説明

針状または楕円球状有機ポリマー粒子の製造方法

【課題】 散乱性および集光性等の光学特性、滑り性等の摩擦特性などの向上を図ることができる、高アスペクト比を有する針状または楕円球状有機ポリマー粒子の効率的な製造方法を提供すること。
【解決手段】 重合性基を有する第1の有機モノマーと、これと重合可能な第2の有機モノマーとを、別途調製した第1のイオン性官能基を含有する高分子化合物からなる高分子安定剤の存在下で溶液重合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針状または楕円球状有機ポリマー粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミクロンサイズの高アスペクト比を有する粒子またはフィラーは、充填剤や検体として電子・電気材料、光学材料、建築材料、生物・医薬材料、化粧料等の種々の分野で使用されている。
一般に汎用されている高アスペクト比を有する粒子の多くは、金属酸化物等の無機材料からなるものである。
このような無機材料は、比重が有機物に比べて大きいため、フィルムや成形品等の使用用途によっては均一に分散させることが難しいだけでなく、樹脂と馴染みにくいことから、成形品や、その性能に不都合が生じる場合があった。
【0003】
ところで、近年、樹脂粒子の開発が進むにつれ、従来汎用されていた粉砕法および溶液重合法等から得られる不定形または球状粒子とは異なる、円板状や扁平状などの特異な形状を有する樹脂粒子が開発されている(特許文献1:特公平6−53805号公報、特許文献2:特開平5−317688号公報、特許文献3:特開2000−38455号公報等)。
【0004】
これらの粒子は、隠蔽性、白色度、光拡散性等の各特性において、従来の球状粒子よりも優れていることから、静電荷現像剤(特許文献4:特開平8−202074号公報)、情報記録紙等の紙用の塗料・コーティング剤(特許文献5:特開平2−14222号公報)、接着剤(特許文献6:特許第2865534号公報)、光拡散シート(特許文献7:特開2000−39506号公報)などの様々な分野に応用されている。
その一方で、いずれの粒子も板状ではあるものの、タルク,マイカ等の無機化合物からなる板状粒子と比較した場合、滑り性、集光性、光拡散性等の顕著な向上は未だ達成できていない。
【0005】
そこで、これらの特性を向上すべく、最近、境界線を基準に二つの曲面で形成した特異的な形状を有する樹脂粒子が報告され(特許文献8:国際公開第01/070826号パンフレット)、この樹脂粒子を用いて、滑り性、集光性、光拡散性等の向上が検討されている。
これら各特性は、粒子の大きさやアスペクト比にも大きく左右されるものであるが、特許文献8の方法では、高アスペクト比かつミクロンサイズの粒子を製造することは困難であり、大きさおよび形状の両面において、さらなる改良が求められている。
【0006】
また、高アスペクト比を有する有機物粒子は、例えば、溶融、紡糸および切断の各工程からなる機械的手法により製造することも可能であるが、この方法では、粒子サイズをミクロンサイズまで小さくすることは技術的に困難であるだけでなく、量産化する場合には時間と労力を要する。しかも、このような機械的方法では、中央部分が太く両極に向かうにつれて細くなるような高精度の楕円球状粒子を、破断面の無い状態で得ることは困難である。
【0007】
以上のように、光散乱性および集光性等の光学特性、滑り性等の摩擦特性、付着性、固着性、成形品の耐衝撃強度および引張り強度等の材料力学上の特性、現像剤の荷電性を維持したままでのクリーニング特性、塗料の艶消し性、隠蔽性等の様々な特性を向上し得る可能性を持つ、高アスペクト比かつミクロンサイズの滑らかな球面を有する楕円球状有機物粒子は、現在までのところ知られていない。
【0008】
【特許文献1】特公平6−53805号公報
【特許文献2】特開平5−317688号公報
【特許文献3】特開2000−38455号公報
【特許文献4】特開平8−202074号公報
【特許文献5】特開平2−14222号公報
【特許文献6】特許第2865534号公報
【特許文献7】特開2000−39506号公報
【特許文献8】国際公開第01/070826号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、光散乱性および集光性等の光学特性、滑り性等の摩擦特性などの向上を図ることができる、高アスペクト比を有する針状または楕円球状有機ポリマー粒子の効率的な製造方法およびこの製造方法に適した高分子安定剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、イオン性官能基含有高分子化合物からなる高分子安定剤の存在下で、重合性基を有する第1の有機モノマーとこれと重合可能な第2の有機モノマーとを溶液重合させることで、1つの連続する曲面を有する針状または楕円球状有機ポリマー粒子を化学的に簡便かつ効率的に、収率よく製造し得ることを見出した。
すなわち、本発明者らが先に示した特願2004−59358号記載の楕円球状有機ポリマー粒子の製造方法と同様の2種類の有機モノマーを用いた溶液重合法による針状または楕円球状有機ポリマー粒子の製造法おいて、上述の高分子安定剤を添加することで、針状または楕円球状の形態を有する有機ポリマー粒子の粒子全体に占める割合が著しく向上することを見出し、本発明を完成した。
【0011】
したがって、本発明は、
1.重合性基を有する第1の有機モノマーと、これと重合可能な第2の有機モノマーとを、別途調製した第1のイオン性官能基を含有する高分子化合物からなる高分子安定剤の存在下で溶液重合させることを特徴とする針状または楕円球状有機ポリマー粒子の製造方法、
2.前記第1のイオン性官能基が、対イオンを有する塩であることを特徴とする1の針状または楕円球状有機ポリマー粒子の製造方法、
3.前記対イオンを有する塩が、金属塩であることを特徴とする2の針状または楕円球状有機ポリマー粒子の製造方法、
4.前記第1の有機モノマーが、前記第1のイオン性官能基と同一の電荷を有する第2のイオン性官能基を有することを特徴とする1〜3のいずれかの針状または楕円球状有機ポリマー粒子の製造方法、
5.前記第1のイオン性官能基を有する高分子化合物がアニオン性高分子化合物であり、前記第1の有機モノマーがアニオン性有機モノマーであることを特徴とする4の針状または楕円球状有機ポリマー粒子の製造方法、
6.少なくとも水を含む溶媒中で溶液重合させることを特徴とする1〜5のいずれかの針状または楕円球状有機ポリマー粒子の製造方法、
7.長径(L1)と短径(D1)とから算出されるアスペクト比(P1)=長径(L1)/短径(D1)とした場合、下記式から算出されるアスペクト比1.2以上の針状化粒子数(A1.2)%が、40%以上である針状または楕円球状有機ポリマー粒子が得られることを特徴とする1〜6のいずれかの針状または楕円球状有機ポリマー粒子の製造方法、
(A1.2)%={[(P1)≧1.2を満たす粒子数]/[総粒子数]}×100
8.前記アスペクト比(P1)の平均(P1a)が、(P1a)≧1.5である針状または楕円球状有機ポリマー粒子が得られることを特徴とする7の針状または楕円球状有機ポリマー粒子の製造方法、
9.イオン性官能基含有高分子化合物からなることを特徴とする針状または楕円球状有機ポリマー粒子製造用高分子安定剤、
10.イオン性官能基が、対イオンを有する塩であることを特徴とする9の針状または楕円球状有機ポリマー粒子製造用高分子安定剤、
11.対イオンを有する塩が、金属塩であることを特徴とする10の針状または楕円球状有機ポリマー粒子製造用高分子安定剤、
12.重量平均分子量が、500〜3,000,000であることを特徴とする9〜11の針状または楕円球状有機ポリマー粒子製造用高分子安定剤
を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の針状または楕円球状有機ポリマー粒子の製造方法によれば、イオン性官能基含有高分子化合物からなる高分子安定剤を用いて2種類の有機モノマーを溶液重合させる方法であるから、1つの連続する曲面を有する針状または楕円球状有機ポリマー粒子を、簡便かつ効率的に、収率よく得ることができる。
また、本発明の製法によって得られた針状または楕円球状有機ポリマー粒子は、1つの連続する曲面を有するとともに、高いアスペクト比を有しているから、高い光の拡散性を有するだけでなく、光の透過性が高い状態で光を拡散することができる。
また、主成分が有機成分であるから、樹脂添加剤として用いた場合、樹脂の屈折率を容易に変更することができる。
【0013】
有機ポリマー粒子であり、無機粒子に比べて比重が小さいから、樹脂の添加剤として用いた場合、被添加物である樹脂中での分散性および樹脂との親和性に優れるため、フィルム等の樹脂成形品の機械的物性向上を図ることができる。
また、主成分が有機成分であるから、粒子表面を容易に無機または有機コーティング処理することができる結果、機能性のカプセルを作製することができ、しかもイオン性官能基を有する粒子であるから、この官能基を修飾することで、多機能な粒子を作製することができる。
さらに、主成分が有機成分であるから、顔料、染料等を用いた着色が容易に行え、塗料やトナー材料など着色材料分野にも応用できる。
【0014】
このような高アスペクト比の針状または楕円球状有機ポリマー粒子は、メッキ加工処理や真空放電蒸着等することにより、電磁波シールド用のフィラー、プラスチック材等に導電性を付与する導電性フィラー、並びに液晶ディスプレイパネルの電極と駆動用LSIとの接続、LSIチップの回路基板への接続、およびその他の微小ピッチの電極端子間を接続するための導電材料等の導電素材に用いられる導電性粒子として、新たな応用が可能である。さらにこの針状または楕円球状有機ポリマー粒子は高アスペクト比を有し、しかもミクロンサイズとすることも容易であるから、充填剤や検体等として、電子・電気材料、光学材料、建築材料、生物・医薬材料、化粧料等様々な分野で応用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係る針状または楕円球状有機ポリマー粒子の製造方法は、重合性基を有する第1の有機モノマーと、これと重合可能な第2の有機モノマーとを、別途調製した第1のイオン性官能基を含有する高分子化合物からなる高分子安定剤の存在下で溶液重合させることを特徴とするものである。
【0016】
ここで、高分子化合物が有する第1のイオン性官能基は、アニオン性官能基、カチオン性官能基のどちらでもよい。アニオン性官能基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基およびこれらの塩などが挙げられる。カチオン性官能基としては、アミノ基、イミダゾール基、ピリジン基、アミジノ基およびこれらの塩などが挙げられる。
中でも、汎用品が多く、種類が豊富であり、かつ得られる針状または楕円球状有機ポリマー粒子の大きさ、形状等を効率良く制御できることから、アニオン性官能基が好適である。特に、高分子化合物への導入が容易であるとともに、安定性および安全性に優れていることから、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基およびこれらの誘導体から選ばれる一種以上の官能基であることが好ましい。
【0017】
これらの第1のイオン性官能基の対イオンとしては、アニオン性官能基に対しては金属カチオン、アンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ホスホニウムカチオン等が挙げられ、カチオン性官能基に対しては塩化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物イオンなどが挙げられる。
アニオン性官能基を用いる場合、製造コストを低減し得る上、種類が豊富であり、しかも楕円状粒子の精度、大きさ、形状等を効率良く制御できることから、対イオンとして、特に、金属カチオンが好適である。
【0018】
金属カチオンとしては、リチウム,ナトリウム,カリウム,ルビジウム,セシウム等のアルカリ金属カチオン、マグネシウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウム等のアルカリ土類金属カチオン、アルミニウム等のその他の非遷移金属カチオン、亜鉛,銅,マンガン,ニッケル,コバルト,鉄,クロム等の遷移金属等の酸化物、水酸化物、炭酸化物等の遷移金属含有カチオンが挙げられる。
【0019】
第1の有機モノマーが有する重合性基としては、重合可能な官能基であれば、特に限定されるものではなく、炭素−炭素不飽和結合(二重結合、三重結合)、水酸基、アミノ基、エポキシ基、チオール基、イソシアネート基、オキサゾリン基、カルボジイミド基等の反応性官能基が挙げられる。
また、第1の有機モノマーは、高分子安定剤が有する第1のイオン性官能基と同一の電荷を有する第2のイオン性官能基を有するものであることが好ましい。このような第2のイオン性官能基を有する第1の有機モノマーを用いることで、より一層得られる粒子のアスペクト比を高め、理想的な針状または楕円球状有機ポリマー粒子を効率的に得ることができる。
【0020】
このような第2のイオン性官能基としては、特に限定はなく、上記第1のイオン性官能基で述べたアニオン性官能基、カチオン性官能基の中から、第1のイオン性官能基と電荷が同一であるものを適宜選択して使用すればよいが、上述と同様の理由から、双方ともにアニオン性官能基を用いることが好ましい。
なお、第2のイオン性官能基も第1のイオン性官能基と同様、対イオンを有する塩であることが好ましい。対イオンとしては、上述と同様のものが挙げられるが、この場合も金属カチオンが好適である。
第1のイオン性官能基と第2のイオン性官能基との組み合わせとして好適なものは、例えば、スルホン酸ナトリウム、カルボン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、スルホン酸カリウム、カルボン酸カリウムおよび硫酸カリウムからなる群から選ばれる同一官能基の組み合わせまたは異種官能基の組み合わせが挙げられる。
【0021】
上記第1の有機モノマーとしては、上述した重合性基を有するものであれば、特に限定されるものではない。
重合性基のみを有するモノマーとしては、例えば、スチレン、ο−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレンなどのスチレン類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等が挙げられる。
【0022】
重合性基およびアニオン性官能基を有するモノマーとしては、例えば、モノカルボン酸系モノマー、ジカルボン酸系モノマー、スルホン酸系モノマー、硫酸エステル系モノマー、フェノール性水酸基含有モノマー、リン酸系モノマー等が挙げられる。
モノカルボン酸系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノC1〜8アルキルエステル、イタコン酸モノC1〜8アルキルエステル、ビニル安息香酸およびこれらの塩などが挙げられる。
ジカルボン酸系モノマーとしては、(無水)マレイン酸、α−メチル(無水)マレイン酸、α−フェニル(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびこれらの塩などが挙げられる。
【0023】
スルホン酸系モノマーとしては、エチレンスルホン酸,ビニルスルホン酸,(メタ)アリルスルホン酸等のアルケンスルホン酸、スチレンスルホン酸,α−メチルスチレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸、C1〜10アルキル(メタ)アリルスルホコハク酸エステル、スルホプロピル(メタ)アクリレート等のスルホC2〜6アルキル(メタ)アクリレート、メチルビニルスルフォネート,2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸,2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸,3−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸,3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸,2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸,3−(メタ)アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有不飽和エステルおよびこれらの塩などが挙げられる。
【0024】
硫酸エステル系モノマーとしては、ポリオキシプロピレンモノメタクリレート硫酸エステル化物等の(メタ)アクリロイルポリオキシアルキレン(重合度2〜15)硫酸エステルおよびこれらの塩などが挙げられる。
フェノール性水酸基含有モノマーとしては、ヒドロキシスチレン、ビスフェノールAモノアリルエーテル、ビスフェノールAモノ(メタ)アクリルエステルおよびこれらの塩などが挙げられる。
リン酸基系モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート,フェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル燐酸モノエステル、ビニルリン酸などが挙げられる。
なお、この場合、塩としては、ナトリウム塩,カリウム塩等のアルカリ金属塩、トリエタノールアミン等のアミン塩、テトラC4〜18アルキルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等などが挙げられる。
【0025】
一方、重合性基およびカチオン性官能基を有するモノマーとしては、1級アミノ基含有モノマー、2級アミノ基含有モノマー、3級アミノ基含有モノマー、第4級アンモニウム塩基含有モノマー、複素環含有モノマー、ホスホニウム基含有モノマー、スルホニウム基含有モノマー、スルホン酸基含有重合性不飽和モノマーなどが挙げられる。
1級アミノ基含有モノマーとしては、(メタ)アリルアミン,クロチルアミン等のC3〜6アルケニルアミン、アミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノC2〜6アルキル(メタ)アクリレート、ビニルアニリン,p−アミノスチレン等の芳香環と1級アミノ基を有するモノマー、エチレンジアミン、ポリアルキレンポリアミンなどが挙げられる。
2級アミノ基含有モノマーとしては、t−ブチルアミノエチルメタクリレート,メチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のC1〜6アルキルアミノC2〜6アルキル(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アリルアミン等のC6〜12のジアルケニルアミン、エチレンイミン、ジアリルアミンなどが挙げられる。
【0026】
3級アミノ基含有モノマーとしては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート,N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート,N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート,N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート,N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート等のジC1〜4アルキルアミノC2〜6アルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド,N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のジC1〜4アルキルアミノC2〜6アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノスチレン等の芳香環と3級アミノ基とを有するモノマーなどが挙げられる。
【0027】
第4級アンモニウム塩基含有モノマーとしては、C1〜12アルキルクロライド,ジアルキル硫酸,ジアルキルカーボネート,ベンジルクロライド等の4級化剤を用いて3級アミンを4級化したものが挙げられる。
例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド,2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムブロマイド,(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウムクロライド,(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド,(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルモルホリノアンモニウムクロライド等のアルキル(メタ)アクリレート系第4級アンモニウム塩、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロライド,(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムブロマイド,(メタ)アクリロイルアミノエチルトリエチルアンモニウムクロライド,(メタ)アクリロイルアミノエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等のアルキル(メタ)アクリルアミド系第4級アンモニウム塩、ジメチルジアリルアンモニウムメチルサルフェート,トリメチルビニルフェニルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウム(メタ)アクリレート、トリメチルベンジルアンモニウム(メタ)アクリレート、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムジメチルホスフェート等のその他の第4級アンモニウム塩基含有モノマーが挙げられる。
【0028】
複素環含有モノマーとしては、N−ビニルカルバゾール,N−ビニルイミダゾール,N−ビニル−2,3−ジメチルイミダゾリン,N−メチル−2−ビニルイミダゾリン,2−ビニルピリジン,4−ビニルピリジン、N−メチルビニルピリジン、オキシエチル−1−メチレンピリジン等が挙げられる。
ホスホニウム基含有モノマーとしては、グリシジルトリブチルホスホン等が挙げられる。
スルホニウム基含有モノマーとしては、2−アクリロキシエチルジメチルスルホン、グリシジルメチルスルホニウム等が挙げられる。
スルホン酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などの(メタ)アクリルアミド−アルカンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレートなどのスルホアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
上記カチオン性官能基を有するモノマーは、塩酸塩,リン酸塩等の無機酸塩、ギ酸塩,酢酸塩等の有機酸塩として用いることもできる。
また、以上で説明したアニオン性官能基を有する第1の有機モノマーおよびカチオン性官能基を有する第1の有機モノマーは、それぞれ1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
なお、以上の説明において「C」は炭素数を意味する。
【0030】
上述の第1の有機モノマーと重合可能な第2の有機モノマーとしては、第1の有機モノマーが有する重合性基に応じて適宜なモノマーを選択すればよく、重合性基が炭素−炭素不飽和結合の場合、例えば、(i)スチレン、ο−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレンなどのスチレン類、(ii)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチルアクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、(iii)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類、(iv)アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの(メタ)アクリル酸誘導体、(v)ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類、(vi)ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類、(vii)N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物、(viii)フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、またはアクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸テトラフルオロプロピレルなどのフッ素アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。
【0031】
また、第1の有機モノマーの重合性基が、水酸基、アミノ基、エポキシ基、チオール基、イソシアネート基、オキサゾリン基、カルボジイミド基等の反応性官能基の場合には、第2の有機モノマーの官能基としてこれらの反応性基と反応可能な基、例えば、水酸基、アミノ基、エポキシ基、チオール基、イソシアネート基、オキサゾリン基、カルボジイミド基などを用いることもできる。
なお、これらの第2の有機モノマーは、1種単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0032】
第1の有機モノマー、第2の有機モノマーとしては、特に、下記のα群から選ばれる少なくとも1種と、β群から選ばれる少なくとも1種との組み合わせを好適に採用することができる。
(1)第1の有機モノマーα群
スチレン系スルホン酸塩、スチレン系カルボン酸塩、(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸エステル系カルボン酸塩、(メタ)アクリル酸エステル系スルホン酸塩、ビニル系スルホン酸塩、ビニル系カルボン酸塩、(メタ)アクリル系スルホン酸塩、(メタ)アクリル系カルボン酸塩
(2)第2の有機モノマーβ群
スチレン系モノマー、(メタ)アクリル系モノマー
【0033】
本発明の針状または楕円球状有機ポリマー粒子は、重合性基を有する第1の有機モノマーと、これと重合可能な第2の有機モノマーとを、予め別途調製した第1のイオン性官能基を有する高分子化合物からなる高分子安定剤の存在下で溶液重合させることで製造することができる。高分子安定剤を用いずに溶液重合を行うと、イオン性官能基を有しない有機モノマーを原料とした場合に球状粒子となり易く、また、イオン性官能基を有するモノマーを用いた場合でも、針状または楕円球状有機ポリマー粒子の収率が低下する。
溶液重合としては、(1)水溶液中で行う乳化または懸濁重合、(2)非水系有機溶媒中または水と非水系有機溶媒との混合溶媒中、分散剤の存在下で行う分散重合、(3)上記(1)または(2)とシード法を組み合わせる方法などが挙げられるが、粒子径が制御し易く、洗浄などの後工程で処理が容易となるという点から、分散重合を用いることが好ましい。
【0034】
本発明の針状または楕円球状有機ポリマー粒子の製造にあたり、上記第1の有機モノマーと、第2の有機モノマーとの使用比率は、特に限定されるものではなく、例えば、質量比で第1の有機モノマー:第2の有機モノマー=1:99〜99:1とすることができる。得られる粒子のアスペクト比をより高め、理想的な形状に近づけるということを考慮すると、これらの使用比率は、第1の有機モノマー:第2の有機モノマー=5:95〜50:50が好ましく、10:90〜40:60がより好ましい。
【0035】
また、高分子安定剤の添加量は、重合成分の合計質量に対し、1〜200質量%が好ましく、3〜100質量%がより好ましく、8〜70質量%がより一層好ましい。添加量が、1質量%未満であると、添加した効果が不充分となり、針状または楕円球状有機ポリマー粒子の収率が低下する場合があり、一方、200質量%を超えると、反応溶液の粘度が高くなりすぎる等により、針状または楕円球状有機ポリマー粒子とはならず球状粒子となる虞がある。
反応溶液の粘度(25℃)は、特に限定されるものではないが、反応効率の向上および針状または楕円球状有機ポリマー粒子の収率を向上させるため、B型粘度型による粘度を0.1〜50,000cPとすることが好ましく、50〜5,000cPとすることがより好ましい。
【0036】
さらに、反応溶液中における、第1の有機モノマーと第2の有機モノマーとの合計の含有量(以下、重合成分含有量という)は、得られる粒子のアスペクト比をより高め、理想的な針状または楕円球状の粒子を収率よく製造するという点から、全反応溶液中1〜80質量%とすることが好ましく、より好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは10〜30質量%である。
すなわち、重合成分含有量が、80質量%を超えると、当該成分が過剰となりすぎて溶液中でのバランスが崩れ、球状粒子となり易く、その結果、単分散化した針状または楕円球状粒子を高収率で得ることが困難になる。一方、1質量%未満であると、目的とする形状の粒子は得られるものの、反応が完結するまでに長時間を要し、実用的ではない。
【0037】
重合時の反応温度は、使用する溶媒の種類によっても変わるものであり、一概には規定できないが、通常、−100〜200℃程度であり、好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは40〜100℃である。
また、反応時間は、粒子の針状化または楕円球状化がほぼ完結するのに要する時間であれば特に限定されるものではなく、モノマー種およびその配合量、イオン性官能基の種類、溶液の粘度およびその濃度等に大きく左右されるが、目的の粒子を理想的な形状で、かつ、効率的に製造することを考慮すると、例えば、40〜100℃の場合、2〜24時間、好ましくは8〜16時間程度がよい。
また、反応溶液中の溶存酸素量は、特に限定されるものではないが、得られる粒子のアスペクト比をより高め、理想的な針状または楕円球状の粒子を収率よく製造するという点から、窒素置換、攪拌等の脱気操作により重合反応開始時には10mg/L以下に抑えることが好ましく、より好ましくは6mg/L以下、さらに好ましくは3.5mg/L以下である。
【0038】
重合反応に使用する溶媒としては、一般的に汎用されている各種溶媒から重合成分の溶解能などに応じて適宜選択して用いればよい。
使用可能な溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、t−ペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチルブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレンブリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル類;ペンタン、2−メチルブタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、デカン、ノナン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p−メンタン、ジシクロヘキシル、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の脂肪族または芳香族炭化水素類;四塩化炭素、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、テトラブロムエタン等のハロゲン化炭化水素類;エチルエーテル、ジメチルエーテル、トリオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;メチラール、ジエチルアセタール等のアセタール類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪酸類;ニトロプロペン、ニトロベンゼン、ジメチルアミン、モノエタノールアミン、ピリジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル等の硫黄、窒素含有有機化合物類;イオン性液体等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で、または2種類以上混合して用いることができる。
【0039】
イオン性液体としては、カチオンおよびアニオンを含んで構成されるイオン性の液体であれば特に限定されるものではない。カチオンとしては、例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、N−プロピルピリジニウムイオン、N−ブチルピリジニウムイオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムイオン、1−ブチル−2,4−ジメチルピリジニウムイオン等が挙げられる。アニオンとしては、例えば、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-、AlCl4-、HSO4-、ClO4-、CH3SO3-、CF3SO3-、CF3CO2-、(CF3SO22-、Cl-、Br-、I-等が挙げられる。
【0040】
特に上記第1および第2のモノマーを容易に分散または溶解し得るとともに、これらの共重合性を向上し得るという点から、水、水溶性有機溶媒または水と水溶性有機溶媒との混合溶媒を用いることが好ましい。ここで、水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
なお、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒とする場合、これらの混合割合は、質量比で水:水溶性有機溶媒=1:99〜99:1、好ましくは10:90〜70:30、特に20:80〜50:50とすることが好ましい。
【0041】
ラジカル重合反応を行う際に用いられる重合開始剤としては、公知の種々の重合開始剤を用いることができ、例えば、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスメチルブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス−2−シアノプロパン−1−スルホン酸二ナトリウム等のアゾ系化合物などの、各種油溶性、水溶性、イオン性の重合開始剤が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種単独で、または2種類以上混合して用いることができる。
【0042】
本発明の針状または楕円球状有機ポリマー粒子の製造方法において、反応系内で第1の有機モノマーおよび第2の有機モノマーから生じる高分子化合物とは別途調製され添加される高分子安定剤は、上述のように、第1のイオン性官能基を含有する高分子化合物からなるものである。
この場合、イオン性官能基の導入方法としては、特に限定されるものではなく、非イオン性モノマーを重合してなる高分子化合物を後から変性してイオン性官能基を導入する方法、イオン性官能基を含有するモノマーを重合してイオン性官能基含有高分子化合物を製造する方法が挙げられる。これらのうち、イオン性官能基導入の確実性および容易性、並びに製造コストの低減化を図るとともに、当該高分子安定剤を用いることで高アスペクト比の針状または楕円球状有機ポリマー粒子を収率よく得るために、後者の方法で高分子安定剤を製造することが好ましい。
【0043】
イオン性官能基を含有するモノマーの重合により、イオン性官能基含有高分子化合物を製造する方法の具体例として、イオン性官能基および重合性基を有する有機モノマー(A)と、これと重合可能な有機モノマー(B)とを塊状重合または溶液重合させる方法が挙げられる。
有機モノマー(A)としては、アニオン性官能基を有するモノマー、カチオン性官能基を有するモノマーのどちらであってもよい。また、有機モノマー(A)が有する重合性基としては、重合可能な基であれば特に限定されるものではなく、炭素−炭素不飽和結合(二重結合、三重結合)、水酸基、アミノ基、エポキシ基、チオール基、イソシアネート基、オキサゾリン基、カルボジイミド基等の反応性官能基が挙げられる。
【0044】
アニオン性官能基を有する有機モノマー(A)としては、上述の第1の有機モノマーで例示したアニオン性官能基含有モノマーと同様のモノマー、例えば、モノカルボン酸系モノマー、ジカルボン酸系モノマー、スルホン酸系モノマー、硫酸エステル系モノマー、フェノール性水酸基含有モノマー、リン酸系モノマー等が挙げられる。
一方、カチオン性官能基を有する有機モノマー(A)としても、上述の第1の有機モノマーで例示したアニオン性官能基含有モノマーと同様のモノマー、例えば、1級アミノ基含有モノマー、第4級アンモニウム塩基含有モノマー、複素環含有モノマー、ホスホニウム基含有モノマー、スルホニウム基含有モノマー、スルホン酸基含有重合性不飽和モノマーなどが挙げられる。
有機モノマー(B)としては、上述の第2の有機モノマーで例示した重合性基を有する各種モノマーが挙げられる。
【0045】
有機モノマー(A)および有機モノマー(B)としては、特に、下記のα群から選ばれる少なくとも1種と、β群から選ばれる少なくとも1種との組み合わせを好適に採用することができる。
(1)有機モノマー(A):α群
スチレン系スルホン酸塩、スチレン系カルボン酸塩、(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸エステル系カルボン酸塩、(メタ)アクリル酸エステル系スルホン酸塩、ビニル系スルホン酸塩、ビニル系カルボン酸塩、(メタ)アクリル系スルホン酸塩、(メタ)アクリル系カルボン酸塩
(2)有機モノマー(B):β群
スチレン系モノマー、(メタ)アクリル系モノマー
【0046】
本発明の高分子安定剤の製造にあたり、上記有機モノマー(A)と、有機モノマー(B)との使用比率は、特に限定されるものではなく、例えば、質量比で有機モノマー(A):有機モノマー(B)=1:99〜99:1とすることができる。高分子安定剤を使用して得られる有機ポリマー粒子のアスペクト比をより高め、理想的な形状に近づけるということを考慮すると、これら各モノマーの使用比率は、有機モノマー(A):有機モノマー(B)=3:97〜50:50が好ましく、5:95〜35:65がより好ましい。
【0047】
本発明の高分子安定剤の重合温度は、モノマーの種類、使用する溶媒の種類によっても変わるものであり、一概には規定できないが、通常、−100〜200℃程度であり、好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは40〜100℃である。
また、反応時間は、目的の高分子安定剤生成反応がほぼ完結するのに要する時間であれば特に限定されるものではなく、モノマーの種類およびその配合量、イオン性官能基の種類、溶液の粘度およびその濃度等に大きく左右されるが、目的とする高分子安定剤を理想的な分子量で、かつ、効率的に製造することを考慮すると、例えば、40〜100℃の場合、2〜72時間、好ましくは10〜36時間程度がよい。なお、必要に応じて重合停止剤、重合禁止剤、重合抑制剤等を適量添加することもできる。
【0048】
溶液重合に使用する溶媒としては、上述した各種溶媒を用いることができるが、この場合も、有機モノマー(A)および有機モノマー(B)を容易に分散または溶解し得るとともに、これらの共重合性を向上し得るという点から、水、水溶性有機溶媒または水と水溶性有機溶媒との混合溶媒を用いることが好ましい。ここで、水溶性有機溶媒としては、上記と同様のものが挙げられ、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒とする場合の各溶媒の混合比率も上述と同様である。
また、ラジカル重合に用いられる重合開始剤も上記と同様のものが挙げられる。
【0049】
本発明の高分子安定剤を構成する高分子化合物の重量平均分子量は、通常500〜3,000,000程度であるが、好ましくは、1,000〜1,000,000、より好ましくは、5,000〜500,000、最良は10,000〜200,000程度である。
重量平均分子量が、上記範囲にある高分子安定剤を用いることで、得られる有機ポリマー粒子のアスペクト比を向上でき、より理想的な形状を有する粒子を高効率で得ることができる。なお、この重量平均分子量は、光散乱光度計による測定値(絶対分子量)である。
また、高分子安定剤の官能基当量は、理想的な形状を有する粒子を高効率で得るという点から、100〜5,000であるが、好ましくは、200〜3,500、より好ましくは、300〜2,500である。
さらに、高分子安定剤を構成する高分子化合物一分子あたりのイオン性官能基個数は、通常、平均で1個以上であるが、得られる有機ポリマー粒子のアスペクト比を向上でき、より理想的な形状を有する粒子を高効率で得るという点から、高分子化合物一分子あたりのイオン性官能基個数は平均で2個以上、好ましくは3個以上、より好ましくは5個以上になるように調整するとよい。
なお、「当量」とは、化学反応における物質の量的関係に基づいて化合物ごとに割り当てた一定量を示すものであり、例えば、本発明においては、1分子あたり(高分子の場合は平均)の官能基1mol当たりの化学式量を表す。
【0050】
本発明の針状または楕円球状有機ポリマー粒子の製造方法を行う際には、重合方法に応じてその他の(高分子)分散剤、安定剤、乳化剤(界面活性剤)等を、重合成分の合計質量に対し、0.01〜50質量%の適宜な量で配合することもできる。
分散剤および安定剤としては、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレンスルホン酸、ビニルフェノール−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルフェノール−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリスチレン誘導体;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポチエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリル酸誘導体;ポリメチルビニルエーテル、ポリエチルビニルエーテル、ポリブチルビニルエーテル、ポリイソブチルビニルエーテル等のポリビニルアルキルエーテル誘導体;セルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリ酢酸ビニル等のポリ酢酸ビニル誘導体;ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリ−2−メチル−2−オキサゾリン等の含窒素ポリマー誘導体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のポリハロゲン化ビニル誘導体;ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン誘導体等の各種疎水性または親水性の分散剤、安定剤が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0051】
乳化剤(界面活性剤)としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、脂肪酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン系乳化剤;アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アミンオキサイド等のカチオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のノニオン系乳化剤等が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0052】
本発明においては、重合反応の際に、得られる粒子の用途などに応じて、重合成分の合計質量に対し、0.01〜80質量%の適宜な量で架橋剤を配合することもできる。
架橋剤としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセロールアクロキシジメタクリレート、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルフォン等の化合物が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
なお、得られた粒子は、シード重合することでコア−シェル構造を有するものや、その他の反応性官能基等を導入した複合粒子とすることもでき、その用途などに応じて、適宜な形態とすることができる。
【0053】
また、重合反応の際に、得られる粒子の用途などに応じて、触媒(反応促進剤)を配合することができる。配合量は、粒子物性に悪影響を及ぼさない適宜な量、例えば、重合成分の合計質量に対し、0.01〜20質量%とすることができる。
触媒としては、正触媒であれば特に限定されるものではなく、公知のものから適宜選択して使用することができる。具体例としては、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、トリフェニルアミン等の3級アミン類;トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム化合物類;トリフェニルホスフィン、トリシクロホスフィン等のホスフィン類;ベンジルトリメチルホスホニウムクロライド、等のホスホニウム化合物類;2−メチルイミダゾール、2−メチル−4−エチルイミダゾール等のイミダゾール化合物類;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物類;炭酸ナトリウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属炭酸塩類;有機酸のアルカリ金属塩類;三塩化ホウ素、三弗化ホウ素、四塩化錫、四塩化チタン等のルイス酸性を示すハロゲン化物類またはその錯塩類等の触媒が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0054】
また、重合反応の際に、得られる針状または楕円状粒子の大きさ、形状、品質等を調整する目的として、水またはその他の極性溶媒に溶解し得、陽イオンと陰イオンとに電離してその溶液が電気伝導性を示す化合物(イオン化合物)を添加することも可能である。
具体例としては、塩類、無機酸、無機塩基、有機酸、有機塩基、イオン性液体等が挙げられる。配合量は、粒子物性に悪影響を及ぼさない適宜な量、例えば、重合成分の合計質量に対し、0.01〜80質量%とすることができる。
【0055】
以上説明した本発明の製造方法は、第1のイオン性官能基を有する高分子化合物からなる高分子安定剤の存在下で溶液重合を行う方法であり、粒子径を制御可能な方法であるため、精密に形状、粒子径等の設計が可能であり、その結果、破断面(または境界線)がなく、一つの連続した滑らかな曲面で覆われ、比較的高いアスペクト比を有する針状または楕円球状有機ポリマー粒子が収率よく得られるものである。
すなわち、上記製法によれば、粒子の長軸方向と直交する方向から光を照射して得られる投影二次元図の長径(L1)と短径(D1)とから算出されるアスペクト比(P1)=長径(L1)/短径(D1)が、(P1)≧1.2を満たす1つの連続する曲面を有するイオン性官能基含有針状または楕円球状有機ポリマー粒子が、下記針状化粒子数(A1.2)%で少なくとも40%得られ、50%以上得られることもあり、70%以上得られることもある。なお、「1つの連続する曲面」とは、境界線や破断等のない、滑らかな曲面をいう。
【0056】
[針状化指数の算出法]
走査電子顕微鏡(S−4800、(株)日立ハイテクノロジーズ製、以下、SEMという)を用い、測定可能な倍率(300〜10,000倍)で写真を撮影し、ランダムにn=300個抽出し、抽出した各粒子を二次元化し、各粒子の長径(L1)および短径(D1)を測定し、アスペクト比(P1)を算出するとともに、下記式から各アスペクト比における針状化粒子数(A1.2)%、(A1.5)%、(A1.8)%、(A2.0)%および(A2.5)%を求める。
(A1.2)%={[(P1)≧1.2を満たす粒子数]/[総粒子数]}×100
(A1.5)%={[(P1)≧1.5を満たす粒子数]/[総粒子数]}×100
(A1.8)%={[(P1)≧1.8を満たす粒子数]/[総粒子数]}×100
(A2.0)%={[(P1)≧2.0を満たす粒子数]/[総粒子数]}×100
(A2.5)%={[(P1)≧2.5を満たす粒子数]/[総粒子数]}×100
【0057】
実用的な面からいうと、針状化粒子指数(A1.8)%が、25%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上であり、さらには、針状化粒子指数(A2.0)%が25%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上である。
また、針状または楕円球状有機ポリマー粒子の光の拡散性能および組成物化した場合における当該粒子の形状の維持(硬度)という観点から、本発明で得られる粒子は、ランダムに300個抽出した場合、投影二次元図の長径(L1)と短径(D1)とから算出されるアスペクト比(P1)=長径(L1)/短径(D1)の平均(P1a)が、(P1a)≧1.5を満たすことが好ましく、実用的な面からは、(P1a)≧1.8、より好ましくは1.8≦(P1a)≦20、より一層好ましくは2.0≦(P1a)≦12、さらに好ましくは2.2≦(P1a)≦8を満たすことが理想である。
【0058】
さらに、本発明の針状または楕円球状有機ポリマー粒子の長軸方向と直交する方向から光を照射して得られる投影二次元図における長径(L1)は、通常、0.001〜10000μmであり、0.05〜10000μmが好ましく、0.1〜1000μmがより好ましく、0.5〜500μmがより一層好ましく、1〜200μmが最適である。
長径(L1)が10000μm超える粒子を作製することもできるが、紡糸等を用いた機械的手法で作製可能な領域であり、そのメリットは少ない。一方、長径(L1)が0.001μm未満であると、粒子径が小さすぎるために、他の粒子と凝集し易くなり、単分散化した粒子が得られない可能性が高い。
【0059】
なお、本発明の製法により得られた針状または楕円球状有機ポリマー粒子には、さらに、別の微粒子を物理的、化学的に付加して複合粒子とすることもできる。
具体的には、(1)粒子製造時に微粒子を取り込ませる、(2)粒子作製後に粒子表面に存在するイオン性官能基の極性を利用して付加する、(3)付加重合、重縮合、付加縮合等の化学的結合により付加する、などの方法が挙げられる。
ここで、別の微粒子とは、母粒子となる針状または楕円球状有機ポリマー粒子よりも小さい粒子であれば有機物、無機物の制限はない。好ましい粒径は、針状または楕円球状有機ポリマー粒子の大きさにもよるが、通常、0.01〜1000μm程度である。
【0060】
有機粒子としては、本発明の粒子の製造に用いられる重合性モノマーからなる粒子、硬化性粒子、有機顔料等が挙げられる。
無機粒子としては、銅粉、鉄粉、金粉、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化錫、酸化銅、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化マンガン、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属、金属酸化物、水和金属酸化物、無機顔料等の無機粒子が挙げられる。
なお、これらの微粒子は、市販品をそのまま用いてもよく、予めカップリング剤等の表面処理剤で表面修飾したものを用いてもよい。
【0061】
特に、得られた針状または楕円球状有機ポリマー粒子を光学用途に用いる場合には、屈折率の制御や、光拡散性の向上を目的として、粒径0.01〜500μmの酸化金属微粒子、中でも酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素等を付加させることが好ましい。これらは1種単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。
この酸化金属微粒子の付加は、本発明の製法を実施する際に、当該微粒子を、重合成分全体に対して0.1〜50質量%配合して反応を行うことで、得られる針状または楕円球状有機ポリマー粒子内に当該微粒子を物理的・化学的吸着等により取り込ませるなどにより行うことができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。なお、以下において重量平均分子量は、光散乱光度計(SLS−6000、大塚電子(株)製)による室温(15〜28℃)での測定値(絶対分子量)である。
【0063】
[1]高分子安定剤の作製
[実施例1]高分子安定剤溶液1
1000mlフラスコに下記に示した化合物を下記割合で混合してなる混合物を一括して仕込み、窒素にて溶存酸素を置換した後、撹拌機中にて窒素気流下、オイルバス温度70℃で約24時間加熱をして、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル・メタクリロイロキシエチルスルホン酸ナトリウム共重合樹脂溶液(樹脂分40質量%、理論上の官能基当量約2,160)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は87,000であった。
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(2−HEMA) 270g
メタクリロイロキシエチルスルホン酸ナトリウム
(アントックス MS−2N、日本乳化剤(株)製) 30g
メタノール 450g
アゾビスイソブチロニトリル(AIBN) 3g
【0064】
[実施例2]高分子安定剤溶液2
1000mlフラスコに下記に示した化合物を下記割合で混合してなる混合物を一括して仕込み、窒素にて溶存酸素を置換した後、撹拌機中にて窒素気流下、オイルバス温度60℃で約24時間加熱をして、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル・p−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合樹脂溶液(樹脂分30質量%、理論上の官能基当量約617)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は65,000であった。
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(2−HEMA) 130g
メタクリロイロキシエチルスルホン酸ナトリウム 70g
メタノール 326.7g
水(蒸留水) 140g
アゾビスイソブチロニトリル(AIBN) 2g
【0065】
[実施例3]高分子安定剤溶液3
メタクリロイロキシエチルスルホン酸ナトリウムをメタクリル酸カリウムに変更した以外は、実施例1と同様の方法でメタクリル酸2−ヒドロキシエチル・メタクリル酸カリウム共重合樹脂溶液(樹脂分30質量%、理論上の官能基当量約1,240)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は57,000であった。
【0066】
[比較例1]高分子安定剤溶液4
メタクリロイロキシエチルスルホン酸ナトリウムを省いた以外は、実施例1と同様の方法でメタクリル酸2−ヒドロキシエチル単一重合樹脂溶液(樹脂分40質量%)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は62,000であった。
上記実施例1〜3、および比較例1で得られた高分子安定剤溶液における高分子安定剤の第1のイオン性官能基の種類、重量平均分子量、含有官能基当量、反応溶媒を表1にまとめて示す。
【0067】
【表1】

【0068】
[2]針状または楕円球状有機ポリマー粒子の作製
[実施例4]
300mlフラスコに下記に示した化合物を下記割合で混合してなる混合物を一括して仕込み、窒素にて溶存酸素を置換した後(溶存酸素量2.831mg/L)、撹拌機中にて窒素気流下、オイルバス温度75℃で約15時間加熱をして、スチレン・p−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合粒子溶液を得た。なお、溶存酸素量は、溶存酸素計(オービスフェアラボラトリーズ製溶存酸素計Model3600)を用いて、加熱を開始する前の室温(15〜28℃)において、直接混合溶液内で測定した(以下も同様である)。
スチレン 30.7g
p−スチレンスルホン酸ナトリウム 5.42g
メタノール 101.63g
水 60.38g
アゾビスイソブチロニトリル(AIBN) 2.07g
高分子安定剤溶液1 17.58g
【0069】
次に、この粒子溶液を公知の吸引ろ過設備を使って水−メタノール混合溶液(質量比3:7)で3〜5回程度、洗浄−ろ過を繰り返して真空乾燥後、粒子を得た。
得られた粒子300個をSEMにてランダムに抽出して形状を観察し、長径(L1)、短径(D1)、アスペクト比(P1)を測定し、針状化粒子数を算出したところ、下記のとおりであった。また、平均アスペクト比(P1a)は2.58であった。得られた針状または楕円球状粒子のSEM写真を図1に示す。
針状化粒子数(A1.2):90%
針状化粒子数(A1.5):85%
針状化粒子数(A1.8):78%
針状化粒子数(A2.0):61%
針状化粒子数(A2.5):31%
【0070】
[実施例5]
高分子安定剤溶液1を高分子安定剤溶液2に変更するとともに、下記の組成にした以外は、実施例4と同様な方法で粒子溶液を得た。なお、窒素にて溶存酸素を置換した後の溶存酸素量は2.774mg/Lであった。
スチレン 30.7g
p−スチレンスルホン酸ナトリウム 5.42g
メタノール 100.7g
水 55.48g
アゾビスイソブチロニトリル(AIBN) 2.07g
高分子安定剤溶液2 23.33g
【0071】
得られた粒子300個をSEMにてランダムに抽出して形状を観察し、長径(L1)、短径(D1)、アスペクト比(P1)を測定し、針状化粒子数を算出したところ、下記のとおりであった。また、平均アスペクト比(P1a)は2.42であった。得られた針状または楕円球状粒子のSEM写真を図2に示す。
針状化粒子数(A1.2):96%
針状化粒子数(A1.5):91%
針状化粒子数(A1.8):76%
針状化粒子数(A2.0):60%
針状化粒子数(A2.5):33%
【0072】
[実施例6]
高分子安定剤溶液1を高分子安定剤溶液3に変更した以外は、実施例4と同様の方法で粒子を得た。なお、窒素にて溶存酸素を置換した後の溶存酸素量は2.847mg/Lであった。得られた粒子300個をSEMにてランダムに抽出して形状を観察し、長径(L1)、短径(D1)、アスペクト比(P1)を測定し、針状化粒子数を算出したところ、下記のとおりであった。また、平均アスペクト比(P1a)は1.91であった。
針状化粒子数(A1.2):86%
針状化粒子数(A1.5):65%
針状化粒子数(A1.8):47%
針状化粒子数(A2.0):35%
針状化粒子数(A2.5):17%
【0073】
[比較例2]
高分子安定剤溶液1を高分子安定剤溶液4に変更した以外は、実施例4と同様の方法で粒子を得た。なお、窒素にて溶存酸素を置換した後の溶存酸素量は2.852mg/Lであった。SEMにて得られた粒子300個をランダムに抽出し形状を観察し、長径(L1)、短径(D1)、アスペクト比(P1)を測定し、針状化粒子数を算出したところ、下記のとおりであった。また、平均アスペクト比(P1a)は1.29であった。
針状化粒子数(A1.2):24%
針状化粒子数(A1.5):11%
針状化粒子数(A1.8):9%
針状化粒子数(A2.0):7%
針状化粒子数(A2.5):2%
【0074】
[比較例3]
高分子安定剤溶液をポリビニルピロリドン(K−30、関東化学(株)製)に変更した以外は、実施例4と同様な方法で粒子を得た。なお、窒素にて溶存酸素を置換した後の溶存酸素量は2.791mg/Lであった。SEMにて得られた粒子300個をランダムに抽出し形状を観察し、長径(L1)、短径(D1)、アスペクト比(P1)を測定し、針状化粒子数を算出したところ、下記のとおりであった。また、平均アスペクト比(P1a)は1.36であった。
針状化粒子数(A1.2):33%
針状化粒子数(A1.5):25%
針状化粒子数(A1.8):23%
針状化粒子数(A2.0):21%
針状化粒子数(A2.5):8%
上記実施例4〜6および比較例2,3で得られた粒子の針状化粒子数を表2にまとめて示す。
【0075】
【表2】

【0076】
表2に示されるように、イオン性官能基を有する高分子化合物を高分子安定剤として用いた実施例4〜6の製法では、比較例2,3の製法に比べ、高いアスペクト比を有する針状または楕円球状有機ポリマー粒子が収率よく得られていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施例4で得られた楕円球状有機ポリマー粒子のSEM写真を示す図である。
【図2】実施例5で得られた楕円球状有機ポリマー粒子のSEM写真を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性基を有する第1の有機モノマーと、これと重合可能な第2の有機モノマーとを、別途調製した第1のイオン性官能基を含有する高分子化合物からなる高分子安定剤の存在下で溶液重合させることを特徴とする針状または楕円球状有機ポリマー粒子の製造方法。
【請求項2】
前記第1のイオン性官能基が、対イオンを有する塩であることを特徴とする請求項1記載の針状または楕円球状有機ポリマー粒子の製造方法。
【請求項3】
前記対イオンを有する塩が、金属塩であることを特徴とする請求項2記載の針状または楕円球状有機ポリマー粒子の製造方法。
【請求項4】
前記第1の有機モノマーが、前記第1のイオン性官能基と同一の電荷を有する第2のイオン性官能基を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の針状または楕円球状有機ポリマー粒子の製造方法。
【請求項5】
前記第1のイオン性官能基を有する高分子化合物がアニオン性高分子化合物であり、前記第1の有機モノマーがアニオン性有機モノマーであることを特徴とする請求項4記載の針状または楕円球状有機ポリマー粒子の製造方法。
【請求項6】
水を含む溶媒中で溶液重合させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の針状または楕円球状有機ポリマー粒子の製造方法。
【請求項7】
長径(L1)と短径(D1)とから算出されるアスペクト比(P1)=長径(L1)/短径(D1)とした場合、下記式から算出されるアスペクト比1.2以上の針状化粒子数(A1.2)%が、40%以上である針状または楕円球状有機ポリマー粒子が得られることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の針状または楕円球状有機ポリマー粒子の製造方法。
(A1.2)%={[(P1)≧1.2を満たす粒子数]/[総粒子数]}×100
【請求項8】
前記アスペクト比(P1)の平均(P1a)が、(P1a)≧1.5である針状または楕円球状有機ポリマー粒子が得られることを特徴とする請求項7項記載の針状または楕円球状有機ポリマー粒子の製造方法。
【請求項9】
イオン性官能基含有高分子化合物からなることを特徴とする針状または楕円球状有機ポリマー粒子製造用高分子安定剤。
【請求項10】
イオン性官能基が、対イオンを有する塩であることを特徴とする請求項9記載の針状または楕円球状有機ポリマー粒子製造用高分子安定剤。
【請求項11】
対イオンを有する塩が、金属塩であることを特徴とする請求項10記載の針状または楕円球状有機ポリマー粒子製造用高分子安定剤。
【請求項12】
重量平均分子量が、500〜3,000,000であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項記載の針状または楕円球状有機ポリマー粒子製造用高分子安定剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−104401(P2006−104401A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295814(P2004−295814)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【Fターム(参考)】