説明

金銭取扱い装置の操作パネル

【課題】人感センサの正面位置以外の検知範囲内に停止している人間、或いは人感センサの正面を遅い速度で移動する通行人を利用者であると誤検知する不具合を、横方向検知範囲が広い市販の人感センサを用いながら効果的に防止する。
【解決手段】操作パネル10前面に少なくとも表示部11、操作部12、13、14、15、及び人感センサ20を備え、該人感センサからの検知信号により該操作パネル前方に所定時間以上停止する物体を利用者であると判定する判定部を有し、人感センサ周囲の操作パネル前面部位に、人感センサの横方向検知範囲を極限するための突出物を配置し、突出物は、表示部、或いは操作部を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動販売機、両替機、金銭払出装置、精算機等の金銭取扱い装置の改良に関し、特に表示部、操作スイッチ等を備えた操作パネルに配置される人感センサによる検知精度を高めることができる操作パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
自動券売機等の自動販売機、両替機、金銭払出装置、精算機等の金銭取扱い装置は、筐体前面に設けた前面パネルが操作パネルとなっており、この操作パネル面上に表示部、操作スイッチ、金銭投入部、及び物品提供部を備えている。表示部は提供する物品(券類、商品、サービス)のメニュー、価格等の情報を表示する手段であり、操作スイッチは利用者が購入を希望する物品を選択する手段であり、金銭投入部は硬貨投入部、紙幣投入部からなり、物品提供部は利用者との間で成立した取引内容に見合った物品を排出する手段である。
ところで、自動券売機においては、発券部から発券された券を利用者が取り忘れて立ち去ることがあるが、これに対処するために操作パネル面に人間の所在や動きを検知する人感センサ(人間検知センサ)を配置し、利用者が立ち去ったことが検知された場合には保留状態にしていた券を券売機内部に回収するようにしている(特許文献1)。
また、装置前面に利用者が不在の状態が所定時間以上継続していることが人感センサにより検知された場合に装置を省エネモードに切り替えたり、或いは表示部を物品選択画面からに広告画面に切り替える待機モードを備えたものもある。人感センサが新たに利用者を検知した場合に、前者では電源を投入し、後者では表示部を物品選択画面に戻す制御が行われる。
人感センサとしては、赤外線、超音波、可視光を利用したものが知られている、金銭取扱い装置には赤外線式が一般に利用されている。赤外線式の人感センサは人体が発する赤外線を感知して検知信号を出力する素子を備えている。
【0003】
ところで、このような人感センサを備えた自動券売機等の金銭取扱い装置を人通りの多い箇所に設置すると、人感センサは検知範囲内に進入する人間を全て検知するため、制御手段は通行人なのか利用者なのかを正確に判別できずに、待機モードにあった装置を稼動させてしまうことがある。これに対して人感センサによる人体検知時間を所定に設定し、人体検知時間が継続的に設定時間を超えた場合のみ利用者と判定することも行われている。しかし、人感センサの検知範囲内を遅い速度で通過する人や、人感センサの正面位置よりも横方向にずれた位置で立ち止まっている人を利用者であると誤判定する可能性があり、これら場合には、それまで省エネ状態にあった装置の電源を起動したり、表示部を物品選択画面に切り替えるという無駄な制御が行われることとなる。
なお、人感センサの検知範囲、特に横方向の検知範囲は、人感センサの機種、使用目的に応じてその仕様が定められているが、市販の人感センサを自動販売機用に適用した場合には上記の如き不具合を解消することができなかった。人感センサのメーカーに使用目的、使用対象機器の特殊性に応じて人感センサの横方向検知範囲を広狭調整してもらうことも可能ではあるが、特注品となるためコストアップを招くことが明かであり、自動販売機等のメーカーとしては汎用性を有した低廉な人感センサを用いつつ、取付対象機器の特殊性に応じて任意に横方向検知範囲を調整できれば理想的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−270030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように従来の金銭取扱い装置にあっては、表示部、操作スイッチ等を備えた操作パネル面に市販の人感センサを配置して利用者による物品の取り忘れ対策、節電対策に利用しているが、市販の人感センサは横方向検知範囲が広く、その正面位置に所定時間以上停止している利用者以外の人間をも利用者として検知してしまうため、人感センサによる人体検知情報に基づいて単なる通行人と利用者とを正確に区別することは困難であった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、人感センサの正面位置以外の検知範囲内に停止している人間、或いは人感センサの正面を遅い速度で移動する通行人を利用者であると誤検知する不具合を、横方向検知範囲が広い市販の人感センサを用いながら効果的に防止することができる金銭取扱い装置の操作パネルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係る金銭取扱い装置は、操作パネル前面に少なくとも表示部、操作部、及び人感センサを備え、該人感センサからの検知信号により該操作パネル前方に所定時間以上停止する物体を利用者であると判定する判定部を有した金銭取扱い装置であって、前記人感センサ周囲の前記操作パネル前面部位に、該人感センサの横方向検知範囲を極限するための突出物を配置し、前記突出物は、表示部、或いは操作部を構成していることを特徴とする。
請求項2の発明は、前記突出物は、金銭投入部、及び物品提供部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上のように本発明によれば、人感センサの正面位置以外の検知範囲内に停止している人間、或いは人感センサの正面を遅い速度で移動する通行人を利用者であると誤検知する不具合を、横方向検知範囲が広い市販の人感センサを用いながら効果的に防止することができる。
即ち、横方向検知範囲が広い市販の人感センサによる物体の検知時間に制限を設けて、物体を継続的に検知する時間が所定の時間に満たない場合に利用者ではないと判断するように制御する場合に、人感センサの横方向検知範囲を金銭取扱い装置の操作パネルに必然的に設置される部品を利用して制限するようにしたので、操作パネルに本来不必要とされる不自然な検知範囲制限用の突出物を設けることによるデザイン上の違和感、操作機能の低下、構成の複雑化、コストアップといった不具合を招くことがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る操作パネルを備えた金銭取扱い装置の一例としての自動券売機の構成を示す正面側斜視図、及び側面図である。
【図2】(a)(b)及び(c)はこの自動券売機の前扉を縦断面で示す側面図、前扉の側部縦断面図(図1(a)のA−A断面図)、及び図1(a)のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る操作パネルを備えた金銭取扱い装置の一例としての自動券売機の構成を示す正面側斜視図、及び側面図であり、図2(a)(b)及び(c)は)はこの自動券売機の前扉を縦断面で示す側面図、前扉の側部縦断面図(図1(a)のA−A断面図)、及び図1(a)のB−B断面図である。
本発明に係る操作パネルを備えた金銭取扱い装置1の特徴的な構成は、次の通りである。
即ち、金銭取扱い装置の一例としての自動券売機1は、操作パネル10の前面に少なくとも表示部、操作スイッチ、金銭投入部(操作部)、人感センサ20等を備え、人感センサからの検知信号により操作パネル前方に所定時間以上停止する物体を装置の利用者であると判定する図示しない判定部(制御手段)を有する。そして、人感センサ周囲の操作パネル前面に、人感センサの検知面積の外周縁に沿って人感センサの検知面積(横方向検知範囲)を極限するための突出物を配置した構成を備えている。
【0010】
自動券売機1は、前面と背面に開口部3、4を夫々有した筐体本体2と、前面開口部及び背面開口部を夫々開閉する前扉5及び後扉6と、筐体本体内に配置された図示しない内部機器と、を備えている。
前扉5の前面パネルは操作パネル10となっており、操作パネル10の前面10aにはタッチパネルLCD(表示部、及び操作スイッチ)11、硬貨投入部(金銭投入部=操作部)12、紙幣挿入部(金銭投入部=操作部)13及び紙幣取出し口(操作部)14、券、及び釣銭(硬貨)の物品取出し部(操作部)15が配置されている。
硬貨投入部(操作部)12と物品取出し部(操作部)15は、操作パネル10の前面10aよりも大きく前方に突出した状態とすることにより、硬貨投入時の操作性と、券等を取り出す際の操作性を高めている。
これら突出物としての硬貨投入部12と取出し部15との谷間に位置する相対的にへこんだ前面10bには、装置前方における人間の有無を検知する人感センサ20が配置されている。このため、人感センサ20の横方向検知範囲は左右に配置された突出物である硬貨投入部12と物品取出し部15によって制限された状態となっている。
【0011】
人感センサ20としては、赤外線、超音波、可視光を利用したものを使用可能であるが、本例では赤外線式の人感センサを想定しており、人体が発する赤外線を感知して検知信号を出力する素子を備えている。
人感センサ20は、その横方向検知範囲を自動券売機用に狭くした特注品ではなく、左右に位置する硬貨投入部12と物品取出し部15を越えた広い横方向検知範囲を有している。
このため、人感センサ20の左右に突出物が存在しない場合には、人感センサの横方向検知範囲が最大限まで広くなるために、図示しない判定部は人感センサの検知範囲を遅い速度で横切る通行人や、検知範囲の横方向端部に立ち続ける非利用者が、予め設定された所定の判定時間を超えて検知され続けた時に利用者であると誤判定する虞があった。
これに対して本実施形態では、人感センサ20の左右に配置した突出物としての硬貨投入部12と物品取出し部15によって検知範囲が制限されており、これらの突出物によって遮蔽された範囲に位置する物体を検知できなくなっている。
【0012】
このように人感センサの横方向検知範囲を狭くしたので、通行人が人感センサの前方を遅い速度で移動したとしても検知範囲を通過するのに要する時間短くすることができ、利用者と誤検知する虞が少なくなる。この際、人感センサの横方向検知範囲を狭くすることだけを目的とした突出物をわざわざ設けるのではなく、自動券売機の操作パネル面に必要とされる部品を突出物として利用しているので、デザイン上の違和感、操作機能の低下、構成の複雑化、コストアップといった不具合を招くことがない。
また、タッチパネルLCD(表示部、及び操作スイッチ)11、硬貨投入部(操作部)12、紙幣挿入部(操作部)13及び紙幣取出し口(操作部)14、券、及び釣銭(硬貨)の物品取出し部(操作部)15のレイアウトを、利用者であれば必ず人感センサ20の正面に立って行うように配置したので、人感センサの検知範囲を超えた横方向位置で停止している非利用者を利用者として誤検知することもなくなる。
具体的には、人感センサ20は、表示部及び操作スイッチを兼ねたタッチパネルLCD11の略中央部下方に位置しており、しかも人感センサの右側に硬貨投入部12、その下方に紙幣挿入部13及び紙幣取出し口14を配置すると共に、人感センサの左側に券、及び釣銭(硬貨)の物品取出し部15を配置したため、利用者がこれらの操作対象を最も操作し易い立ち位置は、操作パネル10の中央部となる。そして、この中央部に相当する位置に人感センサが配置されているので、上記のような誤判定防止効果を得ることができる。
【0013】
このように本発明では、横方向検知範囲を広くしてある市販の人感センサによる物体の検知時間に制限を設けて、物体を継続的に検知する時間が所定の時間に満たない場合に利用者ではないと判断するように制御する場合に、人感センサの横方向検知範囲を自動券売機(金銭取扱い装置)の操作パネルに必然的に設置される部品を利用して制限するようにしたので、操作パネルに本来不必要とされる不自然な検知範囲制限用の突出物を設けることによるデザイン上の違和感、操作機能の低下、構成の複雑化、コストアップといった不具合を招くことがなくなる。
人感センサによる横方向検知範囲を正規の利用者固有の挙動に合わせて狭くすることが可能となり、単なる通行人、装置の操作を意図せずに立っている人を利用者と誤判定する可能性を低くすることができる。
従って、省エネモードにある金銭取扱い装置の電源を無用に立ち上げたり、待機モードにある機器を稼動モードに移行させる等の不具合がなくなる。
なお、本発明の人感センサの横方向検知範囲を制限する構造は、券売機以外の金銭取扱い装置、例えば自動販売機、両替機、金銭払出装置、精算機にも適用することができる。
【符号の説明】
【0014】
1…自動券売機、2…筐体本体、3、4…開口部、5…前扉、6…後扉、10…操作パネル、10a…前面、10b…前面、11…タッチパネルLCD、12…硬貨投入部(操作部)、13…紙幣挿入部(操作部)、14…紙幣取出し口(操作部)、15…物品取出し部(操作部)、20…人感センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作パネル前面に少なくとも表示部、操作部、及び人感センサを備え、該人感センサからの検知信号により該操作パネル前方に所定時間以上停止する物体を利用者であると判定する判定部を有した金銭取扱い装置であって、
前記人感センサ周囲の前記操作パネル前面部位に、該人感センサの横方向検知範囲を極限するための突出物を配置し、
前記突出物は、表示部、或いは操作部を構成していることを特徴とする金銭取扱い装置の操作パネル。
【請求項2】
前記突出物は、金銭投入部、及び物品提供部であることを特徴とする請求項1に記載の金銭取扱い装置の操作パネル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−198761(P2012−198761A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62423(P2011−62423)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(305027456)ネッツエスアイ東洋株式会社 (200)
【Fターム(参考)】