説明

釣り竿用の竿体及び芯金

【課題】滑らかでかつメリハリのある竿調子を演出できるとともに、当たりの目視し易い釣り竿用竿体を提供する。
【解決手段】元竿以外の穂先竿から元上に適用されるもので、強化繊維群にマトリックス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂シートを、細長棒状の芯金に巻回して作成される。繊維強化樹脂シート1の一辺LS1を、繊維強化樹脂シート1が芯金2に巻回される際に、芯金2の軸線方向に平行な状態となる平行直線状に形成するとともに、一辺LS1に対向する他辺LS2、3を竿先端側から竿元側端に向かうに連れてその一辺から離間し、かつ、曲線形状を呈するものに形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化繊維群にマトリックス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂シートを、細長棒状の芯金に巻回して作成される釣り竿用の竿体に関する。
【背景技術】
【0002】
図8(a),(b)に示すように、繊維強化樹脂シート1は、細長台形状に形成されており、長手方向の一辺LS1を芯金2の軸線に平行な直線状に形成し、一辺LS1に対向する他辺LS4を、一辺LS1に対して傾斜する直線状に形成してある。他辺LS4の傾斜状態は、一辺LS1に対して一定角度αを持って形成されている。
一方、芯金2については、軸線長LM3に亘って細径先端から太径側に掛けて一定の割合(テーパ)で大径化するものに形成されている。そのテーパ率は、通常1/1000mm〜15/1000mmの範囲である。
【0003】
したがって、図8(c)で示すように、上記した繊維強化樹脂シート1を芯金2に巻回して釣り竿用の竿体3を形成した場合に、その竿体3は全長に亘って元側から穂先側に向けて一定の曲率で徐々に曲がりを生ずる、一定の竿調子を発揮するものとなる。
このようなものと同様の構成は、下記の特許公報1にも記載されている。
ただし、つぎのような構成のものもある。つまり、繊維強化樹脂シートとして図8に示すような、細長台形状のものの後端側に、竿軸線に沿った直線上の一辺に対して他辺が一定の角度より大きな角度を呈しながら離れていく変形シートに構成したものがある。これに対して、芯金は、細長台形状のシート部分を巻回する部分については、一定の割合で大径化する細長状の部分に形成され、その細長状部分の後端側には、急拡大部を介して大径の握り部を形成するための大径部分が形成してある(特許公報2)。
【0004】
さらには、穂先竿として中実棒状のものにおいて、竿先側から一定の外径を維持するストレート部分(第1部分に相当)の後方に一定の割合で大径化するテーパ部分(第2部分に相当)を形成してスライドガイドの移動固定を容易にする構造を採る場合、または、竿元側程縮径する縮径テープ部分(第1部分)の竿元側に竿元側程拡径する拡径テープ部分とを形成しものがある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−148182号公報(段落番号〔0002〕、図5)
【特許文献2】特開平04−304832号公報(段落番号〔0007〕、図1)
【特許文献3】特開2002−315475号公報(段落番号〔0015〕〜〔0018〕、図2,3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載した構成のものでは、一定の竿調子を演出できるものであるが、前記した釣り竿用竿体の曲がり方とは異なる曲がりを呈する竿体であることを求められることもある。このような竿調子は、釣り竿用竿体自体の剛性(断面二次モーメント×縦弾性係数)に関係している。
したがって、所望の竿調子を得る場合に、釣り竿用竿体の剛性を整える為に、繊維強化樹脂シートを構成している強化繊維のマトリックス樹脂に対する重量割合を整えたり、弾性率の異なる強化繊維に切り換える等の手法で竿調子を整えていた。
特許文献2に記載した構成のものでは、元竿の構成を提示したものであり、握り部を竿先側の部分より大径化する為に図1のような大径の握り部を形成したものであり、竿調子を整える為に採られた方策ではないことは明らかである。
また、特許文献3には、スライドガイドを移動調節かつ所望位置で固定するために、穂先竿の竿先側部分略一定の外径を呈するストレート部分に、かつ、ストレート部分の竿元側に一定の割合で外径が拡大するテーパ部分を形成するものが記載されている。また、竿先側から竿元側に掛けて徐々に小径化する部分を設けている構成も示されている。
【0007】
さらには、次のような課題も存在する。
穂先竿は、魚の当たりがあった場合に、手元まで振動等で伝える役割をするが、その当りを目で見ることができれば魚信を捉えることが更に容易になるところから、目で捉える機能が最重要機能と位置付けられる。
魚の当たりを目で感知するに際し、
(イ)短い釣竿では、穂先竿の先端部分のみが魚信に反応して振動しても、釣り人が目視することは比較的容易であるところから、先端部分のみが魚の引きに対応して敏感に反応することが必要であり、先端側程敏感な竿体とすれば、釣り人は小さい魚信をすばやくキャッチできる。
(ロ)一方、長い竿(長尺竿)では、例えば、6m以上の竿では、魚信があった場合、穂先部先端の一定長さの部分が振動しなければ、元竿を手にした釣り人は魚信があっても、穂先部先端の振動を視認することができない。
このような課題に対しても、上記した釣り竿用竿体は応え切れていない面があった。
【0008】
本発明の目的は、滑らかでかつメリハリのある竿調子を演出できるとともに、当たりの目視し易い釣り竿用竿体を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、元竿以外の穂先竿から元上に適用されるもので、強化繊維群にマトリックス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂シートを、細長棒状の芯金に巻回して作成される釣り竿用の竿体であって、
前記繊維強化樹脂シートの一辺を、前記繊維強化樹脂シートが前記芯金に巻回される際に、前記芯金の軸線方向に平行な状態となる平行直線状に形成するとともに、前記一辺に対向する他辺を竿先端側から竿元側端に向かうに連れてその一辺から離間し、かつ、前記他辺の少なくとも一部を、曲線形状を呈するものに形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用〕
ここでは、一辺を平行直線状に他辺を曲線形状に形成することによって、従来のように、他辺を傾斜直線状に形成する場合に比べて、この繊維強化樹脂シートを芯金に巻回して竿体として形成した場合に、竿軸線方向に沿った各竿部分の剛性は、一定の変化率で変化するものではなく、変化率が異なったものとなる。
【0011】
〔効果〕
上記のように、竿部分の剛性の変化率を異なるものにできるので、竿体は魚の荷重が掛かった場合に、一定の曲率に沿った曲がりを呈するのではなく、曲率を変化させた曲がりを呈することとなり、竿体の先端部だけが曲がり易い先調子や、竿体の元側から曲がり易い胴調子などを容易に得ることができる釣り竿用竿体を提供できるに至った。
【0012】
〔構成〕
請求項2に係る発明の特徴構成は、前記他辺の曲線形状を、前記対向する一辺から離間する突出円弧形状に形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0013】
〔作用効果〕
このように、他辺を突出円弧状とすることによって、従来のように、他辺を直線状に形成した場合に比べて、一辺と他辺との間隔は大きくなっている。これによって、竿体の元側から中間部に掛けての剛性が従来の竿体に比べて大きくなり、かつ、その剛性の変化率も小さなものとなるので、竿元側と中間部においては、魚の荷重が掛かっても比較的曲がりにくい状態を呈する。
これに対して、竿体の竿先端部では、一辺と他辺との間隔が十分小さくなっているので、竿先端部において撓み易くなっている。
このような構成においては、特に短い釣竿に好適であり、穂先竿の先端部分のみが魚信に反応して振動すれば、釣り人が目視することは比較的容易であるところから、釣り人は小さい魚信であってもすばやくキャッチできる。
このように、竿体の先端部のみが曲がり易く、魚信に鋭敏に反応する釣り竿用竿体を提供することができた。
【0014】
〔構成〕
請求項3に係る発明の特徴構成は、前記他辺の曲線形状を、前記対向する一辺に向かう凹入円弧形状に形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0015】
〔作用効果〕
一辺に対向する他辺を竿先端側から竿元側端に向かうに連れてその一辺から離間した状態を維持しながら、前記対向する一辺に向かう凹入円弧形状に形成する場合には、凹入円弧状部分では、直線的部分より剛性の変化が大きく、竿先側に向けて大きく縮径部分を形成することとなる。
このように、凹入円弧状の縮径部分が竿元側に形成されると、その縮径部分で剛性が大きく変化し、竿先側に向けては剛性の変化率が大きくはならないので、魚の荷重が掛かった場合に、縮径部分で大きな曲がりを生じ易くなり、前記した胴調子の竿体を作成することができる。
【0016】
〔構成〕
請求項4に係る発明の特徴構成は、請求項1又は請求項2記載の釣り竿用の竿体を形成する竿体形成用芯金であって、竿先側から竿元側に掛けて徐々に大径化する円錐台状体に形成するとともに、前記円錐台状体の外周面を外向きに膨らむ膨出円弧面に形成してある
点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0017】
〔作用効果〕
円錐台状体の外周面を外向きに膨らむ膨出円弧面に形成することによって、一定の割合で大径化する従来型の芯金に比べて、円錐台状体の外径を大きくすることができて、製作される竿体の剛性を大きくできる。
このような構成の芯金は、請求項2に記載の他辺が円弧状を呈する繊維強化樹脂シートに対応するものであるが、他辺が一定の直線状傾斜状態を示すものであっても、請求項2に記載したような作用効果を奏するものである。
つまり、このような芯金に繊維強化樹脂シートを巻回して作成された竿体においては、竿体の元側から中間部に掛けての剛性が従来の竿体に比べて大きくなり、かつ、その剛性の変化率も小さなものとなるので、竿元側と中間部においては、魚の荷重が掛かっても比較的曲がりにくい状態を呈する。
これに対して、竿体の竿先端部では、一辺と他辺との間隔が十分小さくなっているので、竿先端部において撓み易くなっている。
したがって、芯金の形状を従来と違った構成にすることによって、多様な竿調子を実現できる。
【0018】
〔構成〕
請求項5に係る発明の特徴構成は、請求項1又は請求項3記載の釣り竿用の竿体を形成する竿体形成用芯金であって、竿先側から竿元側に掛けて徐々に大径化する緩傾斜面部を形成するとともに、前記緩傾斜面部の竿元側に、内向きに凹入する状態で急に拡大する凹入円弧面部を形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0019】
〔作用効果〕
このような構成の芯金は、請求項3に記載の他辺が凹入円弧状を呈する繊維強化樹脂シートに対応するものであるが、他辺が一定の直線状傾斜状態を示すものであっても、請求項3に記載したような作用効果を奏するものである。
つまり、このような芯金に繊維強化樹脂シートを巻回して作成された竿体においては、竿体の中間部から先端部に掛けての緩傾斜面部においては、剛性が従来の竿体に比べて小さくなり、かつ、その剛性の変化率も小さなものとなるので、その部分においては比較的曲がり易くい。一方、凹入状円弧面部においては、急拡大するので、この部分での剛性の変化率が大きくなり、曲がり易くなっている。このことによって、竿元側においては、魚の荷重が掛かっても比較的曲がり易く、胴調子のものになっている。
このことは、竿体が長い釣り竿の穂先竿として使用された場合にも、魚が掛かった場合に竿元側から大きく撓むこととなるので、釣り人が視認することが容易にできるようになり、魚信を捉えやすくなっている。
これに対して、竿体の竿先端部では、一辺と他辺との間隔が十分小さくなっているので、竿先端部において撓み易くなっている。
したがって、芯金の形状を従来と違った構成にすることによって、多様な竿調子を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は第1実施形態を示し、(a)は芯金を示す側面図、(b)は芯金に巻回される繊維強化樹脂シートを示す平面図、(c)は竿体の撓み状態を示す側面図である。
【図2】図2は第2実施形態を示し、(a)は芯金を示す側面図、(b)は芯金に巻回される繊維強化樹脂シートを示す平面図、(c)は竿体の撓み状態を示す側面図である。
【図3】図3は第3実施形態を示し、(a)は従来型の芯金を示す側面図、(b)は芯金に巻回される繊維強化樹脂シートを示す平面図、(c)は竿体の撓み状態を示す側面図である。
【図4】図4は第4実施形態を示し、(a)は芯金を示す側面図、(b)は芯金に巻回される従来型の繊維強化樹脂シートを示す平面図、(c)は竿体の撓み状態を示す側面図である。
【図5】図5は第5実施形態を示し、(a)は別形態の芯金を示す側面図、(b)は芯金に巻回される別形態の繊維強化樹脂シートを示す平面図、(c)は竿体の撓み状態を示す側面図である。
【図6】図6は第6実施形態を示し、(a)は従来型の芯金を示す側面図、(b)は芯金に巻回される繊維強化樹脂シートを示す平面図、(c)は竿体の撓み状態を示す側面図である。
【図7】図7は第7実施形態を示し、(a)は芯金を示す側面図、(b)は芯金に巻回される従来型の繊維強化樹脂シートを示す平面図、(c)は竿体の撓み状態を示す側面図である。
【図8】図8は従来の実施形態を示し、(a)は従来型の芯金を示す側面図、(b)は芯金に巻回される従来型の繊維強化樹脂シートを示す平面図、(c)は竿体の撓み状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第1実施形態〕
釣り竿を構成する穂先竿等の竿体は次のように製作される。つまり、炭素繊維等の強化繊維を一方向に引き揃え、その引き揃え強化繊維群にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂(又は熱可塑性樹脂)を含浸させて、繊維強化樹脂シートとしてのプリプレグシート1を形成する。このプリプレグシート1を所定の形状に裁断したものを芯金2に巻回し、複数層に形成したものを芯金2に巻回した状態で炉に入れて焼成し、焼成後芯金2を脱芯して円筒状の竿素材を取り出しその竿素材を所定長に裁断して、仕上加工を施し釣り竿用の竿体とする。
【0022】
プリプレグを構成する強化繊維としては、具体的には、炭素繊維以外にガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維等が使用でき、樹脂としては、エポキシ樹脂の他に、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂やPV(E)等の熱可塑性樹脂が使用できる。また、プリプレグとしては、織り物に樹脂を含浸させて構成したものであってもよい。
【0023】
一方、芯金2は次のような材料によって構成されている。芯金2は、構造用鋼(例えばS45Cに表面焼き入れ)やNi―Mo鋼などの高耐熱耐食合金鋼を使用し、表面にクロムメッキ等を施して仕上げ加工される。
【0024】
次に、請求項1、2及び4に対応する実施形態、つまり、先調子の穂先竿3等を形成するプリプレグシート1と芯金2について説明する。
図1(a)に示すように、芯金2については、先端細径部分から一定長さLM5の部分は、元側に向けて徐々に外径を大きくする緩円錐台面部2Aを形成し、その元側には、一定の曲率半径R1によって外向き円弧状に膨らむ膨出円弧面部2Bを形成してある。
このように外向き円弧状に膨らむ膨出円弧面部2Bにおいては、芯金2が元側程大径化するテーパは、従来型と異なり、竿先側においては、従来型が呈するテーパ(1/1000mm〜15/1000mm)より大きく、かつ、中間部より竿元側に掛けて従来型が呈するテーパ(1/1000mm〜15/1000mm)より小さくなる。
更に、後記するように、緩円錐台面部2Aを形成してあるのは、次のような理由による。
【0025】
つまり、振出竿においては、小径側竿体と大径側竿体とを伸長状態と収縮状態とに切り換え使用すべく構成するが、その伸長状態においては、小径側竿体の竿元側端部の外周面を、大径側竿体の竿先端部の内周面に圧接させて伸長状態を現出する構成を採っている。
この場合に、大径側竿体の竿先端部の内周面と小径側竿体の竿元側端部の外周面とで合せ面を形成するが、その合せ面を形成する芯金2の部分が緩円錐台面部2Aである。
【0026】
プリプレグシート1は、図1(b)に示すように、略台形状に近い形に裁断される。つまり、その一辺LS1を、プリプレグシート1が芯金2に巻回される際に、芯金2の軸線方向に平行な状態となる平行直線状に形成するとともに、一辺に対向する他辺を次のように形成してある。竿先端側から一定長さにおいては、竿元側端に向かうに連れてその一辺LS1から離間し、かつ、一定の割合で一辺LS1から離れていく傾斜直線LS7に形成してある。その傾斜直線LS7の竿元側には外向きに湾曲する曲線LS8を形成してある。
【0027】
以上のように構成されたプリプレグシート1を芯金2に、一辺LS1を芯金2の軸線に平行に宛て付け巻回することによって、釣り竿用の竿体3を形成する。上記したような形状を持った竿体3においては、プリプレグシート1の他辺の曲線LS8の形状によって、先端側から元端側に掛けての一辺LS1と他辺LS8との間隔が曲線LS8に沿って広がっていくので、この部分での剛性の変化率が緩やかに変化するものとなり、図1(c)で示すように、曲がりの少ない竿元側部分LR2となる。
これに対して、竿体3の竿先側部分LR3においては、剛性の変化率が一定で変化するので、この部分では撓み易くなっている。
尚、プリプレグシート1における竿先側幅WS1と竿元側幅WS2とは、2プライから3プライ重複して芯金2に巻回される幅に形成してある。
【0028】
〔第2実施形態〕
ここでは、主として請求項1,2,4に対応した実施形態について説明する。芯金2及びプリプレグシート1として略同様の構成を採っているが、芯金2の先側部分2Cの形状が違っている。つまり、図2(a)に示すように、芯金2は、図1に示す膨出円弧面部2Bと同様に、元側の範囲LM4に亘って曲率半径R1の膨出円弧面部2Bを形成してある。ただし、膨出円弧面部2Bの先側に位置する先側部分2Cにおいても、曲率半径R4の膨出円弧状を呈する点が、第1実施形態の構成と異なっている。
このように、芯金2は二つの曲率半径R1、R4を持った膨出円弧状を呈している。
【0029】
一方、プリプレグシート1は第1実施形態で記述したものと略同様の形状に裁断されたものを使用する。つまり、図2(b)に示すように、一辺LS1に対して他辺の元側部分LS6は、曲率半径R3によって徐々に離間する突出円弧状に形成してある。プリプレグシート1における他辺の元側部分LS6より竿先側に位置する先側部分LS5も、元側部分LS6の曲率半径R3より小さな曲率半径R2であるが、突出円弧状に形成してある。
【0030】
このような構成によって、プリプレグシート1を芯金2に巻回して成形すると、図2(b)の二点鎖線Pで示す従来の他辺に比べて一辺LS1からの間隔が広くなっている分だけ、芯金2に巻き付けられる量が多くなり、このことによって剛性が低下する変化の度合いを抑制することができる。これによって、図2(c)のように、魚の荷重が作用した場合にも、竿元側端から竿先側端近くまでの竿元側部分LR2は、第1実施形態の場合と同様に撓みが抑制された状態を示す。
【0031】
しかも、プリプレグシート1の先側部分LS5は小さな曲率半径R2によって突出円弧状に形成されているので、直線状に裁断されていた従来構成の場合に比べて剛性の変化が抑制されてはいるが、元側部分LS6に比べてプリプレグシート1の幅が小さくなっているだけ剛性は低下しているので、竿体3としては、竿元側部分LR2と竿先側部分LR3との接続部位から折れ曲がり状態で竿先側部分LR3が撓むこととなる。
このような構成のものは、短い釣り竿において穂先竿として使用された場合に、先端側に位置する竿先側部分LR3が撓み易くなっているので、撓み具合を視認しやすく魚信を捉えやすい。
【0032】
〔第2実施形態の別実施形態〕
ここでは、芯金2を二つの曲率半径R1、R4を持つ二段に膨出するものに、かつ、プリプレグシート1の他辺を二つの曲率半径R2、R3を持つ円弧状に構成したが、単一の曲率半径によって膨出する芯金2と単一の曲率半径によって円弧状を呈するプリプレグシートに形成してもよい。
【0033】
〔第3実施形態〕
ここでは、主として請求項1、2に対応した実施形態で、芯金2として通常使用されている一定のテーパ(1/1000mm〜15/1000mm)で拡径する従来型のものを使用する形態について説明する。つまり、図3(a)に示すように、芯金2は、プリプレグシート1を巻き付ける長さの部分において、徐々に外径を竿元側に向かって大きくする緩円錐台状面LM3に形成してある点が第2実施形態と異なる点である。
一方、図3(b)に示すように、プリプレグシート1は第2実施形態で記述したものと同様の形状に裁断されたものを使用する。つまり、一辺LS1に対して他辺の先側部分LS5と元側部分LS6は、徐々に離間する突出円弧状に形成してあり、従来構成の二点鎖線で示された直線状部分Pより広幅である。
【0034】
このような構成によって、プリプレグシート1を芯金2に巻回して成形すると、芯金2が従来構成のものであっても、プリプレグシート1が第2実施形態と同様に図3(b)の二点鎖線Pで示す従来の他辺に比べて一辺LS1からの間隔が広くなっている分だけ、剛性の低下を抑制することとなる。これによって、図3(c)のように、魚の荷重が作用した場合に、第2実施形態の場合と同様の撓み形態を示す。
【0035】
このような構成のものは、短い釣り竿において穂先竿として使用された場合に、先端側に位置する竿先側部分LR3が撓み易くなっているので、撓み具合を視認しやすく魚信を捉えやすい。
【0036】
〔第4実施形態〕
ここでは、図4(a)で示すように、第2実施形態で記載した曲線型の芯金2を採用し、図4(b)で示すように、プリプレグシート1として図8(b)で記載した従来型の形状のものを採用する。
この場合には、プリプレグシート1としては従来型であるが、芯金2が第2実施形態と同様のものであるので、芯金2の緩円錐台状面LM4の存在によって剛性の変化率が小さなものに抑制される。
【0037】
したがって、竿体3としては、図4(c)で示すように、第2実施形態及び第3実施形態と同様の撓み状態を呈する。
このような構成のものは、短い釣り竿において穂先竿として使用された場合に、先端側に位置する竿先側部分LR3が撓み易くなっているので、撓み具合を視認しやすく魚信を捉えやすい。
【0038】
〔第5実施形態〕
次に、請求項3及び5に対応する実施形態、つまり、胴調子の穂先竿3等を形成するプリプレグシート1と芯金2について説明する。
図5(a)に示すように、芯金2については、先端細径部分から一定長さLM1の部分は、大径側に向けて徐々に外径を大きくする緩傾斜面部2Eに形成してあるが、その外径の拡大率は小さい。その元側の一定長さLM2には、急拡大部を形成してあり、この部分は、外形の形状が内向きに凹入する凹入円弧面部2Fを形成している。
【0039】
プリプレグシート1は、図5(b)に示すように、その一辺LS1を、プリプレグシート1が芯金2に巻回される際に、2芯金の軸線方向に平行な状態となる平行直線状に形成するとともに、一辺LS1に対向する他辺を次のように形成してある。竿先端側から竿元端近くまでの一定長さにおいては、竿元側端に向かうに連れてその一辺から離間し、かつ、大きな曲率半径によって徐々に一辺LS1から離れていく緩傾斜曲線LS2に形成してある。その緩傾斜曲線LS2の竿元側には小さな曲率半径による内向きに湾曲する曲線LS3を呈するものに形成してある。
【0040】
以上のように構成されたプリプレグシート1を芯金2に、一辺LS1を芯金2の軸線に平行に宛て付け巻回することによって、釣り竿用の竿体3を形成する。上記したような形状を持った竿体3においては、これに対して、プリプレグシート1の元側部分1Cの他辺の曲線LS3を呈する形状によって、先端側から元端側に掛けての一辺LS1と他辺LS3との間隔が急拡大する状態で広がっていくので、この部分での剛性が急に大きなものとなり、図5(c)で示すように、曲がりの少ない竿元側部分LR1となる。
竿体3の竿元側部分LR1から竿先側に位置する竿先側部分LR4においては、剛性が小さく剛性の変化率も少ないので、この部分では竿先側程撓みが大きくなる従来型に近い撓み形状を呈する。
【0041】
このような構成によって、剛性が急に大きくなる竿元側部分LR1では、魚の荷重が作用した場合にも、余り大きな撓み状態は現れず、剛性が小さくなる竿先側部分LR4との境界部位当たりで折れ曲がるように撓み状態が変化する。つまり、胴調子の竿体を提案できるのである。
【0042】
そうすると、作用効果の項でも述べたように、釣り竿として長い釣り竿であっても、この第5実施形態の竿体3を穂先竿として適用した場合に、魚が掛かった場合に穂先竿が大きく撓む事となり、魚信を捉えやすくなる。
【0043】
〔第5実施形態の別実施形態〕
プリプレグシート1の形状としては、図5(b)における二点鎖線Qで示すように、プリプレグシート1の全長に亘って同一の曲率による凹入円弧状部に形成してもよい。このような場合にあっても、二点鎖線Qが従来型プリプレグシート1の他辺を構成する傾斜直線部の場合より、竿元側で剛性の低下が大きく、竿先側で小さくなっていくので、竿体が胴調子を維持する点において変わりはない。
【0044】
〔第6実施形態〕
ここでは、第5実施形態における芯金2の形状を従来型のものに取り替えて使用する場合について説明する。プリプレグシート1の裁断形状は第5実施形態の場合と同様である。
この場合には、図6(a)に示すように、芯金2が従来型のものであっても、図6(b)に示すように、プリプレグシート1が第5実施形態と同様の裁断形状を呈しているので、従来型の芯金2に巻回して竿体3を形成しても、プリプレグシート1の元側部分1Cを巻回した部分の剛性が高くなるので、この部分は撓み難くなり、図6(c)に示すように、竿元側部分LR1と竿先側部分LR4との境界部位より屈折するように竿先側が大きく撓むこととなる。
【0045】
〔第7実施形態〕
この場合は、図7(b)で示すように、第5実施形態におけるプリプレグシート1を略台形状の従来型の形状に設定したものを巻回する形態について説明する。
この場合には、図7(a)で示すように、芯金2の形状が第5実施形態と同様に元側において急拡大部2Dを形成してあるので、この部分に巻回されたプリプレグシート1が従来型であっても、図7(c)に示すように、緩傾斜面部2Eに巻回された竿先側部分LR4と急拡大する凹入円弧面部2Fに巻回された竿元側部分LR1とは剛性が凹入円弧面部2Fで急に大きくなるので、緩傾斜面部2Eと凹入円弧面部2Fとの境界部位において、魚が掛かった荷重で屈折するように竿先側部分LR4が大きく撓むこととなる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本願発明は、元竿を除く穂先竿から元上までの釣り竿用の竿体に適用できる。また、ガイドがついてリール取付できる釣り竿用竿体に適用できる。
【符号の説明】
【0047】
1繊維強化樹脂シート
2芯金
2B膨出円弧面部
2E緩傾斜面部
2F凹入円弧面部
3竿体
LS1一辺
LS2他辺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
元竿以外の穂先竿から元上に適用されるもので、強化繊維群にマトリックス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂シートを、細長棒状の芯金に巻回して作成される釣り竿用の竿体であって、
前記繊維強化樹脂シートの一辺を、前記繊維強化樹脂シードが前記芯金に巻回される際に、前記芯金の軸線方向に平行な状態となる平行直線状に形成するとともに、前記一辺に対向する他辺を竿先端側から竿元側端に向かうに連れてその一辺から離間し、かつ、前記他辺の少なくとも一部を、曲線形状を呈するものに形成してある釣り竿用の竿体。
【請求項2】
前記他辺の曲線形状を、前記対向する一辺から離間する突出円弧形状に形成してある請求項1記載の釣り竿用の竿体。
【請求項3】
前記他辺の曲線形状を、前記対向する一辺に向かう凹入円弧形状に形成してある請求項1記載の釣り竿用の竿体。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載の釣り竿用の竿体を形成する竿体形成用芯金であって、竿先側から竿元側に掛けて徐々に大径化する円錐台状体に形成するとともに、前記円錐台状体の外周面を外向きに膨らむ膨出円弧面に形成してある竿体形成用芯金。
【請求項5】
請求項1又は請求項3記載の釣り竿用の竿体を形成する竿体形成用芯金であって、竿先側から竿元側に掛けて徐々に大径化する緩傾斜面部を形成するとともに、前記緩傾斜面部の竿元側に、内向きに凹入する状態で急に拡大する凹入円弧面部を形成してある竿体形成用芯金。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−244693(P2011−244693A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117612(P2010−117612)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】