説明

金錯体

Z−Au−OH形状の水酸化金(I)錯体と、Z−Au−(μOH)−Au−Z形状の二金錯体(ここで、基Zは2電子供与体である)とを提供する。基Zは、カルベン、例えば窒素含有複素環式カルベン(NHC)、ホスフィン又はホスフェイトとし得る。錯体は、例えばニトリルの水和、エニンの骨格転位、エニンのアルコキシ環化、アルキン水和、マイヤー・シュスター反応、アリル性アセテートの3,3’転位、プロパギル性アセテートの環化、ベックマン転位及びヒドロアミノ化のような反応における触媒として用いることができる。錯体は医薬、例えば癌の治療に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明をもたらす研究は、欧州共同体の第7次研究枠組み計画(FP7/2007−2013)/ERC助成金契約番号No.227817の下、欧州研究会議から財政支援を受けている。
【0002】
本発明は、水酸化金錯体、その製造及び使用の提供に関する。
【背景技術】
【0003】
後期遷移金属(LTM)の水酸化物錯体は、多目的合成試薬として役立つことができる環境に優しい錯体として開示されている(参考文献1)。かかるシントンは、単純な環境に無害の反応化学によって多数の生成物の単離を可能にする。LTMの中でも、単核直線状の水酸化銅及び水酸化銀について報告された例はなく、金について三つの例が知られているのみである。これらすべては、金(III)金属中心を伴う(参考文献1及び2)。金(I)は、有機金属化学、均一触媒反応(参考文献3)及び医薬品(参考文献4)における使用の増加がみられており、興味深い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
第一態様によると、本発明はZ−Au−OH形状(基Zは2電子供与配位子である)の水酸化金(I)を提供する。
【0005】
2電子供与配位子は、例えばホスフィン配位子、カルベン配位子又はホスファイト配位子とすることができる。
【0006】
ホスフィン配位子の例としては、RP形状(各R基は同一でも異なってもよく、アルキル、アリール、環式又は複素環式とし得る)のものが挙げられる。これらの基の全ては、置換又は未置換でもよく、飽和又は不飽和でもよい。基Rが環式又は複素環式である場合、それを芳香族基とすることができる。
【0007】
ホスフィン配位子は、トリフェニルホスフィン又は置換トリフェニルフェニルホスフィンであるのが有利である。例えば、トリス(2−トリル)ホスフィン、トリス(2−MeO−フェニル)ホスフィン及びトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィンである。
【0008】
ホスファイト配位子の例としては、ROP形状(各RO基は同一でも異なってもよく、Rはアルキル、アリール、環式又は複素環式とし得る)のものが挙げられる。これらの基の全ては、置換又は未置換でもよく、飽和又は不飽和でもよい。基Rが環式又は複素環式である場合、それを芳香族基とすることができる。
【0009】
ホスファイト基は、トリフェニルホスファイト又は置換トリフェニルホスファイト、典型的には、立体的に嵩高い置換基を持つもの、例えば、トリス(2−トリル)ホスファイト、トリス(2−MeO−フェニル)ホスファイト及びトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトとし得る。
【0010】
カルベン配位子の例としては、1個以上のヘテロ原子を有する環式又は非環式カルベンが挙げられる。1個のヘテロ原子(又は複数のヘテロ原子)は、同一でも異なってもよく、例えばN、O又はSとし得る。かかるヘテロ原子の存在は、カルベン配位子を安定化する。
【0011】
カルベン配位子は、複素環式カルベン配位子、特に窒素含有複素環式カルベン配位子(NHC)であるのが有利である。NHCは5又は6員環、典型的には5員環を有し得る。N−複素環式カルベン配位子(NHC配位子)は、反応中間体に対し良好な安定化効果を提供することが示されており、その有機金属化学、触媒反応及び医薬品への使用が増加している(参考文献5及び6)。
【0012】
水酸化金錯体に用いるNHCは、飽和又は不飽和でもよく、環中に1個以上の窒素原子を含有することができ、任意で環中に他のヘテロ原子(O及びSのような)を含有し得る。
【0013】
例えば、配位子は、
【化1】


(式中、基Rは同一でも異なってもよく、基Rは、存在する場合、同一でも異なってもよく、環中の点線は任意の不飽和を表す)の形状を有することができる。環中の1個以上の炭素原子(カルベン炭素は別として)はO又はSで置換されていてもよい。R及びRの各々は、各存在に対して独立してH、置換若しくは未置換であり得る一級又は二級アルキル基(例えばC1−C10、より適切にはC1−C4)、置換若しくは未置換フェニル、置換若しくは未置換ナフチル、置換若しくは未置換アントラセニル、又はハロ、ヒドロキシル、スルフヒドリル、シアノ、シアナト、チオシアナト、アミノ、ニトロ、ニトロソ、スルホ、スルホナト、ボリル、ボロノ、ホスホノ、ホスホナト、ホスフィナト、ホスホ、ホスフィノ及びシリルオキシからなる群より選択した官能基から選択することができる。
【0014】
環中に各々がカルベン炭素に隣接した2個の窒素原子を持つNHC配位子を用いるのが有利な場合がある。この種類のNHCカルベン配位子は、
【化2】


(式中、基R、R、R、R及びRの各々は同一でも異なってもよく、環中の点線は任意で不飽和を表し、この場合R及びRは存在しない)の形状を有することができる。R、R、R、R及びRの各々は、各存在に対して独立してH、置換若しくは未置換であり得る一級又は二級アルキル基(例えばC1〜C10、より適切にはC1〜C4)、置換若しくは未置換フェニル、置換若しくは未置換ナフチル、置換若しくは未置換アントラセニル、又はハロ、ヒドロキシル、スルフヒドリル、シアノ、シアナト、チオシアナト、アミノ、ニトロ、ニトロソ、スルホ、スルホナト、ボリル、ボロノ、ホスホノ、ホスホナト、ホスフィナト、ホスホ、ホスフィノ及びシリルオキシからなる群より選択した官能基から選択することができる。
【0015】
基R及びRは、複素環式芳香族環であり得る置換又は未置換芳香族環とするのが有利な場合がある。上記構造中の置換基R、R、R、R及びRは、アルキル基および不飽和アルキル基、置換されてもよく、ヘテロ原子を含有してもよいアリール基を含むことができる。
【0016】
NHCカルベン配位子の適切な例としては、下記式(I)〜(IV):
【化3】

(式中、各基R、R及びRは、各存在について独立してH、置換若しくは未置換であり得る一級又は二級アルキル基(例えばC1〜C10、より適切にはC1〜C4)、置換若しくは未置換フェニル、置換若しくは未置換ナフチル、置換若しくは未置換アントラセニル、又はハロ、ヒドロキシル、スルフヒドリル、シアノ、シアナト、チオシアナト、アミノ、ニトロ、ニトロソ、スルホ、スルホナト、ボリル、ボロノ、ホスホノ、ホスホナト、ホスフィナト、ホスホ、ホスフィノ及びシリルオキシからなる群より選択した官能基から選択され;R、R、R10及びR11は、各存在について各々独立してH、置換若しくは未置換アルキル基(例えばC1〜C10、より適切にはC1〜C4)、置換若しくは未置換アリール基、又は式(II)及び(IV)においてそれらを担う炭素と一緒に置換若しくは未置換の縮合4〜8員炭素環又は置換若しくは未置換の縮合芳香族環、好ましくは縮合フェニル環を形成し;R12はアルキル(例えばC1〜C10、より適切にはC1〜C4)又はシクロアルキル(例えばC3〜C8)である)のものが挙げられる
【0017】
例えば、これらNHCカルベン
【化4】


は水酸化金錯体の形成に適したNHCカルベンファミリーの例であり、アルキル置換した芳香族環がカルベンの孤立電子対に更なる安定化を提供する。
【0018】
NHC−Au−OH形状(すなわち、ZがNHCである)の錯体は、NHC−Au−Clのような金錯体のAgSbFとの併用を伴う触媒系において潜在的な中間体として仮定されている(参考文献27)。しかしながら、かかる種が実際に存在する直接的な証拠はこれまでに提示されていない。これ以降で議論する本発明の方法は、良好な純度レベル(典型的には>97%)の固体形態で単離し得るNHC−Au−OH錯体を提供する。同様に、Z−Au−OH形状(ここでZはアセトニトリル(CHCN)である)の錯体の存在は、反応混合物中の想定される中間体の一つとして示唆されている(参考文献29)が、確認されていない。従って、本発明は、Z−Au−OH形状(特にZがNHCである)の錯体を含むか又は該錯体からなるか又は該錯体を実質的に含む固形生成物を提供する。Z−Au−OH錯体は、後述するように触媒としての用途を見出すことができる。様々な反応に対して、従来技術の金触媒で見られるような、触媒系の一部としての銀錯体の使用は必要としない。
【0019】
水酸化金(I)錯体は、例えばZ−Au−X形状(Xはハロゲンである)の金錯体からハロゲン、例えば塩素を置換することによって作成してもよい。Z−Au−X錯体は、当分野で既知であるようないずれかの手段によって作成することができる。
【0020】
例えば、ZがNHC配位子であり、XがClである場合、金ハロゲン錯体を、(L)AuCl(Lはジメチルスルフィド配位子又はテトラヒドロチオフェン配位子)とNHCとを溶媒中で混合して“Synthesis and Structural Characterization of N−Heterocyclic Carbene Gold(l) Complexes.” de Fremont, P.; Scott, N. M.; Stevens, E. D.; Nolan, S. P. Organometallics,2005, 24, 2411−24に記載されるような(NHC)AuCl錯体をもたらすことによって合成することができる。あるいは、(NHC)AuClを塩基の存在下でHAuCl及びNHC・HX塩から作成してもよい。
【0021】
例えば、水酸化金(I)錯体を、下記スキーム1に示し、合成方法の例において後でさらに充分に説明するようなハロゲン化金(I)錯体と水酸化物、例えばアルカリ金属水酸化物との反応によって作成することができる。
【0022】
【化5】

【0023】
上記化合物1は、市販の[AuCl(IPr)](ここで、IPrは、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン)である)(参考文献12)。
【0024】
この反応は、工業用溶媒であっても空気中で良好な収率にて進行することが示されている。このように、第二態様によると、本発明は、Z−Au−X形状(式中、Zは上述のような2電子供与配位子であり、Xはハロゲンである)のハロゲン化金(I)錯体をアルカリ金属水酸化物と反応させることを備える本発明の第一態様の金(I)錯体の製造方法を提供する。反応を実施し得る典型的な溶媒としては、ハロゲン化溶媒が挙げられる。例えば、ジクロロメタン又はジクロロエタンのような塩素化溶媒である。またTHFのようなエーテル性溶媒又はエーテル性溶媒の混合物も、芳香族炭化水素の存在下又は不存在下で用い得る。芳香族炭化水素とエーテル性溶媒のような酸素化溶媒との混合物、例えばTHF/トルエン混合物、例えば1:1のTHF/トルエン混合物を用い得る。
【0025】
水酸化金錯体生成物を、溶媒の蒸発によって単離することができ、続いてトルエンのような炭化水素で洗浄し、濾過及び/又は乾燥して、用いた溶媒の残りを除去することができる。代替的な単離手法は、先ず、生成物を溶解する溶媒、例えばTHF中で反応を行うことを含む。次いで、生成物がそれほど溶解しない液体(例えば、トルエン)を加え、蒸留を行って一部又は全部の溶媒を除去し、それによって生成物を沈殿又は晶出させる。簡単な濾過及び乾燥は、単離した水酸化金生成物を生成させる。
【0026】
本発明の水酸化金(I)錯体は、触媒として又は医薬品(例えば、抗癌剤として)における及びシントンとしての用途を見出すことができる。本発明の水酸化金(I)錯体は、それ自体が触媒として又は医薬品における用途を見出し得る広範囲の金錯体の生成用合成中間体としての用途を見出すことができる。本発明の水酸化金(I)錯体は、触媒として、又は触媒の現場生産用に、数多くの変換を実施するために使用し得る。例えば、変換は、ニトリルの水和、エニンの骨格転位、エニンのアルコキシ環化、アルキン水和、マイヤー・シュスター反応、アリル性アセテートの3,3’転位、プロパギル性アセテートの環化、ベックマン転位及びヒドロアミノ化からなる群より選択する。
【0027】
例示的な錯体2の合成有用性の例を下記スキーム2に示す。
【0028】
【化6】

【0029】
このように、本発明の錯体のヒドロキシド基は、大抵その塩基性の性質のため、広範囲の置換基と大抵高収率で容易に置換できることが分かる。2のような水酸化物錯体の使用は、代替経路と比較して有益であり得る。反応は一般に空気中で実施することができるので、大抵は他の合成経路で必要とされ得るような補助試薬を使用する必要がない。
【0030】
例えば、Gray及び共同研究者らは、最近1の同族体が金−アリール結合を発生させるのに効率的な合成前駆体であることを示した(参考文献7)。この反応は、上記スキームに示した錯体6の合成に塩基及びボロン酸の使用を伴う。2のような錯体は既に組み込まれた塩基の機能を有するので、これらをボロン酸と直接反応させることができる。実際、上記スキームに示したように、6を作成するために2を用いて室温で行った反応は定量的であると分かった。さらに、Molanderによって開発されたトリフルオロボロネート(参考文献8)である他のボロン系供給剤は、高収率で役割を果たすこともできる。このように、[Au(Ph)(IPr)](6)を、室温で6時間、トルエン中で91%の単離収率で得た。従って、Au−C結合形成をもたらす本発明の水酸化金(I)錯体とボロン試薬との反応は、スキーム1に図示した一工程合成経路を用いることにより異なる官能基を有する多数の金錯体の調製を可能にすることができる。
【0031】
他の酸プロトン(pKa<約30)含有試薬を可能性のある反応相手として使用し、中性種又は陰イオン−陽イオン対(例えば、Yがホスフィン、ホスファイト、NHCであり、Xが適当な対イオンである[NHC−Au−Y])をもたらすことができる。
【0032】
金アセチリドの合成は、通常塩基を伴い、アルカリ金属水酸化物を用いる場合には加熱を伴い又はリチウム塩基を用いる場合には冷却を伴う。しかしながら、2を室温でトルエン中フェニルアセチレンと反応させた場合、[Au(CCPh)(IPr)](7)を90%の収率で得た。
【0033】
最も基本的なプロトノリシス反応は、Hを金に供給するものである。Tsui及び共同研究者らは、最近かかる供給を[Au(OBu)(IPr)]から達成した(参考文献9)。同様のプロトコルを用いると、2をシントンとして、またシランをH源として用いてH原子を上手く供給することができる。この経路は97%の収率で[Au(H)(IPr)](8)の形成をもたらす。この結果は、2に関する反応における推進力としてのSi−O結合の形成が、極めて一般的であり、多種多様なケイ素系試薬の影響を受けやすい場合があることを示唆する。
【0034】
金が中心にある触媒の多数の変型の中で著しい注目を集めているものが、所謂Gagosz型の錯体[Au(NTf)(IPr)](9)である(NTfがビス−(トリフルオロメタンスルホニル)イミデートである)(参考文献10)。この化合物は、他の金系触媒について銀系共触媒によって行われる通常の活性化を必要としない単一成分触媒である。錯体9は、1と感光及び感湿性の高価なAgNTfとの反応によってこれまでに入手できた。2の単離は、HNTfでのプロトノリシスによる9の直接的合成を室温で91%の収率で可能にする。従って、9への合成経路の改良を提供し、本発明の第三態様を構成する。
【0035】
本発明の水酸化金(I)錯体は、塩基性であり、幅広い供給源からプロトンを除去するのに用いることができる。例えば、下記の実施例セクションで議論するようなフッ素化有機化合物である。
【0036】
本発明の水酸化金(I)錯体の更なる用途は、それ自体多目的触媒とし得る二核金錯体の調製である。
【0037】
従って、本発明の更なる態様は、一般式V:
【化7】


(式中、各Zは同一でも異なってもよい2電子供与配位子であり、Aは陰イオンである)の水酸化二金錯体を提供する。
【0038】
2電子供与配位子Zは、本発明の第一態様の金(I)錯体に関して上で議論した同一の種類のものとすることができる。陰イオンAがBFであり、両方の基ZがPRであり、各Rがメシチルである式Vの錯体は、既知であり(参考文献28)、特定の金クラスター錯体の合成における中間体として記載されているが、触媒としての用途は記載されていない。従って、本発明は、AがBFであり、両方の基Zが同一でPR形状のホスフィンである場合に各Rがメシチルでないことを条件とする式Vの錯体を提供する。
【0039】
式Vの錯体の陰イオンAは、例えばBF、PF、SbF、BArf4(=[B{C(CF)}])又はFABA(=[B(C)])とすることができる。
【0040】
式Vの二金錯体は、下記式
【化8】


に従い、適当な酸HAとの反応によってZ−Au−OH形状の水酸化金(I)錯体から調製することができる。
【0041】
そして異なるZ基を必要とする場合、例えば、異なるZ基を有する2種のZ−Au−OH錯体を使用することができる。
【0042】
従って、本発明の更なる態様は、本発明の第一態様の金(I)錯体を酸と反応させることを備える一般式Vの金錯体の製造方法を提供する。
【0043】
正式には、一般式Vの錯体は本発明の第一態様の金錯体(Z−Au−OH)をZ−Au形状の塩と共に含むと考え得るが、例示的な化合物は互いに等価な複数の金原子を有することがNMRデータ及びX線構造決定により分かった。水酸化物部分は、これらの間にブリッジを形成する。一般式Vの錯体は、触媒として、合成において、また医薬品(例えば、抗癌剤として)において用途を見出すことができる。
【0044】
触媒における用途について、二核金錯体を良好な純度(典型的には>97%)で得ることができる単離された材料として調製することができる。従って、本発明は、特にZがNHCである式Vの形状の錯体を含むか又は該錯体からなるか又は該錯体を実質的に含む固形生成物を提供する。式Vの錯体は後述するように触媒としての用途を見出すことができる。様々な反応について、従来技術の金触媒で見られるような触媒系の一部としての銀化合物の使用を必要としない。
【0045】
しかしながら、幾つかの状況下で、これらを便利に現場で調製することができる。
【0046】
例えば、上で議論した錯体2
【化9】


をテトラフルオロホウ酸ジエステルエーテル錯体とベンゼン中で反応させて90%の単離収率の下記12
【化10】


を生成することができる。
【0047】
錯体12である[Au(IPr)](μ−OH)BFは多目的触媒である。
【0048】
その単離材料としての調製の代替手段として、特定の実施例を参照して後で論じるように、反応混合物中にAu(IPr)(OH)及びHBF.OEt(又は水中のHBF)を提供することによって、12を現場で触媒用として調製し得る。従って、本発明の水酸化金(I)錯体を、適当な酸の使用により二核水酸化金錯体用として現場で活性化することができる。
【0049】
二核水酸化金錯体の代替的な調製方法が利用可能である。例えば、錯体2である[Au(IPr)(OH)]を、水との単純反応によって12に変換される中間錯体13の[Au(IPr)(CHCN)]BFを介して、錯体12の[Au(IPr)](μ−OH)BFに変換することができる。
【0050】
上記相互変換を下記スキーム3に図示する。
【0051】
【化11】

スキーム3:[Au(IPr)(CHCN)]BF(13)及び[{(Au(IPr)}(OH)]BF(12)への合成経路
【0052】
本発明の水酸化金(I)錯体のように、二核(二金)錯体は、触媒として又は医薬品(例えば、抗癌剤として)における及びシントンとしての用途を見出すことができる。
【0053】
本発明の第一態様の水酸化金(I)錯体のように、本発明の二金錯体を、多数の変換実施用触媒として使用し得る。例えば、変換を、ニトリルの水和、エニンの骨格転位、エニンのアルコキシ環化、アルキン水和、マイヤー・シュスター反応、アリル性アセテートの3,3’転位、プロパギル性アセテートの環化、ベックマン転位及びヒドロアミノ化からなる群より選択する。
【0054】
本発明の医療用途のために、上述した水酸化金(I)錯体若しくは式Vの二金錯体又はそれらの生理学的に許容し得る塩、エステル若しくは他の生理学的機能性誘導体を治療方法に用いることができる。その方法は、治療すべき疾病を改善、治療又は予防するのに充分な治療上有効な量の錯体をヒト又は動物の被検体に投与することを備え得る。例えば、錯体を癌の治療に用い得る。
【0055】
本発明の医療用途のために、上述した水酸化金(I)錯体若しくは式Vの二金錯体又はそれらの生理学的に許容し得る塩、エステル若しくは他の生理学的機能性誘導体は、該錯体又はその生理学的に許容し得る塩、エステル若しくは他の生理学的機能性誘導体を1種以上の医薬として許容し得る担体と共に、また任意で他の治療成分及び/又は予防成分と共に含む医薬製剤として提示し得る。担体は、前記製剤の他の成分と相溶性であり且つ被投与者に有害でないという意味で許容されなければならない。
【0056】
医薬製剤は、経口、局所(皮膚、口腔及び舌下を含む)、直腸又は非経口(皮下、皮内、筋肉内及び静脈内を含む)、経鼻及び経肺投与(例えば、吸入による)に適したものを包含する。該製剤は、必要に応じて、個別の投与単位で便利に提供することができ、薬学の分野で周知の方法のいずれかによって調製することができる。全ての方法は、有効錯体を液体担体若しくは微細な固形担体又はその両方と結合させ、次いで所要に応じて生成物を所望の製剤に成形する工程を含む。
【0057】
担体が固体である経口投与に適した医薬製剤は、それぞれ所定量の有効錯体を含有する巨丸剤、カプセル剤又は錠剤のような単位用量製剤として最も好ましく提供される。錠剤は、任意で1種以上の付属成分と共に、圧縮又は成型することにより作ることができる。圧縮錠は、粉末又は顆粒のような自由流動形態の有効錯体を任意で結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、平滑剤、表面活性剤又は分散剤と混合して適当な機械内で圧縮することによって調製することができる。成型錠剤は、有効錯体を不活性な液状希釈剤と共に成型することによって作ることができる。錠剤は、任意にコーティングすることができ、またコーティングしない場合任意に溝をつけることができる。カプセル剤は、有効錯体を単独で又は1種以上の付属成分との混合物でカプセルシェルに充填し、次いでこれらを通常の方法で封止することによって調製することができる。カシェ剤はカプセル剤に類似し、有効錯体を任意の付属成分と一緒にライスペーパー包装材料で封止したものである。有効錯体はまた、例えば投与前に水に懸濁し得るか又は食物に振りかけ得る分散性顆粒として調剤することができる。顆粒を、例えば小袋に充填することができる。担体が液体である経口投与に適した製剤は、液剤として又は水性若しくは非水性溶液中の懸濁剤として又は水中油型液状エマルションとして提供し得る。
【0058】
経口投与用製剤は、制御放出剤形、例えば、有効錯体を適当な放出制御マトリックス中に調剤するか又は適当な放出制御皮膜でコーティングした錠剤を包含する。かかる製剤は特に予防的使用に便利である。
【0059】
担体が固体である直腸投与に適した医薬製剤は、単位用量坐剤として最も好ましく提供される。適当な担体としては、ココアバター及び当業界で通常用いる他の材料が挙げられる。坐剤は、有効錯体を軟化した又は溶融した担体と混合し、次に鋳型の中で冷却し成形することによって便利に形成することができる。
【0060】
腸管外投与に適した医薬製剤は、水性又は油性ビヒクル中の有効錯体の無菌の液剤又は懸濁剤を包含する。
【0061】
注射製剤は、ボーラス注射又は連続点滴に適し得る。かかる製剤は、該製剤の導入後使用が必要となるまで封止した単位用量又は多回投与容器で便利に提供する。あるいは、有効錯体を、使用前に無菌でパイロジェンを含まない水のような適当なビヒクルで作製する粉末剤の形態とすることができる。
【0062】
有効錯体はまた、筋肉内注射又は移植により、例えば皮下に又は筋肉内に、投与し得る長時間作用型デポー製剤として調剤することができる。デポー製剤は、例えば適当な高分子若しくは疎水性材料、又はイオン交換樹脂を含んでもよい。かかる長時間作用型製剤は予防用途に特に好都合である。
【0063】
口腔を介する経肺投与に適した製剤は、有効錯体を含有し望ましくは0.5〜7ミクロンの直径を有する粒子が被投与者の気管支樹に送達されるように提供する。
【0064】
一つの可能性として、かかる製剤は、吸入器具での使用に適した例えばゼラチンの穴あきカプセルで、あるいは有効錯体と適当な液体又は気体噴霧剤と任意で界面活性剤及び/若しくは固形希釈剤のような他の成分とを含む自己発射製剤として、便利に提供し得る細かく粉砕した粉末剤の形態である。適当な液体噴霧剤としてはプロパン及びクロロフルオロカーボンが挙げられ、適当な気体噴霧剤としては二酸化炭素が挙げられる。有効錯体を溶液又は懸濁液の液滴の形態で調合する自己発射製剤も用いることができる。
【0065】
かかる自己発射製剤は、当業界で既知のものに類似し、確立された手順によって調製し得る。これらは、所望の噴霧特性を有する手動で操作可能な又は自動的に機能する弁を備えた容器で適当に提供され;弁は、その各作動で例えば25〜100マイクロリッターの固定容積を供給する定量型のものであるのが有利である。
【0066】
更なる可能性としては、有効錯体をアトマイザー又はネブライザー用の溶液又は懸濁液の形態とすることができ、これにより加速気流又は超音波攪拌を用いて吸入用の細かな液滴の霧を生成する。
【0067】
経鼻投与に適した製剤は、上記経肺投与について述べたものと一般に類似した製剤を包含する。投与に際し、かかる製剤が望ましくは鼻腔内に保持することができる10〜200ミクロンの粒径を有するべきであり;これは、必要に応じて、適当な粒径の粉末の使用又は適当な弁の選択によって達成することができる。他の適切な製剤は、鼻の近くに持ち上げた容器から鼻孔を通る急速吸入による投与用に20〜500ミクロンの粒径を有する粗い粉末剤及び0.2〜5%w/vの有用錯体の水性又は油性の溶液又は懸濁液を含む点鼻剤を包含する。
【0068】
上記医薬製剤は、上述の担体成分に加えて、希釈剤、緩衝液、香味剤、結合剤、表面活性剤、増粘剤、潤滑剤、保存剤(抗酸化剤を含む)などのような適当な1種以上の追加の担体成分と、製剤を意図する被投与者の血液と等張にする目的で含める物質とを含み得ることを理解すべきである。
【0069】
医薬として許容し得る担体は、当業界で周知であり、限定しないが、0.1M、好ましくは0.05Mのリン緩衝液又は0.8%生理食塩水が挙げられる。更に、かかる医薬として許容し得る担体は、水溶液又は非水性溶液、懸濁液及びエマルションとすることができる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油及びオレイン酸エチルのような注射用有機エステルである。水性担体としては、水、アルコール/水溶液、生理食塩水及び緩衝媒体を含むエマルション又は懸濁液が挙げられる。非経口ビヒクルは、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸化リンゲル又は固定油を包含する。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなどのような保存剤及び他の添加剤も存在し得る。
【0070】
局所製剤に適した製剤を、例えばゲル、クリーム又は軟膏として提供することができる。かかる製剤は、例えば傷若しくは潰瘍に、傷若しくは潰瘍の表面上に直接広げて又は治療すべき領域上に施用し得る包帯、ガーゼ、メッシュなどのような適切な支持体上に担持させて適用することができる。
【0071】
例えば傷又は潰瘍のような治療すべき部位の上に直接噴霧するか又は振りかけることができる液体又は粉末製剤も提供し得る。あるいは、包帯、ガーゼ、メッシュなどのような担体に製剤を噴霧するか又は振りかけて、次いで治療すべき部位に適用することができる。
【0072】
家畜への使用のための治療用製剤は、粉末剤又は濃縮液の形態とし得るのが好都合である。標準的な家畜製剤の慣習に従って、ラクトース又はスクロースのような従来の水溶性賦形剤を粉末剤に組み込んで、物理特性を改善することができる。従って、本発明の特に適した粉末剤は50〜100%w/w、好ましくは60〜80%w/wの有効成分と、0〜50%w/w、好ましくは20〜40%w/wの従来の家畜用賦形剤とを含む。これらの粉末剤を動物飼料に、例えば中間プレミックスにより添加するか又は動物飲料水に希釈することができる。
【0073】
本発明の濃縮液は、錯体又はその誘導体若しくは塩を適当に含み、任意で家畜用として許容し得る水混和性溶媒、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、グリセロールホルマール又は最大30%v/vのエタノールを混合した溶媒のようなものを含み得る。前記濃縮液を動物の飲料水に投与することができる。
【0074】
本発明の更に好ましい特徴及び利点は、添付した図面を参照して説明する下記の幾つかの実施形態の詳細な説明から分かるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1は、X線によって決定した水酸化金(I)錯体の構造を示す。
【図2】図2は、X線によって決定した本発明の二金錯体の構造を示す。
【図3】図3は、本発明の錯体を触媒として使用して得られた結果の表を示す。
【実施例】
【0076】
[幾つかの好ましい実施形態及び実験結果の記載]
[水酸化金(I)錯体]
2の形成は、室温のジクロロメタンにおけるCsOH.HOと1の[Au(IPr)(Cl)]との反応を使用することによって達成した(単離収率88%)。より一般的には、上記スキーム1の条件を用いる(THFとトルエンの1:1溶液、24時間、60℃)場合、NaOH及びKOHの双方を用いて、それぞれ92%及び92%の高収率の所望の[Au(OH)(IPr)](2)を生成させることもできた。
【0077】
上記スキーム1に図示した錯体2である[Au(OH)(IPr)]を、分光法及び単結晶X線分光法によって特徴付けた。[Au(OH)(IPr)](2)のH NMRは、NHC骨格の2個の水素についてCDClにおいて7.12およびCDClにおいて7.20の一重線を示す(参考文献17)。それに対し、[AuCl(IPr)](1)のNHCプロトンは0.07ppm低磁場にシフトする。2のカルベン性炭素13C NMR共鳴がCDClにおいて171.9ppmで見られた。金−水酸化物フラグメントの存在は、赤外線スペクトルの特徴的なO−H伸縮(3627cm−1)によって確かめられる。
【0078】
X線研究のため、錯体を含有する飽和ジクロロメタン溶液へのペンタンの遅延拡散によって単結晶を成長させた。Au−OH結合は特徴が共有結合性であり、C1炭素(IPrの)−Au−O配置は図1に示すX線データに由来する構造の表示で示されるように直線状である。
【0079】
図1において、明確にするため大部分のH原子を省略する。2について選択した結合距離(Å)及び角度(°):Au1−O1 2.078(6)、Au1−C1 1.935(6)、O1−H1 0.97(2)、C1−Au1−O1 177.1(3)、Au1−O1−H1 111.9(19)。
【0080】
2.078(6)ÅのAu−O1結合長は、金と酸素原子との間の共有結合を示す。直線状錯体について予測されるように、C1−Au1−O1の角度は177.1(3)°であると測定された。
【0081】
[水酸化金(I)錯体の反応性]
上で議論しスキーム2で図示した反応に加えて、下記に示すように錯体2の [Au(OH)(IPr)]をフルオロアレーンと反応させて、プロトノリシス反応を受ける2の能力の評価を得る。
【0082】
【化12】

【0083】
フルオロアレーン10(a−b)を伴うプロトノリシス反応[下記表1]は、出発物質の完全な転化及び対応する錯体11a及び11bへのそれぞれ単離収率86%及び93%の転化をもたらした。しかしながら、トリフルオロベンゼン10cの場合、反応が観察されず、2が変化せずに回収されたため、これはあてはまらない。これらの反応結果及び10に対するプロトンの既知pK値(基質に対するプロトンの酸性度の測定値)から、最高29〜31のpK値のプロトンに関連するプロトノリシス反応は成功するであろうことが推定される(参考文献11)。
【0084】
【表1】

【0085】
下記に示すようなトリフェノール、フェノール及びアニリンとの2の反応性を比較する更なる研究は、2の塩基性を確認した。
【0086】
【化13】

【0087】
【表2】

【0088】
pKが10.3のp−チオクレゾール(14a)のヘテロ原子が持つプロトン(参考文献26)は、室温で2と容易に反応して高い単離収率の15aをもたらす。pKが18.9のp−クレゾール(14b)の酸性度の低いプロトン(参考文献12)は依然として29〜31の推定限界値をはるかに下回っており、15bの形成がきれいに観察される。pKが30と推定される最も難しいp−トルイジン(14c)は、より一層厳しい条件及び温度を必要として、水の排除及び15cの形成をもたらした。
【0089】
[二核金錯体]
下に図示する錯体12の [{Au(IPr)}(μ−OH)]BFは様々な経路によって作成することができる。
【0090】
【化14】

【0091】
大気下水中で60℃にて3日間攪拌することにより13 の[Au(IPr)(CHCN)]BFから製造して、高収率で12の形成をもたらす。水性母反応物からDCMで12の簡単な抽出を試みると、問題がある。その理由は、この簡単な操作下で12が転化して13に戻るからである。12の満足な単離は、有機相を水洗し、続いて単離可能な生成物を濾過により回収することによって達成された。
【0092】
より経済的で実用的な合成経路は、[Au(OH)(IPr)](2)を利用することであり、ベンゼン中室温で4時間0.5当量のHBF・OEtとの簡単な反応を行って90%の単離収率で12を生成する。
【0093】
錯体12の [{Au(IPr)}(μ−OH)]BFはまた,[Au(IPr)Cl]から出発して作成することができる。クロリドをAgBFで引き抜いて形式的に推定[Au(IPr)]BF種を発生させ、沈殿したAgClをセライトによる濾過によって除去した後、有機相を水で3回洗った。DCM/ペンタンからの再結晶化により81%の収率で12を得た。
【0094】
[Au(IPr)(OH)](2)はまた、高価な感光性及び感湿性の銀塩を用いることなく、無水条件下での[Au(IPr)(CHCN)] BF(13)の合成に上手く用いることができる。錯体2を1当量のアセトニトリルの存在下で1当量のHBF・OEtと単純に反応させて13への完全な転化を得る。
【0095】
[ [{Au(IPr)}(μ−OH)]BF(12)及び[Au(IPr)(CHCN)] BF(13)の詳細な合成方法]
12の経路A:[Au(IPr)(CHCN)] BF(13)(2g、2.80mmol)を水(3mL、167mmol)に懸濁し、空気中60℃で72時間攪拌した。反応混合物をDCMで抽出し、有機相を大過剰の水で4回洗い、MgSOの上で乾燥させた。この混合物を濾過し、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。生成した白色粗生成物をCHCl/ペンタンから再結晶化して、1.71g(96%)の白色微結晶固体を得た。
【0096】
12の経路B:[Au(OH)(IPr)](2)(97mg、0.160mmol)をベンゼン(2mL)に溶解し、テトラフルオロホウ酸−ジエチルエーテル錯体(11.0μL、0.080mmol)をシリンジによって加えた。反応混合物を室温で4時間攪拌した。反応物にペンタンを加えて生成物を白色固体として沈殿させた。白色粗生成物をCHCl/ペンタンから再結晶化して92mg(90%)の白色微結晶固体を得た。
【0097】
H NNR(400MHz、CDCI):δ 7.50(t, J=7.8Hz, 4H),7.26 (s, 4H),7.24(d, J=7.8Hz, 8H),2.39(sept, J=6.9Hz, 8H),1.19(d, J=6.9Hz, 24H),1.11(d, J=6.9Hz, 24H)。13C NMR(75MHz, CDCI):δ162.6,145.4,133.6,130.7,124.4,124.2,124.1,28.6,24.4,23.8。19F NMR(185Hz):δ −154.90,−154.85。IR(cm−1):3621,3167,3137,3084,2964, 2928, 2871 , 1596, 1553, 1472, 1421 , 1386, 1365, 1329, 1215, 1058, 947, 807, 762, 707, 581 , 455。元素分析 (計算値): C 51.06(50.87), H 5.27(5.77), N 4.36(4.39)。
【0098】
2からの[Au(IPr)(CHCN)]BF(13)の合成:[Au(OH)(IPr)]をトルエン(2mL)に溶解し、トリフルオロホウ酸−ジエチルエーテル錯体(0.23mL、0.166mmol)をシリンジによって加えた。次いで、アセトニトリルを加えて、この不均質反応混合物を室温で2時間攪拌した。ペンタンを加えて、114mg(96%)の白色微結晶固体を沈殿させ、そのNMRはデータ13の合成を裏付けた。H NMR(400 MHz,CDCI):δ 7.58(t,J=7.8Hz,2H),7.38(s,2H),7.34(d,J=7.8Hz,4H),2.44(sept,J=6.9Hz,4H),2.39(s,3H),1.29(d,J=6.9Hz,12H),1.24(d,J=6.9Hz,12H)。13C NMR(100MHz,CDCI):δ 166.3,145.5,133.0,131 .5,124.8,124.6,121.0,28.9,24.7,24.0,2.7。19F NMR(185Hz): δ −154.98,−153.92。
【0099】
[12の構造]
錯体12である [{Au(IPr)}(μ−OH)]BFはX線によって図2に示す構造を有することが分かった。
【0100】
12の構造の選択した結合距離[Å]及び角度[°]:Au1−Au2,3.746(1);Au1−01,2.070(5);Au2−01,2.072(5);Au1−C1,1.957(7);Au2−C31,1.948(7);Au1−O1−Au2,129.5(3);O1−H10,0.97(2);Au1−O1−H10,105(5);Au2−O1−H10,107(5);C1−Au1−O1,174.2(2);C31−Au2−01,173.8(2)。DFT値:Au−Au 3.886;Au−O 2.081;Au−C 1.974;O−H 0.976;Au−O−Au 137.9;Au−O−H 109.7。
【0101】
Au1−C1(1.957(7)Å)及びAu2−C31(1.948(7)Å)結合距離は2の実測値(1.935(6)Å)よりも長かった。12の実測Au1−Au2距離は3.746Åであり、ファンデルワールス相互作用の範囲内である。錯体12は、Schmidbar及び共同研究者らによって報告され、2.4384(6)ÅのAu−Br結合長及び3.6477(1)ÅのAu−Au結合距離が実測される二核の[{(PhP)Au}Br]BF錯体を思い起こさせる(参考文献14および15)。
【0102】
[水酸化金(I)錯体及び二核水酸化金錯体の触媒活性]
[A:ニトリルの水和]
[Au(IPr)(OH)](2)を水性媒体中140℃(マイクロ波加熱)でベンゾニトリルのベンズアミドへの水和について試験して、1時間後に23%の収率を得た。これに対し、2.5mol%の [{Au(IPr)}(μ−OH)]BF(12)は、15分後に87%の転化率をもたらし、30分後に転化率が96%に達した。
【0103】
これは、140℃で15分後に5mol%を与え、ベンゾニトリルのベンズアミドへの転化率が54%である既知の触媒[Au(IPr)(NTf)](16:NTf=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミデート)の使用に引けを取らない。
【0104】
単離した12を用いて得た結果は、次の一般的な手順を用いて実施した反応と共に下の表3にまとめて示す。
【0105】
代表的な反応では、大気下で2mLのマイクロ波バイアル中のTHF(0.5mL)に[Au(IPr)(NTf)](13mg、20μmol、2mol%)又は[{Au(IPr)}(μ−OH)]BF(17mg,10μmol、1mol%)を加えた。ベンゾニトリル(103mg、1mmol)を加え、次に蒸留HO(500μL)を加えた。このバイアルをシールして、140℃で2時間(7bar)、マイクロ波で加熱した。転化率はガスクロマトグラフィーによって決定した。
【0106】
【表3】

【0107】
[Au(IPr)(OH)](2)からの [{Au(IPr)}(μ−OH)]BF(12)の現場調製は等しく良好な結果を提供する。2及び基質を含有する反応混合物への0.5当量のHBF・OEt(金に対して)の添加は、予備単離した12を用いた場合と同一の触媒転化率をもたらす。
【0108】
単離した12の使用によるか又は12の現場調製による触媒作用を以下で反応B〜Iによってさらに説明する。
【0109】
[B:エニンの骨格転位]
乾燥ジクロロメタン中で、Echavarrenの過程(参考文献16)に従って、室温での25分間の完全な転化で骨格転位が観察された。先行技術におけるように銀化合物を必要とはしない。
【0110】
【化15】

【0111】
[C:エニンのアルコキシ環化]
この反応はEchavarrenによって以前に報告されており(参考文献17)、Au(Me)(PPh)(3mol%)及びHBF(6mol%)を室温で4時間反応させる。Gagoszも現場で生成させた幾つかの触媒を用いたこのアルコキシ環化を報告している(参考文献18)。最も良好な以前の結果は、X−Phos及びSbFを対陰イオンとして持つ陽イオン性金錯体で得られた。 [{Au(IPr)}(μ−OH)]BF(12)の現場生成を用いた結果は優れており、反応はより容易に実施される。
【0112】
【化16】

【0113】
[D:アルキン水和]
この反応については、ジオキサン/水(2:1)混合物中5mol%のAu(IPr)Clと10mol%のAgSbFとを80℃で1時間30分使用したことが以前に報告されている(参考文献19)。Tanakaは金前駆体の別の酸活性化を報告した(参考文献20)。メタノール/水(2/1〜6/1)中1mol%の[Au(PPh)Me]と50mol%のHSOとを70℃で5時間反応させて53%の単離収率をもたらした。本方法は、銀を必要とせず実施が比較的単純である。
【0114】
【化17】

【0115】
[E:マイヤー・シュスター反応]
マイヤー・シュスター反応については、MeOH/水混合物中2mol%の[(IPr)AuCl]/AgSbFを60℃で一晩使用したことが以前に報告されている(参考文献21)。反応は今や銀を用いずに行うことができる。
【0116】
【化18】

【0117】
[F:アリル性アセテートの3,3’転位]
DCE中3mol%の[(IPr)AuCl]と2mol%のAgBFとを80℃で12分間使用したことが以前に報告されている(参考文献22)。下記の反応は銀共触媒/活性剤の使用を必要としない。
【0118】
【化19】

【0119】
[G:プロパギル性アセテートの環化]
以前、2mol%の[(IPr)AuCl]と2mol%のAgBFとをDCM中室温で12分間使用したことが報告されている(参考文献23)。12(現場で生成)を用いることによって、この場合も同様に銀を必要としない。
【0120】
【化20】

【0121】
[H:ベックマン型転位]
以前には、5mol%のAu(IPr) Clと10mol%のAgBFとを無溶媒100℃で20時間用いていた(参考文献24)。銀は作用機序において役割を果たすと推測されていた。この反応は今や銀を用いずに行われる。
【0122】
【化21】

【0123】
[I:ヒドロアミノ化]
Widenhoeferは、幾つかの条件を用いてこの反応を達成した:ジオキサン中[Au(PPh)Cl]5mol%とAgOTf5mol%を60℃で18時間(参考文献25);ジオキサン中[Au(IPr)Cl]5mol%とAgOTf5mol%を45℃で15時間(参考文献26)。
【0124】
12又は2から現場で生成させた12を用いる場合、銀を必要としない。
【0125】
【化22】

【0126】
反応A〜Iの結果の要約を表4に示し(図2)、ここでAuOHは[Au(IPr)(OH)](2)の使用を参照し(HBFを用いる場合12を現場生成し)、Au(μOH)は前もって単離して反応混合物に加えた[{Au(IPr)}(μ−OH)]BF(12)の使用を参照する。
【0127】
[ヒト癌細胞に対する水酸化金錯体の活性]
本発明の水酸化金錯体を、ヒト癌細胞株に対するその細胞毒性について評価した。
【0128】
下記に示すように、LNCaP(前立腺癌)細胞株、MDA MB231(乳癌)細胞株及びB42 CL16(乳癌)細胞株を用いて、錯体2のIC50濃度及びIC10濃度を試験した。
【0129】

【0130】
ヒト尿路上皮細胞株(SV−HUC−1)及び膀胱癌細胞株(MGH−U1)に対する2の活性も測定して結果を下記に示す。
【0131】

【0132】
同じ患者由来のヒト前立腺上皮細胞株P21TZ及び前立腺癌細胞株P21PZに対する2の活性も下記に示す。
【0133】

【0134】
抗癌剤シスプラチンの細胞毒性も、下記のように比較目的で3つのこれら細胞株に対して評価した。これらの結果は、錯体2がシスプラチンよりも更に低いIC50値を有することを示している。
【0135】

【0136】
確立された前立腺癌株及び乳癌株(LNCaP及びMDA MB231)は膀胱細胞株(SV−HUC−1及びMGH-U1)よりも感受性が低く、また前記膀胱細胞株は前立腺細胞株及び乳房細胞株(B42 CL16及びP21TZ及びP21PZ)と同様の感受性を有した。同じ患者に由来する正常上皮細胞と腫瘍細胞との間では感受性がわずかに相違しているだけであった。2の全体の活性は、シスプラチンによって示されたものを上回った。
【0137】
[試験プロトコル]
細胞毒性アッセイ:化合物/錯体をDMSOに溶解しDMSOで希釈した。最終希釈は個々の培地で行い、DMSOの最終濃度は常に0.01%未満であった。細胞をピペットでマイクロタイタープレート(NUNC)に4000細胞/ウェルで移し、空気中5%CO中37℃で24時間インキュベートした。様々な濃度の化合物/錯体を10μLの容積で細胞に加えた。これらのプレートを3日間5%COの空気中27℃でインキュベートした。光の不存在下で3時間インキュベーションした後、Dojindo kit CCK−8(細胞係数キット−8、DojindoテクノロジーズUSA、CK04−11)法を用いて、細胞の生存率を測定した。これらのプレートをELISAプレートリーダー上で450nmの波長で読み取った。
【0138】
参考文献

【0139】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Z−Au−OH形状の水酸化金(I)錯体又は下記一般式Vの水酸化二金(I)錯体:
【化1】


(式中、基Zは、各存在について同一でも異なってもよい2電子供与配位子であり;Aは、触媒としての陰イオンである)の使用。
【請求項2】
前記錯体を、ニトリルの水和、エニンの骨格転位、エニンのアルコキシ環化、アルキン水和、マイヤー・シュスター反応、アリル性アセテートの3,3’転位、プロパギル性アセテートの環化、ベックマン転位及びヒドロアミノ化からなる群より選択した変換を実施するための触媒として若しくは触媒の現場生産用に使用する請求項1に記載の使用。
【請求項3】
医薬用のZ−Au−OH形状の水酸化金(I)錯体又は下記一般式Vの水酸化二金(I)錯体:
【化2】


(式中、基Zは、各存在について同一でも異なってもよい2電子供与配位子であり;Aは、触媒としての陰イオンである)。
【請求項4】
癌治療用のZ−Au−OH形状の水酸化金(I)錯体又は下記一般式Vの水酸化二金(I)錯体:
【化3】


(式中、基Zは、各存在について同一でも異なってもよい2電子供与配位子であり;Aは、触媒としての陰イオンである)。
【請求項5】
前記錯体が一般式Vのもので、前記AをBF、PF、SbF、[B{C(CF)}]及び[B(C)]からなる群より選択する請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記基Zをカルベン、ホスフィン及びホスファイト2電子供与配位子からなる群より選択する請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記基Zを1個以上のヘテロ原子を有する環式又は非環式カルベン、トリフェニルホスフィン、置換トリフェニルフェニルホスフィン、トリフェニルホスファイト及び置換トリフェニルホスファイトからなる群より選択する請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記基Zが、窒素含有複素環式カルベン配位子である請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記窒素含有複素環式カルベン配位子が、環中に2個以上の窒素原子を含有する及び/又は環中に少なくとも1個のO又はSを含有する請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記窒素含有複素環式カルベン配位子が、
【化4】

(式中、基Rは同一でも異なってもよく、基Rは存在する場合同一でも異なってもよく、環中の点線は任意の不飽和を表し、任意で環中の1個以上の炭素原子がO又はSで置換されている)の形状のものである請求項8又は9に記載の使用。
【請求項11】
前記窒素含有複素環式カルベン配位子が、環中に各々がカルベン炭素に隣接する2個の窒素原子を有する請求項9に記載の使用。
【請求項12】
前記窒素含有複素環式カルベン配位子が
【化5】

(式中、基R、R、R、R及びRは同一でも異なってもよく、環中の点線は任意で不飽和を表し、その場合R及びRは存在しない)の形状を有する請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記窒素含有複素環式カルベン配位子が、下記式I〜IV:
【化6】


(式中、各基R、R及びRは、各存在について独立してH、置換若しくは未置換であり得る一級又は二級アルキル基、置換若しくは未置換フェニル、置換若しくは未置換ナフチル、置換若しくは未置換アントラセニル、又はハロ、ヒドロキシル、スルフヒドリル、シアノ、シアナト、チオシアナト、アミノ、ニトロ、ニトロソ、スルホ、スルホナト、ボリル、ボロノ、ホスホノ、ホスホナト、ホスフィナト、ホスホ、ホスフィノ及びシリルオキシからなる群より選択した官能基から選択され;R、R、R10及びR11は、各存在について各々独立してH、置換若しくは未置換アルキル基、置換若しくは未置換アリール基、又は式(II)及び(IV)ではそれらを担う炭素と一緒に置換若しくは未置換の縮合4〜8員炭素環又は置換若しくは未置換の縮合芳香族環、好ましくは縮合フェニル環を形成し;R12はアルキル又はシクロアルキルである)のいずれか一つの構造を有する請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記窒素含有複素環式カルベン配位子が下記式
【化7】


のいずれか一つの構造を有する請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記水酸化金錯体が下記構造式
【化8】


を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
前記水酸化金錯体が下記構造式
【化9】


を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
Z−Au−OH形状の水酸化金(I)錯体又は下記一般式Vの水酸化二金(I)錯体:
【化10】


(式中、基Zは、各存在について同一でも異なってもよい2電子供与配位子であり;Aは、陰イオンであり;ただしAがBFである場合、両Z基が同一でPR形状のホスフィンであり、各R基はメシチルでない)。
【請求項18】
前記錯体が式Vのものであり、前記陰イオンAをBF、PF、SbF、[B{C(CF)}]及び[B(C)]からなる群より選択する請求項17に記載の錯体。
【請求項19】
前記基Zをカルベン、ホスフィン及びホスファイト2電子供与配位子からなる群より選択する請求項17又は18に記載の錯体。
【請求項20】
前記基Zを1個以上のヘテロ原子を有する環式又は非環式カルベン、トリフェニルホスフィン、置換トリフェニルフェニルホスフィン、トリフェニルホスファイト及び置換トリフェニルホスファイトからなる群より選択する請求項19に記載の錯体。
【請求項21】
前記基Zが窒素含有複素環式カルベン配位子である請求項20に記載の錯体。
【請求項22】
前記窒素含有複素環式カルベン配位子が、環中に2個以上の窒素原子を含有する及び/又は環中に少なくとも1個のO又はSを含有する請求項21に記載の錯体。
【請求項23】
前記窒素含有複素環式カルベン配位子が、
【化11】

(式中、基Rは同一でも異なってもよく、基Rは存在する場合同一でも異なってもよく、環中の点線は任意の不飽和を表し、任意で環中の1個以上の炭素原子がO又はSで置換されている)の形状である請求項21又は22に記載の錯体。
【請求項24】
前記窒素含有複素環式カルベン配位子が、環中に各々がカルベン炭素に隣接する2個の窒素原子を有する請求項22に記載の錯体。
【請求項25】
前記窒素含有複素環式カルベン配位子が
【化12】

(式中、R、R、R、R及びRは同一でも異なってもよく、環中の点線は任意で不飽和を表し、その場合R及びRは存在しない)の形状を有する請求項24に記載の錯体。
【請求項26】
前記窒素含有複素環式カルベン配位子が、下記式I〜IV:
【化13】


(式中、各基R、R及びRは、各存在について独立してH、置換若しくは未置換であり得る一級又は二級アルキル基、置換若しくは未置換フェニル、置換若しくは未置換ナフチル、置換若しくは未置換アントラセニル、又はハロ、ヒドロキシル、スルフヒドリル、シアノ、シアナト、チオシアナト、アミノ、ニトロ、ニトロソ、スルホ、スルホナト、ボリル、ボロノ、ホスホノ、ホスホナト、ホスフィナト、ホスホ、ホスフィノ及びシリルオキシからなる群より選択した官能基から選択され;R、R、R10及びR11は、各存在について各々独立してH、置換若しくは未置換アルキル基、置換若しくは未置換アリール基、又は式(II)及び(IV)ではそれらを担う炭素と一緒に置換若しくは未置換の縮合4〜8員炭素環又は置換若しくは未置換の縮合芳香族環、好ましくは縮合フェニル環を形成し;R12はアルキル又はシクロアルキルである)のいずれか一つの構造を有する請求項25に記載の錯体。
【請求項27】
前記窒素含有複素環式カルベン配位子が下記式
【化14】


のいずれか一つの構造を有する請求項26に記載の錯体。
【請求項28】
下記構造式
【化15】


を有する請求項17項に記載の錯体。
【請求項29】
下記構造式
【化16】


を有する請求項17項に記載の錯体。
【請求項30】
Z−Au−X形状(式中、Xはハロゲンである)のハロゲン化金(I)錯体をアルカリ金属水酸化物と反応させることを備える、請求項17〜27及び29のいずれか1項に記載のZ−Au−OH形状の水酸化金(I)錯体の製造方法。
【請求項31】
請求項17〜28のいずれか1項に記載のZ−Au−OH形状の少なくとも1種の金(I)錯体とHA形状の酸を反応させることを備える、下記一般式V:
【化17】


の金錯体の製造方法。
【請求項32】
Z−Au−OH形状の水酸化金(I)錯体又は下記一般式Vの水酸化二金(I)錯体:
【化18】


(式中、基Zは、各存在について同一でも若異なってもよい2電子供与配位子であり;Aは、陰イオンである)をヒト又は動物の被検体へ投与することを備える、癌の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−521268(P2013−521268A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555480(P2012−555480)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【国際出願番号】PCT/GB2011/000284
【国際公開番号】WO2011/107736
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(511083994)ユニバーシティー コート オブ ザ ユニバーシティー オブ セイント アンドリューズ (5)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY COURT OF THE UNIVERSITY OF ST ANDREWS
【Fターム(参考)】