説明

釣り用ブーツ

【課題】寿命が長く、釣りに適した姿勢が得られ、しかも容易に製造されうる釣り用ブーツ12の提供。
【解決手段】ブーツ12は、アッパー14、ミッドソール16、面ファスナー18、アウトソール20及びインソール22を備えている。アッパー14及びミッドソール16は、射出成形法によって一体的に成形されている。ミッドソール16は、薄肉部26と厚肉部28とを備えている。薄肉部26は爪先側に位置している。厚肉部28は、踵側に位置している。厚肉部28は、3つの貫通孔30を備えている。アウトソール20は、面ファスナー18によってミッドソール16と積層されている。アウトソール20は、ミッドソール16に対して着脱自在である。インソール22は、爪先下がりに傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り人に着用されるブーツに関する。
【背景技術】
【0002】
釣りには、ブーツが利用されている。図4は、従来のブーツ2が示された断面図である。このブーツ2は、アッパー4、インソール6、ミッドソール8及びアウトソール10を備えている。アッパー4とミッドソール8とは、射出成形法にて一体成形されている。このミッドソール8に、接着剤にてアウトソール10が接合されている。このアウトソール10では、踵側が爪先側よりも厚い。従って、インソール6は爪先下がりであり、このブーツ2を着用する釣り人の足も爪先下がりである。この姿勢は、釣りに適している。この姿勢の釣り人は、疲れにくい。
【0003】
このブーツ2のアッパー4とミッドソール8とは、1つの金型において、同時に成形される。このブーツ2の製造コストは、低い。低価格帯のブーツ2に、一体成形されたアッパー4及びミッドソール8が用いられている。
【0004】
このブーツ2が繰り返し使用されると、アウトソール10が徐々に摩耗する。摩耗の進行により、ブーツ2は使用に適さなくなる。アウトソール10が摩耗したブーツ2は、アッパー4、ミッドソール8等が未だ使用に耐えうる状態であっても、廃棄される。このブーツ2の寿命は短い。
【0005】
アウトソールがミッドソールに対して着脱自在なブーツが、市販されている。このブーツでは、面ファスナーにより、アウトソールがミッドソールに接合されている。このブーツでは、アウトソールの摩耗が進行すると、このアウトソールがミッドソールから剥がされる。そして、新しいアウトソールが、ミッドソールに接合される。着脱タイプのアウトソールは、主として高価格帯のブーツに用いられている。着脱タイプのアウトソールを備えたブーツが、株式会社シマノ発行の「2007 Fishing Tackle Catalogue」の第227ページに開示されている。
【非特許文献1】株式会社シマノ発行の「2007 Fishing Tackle Catalogue」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
着脱タイプのアウトソールでは、その厚みはほぼ均一である。図3に示されたミッドソールに着脱タイプのアウトソールが適用されると、インソールがほぼ水平に延在する。従って、釣り人の足は爪先下がりにならない。この姿勢は、釣りに適さない。
【0007】
ミッドソールの踵側の厚みが大きくされれば、釣り人の足が釣りに適した姿勢となる。しかし、厚いミッドソールの射出成形では、射出直後の凝固収縮等に起因して、ひけが生じやすい。ひけは、ブーツの品質を阻害する。
【0008】
本発明の目的は、寿命が長く、釣りに適した姿勢が得られ、しかも容易に製造されうる釣り用ブーツの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る釣り用ブーツは、アッパーと、ミッドソールと、このミッドソールに対して着脱自在なアウトソールとを備える。このアッパーとミッドソールとは、射出成形法によって一体成形されている。このミッドソールは、爪先側に位置する薄肉部と、踵側に位置する厚肉部とを備えている。この厚肉部は、空気室を有している。
【0010】
好ましくは、空気室は、インサイドからアウトサイドにまで至る貫通孔である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るブーツは、アッパーとミッドソールとが射出成形法によって一体成形されるので、容易かつ低コストで製造されうる。このブーツでは、ミッドソールが爪先側に位置する薄肉部と踵側に位置する厚肉部とを備えるので、釣りに適した姿勢が得られる。厚肉部が空気室を有するので、ミッドソールの成形時にひけが生じにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る釣り用ブーツ12が示された正面図である。図2は、図1のブーツ12が示された鉛直方向断面図である。このブーツ12は、アッパー14、ミッドソール16、面ファスナー18、アウトソール20及びインソール22を備えている。
【0014】
アッパー14は、 典型的には、ポリ塩化ビニルからなる。このアッパー14は、強度及び剛性に優れる。図示されていないが、アッパー14には、その内面に位置する裏地が積層されている。アッパー14が、他の合成樹脂からなってもよい
【0015】
ミッドソール16の材質は、アッパー14の材質と同一である。ミッドソール16は、アッパー14と一体成形されている。ミッドソール16及びアッパー14は、射出成形法によって得られる。ミッドソール16は、その外縁にリブ24を備えている。リブ24は、下向きに垂下している。
【0016】
ミッドソール16は、薄肉部26と厚肉部28とを備えている。薄肉部26は爪先側に位置している。厚肉部28は、踵側に位置している。厚肉部28の厚みは、薄肉部26の厚みよりも大きい。厚肉部28は、3つの貫通孔30を備えている。貫通孔30の数は、適宜決定される。
【0017】
図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。図3には、ブーツ12の一部が示されている。図3から明らかなように、貫通孔30は、ミッドソール16のインサイド(図3の左側)からアウトサイドにまで至っている。貫通孔30の一端は、インサイドにおいて開口している。貫通孔30の他端は、アウトサイドにおいて開口している。貫通孔30は、大気と連通している。貫通孔30は、空気室である。図2から明らかなように、貫通孔30の内周面の断面形状は、円である。他の断面形状を有する貫通孔30が形成されてもよい。貫通孔30の形態とは異なる形態の空気室が形成されてもよい。
【0018】
面ファスナー18は、フック面32とループ面34とを備えている。フック面32は、接着剤によってミッドソール16に接合されている。ループ面34は、接着剤によってアウトソール20に接合されている。フック面32がアウトソール20に接合され、ループ面34がミッドソール16に接合されてもよい。典型的な面ファスナー18は、ベルクロ社のマジックテープ(登録商標)である。ミッドソール16のリブ24は、面ファスナー18よりも下方にまで延在している。
【0019】
アウトソール20は、面ファスナー18によってミッドソール16と積層されている。アウトソール20の上部は、リブ24に囲まれている。リブ24により、アウトソール20のミッドソール16からの意図せぬ離脱が防止される。このアウトソール20は、フェルトからなる。アウトソール20が、架橋ゴムからなってもよい。アウトソール20が、スパイクピンを備えてもよい。アウトソール20の厚みは、ほぼ均一である。アウトソール20は、ミッドソール16に対して着脱自在である。
【0020】
インソール22は、板状のベース36と、このベース36の周縁においてこのベース36から起立する側壁38とを有している。ベース36は、三次元形状を有する。このインソール22は、「カップインソール」と称されている。ベース36は、ミッドソール16の上面に載置されている。厚肉部28が薄肉部26よりも厚いので、ベース36のうち、厚肉部28に積層された部分は、薄肉部26に積層された部分よりも、上方に位置している。
【0021】
前述の通り、ミッドソール16及びアッパー14は、射出成形法によって一体的に成形される。ミッドソール16及びアッパー14は、1つの金型によって同時に成形される。厚肉部28は、成形体の中で最も厚みが大きい。この厚肉部28に貫通孔30が存在することで、厚いにもかかわらず、厚肉部28に凝固収縮によるひけが生じにくい。貫通孔30により、健全な厚肉部28が得られうる。このブーツ12は高品質であり、しかも容易かつ安価に製造されうる。
【0022】
貫通孔30は、ブーツ12のファッション性にも寄与する。貫通孔30は、ブーツ12の衝撃吸収性にも寄与する。
【0023】
厚肉部28が厚いので、このブーツ12を着用した釣り人の足は、爪先下がりとなる。この姿勢は、釣りに適している。このブーツ12は、履き心地に優れる。このブーツ12を着用した釣り人は、足の疲れを感じにくい。履き心地の観点から、厚肉部28の最大厚みT1と薄肉部26の最小厚みT2との差(T1−T2)は5mm以上20mm以下が好ましく、8mm以上15mm以下がより好ましい。
【0024】
このブーツ12が繰り返し使用されると、アウトソール20が摩耗する。摩耗の進行したアウトソール20は、ミッドソール16から剥がされる。そして、新しいアウトソール20が、面ファスナー18によってミッドソール16に接合される。アウトソール20の交換により、このブーツ12が長期間にわたって使用されうる。このブーツ12は、経済的である。
【0025】
材質が異なる複数のアウトソール20が準備され、釣り場の状況に応じて選択されたアウトソール20がミッドソール16に接合されてもよい。釣り人は、1つのブーツを異なる用途に使用することができる。
【0026】
ひけの抑制の観点から、全ての貫通孔30の合計体積は2cm以上25cm以下が好ましく、5cm以上15cm以下がより好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係るブーツは、種々の釣り場において利用されうる。このブーツにトラウザーが取り付けられ、ウェーダーが構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る釣り用ブーツが示された正面図である。
【図2】図2は、図1のブーツが示された断面図である。
【図3】図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図4は、従来のブーツが示された断面図である。
【符号の説明】
【0029】
12・・・釣り用ブーツ
14・・・アッパー
16・・・ミッドソール
18・・・面ファスナー
20・・・アウトソール
22・・・インソール
26・・・薄肉部
28・・・厚肉部
30・・・貫通孔
32・・・フック面
34・・・ループ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパーと、ミッドソールと、このミッドソールに対して着脱自在なアウトソールとを備えており、
このアッパーとミッドソールとが、射出成形法によって一体成形されており、
このミッドソールが、爪先側に位置する薄肉部と、踵側に位置する厚肉部とを備えており、
この厚肉部が空気室を有している釣り用ブーツ。
【請求項2】
上記空気室が、インサイドからアウトサイドにまで至る貫通孔である請求項1に記載のブーツ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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