説明

金属類回収装置

【課題】被処理液から、蛋白質を利用することによって、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)を吸着・分離回収する装置を提供する。
【解決手段】被処理液をフィルター41に通すことによって、被処理液から所定の金属類を除去して回収する、金属類回収装置10であって、フィルター41の構成素材が、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)、を吸着する蛋白質を、含有している。蛋白質としては鉄結合蛋白質として知られている、フェリチン又はフェリチンの部分分解物であるヘモジデリンなどが選択できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理液から、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)を、回収可能な、金属類回収装置、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被処理液から貴金属を回収して再利用に供することは、従来から、多く行われている。この回収には、化学的処理によって貴金属を凝集させる方法が、一般的に利用されているが、蛋白質の、貴金属を吸着する性質、を利用する方法も、提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−185552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような回収方法では、イオン化傾向が比較的小さい貴金属を回収することはできるが、その他の金属を十分に回収することはできなかった。
【0005】
一方、本発明者は、アスベストに起因すると思われる胸膜中皮腫の研究を行う中で、ラジウムなどの微量元素が沈着する現象を発見し、この沈着が、鉄結合蛋白質として知られている、フェリチン又はフェリチンの部分分解物であるヘモジデリンなどによって、引き起こされていることを、知見した。
【0006】
そこで、本発明者は、これらの蛋白質を利用することによって、貴金属以外の金属類も高効率で回収できることに思い至り、本発明を成すに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被処理液をフィルターに通すことによって、被処理液から所定の金属類を除去して回収する、金属類回収装置であって、フィルターの構成素材が、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)、を吸着する蛋白質を、含有している、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、被処理液がフィルターを通る際に、被処理液中の、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)が、蛋白質に吸着される。蛋白質に吸着された、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)は、公知の化学処理によって、蛋白質から分離できるので、本発明によれば、被処理液から、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)を、回収可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例の金属類回収装置の断面略図である。
【図2】別の例のフィルターを備えたフィルター板の一部破断斜視図である。
【図3】本発明の別の実施例の金属類回収装置の断面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の金属類回収装置は、被処理液をフィルターに通すことによって、被処理液から所定の金属類を除去して回収するものであり、フィルターの構成素材が、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)、を吸着する蛋白質を、含有している。
【0011】
上記構成素材としては、鉄を含有している繊維体、すなわち鉄含有繊維体を、使用できる。鉄含有繊維体は、鉄からなる繊維体又は鉄を担持している繊維体である。鉄からなる繊維体は、鉄線を任意の長さに切断することによって形成できる。鉄を担持している繊維体は、人工繊維又は天然繊維の、表面に、全面的に又部分的に、鉄層を形成することによって、形成できる。この鉄層は、スパッタリング、真空蒸着、電気メッキ、無電解メッキなどの、公知の方法によって、形成できる。
【0012】
蛋白質としては、フェリチン、及び/又は、フェリチンの部分分解物であるヘモジデリンを、使用できる。この蛋白質は、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)を吸着する性質を、有している。この蛋白質は、鉄含有繊維体の鉄に結合している。すなわち、上記構成素材である鉄含有繊維体は、蛋白質を含有している。蛋白質を鉄含有繊維体の鉄に結合させるためには、蛋白質の水溶液に鉄含有繊維体を浸漬させればよい。
【0013】
本発明の金属類回収装置においては、被処理液がフィルターを通る際に、被処理液中の、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)が、蛋白質に吸着される。蛋白質に吸着された、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)は、公知の化学処理によって、蛋白質から分離できる。したがって、本発明の金属類回収装置によれば、被処理液から、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)を、回収可能である。
【実施例】
【0014】
図1は、本実施例の金属類回収装置の断面略図である。この装置10は、被処理液を貯留する第1タンク1と、処理済液を貯留する第2タンク2と、両タンク1、2を連結する供給管3と、供給管3に介設された濾過部4と、濾過部4より上流側にて供給管3に介設された供給ポンプ5と、を備えている。供給ポンプ5は、軸流ポンプである。
【0015】
被処理液は、例えば、イオン化された金属又は微粒子状の金属を含有している、液体である。
【0016】
第1タンク1は、被処理液を貯留可能であれば、どのような形態を有していてもよい。
【0017】
被処理液は、適宜の濾過装置を用いて、スラッジや粒径の大きな懸濁粒子などを除去した後に、第1タンク1に貯留されるのが、好ましい。これによれば、第1タンク1内に不要な沈殿物が生じるのを、防止でき、また、スラッジや懸濁粒子などが濾取されることによって濾過部4の機能が低下するのを、防止できる。
【0018】
濾過部4は、フィルター41と、フィルター41を着脱可能に収容しているハウジング42と、からなっている。フィルター41は、不織布の形態を有しており、ハウジング41内に充填されている。フィルター41の構成素材は、鉄含有繊維体であり、この鉄含有繊維体は、数mmから数cm程度に切断された、数百μm程度の太さの、鉄線、からなる、鉄繊維体である。フィルター41は、鉄繊維体と、ポリエステルなどの熱可塑性合成樹脂からなる樹脂繊維体とを、公知の方法によって絡み合わせて不織布を作製し、この不織布を、フェリチン及び/又はヘモジデリンを含む水溶液に、浸漬させて、鉄繊維体の表面に蛋白質層を形成することによって、作製される。
【0019】
上記構成の金属類回収装置10においては、供給ポンプ5が作動すると、第1タンク1内の被処理液が所定の圧力で濾過部4へ供給される。濾過部4へ供給された被処理液は、フィルター41を通過する。その際、被処理液中の、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)が、フィルター41の蛋白質に吸着される。そして、フィルター41を通過した被処理液は、処理済液として、第2タンク2に貯留されていく。
【0020】
ところで、蛋白質に吸着された、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)は、公知の化学処理によって、蛋白質から分離できる。したがって、上記構成の金属類回収装置10によれば、被処理液から、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)を、回収可能である。
【0021】
なお、上記構成の金属類回収装置10は、次のような変形構成を採用できる。
(1)鉄含有繊維体としては、ポリエステル、ポリアミド、アクリルなどの熱可塑性合成樹脂からなる樹脂繊維体の、表面に、公知の方法によって、鉄層が形成されたものを、用いてもよい。
【0022】
(2)フィルター41の形態は、織布、成形体、又は網体でもよい。
【0023】
(2-1)織布は、鉄含有繊維体を織って形成してもよく、又は、鉄含有繊維体を撚り合わせて撚糸を作製し、その撚糸を織って形成してもよい。なお、撚糸は、鉄含有繊維体と「他の繊維体」とを撚り合わせて作製してもよい。その場合において、「他の繊維体」の材料は、柔軟性、肌触り、吸湿性などを考慮して選択する。また、織布の形態を有するフィルターを作製する場合、鉄含有繊維体には、織る前に蛋白質が結合されてもよく、又は、織った後に蛋白質が結合されてもよい。織った後に蛋白質を結合させるためには、蛋白質の水溶液に織布を浸漬させればよい。
【0024】
(2-2)成形体は、数mmから数cmの長さに切断された鉄含有繊維体を、公知の成形方法によって任意の形態に成形することにより、例えば圧縮成形方法によって円柱状に成形することにより、形成できる。なお、成形体は、鉄含有繊維体と「他の繊維体」とを混合して形成してもよい。その場合において、「他の繊維体」の材料は、柔軟性、肌触り、吸湿性などを考慮して選択する。また、成形体の形態を有するフィルターを作製する場合、鉄含有繊維体には、成形前に蛋白質が結合されてもよく、又は、成形後に蛋白質が結合されてもよい。成形後に蛋白質を結合させるためには、蛋白質の水溶液に成形体を浸漬させればよい。
【0025】
(2-3)網体は、鉄含有繊維体を網状に編むことにより、形成できる。なお、網体は、鉄含有繊維体と「他の繊維体」とを網状に編んで形成してもよい。その場合において、「他の繊維体」の材料は、柔軟性、肌触り、吸湿性などを考慮して選択する。また、網体の形態を有するフィルターを作製する場合、鉄含有繊維体には、編む前に蛋白質が結合されてもよく、又は、編んだ後に蛋白質が結合されてもよい。編んだ後に蛋白質を結合させるためには、蛋白質の水溶液に網体を浸漬させればよい。
【0026】
例えば、図2に示されるような、網体の形態のフィルター80を備えたフィルター板8を、図3に示されるように、供給管3に介設してもよい。フィルター板8は、供給管3を遮断するように設けられている。フィルター板8は、フィルター80を2枚の不織布81、82によって両面から挟んで構成されている。図3の金属類回収装置10においても、濾過部4へ供給された被処理液が、フィルター80を通過する際に、被処理液中の、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)が、フィルター80の蛋白質に吸着される。したがって、図3の金属類回収装置10によっても、被処理液から、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)を、回収可能である。
【0027】
(3)鉄含有繊維体の代わりに、含鉄角閃石系のアスベスト、例えば、アモサイトやクロシドライトを用いることが可能である。しかしながら、環境保護の観点から、アスベストの使用は避けるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の金属類回収装置は、被処理液から、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)を、回収可能であるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0029】
10 金属類回収装置 41、80 フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液をフィルターに通すことによって、被処理液から所定の金属類を除去して回収する、金属類回収装置であって、
フィルターの構成素材が、鉄、ラジウム、又は重金属類(鉄を除く)、を吸着する蛋白質を、含有している、ことを特徴とする金属類回収装置。
【請求項2】
上記構成素材は、鉄含有繊維体であり、
上記蛋白質は、鉄含有繊維体の鉄に結合している、請求項1記載の金属類回収装置。
【請求項3】
鉄含有繊維体は、鉄からなる繊維体又は鉄を担持している繊維体である、請求項2記載の金属類回収装置。
【請求項4】
上記蛋白質は、フェリチン又はヘモジデリンである、請求項2記載の金属類回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−25116(P2011−25116A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171183(P2009−171183)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】