説明

針付きバレル及びプレフィルドシリンジ

【課題】 バレルに針を溶着させる際に、針固定部の先端にバリ等が形成されるのを防止できる針付きバレル及びプレフィルドシリンジを提供する。
【解決手段】 筒状に形成されるバレル1と、バレル1に固定される針2とを備え、バレル1は、内部に挿入される針2を固定する筒状の針固定部12を先端部に備え、針固定部12は、熱可塑性を有し且つ加熱されることで針2を溶着する溶着部12aを備える針付きバレルにおいて、溶着部12aは、軸心方向において針固定部12の先端から離間した位置に配置されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状に形成されるバレルに針が固定される針付きバレルと、該針付きバレルを備えるプレフィルドシリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、針付きバレルとして、筒状に形成されるバレルに針が固定されている針付きバレルが知られている。そして、斯かる針付きバレルによれば、バレルの先端部には、内部に挿入される針を固定する筒状の針固定部が設けられ、熱可塑性を有する針固定部の先端が加熱されることで、バレルに針が溶着されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−249073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に係る針付きバレルにおいては、バレルに針を溶着させるのに、熱可塑性を有する針固定部の先端が加熱されるため、針固定部の先端が変形する。このときに、バリ(加工過程で縁等に形成される突起)等が針固定部の先端に形成される場合がある。そして、バリ等が針固定部の先端に形成されると、例えば、皮下注射用注射器や皮内注射用注射器のように短い針が使用される際には、針固定部の先端が肌に接触され易いため、バレルが注射を受ける者に嫌悪感を与える場合もある。
【0005】
よって、本発明は、斯かる事情に鑑み、バレルに針を溶着させる際に、針固定部の先端にバリ等が形成されるのを防止できる針付きバレル及びプレフィルドシリンジを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る針付きバレルは、筒状に形成されるバレルと、バレルに固定される針とを備え、バレルは、内部に挿入される針を固定する筒状の針固定部を先端部に備え、針固定部は、熱可塑性を有し且つ加熱されることで針を溶着する溶着部を備える針付きバレルにおいて、溶着部は、軸心方向において針固定部の先端から離間した位置に配置されることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る針付きバレルによれば、溶着部は、熱可塑性を有すると共に、加熱されることで針を溶着する。そして、溶着部が、軸心方向において針固定部の先端から離間した位置に配置されているため、針固定部の先端に、バリ等が形成されるのを防止することができる。
【0008】
また、本発明に係る針付きバレルにおいては、バレルは、溶着部が接触されるのを抑制すべく、溶着部を含む部位が凹状となるように形成されてもよい。
【0009】
斯かる構成の針付きバレルによれば、溶着部を含む部位が凹状となるように、バレルが形成されている。したがって、例えば、注射を受ける者の肌には、溶着部を含む凹状の部位よりも、その周りの部位の方が接触し易くなるため、注射を受ける者の肌に、溶着部が接触するのを抑制できる。
【0010】
また、本発明に係る針付きバレルにおいては、針固定部は、針の外周部と当接することで針を径方向で支持する支持部を備え、溶着部は、軸心方向において針固定部の基端からも離間した位置に配置され、支持部は、軸心方向において溶着部の両側の位置にそれぞれ配置されてもよい。
【0011】
斯かる構成の針付きバレルによれば、針固定部に設けられる支持部は、針の外周部と当接することで針を径方向で支持する。そして、溶着部が軸心方向において針固定部の先端だけでなく基端からも離間した位置に配置されているのに対して、支持部は、軸心方向において溶着部の両側の位置にそれぞれ配置されている。したがって、針固定部における溶着部となる部位が加熱されて溶融する際に、支持部が溶着部の両側の位置で針を支持するため、針が針固定部に対して位置ズレするのを防止できる。
【0012】
また、本発明に係る針付きバレルにおいては、針固定部は、先端部で且つ内周部に凹状部を備えてもよい。
【0013】
斯かる構成の針付きバレルによれば、針固定部の先端部で且つ内周部に、凹状部が設けられている。これにより、針が針固定部の先端側から針固定部の内部に挿入される際に、凹状部が針固定部の内部に針を案内するため、針固定部の内部に針を確実に挿入することができる。
【0014】
さらに、例えば、一般的に、針固定部から露出している針の外周部に、シリコン等の表面処理材が塗布されている。そして、針の先端側を上方に向けた状態で、表面処理材が硬化する際に、表面処理材が針固定部の先端に向けて流れた(垂れた)場合であっても、凹状部が表面処理材を収容できるため、針固定部の外周部に表面処理材が付着するのを防止できる。
【0015】
また、本発明に係るプレフィルドシリンジは、前記の針付きバレルと、バレルの内部に充填された充填物を封止すべくバレルの内部に挿入される弾性のガスケットとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上の如く、本発明に係る針付きバレル及びプレフィルドシリンジによれば、バレルに針を溶着させる際に、針固定部の先端にバリ等が形成されるのを防止できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るプレフィルドシリンジの全体図であって、(a)は正面図、(b)はA−A線における断面図を示す。
【図2】同実施形態に係るプレフィルドシリンジの要部断面図であって、図1のB領域における拡大図を示す。
【図3】同実施形態に係るプレフィルドシリンジの要部断面図であって、(a)は図2のC領域における拡大図、(b)は図2のD領域における拡大図、(c)はE−E線における断面図を示す。
【図4】同実施形態に係る針付きバレルの製造方法を説明する図であって、(a)及び(b)はそれぞれ要部縦断面図を示す。
【図5】同実施形態に係る針付きバレルの製造方法を説明する図であって、(a)は要部縦断面図、(b)は要部正面図を示す。
【図6】本発明の他の実施形態に係る針付きバレルの要部図であって、(a)は正面図、(b)は縦断面図を示す。
【図7】本発明のさらに他の実施形態に係る針付きバレルの要部断面図であって、(a)は縦断面図、(b)はF領域における拡大図、(c)はG−G線における断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るプレフィルドシリンジにおける一実施形態について、図1〜図5を参酌して説明する。
【0019】
本実施形態に係るプレフィルドシリンジは、図1〜図3に示すように、内部に充填物Xが充填される筒状のバレル1と、バレル1の内部の充填物Xを外部に注出すべく、バレル1の先端部に固定される針2とを備える。また、プレフィルドシリンジは、針2を覆うべく、バレル1の先端部に装着されるキャップ3を備える。
【0020】
さらに、プレフィルドシリンジは、バレル1の内部に充填された薬液等の充填物Xを封止するプランジャ8を備える。そして、プランジャ8は、バレル1の内部に挿入されて充填物Xを封止する弾性のガスケット81と、先端部がガスケット81とネジ結合されるプランジャロッド82とを備える。
【0021】
なお、バレル1に針2が固定された構造体を、「針付きバレル」といい、針付きバレル(バレル1及び針2)とプランジャ8との組立体とを、「シリンジ」という。また、図1の「上方(側)」を「先端(側)」又は「一方(側)」とし、図1の「下方(側)」を「基端(側)」又は「他方(側)」として、以下説明する。
【0022】
バレル1は、筒状に形成されるバレル本体11と、先端部に配置され、内部に挿入される針2を固定する筒状の針固定部12と、先端部に配置され、キャップ3と係合する筒状の係合部13とを備える。また、バレル1は、剛性を有するように形成されていると共に、熱可塑性を有する材質で形成されており、例えば、COP(シクロオレフィンポリマー)、COC(シクロオレフィンコポリマー)、PP(ポリプロピレン)、又はPE(ポリエチレン)といった樹脂やガラス等で形成されている。
【0023】
バレル本体11は、先端部に、キャップ3の基端部と当接する当接部111を備える。また、バレル本体11は、基端部に、指が掛けられるフランジ形状の指掛部112を備える。そして、バレル本体11は、外径が針固定部12の外径よりも大きく且つ係合部13の外径よりも大きくなるように形成されている。
【0024】
針固定部12は、バレル本体11の先端部から突出する円筒状の固定部本体121と、固定部本体121の内周部から径方向内方に突出し、針2の外周部と当接することで針2を径方向で支持する支持部122とを備える。また、針固定部12は、熱可塑性を有し且つ加熱されることで針2を溶着する溶着部(図2及び図3において、ドット領域にて図示しており、図5〜図7においても同様)12aと、加熱されずに針2と溶着しない非溶着部(非加熱部)12b,12bとを備える。
【0025】
固定部本体121は、先端部で且つ内周部に、凹状部121aを備える。そして、凹状部121aは、先端に向けて徐々に開口が拡がるようにテーパ状に形成されている。また、支持部122は、周方向に沿って環状に延設されている。そして、支持部122は、針固定部12の基端部に配置されている。したがって、支持部122は、溶着部12aより基端側の非溶着部12bである。
【0026】
係合部13は、円筒状に形成されていると共に、バレル本体11の先端部から突設されている。そして、係合部13は、内部に針固定部12が挿入されており、針固定部12の基端側を収容している。また、係合部13は、内径が針固定部12の外径よりも大きくなるように形成されている。
【0027】
溶着部12aは、軸心方向において、針固定部12の先端から離間した位置で且つ基端からも離間した位置に配置されている。具体的には、溶着部12aは、針固定部12における軸心方向の中途部に配置されている。これにより、非溶着部12b,12bは、溶着部12aの先端側と基端側とにそれぞれ配置されている。
【0028】
そして、溶着部12aは、周方向に亘って連続的に配置されている。また、溶着部12aは、外径が軸心方向で隣接する各非溶着部12bの外径よりも小さくなるように形成されている。即ち、溶着部12aは、針固定部12の外周部が凹状となるように形成されている。
【0029】
また、バレル1全体としては、溶着部12aを含む部位は、先端側に配置される非溶着部12bと、基端側に配置される係合部13との間に配置されることで、凹状に形成されている。具体的には、基端側の非溶着部12bのうち係合部13から突出している先端部と、溶着部12aとは、先端側に配置される非溶着部12bと、基端側に配置される係合部13との間に配置されることで、凹状に形成されている。
【0030】
針2は、溶着部12aに溶着される外周部に凹凸部21を備えている。具体的には、針2は、軸心方向の中途部に凹凸部21を備えている。そして、針2は、充填物Xが内部を流通するように筒状に形成されていると共に、先端部が先鋭となるように形成されている。また、針2は、剛性を有するように形成され、例えば、ステンレス鋼といった金属で形成されている。
【0031】
キャップ3は、バレル1の針固定部12、バレル1の係合部13、及び針2を収容すべく筒状に形成されていると共に、先端側が閉塞され且つ基端側が開放されるように形成されている。そして、キャップ3は、基端部が係合部13を外側から嵌合するように係合すると共に、基端部がバレル1の当接部111と当接することで、バレル1に装着される。
【0032】
また、キャップ3は、外径がバレル本体11の外径と同じ、又は、外径がバレル本体1の外径より小さくなるように形成されている。なお、キャップ3は、弾性を有するように形成され、例えば、ゴム等の樹脂で形成されている。
【0033】
本実施形態に係るプレフィルドシリンジの構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係るプレフィルドシリンジの製造方法について説明する。
【0034】
まず、滑らかに形成されている針2の外周部に、細かな粒体を衝突させる、所謂、サンドブラスト加工を行うことで、針2の外周部に凹凸部21が形成される。そして、図4(a)に示すように、バレル1の先端側が上方となるように、バレル1を配置させると共に、針固定部12の軸心と針2の軸心とが一致するように、バレル1と針2とを配置させた後に、針2を針固定部12の内部に挿入させる。このとき、針固定部12の固定部本体121の凹状部121aが針2を固定部本体121の内部に向けて案内する。
【0035】
すると、図4(b)に示すように、針2の基端部が針固定部12の支持部122に外側から嵌合されるため、針2の基端部が周方向において支持部122に支持される。斯かる状態においては、固定部本体121は、支持部122よりも先端側の位置、即ち、支持部122以外の部位で、針2と離間しており接触していない。
【0036】
なお、針2の外径が支持部122の内径と同じに形成されており、針2の基端部が支持部122に外側から嵌合される構成でもよく、或いは、針2の外径が支持部122の内径よりも若干大きく形成されており、針2が支持部122の内部に挿入されるのに伴って、支持部122が針2に圧接されて塑性変形することで、針2の基端部が支持部122に外側から嵌合される構成でもよい。
【0037】
斯かる状態においては、針2の先端側が把持手段(図示及び採番していない)に把持されることにより、針固定部12の軸心と針2の軸心とが一致するように、バレル1と針2とが保持されている。そして、バーナー等の加熱手段(図示及び採番していない)が針固定部12の軸心方向の中途部を加熱すると、針固定部12の加熱された部位が溶融する。
【0038】
その後、押圧手段(図示及び採番していない)が針固定部12の溶融した部位を径方向内方に向けて押圧することで、図5に示すように、針固定部12が変形して針2と当接する。このとき、針2の外周部に凹凸部21が形成されているため、針固定部12の溶融した部位が凹凸部21に密着するように変形する。そして、針固定部12の溶融した部位が冷却されると、斯かる部位、即ち、溶着部12aが針2を溶着する。
【0039】
なお、針固定部12を加熱する際には、加熱された部位が300℃以上となるように、また、溶着部12aの軸心方向の長さが3〜8mmとなるように、針固定部12を加熱するのが好ましい。また、溶着部12aの肉厚が0.5〜1.2mmとなるように、針固定部12の肉厚を設定するのが好ましい。
【0040】
その後、針2の滑り性を向上させるべく、針固定部12から露出している針2の外周部に、シリコン等の表面処理材(図示及び採番していない)が塗布された後に、針2の先端側を上方に向けた状態で、表面処理材を乾燥させる。このとき、針2の外周部に塗布されている表面処理材が垂れた場合には、固定部本体12の凹状部121aが表面処理材を受け入れて収容する。以上により、針付きバレルが完成する。
【0041】
そして、キャップ3をバレル1に装着した後に、バレル1の内部に、薬液等の充填物Xを充填し、さらに、ガスケット81を基端部側からバレル1の内部に挿入した後に、プランジャロッド82をガスケット81に結合する。これにより、図1〜図3に示すようなプレフィルドシリンジが完成する。
【0042】
以上より、本実施形態に係るプレフィルドシリンジによれば、熱可塑性を有し且つ加熱されることで針2を溶着する溶着部12aは、軸心方向において針固定部12の先端から離間した位置に配置されているため、針固定部12の先端にバリ等が形成されるのを防止できる。
【0043】
これにより、例えば、針固定部12に針2が溶着された後の製造工程において、針固定部12の先端に、異物が付着するのを抑制できると共に、注射器として使用される際に、バレル1が注射を受ける者に嫌悪感を与えるのを抑制できる。また、溶着部12aが針2に隣接されていないため、例えば、溶着部12aにバリ等が形成され、仮に溶着部12aに異物が付着したとしても、針2に異物が付着するのを防止できる。
【0044】
また、本実施形態に係るプレフィルドシリンジによれば、溶着部12aを含む部位は、先端側に配置される非溶着部12bと、基端側に配置される係合部13との間に配置されることで、凹状に形成されている。したがって、例えば、溶着部12aよりも、先端側の非溶着部12bや係合部13の方が、注射を受ける者の肌に接触し易くなるため、注射を受ける者の肌に、溶着部12aが接触するのを抑制できる。
【0045】
また、本実施形態に係るプレフィルドシリンジによれば、溶着部12aが針2の外周部に形成されている凹凸部21と密着している。したがって、針2の凹凸部21が軸方向及び周方向で溶着部12aに係止されているため、針2が針固定部12に確実に固定されている。
【0046】
また、本実施形態に係るプレフィルドシリンジによれば、針固定部12の先端部で且つ内周部に、凹状部121aが設けられている。これにより、針2が針固定部12の先端側から針固定部12の内部に挿入される際に、凹状部121aが針2を針固定部12の内部に案内するため、針固定部12の内部に針2を確実に挿入することができる。
【0047】
また、本実施形態に係るプレフィルドシリンジによれば、針固定部12から露出している針2の外周部に、表面処理材が塗布されている。そして、針2の先端側を上方に向けた状態で、表面処理材を乾燥させて硬化させる際に、表面処理材が針固定部12の先端に向けて垂れた場合であっても、凹状部121aが表面処理材を収容できるため、針固定部12の外周部に表面処理材が付着するのを防止できる。
【0048】
なお、本発明に係る針付きバレル及びプレフィルドシリンジは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0049】
例えば、上記実施形態に係る針付きバレル及びプレフィルドシリンジにおいては、溶着部12aが周方向に亘って連続的に配置される構成を説明したが、斯かる構成に限られない。具体的には、溶着部は、周方向において部分的に配置される構成、例えば、周方向に亘って断続的に配置される構成でもよい。
【0050】
また、上記実施形態に係る針付きバレル及びプレフィルドシリンジにおいては、溶着部12aが針固定部12の軸心方向における中途部に配置される構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、溶着部は、針固定部の軸心方向における基端を含む部位に配置される構成でもよい。
【0051】
また、上記実施形態に係る針付きバレル及びプレフィルドシリンジにおいては、キャップ3と係合するバレル1の係合部13が溶着部12aよりも基端側に配置される構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、図6に示すように、バレル4は、溶着部42aよりも先端側に、キャップ30と係合する係合部43を備える構成でもよい。
【0052】
図6に係るバレル4は、バレル本体41の先端部から突設される針固定部42の基端側に、溶着部42aを備える。即ち、バレル4は、軸心方向における溶着部42aの両側にそれぞれ非溶着部42b,42bを備える。
【0053】
係合部43は、円筒状に形成されている。そして、係合部43は、内部に針固定部42が挿入されており、針固定部42の先端側を収容している。また、係合部43は、内径が針固定部42の外径よりも大きくなるように形成されている。さらに、係合部43は、溶着部42aよりも軸心方向の先端側に配置されている。
【0054】
斯かる構成によれば、溶着部42aを含む部位(具体的には、基端側の非溶着部42b、溶着部42a、及び先端側の非溶着部42bの基端部)は、先端側に配置される係合部43と、基端側に配置されるバレル本体41との間に配置されることで、凹状に形成されている。したがって、例えば、溶着部42aよりも、係合部43の外周部やバレル本体41の先端側の方が注射を受ける者の肌に接触され易くなるため、注射を受ける者の肌に、溶着部42aが接触するのを抑制できる。
【0055】
また、上記実施形態に係る針付きバレル及びプレフィルドシリンジにおいては、支持部122が周方向に沿って連続した環状に延設される構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、図7に示すように、支持部522は、周方向に沿って断続的な環状、即ち、円弧状に延設される構成でもよい。
【0056】
また、上記実施形態に係る針付きバレル及びプレフィルドシリンジにおいては、支持部122が針固定部12の基端部に配置され、支持部122が溶着部12aの基端側のみに配置される構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、支持部は、軸心方向において溶着部の先端側のみに配置される構成でもよく、また、図7に示すように、支持部522,522は、軸心方向において中途部に配置される溶着部52aの先端側及び基端側の両側の位置にそれぞれ配置される構成でもよい。
【0057】
図7に係るバレル5は、バレル本体51の先端部から突設される針固定部52の固定部本体521の内周部から、径方向内方に突出する支持部522,522を備える。そして、各支持部522は、固定部本体521の内周部から径方向に突出する複数(図7においては三つ)の支持片522a,…を備える。
【0058】
各支持片522aは、軸心方向に沿って直線状に延設されている。さらに、複数の支持片522a,…は、周方向に沿って円弧状にそれぞれ延設されると共に、所定間隔を有して周方向に並列されている。なお、バレル5の溶着部52aに相当する部位が少なくとも溶融する前においては、当該部位にも、斯かる支持片522a,…と同じ構成の突起片が複数並列されている。
【0059】
斯かる構成によれば、非溶着部52bに配置される支持部522,522は、軸心方向において溶着部52aの両側の位置にそれぞれ配置されている。したがって、溶着部52aとなる部位が加熱されて溶融する際に、支持部522,522が溶着部52aの両側の位置で針2を支持するため、針2が針固定部52に対して位置ズレするのを防止できる。さらには、上記実施形態のような針2の先端側を把持する把持手段を設ける必要がない。
【0060】
また、支持部522の内径(各支持片522aに内接する円の直径)が、針2の外径と同じ、或いは、針2の外径よりも小さく設定することにより、針2が針固定部52に挿入されると、針2が支持部522に外側から嵌合される。したがって、針2が支持部522と接する、より好ましくは、針2が支持部522から径方向内方に向けて押圧(密接)されることにより、溶着部52aとなる部位を加熱するだけで、溶着部52aが針2を溶着できるため、上記実施形態のような斯かる部位を押圧する押圧手段を設ける必要がない。
【0061】
また、上記実施形態に係る針付きバレル及びプレフィルドシリンジにおいては、針固定部12の所定部位を加熱して溶融した後に、斯かる部位を径方向内方に向けて押圧する構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、バレルは、針固定部を加熱されることで、斯かる部位が熱収縮することにより、針2を溶着する構成でもよい。
【0062】
また、上記実施形態に係る針付きバレル及びプレフィルドシリンジにおいては、針2の外周部に凹凸部21が形成される構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、針の外周部に、凹凸部が形成されていない構成でもよく、また、凸部のみが形成される構成でもよく、さらには、凹部のみが形成される構成でもよい。
【0063】
また、上記実施形態に係る針付きバレル及びプレフィルドシリンジにおいては、針2がバレル1に溶着された後に、針2の外周部に表面処理材が塗布される構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、針2の外周部に表面処理材が塗布された後に、針2が針固定部12の内部に挿入され、その後、針2がバレル1に溶着される構成でもよい。
【0064】
斯かる構成においては、バレル1に針2を溶着する際に、バレル1が加熱され、さらに、斯かる熱が針2に伝達され、針2の外周部に塗布されている表面処理材が溶融する場合がある。そして、針2の先端側を上方に向けた状態で、溶融した表面処理材が硬化する際に、表面処理材が針固定部12の先端に向けて垂れた場合であっても、凹状部121aが表面処理材を収容できるため、針固定部12の外周部に表面処理材が付着するのを防止できる。
【0065】
また、上記実施形態に係るプレフィルドシリンジにおいては、バレル1にプランジャ8(ガスケット81及びプランジャロッド82)が装着されている構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、プレフィルドシリンジは、バレル1の内部にガスケット81だけが装着されている構成でもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…バレル、2…針、3…キャップ、4…バレル、5…バレル、8…プランジャ、12…針固定部、12a…溶着部、30…キャップ、42…針固定部、42a…溶着部、52…針固定部、52a…溶着部、81…ガスケット、82…プランジャロッド、522…支持部、X…充填物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成されるバレルと、バレルに固定される針とを備え、
バレルは、内部に挿入される針を固定する筒状の針固定部を先端部に備え、
針固定部は、熱可塑性を有し且つ加熱されることで針を溶着する溶着部を備える針付きバレルにおいて、
溶着部は、軸心方向において針固定部の先端から離間した位置に配置されることを特徴とする針付きバレル。
【請求項2】
バレルは、溶着部が接触されるのを抑制すべく、溶着部を含む部位が凹状となるように形成される請求項1に記載の針付きバレル。
【請求項3】
針固定部は、針の外周部と当接することで針を径方向で支持する支持部を備え、
溶着部は、軸心方向において針固定部の基端からも離間した位置に配置され、
支持部は、軸心方向において溶着部の両側の位置にそれぞれ配置される請求項1又は2に記載の針付きバレル。
【請求項4】
針固定部は、先端部で且つ内周部に凹状部を備える請求項1〜3の何れか1項に記載の針付きバレル。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の針付きバレルと、バレルの内部に充填された充填物を封止すべくバレルの内部に挿入される弾性のガスケットとを備えることを特徴とするプレフィルドシリンジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−254102(P2012−254102A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127247(P2011−127247)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000206185)大成化工株式会社 (83)
【Fターム(参考)】