説明

金銭取扱装置

【課題】利用者が存在しない場合に装置各部の電力供給を遮断する節電モードを備えた金銭取扱装置において、装置の各機能や利用者の利便性を損なうことなく、さらなる節電を実現する。
【解決手段】利用者を識別する識別情報が記録された情報記録媒体から識別情報を読み取る読取手段と、読取手段により読み取られた識別情報に基づいて識別された利用者との間で金銭の決済処理を行う金銭処理手段と、利用者の接近を検知する近接検知手段と、近接検知手段により利用者が検知された場合に読取手段及び金銭処理手段への電力供給を開始し、近接検知手段により利用者が検知されない状態が所定時間継続した場合に読取手段及び金銭処理手段への電力供給を停止する制御手段と、を備えた金銭取扱装置において、制御手段は、電力が供給されている状態の読取手段により情報記録媒体の識別情報が読み取られた後に、読取手段への電力供給を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者の有無を検知して装置各部への通電又は非通電を切り替える節電機能と、利用者を識別する情報を読み取る装置と、を備えた金銭取扱装置に関し、特に、利用者が金銭取扱装置を操作している最中であっても、金銭取扱装置の一部機能への通電を停止することにより、節電効果を高めた金銭取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動販売機や自動金銭預け払い装置等の金銭取扱装置においては、利用者の有無に関わらず常時通電され、無駄な電力を使用していた。
これに対し、利用者の有無に応じて通電/非通電を切り替える金銭取扱装置が知られている。例えば特許文献1には、装置の適所に利用者の有無を検知する人感センサを内蔵し、利用者が検知されない場合には、装置各部への通電を停止する「節電モード」に移行して電力消費を抑制し、人感センサにより利用者の接近を検知した場合には、装置各部への通電を再開して「通常運用モード」に復帰する金銭取扱装置が記載されている。
また、特許文献2には、椅子の座面の内部に圧力センサを備えた金銭取扱装置が記載されている。この発明においては、利用者が椅子に着座すると圧力センサが利用者の存在を検知し、通常運用モードに移行して装置各部への通電が開始される。また、利用者がプリペイドカードを抜き、且つ椅子から立ち上がると、圧力センサにより利用者が検知されなくなるので、金銭取扱装置は利用者がいないと判断して、装置各部への通電を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−43588公報
【特許文献2】特開2004−202024公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように特許文献1、2記載の発明では、利用者の有無を検知するセンサによって利用者が検知されていないときに節電モードに移行して、効果的に使用電力を抑制しているが、市場においてはさらなる節電が求められているというのが実情である。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、金銭取扱装置の各機能や利用者の利便性を損なうことなく、さらなる節電を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、利用者を識別する識別情報が記録された情報記録媒体から前記識別情報を読み取る読取手段と、該読取手段により読み取られた前記識別情報に基づいて識別された前記利用者との間で金銭の決済処理を行う金銭処理手段と、前記利用者の接近を検知する近接検知手段と、該近接検知手段により前記利用者が検知された場合に前記読取手段及び前記金銭処理手段への電力供給を開始し、前記近接検知手段により前記利用者が検知されない状態が所定時間継続した場合に前記読取手段及び前記金銭処理手段への電力供給を停止する制御手段と、を備えた金銭取扱装置において、前記制御手段は、電力が供給された状態の前記読取手段により前記情報記録媒体の識別情報が読み取られた後に、前記読取手段への電力供給を停止することを特徴とする。
病院等に設置される自動精算装置においては、金銭の決済処理を行う前に情報記録媒体に記憶されている識別情報を読取手段により読み取って利用者を識別する。本発明では、読取装置が必要な動作をした後にその電源を遮断することにより、さらなる節電を図る。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記情報記録媒体が非接触情報記録媒体であり、前記読取手段は、前記非接触情報記録媒体が電源を生成するための電力用搬送波を送信する電源供給手段と、前記非接触情報記録媒体から前記識別情報を受信する無線通信手段と、を備えることを特徴とする。
請求項2の発明は、特に情報記録媒体が非接触情報記録媒体の場合を規定している。非接触情報記録媒体に記録された情報を読み取るために、読取手段は電磁波を発生させている。識別情報が読み取られた後に読取手段への電力供給を停止することで、電磁波の発生に伴う消費電力を抑制することができる。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1において、前記情報記録媒体が接触型情報記録媒体であり、前記読取手段は、前記接触型情報記録媒体を受け入れる媒体受入口を備え、該読取手段が前記媒体受入口から前記接触型情報記録媒体を受け入れて該接触型情報記録媒体から前記識別情報を読み取った場合に、前記制御手段は、前記接触型情報記録媒体が前記読取手段に保持された状態で該読取手段への電力供給を停止することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記読取手段は、前記接触型情報記録媒体を搬送する搬送機構と、前記接触型情報記録媒体から識別情報を読み取る読取センサと、を備え、前記金銭処理手段が金銭の決済処理を完了した後に、前記制御手段は少なくとも前記搬送機構への電力供給を再開し、前記搬送機構は前記接触型情報記録媒体を外部に搬送することを特徴とする。
請求項3、4の発明は、特に情報記録媒体が接触型の情報記録媒体である場合を規定している。情報記録媒体を読取手段に受け入れて識別情報を読み取った後、読取手段は情報記録媒体を保持したまま通電が停止される。また、金銭の決済処理が完了した後に、利用者に対して情報記録媒体が返却される。従って、例えば金銭決済処理終了後に情報記録媒体に何らかの情報を書き込む必要がある場合であっても、効果的に節電することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、読取手段により情報記録媒体の識別情報が読み取られた後に、読取手段への電力供給を遮断するので、さらなる節電が可能である。また、情報記録媒体の識別情報が読み取られた後、読取手段は基本的に金銭取扱装置の動作に関与しないため、利用者が金銭取扱装置を操作している場合に電力供給を遮断しても、金銭取扱装置のその他の機能に影響はなく、利用者の利便性を損なうことはない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る金銭取扱装置の一例を示す外観図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る金銭取扱装置の機能ブロック図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係る金銭取扱装置の動作を示すフローチャート図である。
【図4】本発明の第四の実施形態に係る金銭取扱装置の動作を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について実施形態を用いて詳細に説明する。但し、以下の実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
〔第一の実施形態〕
本発明の第一の実施形態に係る金銭取扱装置について説明する。本実施形態に係る金銭取扱装置は、利用者識別用の媒体に記録された利用者を識別するための情報が読取手段により読み取られた場合には、利用者が金銭取扱装置を操作している場合であっても、読取手段への電力供給を停止する点に特徴がある。
【0011】
図1は、本発明の第一の実施形態に係る金銭取扱装置の一例を示す外観図である。金銭取扱装置1は、利用者が保有するIDカード(情報記録媒体)に記録された利用者個人を識別するための情報(識別情報)を、IDカードから読み取るカードリーダライタ2(読取手段)と、利用者へ提供する各種の情報を表示する表示手段、及び表示手段により表示された情報に従って金銭取扱内容等を確認又は選択する入力手段としてのタッチパネルディスプレイ3(表示操作手段:以下、単に「タッチパネル」と記載する)と、タッチパネル3に表示された請求額に従って金銭を投入する紙幣挿入口4及びコイン投入口5と、釣り銭を払い出す釣り銭口6と、決済内容を示した領収書等を発行する書類発行口7と、金銭取扱装置1への利用者の接近を検出する近接センサ8(近接検知手段)と、を備えている。
【0012】
金銭取扱装置1の概略動作について説明する。特に、金銭取扱装置が病院に設置された自動精算装置である場合の例により説明する。なお、この説明においては診察券が個人識別用のIDカードに対応する。
金銭取扱装置1は、利用者がいない場合には、電力供給の停止が可能な装置各部への通電を停止した「節電モード」にある。近接センサ8により、利用者の接近が検知されると、電力供給が停止された部位への通電が再開され「通常運用モード」に移行し、タッチパネル3は、診察券の情報をカードリーダライタ2に読み込ませるように促す表示をする。
利用者が、診察券の情報をカードリーダライタ2に読み込ませると、金銭取扱装置1は診察券から患者番号を読み取り、その患者番号に対応する患者名とその患者が支払うべき診療費の額面(請求額)をタッチパネル3に表示する。利用者は名前と請求額を確認し、その内容に同意する場合には、タッチパネル3に表示された「OK」ボタンを押して金銭を投入する。
金銭取扱装置1は、投入された金銭の額を確認する。請求額と同額かそれよりも多額の金銭が投入された場合には、決済処理を行い、書類発行口7から診療費の明細書と領収書を発行する。請求額よりも多額の金銭が投入された場合には、釣り銭口6から釣り銭を放出する。利用者が金銭取扱装置1から離れたことを近接センサ8が検知した場合、金銭取扱装置1は「節電モード」に移行する。
【0013】
本実施形態に係る金銭取扱装置について、機能ブロック図に基づいて説明する。図2は、本実施形態に係る金銭取扱装置の機能ブロック図である。
この金銭取扱装置1は、情報記録媒体11に記録された情報を読み取る読取手段12と、利用者へ提供する各種の情報を表示する表示手段、及び表示手段に表示された情報に従って金銭取扱内容等を確認又は選択する入力手段としての操作表示手段13と、金銭の決済を行う金銭処理手段14と、金銭処理手段14による決済内容を示した明細書や領収書等を印刷する印刷手段15と、利用者の接近を検知する近接検知手段16と、あるタイミングからの時間を計測する計時手段17と、ネットワークNにより接続された管理サーバSとデータ通信を行う通信手段18と、装置各部の動作を制御する制御手段19と、装置各部へ電力を供給する電源20と、を備えている。
【0014】
読取手段12は、情報記録媒体11に記録された識別情報(患者番号等)を読み取る装置である。ここで、読取手段12により読み取られる識別用の情報を記録した媒体としては、接触型のIDカードや非接触型のIDカード、その他の個人識別に用いられる媒体を用いることができる。身体の特徴を利用して個人の識別を行ってもよい。読取手段12は、これら識別用に用いられる各媒体に対応した装置を用いる。
例えば識別用の媒体が非接触型のIDカードである場合、読取手段12は、IDカードが電源を生成するための電力用搬送波(電磁波)を送信する電源供給手段と、IDカードから識別情報を受信する無線通信手段と、を備えている。そして、読取手段12が微弱な電磁波を発して非接触型IDカードへ送信することにより、非接触型IDカード側でそのエネルギーを電源として利用して動作する。
また、読取手段12には、情報記録媒体11から情報を読み取るだけでなく、情報記録媒体11へ情報を書き込むことが可能な読取/書込手段(例えばカードリーダライタ)を用いてもよい。
【0015】
操作表示手段13は、図1のタッチパネル3に対応する。
金銭処理手段14は、読取手段12により情報記録媒体11から読み取られた識別情報に基づいて識別された利用者との間で金銭の決済処理を行う。金銭処理手段14は、金銭の受け付け、投入金額の計数、請求金額と投入金額の計算、或いは釣り銭の払い出し等を行う手段であり、紙幣挿入口4及びコイン投入口5と、釣り銭を払い出す釣り銭口6と、を含んでいる。
印刷手段15は、金銭処理手段により決済が行われた場合に、決済内容を詳細に記した明細書や、領収書等を印刷する。病院の場合、明細書は例えば診療明細や処方箋等が該当する。印刷手段により印刷された明細書等は、図1に示す書類発行口7から利用者に提供される。
近接検知手段16は、金銭取扱装置の前面側に人物が立った(近接した)ことを検知するセンサであり、例えば赤外線センサなどが該当する。
【0016】
計時手段17は、金銭取扱装置1の一連の動作が終了してからの経過時間をカウントするタイマである。所定の時間、利用者が検知されない場合、金銭取扱装置1は「節電モード」に移行するが、計時手段17によって計測された時間が「節電モード」に移行する際のトリガーとなる。
通信手段18は、ネットワークNを介して接続された管理サーバSとの間で情報の送受信を行う。
制御手段19は、基本的な構成として、CPU(Central Processing Unit)、CPUにより実行される制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)、CPUによる実行処理のために制御プログラムや各種のデータが展開されるRAM(Random Access Memory)から構成されて、金銭取扱装置1の動作を制御する。
【0017】
管理サーバSは、患者の情報を一括して管理するサーバである。基本的な構成として、CPU(Central Processing Unit)、CPUにより実行される制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)、CPUによる実行処理のために制御プログラムや各種のデータが展開されるRAM(Random Access Memory)とから構成されて管理サーバSの動作を制御する制御手段と、患者の情報を蓄積する情報記憶手段としてのHDD(Hard Disk Drive)と、金銭取扱装置1との間でデータ通信を行う通信手段と、を備えている。
管理サーバSは、患者番号に対応させて、処方箋データ、診療明細、及び診療費データ等をHDD内に保持している。読取手段12により読み取られた識別情報(患者番号)とともに、この識別情報に対応する患者の精算リクエストが金銭取扱装置1から管理サーバSに送信されると、管理サーバSは精算に必要なデータをHDDから読み出して金銭取扱装置1に送信する。
【0018】
本発明に係る金銭取扱装置1は3種類の電力状態(電力モード)の下で動作する。
第一の電力モードは「通常運用モード」であり、金銭取扱装置1の全ての手段に通電される状態である。
第二の電力モードは「節電モード」であり、電力消費を抑制するために、電力供給遮断が可能な部分への電力供給が停止される状態である。ここで、常時通電される電源系統としては、節電モードから通常モードに復帰するイベントを検知するために利用される近接検知手段16と制御手段19が挙げられる。
第三の電力モードは本発明に特徴的な「節電運用モード」である。節電運用モードは、利用者が金銭取扱装置1を操作している場合であっても、金銭取扱装置1の一部手段への電力供給を遮断することにより、電力消費を抑制するものである。
節電運用モードにおいては、特に読取手段12への電力供給が遮断される。すなわち、読取手段12は、情報記録媒体11から個人識別用の情報を読み出した後、金銭の決済が終了するまで金銭取扱装置1の動作に関与しない部位である。従って、利用者が金銭取扱装置1を操作している最中であっても、読取手段12の電力供給を遮断したとしても金銭取扱装置1の機能や利用者の利便性を損なわず、且つ効果的に消費電力を抑制することができる。
【0019】
以上説明した金銭取扱装置の動作について、図3のフローチャートに基づいて説明する。図3は、本実施形態に係る金銭取扱装置の動作を示すフローチャート図である。図3には、金銭取扱装置が節電モードにあるときに、通常運用モードと節電運用モードに順次移行して、再度節電モードに戻るまでの動作の流れを示している。また、このフローチャートは、識別用の情報を記録した媒体が非接触型IDカードである場合の動作例である。
金銭取扱装置1が節電モードにある場合、近接検知手段16には電力が供給されており、利用者が接近してきたか否かを常時検知している(ステップS1)。利用者が検知されるまで検知動作を繰り返す(ステップS1でNo)。利用者が検知された場合(ステップS1でYes)、制御手段19は、カードリーダライタ2(読取手段12)、通信手段18、操作表示手段13、金銭処理手段14、及び印刷手段15への電力供給を再開し、通常運用モードに復帰する(ステップS2)。
通常運用モードに復帰して、IDカード(情報記録媒体11)がカードリーダライタ2にて受け付けられると(ステップS3)、カードリーダライタ2はIDカードに記録された個人識別用の情報を読み出して、制御手段19に通知する(ステップS4)。制御手段19は、電源20にカードリーダライタ2への電力供給を停止するよう信号を出力し、カードリーダライタ2への電力供給が停止されて節電運用モードに移行する(ステップS5)。
【0020】
制御手段19は、通信手段18を介して、カードリーダライタ2が読み取った識別情報(IDデータ)を管理サーバへ送信する(ステップS6)。
管理サーバSは、金銭取扱装置1から送信された識別情報に対応する患者の処方箋データや診療明細、或いは診療費データをHDDから読み出して金銭取扱装置1に送信する。金銭取扱装置1では管理サーバSから送信されてきたデータを受信する(ステップS7)。
管理サーバSから受信したデータに基づいて金銭の決済処理を行う(ステップS8)。具体的には、タッチパネル3(操作表示手段13)に請求額を表示して利用者に金銭の支払いを促す。金銭処理手段14では、利用者によって紙幣挿入口4に挿入された紙幣や、コイン投入口5に投入されたコインを計数し、必要に応じて釣り銭口6から釣り銭の払い出しを行う。
決済が終了した旨(決済情報)を管理サーバSに送信する(ステップS9)。
印刷手段15は、領収書、診療明細及び処方箋の印刷を行い、書類発行口7から装置外部に排出する(ステップS10)。
【0021】
制御手段19は、電源20にカードリーダライタ2への電力供給を再開するよう信号を出力し、カードリーダライタ2への電力供給が開始されて通常運用モードに移行する(ステップS11)。
さらに近接検知手段16が、次の利用者の接近を検知した場合(ステップS12でYes)は、ステップS3以降の処理を繰り返す。また、近接検知手段16が、次の利用者の接近を検知しない場合(ステップS12でNo)は、直前の利用からの経過時間を計時手段17により計測しており、計時手段17によって計測された時間が所定の時間、例えば30秒を経過するまでは、節電運用モードにて待機し(ステップS13でNo)、所定の時間を経過した場合には(ステップS13でYes)、節電モードに移行する(ステップS14)。つまり、近接検知手段16により利用者が検知されない状態が所定時間継続した場合に節電モードに移行する。
【0022】
以上のように本発明によれば、利用者が金銭取扱装置を操作している間にも、読取手段への通電を停止するので、消費電力を抑制することができる。また、読取手段は、情報記録媒体の内容を読み出した後は、金銭取扱装置の動作に関与しないため、節電運用モード中であっても利用者に不便をかけたり、装置の機能低下をもたらしたりすることもない。
特に、読取手段が非接触型IDカードの内容を読み取るカードリーダライタである場合は、通電中に常時電波を出し続けているが、本発明により通電時間を短くすることで、絶大な節電効果を得ることができる。
【0023】
以上、本発明について、病院での診療後に診療費を自動精算する装置の例により説明したが、IDカードの内容を読み出した後、カードリーダライタは金銭取扱装置の動作に関与しないといった類の装置ならば、病院の自動精算装置に限らず本発明を適用できる。例えば、役所に設置される自動証明書発行装置も、最初に住民基本台帳カード(住基カード)で本人確認をした後、それ以降の操作でカードリーダライタは自動証明書発行装置の動作に関与しないため、本発明を適用することができる。
【0024】
〔第二の実施形態〕
本実施形態は、情報記録媒体が特に接触型のIDカードである場合の実施形態である。情報記録媒体が接触型のIDカード、例えば磁気カード等である場合、カードリーダライタ(又はカードリーダ)は、少なくともIDカードを金銭取扱装置内部に受け入れるカード挿入/排出口(媒体受入口、媒体排出口)と、IDカードを搬送する搬送機構と、IDカードに記録された識別情報を読み取る読取センサとを含んで構成される。
本実施形態における金銭取扱装置の動作について、図3を参照しながら説明する。
ステップS1、S2の動作の後、カードリーダライタは搬送機構を動作させて、IDカードをカード挿入/排出口からカードリーダライタ内部に受け入れる(ステップS3)。IDカードから読取センサにて識別情報を読み取り、その内容を制御手段19に通知した後(ステップS4)、IDカードがカードリーダライタ内に収容された状態でカードリーダライタの通電が全体として停止される(ステップS5)。
ステップS6からステップS10までの動作の後、ステップS11にてカードリーダライタの通電が全体的に復帰して通常運用モードに移行する。そして搬送機構はIDカード排出方向に駆動し、カード挿入/排出口からIDカードを排出して利用者に返却する。以降の動作は、図3に記載された通りである。
【0025】
もちろん、本実施形態のように情報記録媒体が接触型のIDカードである場合、識別情報を読み出した直後(ステップS4直後)にカード挿入/排出口からIDカードを排出し、カードリーダライタへの電力供給を停止(ステップS5)するように動作してもよい。本実施形態では、金銭決済処理が終了した後にIDカードを利用者に返却するように動作しているので、金銭決済処理終了後にIDカードに情報を書き込む必要がある場合に特に有効な実施形態である。
また、接触型のIDカードの情報を読み取るタイプのカードリーダライタは、通電後、短時間で運用可能であるが、IDカードの返却が遅れないように、領収書等の印刷中(ステップS10に相当)にカードリーダライタへの通電を復旧させて、印刷完了に合わせてIDカードを返却するようにしてもよい。
【0026】
〔第三の実施形態〕
本実施形態は第二の実施形態の変形例である。本実施形態は、情報記録媒体が接触型のIDカードであり、カードリーダライタ(又はカードリーダ)が少なくともカード挿入/排出口(媒体受入口、媒体排出口)と搬送機構と読取センサとを備えている場合において、カードリーダライタ全体への電力供給が停止した後に電力供給を再開する部位を搬送手段のみとした点に特徴がある。
本実施形態における金銭取扱装置の動作について、図3を参照しながら説明する。
ステップS1、S2の動作の後、カードリーダライタは搬送機構を動作させて、IDカードをカード挿入/排出口からカードリーダライタ内部に受け入れる(ステップS3)。
IDカードから読取センサにて識別情報を読み取り、その内容を制御手段19に通知した後(ステップS4)、IDカードがカードリーダライタ内に収容された状態でカードリーダライタの通電が全体として停止される(ステップS5)。
ステップS6からステップS10までの動作の後、ステップS11ではカードリーダライタのうち、搬送機構の通電のみが復帰する。そして搬送機構はIDカード排出方向に駆動し、カード挿入/排出口からIDカードを排出して利用者に返却する。ステップS12〜ステップS14までの動作は、図3に記載された通りである。
ここで本実施形態では、ステップS12において、近接検知手段が利用者の接近を検知した場合に(ステップS12にてYes)、通常運用モードへ復帰する動作(ステップS2)を行う点が図3のフローと異なる。ステップS12からステップS2に移行する場合における通常運用モードへの復帰は、読取センサへの電力供給を復帰させる動作になる。
【0027】
〔第四の実施形態〕
本発明の第四の実施形態に係る金銭取扱装置について図4に基づいて説明する。図4は、第四の実施形態に係る金銭取扱装置の動作を示すフローチャート図である。本実施形態は、IDカードから読み取られた識別情報が適切であることが管理サーバにて確認された後に、カードリーダライタへの通電を停止する点に特徴がある。以下、図3のフローチャートと同一の動作については同一の番号を付してその説明を省略する。なお、本実施形態では、特に情報記録媒体の態様に制限はない。
ステップS1からステップS4までの動作を行った後、制御手段19は、通信手段18を介して、カードリーダライタ2(読取手段12)が読み取った識別情報(IDデータ)を管理サーバSへ送信する(ステップS21)。
識別情報を受信した管理サーバSでは、その識別情報の妥当性を確認する(ステップS22)。この妥当性の確認では、例えば送信された識別情報が正しく読み込まれたものであるか否か、或いは受診された識別情報が管理サーバSにて管理されているものであるか否か等を確認する。識別情報が不適切であると判断された場合(ステップS22にてNo)、管理サーバSはその旨を金銭取扱装置1に通知する。当該通知を受けた金銭取扱装置1は、操作表示手段13を介して利用者に再度IDカードを読み込ませるよう促す表示をする。そしてステップS3以降の処理を行う。
識別情報が適切であると判断された場合(ステップS22にてYes)、管理サーバSはその旨を金銭取扱装置1に送信する。金銭取扱装置1では、カードリーダライタ2への電力供給を停止して節電運用モードに移行する(ステップS23)。以降の動作は第一の実施形態と同様である。
【0028】
以上のように本実施形態では、IDカードから読み込まれた識別情報が妥当であることが確認された場合に、カードリーダライタへの電力供給を遮断する。仮に、識別情報が適切なものではなく、再度IDカードの情報を読み取らなければならないような事態が発生した場合であっても、識別情報の読み取りが確実に不要となるまではカードリーダライタへの通電が継続される。従って、カードリーダライタの電源のオン/オフが頻発しない。なお、本実施形態は、第二又は第三の実施形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0029】
1…金銭取扱装置、2…カードリーダライタ、3…タッチパネル(タッチパネルディスプレイ)、4…紙幣挿入口、5…コイン投入口、6…釣り銭口、7…書類発行口、8…近接センサ、11…情報記録媒体、12…読取手段、13…操作表示手段、14…金銭処理手段、15…印刷手段、16…近接検知手段、17…計時手段、18…通信手段、19…制御手段、20…電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者を識別する識別情報が記録された情報記録媒体から前記識別情報を読み取る読取手段と、
該読取手段により読み取られた前記識別情報に基づいて識別された前記利用者との間で金銭の決済処理を行う金銭処理手段と、
前記利用者の接近を検知する近接検知手段と、
該近接検知手段により前記利用者が検知された場合に前記読取手段及び前記金銭処理手段への電力供給を開始し、前記近接検知手段により前記利用者が検知されない状態が所定時間継続した場合に前記読取手段及び前記金銭処理手段への電力供給を停止する制御手段と、を備えた金銭取扱装置において、
前記制御手段は、電力が供給された状態の前記読取手段により前記情報記録媒体の識別情報が読み取られた後に、前記読取手段への電力供給を停止することを特徴とする金銭取扱装置。
【請求項2】
前記情報記録媒体が非接触情報記録媒体であり、
前記読取手段は、前記非接触情報記録媒体が電源を生成するための電力用搬送波を送信する電源供給手段と、前記非接触情報記録媒体から前記識別情報を受信する無線通信手段と、を備えることを特徴とする請求項1記載の金銭取扱装置。
【請求項3】
前記情報記録媒体が接触型情報記録媒体であり、
前記読取手段は、前記接触型情報記録媒体を受け入れる媒体受入口を備え、
該読取手段が前記媒体受入口から前記接触型情報記録媒体を受け入れて該接触型情報記録媒体から前記識別情報を読み取った場合に、前記制御手段は、前記接触型情報記録媒体が前記読取手段に保持された状態で該読取手段への電力供給を停止することを特徴とする請求項1記載の金銭取扱装置。
【請求項4】
前記読取手段は、前記接触型情報記録媒体を搬送する搬送機構と、前記接触型情報記録媒体から識別情報を読み取る読取センサと、を備え、
前記金銭処理手段が金銭の決済処理を完了した後に、前記制御手段は少なくとも前記搬送機構への電力供給を再開し、前記搬送機構は前記接触型情報記録媒体を外部に搬送することを特徴とする請求項3記載の金銭取扱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−89156(P2013−89156A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231492(P2011−231492)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(305027456)ネッツエスアイ東洋株式会社 (200)
【Fターム(参考)】