマルジョン型ポリマー粒子(NAD=Non Aqueous Dispersion)を樹脂として添加してもよい。NADとは、前記例示した樹脂の粒子が有機溶媒中に安定に分散された分散液のことをいう。
【0152】
前記樹脂の添加量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下である。前記樹脂の添加量が前記範囲であると、記録媒体に対する金属顔料の定着性を一層向上させることができる。
【0153】
本実施の形態に係るインク組成物は、インクの記録媒体への濡れ性を高めて浸透性を向上させる観点から、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、ポリシロキサン系界面活性剤等が挙げられる。
【0154】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オール等が挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えばオルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学株式会社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK−347、BYK−348、BYK−UV3500(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。さらに、本実施の形態に係るインク組成物には、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等のその他の界面活性剤を別途添加してもよい。
【0155】
前記界面活性剤の添加量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上2質量%以下である。
【0156】
本実施の形態に係るインク組成物には、防腐剤を添加してもよい。防腐剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジンチアゾリン−3−オン(ICI社製のプロキセルCRL、プロキセルBND、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルTN)等が挙げられる。
【0157】
前記防腐剤の添加量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.1質量%以上2質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以上1質量%以下である。
【0158】
本実施の形態に係るインク組成物には、pH調整剤を添加してもよい。pH調整剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリン等のアミン類およびそれらの変成物;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等の無機塩類;水酸化アンモニウム、四級アンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウム等)が挙げられる。
【0159】
特に銀粒子を含有する水系インク組成物の場合、pHは8以上であることが好ましく、8以上10以下であることがより好ましい。銀粒子含有水系インク組成物のpHを8以上の塩基性とすることで、インクのpH変化、銀粒子の凝集等の点で保存安定性を向上できる。
【0160】
インク組成物の20℃における粘度は、好ましくは2mPa・s以上10mPa・s以下であり、より好ましくは3mPa・s以上5mPa・s以下である。インク組成物の20℃における粘度が前記範囲にあると、ノズルからインク組成物が適量吐出され、インク組成物の飛行曲がりや飛散を一層低減することができるため、インクジェット記録装置に好適に使用することができる。また、インク組成物の表面張力は、20℃で、通常0.2〜0.7mN/cm、好ましくは0.25〜0.6mN/cm、より好ましくは0.3〜0.4mN/cmである。インク組成物の粘度および表面張力は、上記した各成分の添加量を適宜変えることによって調整することができる。
【0161】
3.記録方法
本実施の形態に係る記録方法は、記録媒体上に上述したインク組成物を付着させる工程(a)と、前記記録媒体上に付着されたインク組成物に対して、光源から所定の発光ピーク波長を有する光を照射する工程(b)と、を含むことを特徴とする。
【0162】
以下、本実施の形態に係る記録方法について各工程ごとに説明する。
【0163】
3.1.工程(a)
本工程は、記録媒体上に上述したインク組成物を付着させる工程である。
【0164】
前記記録媒体としては、特に限定されず、普通紙、光沢紙、多孔性フィルム、多孔性セラミックスシート、布帛(繊維製品)等のインク吸収性記録媒体が挙げられる。あるいは、プラスチック、ガラス等のインク非吸収性基材の被塗布面にインク受容層やインク吸収層を形成した記録媒体であってもよい。
【0165】
また、記録媒体は、グロス系、マット系、ダル系のいずれであってもよい。記録媒体の具体例としては、例えばコート紙、アート紙、キャストコート紙等の表面加工紙、およびインク受容層等が形成された塩化ビニルシートやPETフィルム等のプラスチックフィルムが挙げられる。
【0166】
記録媒体上にインク組成物を付着させる手段としては、特に限定されず、例えばバーコート塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、グラビアリバース塗工、リバースロール塗工、リップ塗工、ダイ塗工、ディップ塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の公知の方法を用いることができる。これらの中でも、工程(a)および工程(b)を一の装置で連続的に行えるため、インクジェット印刷を用いることが好ましい。
【0167】
インクジェット印刷に用いられる印刷ヘッドには、ノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印加し、ノズルからインクを液滴状で連続的に噴射させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏光電極に与えて記録する方式またはインク滴を偏向することなく印刷情報信号に対応して噴射させる方式(静電吸引方式);小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインク滴を噴射させる方式、インク液に圧電素子で圧力と印刷情報信号を同時に加え、インク滴を噴射・記録させる方式(ピエゾ方式);インク液を印刷情報信号にしたがって微小電極で加熱発泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式(サーマルジェット方式)等がある。本実施の形態に係る記録方法では、前記いずれの方式を用いてもよい。
【0168】
本実施の形態で用いるインクジェット記録装置としては、前記印刷ヘッド、本体、トレイ、ヘッド駆動機構、キャリッジ等を備えたものを例示できる。印刷ヘッドには、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの少なくとも4色のインクセットを収容するインクカートリッジを備えて、フルカラー印刷ができるように構成されてもよい。本実施の形態では、これらのインクカートリッジの少なくとも1つに、あるいはさらに専用のカートリッジを設けてこれに、前述のインク組成物を充填し設置する。また、それ以外のカートリッジには、通常のインク等が充填されてもよい。インクジェット記録装置は、内部に専用のコントロールボード等を備えており、印刷ヘッドのインクの吐出タイミングおよびヘッド駆動機構の走査を制御することができる。
【0169】
以上のような工程(a)を経ることで、記録媒体上に前述のインク組成物を付着させることができる。記録媒体上に付着させる態様としては、特に限定されず、記録媒体の全面ないし一部にインク組成物を付着させることができる。
【0170】
3.2.工程(b)
本工程は、工程(a)において記録媒体上に付着されたインク組成物に対して、光源から所定の発光ピーク波長を有する光を照射する工程である。
【0171】
光の照射方法としては、特に限定されず、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ灯、発光ダイオード(LED)等から発せられた光を光ガイド灯によって導くことにより行うことができる。
【0172】
また、工程(a)においてインクジェット印刷を用いる場合には、インクジェット記録装置内のキャリッジ側面に搭載された光照射装置を用いることができる。かかる光照射装置は、LEDまたはLD等の光源を搭載していることが好ましい。このような光源を用いることで、フィルター等の装備のためにインクジェット記録装置が大型化することを回避できると共に、フィルターによる吸収で光強度の低下を防止することができる。
【0173】
照射光は、特に限定されないが、好ましくは350nm以上450nm以下、より好ましくは380nm以上430nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する光であるとよい。光の照射量は、好ましくは10mJ/cm以上20,000mJ/cm以下であり、より好ましくは50mJ/cm以上15,000mJ/cm以下の範囲である。この範囲の光であれば、金属顔料の重合性反応基(R)を十分に反応させることができる。
【0174】
3.3.記録方法の具体例
以下、本実施の形態に係る記録方法を、インクジェット記録装置を用いて行う場合の具体例について説明する。図1は、本実施の形態に係る記録方法に使用可能なインクジェット記録装置の斜視図である。
【0175】
図1に示したインクジェット記録装置20は、記録媒体Pを副走査方向SSに送るモーター30と、プラテン40と、インク組成物を微少粒径にしてヘッドノズルから噴射して記録媒体Pに吐出する記録ヘッドとしての印刷ヘッド52と、該印刷ヘッド52を搭載したキャリッジ50と、キャリッジ50を主走査方向MSに移動させるキャリッジモーター60と、印刷ヘッド52によってインク組成物を吐出した記録媒体P上のインク付着面に光を照射する一対の光照射装置90A、90Bとを備えている。
【0176】
キャリッジ50は、キャリッジモーター60に駆動される牽引ベルト62によって牽引され、ガイドレール64に沿って移動する。
【0177】
図1に示した印刷ヘッド52は、3色以上のインクを噴射するフルカラー印刷用のシリアル型ヘッドであり、各色ごとに多数のヘッドノズルが備えられている。かかる印刷ヘッド52が搭載されるキャリッジ50には、前記印刷ヘッド52の他に、印刷ヘッド52に供給される黒色インクを収容したブラックインク容器としてのブラックカートリッジ54と、印刷ヘッド52に供給されるカラーインクを収容したカラーインクとしてのカラーインクカートリッジ56とが搭載されている。本実施の形態では、これらのインクカートリッジの少なくとも1つに、あるいはさらに専用のカートリッジを設けてこれに、前述のインク組成物を充填し設置する。それ以外のカートリッジには、通常のインク等が充填されてもよい。
【0178】
キャリッジ50のホームポジション(図1の右側の位置)には、停止時に印刷ヘッド52のノズル面を密閉するためのキャッピング装置80が設けられている。印刷ジョブが終了してキャリッジ50がこのキャッピング装置80の上まで到達すると、図示しない機構によってキャッピング装置80が自動的に上昇して、印刷ヘッド52のノズル面を密閉する。このキャッピングにより、ノズル内のインクの乾燥が防止される。キャリッジ50の位置決め制御は、例えば、このキャッピング装置80の位置にキャリッジ50を正確に位置決めするために行われる。
【0179】
このようなインクジェット記録装置20を使用することにより、記録媒体上に前述のインク組成物を吐出することができる。また、インクジェット記録装置20によれば、工程(a)と工程(b)とを別個の装置で行うことなく、工程(a)と工程(b)とを一の装置で連続的に行うことが可能となる。
【0180】
図2は、図1に示した光照射装置90A(図2の190Aに相当)、90B(図2の190Bに相当)の正面図である。図3は、図2のA−A矢視図である。
【0181】
図1ないし図3に示すように、光照射装置190A、190Bは、キャリッジ50の移動方向に沿った両側端にそれぞれ取り付けられている。
【0182】
図2に示すように、印刷ヘッド52の向かって左側に取り付けられた光照射装置190Aは、キャリッジ50が右方向(図2の矢印B方向)に移動する右走査時に、記録媒体P上に吐出されたインク層196に対して光照射を行う。一方、印刷ヘッド52の向かって右側に取り付けられた光照射装置190Bは、キャリッジ50が左方向(図2の矢印C方向)に移動する左走査時に、記録媒体P上に吐出されたインク層196に対して光照射を行う。
【0183】
各光照射装置190A、190Bは、キャリッジ50に取り付けられて、光源192をそれぞれ1個ずつ整列支持した筐体194と、光源192の発光および消灯を制御する(図示しない)光源制御回路とを備えている。図2および図3に示すように、光照射装置190A、190Bには、光源192がそれぞれ1個ずつ設けられているが2個以上設けてもよい。光源192としては、LEDまたはLDのいずれかを使用することが好ましい。これにより、光源として水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、その他のランプ類を使用した場合と比較して、フィルター等の装備のために光源が大型化することを回避することができる。また、フィルターによる吸収で出射された光強度が低下することがなく、光硬化型インク組成物を効率良く硬化させることができる。
【0184】
また、各光源192は、出射される波長が同じものでもよいし、異なっていてもよい。光源192としてLEDまたはLDを使用する場合、出射される光の発光ピーク波長は350〜430nm程度の範囲のいずれかとすればよい。
【0185】
以上に説明した光照射装置190A、190Bによれば、図2に示すように、印刷ヘッド52からの吐出で記録媒体P上に付着させたインク層196に対して、印刷ヘッド52近傍の記録媒体P上を照射する光源192により光192aが照射されて、金属顔料の重合性反応基(R)が反応することで記録媒体Pとの定着性を高めることができる。
【0186】
光の照度は、記録媒体P上に付着させたインク層196の厚さにより異なるため厳密には特定できず、適宜好ましい条件を選択するものではあるが、10〜2000mW/cm程度の照度で十分に重合反応を進行させることができる。
【0187】
なお、インクジェット記録装置20の構成は、前述した印刷ヘッド、キャリッジおよび光源等の構成に限定されるものではなく、本実施の形態に係る記録方法の趣旨に基づいて種々の形態を採用することができる。
【0188】
4.実施例
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0189】
4.1.金属顔料の作製
4.1.1.平板状アルミニウム粒子の作製
膜厚100μmのPETフィルム上に、セルロースアセテートブチレート(ブチル化率35〜39%、関東化学株式会社製)3.0質量%およびジエチレングリコールジエチルエーテル(日本乳化剤株式会社製)97質量%からなる樹脂層塗工液をバーコート法によって均一に塗布し、60℃、10分間乾燥することで、PETフィルム上に樹脂層薄膜を形成した。次いで、真空蒸着装置(「VE−1010型真空蒸着装置」、真空デバイス社製)を用いて、上記の樹脂層上に平均膜厚20nmのアルミニウム蒸着層を形成した。
【0190】
次いで、上記方法にて形成した積層体を、ジエチレングリコールジエチルエーテル中、VS−150超音波分散機(アズワン社製)を用いて、剥離・微細化・分散処理を同時に行い、積算の超音波分散処理時間が12時間であるアルミニウム粒子分散液を作製した。
【0191】
得られたアルミニウム粒子分散液を、開き目5μmのSUSメッシュフィルターにてろ過処理を行い、粗大粒子を除去した。次いで、ろ液を丸底フラスコに入れ、ロータリーエバポレーターを用いてジエチレングリコールジエチルエーテルを留去した。これにより、アルミニウム粒子分散液を濃縮し、その後、そのアルミニウム粒子分散液の濃度調整を行うことで、5質量%の平板状アルミニウム粒子分散液を得た。
【0192】
4.1.2.平板状アルミニウム粒子の表面修飾
まず、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM−503」、信越化学工業株式会社製)26.93gに対して、1質量%の濃度となるように水を添加して、40℃で2時間撹拌することにより表面処理剤を調製した。
【0193】
次いで、得られた平板状アルミニウム粒子分散液100gをビーカーへ投入し、前記表面処理剤の全量を添加して、3日間室温で撹拌することにより加水分解反応させた。このようにして、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが平板状アルミニウム粒子の表面に化学結合された平板状アルミニウム顔料を得た。
【0194】
4.1.3.その他の金属顔料
その他の金属顔料は、以下に示す金属粒子を用いたこと以外は、前述した方法と同様に表面修飾することにより目的とする金属顔料を得た。なお、比較例13〜24では、表面修飾を行わずに金属粒子をそのまま用いた。
・球状アルミニウム粒子(商品名「WXM630」、東洋アルミニウム株式会社製、平均粒径8μm)
・銀粒子(前記実施形態の「1.1.1.銀粒子の製造方法(1)第1の手法」に準じて以下のようにして調製した。まず、ポリビニルピロリドンをプロピレングリコールに溶解して第1溶液を得た。次に、銀前駆体である硝酸銀を、プロピレングリコールに溶解して第2溶液を得た。次に、第1溶液と第2溶液とを120℃で90分間、混合して銀前駆体を還元させ、生成した銀粒子の表面にポリビニルピロリドンを吸着させた。そして形成された銀粒子(銀コロイド粒子)を遠心分離によって分離し、分離した銀粒子を水に固形分濃度が20質量%となるように分散させた。得られた銀粒子の平均粒径は、35nmであった。)
・金粒子(商品名「金色金属箔粉 Gold#500」、尾池工業株式会社製、500メッシュ)
【0195】
4.2.インク組成物の調製
表1〜表3に示す配合量で、金属顔料、保湿剤、界面活性剤、pH調整剤、樹脂、重合開始剤およびイオン交換水を混合撹拌した。金属顔料の原料が平板状アルミニウム粒子または銀粒子のインク組成物については、孔径5μmの金属フィルターにてろ過し、真空ポンプを用いて脱気処理をした。このようにして、実施例1〜18および比較例1〜24の各インク組成物を得た。なお、表1〜表3に記載されている濃度の単位は質量%であり、金属顔料の欄については固形分換算濃度である。
【0196】
表1〜表3に示した各成分は、以下の通りである。
・グリセリン(商品名「DGグリセリン」、アデカクリーンエイド株式会社製)
・トリメチロールプロパン(三菱ガス化学株式会社製)
・1,2−ヘキサンジオール(三菱ガス化学株式会社製)
・2−ピロリドン(関東化学株式会社製)
・オルフィン(R)E1010(日信化学株式会社製、アセチレングリコール系界面活性剤)
・BYK−UV3500(ビックケミー・ジャパン株式会社製、ポリシロキサン系界面活性剤)
・トリエタノールアミン(ナカライテスク株式会社製)
・ウレタン樹脂(商品名「UA−7200」、新中村工業株式会社製)
・アクリル樹脂(商品名「アロンA−104」、東亜合成株式会社製)
・Irgacure819DW(チバ・ジャパン株式会社製、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドの水分散体)
・Irgacure819(チバ・ジャパン株式会社製、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)
【0197】
4.3.評価用試料の作製
金属顔料の原料が平板状アルミニウム粒子または銀粒子のインク組成物を用いた場合には、インクジェットプリンター(製品名「PX−G930」、セイコーエプソン株式会社製)を用いて印刷を行った。まず、インクジェットプリンターの専用カートリッジのブラックインク室にインク組成物を充填した。こうして作製されたインクカートリッジをインクジェットプリンターに装着した。ブラック以外のインクカートリッジはそれぞれ市販のものを装着した。これは、ダミーとして用いるもので、本実施例の評価では用いないので効果には関与しない。
【0198】
次いで、写真用紙<光沢>(セイコーエプソン株式会社より入手)、PETフィルム(商品名「ルミラー」、東レ株式会社製)、普通紙のいずれか1種の記録媒体に対して、1440×720dpiの解像度で印刷を行った。印刷パターンは、100%dutyベタパターンとした。なお、「duty」とは、下式(5)で算出される値である。
duty(%)=実印字ドット数/(縦解像度×横解像度)×100 …(5)
(式中、「実印字ドット数」は単位面積当たりの実印字ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。100%dutyとは、画素に対する単色の最大インク質量を意味する。)
【0199】
また、金属顔料の原料が球状アルミニウム粒子または金粒子のインク組成物を用いた場合には、バーコーターNo.4(インク塗布量5〜6g/m)を用いて前述した記録媒体のいずれか1種に塗布した。
【0200】
その後、照射強度17mW/cmの紫外線照射装置を用いて、365nmの発光ピーク波長を有する紫外線を各試料に10分間照射した。なお、比較例1〜12では、この光照射工程を省いた。以上のようにして、評価用試料を作製した。
【0201】
4.4.評価方法
4.4.1.光沢度の評価
得られた各評価用試料について、光沢計(型式「MULTI GLOSS 268型」、コニカミノルタ社製)を用いて入射角60°の光沢度を測定した。表1〜表3に、各評価用試料の入射角60°における光沢度の評価結果を示す。なお、光沢度の評価基準は、以下の通りである。
A:入射角60°における光沢度の最大値が300以上
B:入射角60°における光沢度の最大値が100以上300未満
C:入射角60°における光沢度の最大値が100未満
【0202】
4.4.2.耐擦性の評価
得られた各評価用試料について、試験担当者の「指および爪による擦り試験」を行うことにより耐擦性を判定した。この指および爪による擦り試験は、指および爪で印刷面を2〜3回擦る試験方法である。表1〜表3に、各評価用試料の指および爪による擦り試験の評価結果を示す。なお、耐擦性の評価基準は、以下の通りである。
A:指や爪で強く擦っても剥がれない。
B:指や爪で擦ると剥がれる。
C:定着しない。
【0203】
【表1】

【0204】
【表2】

【0205】
【表3】

【0206】
4.5.評価結果
表2に示す比較例1〜12によれば、重合性反応基を導入した金属顔料を含有するインク組成物を用いても光照射工程を経なければ重合反応は進行せず、写真用紙、PETフィルム、普通紙のいずれの記録媒体に対しても金属顔料が定着しないことが判明した。
【0207】
また、表3に示す比較例13〜24によれば、重合性反応基を導入しなかった金属顔料を含有するインク組成物を用いても重合反応は進行せず、写真用紙、PETフィルム、普通紙のいずれの記録媒体に対しても金属顔料が定着しないことが判明した。
【0208】
これに対して、表1に示す実施例1〜18によれば、重合性反応基を導入した金属顔料を含有するインク組成物を用い、さらに光照射工程を経ることで、写真用紙、PETフィルム、普通紙のいずれの記録媒体に対しても金属顔料の定着性が向上することが判明した。
【0209】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0210】
20…インクジェット記録装置、30…モーター、40…プラテン、50…キャリッジ、52…印刷ヘッド(記録ヘッド)、54…ブラックインクカートリッジ、56…カラーインクカートリッジ、60…キャリッジモーター、62…牽引ベルト、64…ガイドレール、80…キャッピング装置、90A(190A)、90B(190B)…光照射装置、192…光源、192a…光、194…筐体、196…インク層、P…記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子に、下記一般式(1)で示される化合物を化学結合させた構造を有することを特徴とする、金属顔料。
【化4】

(式(1)中、pは1〜3の整数を表し、qはp+q=3の関係を満たす整数を表し、rは2〜10の整数を表す。RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、アクリル基、アクリロイル基またはメタアクリロイル基を表す。)
【請求項2】
前記金属粒子は、金、銀、白金およびアルミニウムから選択される1種を含む、請求項1に記載の金属顔料。
【請求項3】
前記金属粒子は、アルミニウムを含み、
その形状が、0.5μm以上3μm以下の50%平均粒子径を有し、且つ、5nm以上30nm以下の平均厚みを有する平板状粒子である、請求項2に記載の金属顔料。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の金属顔料と、水または有機溶剤と、を少なくとも含有することを特徴とする、インク組成物。
【請求項5】
さらに、1箇所以上の不飽和結合を有する樹脂を含有することを特徴とする、請求項4に記載のインク組成物。
【請求項6】
前記樹脂は、ウレタン系オリゴマーおよびアクリル樹脂から選択される少なくとも1種を含有する、請求項5に記載のインク組成物。
【請求項7】
さらに、重合開始剤を含有する、請求項4ないし請求項6のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項8】
記録媒体上に請求項4ないし請求項7のいずれか一項に記載のインク組成物を付着させる工程(a)と、
前記記録媒体上に付着されたインク組成物に対して、光源から所定の発光ピーク波長を有する光を照射する工程(b)と、
を含む、記録方法。
【請求項9】
前記工程(a)において、前記記録媒体上に前記インク組成物を付着させる手段が、インクジェット印刷である、請求項8に記載の記録方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−1581(P2012−1581A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135802(P2010−135802)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】