説明

針葉樹を木質原料とする木質繊維板とその製造方法

【課題】針葉樹を木質原料とする木質繊維板を淡色化する。
【解決手段】針葉樹を木質原料として木質繊維板の製造するに際し、ルチル型酸化チタンを、木質原料の絶乾重量に対し2〜10%の比率で添加した接着剤を塗布して熱圧成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木質繊維板、特に針葉樹を木質原料とする木質繊維板とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
解繊した木質繊維に、フェノール系樹脂、尿素・メラミン系樹脂などの熱硬化性樹脂を接着剤として塗布し、それを板状に熱圧成形して、MDFのような木質繊維板とすることは知られている。原料木には、広葉樹、針葉樹の双方が用いられているが、針葉樹を原料ベースとする場合、針葉樹を解繊した木質繊維そのものは白色に近い淡色のものであるにもかかわらず、接着剤を塗布して熱圧成形すると、接着剤や熱の影響を受けて、濃色化してしまうのを避けられなかった。
【0003】
木質基材の表面に0.2mm厚程度の化粧単板を貼り付けてクリア塗装を施して床材とすることが行われるが、針葉樹を原料ベースとする木質繊維板を基材として用いると、濃色化した基材の色調が化粧単板を通して目に入るようになり、意匠性を低下させて、床材としての商品価値を損なう場合があった。そのために、針葉樹を原料ベースとする木質繊維板の使用分野は限られたものとなっている。
【0004】
木質繊維板を製造するときに、淡色化のために、酸化チタンのような酸化物顔料を接着剤樹脂に含有することが提案されている。特許文献1には、広葉樹を原料ベースとする中密度繊維板(MDF)を製造するときに、接着剤樹脂に酸化チタンを含有した接着剤を用いることが記載されている。特許文献2には、アルカリフェノール樹脂を塗布してパーティクルボードを製造するに際して、熱圧成形時に二酸化チタンを添加することが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−37709号公報
【特許文献2】特開2005−153272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に記載のように、木質繊維板の淡色化のための提案は既にいくつかなされているが、針葉樹を原料ベースとする木質繊維板を対象とした淡色化のための提案は従来なされていない。そのために、表面が濃色化した針葉樹を原料ベースとする木質繊維板が市場にそのまま出回っているのが現状であり、淡色化(白色化)した針葉樹を原料ベースとする木質繊維板が求められている。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、針葉樹を解繊した木質繊維が持つ白色に近い色相を備えた針葉樹を原料ベースとする木質繊維板を提供すること、およびその製造方法を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明者らは多くの実験と研究を行うことにより、木質板の淡色化のために従来から用いられている酸化チタンは、針葉樹を原料ベースとする木質繊維板の淡色化にも有効な顔料であるが、なかでも、ルチル型酸化チタンは少ない添加量でもって、大きな淡色化効果をもたらすことを知見した。酸化チタンであっても、光触媒活性があるとされるアナターゼ型酸化チタンでは十分な淡色化効果が得られなかった。
【0009】
本発明は、上記の知見に基づいており、本発明による木質繊維板は、基本的に、針葉樹を木質原料とする木質繊維板であって、木質原料に接着剤とルチル型酸化チタンとが添加されて熱圧成形されていることを特徴とする。また、本発明による木質繊維板の製造方法は、基本的に、針葉樹を木質原料とする木質繊維板の製造方法であって、製造工程のいずれかにおいて木質原料にルチル型酸化チタンを添加する工程を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明において、木質原料となる針葉樹の樹種に特に制限はない。例として、アカエゾマツ、アカマツ、スギ、レッドスター、ビャクシン、カイヅカ、ウィルトニー、バーキィー、センジュ、ゼブリナ、アスナロ、等を挙げることができる。針葉樹から木質繊維を得る方法も従来の木質繊維板の場合と同様であってよく、従来知られた原木のチップ化および解繊方法を採用すればよい。
【0011】
木質原料(すなわち、解繊した木質繊維)にルチル型酸化チタンを添加するタイミングおよび方法も任意であり、特に制限はない。木質原料に接着剤と同時にルチル型酸化チタンを添加した混合物をフォーミングする態様でもよく、予めルチル型酸化チタンを添加した接着剤を用意し、それを木質原料に添加した混合物をフォーミングする態様でもよく、木質原料に接着剤を添加した混合物をフォーミングするときに、ルチル型酸化チタンを添加するような態様でもよい。木質原料にルチル型酸化チタンを添加したものに対して、接着剤を添加塗布するような態様でもよい。
【0012】
本発明において、ルチル型酸化チタンの添加量は任意であるが、木質原料の絶乾重量比の2%〜10%の範囲であることが好ましい。2%よりも少ないと、十分な淡色化効果が得られない。添加量が多くなるほど淡色化効果は大きくなり、10%程度で十分な淡色化効果が得られる。10%を超える量の添加はオーバースペックでありコストアップとなると共に、添加剤(すなわちルチル型酸化チタン)の影響で得られる木質繊維板の曲げ強度の低下が大きくなる。
【0013】
本発明において、木質原料同士を接着するのに用いる接着剤に特に制限はなく、従来用いられている接着剤、例えば、尿素・メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、レゾール型フェノール系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂、レゾルシノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、デキストリン、変性デンプン、カゼイングルー、大豆グルー、アルブミン、にわか、硝酸セルローズ、各種メチルセルローズ、エチルセルローズ、水性高分子イソシアネート系、タンニン系樹脂、リグニン系樹脂、等を用いることができる。接着剤の添加量は、従来の針葉樹ベースの木質繊維板の場合と同様であってよく、例えば、木質原料の絶乾重量比で5%〜30%程度である。
【0014】
なお、本発明において、ルチル型酸化チタンとは、アナターゼ型、ブルッカイト型、ルチル型とある種々の酸化チタンのうち、正方晶系の結晶構造を有するものを指している。
【0015】
後の実施例に示すように、本発明による針葉樹を原料繊維とする木質繊維板は、原料である針葉樹繊維と同程度に淡色化しており、それを基材として、その上に0.2mm厚程度の化粧単板を貼り付けて化粧床材としても、化粧単板の持つ色調が基材によって悪影響を受けることはなかった。
【実施例】
【0016】
以下、実施例と比較例により本発明を説明する。
[実施例1]
針葉樹であるスギ材を直径2mm以下の大きさに解繊した。解繊繊維に接着剤として尿素・メラミン樹脂を解繊繊維の絶乾重量当たり15%の量で塗布した。接着剤には、ルチル型酸化チタン分散液(EPB−533White:大日精化工業株式会社製)を、解繊繊維の絶乾重量に対して、ルチル型酸化チタン量2%、4%、10%で予め添加しておいた。
【0017】
それぞれをマット状にフォーミングし、連続プレスで熱圧成形して木質繊維板とした。熱圧成形条件は、温度170℃、時間2分、圧力25kg/cmとした。得られた木質繊維板の密度はほぼ0.73g/cmであった。
【0018】
各木質繊維板の表面を目視により観察した。その結果を表1に示した。
また、各木質繊維板の常態曲げ強さを測定した。後記比較例1に示す、ルチル型酸化チタンの添加を行わない木質繊維板と比較して、添加量に反比例して曲げ強さは次第に低下していったが、10%添加のものであっても、曲げ強さは30N/mmよりも大きな値を示し、十分に実用に耐えうるものであった。
【0019】
[比較例1]
実施例1と同様にして木質繊維板を製造した。ただし、ルチル型酸化チタンの添加は行わなかった。得られた木質繊維板の表面を目視により観察した。
【0020】
[比較例2]
実施例1と同様にして木質繊維板を製造した。ただし、ルチル型酸化チタンに替えて、アナターゼ型酸化チタン(EP−498White:大日精化工業株式会社製)を、解繊繊維の絶乾重量に対して、アナターゼ型酸化チタン量2%を添加したものを接着剤として用いた。得られた木質繊維板の表面を目視により観察した。その結果を表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
なお、相対評価において、×は比較例1のルチル型酸化チタンの添加を行わなかった木質繊維板との比較において、見た目に同じ色調であり、淡色化効果が現れていないことを示す。△、○、◎は、この順で次第に比較例1の木質繊維板と比較して淡色化効果が大きく現れていることを示す。
【0023】
[評価]
表1から、針葉樹を木質原料とする木質繊維板に対して、本発明は有効な淡色化効果をもたらすことが示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
針葉樹を木質原料とする木質繊維板であって、木質原料に接着剤とルチル型酸化チタンとが添加されて熱圧成形されていることを特徴とする木質繊維板。
【請求項2】
針葉樹を木質原料とする木質繊維板であって、木質原料同士を接着している接着剤がルチル型酸化チタンを添加した接着剤であることを特徴とする木質繊維板。
【請求項3】
ルチル型酸化チタンの添加量が木質原料の絶乾重量の2%〜10%の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の木質繊維板。
【請求項4】
針葉樹を木質原料とする木質繊維板の製造方法であって、製造工程のいずれかにおいて木質原料にルチル型酸化チタンを添加する工程を含むことを特徴とする木質繊維板の製造方法。
【請求項5】
針葉樹を木質原料とする木質繊維板の製造方法であって、木質原料にルチル型酸化チタンを添加した接着剤を塗布して熱圧成形することを特徴とする木質繊維板の製造方法。
【請求項6】
ルチル型酸化チタンの添加量が木質原料の絶乾重量の2%〜10%の範囲であることを特徴とする請求項4または5に記載の木質繊維板の製造方法。

【公開番号】特開2007−90724(P2007−90724A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284630(P2005−284630)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】