説明

針状体および針状体製造方法

【課題】本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、生体に低負荷であり皮膚に穿刺した後に微細な針状体形状を維持することができ、また、柔軟性を有した針状体を提供することを課題とする。
【解決手段】針状形状を有する突起部と、該突起部を支持する支持基板とを備え、前記突起部に用いる針状体材料は、少なくともキトサンとグリオキシル酸を含むことを特徴とする針状体とした。また、前記キトサンは、キトサン、キチン・キトサン、キチン・キトサン誘導体、グルコサミン、グルコサミン誘導体からなる群から選ばれた1つ以上の材料を含む針状体とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針状体および該針状体の製造に適した針状体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚上から薬剤などの送達物を浸透させ体内に送達物を投与する方法である経皮吸収法は、人体に痛みを与えることなく簡便に送達物を投与することが出来る方法として用いられている。
【0003】
経皮投与の分野において、μmオーダーの針が形成された針状体を用いて皮膚を穿孔し、皮膚内に薬剤などを投与する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、針状体の製造方法として、機械加工を用いて原版を作製し、該原版から転写版を形成し、該転写版を用いた転写加工成型を行なうことが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
また、針状体の製造方法として、エッチング法を用いて原版を作製し、該原版から転写版を形成し、該転写版を用いた転写加工成型を行なうことが提案されている(特許文献3参照)。
【0006】
また、針状体を構成する材料は、仮に破損した針状体が体内に残留した場合でも、人体に悪影響を及ぼさない材料であることが望ましい。このため、針状体材料としてキチン・キトサン等の生体適合材料が提案されている(特許文献4参照)。
【0007】
キチンはカニやエビなどの甲殻類の殻に含まれる成分であり、キトサンはその脱アセチル化物である。キチンとキトサンとの間に明確な境界線はないが、一般的にキチンの脱アセチル化が70%以上のものがキトサンと呼ばれる。
【0008】
キチン・キトサンは酸性水溶液には溶解するという特徴を有している。このため、キチン・キトサンを酸性を示す水溶媒に溶解した水溶液を調整し、該水溶液を針状体形状を成した転写版に充填し、該水溶液から水を蒸発させることにより、キチン・キトサンからなる針状体を作製することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭48−93192号公報
【特許文献2】国際公開第2008/013282号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2008/004597号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2008/020632号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
針状体は、送達する薬剤、症状に対する処方など、用途によっては、生体内で非溶解性を示すものが求められる。
【0011】
しかしながら、キチン・キトサンの酸性水溶液から作製した針状体は、耐水性がなく、水分に接触、あるいは水に浸漬すると溶解してしまう。このため、キチン・キトサンの酸性水溶液から作製した針状体は生体内で溶解されてしまい、生体に対して高負荷であり、また、穿刺後に微細な針状体形状を維持することができないという問題があった。
【0012】
また、針状体は決して平坦でない皮膚に穿刺して用いるため、ある程度の柔軟性を有していることが好ましい。キチン・キトサンの酸性水溶液から作製した針状体は柔軟性に乏しく、皮膚に穿刺した際に突起部が破損してしまうという問題があった。
【0013】
そこで、本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、生体に低負荷であり皮膚に穿刺した後に微細な針状体形状を維持することができ、また、柔軟性を有した針状体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために請求項1記載の発明としては、針状形状を有する突起部と、該突起部を支持する支持基板とを備え、前記突起部に用いる針状体材料は、少なくともキトサンとグリオキシル酸を含むことを特徴とする針状体とした。
また、請求項2記載の発明としては、前記キトサンは、キトサン、キチン・キトサン、キチン・キトサン誘導体、グルコサミン、グルコサミン誘導体からなる群から選ばれた1つ以上の材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の針状体とした。
また、請求項3記載の発明としては、前記グリオキシル酸は、グリオキシル酸、グリオキシル酸水和物から選択されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の針状体とした。
また、請求項4記載の発明としては、前記突起部と前記支持基板とは同じ組成の針状体材料よりなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の針状体とした。
また、請求項5記載の発明としては、前記針状体形状は、高さ10μm以上1000μm以下の針状体形状であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の針状体とした。
また、請求項6記載の発明としては、針状体形状を有する突起部と該突起部を支持する支持基板とを備える針状体の製造方法であって、針状体形状を有する凹部を備えた凹版を準備する工程と、キトサンおよびグリオキシル酸を液状に調整し、液状の針状体材料とする工程と、前記液状の針状体材料を前記凹版に充填する工程と、前記液状の針状体材料が前記凹版に充填された状態で加熱し、前記針状体材料を固化する工程と、固化した前記針状体材料を凹版から剥離し針状体とする工程とを備えることを特徴とする針状体の製造方法とした。
【発明の効果】
【0015】
本発明の針状体とすることにより、また、耐水性が高く皮膚に穿刺した後にも生体内で形状の維持することができ、生体に対して低負荷の針状体とすることができた。柔軟性を備えμmオーダーの微細な3次元構造体を皮膚に沿わせて押し込むことができ、皮膚に穿刺した際に破損しない針状体とすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の針状体の模式断面図である。
【図2】図2は本発明の針状体の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の針状体について説明する。図1に本発明の針状体の模式断面図を示した。
【0018】
本発明の針状体1は、針状形状を有する突起部2と突起部を支持する支持基板3を備える。そして、本発明の針状体は、少なくとも突起部に用いる針状体材料は、少なくともキトサンとグリオキシル酸またはその水和物を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明者は、鋭意検討の結果、キトサンにグリオキシル酸またはその水和物を添加して針状体を作成することにより、生体内で形状の維持ができ、破損することなく皮膚に穿刺できるμmオーダーの微細な3次元構造体とすることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0020】
グリオキシル酸は一分子の中にアルデヒド基とカルボキシル基を含む。グリオキシル酸はキトサン中で架橋剤として作用するものと考えられる。キトサンのアミノ基がグリオキシル酸のアルデヒド基およびカルボニル基と反応し、キトサン分子同士が架橋することで、キトサンのアミノ基が失われ、酸溶液中でも生体適合性キトサンが塩をつくることが出来なくなるため、水に対し溶解しにくくなり、また、柔軟性を向上させることができるため、生体内で形状の維持ができ破損することなく皮膚に穿刺できるものと考えられる。
【0021】
本発明の針状体は、水溶媒に対して非溶解である。ここで、「針状体が水溶媒に非溶解であること」とは、「針状体にpH7.5リン酸緩衝溶液(PBS)に24時間浸漬したあと後、針状体の減少した体積が浸漬前の体積の5%以下であること」をいう。
【0022】
また、本発明の針状体材料として用いられるキトサンは、生体適合性を備えるものであり、キトサン、キチン・キトサン、キチン・キトサン誘導体、グルコサミン、グルコサミン誘導体からなる群から選ばれた1つ以上の材料を含んでもよい。キチンとキトサンとの間に明確な境界線はないが、一般的にキチンの脱アセチル化が70%以上のものがキトサンと呼ばれる。脱アセチル化は、適宜公知の手法により行うことが出来る。
【0023】
生体適合性を備えるキトサン・キチン・キトサン、キチン・キトサン誘導体、グルコサミン誘導体は、蟹、エビなどの甲殻類由来のもの、菌糸類・微生物産生の植物由来のもの、およびそれらを出発原料としたもの等を用いることができる。キトサン、キチン・キトサンおよびキチン・キトサン誘導体は、皮膚に対し、皮膚に対して美容効果を示すとともに殺菌効果、抗菌効果を有するため、本発明の針状体に用いる針状体材料として好ましく用いることができる。
【0024】
また、本発明の針状体材料として用いられるグリオキシル酸は、グリオキシル酸、グリオキシル酸水和物から選択される。グリオキシル酸およびグリオキシル酸水和物は、化粧品、医薬品、香料の材料として、また化粧品のpH調整剤として用いられており、これらを用いることができる。
【0025】
なお、本発明の針状体において、突起部1の形状は皮膚を穿刺孔するのに適した形状であれば良く、適宜設計してよい。例えば、具体的には、円錐、角錐、円柱、角柱、鉛筆形状(胴体部が柱状であり、先端部が錐形状のもの)などであっても良い。また、(1)支持基板上に突起部が一本の形状、(2)基体上に突起部が複数本林立した形状、のいずれでも良い。
【0026】
また、支持基板3上に突起部が複数林立した場合、各突起部は、アレイ状に配列していることが好ましい。ここで、「アレイ状」とは、各単位針状体が並んでいる状態を示すものであり、例えば、格子配列、最密充填配列、同心円状に配列、ランダムに配列、などのパターンを含むものとする。
【0027】
また、本発明の針状体の支持基板は、突起部と同じ組成の針状体材料よりなることが好ましい。支持基板と突起部とを同組成の組成物で形成することにより、支持基板部位と突起部部位を一体成形にて好適に形成することが出来る。
【0028】
なお、支持基板3は下層に針状体材料とは異なる材料が積層された多層の構造であっても良い。複数種の材料を積層することにより、複数の材料の物性を活かした支持基板3とすることが出来る。例えば、(1)層を突起部と同組成の組成物で形成し下層を可撓性に富んだ材料とした支持基板を用いた場合、好適に支持基板をロール状に曲げることができる。同様に、(2)上層を下層よりも展性の大きい材料とした基板を用いた場合も好適に支持基板をロール状に曲げることができる。また、(3)支持基板の上層を下層よりも収縮の小さい材料とした基板を用いた場合も好適に基板をロール状に曲げることができる。また、(4)支持基板の最下層を柔軟性を有する層とすることにより、針状体を重ねて保管するとき突起部の破損を抑制できる。
【0029】
上記針状体を用いた処方にあっては、挿入の位置および方向を固定するためのアプリケータを用いることができる。
【0030】
また、本発明の針状体は、前記突起部に孔を設けてもよい。このとき、孔は、支持基板の裏面まで貫通孔であっても、未貫通孔であってもよい。また、本発明の針状体は前記支持基板に孔を設けてもよい。このとき、孔は、支持基板の裏面まで貫通孔であっても、未貫通孔であってもよい。
【0031】
次に、本発明の針状体の突起部の好ましい形状について図1を参照して説明する。
【0032】
本発明の針状体の突起部の寸法は、皮膚に穿刺孔を形成するのに適した細さと長さを有していることが好ましい。具体的には、突起部の高さHは10μm以上1000μm以下の範囲内であることが好ましい。また、突起部の幅Dは1μm以上300μm以下の範囲内であることが好ましい。また、アスペクト比は1以上10以下の範囲内であることが好ましい。なお、アスペクト比Aとは、突起部の長さHと幅Dを用い、A=H/Dにより定義される。
【0033】
本発明の針状体において突起部の高さHは10μm以上1000μm以下の範囲内であることが好ましい。突起部の高さHは、支持基板から突起部の先端部までの距離である。
【0034】
なお、針状体の突起部の高さHは、針状体を穿刺した際に形成される穿刺孔を皮膚内のどのくらいの深さまで形成するかを考慮して決定されることが好ましい。
【0035】
特に、針状体を穿刺した際に形成される穿刺孔を「角質層内」に留める場合、針状体の突起部の高さHは、具体的には、10μm以上300μm以下の範囲内、より好適には30μm以上200μm以下の範囲内にあることが好ましい。
【0036】
また、針状体を穿刺した際に形成される穿刺孔を「角質層を貫通しかつ神経層へ到達しない長さ」に留める場合、針状体の突起部の高さHは、200μm以上700μm以下の範囲内、より好適には200μm以上500μm以下の範囲内、更には、200μm以上300μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0037】
また、針状体を穿刺した際に形成される穿刺孔を「穿刺孔が真皮に到達する長さ」とする場合、針状体の突起部の高さHは200μm以上500μm以下の範囲内とすることが好ましい。また、針状体を穿刺した際に形成される穿刺孔を「穿刺孔が表皮に到達する長さ」の場合、針状体の突起部の高さHは200μm以上300μm以下の範囲内とすることが好ましい。
【0038】
また、突起部の幅Dは1μm以上300μm以下の範囲内であることが好ましい。針状体を穿刺した際に形成される穿刺孔を皮膚内のどのくらいの深さまで形成するか等を考慮して決定されることが好ましい。
【0039】
突起部の幅Dは、突起部を基板面と平行に投影した際の支持基板と接している突起部の長さのうち最大の長さである。突起部が円錐状である場合は突起部と支持基板と接している面の円の直径が幅Dとなり、突起部が正四角錐である場合には突起部と支持基板と接している面の正方形の対角線が幅Dとなる。また、突起部が円柱である場合には突起部と支持基板と接している面の円の直径が幅Dとなり、突起部が正四角柱である場合には突起部と支持基板と接している面の正方形の対角線が幅Dとなる。
【0040】
また、針状体形状が錐形状など先端角を有する形状の場合、角質層を貫通させるときは、突起部の先端角θは5°以上30°以下の範囲内、より好ましくは10°以上20°以下の範囲内であることが好ましい。なお、先端角θは、突起部を基板面と平行に投影した際の角度(頂角)のうち最大のものを指す。
【0041】
以下、本発明の針状体の製造について説明する。本発明の針状体の製造方法にあっては、針状体形状を有する凹部を備えた凹版を準備する工程と、キトサンおよびグリオキシル酸またはその水和物を液状に調整し、液状の針状体材料とする工程と、前記液状の針状体材料を前記凹版に充填する工程と、前記液状の針状体材料が前記凹版に充填された状態で加熱し、前記針状体材料を固化する工程と、固化した前記針状体材料を凹版から剥離し針状体とする工程とを備えることを特徴とする。
【0042】
<凹版を準備する工程>
凹版は、針状体の形状を決定する原版を作製し、原版から所望する針状体の形状を凹凸反転させた凹版が作製される。針状体の形状を決定する原版の製造方法としては、針状体の形状に応じて適宜公知の製造方法を用いることができる。このとき、微細加工技術を用いて原版を形成してよく、微細加工技術として、例えば、リソグラフィ法、ウェットエッチング法、ドライエッチング法、サンドブラスト法、レーザー加工法、精密機械加工法などを用いてができる。原版から凹版を形成する方法としては、適宜公知の形状転写法を用いてよい。例えば、(1)Ni電鋳法により、Niの凹版を形成、(2)溶融した樹脂を用いた転写成形、など、が挙げられる。
【0043】
<キトサンおよびグリオキシル酸を液状に調整し液状の針状体材料とする工程>
次に、針状体材料として用いる生体適合性キトサンをグリオキシル酸水溶液に溶解させ、溶液を調整する。生体適合性キトサンは酸に可溶であること、およびグリオキシル酸は水に可溶であることが知られており、酸水溶液として調整することが好ましい。また、ここで液状とは、凹版に流入出来るほどの流動性を備えていればよく、ゲル状であってもよい。
【0044】
<針状体材料を充填する工程>
次に、調整した液状の針状体材料を凹版に充填する。充填方法については、凹版の形状・寸法に応じ適宜公知の方法を選択してよい。例えば、充填方法として、スピンコート法、ディスペンサーを用いる方法、キャスティング法などを用いることができる。また、充填に際し、凹版の周囲の環境を、減圧下、あるいは、真空下としても良い。
【0045】
<針状体材料を固化する工程>
次に、充填した針状体材料を固化する。針状体材料の固化は、常温であっても完結するが、加熱処理を行うと成形時間を短縮することが出来る。このときの加熱温度および時間は、キトサンのアミノ基とグリオキシル酸のアルデヒド基及びカルボニル基が反応し、キトサン分子同士が架橋する温度に設定されることが好ましい。具体的には、加熱温度が50℃以上100℃以下の範囲内にあることが好ましい。所望の加熱ができるものであれば、公知のいずれの加熱手段であってもよい。例えば、加熱手段として、針状体材料が充填された凹版をホットプレートに載置する手段が挙げられる。
【0046】
<針状体を凹版から剥離する工程>
次に、凹版から固化した針状体材料を剥離し、針状体を得る。
剥離する方法としては、物理的な力による剥離、化学的に凹版を選択的に溶解するなどの方法を用いることができる。
【0047】
本発明の針状体の製造方法では、突起部に用いる針状体材料は、少なくともキトサンとグリオキシル酸とを混合した材料を固化することにより形成される。本発明者は、鋭意検討の結果、キトサンをグリオキシル酸水溶液に溶解させ針状体を成形することにより、水および生体内に不溶なμmオーダーの微細な3次元構造体が製造可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。生体適合性キトサンとグリオキシル酸とを混合することで、非溶解型のμmオーダーの微細な3次元構造体が得られ、生体内への材料溶出がなくなり、皮膚上に塗布した送達物を投与するための穿刺孔を、安全に設けられる針状体を提供することができた。
【実施例】
【0048】
<実施例1>
<針状体の製造>
以下、具体的に、本発明の針状体及び針状体の具体的な製造方法について説明する。なお、本発明の針状体および針状体の製造方法は本実施例に限定されるものではない。図2に本発明の針状体の説明図である。
【0049】
まず、シリコン基板に精密機械加工を用いて、正四角垂(高さ:150μm、底面:60μm×60μm)が、1mm間隔で、6列6行の格子状に36本配列した針状体原版を形成した。
【0050】
次に、前記シリコン基板で形成された針状体原版に、メッキ法によりニッケル膜を500μmの厚さに形成し、90℃に加熱した重量パーセント濃度30%の水酸化カリウム水溶液によって前記シリコン基板をウェットエッチングして除去し、ニッケルから成る凹版11を作成した(図1(a))。
【0051】
次に、針状体材料12を調整した。本実施例では、針状体材料12として、キトサンをグリオキシル酸溶液に溶解させ材料溶液を調整した(図1(a))。
【0052】
次に、スピンコート法を用いて、凹版11に針状体材料12を充填した(図1(b))。
【0053】
次に、針状体材料12が充填された凹版11を熱源13を用いて90℃、10分間加熱し、針状体材料12を乾燥、固化させた(図1(c))。ここで、熱源13として、ホットプレートを用いている。
【0054】
次に、凹版11から、固化した針状体材料12を剥離し、針状体10を得た(図1(d))。
【0055】
<参考例1>
実施例1と同様に針状体を製造した。ただし、針状体材料をキトサンを5%酢酸溶液に溶解させた溶液とした。
【0056】
<確認試験1>
実施例1、参考例1にて得られた針状体について、pH7.5リン酸緩衝溶液(PBS)および、人工皮膚を用いて不溶化の確認試験を行なった。針状体をPBSに24時間浸漬し、針状体を十分乾燥させた後、針状体が溶解していないかを顕微鏡にて確認した。
【0057】
<確認試験2>
実施例1、参考例1で得られた針状体をR(半径)=25mmのポリウレタン製の円柱側面に刺し、針状体基板が破損することなく沿わせることができるかを確認した。
【0058】
(表1)に、確認試験1、確認試験2の測定結果を示す。
【表1】

【0059】
表1より、確認試験1の結果から、キトサンとグリオキシル酸を混合して製造した実施例1で作製された針状体が、PBSに溶解しないことが確認された。一方、キトサンのみで製造した参考例1で作製された針状体はPBSに溶解し、突起部の針状体形状を維持することができなかった。また、実施例1で作製された針状体のpH7.5リン酸緩衝溶液(PBS)に24時間浸漬する前の針状体の体積と24時間浸漬した後の体積を測定し、実施例1で作製された針状体の減少した体積が浸漬前の体積は5%以下であった。また、実施例1で作製された針状体を人工皮膚に穿刺した際に、実施例1で作製された針状体は人工皮膚に3時間穿刺しても溶解しないことが確認された。
【0060】
また、確認試験2の結果から、キトサンとグリオキシル酸を混合して製造した実施例1で作製された針状体では、R=25mmの円柱側面に基板割れを起すことなく沿うことができた。一方、キトサンのみで製造した参考例1で作製された針状体は、R=25mmの円柱側面に沿わせると基板割れが発生してしまった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
なお、本発明の針状体は、微細な針状体を必要とする様々な分野に利用可能である。例えば、MEMSデバイス、光学部材、試料治具、創薬、医療用途、化粧品、美容用途などに用いる針状体として応用が期待できる。
【符号の説明】
【0062】
1・・・針状体
2・・・突起部
3・・・支持基板
11・・・凹版
12・・・針状体材料
13・・・熱源(ホットプレート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
針状形状を有する突起部と、
該突起部を支持する支持基板とを備え、
前記突起部に用いる針状体材料は、少なくともキトサンとグリオキシル酸を含む
ことを特徴とする針状体。
【請求項2】
前記キトサンは、キトサン、キチン・キトサン、キチン・キトサン誘導体、グルコサミン、グルコサミン誘導体からなる群から選ばれた1つ以上の材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の針状体。
【請求項3】
前記グリオキシル酸は、グリオキシル酸、グリオキシル酸水和物から選択されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の針状体。
【請求項4】
前記突起部と前記支持基板とは同じ組成の針状体材料よりなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の針状体。
【請求項5】
前記針状体形状は、高さ10μm以上1000μm以下の針状体形状であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の針状体。
【請求項6】
針状体形状を有する突起部と該突起部を支持する支持基板とを備える針状体の製造方法であって、
針状体形状を有する凹部を備えた凹版を準備する工程と、
キトサンおよびグリオキシル酸を液状に調整し、液状の針状体材料とする工程と、
前記液状の針状体材料を前記凹版に充填する工程と、
前記液状の針状体材料が前記凹版に充填された状態で加熱し、前記針状体材料を固化する工程と、
固化した前記針状体材料を凹版から剥離し針状体とする工程と
を備えることを特徴とする針状体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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