説明

釣糸、釣糸とスピニングリールと釣竿との組立体、釣糸と天上糸とハナカン回り糸と釣竿との組立体、釣糸ハリスと道糸とリールと中通し竿との組立体、及び釣糸の製造方法

【課題】異種金属素線を撚合構成した釣糸、及びその製造方法において、一方の高熱伝導率を有する金属素線の熱伝導特性と、他方の強加工伸線した金属素線の温度と引張破断強度特性の双方に着目して、異種金属素線撚合後の引張破断強度特性を向上させる好適条件、並びに釣糸としての結束性向上、耐カール性向上、及び水切れ特性を向上させる釣糸と、その製造方法等を開示するものである。
【解決手段】他方の5倍以上の熱伝導率を有する一方の金属素線と、他方の強加工したオーステナイトステンレス鋼線とを用いて撚合構成した後に樹脂被膜成形時の伝導熱、対流熱、放射熱を利用して、釣糸の機械的強度特性を向上させ、かつ結束性、耐カール性、水切れ特性等向上させた釣糸であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱伝導率の高い一方の金属素線の外周部等に、機械加工を行った一定の引張破断強度を有する他方の金属素線を撚合構成し、その後加熱処理(低温熱処理)を加えることにより、一方の金属素線の高熱伝導率の性質を利用して、他方の金属素線の引張破断強度をより向上させて、釣糸としての針との結束性の向上、魚の歯、鰓等による切断の耐せん断力の向上、及び水切れ特性等向上させる釣糸と、釣糸とスピニングリールと釣竿との組立体等、及び釣糸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
川、及び海において釣果向上の為、各種の釣糸の提案がなされている。
【0003】
特許文献1には、ポリオレフィン繊維の金属繊維が組み上げられて引張強力、結束強力、及び耐摩耗性を向上させる釣糸の開示がある。しかし、金属繊維の特質、及び異種金属撚合線の特質については何ら記載されていない。
【0004】
特許文献2には、芯材にポリエチレンフィラメントを用いて、その外側にタングステン等の金属素線による編組構成により滑りをなくしてカール性が少ない、しなやかな釣糸の開示がある。しかし、前記同様金属繊維の特質、及び異種金属撚合線の特質については何ら記載されていない。
【0005】
特許文献3には、芯線の外周に右巻きと左巻きのいわゆるクロス状の金属線を巻き付け、水流による抵抗を少なくした釣糸が開示されている。しかし、釣糸が水流方向に対して直交方向のときには水切れ特性向上効果はみられるが、実際の釣り現場では、水流方向に対して常に直交する場合は極めて少なく、かかる場合水切れ特性効果は低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−330241号公報
【特許文献2】特開昭64−13936号公報
【特許文献3】特許第3616562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、熱伝導率の高い一方の金属素線の外周部等に他方の金属素線であるオーステナイト系ステンレス鋼線を複数本用いて異種金属素線の撚合構成とし、強加工した他方の金属素線の熱影響による引張破断強度特性に着目して、撚合構成した後の低温熱処理時の熱伝導形態により他方の金属素線の引張破断強度を高度に高めた新たな技術思想から成る釣糸、及びその製造方法を提供し、さらに川又は海での水流の流速差に着目して、水切れ特性を向上させた釣果向上を図る、新たな技術思想を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、素線直径が0.008mmから0.120mmの金属素線から成る芯材と、前記芯材の外側に素線直径が0.008mmから0.120mmの金属素線を複数本撚合構成した側材を設けて、前記側材の外側に樹脂被膜の外層材から成る釣糸において、前記芯材の金属素線は、前記側材の金属素線よりも熱伝導率が5倍以上とし、前記側材の撚合構成は、前記芯材の外側に前記側材の金属素線を複数本撚合させて、撚合方向が長手方向に対して連続して一方向螺旋状に巻回形成する撚合構成とし、かつ前記側材の金属素線は、固溶化処理したオーステナイト系ステンレス鋼線を用いて、伸線と伸線後に400℃から495℃の低温熱処理を設けて、又は前記側材の金属素線がMoを含むオーステナイト系ステンレス鋼線のときには400℃から525℃の低温熱処理を設けて、前記伸線と前記低温熱処理を1セットとして少なくとも1セット以上繰り返した後に最終伸線を設けて、前記最終伸線までの総減面率を95%から99.5%以下とし、前記最終伸線までの前記低温熱処理による引張破断強度の増加率の合計が15%以上とし、引張破断強度が300kgf/mm2 以上とし、前記芯材と前記側材を撚合構成した後に、前記外層材の樹脂被膜成形時の伝導熱、対流熱、又は放射熱による180℃から300℃の低温熱処理を行い、前記側材は、前記芯材と前記側材の外側からの低温熱処理によるサンドイッチ温熱形態により、引張破断力を前記外層材の樹脂被膜成形前の引張破断力よりも増大させたことを特徴とする。
この構成により、低温熱処理時の芯材の高熱伝導率特性を利用して、側材の強加工したオーステナイト系ステンレス鋼線の引張破断強度をより向上させ、高強度の引張破断強度特性を有する金属素線から成る釣糸を得ることができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、芯材と、前記芯材の外側に素線直径が0.008mmから0.120mmの異種金属素線を複数本撚合構成した側材を設けて、前記側材の外側に樹脂被膜の外層材から成る釣糸において、前記芯材は、28dtexから440dtexの繊度の低伸度高強力樹脂繊維から成り、前記側材の異種金属素線の撚合構成は、前記異種金属素線を隣接接触させて撚合方向が長手方向に対して連続して一方向螺旋状に巻回形成する撚合構成とし、前記金属素線の一方は、他方の金属素線よりも5倍以上の熱伝導率を有し、前記金属素線の他方は、固溶化処理したオーステナイト系ステンレス鋼線を用いて、伸線と伸線後に400℃から495℃の低温熱処理を設けて、又は前記他方の金属素線がMoを含むオーステナイト系ステンレス鋼線のときには400℃から525℃の低温熱処理を設けて、前記伸線と前記低温熱処理を1セットとして少なくとも1セット以上繰り返した後に最終伸線を設けて、前記最終伸線までの総減面率を95%から99.5%以下とし、前記最終伸線までの前記低温熱処理による引張破断強度の増加率の合計が15%以上とし、引張破断強度が300kgf/mm2 以上とし、前記芯材と前記側材を撚合構成した後に、前記外層材の樹脂被膜成形時の伝導熱、対流熱、又は放射熱による180℃から300℃の低温熱処理を行い、前記側材の異種金属素線の他方は、前記外層材の樹脂被膜成形時の低温熱処理による外側からと、高熱伝導率を有する一方の金属素線との隣接接触形態により、引張破断力を前記外層材の樹脂被膜成形前の引張破断力よりも増大させたことを特徴とする。
この構成により、低温熱処理時に一方の金属素線の高熱伝導特性を利用して引張破断強度をより向上させて、高度の引張破断強度特性を有するオーステナイト系ステンレス鋼線である他方の金属素線を得て、かつ異種金属素線の撚合線を用いながら合成樹脂モノフィラメントと同様の針との結束を可能とし、又擦れによる耐カール性を向上させた釣糸を得ることができる。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の前記芯材の金属素線、又は請求項2記載の前記側材の一方の異種金属素線が、タングステン線、又はアルカリ金属を添加したドープタングステン線、若しくはアルミニウム、カリウム、レニウムのうち少なくとも一種類を添加したドープタングステン線から成ることを特徴とする。
この構成により、熱伝導率の高い金属素線を得て、さらにドープ材を添加することにより粒界強化、分散強化効果により細径でありながら引張破断強度が高く、かつクリープ特性を改善した異種金属素線の撚合線から成る釣糸を得ることができる。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の前記側材の金属素線、又は請求項2記載の前記側材の他方の異種金属素線が、固溶化処理したオーステナイト系ステンレス鋼線を用いて、強加工により引張破断強度が340kgf/mm2 以上から成ることを特徴とする。
この構成により、高度に強加工した他方のオーステナイト系ステンレス鋼線を得て、低温熱処理時に、高熱伝導率を有する一方の金属素線の熱伝導特性を利用して、他方の金属素線の引張破断強度を向上させて、より引張破断力を高めた釣糸を得ることができる。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1又は3のいずれか一つに記載の釣糸において、前記芯材と前記側材の金属素線の撚合構成が、前記芯材の金属素線は一本で、前記側材の金属素線は7本から8本のスパイラルロープから成ることを特徴とする。
この構成により、異種金属素線撚合構成の外側の撚合線のばね指数と柔軟性を考慮して、高い引張破断力を有する異種金属素線撚合構成の釣糸を得ることができる。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一つに記載の釣糸を用いて、前記釣糸をスピニングリールと釣竿とを連結し、前記釣糸の前記側材の複数の前記金属素線の撚合方向が、前記スピニングリールの回転・巻き取りから発生する前記釣糸を捩じり回転させる方向と反対の撚合方向としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の釣糸と、スピニングリールと釣竿との組立体である。
この構成により、スピニングリールの巻き取りによる異種金属素線撚合構成から成る釣糸の耐カール性を高めることができる。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項2〜5のいずれか一つに記載の釣糸を用いて、前記釣糸を天上糸とハナカン回り糸と連結し、前記天上糸を前記釣竿と連結したことを特徴とする請求項2〜5のいずれか一つに記載の釣糸と、天上糸とハナカン回り糸と釣竿との組立体である。
この構成により、引張破断強度の高い釣糸を得て囮鮎を疲れさせることなく、水切れ特性を飛躍的に向上させる鮎の友釣り仕掛けを短時間に作り、又は作り直すことができて釣果向上に大きく寄与する。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一つに記載の釣糸を用いて、前記釣糸を釣糸ハリスとして用いて道糸と連結し、前記道糸を中通し竿内で摺動させることにより、前記釣糸ハリスからの振動を前記中通し竿の手元部へ伝達させたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の釣糸ハリスと、道糸とリールと中通し竿との組立体である。
この構成により、引張破断強度の高い釣糸を得て鋭利な魚の鰓による釣糸の切断を防ぐとともに、餌に喰いついた魚の挙動を釣糸ハリスから道糸へ振動特性として伝え、そして中通し竿内でこの振動を増幅させて釣人の手へ伝える効果がある。
【0016】
請求項9記載の発明は、高熱伝導率と高い相対密度を有する金属素線を明示した請求項1記載の釣糸の製造方法である。
この構成により、素線直径が0.008mmから0.120mmで高い引張破断強度特性と高熱伝導率を有する芯材の極細線を得て、芯材と側材との異種金属素線の撚合後の低温熱処理時に、芯材の高熱伝導特性を利用し、強加工した側材のオーステナイト系ステンレス鋼線の引張破断強度特性をより向上させて、高強度の引張破断強度特性を有する異種金属素線の撚合構成から成る釣糸を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】釣糸1の正面図、横断面図(実施例1〜5)及び他の実施例横断面図
【図2】釣糸2の正面図、横断面図(実施例6)
【図3】釣糸2の正面図、横断面図(実施例7)
【図4】釣糸2の正面図、横断面図(実施例8〜10)
【図5】釣糸2とフロロカーボン糸との結束状態図
【図6】鮎の友釣り状態図(特許文献3)
【図7】鮎の友釣り状態図(実施例8〜10)、及び速度の不連続面説明図
【図8】鮎の友釣り仕掛け
【図9】釣糸とスピニングリールとの組付図
【図10】釣糸2と針と魚、及びリールと中通し竿との組立体の説明図
【図11】温度と引張破断強度特性図
【図12】釣糸2の引張・伸び特性線図
【図13】熱伝導率と熱伝導距離
【図14】釣糸1撚合構成と引張破断力
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施形態を図に示すとともに説明する。
【実施例】
【0019】
図1は本発明の実施例を示し、図1(A)は釣糸1を示して実施例1の釣糸1Aは、素線直径が0.026mmの金属素線1本の芯材5Aと、素線直径が0.015mmの金属素線8本から成る側材6とを、芯材5Aの外側に側材6を撚合させ、撚合方向が長手方向に対して連続して一方向螺旋状に巻回形成した撚合方向とし、つまりスパイラルロープの撚り構成の1×9(芯材1本の外側に8本の側材)とし、撚線後の外径であるロープ外径は0.056mmでロープピッチ(図示P)はロープ外径の2.5倍から15倍とし、側材6の外側に合成樹脂被膜の外層材7で被覆され、被覆後の外径が0.061mmである。
ここで、スパイラルロープとは3本以上の素線を撚り合わせてストランド(束)としたロープのことをいい、(1×n)の形の呼び名としnは素線本数を示す。
【0020】
又図1(B)〜(D)は、前記実施例1の釣糸1Aに対して芯材5Aの素線直径と側材6の素線直径と本数が異なる実施例2〜5の釣糸1B〜1Eを示し、その仕様を整理すると表1 となる。尚、釣糸1Cは釣糸1Bと同一撚り構成の為図示せず。
【0021】
【表1】

【0022】
そして前記合成樹脂被膜の外層材7の材質としては、6ナイロン、12ナイロン等のポリアミド、又ポリエチレン、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂を用いて押出成形、ディップ工法等、又はエポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等の熱硬化性樹脂によるディップ工法(溶融樹脂層へ通過させて加熱硬化させる工法)等により被膜成形され、芯材5A及び側材6は樹脂被膜により密閉状に包被されている。
【0023】
そして芯材5Aに用いる金属素線は、後述する側材6のオーステナイト系ステンレス鋼線よりも5倍以上の熱伝導率を有する金属材料、好ましくは7倍以上の熱伝導率を有する金属材料である。具体的には、室温近傍の熱伝導率k(W・m-1・K-1)が83〜94で側材の約5.0〜約6.3倍(側材のオーステナイト系ステンレス鋼線は15〜16.5)のNi成分を45%以上含む合金材(例Ni−Ti合金材等)、同様に熱伝導率kが236〜240で側材の約13.9〜約16倍のアルミニウム線、又同様に熱伝導率kが163〜177で側材の約9.9〜約11.8倍のタングステン線、又はタングステン合金線である。又銅線、銀線も熱伝導率は高いが引張破断強度特性、及びコスト面等から好ましくない。
最も好ましいのは、タングステン線、又はタングステン合金線で、タングステン合金線としては、タングステンにアルカリ金属を200ppm以下添加したドープタングステン線、又はアルミニウム、レニウムを少なくとも一種類を200ppm以下添加したドープタングステン線である。
この理由は、特にアルカリ金属であるカリウムを添加したドープタングステン線は、カリウムによる粒界強化作用、及び分散強化作用により、引張破断強度を向上させ、かつ再結晶抑制効果により、クリープ強度を向上させることができるからである。
【0024】
そして前記タングステン線、又はドープタングステン線は、相対密度が99%以上(ポアの体積比率が1%以下)で、好ましくは99.4%以上(ポアの体積比率が0.6%以下)のタングステン焼結体、又はドープタングテン焼結体をスウェージング加工を行った後に伸線加工した線材が好ましい。
この理由は、スウェージング加工により金属組織を同一方向に揃えて引張破断強度を向上させるとともに、金属組織内のポアの体積比率が1%を超えると、本発明で用いる素線直径が0.008mmから0.120mmの極細線の伸線加工においては、伸線加工時にポアが線材表面に現われて切り欠き状態となり、これを起点として断線が頻繁に発生して生産性を阻害し、引張破断強度が300kgf/mm2 以上で、350kgf/mm2 から400kgf/mm2 の高い引張破断強度を有する安定した品質の極細線を得ることができないからである。
【0025】
そして芯材5Aが、側材6のオーステナイト系ステンレス鋼線の5倍以上、好ましくは7倍以上の熱伝導率を有する金属素線とする理由は、強加工伸線したオーステナイト系ステンレス鋼線は一定温度の低温熱処理により引張破断強度が増大する特性があり、この為芯材と側材を撚合構成した後に外層材の樹脂被膜成形時の加熱により、撚合構成の中心に存在する芯材の温度は長手方向に対して側材の温度よりも高くなり、側材の外部からの加熱手段と、高くなった芯材の温度とのサンドイッチ温熱形態の低温熱処理となることにより強加工の側材の引張破断強度向上効果を高める作用効果を見出した。詳細については後述する。尚、芯材はコイル状の側材と異なりストレート状であり、捩じりに弱いタングステン線の好適な用い方である。
【0026】
次に側材6に用いる金属素線は、固溶化処理したオーステナイト系ステンレス鋼線を用いて、伸線加工と低温熱処理工程を繰り返した後に最終伸線工程を設けて、最終伸線工程までの総減面率を95%から99.5%以下の伸線加工を行なったことを特徴とする。
そして側材6は、素線直径が、0.008mmから0.120mmまでの金属素線を用いる。尚、ここでいう総減面率とは、固溶化処理した線材の線径と伸線加工により伸線工程での最終仕上がり線径との間の断面積差を減少率で表したものをいう。そして、総減面率が95%以上99.5%以下としたのは、引張破断強度を300kgf/mm2 以上とする為であり、総減面率が99.5%を超えると金属組織内に空隙が生じはじめて脆化が激しく、撚線時に断線が発生しやすくなるからである。
【0027】
そして、「固溶化処理したオーステナイト系ステンレス鋼線の伸線加工」としたのは、加工性のよいオーステナイト組織を得る為であり、オーステナイト系ステンレス鋼線は変態点を利用した熱処理による結晶粒の微細化ができず、冷間加工によってのみ結晶粒の微細化が可能で、伸線加工により顕著な加工硬化性を示して引張破断強度を向上させることができるからである。又オーステナイト系ステンレス鋼線を用いる理由は、マルテンサイト系ステンレス鋼線では熱処理による焼入硬化性を示して熱影響を受け易く、又フェライト系ステンレス鋼線では温度脆性(シグマ脆性、475℃脆性)の問題があるからであり、そして又、複雑な金属組織をもつ高価な金属材料を用いなくても市販されている金属材料を用いて高強度の引張破断強度特性を有する金属素線を得ることができるからである。
【0028】
ここで表2、3は、本発明の側材6の素線直径が0.008mmから0.120mm(本実施例2、5では、それぞれ0.014mm、0.016mm、後述する実施例9、10ではそれぞれ0.03mm、0.04mm)の高強度の引張破断強度特性を有する金属素線を得る為の製造工程と、工程毎に引張破断強度特性を示したものである。
これは、固溶化処理したオーステナイト系ステンレス鋼線(本実施例はSUS304材)の引張破断強度74kgf/mm2 から79kgf/mm2 の線材(母線)を用いて所定の減面率で一次伸線後温度範囲が400℃から525℃で10分から180分の熱処理炉を用いた熱風循環の雰囲気加熱による一次低温熱処理(本実施例では450℃、30分)を行い、その後所定の減面率で二次伸線を行い、そして前記同様温度範囲が400℃から525℃で10分から180分で熱処理炉を用いた雰囲気加熱による二次低温熱処理(本実施例では450℃、30分)を行い、その後所定の減面率で三次伸線加工を行い、所定の素線直径の金属素線を得ることができる。
ここで引張破断強度とは、金属素線に引張力を加えて破断した値を金属素線の断面積で除した値のことをいう。
【0029】
【表2】

【0030】
【表3】

【0031】
ここで、表中における丸付数字は、カッコ付数字で示すものである。
表2、3によると、一次伸線後の一次低温熱処理による引張破断強度の増加率(1)は、それぞれ14.8%から21.1%となって、いずれも10%以上の増加率を示し、又二次伸線後の二次低温熱処理による引張破断強度の増加率(2)は、それぞれ9.5%から11.9%となっていずれも5%以上の増加率を示し、各低温熱処理による増加率の合計(1)+(2)は、それぞれ24.3%から33.0%となっていずれも20%以上の増加率を示している。
そして、最終伸線工程(本実施例では三次伸線)後の引張破断強度は、それぞれ343kgf/mm2 から402kgf/mm2 となって、いずれも300kgf/mm2 を超えて340kgf/mm2 以上の値を示している。
【0032】
ここで一次伸線工程の減面率は、80%から95%とし、より高い引張破断強度特性を得る為には、90%から96%とし(本実施例では92.6%から95.4%)又二次伸線工程の減面率は40%から79%とし、より高い引張破断強度特性を得る為には、50%から89%として(本実施例では55.6%から75%)、一次伸線工程の減面率を二次伸線工程の減面率よりも高く設定し、そして最終伸線工程(本実施例では三次伸線)までの総減面率を95%以上99.5%以下とし、より高い引張破断強度特性を得る為には、97%以上99.5%以下とする。(本実施例では98.4%から99.5%)
【0033】
そして補足すれば、一次伸線工程と二次、三次伸線工程の各工程内での減面率はいずれを高く設定してもよいが、一次低温熱処理前の一次伸線工程の減面率を高く設定(本実施例では92.6%から95.4%)することにより、加工誘起マルテンサイト量を多くして熱処理による結晶粒の成長を抑制し、結晶粒径を小さくさせることができる。
そして又、経済性、生産性等の観点から一次伸線工程での減面率を高く設定し、その後の伸線工程をそれより低く設定することが望ましい。又、加工誘起マルテンサイト生成による引張破断強度向上効果をより高める為、伸線時の金属素線の表面温度は、140℃以下が望ましく、湿式伸線での冷却潤滑液の設定、又は伸線時のダイスへシャワー状に吹き付ける潤滑液の設定、及びこれらの潤滑液の温度設定等によりこれを達成できる。例えば、湿式伸線の場合の潤滑液温度は28℃から42℃が前記金属素線の表面温度を維持する上で望ましい。
【0034】
又、一次及び二次の各低温熱処理の温度範囲を400℃から525℃で10分から180分(本実施例では450℃、30分)としたのは、後述するオーステナイト系ステンレス鋼線、例えばSUS304材とSUS316材の強加工伸線での温度のよる引張破断強度特性(図11)と熱処理炉を用いた雰囲気加熱による生産性、及び品質の安定を考慮したからである。そして、図11より、Moを含むオーステナイト系ステンレス鋼線であるSUS316材(図示ロ)は、低温側ではSUS304材(図示イ)と同様な傾向を示すが、高温側ではSUS304材よりも約30℃ほど高温側で引張破断強度が高くなる。
そして、伸線工程と低温熱処理工程を1セットとして5セット以上繰り返してもよいが、経済性、生産性等の観点から3セット以下が望ましい。又金属素線の段階で、最終伸線工程後(本実施例では三次伸線工程後)に低温熱処理工程を設けない理由は、前記金属素線の段階で低温熱処理を施すと引張破断強度は増大するが、強加工伸線により極度に伸びが不足している為、前記金属素線を複数本用いて撚合時に、金属素線の断線が発生し易くなり、これを防ぐ必要があるからである。
これは、総減面率が95%を超える金属素線を撚合する場合の特有の現象と考えられる。そして撚合後の低温熱処理については、後述する。
【0035】
次に、図2、図3は本発明の釣糸2を示し、又実施例6の釣糸2A(図2)は、芯材5Bが樹脂繊維で、その外側の側材61は、前記実施例1〜5の芯材5Aと同様に、側材62のオーステナイト系ステンレス鋼線の5倍以上の熱伝導率を有する金属材料、好ましくは7倍以上の熱伝導率を有する金属材料を用いる。本実施例6においては、素線直径が0.016mmのドープタングステン線を6本用いる。そして側材62は、前記実施例1〜5の側材6と同様の強加工のオーステナイト系ステンレス鋼線を用い、素線直径が0.016mmの前記金属素線を6本と、前記側材61の金属素線の6本との各金属素線が隣接接触する撚合構成とし、撚合方向が長手方向に対して連続して一方向螺旋状に巻回形成して、巻回形成後の金属素線のピッチであるロープピッチは前記同様巻回成形後の外径の2.5倍から15倍とし、側材61、62の外側には合成樹脂被膜の外層材7で被膜され、樹脂被膜後の外径は0.084mmである。尚、側材61と62とは、それぞれ交互に隣接接触する撚合構成の他に、側材62の1〜3本毎と、側材61の1〜3本毎とが並列して隣接接触した撚合構成としてもよい。
【0036】
ここで、芯材5Bの樹脂繊維としては、低伸度高強力樹脂繊維を用い、これは金属線に近い伸度を示す樹脂繊維のことをいい、具体的には液晶紡糸やゲル紡糸により得られるアラミド樹脂から成るケブラー(登録商標:デュポン社製)糸、ポリアリレート系樹脂から成るベクトラン(登録商標:■クラレ製)糸、ポリエチレン系樹脂から成るダイニーマ(
登録商標:東洋紡■製)糸、ポリパラフェニレンベンゾオキサゾール系樹脂から成るザイ
ロン(東洋紡■製)糸等である。そして、芯材5Bは、繊度が28dtexから440d
texの低伸度高強力樹脂繊維を用いる。この理由は、低伸度で引張破断強度が高い為、細径化することができ、外径が0.3mm(3号)以下の磯釣糸(一般に1号〜3号)、特に外径が0.074mm(0.2号)以下の釣糸、さらに、外径が0.037mm(0.05号)の例えば鮎釣糸(一般に0.04号から0.2号)にまで細径化が可能となるからである。又外層材7の材質は、前記実施例1〜5と同様である。
【0037】
次に、図3は実施例7の釣糸2Bを示し、前記実施例6と異なるところは、側材61、62の金属素線が欠落した欠落部8を有する撚合構成(実施例4の釣糸2Bでは、側材の金属素線本数は側材61が1本で側材62が2本の合計3本で釣糸2Aに対して9本欠落)となっている。次に、図4は実施例8の釣糸2Cを示し、実施例7と異なるところは、後述する外層材7の凸凹条11の樹脂被膜後の最大外径と最小外径の寸法差が金属素線直径の少なくとも20%以上となっていることである。
そして、図4(B)は、金属素線直径が異なる実施例9、10の釣糸2D、2Eを示し、実施例8と異なるところは、側材の素線直径が異なる前記側材61と同材質の太径線の側材61Aの両側に前記側材62と同材質の細径線62Bの金属素線を撚合構成し、側材61Aの素線直径が0.04mm1本と、側材62Bの素線直径が0.03mm2本との、太径線と細径線との組み合わせを実施例9の釣糸2Dとし、同様に素線直径が0.06mm1本と素線直径が0.04mm2本の前記側材61と同材質の太径線と前記側材62と同材質の細径線との組み合せを実施例10の釣糸2Eとする。
【0038】
そして、実施例8〜10のいずれも金属線の凸凹条が樹脂被膜後の外表面に浮き出た形態にして、つまり複数の金属素線の撚合構成により、金属素線相互が接触している凸凹状隆条部9と金属素線が欠落している凹条溝部10とによる凸凹条11が長手方向に沿って連続して螺旋状に巻回形成されていることを特徴とする。
そして、実施例8の外径寸法を図4(A)を用いて説明すると、金属素線の巻回後の最大外径(図示D1)と、芯材5Bの外径(図示d1)はそれぞれ0.175mm、0.115mmであり、樹脂被膜後の凸凹条11の最大外径(図示D2)と最小外径(図示d2)はそれぞれ0.200mm、0.186mmであり、D2とd2の差は0.014mmとなって樹脂被膜後の凸凹条11はこの段差寸法を有する構造となっている。
この樹脂被膜後の最大外径と最小外径の寸法差は、太径線直径(0.04mm)の35%であり、後述するスパイラル渦流を発生させる為には、金属素線直径の少なくとも20%以上が好ましく、より好ましくは30%以上が望ましく、最大のこの寸法差は太径線直径の概ね2倍である。
そして、金属素線部の樹脂被膜の膜厚は0.0125mmとなっている。
【0039】
そして側材の素線直径が0.015mm、0.016mm、0.014mm、0.03mm、0.04mmの金属素線を用いて撚合構成した釣糸の実施例1、2、5、9、10について説明する。
【0040】
表4は実施例1、2、5、9、10に対して外層材7である樹脂被膜成形前(各実施例を1A、2A、5A、9A、10Aとする)の状態で180℃から300℃で10秒から60分(本実施例では200℃、5分)雰囲気加熱による低温熱処理を加えたときの引張破断力の増加率(%)を示し、又表4は外層材7の樹脂被膜成形を行なった実施例1、2、5、9、10を示し、樹脂被膜成形時の熱を利用して、つまり押出成形時の溶融樹脂による伝導熱、又はディップ工法による塗膜成形時の塗膜樹脂乾燥の為の対流熱、放射熱、及び後述する金属素線の撚合後の予備加熱等を利用して180℃から300℃で10秒から60分(本実施例では200℃、30秒)の低温熱処理をしたときの引張破断力の増加率(%)を示す。ここで引張破断力とは釣糸に引張力を加えて破断したときの値のことをいう。尚、表5中実施例9、10の被膜外径は最大値と最小値を示す。
【0041】
【表4】

【0042】
【表5】

【0043】
表4によると、熱伝導率の高いドープタングステン線と、総減面率が95%以上の強加工したオーステナイト系ステンレス鋼線を隣接接触の撚合構成とした後に、低温熱処理を加えると引張破断力は増加し、又その増加率は7.6%から12.6%となり、いずれも5%以上を超え、特に実施例1、2、5においては12.1%から12.6%となって10%以上増大させることができる。そしてさらに、表5によれば外層材7である樹脂被膜成形時の熱利用、つまり押出成形時の溶融樹脂による伝導熱の利用、又はディップ工法による塗膜成形時の塗膜樹脂乾燥の為の対流熱、放射熱、及び金属素線の撚合後の予備加熱等を利用した熱処理(低温熱処理)により引張破断力を増大させることができ、その増加率は11.2%から14.0%となり、いずれも10%を超え、特に実施例1、2、5においては12.9%から14.0%となって概ね13%以上増大させることができる。
このように熱伝導率k(W・m-1・K-1)が163〜177でオーステナイト系ステンレス鋼線(kが15〜16.5)の9倍以上のタングステン線、又はドープタングステン線を用いて、総減面率が95%から99.5%以下の強加工のオーステナイト系ステンレス鋼線とを隣接接触した撚合構成とすることにより、撚合した後の外層材7の樹脂被膜成形時の伝導熱利用、対流熱利用、又放射熱利用の低温熱処理により、いずれも高い値で引張破断力を増大させることを見出した。
【0044】
そして次に熱伝導率の差による同一温度における長手方向の熱伝導の距離の差について述べる。図13は熱伝導率k(W・m-1・K-1)が163〜177のタングステン線(図示イ)と、熱伝導率kが83〜94のニッケル線(図示ロ)と、熱伝導率kが15〜16.5のオーステナイト系ステンレス鋼線(図示ハ)を用いて一端を300℃に加熱したとき、長手方向の温度を定点測定して対数グラフにて比較したものである。尚、素線直径は計測器寸法を考慮していずれも2mmの線材を用いて比較した。
【0045】
図13によれば、定点測定の温度が50℃のとき、ニッケル線はオーステナイト系ステンレス鋼線よりも約2.5倍の長さの位置まで同一温度で、又タングステン線は約4倍の長さの位置まで同一温度である。同様に40℃のとき、ニッケル線で約3.2倍、タングステン線で約5.3倍の長さの位置まで同一温度である。
このことは、例えば外層材7の樹脂被膜成形時の加熱温度が300℃のとき、タングステン線はオーステナイト系ステンレス鋼線よりも数倍長い距離(上記結果では約3.2倍から約5.3倍)で同一温度に達し、本発明の極細線の熱容量を考慮すれば、前記を大きく超える数値の長い距離で同一温度に達していると考えられる。
そして例えば、実施例1〜5においては、側材である強加工のオーステナイト系ステンレス鋼線は、外層材の樹脂被膜成形時の加熱により側材の内側に存在する芯材のタングステン線と、側材の外側からの加熱によるサンドイッチ温熱形態の低温熱処理状態となり、又実施例6〜10においては、オーステナイト系ステンレス鋼線と隣接接触しているタングステン線と側材の外側からの加熱による低温熱処理形態となる。このことにより表5に示すような増加率の高い引張破断力を示す釣糸を得ることができる。尚、前記顕著な引張破断力を示す為の熱伝導率k(W・m-1・K-1)は、オーステナイト系ステンレス鋼線よりも5倍以上(図示ロは約5.0〜約6.3倍)が好ましく、より好ましくは7倍以上で、最も好ましくは9倍以上(図示イは約9.9倍〜約11.8倍)である。
【0046】
ここで本発明においては、各金属素線の段階で表2、3及び前記各金属素線を撚合させた釣糸段階での表4、5にみられるように、側材のオーステナイト系ステンレス鋼線においては総減面率が95%を超える強加工の金属素線の最終工程では、低温熱処理を行なわずに最終伸線工程までとし、前記金属素線を撚合した後に前記低温熱処理を加えることにより、釣糸としての引張破断力を増大させることができる。この理由は側材のオーステナイト系ステンレス鋼線は総減面率が95%を超える強加工伸線の金属素線(本実施例では総減面率が98.4%から99.5%)に前記同様の低温熱処理を加えると引張破断強度は増大するが、伸びの不足により複数の前記金属素線の撚合時に断線が発生し、異種金属素線との撚合構成が困難となるからである。従って、側材のオーステナイト系ステンレス鋼線は、金属素線の段階では所定の総減面率を有する最終伸線工程までとして最終伸線工程後に低温熱処理を行なわずに、その後複数の前記金属素線を撚合した後に、表4、5に示すような低温熱処理を加えることにより、異種金属素線との撚合時の断線を防いで、かつ引張破断力をより増大させることができる。
そして、表5に示すように、外層材7の樹脂被膜成形時の溶融樹脂等による伝導熱、対流熱、及び放射熱等を利用した180℃から300℃の低温熱処理により引張破断力を、より増大させることができる。
【0047】
この理由は、前述のように側材よりも5倍以上の熱伝導率を有する側材の内側の芯材と、側材の外側からの加熱によるサンドイッチ温熱形態の低温熱処理、又は側材のオーステナイト系ステンレス鋼線よりも5倍以上の熱伝導率を有する金属素線と隣接接触して側材の外側からの加熱による低温熱処理形態により引張破断力を、より増大させることができる。
そしてさらに、後述する図11の温度と引張破断強度特性との関係にみられるようにオーステナイト系ステンレス鋼線は180℃の低温でも引張破断強度が上昇し始める。
そして側材6の金属素線の極細線にあっては熱容量小で熱影響を受け易く、かつ樹脂被膜の押出成形時の溶融樹脂による伝導熱、又はディップ工法による塗膜成形時の塗膜樹脂乾燥の為の対流熱、放射熱等を受けて、かつ外層材の樹脂被膜による密閉状態での放熱のし難さと、その保温・温熱による加熱処理(低温熱処理)効果、及び前記高熱伝導率を有する金属素線との撚合構成による特有作用との併用効果と考えることができるからである。
【0048】
そして、前記加熱処理の低温熱処理温度範囲を180℃から300℃としたのは、後述するオーステナイト系ステンレス鋼線の温度による引張破断強度特性(図11)と、樹脂被膜成形時の合成樹脂の溶融温度、又オーステナイト系ステンレス鋼線の極細線による熱容量、及び樹脂被膜成形による密閉状態での保温効果、並びに前記高熱伝導率を有する金属素線との撚合構成による特有作用とを併せ考慮したからである。又、加熱時間を10秒から60分以内としたのは、10秒を下回れば引張破断強度向上効果は得られず、又この範囲の上限を上回ればより顕著な効果は期待できず、生産性等を考慮したからである。尚、この加熱時間は、樹脂被膜成形加工時間と成形加工後の保温効果を有する時間も含まれる。又、樹脂被膜成形加工時、例えば樹脂被膜成形する為の押出成形機内へ異種金属素線の撚合線を投入前に、押出成形機と連動させて異種金属素線撚合後の残留歪除去、及び直線性を得る為の熱処理炉内を通過させて加熱(一般的には予備加熱と呼ぶ)する加熱時間も含まれる。従ってここでいう「外層材の樹脂被膜成形時による低温熱処理」とは、前記予備加熱も含むことを意味する。
【0049】
次に実施例1〜5、特に実施例1〜3の撚合構成とその作用効果を説明する。
図14は、釣糸1の撚合構成において撚合後の外径を同一として芯材の素線直径を0.020mmから0.002mm毎に増大させたときの側材の素線直径とその本数を算出し、芯材と側材の撚合構成と引張破断力を示したグラフで、外層材7の樹脂被膜成形前の実施例1〜5の撚合構成をそれぞれ図イ〜ホで示す。
【0050】
図14によれば、撚合後の外径が同一の為、芯材の素線直径の増加とともに側材の素線直径は減少して細径化して本数は増加し、引張破断力は増大するが撚合構成1×11よりも側材の本数が増加すると、引張破断力は飽和傾向となる。
そして本実施例2と3の撚合構成(図示ロとハ)においては、芯材の素線直径が0.022mmの場合と、0.024mmの場合の撚合構成が成立し、特に実施例3の撚合構成図示ハと実施例1の撚合構成図示イとは概ね同一の引張破断力を有する点を見出した。
この理由は、実施例3の撚合構成図示ハは芯材の素線直径が0.022mmのとき、側材の素線横断面の中心を通る側材のコイル中心径D(図1(A))の円周の長さは約0.1225mm{(0.022+0.017)×π}となり、側材の金属素線本数の算出値は約7.2(0.1225/ 0.017)となって必要本数は7本となり、横断面積は実施例2の撚合構成図示ロよりも増大し、実施例1の撚合構成図示イの横断面積と概ね同一となる撚合構成と考えるからである。
【0051】
そして釣糸1の好ましい芯材と側材との撚合構成は1×7、1×8、1×9、1×10で、最も好ましいのは1×8と1×9である。
この理由は、図14で1×6の撚合構成のときには、芯材の素線直径は0.016mmで、側材の素線直径は0.020mmとなって必要本数は5本となり、芯材よりも太径線となりこの場合側材のコイル中心径と側材の素線直径との比のばね指数は1.80{(0.016+ 0.020)/ 0.020}となって巻回成形時に側材の金属素線は楕円状に変形して巻かれ、又は破断し、巻回成形加工が困難となる。
これに対して、撚合構成が1×7の実施例4のばね指数は約2.11{(0.020+0.018)/ 0.018}となり、撚合構成1×7〜1×10の実施例いずれもばね指数が2以上となって巻回成形加工が可能となるからである。
そして撚合構成が1×11の場合には、芯材の素線直径は0.030mmで側材の素線直径は0.013mmとなり、芯材は側材の素線直径の約2.3倍の太径線となって柔軟性が阻害され、後述する釣糸との結束力を低下させる。この芯材の素線直径(da)と側材の素線直径(db)の比(da/ db)は好ましくは0.09〜2.0以下で、より好ましくは1.20〜1.80である。尚、補足すれば最も好ましい撚合構成は1×8、1×9の実施例1〜3は、それぞれ約1.73、1.50、約1.29で前記数値の範囲内である。
【0052】
次に、実施例6〜10、特に実施例8〜10について、その作用効果を説明する。
実施例6〜10に用いられている芯材5Bの樹脂繊維としては、前述した低伸度高強力樹脂繊維を用いる。又、側材も前述したオーステナイト系ステンレス鋼線よりも熱伝導率が5倍以上のドープタングステン線と、強加工のオーステナイト系ステンレス鋼線とを隣接接触した異種金属素線の撚合構成とする。
そして外層材7の樹脂被膜としては、前記各実施例と同様に6ナイロン、12ナイロン等のポリアミド、又ポリエチレン、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂を用いて押出成形、又はディップ工法等により被膜成形する。ディップ工法の場合には、可溶性ナイロン樹脂、又アクリルウレタン塗料等を用いて成形すると、一回の塗料溶液通過で0.001mmから0.008mm程度の極薄膜の塗膜成形が可能となり、塗料溶液通過後、180℃から300℃で乾燥させ、その後塗料溶液へ再通過させ、この工程を繰り返すことにより膜厚調整が可能となり、後述する実施例8〜10にみられるような前記金属線の凸凹状隆条部9と凹条溝部10との一方向螺旋状の凸凹条11を、外表面に浮き出した形態にして成形することができる。尚、この浮き出た形態での樹脂被膜後の最大外径と最小外径の寸法差が少なくとも前記金属素線の直径(太径線と細径線との組み合わせのときには太径線の直径)の20%以上とし、より好ましくは30%以上とすることが望ましく、最大のこの寸法差は、金属素線直径(太径線と細径線との組み合わせのときには太径線の直径)の概ね2倍である。
【0053】
そして前記樹脂被膜の合成樹脂材料内に紫外線吸収剤が含まれていることが望ましい。紫外線吸収剤としては、例えばポリアミド樹脂であれば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等が望ましく、前記アクリルウレタン塗料も同様であり、又紫外線吸収剤以外に酸化防止剤、分散混合剤等適宜混合する。紫外線吸収剤を混合する理由は、釣り場での太陽光に含まれる紫外線以外に、釣具店による蛍光灯からの紫外線による劣化防止であり、特にポリアリレート樹脂繊維は紫外線による黄変が激しく、これによる引張破断強度の低下を防ぐ必要があるからである。そして、芯材5Bのポリアリレート樹脂繊維の変色を防ぐ為には、前記樹脂繊維にベンゾフェノン系、トリアジン系の紫外線吸収剤が含まれていることが望ましい。
【0054】
次に、実施例8〜10の凸凹状隆条部9と凹条溝部10との凸凹条11とする金属素線の一方向螺旋状の撚合形態とした理由について説明する。この撚合形態とすることにより針結び強度、及び道糸との結束強度を、一般的に用いられている合成樹脂モノフィラメントと同等以上とすることができる。その実施例9と比較例1の結果を表6に示す。
【0055】
【表6】

【0056】
表6の比較例1は一般に用いられているポリフッ化ビニリデンモノフィラメントで外径が0.190mmの通称フロロカーボン糸である。
表6によると、本発明の実施例6は、複数の金属線を用いているにも拘らず、比較例1のフロロカーボン糸と同等以上の針結び強度、及び道糸との結束強度特性を得ることができる。この理由は、例えば結束部を観察すると、図5に示すように結束部12のフロロカーボン糸の結束部12Bの外形線が概ね等径となっているのに対して、実施例6の段差結束部12Aの外形線は凸凹状となっている。
これは、金属素線による凸凹状隆条部9が隣接線の金属素線が欠落している凹条溝部10へ食い込み形態となり、この現象が隣接線どうし連続して発生し、凸凹状隆条部分91と92との間に、隣接線の凸凹状隆条部分93が食い込み、くさび効果として作用し、さらに外層材7の樹脂被膜は、前記凸凹状隆条部分91、92、93の各硬質金属間に軟質樹脂をそれぞれ介在させたことによる緩み止め効果として作用する、と考えられる。
【0057】
次に、直径20mmの丸棒に#140の紙やすりを巻きつけ、錘200g を負荷して90°釣糸を曲げた状態での破断までの回数を測定する耐磨耗試験において、破断するまでの耐久回数は比較例1のフロロカーボン糸と比較して、実施例9では約15倍から30倍以上多く、又実施例1〜6に至っては60倍以上の耐久回数を有し、そして耐磨耗性はいずれも特段に優れている。この理由は、側材として硬度の高い金属素線の存在、つまり総減面率が高く、加工限界に近い高強度の引張強度特性を有して硬度が高いオーステナイト系ステンレス鋼線の存在と、モース硬度でダイヤモンドに次ぐ硬度を有するタングステン線、又はドープタングステン線の存在と考えるからである。
【0058】
次に本実施例9、10は、フロロカーボン糸(比較例1)と比較して、擦れによる耐カール性を大幅に向上させることができる。その結果を表7に示す。
【0059】
【表7】

【0060】
表7の耐カール性試験は、コーナーがR0.2mmの角材の一つの角に、錘300gを負荷して90°釣糸を曲げた状態で、片道200mmで5往復させた後、100mmの長さの範囲で、カール状の高さを示す波高と、その範囲内の個数を調べた試験である。
この結果から実施例9、10はいずれもフロロカーボン糸である比較例1に対して明らかに波高は約1/2程度以下であり、又カール個数も約1/4以下と少ない。このことは、本発明の実施例9、10はフロロカーボン糸よりも波高が低くて、なだらかなウェーブ状であることを意味し、比較例1に対して、明らかにカール癖がつき難い構造といえる。 この理由は、比較例1は、高度の延伸加工による高い引張破断強度を備えた合成樹脂モノフィラメントで外表面の一部片側が全長に亘って連続して擦れ、それにより擦れた側と擦れていない側との間で伸びによる差を生じた結果、と考える。これに対して、本発明の実施例9、10は、いずれも金属素線の欠落部を設けている為、擦れる位置はこの金属素線の部分で、この金属素線部分は欠落部の存在により間隔が開いていること、そしてさらに、線径が異なる異径線(実施例9、10)を用いている為、擦れる箇所はこのうちの硬度が高い太径線のみとなって、さらに擦れる位置の間隔が開いた状態となる。従って、擦れる位置が比較例1に示すような連続状態か、又は実施例9、10のような間欠状態かの差による、と考えることができるからである。
【0061】
そして実施例8〜10で用いる外層材7の樹脂被膜の膜厚をより薄くさせる為には、押出成形機を用いてもよいが、可溶性ナイロン樹脂、又はアクリルウレタン等の塗料が望ましく、又その工法は塗料溶液へ通過させ、180℃から300℃で10秒から60分の乾燥の加熱処理後塗料溶液へ再通過させ、これを繰り返して膜厚調整可能なディップ工法による塗膜成形が望ましく、又吹き付け等の塗装による塗膜成形を用いてもよい。
この構成により、魚釣り用仕掛けのハリス、特に鮎の友釣り仕掛けとして用いると、結束保持力を向上させつつ、釣糸に加わる水流よる圧力抵抗を低減させ、水流の上層部、下層部を問わず水切れ特性を大幅に向上させることができる。その作用効果を以下説明する。
【0062】
図6(A)は、鮎の縄張り習性を利用し、釣糸を撓ませることにより水流による釣糸への圧力抵抗を増大させて囮鮎の泳ぎを早め(図示イ)、又釣糸を張ることにより水流による釣糸への圧力抵抗を減少させて囮鮎の泳ぎを遅くして(図示ロ)、この繰り返しにより囮鮎を所望の位置へ誘導させる鮎の友釣り法を示した図である。釣糸を撓ませた時の、金属線をクロス状に巻回した特許文献2の釣糸4の状態を図6(B)に示し、又本発明の実施例6の釣糸2Dの状態を図7(A)に示す。
【0063】
特許文献3の釣糸4は、水流方向に対して直交方向のときは「合成断面が略流線形断面」となり三次元乱流による水切れ特性向上効果はみられるが、実際の釣り現場では、釣糸が水流方向に対して直交する場合は少なく、流れの速い水面近くの上層域では傾斜し、また囮鮎を移動させようとする場合には釣糸をたわませ、水底近くの下層域では水流方向と釣糸4とが平行状態となる。かかる場合、図6(B)の状態において、特許文献3にみられる水切れ特性向上効果は、比較的水流14Bの方向と直交する中層域の釣糸4の横断面42にみられるが、流れの早い水流14Aの方向の上層域の釣糸4の横断面41においては、交差重合部の存在、及び水流方向と傾斜し横断面積はより増大し、そして釣糸4に加わる圧力抵抗は増大し、さらに水流14Cの方向と平行状態となる下層域においては、特に囮鮎近くの釣糸4の平行部位44の範囲では、水流14Cの方向からみれば横断面が略円形43の連続状態と近似した円柱構造体45となり、かつ釣糸4の交差重合部の存在により横断面積は増大していて、この横断面積増大現象に伴って特許文献3の釣糸4に加わる水流による圧力抵抗は増大し、囮鮎を疲れさせることとなる。
【0064】
これに対して、本発明の実施例8〜10の釣糸は特許文献3に対して交差重合部がない為、横断面積小となって細径化することができ、特に実施例9の釣糸2D、実施例10の釣糸2Eは、側材の太径線61Aが中央でその両側が細径線62Bとなっていて、水流14Bの方向と直交する中層域においては、流線形となり(図7(A)釣糸2Dの横断面2D2)、そして上層域(図7(A)釣糸2D横断面2D1)においては、特許文献3でいう交差重合部がない為、横断面積が特許文献3よりも小さく、細径化を可能として水流による釣糸への圧力抵抗が少なく、かつ、水流14C方向と釣糸2Dとが平行状態となる下層域においては、一方向螺旋状の凸凹条11の構成により水流14Cをスパイラル渦流に変換し、そして一方向螺旋状の太径線61Aと細径線62Bとにより、水流14Cを14C1,14C2と分流させ、螺旋状の太径線61Aと細径線62Bに沿うスパイラル渦流152とさせ、そしてさらに、川の流れの速い上層域においても同様にスパイラル渦流151が発生し、上層域でのこのスパイラル渦流151の向きは、図示下方の川底の方向へ作用してその結果、密度の高いドープタングステンの太径線との相乗効果により釣糸を川底へ沈めようとする力が作用する。
つまり、上層域においては、川の流れの速い水流14Aの力を利用してスパイラル渦流151の発生と、密度の高いドープタングステンの太径線との相乗作用により釣糸を沈め、一方下層域においては、交差重合部がない為横断面積を小さくして、かつ水流14Cを分流(図示14C1、14C2)させ、スパイラル渦流152として水流方向と釣り糸とが平行状態であっても、又密度の高いドープタングステンの太径線61Aを用いても横断面の流線型構造から水切れ特性を向上させ、所望の位置へ囮鮎を疲れさせることなく誘導させる、新たな技術思想を開示するものである。
【0065】
そしてさらに、一般に潮と潮とがぶつかり合う流速差の生ずる境界位置、及び上層域と下層域とで水流方向が反対の境界位置には、プランクトンが多く集まり、これを捕食する小魚、これを狙う大物の魚が集まり、絶好の釣りポイントとなる。
しかしこのような場所では、流速差、及び水流方向の反対による流速差から圧力勾配を生じ、速度の不連続面を生じて不安定(ケルビン -ヘルムホルツの不安定性)となりこの速度の不連続面は自転し(図示(B))、そして渦度をもった渦面として発達する。(図示(C))かかる場合において、一般に用いられている円形断面のフロロカーボン糸の釣糸3をこの釣りポイントに入れると、発達した渦面の渦の流れ方向により、釣糸3は浮き上がり現象を生じて所望の釣りポイントから外れることとなる。そして又、特許文献3の釣糸4においても、前記した下層域での水流方向との状態、及び交差重合部の存在により、横断面積増大に伴って渦流による圧力抵抗は増大して、同様の現象を生ずる。
これに対して、本発明の実施例の釣糸2、特に実施例8〜10においては、下層域から上層域への渦の流れが生じても、一方向螺旋状の凸凹条11が樹脂被膜後であっても外表面に浮き出た形態による水切れ特性向上効果、並びに密度の高いドープタングステン線の存在による相乗効果により、水面への前記浮き上がり現象を生じ難い。(図示(D))
【0066】
そして又、本発明の実施例1、特に図1(F) に示す螺旋状111を有する釣糸においては、芯材及び側材ともに金属素線を用いている為、フロロカーボン糸の釣糸3よりも比重が高く、かかる不都合を生ずることはなく、そしてさらに前記水切れ特性向上効果、並びに密度の高いドープタングステン線の存在による相乗効果により所望の釣りポイントへ投入し、その位置を維持することができる。
【0067】
このように、実施例6〜10の釣糸は、芯材に樹脂繊維を用いて側材に金属素線を用いて結束性の良さ、及び前記水切れ特性向上効果から特に図8(A)に示すように金属単線を用いた鮎の友釣り仕掛け16において、金属単線13と結束する従来ツケ糸131と呼ばれる糸との結束を不要として、取り扱いが容易で合成樹脂モノフィラメント(ナイロン糸、フロロカーボン糸等)と同様に取り扱うことができる。そして、本発明の釣糸2(2A〜2E)を用いた鮎の友釣り仕掛け161の例を図8(B)に示す。尚、図中132は天上糸、133はハナカン回り糸を示す。
これは、本発明の釣糸を、天上糸132とハナカン回り糸133と結束、又は連結した仕掛けを用いて天上糸132と釣竿と結束、又は連結した、本発明の釣糸と、天上糸とハナカン回り糸と釣竿との組立体である。(但し釣竿は省略)
【0068】
次に図9は、本発明の各実施例の釣糸1、2がリール17のスピニングリール171によってスプール18へ巻き付けられるときの図を示し、例えばスピニングリール171において、図示左側矢印へ回転するとき(Z方向)、釣糸1、2の金属素線の撚合方向は、これとは逆のS方向とするのが望ましい。この理由は、スプール18へ釣糸1、2を巻き取る際には、金属素線の撚合方向を緩ませる方向に巻き付けるほうが、釣糸に柔軟性を増すことができその結果、小径に巻き付けてもカール状の巻き癖がつきにくいからである。 そしてこの現象は、本発明の各実施例の釣糸1、2を図10(A)に示す、よりもどし24と針23とを結びつける釣糸ハリス25として用いても同様の現象により特有の作用効果がある。
つまり、釣糸ハリス25の本発明の釣糸1、2の金属素線の撚合方向と逆方向へスピニングリールを巻くことにより、緩ませる方向に巻き取ることができる為、その結果魚がかかった緊張時、撚合方向とは逆方向へ回転する釣糸ハリス25の自転する性質をより低く抑えることができ、釣竿の操作が容易となる。
【0069】
尚補足すれば、例えば特に実施例8〜10の釣糸2C〜2Eの凸凹状隆条部9と凹条溝部10とによる凸凹条11の構造を有する釣糸は、魚がかかったとき重要情報を振動伝達手段として釣り人へ伝えることができる。つまり、本発明の実施例7〜10の釣糸2は、軟質樹脂被膜を介して、金属撚合線の凸凹状隆条部9と凹条溝部10との凸凹条11を形成している為、例えば釣糸2が中通し竿内への貫挿状態において魚が餌を咥えたとき、又その際の釣り人のリール17の巻き取りにより釣糸2が引っ張られて張力が発生し、中通し竿19の内側と先端端末具191を釣糸2の凸凹条11が摺動することにより振動が発生し、そしてこの繰り返しにより振動伝達を繰り返す。(図10(A))つまり、この釣糸2の竿内での摺動時には凸凹状隆条部9と凹条溝部10の多数の凸凹条11が摺動することとなり、この凸凹条11の中通し竿19内での摺動により、図10(C)に示すような張力変動幅26の大なる幅を有する張力変動を発生させ、そしてそれがさらに、手元側へ内径が拡径された中空管体の中通し竿19を用いることにより、その張力変動が中通し竿19内で振動伝達として、又共振し、そして振動伝達音として増幅され、魚信として釣り人へ伝えることができ、その結果釣り人の魚に対する竿の操作が容易となる。そしてさらに、図10(B)に示すように釣糸ハリス25が鰓20Aの部分に入り込んだとき、釣糸ハリス25は鰓呼吸時、又遊泳時に鰓20Aの外淵に沿って釣糸位置21から釣糸位置22へ移動し、釣糸ハリス25は鰓20Aと摺動する。その際、前記同様に釣糸ハリス25の多数の凸凹条11が鰓との摺動により張力変動を発生させ、その結果釣り人は餌にかかった魚の状態を振動伝達、及び振動音として捉えてこれを認識し、鋭利な鰓部部分で釣糸が切れ易い慎重な竿操作が要求される場合においても釣り上げるタイミングを図ることができ、竿操作を容易にすることができる。
【0070】
そして前述のような中通し竿、及び中通し竿の先端端末具191と釣糸との摺動、並びに釣糸ハリス25と鰓20Aとの摺動による釣り人への振動伝達は、釣糸2のみならず引張変動幅26が少ない釣糸1であっても側材が複数の金属素線の撚合構成で一方向螺旋状に巻回成形されて凸凹状を形成していれば釣り人はこの振動伝達を感知できる。
この理由は、魚が大物になるに従って釣糸へ加わる張力は増大し、張力が増大すれば摺動する負荷も増大して前記凸凹状を感知し易くなり、さらに中通しの竿内での共振作用により増幅されて、魚信として釣り人へ伝えることができるからである。
従って、本発明の釣糸には釣糸ハリス25として用いた場合も含まれ、釣糸1又は2を釣糸ハリスとして用いて道糸と連結し、道糸を中通し竿内で摺動させることにより、釣糸ハリスからの振動を中通し竿の手元部へ伝達させたことを特徴とする釣糸1、又は2の釣糸ハリスと、道糸とリールと中通し竿との組立体も含まれる。
このように釣糸と、リールと中通し竿との組立体により振動伝達手段として釣り人へ重要情報として伝えることができる、特段の作用効果がある。
【0071】
そして本発明の他の実施例を説明する。
図1(E)は、実施例1、2に対して高熱伝導率を有する芯材5Aの1本の回りに強加工のオーステナイト系ステンレス鋼線の側材6Aを6本、側材6Bを12本とするスパイラルロープの撚合構成の1×19、図4(C)は、実施例9、10に対して素線直径が異なる異種金属の異径線による凸凹状隆条部9が一方の側から他方の側へ太径線から細径線へと順に並んだ撚合構成とする。
これにより、結束性、及び水切れ特性を前記同様の理由により向上させることができる。又、図1(F)は、実施例1に対して外層材7の樹脂被膜の膜厚は0.001mm以上側材の金属素線の直径以下(本実施例では0.015mm)で、かつ前記同様外周部に側材の螺旋状に巻回成形した螺旋が、樹脂被膜成形後の外表面に螺旋状111として現われて成ることを特徴とする釣糸を示したものである。
この構成により、釣糸の引張破断強度を飛躍的に向上させながら、かつ前記結束後の緩み止め効果、及び水切れ特性等向上させることができる。
【0072】
そして図11は、側材に用いる金属素線の熱的特性を示し、側材の金属素線の母材にオーステナイト系ステンレス鋼線を用いて総減面率が95%以上の最終伸線加工後の金属素線を熱影響下(各温度30分)での引張破断強度特性を示した図で、SUS304材のときは図示イを、SUS316材のときは図示ロを示す。
これによると、SUS304材は180℃の熱影響により引張破断強度が上昇し始め、概ね450℃近傍で最高の引張破断強度特性を示し、495℃まで引張強度特性向上効果が顕著にみられ、そして520℃を超えると常温(20℃)よりも急激に引張破断強度が低下する。又、Moを含むSUS316材は、低温側でSUS304材と同様な傾向を示すが高温側では概ね480℃近傍で最高の引張破断強度特性を示し、525℃まで引張強度特性向上効果が顕著にみられ、そして540℃を超えると常温(20℃)よりも急激に引張破断強度が低下する。
この引張破断強度が急激に低下する理由は、前述にように、この固溶化処理したオーステナイト系ステンレス鋼線は、前記520℃、540℃を超える温度から800℃に加熱されるとカーボンの析出、クロムの移動の為のエネルギーを必要とし、鋭敏化現象を通じて特にカーボンが0.08%以下の通常のSUS304、SUS316のオーステナイト系ステンレス鋼線では、700℃4分から5分でこの鋭敏化現象が現れ、引張破断強度が極端に低下するからである。
【0073】
このような引張破断強度特性を有する為、SUS304材の金属素線の低温熱処理温度範囲は180℃から495℃が望ましく、又Moを含む例えばSUS316材(Moが2〜3重量%)の金属素線の低温熱処理温度範囲は180℃から525℃が望ましい。
そして表5にみられるように、外層材7の樹脂被膜成形時の熱利用、つまり樹脂被膜による伝導熱等を利用した加熱処理(低温熱処理)により引張破断力を増大させることができ、その増加率はいずれも10%を超え、特に実施例1、2、5においては12.9%から14.0%増大させることができることを見出した。
このように本発明は、高熱伝導率を有する一方の金属素線と、他方の強加工伸線して総減面率の高いオーステナイト系ステンレス鋼線の温度による引張破断強度特性に着目して、異種金属素線の撚合構成の後に好適条件での低温加熱・低温熱処理を行うことにより、各金属素線の極細線による熱容量小で熱影響を受け易く、又一定温度範囲に制御した状態での樹脂被膜成形時の熱を利用し、樹脂被膜による密閉状態での放熱のし難さと保温・温熱効果高める構造、熱伝導特性等を併せ考慮し、異種金属素線の撚合状態での引張破断強度を大幅に向上できる、新たな技術思想を提供するものである。
【0074】
又、本実施例の他方の金属素線であるオーステナイト系ステンレス鋼線の化学成分は、重量%でC:0.15%以下、Si:1%以下、Mn:2%以下、Ni:6〜16%、Cr:16%〜20%,P:0.045%以下、S:0.030%以下、Mo:3%以下、残部鉄及び不可避的不純物から成る。このように高珪素ステンレス鋼(Si:3.0%〜5.0%)を用いなくても前記工程を用いることにより、高強度のオーステナイト系ステンレス鋼線の金属素線を得ることができる。尚、Cは引張破断強度向上の為には、0.005%以上が望ましく、粒界腐食抑制の観点から0.15%以下が望ましい。
【0075】
そして又、本発明の他方の金属素線は、0.008mmから0.120mmのオーステナイト系ステンレス鋼線で、特に細径線は、0.008mmから0.040mmで引張破断強度が300kgf / 以上で、総減面率が95%以上の伸線加工を可能とする為には、再溶解材を用いたSUS304材、又はSUS316材が望ましい。
この理由は、ステンレス鋼線の伸線時の断線原因は、表面疵もさることながら酸化物系介在物であることが最も多く、特に本発明の実施例の他方の金属素線直径が0.025mm以下の極細線においてはこの傾向が著しい。そしてその化学成分は、介在物生成元素であるAl,Ti,Ca,Oの成分は低く、又硫化物の作用で伸線低下を引き起こすSも低く抑える。具体的なオーステナイト系ステンレス鋼線の化学成分は、重量%で、C:0.08%以下、Si:0.10%以下、Mn:2%以下、P:0.045%以下、S:0.010%以下、Ni:8〜12%、Cr:16〜20%、Mo:3%以下、Al:0.0020%以下、Ti:0.10%以下、Ca:0.005%以下、O:0.0020%以下、で残部がFeと不可避的不純物から成る。特に、金属素線直径が0.025mm以下の極細線においては、この材料が望ましい。尚、これより太い本実施例の太径線にこの材料を用いてもよい。
そして、再溶解材の製造方法としては、ステンレス鋼の溶製後のインゴットにフラックスを用いたエレクトロスラグ再溶解の製造方法等である。
【0076】
さらに補足すれば、本発明の実施例の釣糸2(2A〜2E)の引張・伸び特性線図は、例えば図12に示すように低荷重域では伸びが大きく(図示A)、高荷重域ではこれとは逆の現象(図示B)となる特有の非線形特性となる。この特性により、魚が針へかかったときの強い合わせによる衝撃力の緩和、及び竿の煽り過ぎによる衝撃力の緩和、そして魚の口切れや、さらに衝撃力を加えたことによる釣糸の破断を防ぐことができる。又本発明の実施例の釣糸2で引張・伸び特性が非線形になる理由は、芯材は低伸度高強力樹脂繊維を用いて、繊維間に多数の空間が存在する繊維束(28dtexで5本、440dtexで80本の繊維)から成り、その外周部には一定の間隔で金属素線が欠落した一方向螺旋状の撚合構成から成る為、釣糸が引張力を受けたときには、まず芯材に引張力が加わって繊維間の空間が狭められたことにより、低荷重域で伸びが大きい特性を示し、そしてその後さらに引張力が高くなると、金属素線の撚合線にも強い引張力が加わって、芯材とともにこの引張力を支え、そして外周部の樹脂被膜がこの引張力を支える補助作用として働き、その結果高荷重域では伸びが小さい逆の現象を示す、と考えられるからである。
【0077】
そして本発明の釣糸1の製造方法を以下に述べる。
素線直径が0.008mmから0.120mmの金属素線から成る芯材と、前記芯材の外側に素線直径が0.008mmから0.120mmの金属素線を複数本撚合構成した側材を設けて、前記側材の外側に樹脂被膜の外層材から成る釣糸の製造方法において、前記芯材の金属素線は、前記側材の金属素線よりも熱伝導率が5倍以上で、かつ相対密度が99%以上のタングステン、又はドープタングステンの焼結体を用いて、スウェージング加工工程の後に伸線工程を設けて引張破断強度を300kgf/mm2 以上とし、前記側材の金属素線は、固溶化処理したオーステナイト系ステンレス鋼線を用いて、伸線工程と伸線工程後に400℃から495℃で、10分から180分の低温熱処理工程を設けて、又は前記側材の金属素線がMoを含むオーステナイト系ステンレス鋼線のときには400℃から525℃で10分から1 80分の低温熱処理工程を設けて、前記伸線工程と前記低温熱処理工程を1セットとして少なくとも1セット以上各工程を繰り返した後に最終伸線工程を設けて、前記最終伸線工程までの総減面率を95%から99.5%以下とし、前記最終伸線工程までの前記低温熱処理工程による引張破断強度の増加率の合計が15%以上で引張破断強度が300kgf/mm2 以上とし、前記側材の金属素線を複数本用いて前記芯材の外側に長手方向に対して連続して一方向螺旋状に巻回形成する撚合構成と、前記芯材と前記側材を撚合工程の後に、前記外層材の樹脂被膜成形時の伝導熱、対流熱、又は放射熱による180℃から300℃で10秒から60分の低温熱処理工程を設けて、前記側材は、前記芯材と前記側材の外側からの低温熱処理によるサンドイッチ温熱形態により、引張破断力を前記外層材の樹脂被膜成形前の引張破断力よりも増大させたことを特徴とする釣糸の製造方法である。
この製造方法により、高熱伝導率を有する芯材の金属素線と、側材の強加工伸線して減面率の高いオーステナイト系ステンレス鋼線の温度のよる引張破断強度特性の特質に着目して、芯材と側材の異種金属素線の撚合構成後に好適条件での低温加熱・低温熱処理により熱伝導特性を利用して異種金属素線撚合状態での引張破断強度を大幅に向上させることができる。
そして、芯材の熱伝導率は側材の5倍以上とし、好ましくは7倍以上とする理由は、側材の引張破断強度向上効果を高める為である。又、芯材の相対密度を99%以上(ポア体積比率が1%以下)とし、好ましくは99.4%以上のタングステン、又はドープタングステンの焼結体とする理由は、素線直径が0.008mmから0.120mmのような極細線のような伸線加工を容易とする為であり、又タングステン焼結体、又はドープタングステン焼結体をスウェージング加工の後に伸線工程を設ける理由は、金属組織を同一方向に揃え、引張破断強度向上効果の為であり、前記製造方法を用いることにより、引張破断強度が300kgf/mm2 から450kgf/mm2 の極細線のタングステン線、又はドープタングステン線を得ることができる。
【0078】
[発明の効果]
以上説明のとおり、本発明の異種金属素線の撚合構成から成る釣糸、及びその製造方法は、一方の高熱伝導率を有する金属素線と、他方の伸線限界に近い強加工の伸線加工を行なったオーステナイト系ステンレス鋼線の温度による引張破断強度特性の特質に着目して、異種金属素線の撚合構成の後に好適条件での低温加熱・低温熱処理により熱伝導特性等を利用して異種金属素線撚合状態での引張破断強度を大幅に向上させる新たな技術思想を提供するものである。
【0079】
そしてさらに、引張破断強度特性向上効果の他、釣糸としての沈み性、耐磨耗性、耐カール性向上効果、さらに凸凹条による水切れ特性向上効果等、新たな釣糸の技術思想を提供するものである。以上の諸効果がある。
【符号の説明】
【0080】
1 釣糸1 151、152 スパイラル渦流
2 釣糸2 16 鮎釣り仕掛け
3 釣糸(フォロロカーボン糸) 17 スピニングリール
4 釣糸(特許文献3の釣糸) 18 スプール
5 芯材 19 中通し竿
6 側材 20 魚
7 外層材 21 釣糸位置(鰓上部)
8 欠落部 22 釣糸位置(鰓下部)
9 凸凹状隆条部 23 針
10 凹条溝部 24 よりもどし
11 凸凹条 25 釣糸ハリス
12 結束部 26 張力変動幅
13 金属単線 111 螺旋条
14 水流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素線直径が0.008mmから0.120mmの金属素線から成る芯材と、
前記芯材の外側に素線直径が0.008mmから0.120mmの金属素線を複数本撚合構成した側材を設けて、
前記側材の外側に樹脂被膜の外層材から成る釣糸において、
前記芯材の金属素線は、前記側材の金属素線よりも熱伝導率が5倍以上とし、
前記側材の撚合構成は、前記芯材の外側に前記側材の金属素線を複数本撚合させて、撚合方向が長手方向に対して連続して一方向螺旋状に巻回形成する撚合構成とし、かつ、
前記側材の金属素線は、
固溶化処理したオーステナイト系ステンレス鋼線を用いて、伸線と伸線後に400℃から495℃の低温熱処理を設けて、
又は前記側材の金属素線がMoを含むオーステナイト系ステンレス鋼線のときには400℃から525℃の低温熱処理を設けて、
前記伸線と前記低温熱処理を1セットとして少なくとも1セット以上繰り返した後に最終伸線を設けて、前記最終伸線までの総減面率を95%から99.5%以下とし、前記最終伸線までの前記低温熱処理による引張破断強度の増加率の合計が15%以上とし、引張破断強度が300kgf/mm2 以上とし、
前記芯材と前記側材を撚合構成した後に、前記外層材の樹脂被膜成形時の伝導熱、対流熱、又は放射熱による180℃から300℃の低温熱処理を行い、
前記側材は、前記芯材と前記側材の外側からの低温熱処理によるサンドイッチ温熱形態により、引張破断力を前記外層材の樹脂被膜成形前の引張破断力よりも増大させたことを特徴とする釣糸。
【請求項2】
芯材と、前記芯材の外側に素線直径が0.008mmから0.120mmの異種金属素線を複数本撚合構成した側材を設けて、前記側材の外側に樹脂被膜の外層材から成る釣糸において、
前記芯材は、28dtexから440dtexの繊度の低伸度高強力樹脂繊維から成り、
前記側材の異種金属素線の撚合構成は、前記異種金属素線を隣接接触させて撚合方向が長手方向に対して連続して一方向螺旋状に巻回形成する撚合構成とし、
前記金属素線の一方は、他方の金属素線よりも5倍以上の熱伝導率を有し、
前記金属素線の他方は、固溶化処理したオーステナイト系ステンレス鋼線を用いて、伸線と伸線後に400℃から495℃の低温熱処理を設けて、
又は前記他方の金属素線がMoを含むオーステナイト系ステンレス鋼線のときには400℃から525℃の低温熱処理を設けて、
前記伸線と前記低温熱処理を1セットとして少なくとも1セット以上繰り返した後に最終伸線を設けて、前記最終伸線までの総減面率を95%から99.5%以下とし、前記最終伸線までの前記低温熱処理による引張破断強度の増加率の合計が15%以上とし、引張破断強度が300kgf/mm2 以上とし、
前記芯材と前記側材を撚合構成した後に、前記外層材の樹脂被膜成形時の伝導熱、対流熱、又は放射熱による180℃から300℃の低温熱処理を行い、
前記側材の異種金属素線の他方は、前記外層材の樹脂被膜成形時の低温熱処理による外側からと、高熱伝導率を有する一方の金属素線との隣接接触形態により、引張破断力を前記外層材の樹脂被膜成形前の引張破断力よりも増大させたことを特徴とする釣糸。
【請求項3】
請求項1記載の前記芯材の金属素線、又は請求項2記載の前記側材の一方の異種金属素線が、タングステン線、又はアルカリ金属を添加したドープタングステン線、若しくはアルミニウム、カリウム、レニウムのうち少なくとも一種類を添加したドープタングステン線から成ることを特徴とする請求項1、又は2のいずれか一つに記載の釣糸。
【請求項4】
請求項1記載の前記側材の金属素線、又は請求項2記載の前記側材の他方の金属素線が、
固溶化処理したオーステナイト系ステンレス鋼線を用いて、一次伸線の減面率を90%から96%とし、その後400℃から495℃の一次低温熱処理を行い、又は前記他方の金属素線がMoを含むオーステナイト系ステンレス鋼線のときには、その後400℃から525℃の一次低温熱処理を行い、
前記一次低温熱処理による引張破断強度の増加率を10%以上とし、二次伸線の減面率を50%から89%とし、その後400℃から495℃の二次低温熱処理を行い、
又は前記他方の金属素線がMoを含むオーステナイト系ステンレス鋼線のときには、その後400℃から525℃の二次低温熱処理を行い、
前記二次低温熱処理による引張破断強度の増加率を10%以上として、その後最終伸線を設けて、前記最終伸線までの総減面率を97%から99.5%以下とし、
前記最終伸線までの前記低温熱処理による引張破断強度の増加率の合計が20%以上とし、引張破断強度が340kgf/mm2 以上から成ることを特徴とする請求項1又は2のいずれか一つに記載の釣糸。
【請求項5】
請求項1又は3のいずれか一つに記載の釣糸において、
前記芯材と前記側材の金属素線の撚合構成が、前記芯材の金属素線は一本で、前記側材の金属素線は7本から8本のスパイラルロープから成ることを特徴とする釣糸。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載の釣糸を用いて、前記釣糸をスピニングリールと釣竿とを連結し、前記釣糸の前記側材の複数の前記金属素線の撚合方向が、前記スピニングリールの回転・巻き取りから発生する前記釣糸を捩じり回転させる方向と反対の撚合方向としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の釣糸と、スピニングリールと釣竿との組立体。
【請求項7】
請求項2〜5のいずれか一つに記載の釣糸を用いて、前記釣糸を天上糸とハナカン回り糸と連結し、前記天上糸を前記釣竿と連結したことを特徴とする請求項2〜5のいずれか一つに記載の釣糸と、天上糸とハナカン回り糸と釣竿との組立体。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一つに記載の釣糸を用いて、前記釣糸を釣糸ハリスとして用いて道糸と連結し、前記道糸を中通し竿内で摺動させることにより、前記釣糸ハリスからの振動を前記中通し竿の手元部へ伝達させたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の釣糸ハリスと、道糸とリールと中通し竿との組立体。
【請求項9】
素線直径が0.008mmから0.120mmの金属素線から成る芯材と、
前記芯材の外側に素線直径が0.008mmから0.120mmの金属素線を複数本撚合構成した側材を設けて、
前記側材の外側に樹脂被膜の外層材から成る釣糸の製造方法において、
前記芯材の金属素線は、
前記側材の金属素線よりも熱伝導率が5倍以上で、かつ相対密度が99%以上のタングステン、又はドープタングステンの焼結体を用いて、スウェージング加工工程の後に伸線工程を設けて引張破断強度を300kgf/mm2 以上とし、
前記側材の金属素線は、
固溶化処理したオーステナイト系ステンレス鋼線を用いて、伸線工程と伸線工程後に400℃から495℃で、10分から180分の低温熱処理工程を設けて、
又は前記側材の金属素線がMoを含むオーステナイト系ステンレス鋼線のときには400℃から525℃で10分から1 80分の低温熱処理工程を設けて、
前記伸線工程と前記低温熱処理工程を1セットとして少なくとも1セット以上各工程を繰り返した後に最終伸線工程を設けて、前記最終伸線工程までの総減面率を95%から99.5%以下とし、前記最終伸線工程までの前記低温熱処理工程による引張破断強度の増加率の合計が15%以上で引張破断強度が300kgf/mm2 以上とし、
前記側材の金属素線を複数本用いて前記芯材の外側に長手方向に対して連続して一方向螺旋状に巻回形成する撚合構成と、
前記芯材と前記側材を撚合工程の後に、前記外層材の樹脂被膜成形時の伝導熱、対流熱、又は放射熱による180℃から300℃で10秒から60分の低温熱処理工程を設けて、
前記側材は、前記芯材と前記側材の外側からの低温熱処理によるサンドイッチ温熱形態により、引張破断力を前記外層材の樹脂被膜成形前の引張破断力よりも増大させたことを特徴とする釣糸の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−41488(P2011−41488A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190447(P2009−190447)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(309023704)株式会社パテントストラ (16)
【Fターム(参考)】