説明

釣り用フットウエア

【課題】釣り人が足に痛みを感じにくいウェーダーの提供。
【解決手段】ウェーダーは、ソックス18を備えている。ソックス18は、アウトサイド生地28o、インサイド生地28i、トウサイド補強テープ34t及びヒールサイド補強テープ34hを有している。トウサイドにおいて、アウトサイド生地28oの端面は、インサイド生地28iの端面と突き合わされている。突き合わせにより、トウサイド突き合わせ部30tが形成されている。ヒールサイドにおいても、アウトサイド生地28oの端面は、インサイド生地28iの端面と突き合わされている。突き合わせにより、ヒールサイド突き合わせ部30hが形成されている。トウサイド補強テープ34tは、トウサイド突き合わせ部tを跨いでいる。ヒールサイド補強テープ34hは、ヒールサイド突き合わせ部30hを跨いでいる。それぞれの補強テープ34の基材は、ポリウレタンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り人等に着用されるフットウエアに関する。詳細には、本発明は、中割れタイプのソックスを有するフットウエアに関する。
【背景技術】
【0002】
鮎釣りでは、釣り人は体が水につかった状態で釣りを行う。釣り人は、体や衣服が濡れることを防ぐ目的で、ウェーダーを着用する。鮎釣りは、流れが速い川で行われることが多い。このような状況において人体が受ける水圧を抑制する目的で、鮎釣りでは、体にフィットするウェーダーが好んで用いられている。このウェーダーには、ポリクロロプレンを基材とする発泡体が用いられている。この発泡体が用いられたウェーダーが、株式会社シマノ発行の「2007 Fishing Tackle Catalogue」の第229頁に記載されている。
【0003】
トラウザーとタビとが一体とされたウェーダーが存在する。一方、タビを有さないウェーダーも存在する。タビを有さないウェーダーでは、トラウザーとソックスとが一体とされている。タビを有さないウェーダーを着用する場合、釣り人は、ソックスの上にタビ(「鮎タビ」と称されている)を着用する。
【0004】
一般的な鮎タビは、親指と人差し指との間に位置するセパレーターを有している。このセパレーターは、川底での足の踏ん張りに寄与する。セパレーターを備えた鮎タビは、中割れタイプと称されている。中割れタイプの鮎タビが着用される場合、ウェーダーのソックスも中割れタイプである必要がある。中割れタイプのソックスは、親指が収容される親指部と、親指以外の4本の指が収容される四指部と、親指部と四指部との間に位置する股割部とを備えている。
【0005】
ウェーダーは、大型で厚みが小さくかつ発泡体からなるので、このウェーダーを金型で一体成形することは困難である。通常は、複数の発泡シートが接合されることで、ウェーダーが得られる。発泡シートの端面は、他の発泡シートの端面と突き合わされる。この突き合わせ部において、接着剤により、両発泡シートが接合される。この接合により、ウェーダーの水密が達成される。
【0006】
突き合わせ部において発泡シートが他の発泡シートと剥離すると、水密が損なわれる。剥離防止の観点から、突き合わせ部が補強される。補強は、図8に示される補強ゴム2によってなされている。この補強ゴム2は、両方の発泡シート4に跨って存在している。この補強ゴム2は、突き合わせ部6にゴムラテックスが塗布され、かつゴムが架橋されることで、形成されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】株式会社シマノ発行の「2007 Fishing Tackle Catalogue」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ラテックスから得られた補強ゴム2の厚みは、大きい。しかも、この厚みは不均一である。釣り人がこのウェーダー8を着用し、さらに鮎タビを着用すると、補強ゴム2の直下において、この補強ゴム2が釣り人の足を圧迫する。釣り人は、足に痛みを感じる。特に、股割部に突き合わせ部6が存在するウェーダーでは、補強ゴム2が指を圧迫するので、釣り人が強い痛みを感じる。
【0009】
本発明の目的は、釣り人が足に痛みを感じにくい釣り用フットウエアの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る釣り用フットウエアは、ソックスを備える。このソックスは、発泡シートを含む複数の生地と、ポリウレタンからなる補強テープとを有する。発泡シートの端面が他の発泡シートの端面と突き合わされることで、突き合わせ部が形成されている。この突き合わせ部において、接着剤により、発泡シート同士が接合されている。補強テープは、突き合わせ部を跨いで発泡シートに積層されている。
【0011】
ソックスが、親指部と、四指部と、親指部と四指部との間に位置する股割部とを備えてもよい。この股割部に突き合わせ部が存在するフットウエアにおいて、本発明は顕著な効果を奏する
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るフットウエアでは、発泡シートが他の発泡シートと剥離することが、補強テープによって防止されうる。この補強テープはポリウレタンからなるので、軟質である。この補強テープの厚みは、均一である。この補強テープは、釣り人に強い痛みを感じさせない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る釣り用フットウエアとしてのウェーダーが示された斜視図である。
【図2】図2は、図1のウェーダーの左ソックスが示された側面図である。
【図3】図3は、図2の左ソックスが示された背面図である。
【図4】図4は、図3のIV−IV線に沿った拡大断面図である。
【図5】図5は、図2のV−V線に沿った拡大断面図である。
【図6】図5は、図3のVI−VI線に沿った拡大断面図である。
【図7】図7は、図2の左ソックスの突き合わせ部が示された拡大断面図である。
【図8】図8は、従来のウェーダーの一部が示された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0015】
図1に示されたウェーダー10は、ボディ12、左脚14、右脚16、左ソックス18及び右ソックス20を備えている。左脚14及び右脚16は、それぞれ、ボディ12に接合されている。左ソックス18は、左脚14に接合されている。右ソックス20は、右脚16に接合されている。
【0016】
図2から7には、左ソックス18が示されている。詳細な図示は省略されているが、右ソックス20は、左ソックス18の形状が反転した形状を有する。図1及び5に示されるように、左ソックス18は、親指部22及び四指部24を備えている。親指部22には、人体の足の親指が収容される。四指部24には、人体の足の人差し指、中指、薬指及び小指が収容される。図5に示されるように、左ソックス18は股割部26を備えている。股割部26は、親指部22と四指部24との間に位置している。このウェーダー10を着用した釣り人が、さらに鮎タビを着用すると、この鮎タビのセパレーターが股割部26に位置する。
【0017】
図2から6に示されるように、この左ソックス18は、3枚の生地28を有している。具体的には、左ソックス18は、アウトサイド生地28o、インサイド生地28i及びソール生地28sを有している。
【0018】
図4及び5において、上側はトウサイドであり、下側はヒールサイドである。トウサイドにおいて、アウトサイド生地28oの端面は、インサイド生地28iの端面と突き合わされている。突き合わせにより、トウサイド突き合わせ部30tが形成されている。ヒールサイドにおいても、アウトサイド生地28oの端面は、インサイド生地28iの端面と突き合わされている。突き合わせにより、ヒールサイド突き合わせ部30hが形成されている。アウトサイド生地28oとインサイド生地28iとが突き合わされることで、アッパー32が形成されている。
【0019】
図6に示されるように、アッパー32(すなわちアウトサイド生地28o及びインサイド生地28i)の端面は、ソール生地28sの端面と突き合わされている。突き合わせにより、ソール突き合わせ部30sが形成されている。
【0020】
左ソックス18は、3枚の補強テープ34を備えている。具体的には、左ソックス18は、トウサイド補強テープ34t、ヒールサイド補強テープ34h及びソール補強テープ34sを備えてる。
【0021】
図4及び5に示されるように、トウサイド補強テープ34tは、トウサイド突き合わせ部30tを跨いでいる。トウサイド補強テープ34tは、アウトサイド生地28oの外面及びインサイド生地28iの外面と積層されている。
【0022】
図4及び5に示されるように、ヒールサイド補強テープ34hは、ヒールサイド突き合わせ部30hを跨いでいる。ヒールサイド補強テープ34hは、アウトサイド生地28oの外面及びインサイド生地28iの外面と積層されている。
【0023】
図6に示されるように、ソール補強テープ34sは、ソール突き合わせ部30sを跨いでいる。ソール補強テープ34sは、アッパー32(すなわちアウトサイド生地28o及びインサイド生地28i)の外面及びソール生地28sの外面と積層されている。
【0024】
左ソックス18は、3枚のシームテープ36を備えている。具体的には、左ソックス18は、トウサイドシームテープ36t、ヒールサイドシームテープ36h及びソールシームテープ36sを備えてる。
【0025】
図4及び5に示されるように、トウサイドシームテープ36tは、トウサイド突き合わせ部30tを跨いでいる。トウサイドシームテープ36tは、アウトサイド生地28oの内面及びインサイド生地28iの内面と積層されている。
【0026】
図4及び5に示されるように、ヒールサイドシームテープ36hは、ヒールサイド突き合わせ部30hを跨いでいる。ヒールサイドシームテープ36hは、アウトサイド生地28oの内面及びインサイド生地28iの内面と積層されている。
【0027】
図6に示されるように、ソールシームテープ36sは、ソール突き合わせ部30sを跨いでいる。ソールシームテープ36sは、アッパー32(すなわちアウトサイド生地28o及びインサイド生地28i)の内面及びソール生地28sの内面と積層されている。
【0028】
図7には、突き合わせ部30の拡大断面図が示されている。この図7には、2枚の生地28が示されている。図4から6では図示が省略されているが、それぞれの生地28は、発泡シート38と、この発泡シート38の外面に積層された表ジャージー層40と、この発泡シート38の内面に積層された裏ジャージー層42とからなる。一方の発泡シート38の端面と、他方の発泡シート38の端面とは、突き合わされている。一方の発泡シート38の端面と、他方の発泡シート38の端面とは、接着剤で接合されている。この接合により、突き合わせ部30の水密が達成されている。
【0029】
発泡シート38は、多数の気泡を含むポリマー成形体である。様々な合成ゴム及び様々な合成樹脂が、発泡シート38の基材ポリマーとして用いられうる。発泡シート38に特に適したポリマーは、ポリクロロプレンである。ポリクロロプレンが用いられた発泡シート38は、耐候性に優れる。
【0030】
発泡シート38の気泡は、独立気泡である。従ってこの発泡シート38は、非透水性である。気泡は、熱分解型発泡剤の発泡によって形成されうる。用いられる熱分解型発泡剤としては、アゾ化合物、ニトロソ化合物及びトリアゾール化合物が例示される。気泡により、生地28の柔軟性、伸縮性、保温性及び軽量が達成されうる。発泡シート38を含む生地28が用いられたウェーダー10は、履き心地に優れる。
【0031】
図7において矢印T1で示されているのは、発泡シート38の厚みである。保温性及び強度の観点から、厚みT1は1.5mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましい。履き心地の観点から、この厚みT1は4.5mm以下が好ましく、4.0mm以下が特に好ましい。
【0032】
柔軟性、伸縮性、保温性及び軽量の観点から、発泡シート38の発泡倍率は3以上が好ましく、5以上が特に好ましい。強度の観点から、発泡倍率は30以下が好ましく、20以下が特に好ましい。
【0033】
表ジャージー層40及び裏ジャージー層42は、伸縮性である。典型的には、表ジャージー層40及び裏ジャージー層42は、それぞれ、ナイロン糸からなる。発泡シート38の内面を表ジャージー層40が覆うことにより、ソックス18、20と着用者の足との摩擦係数が低減される。足と左ソックス18、20との滑りがよいので、このウェーダー10は履きやすく、かつ脱ぎやすい。表ジャージー層40により、ぬくもり感も発揮される。表ジャージー層40及び裏ジャージー層42の厚みは、0.1mm以上1.0mm以下が好ましい。
【0034】
図7には、補強テープ34が示されている。補強テープ34は、ポリウレタンを基材とするポリマー組成物からなる。図4から6では図示が省略されているが、それぞれの補強テープ34は、接着剤層44によって生地28に接合されている。好ましくは、接着剤層44は、熱可塑性ポリウレタンを基材とする組成物からなる。好ましくは、接着剤層44の接着剤は、熱融着タイプである。
【0035】
前述の通り、補強テープ34は突き合わせ部30を跨いでいる。補強テープ34は、一方の生地28に接合され、かつ、他方の生地28にも接合されている。一方の生地28が他方の生地28に対して引っ張られたとき、引張り応力は、突き合わせ部30のみならず、補強テープ34にもかかる。補強テープ34により、突き合わせ部30にかかる引張り応力が緩和される。補強テープ34により、一方の生地28の、他方の生地28からの剥離が抑制される。
【0036】
図7において矢印T2で示されているのは、補強テープ34の厚みである。この厚みT2は、ラテックスから得られる補強ゴム(図8参照)の厚みよりも小さい。補強テープ34の厚みは、補強ゴムの厚み比べて均一である。局部的な、極めて厚みが大きい箇所は、補強テープ34には存在しない。従って、このウェーダー10を着用した釣り人がさらに鮎タビを着用しても、足が強く圧迫されない。釣り人は、足に強い痛みを感じない。このウェーダー10は、履き心地に優れる。特に、股割部26に突き合わせ部30が存在するウェーダー10において、補強テープ34は、指の痛みを低減する。さらに、補強テープ34の生地28への積層は、補強ゴムの形成よりも容易である。
【0037】
突き合わせ部30の剥離防止の観点から、厚みT2は0.1mm以上が好ましく、0.3mm以上が特に好ましい。着用感の観点から、厚みT2は2.0mm以下が好ましく、1.5mm以下が特に好ましい。
【0038】
前述の通り、補強テープ34の基材はポリウレタンである。ポリウレタンは、概して柔軟である。この補強テープ34により、足の痛みが軽減される。この観点から、補強テープ34を構成する組成物のショアA硬度は90以下が好ましく、80以下が特に好ましい。強度の観点から、この組成物のショアA硬度は30以上が好ましく、40以上が特に好ましい。この硬度は、補強テープ34の組成物と同成分の組成物からなるスラブにおいて測定される。スラブの厚みは、2mmである。3枚のスラブが重ねられた状態で、最も上に位置するスラブの上面に硬度計が押しつけられる。
【0039】
図7において矢印Wで示されているのは、補強テープ34の幅である。強度の観点から、幅Wは2mm以上が好ましく、3mm以上が特に好ましい。着用感の観点から、幅Wは30mm以下が好ましく、20mm以下が特に好ましい。
【0040】
図7には、シームテープ36が示されている。典型的には、シームテープ36は、ナイロンジャージーからなる。好ましくは、シームテープ36は、裏ジャージー層42のナイロン糸と同等のナイロン糸からなる。図4から6では図示が省略されているが、それぞれのシームテープ36は、接着剤層46によって生地28に接合されている。好ましくは、接着剤層46は、熱可塑性ポリウレタンを基材とする組成物からなる。好ましくは、接着剤層46の接着剤は、熱融着タイプである。
【0041】
前述の通り、シームテープ36は突き合わせ部30を跨いでいる。シームテープ36は、一方の生地28に接合され、かつ、他方の生地28にも接合されている。一方の裏ジャージー層42と他方の裏ジャージー層42との間に段差がある場合でも、シームテープ36がこの段差を解消する。シームテープ36は、ウェーダー10の履き心地に寄与する。履き心地と強度との観点から、シームテープ36の厚みT3は0.1mm以上1.0mm以下が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る釣り用フットウエアには、ウェーダーのみならず、ソックス、ソックス付きブーツ等が含まれる。
【符号の説明】
【0043】
10・・・ウェーダー
12・・・ボディ
14・・・左脚
16・・・右脚
18・・・左ソックス
20・・・右ソックス
22・・・親指部
24・・・四指部
26・・・股割部
28・・・生地
28o・・・アウトサイド生地
28i・・・インサイド生地
28s・・・ソール生地
30・・・突き合わせ部
30t・・・トウサイド突き合わせ部
30h・・・ヒールサイド突き合わせ部
30s・・・ソール突き合わせ部
32・・・アッパー
34・・・補強テープ
34t・・・トウサイド補強テープ
34h・・・ヒールサイド補強テープ
34s・・・ソール補強テープ
36・・・シームテープ
36t・・・トウサイドシームテープ
30h・・・ヒールサイドシームテープ
30s・・・ソールシームテープ
38・・・発泡シート
40・・・表ジャージー層
42・・・裏ジャージー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソックスを備えており、
上記ソックスが、発泡シートを含む複数の生地と、ポリウレタンからなる補強テープとを有しており、
発泡シートの端面が他の発泡シートの端面と突き合わされることで突き合わせ部が形成されており、
上記突き合わせ部において、接着剤により、発泡シート同士が接合されており、
上記補強テープが、突き合わせ部を跨いで発泡シートに積層されている釣り用フットウエア。
【請求項2】
上記ソックスが、親指部と、四指部と、親指部と四指部との間に位置する股割部とを備えており、
この股割部に上記突き合わせ部が存在する請求項1に記載のフットウエア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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