説明

釣竿

【課題】握り心地が良好で、感度が良く当たりが良好に手に伝わるグリップを有する釣竿を提供する。
【解決手段】本発明は、握持、保持されるグリップ10を有する竿杆2aを備えた釣竿において、竿杆2aを、繊維強化樹脂の管状体からなるグリップベース12の内部に隙間Sを設けて支持し、グリップベース12の外側にグリップベースよりも柔らかい表面層15を形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は釣竿に関し、詳細には、グリップ部分に特徴を有する釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、釣竿には、柔らかい手触りで、滑りを防止するため、コルクや発泡合成樹脂製のグリップが設けられている。例えば、特許文献1には、竿杆を、その周りに芯材を介して天然コルクのグリップ孔に隙間なく差し込んで構成された釣竿のグリップが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−37376号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した公知技術のように、従来の釣竿のグリップは、天然コルクだけで握持し易い太さのグリップ径に形成しているため、握り心地は良好となるものの、中実状に構成されているため、グリップの重量が重くなるという問題がある。また、天然コルクは柔軟性を有しており、竿杆から伝わる振動を緩和してしまうことから、魚の当たりが手に伝わらず、感度が鈍くなってしまうという問題もある。
【0005】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、握り心地が良好で、感度が良く当たりが良好に手に伝わるグリップを有する釣竿を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本発明に係る釣竿は、握持、保持されるグリップを有する竿杆を備えており、前記竿杆を、繊維強化樹脂の管状体からなるグリップベースの内部に隙間を設けて支持し、前記グリップベースの外側にグリップベースよりも柔らかい表面層を形成したことを特徴とする。
【0007】
上記した釣竿によれば、実釣時に握持、保持される部分は、釣竿部材を構成する竿杆に対して隙間を介して設けられる管状体のグリップベースの表面層となる。前記管状体として構成されるグリップベースは、竿杆との間に隙間を形成するため、グリップ部分の軽量化が図れると共に、その外側にグリップベースよりも柔らかい表面層を形成するため、握り心地が向上する。また、グリップベースは、繊維強化樹脂の管状体で構成されて竿杆を支持しているため、竿杆の振動が吸収され難くなって、その表面側に良好に伝わるようになる。このため、表面層では握り心地が良く、かつ、当たりが感知し易いグリップとすることが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、握り心地が良好で、感度が良く当たりが良好に手に伝わるグリップを有する釣竿を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る釣竿の全体図。
【図2】図1に示す釣竿のグリップ部分の縦断面図。
【図3】図2のA−A線に沿った断面図。
【図4】図1に示す釣竿の表面層を形成する様子を説明する図。
【図5】第1の実施形態の変形例を示すグリップ部分の縦断面図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る釣竿の全体図。
【図7】図6に示す釣竿のグリップ部分の部分縦断面図。
【図8】図7のB−B線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る釣竿の実施形態について、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0011】
図1から図4は、本発明に係る釣竿の第1の実施形態を示す図であり、図1は釣竿の全体図、図2は、図1に示す釣竿のグリップ部分の縦断面図、図3は、図2のA−A線に沿った断面図、そして、図4は、図1に示す釣竿の表面層を形成する様子を説明する図である。
【0012】
本実施形態の釣竿1は、使用に際して握持、保持されるグリップ10を有する元竿2a、中竿2b及び穂先竿2c等の複数の釣竿構成部からなるへら竿、渓流竿等の継ぎ竿として構成されており、各釣竿構成部同士は公知の継合構造(継合部)によって着脱可能となっている。実際の使用に際しては、穂先竿2cの基端を、中竿2bの先端に差し込み、中竿2bの基端を元竿2aの先端に差し込むことで3本継ぎとして使用される。
【0013】
元竿2aを構成する竿杆2Aは、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等の合成樹脂をマトリックスとし、炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維で強化したプリプレグを巻回して形成した繊維強化樹脂製の管状体(図2参照)で構成されており、その基部(後端部)側には、後述する構造のグリップ10が取付けられている。また、中竿2b及び穂先竿2cのそれぞれの竿杆2B,2Cについても、同様な素材で管状体として構成することが可能である。
【0014】
なお、元竿2a、中竿2b及び穂先竿2cのそれぞれの竿杆2A,2B,2Cは、ソリッド体として構成されていも良く、釣竿全体として、管状体とソリッド体を含んだ構成であっても良い。すなわち、「竿杆」は、釣竿の素材となる杆体で繊維強化樹脂等の合成樹脂などで形成し、管状体やソリッド体、或いはこれらを複合したものが含まれる。また、釣竿1は、図に示す並継構造等の継ぎ竿以外にも、振り出し式に構成されたものであっても良く、複数の釣竿構成部を継ぐ以外にも、後述する第2実施形態のように、1本の竿杆で形成した1本竿として構成されていても良い。
【0015】
前記グリップ10は、元竿2aの竿杆2Aと同様、プリプレグを巻回して形成した炭素繊維、ガラス繊維等の繊維強化樹脂の管状体からなるグリップベース12を有しており、このグリップベース12は、グリップ10の基礎形状となる基体で、グリップ10の形状を維持し、グリップ10の内側層を形成する殻体で握持し易い大きさの径に合わせるため、元竿2aの竿杆2Aよりも大径に構成されている。また、その長さについては、手によって握持、保持される部分になることから、釣竿操作に支障のない程度に設定されている。
【0016】
前記グリップベース12は、元竿2aの竿杆2Aよりも薄肉厚(図2に示すように、竿杆が管状体であればその肉厚で比較し、ソリッド体であればその直径で比較する)に形成されていることが好ましく、このように竿杆よりも薄肉厚にすることで、軽量化を図ると共に振動を伝え易くすることができる。
【0017】
前記グリップベース12は、先端側が先細り状に構成されており、先端部に形成された円筒支持部12aが、グリップベース内に差し込まれた元竿2aの竿杆2A外周面に当接して直接、接着剤等で取付けられている。また、後端側の内面には雌ネジ部12bが形成されており、この部分に尻栓14が螺合されてグリップベース後端側の開口が閉塞されている。前記尻栓14の内面には、段状に支持部14aが一体形成されており、尻栓14が竿杆2Aの後端側を支持している。
【0018】
したがって、元竿の竿杆2Aは、管状体として構成されたグリップベース12の内部において、隙間(空間)Sが設けられた状態で支持されている。具体的に本実施形態では、前記円筒支持部12a及び尻栓14の支持部14aによって、前端側と後端側が支持されており、その中間部に隙間(空間)Sが設けられた状態となっている。これにより、グリップを構成する部分が空洞になるため、軽量化を図ることが可能となる。
【0019】
前記竿杆とグリップベースとの間の隙間Sの幅(竿杆の外周面と、竿杆に対して平行に延出している部分でのグリップベースの内周面との間で規定される幅)Wは、グリップベース12の肉厚よりも大きくしておくことが好ましい。これにより、隙間Sの分だけグリップが重くならずに、握持し易い適度な太さにすることができる。
【0020】
前記グリップベース12は、繊維強化樹脂の管状体として構成したため、感度が良く、当たり(竿杆の振動)が良好に伝わるようになる。しかも、竿杆を、グリップベース12の前端側と後端側で支持しているため、内部に隙間Sが形成されている中間部は、僅かに竿杆側(内側)に歪むことができるようになり、これにより握持性の向上が図れる。この場合、隙間Sについては、握持することで中間部が歪んでも竿杆に接触しないような大きさに構成されている。
【0021】
前記グリップベース12の握持する側の外側表面には、表面層15が形成されている。この表面層15は、グリップベース12の表面よりも柔らかく、滑りが生じないように、それよりも摩擦係数の大きい素材、例えば、コルク、合成樹脂、ゴム等によって構成されており、これにより握り心地の向上を図っている。特に、このような素材では、多孔質材料であるコルクや発泡合成樹脂、発泡ゴムであることが好ましい。このような素材であれば、より握り心地の向上が図れると共に、重量化することを効果的に抑制することができる。
【0022】
また、前記表面層15は、グリップベース12よりも薄肉厚に形成しておくことが好ましく、これにより、グリップ10の握り心地を良好にしてグリップベースに伝わった振動を維持(感度を維持)することが可能となり、更に軽量化を図ることが可能となる。
例えば、第1実施形態の釣竿1は、竿杆2Aのグリップ10に挿通された部分の肉厚を1.2mmとするとグリップベース12の肉厚が0.4〜1.0mm、表面層が0.01〜0.6mmの範囲からグリップベース12より表面層が薄肉厚となるようにそれぞれ適度な厚みに設定する。
【0023】
具体的に、本実施形態では、図4に示すように、表面層15は、シート状(コルクシート15Aとされる)に形成した材料が用いられており、これをグリップベース12の表面に巻回して接着剤等で取着し、巻回後の表面を研磨してグリップベース表面に一層(巻回一周分)のみを残している。すなわち、コルクシート15Aをグリップベース12に巻きながら接着を施して行き、一周したところで余分をカットして端縁部分を突き合せ、その表面を研磨して境界部が面一になるようにしている。これにより、グリップ部分は、見栄えの向上が図れると共に、軽量化された状態で握り心地の向上が図れ、しかも感度を維持することが可能となる。
【0024】
図5は、上記した実施形態の変形例を示したグリップ部分の縦断面図である。
グリップベース12に対する竿杆の支持方法については、図2に示す構成以外にも、例えば、図5に示すように、前端部及び後端部を、グリップベース12によって支持するようにしても良い。このグリップベース12の後端部には、縮径した円筒支持部12cが一体に形成されており、元竿2aの竿杆2Aは、その前後において、円筒支持部12a,12cに当接し、接着されて、直接支持されている。この場合、尻栓14Aは、元竿2aの竿杆2Aの後端の開口に対して圧入されるようになっている。
【0025】
このような構成であっても、上記した実施形態と同様な作用効果を得ることが可能となる。
【0026】
図6から図8は、本発明の第2の実施形態を示す図であり、図6は、釣竿の全体図、図7は、図6に示す釣竿のグリップ部分の部分縦断面図、そして、図8は、図7のB−B線に沿った断面図である。
【0027】
本実施形態の釣竿1Aは、炭素繊維、ガラス繊維等の繊維強化樹脂製のソリッド体で構成された竿杆20に、釣糸を挿通する複数のガイド22が取付けられたルアー竿や船竿として構成されている。竿杆20の後端側には、リール取付け部23が設けられており、その後方側にグリップ10Aが設けられている。
【0028】
リール取付け部23は、公知のように、リール脚を載置する載置面23aと、リール脚を固定する固定フード23bと、固定フード23bに対向配置される移動フード23cとを備えており、螺子部23dに螺合された操作体23eを回転操作することで、移動フード23cを固定フード23bに対して接近/離反させ、これにより、載置面23aに載置されたリールを着脱可能にしている。
【0029】
竿杆20は、リール取付け部23の内部を貫通すると共に、グリップ10A内に挿通され、その後端でキャップ状の尻栓24で支持されている。この場合、グリップ10Aは、第1実施形態と同様、管状体で竿杆20よりも大径で薄肉厚のグリップベース12Aを有しており、その前端側と後端側で、スペーサ部材26を介して竿杆20を支持している。このため、竿杆20は、両端に位置するスペーサ部材26によって、中間部に竿杆20との間で隙間Sが形成されるように支持されている。なお、グリップベース12Aは、長手方向に同一径、同一肉厚に形成され、隙間Sは長手方向に同一幅に形成されている。
例えば、第2実施形態の釣竿1Aでは、竿杆20のグリップ10Aに挿通された部分の径(肉厚)が5.0mmとすると、グリップベース12Aの肉厚が0.4〜1.0mm、表面層15は第1実施形態と同様の材料が用いられて、0.01〜0.6mmの範囲でグリップベース12Aより表面層15が薄肉厚となるように適度な厚みに設定する。
【0030】
前記スペーサ部材26は、竿杆20を囲繞するように円板形状に形成されており、竿杆側を支持する円筒支持台26a、グリップベース側を支持する円筒支持台26b、及びこれらを繋ぐ柱状の連結部26cを備えている。すなわち、スペーサ部材26は、径方向において中間領域が軸方向にえぐられて連結部26cが形成されており、これにより、スペーサ部材を軽量化すると共に、竿杆20からの振動が伝わり易いようになっている。
【0031】
なお、スペーサ部材26は、振動を十分に伝えるため、上記した実施形態と同様に形成された表面層15よりも硬い材料、例えば、ABS等の合成樹脂や炭素繊維、ガラス繊維等の繊維強化樹脂によって形成されていることが好ましい。
【0032】
このようなグリップ10Aを有する釣竿においても、上記した実施形態と同様な作用効果を得ることが可能となる。また、スペーサ部材の設置箇所や設置個数を変えることで、握り心地を調整することが可能となる。
【0033】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、適宜、変形することが可能である。例えば、グリップについては、グリップベースの両端で竿杆を支持し、その中間部に隙間が生じるように構成したが、中間部分にスペーサを介在させても良い。また、グリップベースの表面に設けられる表面層については、塗装で構成しても良いし、凹凸処理を施しても良い。また、グリップベースは、釣竿部材である竿杆を支持し、かつ内部に空間が形成されるような管状体(空洞体)であれば良く、その外形状については適宜変形することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1,1A 釣竿
2a 元竿(竿杆)
10,10A グリップ
12,12A グリップベース
15 表面層
20 竿杆
26 スペーサ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
握持、保持されるグリップを有する竿杆を備えた釣竿において、
前記竿杆を、繊維強化樹脂の管状体からなるグリップベースの内部に隙間を設けて支持し、前記グリップベースの外側にグリップベースよりも柔らかい表面層を形成したことを特徴とする釣竿。
【請求項2】
前記表面層は、前記グリップベースよりも薄く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
前記グリップベースは、前記竿杆よりも薄肉厚に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の釣竿。
【請求項4】
前記竿杆は、前記グリップベースの内部に挿通されると共に、グリップベースの前端側と後端側で支持されており、その中間部が前記隙間を形成していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の釣竿。
【請求項5】
前記竿杆は、前記グリップベースにスペーサ部材を介して支持されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の釣竿。
【請求項6】
前記表面層は、多孔質材からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の釣竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−24491(P2011−24491A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174196(P2009−174196)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】