説明

金箔貼付品からの金箔の剥離方法及び金の回収方法

【課題】廃棄される金箔貼付品(表面に金箔を貼り付けた祭祀用具や置物など)から金箔を剥離して金を回収する簡単で経済的な方法を提供する。
【解決手段】金箔貼付品5の表面から金箔を水に分散した小さな金箔片にして剥離する第1工程と、水に分散した金箔を分離する第2工程とを備えている。第1工程では、金箔貼付品5の金箔貼付面に水溶性粉体と高圧水とを噴射して金箔を微細片にして剥離する。剥離した金箔片は、噴射された水に分散した状態で流下する。第2工程は、流下した水から金箔片を分離する工程である。この工程では、フィルター8が用いられ、水とこれに溶融した粉体はフィルター8を通過し、水に分散している金箔片は、フィルター8に捕捉される。遠心分離機などで金箔片を分離する工程としてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、廃棄される金箔貼付品(表面に金箔を貼り付けた祭祀用具や置物など)から金箔を剥離して金を回収する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
わが国では神社や仏閣の調度品、仏壇や神棚などの祭祀用具、各種の置物、漆器の文箱など、種々の物品の装飾に金箔が古くから用いられている。金は高価であり、かつ貴重な資源であるから、これらの金箔貼付品が廃棄されるときは、表面に貼付した金箔を剥離して回収し、金地金に再生するのが望ましい。しかし、金箔は非常に薄く、剥離する手間に比較して回収される金の量が微量であるため、不要になった金箔貼付品は、金箔を貼付したまま廃棄されているのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は、金が貴重が資源であることに鑑み、廃棄される金箔貼付品から金(金箔)を経済的に回収して、金地金として再生することができる技術手段を得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明の金箔貼付品からの金の回収方法は、金箔貼付品5の表面から金箔を剥離する手段に特徴があり、金箔貼付品5の表面から金箔を水に分散した小さな金箔片にして剥離する第1工程と、水に分散した金箔を分離する第2工程とを備えている。第1工程では、金箔貼付品5の金箔貼付面に水溶性粉体と高圧水とを噴射して、粉体の粒子が金箔貼付面に衝突するときの衝撃で金箔を微細片にして剥離する。水溶性粉体と共に噴射される高圧水は、水溶性粉体が高速で金箔貼付面に衝突するのを助け、また剥離した金箔片が空中に飛散するのを防いでいる。剥離した金箔片は、噴射された水に分散した状態で流下する。
【0005】
第2工程は、流下した水から金箔片を分離する工程である。この工程では、フィルター8が用いられ、水とこれに溶融した粉体はフィルター8を通過し、水に分散している金箔片は、フィルター8に捕捉されるので、剥離した微細な金箔を水及び粉体から分離することができる。この第2工程は、遠心分離機などで金箔片を分離する工程としてもよい。分離した金箔片には接着剤が付着しているので、精製してこれらの不純物を除去し、金地金を得る。
【0006】
水溶性粉体としては、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ソーダ、重曹)の粉体を用いるのが好適である。比較的比重が高くて剥離機能に優れ、安価でもある。水溶性粉体と高圧水は、1本のノズルから混合状態で噴射されるが、水溶性粉体を圧縮空気でノズルまで搬送して、当該ノズルで高圧水と共に水溶性粉体を含んだ圧縮空気を噴射するようにすれば、ノズルまでの水溶性粉体の搬送及び高速での水溶性粉体の噴射が容易に可能になる。
【0007】
本願の請求項1に係る発明は、本願の金箔貼付品からの金の回収方法の第1工程となる金箔の剥離方法の発明であり、金箔貼付面に水溶性粉体を混入した高圧空気と高圧水とを混合して噴射することを特徴とする金箔貼付品からの金箔の剥離方法である。
【0008】
本願の請求項2の発明に係る金箔貼付品からの金の回収方法は、金箔貼付面に水溶性粉体を混入した高圧空気と高圧水とを混合して噴射し、当該金箔貼付面から流下した水をフィルターに通し、当該フィルターに捕捉された剥離金箔片を収集することを特徴とする、金箔貼付品からの金の回収方法である。
【0009】
上記各方法における水溶性粉体としては、上記及び請求項3、4に記載のように、質量、安定性、無毒性、経済性などの点で、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ソーダ、重曹)の粉体が適している。
【発明の効果】
【0010】
本願発明者らが行った実験によれば、水溶性粉体(重曹を用いた。)を圧縮空気でノズルへ搬送し、同時に当該ノズルに高圧水を供給して、金箔貼付面に向けて噴射したところ、当該金箔貼付面の金箔を容易かつ短時間で除去することができた。除去された金箔は、噴射された水に分散して流下する。一方、水と共に噴射された水溶性粉体は、水に溶融する。従って、金箔貼付面から流下した水をフィルターで濾過することにより、当該水中に含まれる金箔を捕捉して収集することができる。
【0011】
発明者らの実験においては重曹を用いたが、ある程度比重があり、かつ水に容易に溶融する物質の粉体を用いることで、同様な効果が得られると考えられる。実験に用いた重曹の比重は2.2、モースコード2.5、粒度は60〜110μm及び(150〜250μm)である。大きめの粒度のものを用いる方が剥離した後の金箔片の大きさが大きくなり、第2工程での水からの金箔片の分離がより容易になると考えられる。噴射空気の圧力は0.3〜0.5メガパスカル、噴射水の圧力は5〜10メガパスカル程度である。
【0012】
この発明の方法によれば、金箔貼付面から剥離した金箔片を飛散させないで水に分散した状態で回収することができるので、屋外で使用することができ、大型の金箔貼付品からの金箔の剥離が容易にできる。また、粉体と水と空気とを噴射することにより、金箔を剥離するので、仏壇や置物など細かく入り組んだ表面に貼付された金箔も簡単に剥離して回収することが可能である。また、この発明の方法を実施するのに必要な装置である粉体と空気と水とを混合して噴射する装置及びフィルターや遠心分離機などの分離装置も比較的安価であり、金箔の剥離と回収も短時間で行うことができるので、各種の金箔貼付品からの金箔の回収を経済的に行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、この発明の好ましい実施形態の一例について説明する。図1は、この発明の方法を模式的に示した図である。図中、1は空気と水と粉体とを噴射する装置(以下「混合噴射装置」という)、2は噴射ノズル、3はエアホース、4は水ホース、5は金箔貼付品、6は噴射ノズル2から噴射された粉体と水(粉体は水に捕捉されている)の飛散を防止するカバー、7は金箔貼付品5やカバー6から流下する水の水受け、8はフィルター、9は排水容器である。
【0014】
混合噴射装置1は、コンプレッサ11、空気流路12、水溶性粉体のホッパ13、このホッパ内の粉体を所定量ずつ粉体供給管14に送り出す定量供給装置(スクリュコンベア)15、水タンク16、水タンク16への給水口17、高圧水ポンプ18、水タンク16と高圧水ポンプ18とを連結する吸入水路19及び高圧水ポンプ16とホース接続口21を連結する吐出水路22とを有している。図の給水口17は水道の蛇口である。粉体供給管14は、その下端が空気流路12に開口している。エアホース接続口23に接続されたエアホース3は、ノズル2の後端(噴射口24の反対側の端部)に接続され、粉体を含んだ空気は、ノズル2内を直線的に通過して噴射口24から噴射される。水ホース4の水は、ノズルの噴射口24の周縁から供給され、噴射空気と混合して霧状に噴出する。
【0015】
実験に用いた混合噴射装置1のコンプレッサ11の吐出圧は最大0.49メガパスカル、使用空気量は最大2.5Nm3/分、高圧水ポンプ18の吐出圧力は最大13.7メガパスカル、吐出水量は最大10リットル/分であり、噴射ノズル2のノズル内径は8mmである。
【0016】
上記装置を用い、粉体ホッパ13に炭酸水素ナトリウムの粉体を入れ、コンプレッサ11、高圧水ポンプ18及び定量供給装置15を運転してノズル2から噴射する混合ジェット25を金箔貼付品5の金箔貼付面に噴射する。ノズル2を移動するか、又は金箔貼付品5を移動及び回転させて混合ジェット25を金箔貼付面全体に当るようにする。混合ジェット25が噴射された面からは、金箔が速やかに除去されて、除去された金箔は、金箔貼付面から流下する水に分散して水受け7へと流れ落ちる。流れ落ちた水がフィルター8を通過するときに、当該水に分散した金箔はフィルターで捕捉されて分離し、水及びこれに溶解した炭酸水素ナトリウムは排水容器9へと流下する。
【0017】
金箔貼付品5から剥離した金箔の大きさは一定ではないので、フィルター8はできるだけ細かい目のものを用いるのが好ましい。しかし、目の細かいフィルターを用いると、水の通過抵抗が大きくなるので、大きな濾過面積を必要とし、またフィルター8に捕捉された金箔の回収を頻繁に行う必要がある。好ましくは、回転ベルト式や回転円筒式のフィルターを用いて、フィルターに捕捉された金箔を連続的にフィルター面から剥離して回収するようにするのがよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の方法を模式的に示したブロック図
【符号の説明】
【0019】
1 混合噴射装置
2 噴射ノズル
5 金箔貼付品
8 フィルター
11 コンプレッサ
13 水溶性粉体のホッパ
15 定量供給装置
18 高圧水ポンプ
25 混合ジェット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金箔貼付面に水溶性粉体を混入した高圧空気と高圧水とを混合して噴射することを特徴とする、金箔貼付品からの金箔の剥離方法。
【請求項2】
金箔貼付面に水溶性粉体を混入した高圧空気と高圧水とを混合して噴射し、当該金箔貼付面から流下した水をフィルターに通し、当該フィルターに捕捉された剥離金箔片を収集することを特徴とする、金箔貼付品からの金の回収方法。
【請求項3】
水溶性粉体が炭酸水素ナトリウム(重炭酸ソーダ、重曹)の粉体である、請求項1記載の金箔の剥離方法。
【請求項4】
水溶性粉体が炭酸水素ナトリウム(重炭酸ソーダ、重曹)の粉体である、請求項2記載の金の回収方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−209442(P2009−209442A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56508(P2008−56508)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(305052827)株式会社今井金箔 (1)
【Fターム(参考)】