説明

釣糸ガイド及び、その釣糸ガイドを備える釣竿

【課題】強化繊維を含むプリグレにより形成される釣糸ガイドは、環状の釣糸案内部の一部分における強化繊維が縦方向と横方向が共に短い強化繊維となり、長い強化繊維を配置された部分に対してやや強度が劣ることが想定される。
【解決手段】釣糸ガイドは、第1,第2の繊維強化樹脂層により積層形成される環状の釣糸案内部の端部から伸び出る主支脚と、その端部から分岐して伸び出る補助支脚と、主支脚から分岐箇所を経て補助支脚に至り、第1,第2の繊維強化樹脂層とに固着される第3の繊維強化樹脂層とを有し、釣糸案内部における短い強化繊維を含む頂部側から分岐部までを部分形成する第1の繊維強化樹脂層の第1の断面積と第2の繊維強化樹脂層の第2の断面積との和が、前記第1の断面積又は前記第2の断面積のいずれかと第3の繊維強化樹脂層の第3の断面積との和よりも大きく形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化繊維を含浸する樹脂材料により形成された釣糸ガイド及び、その釣糸ガイドを備える釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な魚釣用竿杆(以下、釣竿と称する)の中で、複数の釣糸外通し用釣糸ガイド(以下、釣糸ガイドと称する)が設けられた釣竿がある。これらの釣竿に設けられる釣糸ガイドは、使用するリールのタイプにより竿の上面又は下面のいずれかに取り付けられている。
【0003】
これらの釣糸ガイドは、通常、チタンやステンレス等の金属材料からなるフレームに、釣糸を挿通させて支持するSiC等からなるガイドリングが嵌め込まれて構成されている。釣竿の製造技術の進歩に伴い、強度が改善され、細径化に伴う竿重量の軽量化が実現されている。この軽量化を実現した釣竿に、金属フレームを有する釣糸ガイドを多数取り付けた場合、竿の軽量化を妨げる要因となっている。
【0004】
このような金属材料からなる釣糸ガイドに対して、例えば、特許文献1には、プリプレグ、即ち、熱硬化性樹脂で被覆した複数層に亘るカーボン素材等の強化繊維による織布基材でフレームを形成することにより軽量化を実現した釣糸ガイドが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−004651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1には、1つの固定部に繋がる一脚(所謂、シングルフット)の支脚部を有する釣糸ガイド及び、2つの固定部に 繋がる二脚(所謂、ダブルフット)の支脚部を有する釣糸ガイドが提案されている。これらの釣糸ガイドは、シート形状を成し、カーボン繊維等を平織りに編み上げた織布又は、各繊維を横並びの配列した布状に形成されている熱硬化樹脂、所謂、プリグレにより形成されている。
【0007】
これらの釣糸ガイドは、複数枚のプリグレを重ね合わせて、プレス及び熱処理により成形し、釣糸ガイドを削りだし又は型抜きを行って作製している。従って、例えば、図14に示すように、強化繊維を平織りしたプリグレにより形成した場合には、釣糸を案内するリング形状の釣糸案内部51のa部分における強化繊維は、縦方向と横方向が共に短い強化繊維となり、長い強化繊維を配置された部分に対して、理論的は、やや強度が劣ることも考えられる。つまり、同じ幅と厚みで形成されたリング部分(釣糸案内部)においては、リングの位置で強度差が生じていることも想定される。
【0008】
そこで本発明は、軽量で且つ強化繊維の配列方向に応じて、更に釣糸案内部における強度の増強が図られた釣糸ガイド及び、その釣糸ガイドを備える釣竿を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に従う実施形態の釣糸ガイドは、強化繊維を含む複数のシート状の合成樹脂が積層された繊維強化樹脂層により形成されて釣糸を案内する環状の釣糸案内部と、該釣糸案内部の端部から一方に延伸し先端に固定部が設けられた第1の脚部と、前記釣糸案内部の端部又は前記第1の脚部のいずれかから分岐して他方に延伸し先端に固定部が設けられた第2の脚部と、が一体的に構成される釣糸ガイドであって、前記釣糸案内部及び前記第1の脚部を形成する前記繊維強化樹脂層に形成される第1の繊維強化樹脂層と、前記分岐する箇所まで前記第1の繊維強化樹脂層と固着し、前記釣糸案内部及び前記第2の脚部を前記繊維強化樹脂層で形成される第2の繊維強化樹脂層と、前記第1の脚部から前記分岐する箇所を経て前記第2の脚部に至り、前記第1の繊維強化樹脂層と第2の繊維強化樹脂層とに固着される前記繊維強化樹脂層により形成される第3の繊維強化樹脂層と、で形成され、前記釣糸案内部の頂部側から分岐部までを部分形成する前記第1の繊維強化樹脂層の第1の断面積と第2の繊維強化樹脂層の第2の断面積との和が、前記第1の断面積又は前記第2の断面積のいずれかと前記第3の断面積との和よりも大きく形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、軽量で且つ強化繊維の配列方向に応じて、更に釣糸案内部における強度の増強が図られた釣糸ガイド及び、その釣糸ガイドを備える釣竿を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る釣糸ガイドを備える釣竿の外観構成を示す図である。
【図2】図2は、第1の実施形態における釣糸ガイドの外観構成を示す図である。
【図3】図3は、第1の実施形態における釣糸ガイドの断面構造を説明するための図である。
【図4】図4は、第1の実施形態における釣糸ガイドを形成するプレス成形による製造を概念的に示す図である。
【図5】図5は、第1の実施形態におけるプレス成形により製造された釣糸ガイドを含む硬化されたプリプレグ成形品の外観構成を示す図である。
【図6】図6は、第1の実施形態の第1の変形例における釣糸ガイドを形成するプレス成形による製造を概念的に示す図である。
【図7】図7は、第1の実施形態の第1の変形例におけるプレス成形により製造された釣糸ガイドを含む硬化されたプリプレグ成形品の外観構成を示す図である。
【図8】図8は、第2の実施形態における釣糸ガイドの外観構成を示す図である。
【図9】図9は、第3の実施形態における釣糸ガイドの断面構造を説明するための図である。
【図10】図10は、第3の実施形態における釣糸ガイドの断面構造を説明するための図である。
【図11】図11(a),(b),(c)は、第3の実施形態における補強部材の製造方法について説明するための図である。
【図12】図12(a)は、第3の実施形態における釣糸ガイドを含む硬化されたプリプレグ成形品の外観構成を示す図、図12(b)は、プリプレグ成形品の断面構造を示す図である。
【図13】図13は、第4の実施形態における釣糸ガイド本体の断面構造を説明するための図である。
【図14】図14は、従来の釣糸ガイドにおける強化繊維の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る釣糸ガイドを備える釣竿の外観構成を示す図、図2は、第1の実施形態における釣糸ガイドの外観構成を示す図、図3は、釣糸ガイドの断面構造を説明するための図である。
【0013】
本実施形態の釣竿1は、バット2のリールシート3に図示しない両軸リール(又はベイトリール)を搭載するタイプであり、竿本体4の上面には複数の釣糸ガイド5 が間隔を空けて設けられ、竿先にはトップガイド6が設けられている。以下の説明において、釣竿の竿先側を前方とし、竿尻側を後方とする。
【0014】
この釣糸ガイド5は、後述する直線的に伸びる強化繊維を含浸する樹脂材料により形成されたフレーム8と、SiC等からなるガイドリング7とで構成されている。ガイドリング7は、フレーム8の上部に設けられた環形状のリング保持部(釣糸案内部)8a,8bに嵌め込まれている。ここでは、後述する補助脚部8cに分岐するまでの頂部から分岐箇所までの部分をリング保持部8aとし、分岐箇所から底部までをリング保持部8bとしている。尚、以下を含む各実施形態において、リング保持部8a,8bは、円、楕円、長丸、トラック形等の環状であり、その端部とは、周端上の全て、例えば、上端、下端、側端を含んでいる。
【0015】
図2は、一例として、2脚の支脚部8c,8dを有する釣糸ガイド5を示している。これらの支脚部8c,8dは、釣糸(道糸)を釣竿から所定の距離を離間させるための高さ(長さ)を有している。本実施形態の説明にあたり、図3に示す釣糸ガイドの2脚のうち、リング保持部(釣糸案内部)8aから略直線的に延びて、固定部8fに繋がる脚を竿に固定するための主脚部(第1の脚部)8dと称する。また、他方のリング保持部8bから分岐して固定部8eに繋がる脚を補助脚部(第2の脚部)8cと称する。補助脚部8cは、主脚部8dを支持し且つ糸がらみを防止する。勿論、釣糸ガイド5は、いずれの脚部を竿先又は竿尻に向けて固定してもよく、脚部における主又は補助の関係は、限定されるものではない。
【0016】
リング保持部8aは、後述する複数のプリプレグが積み重ねられた積層シート14からなる補強部材14が補助脚部8cに一体的に接合(溶着)するように設けられ、リング保持部8bの厚い厚さとなっている。
【0017】
主脚部8dは、リング保持部8bの下方2箇所からフレーム面に沿って延伸して、軽量化を図る肉抜きによるV字形状を成し、水平に屈曲して固定部8fに繋がっている。補助脚部8cは、リング保持部8aとリング保持部8bの境の2箇所から斜め下方に分岐して、釣糸の絡まりを防止するガイドを行うためにV字形状を成し、水平に屈曲して固定部8eに繋がっている。それぞれの固定部8e,8fは、釣竿の所定位置に載置し、糸を巻き付けて固定され、糸表面から樹脂等によりラッピング及びコーティング処理が施される。
【0018】
フレーム8を形成するためのプリプレグは、多数の直線的に伸びる強化繊維例えば、炭素繊維が同一方向に配列又は平織り等に編み込まれて、熱加工により硬化するマトリックス樹脂に含浸されたシート部材である。
【0019】
また、マトリックス樹脂としては、熱硬化樹脂又は、熱可塑性樹脂が適用でき、例えば、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を用いることができる。但し、他の部材においては、マトリックス樹脂の硬化温度では溶解しない部材が好ましい。本実施形態における強化繊維としては、炭素繊維の他に、硝子繊維、アラミド繊維、金属繊維、又は合成樹脂繊維等を用いることが可能である。
【0020】
図4は、本実施形態の釣糸ガイドを形成するためのプレス成形による製造を概念的に示す図である。図5は、プレス成形により製造された釣糸ガイドを含む硬化されたプリプレグ成形品の外観構成を示す図である。
【0021】
図5に示すように、フレーム8は、複数の薄いプリプレグが積み重ねられた積層シート11(第1の繊維強化樹脂層)、積層シート12(第2の繊維強化樹脂層)及び積層シート13(第3の繊維強化樹脂層)を当接して熱硬化されて形成される。これらの積層シート11の厚さt1と、積層シート12の厚さt2の合計は、積層シート11の厚さt1と積層シート13の厚さt3の合計に対して、十分に厚い厚さを有している。例えば、t1+t2=(t1+t3)×1.3〜2程度である。厚さt1と厚さt2は、実測によれば、同じであっても、設計の範囲内であれば異なってもよい。つまり、厚くしすぎると、強度は増すが重量化し、軽量高強度とすることができる。
次に、プレス成形するための金型21,22,23のそれぞれに、これらの積層シート11,12,13を装填する。これらの金型の表面には、積層シートをセットするための凹部が設けられている。また、金型21,22への積層シート11,12の装填保持は、機械的部品例えば、金属ツメ等で保持させてもよいし、静電吸着等の電気的に保持させてもよい。尚、成形後に積層シートを外しやすいように剥離剤を塗布させてもよい。
【0022】
次に、金型21,22,23を加工装置(図示せず)により、図4に示すように、所定の位置で当接させる。そして、金型21,22,23を加圧しつつ、加熱して、熱硬化処理を行い、冷却された金型21,22,23から図5に示すようなプリプレグ成形品20が取り出される。熱硬化されたプリプレグ成形品20は、それぞれのシートの樹脂が溶解して、互いに密着するように形成されている。
【0023】
このプリプレグ成形品20からフレーム8を切り出す。切り出す手法としては、例として、レーザ光、ウォータージェット又は、刃具を用いた装置例えば、レーザ加工装置、ウォータージェット加工装置、樹脂NC加工装置等を用いることができる。フレーム8を切り出す手法は特に限定されるものではない。
【0024】
尚、この切り出しが行われる際に、例えば、固定部の底面を竿本体に座りがよくなるように曲面加工を施してもよいし、固定部の上面で固定用の糸の掛かりがよくなるように溝加工を施してもよい。また、フレーム8に対しては、それぞれのエッジからの割れ防止やバリを取るための面取り加工やバレル研磨加工を施してもよい。他にも、表面保護のために重量が増えない程度の膜厚で硬度のある部材(例えば、セラミック、硝子又は、(塩水による)耐腐食性を有する金属等)により被膜処理を施してもよい。その膜形成は、物理的気層成長技術(PVD:蒸着方法又はスパッタリング方法等)又は化学的気層成長技術(CVD:CVD方法)を用いることができる。
【0025】
その後、完成したフレーム8のリング保持部8aに通常の手法を用いてガイドリング7が嵌め込まれ、接着剤等で固定されている。また、使用される釣竿による負荷や釣糸の種類によっては、必ずしもガイドリングは必要ではなく、リング保持部内面を鏡面状に研磨加工してもよいし、別途、硬質部材をラミネートする表面加工を行ってもよく、釣糸を案内しやすいように加工されればよい。
【0026】
以上説明したように、本実施形態によれば、フレーム8のリング保持部(釣糸案内部)8aにおける強化繊維が短くなる部分に対して、その厚みを増してフレームの強度の増強を図ることができる。この強度を高めることにより、外部からの衝撃、例えば、竿を落下、又は何かにぶつけた際に、釣糸ガイドに加わる衝撃による破損を防止することができる。よって、軽量で且つ強化繊維の配列方向に応じて、更に釣糸案内部における強度の増強が図られた釣糸ガイドを提供する。
また、このような釣糸ガイドを複数設けた釣竿は、竿全体の軽量化を実現し、及び竿の重量バランスを大きく変化させることなく、釣竿のしなやかな柔軟性を損なわず、扱いやすい釣竿を実現できる。
[第1の変形例]
第1の実施形態の第1の変形例として、図7に示すように、フレーム20は、複数の薄いプリプレグが積み重ねられた積層シート11(第1の繊維強化樹脂層)、積層シート12(第2の繊維強化樹脂層)及び積層シート13(第3の繊維強化樹脂層)を当接して熱硬化されて形成される。この時、積層シート12の面上には、補強シート(補強部材)14が重なるように形成されている。
【0027】
これらの積層シートは、図6に示すように、プレス成形するための金型21,22,23の積層シートをセットするためのそれぞれの凹部に、積層シート11,13及び、補強シート14を重ねた積層シート12を装填し、加圧しつつ加熱して熱硬化させる。
本変形例によれば、フレーム8における強化繊維が短くなる部分に対して、補強シート14を重ね合わせることにより、厚みを増してフレームの強度の増強を図ることができる。更に、本変形例は、リング保持部8aのみを厚く成形する場合に有用である。また、補強シート14は、積層シート11の面上に重なるように設けてもよい。
【0028】
[第2の変形例]
第1の実施形態の第2の変形例として、積層シートを形成する際に、同一方向に配列されたプリプレグを使用して積層シートを製作する場合には、リング保持部8aの中央を中心として強化繊維方向を交差して複数の方向となるように、組み合わせて重ね合わせて、フレーム8が設計値に基づく均一な強度を有するように形成してもよい。
【0029】
特に、異なる角度に均等に配列するように、例えば、14枚のプリプレグを積層するのであれば、リング保持部8aの中央を中心として強化繊維の配列角度を略12°の間隔でずらして重ね合わせることで、強化繊維が均一な角度で配置される。このように構成することにより、リング保持部8aのいずれの箇所にも短めの強化繊維と共に長めの強化繊維が存在することとなる。
本変形例によれば、第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。更に、本変形例は、リング保持部8aが厚さに制限があった場合にも有用である。
【0030】
[第2の実施形態]
図8は、第2の実施形態における釣糸ガイドの外観構成を示す図である。本実施形態において、前述した第1の実施形態と同等の部位には、同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0031】
第1の実施形態では、釣糸ガイド25の環形状のリング保持部8において、強度増加のために積層シートの厚さを厚くする又は、補強シート14を宛がって、リング保持部8のみの厚みを厚くした構成であった。これに対して、本実施形態では、リング保持部8aの厚みを厚くした部分(図8に示すA部分)の幅L1をリング保持部8bの幅L2よりも広く形成する(L1>L2)。
【0032】
以上説明したように、本実施形態によれば、フレーム8における強化繊維が短くなる部分に対して、幅を広くすることで強化繊維の長さを長くすることにより、強度を増加させることができる。また、このような保持部8aは、切り出しが行われる際に、幅を広くなるように設定するだけで可能であり、容易に実現することができる。
【0033】
尚、前述した第1の実施形態と第2の実施形態においては、リング保持部8における強化繊維が短くなる部分に対して、厚みtを厚くする又は、幅Lを拡げることのいずれかを行っている。これは、共に、リング保持部8の断面積を大きくすることで、強度を増加させていることである。つまり、幅を一定として、厚みを変える、又は厚みを一定として、幅を変えることと同じであり、厚み及び幅の両方を変えてもよい。
従って、積層シート11の断面積(t1×L1)、積層シート12の断面積(t2×L2)及び、積層シート13の断面積(t3×L3)は、(t1×L1+t2×L2)=(t1×L1+t3×L3)×1.3〜2程度とすることである。
【0034】
これらのリング保持部8の厚みを厚くする又は、幅を拡げるのは、装着する釣竿の種別(船竿、投げ竿等)や用途(釣り魚の種別等)と、取り付ける箇所に応じて、いずれか一方、又は組み合わせるように、適宜選択すればよい。例えば、竿先に取り付ける釣糸ガイドであれば、小型化が要求されるため、リング保持部8の厚みを厚くする手法を選択し、竿尻側に取り付けるガイドであれば、厚みと共に幅を拡げる両方の手法を採用してもよい。
【0035】
[第3の実施形態]
図9は、第3の実施形態における釣糸ガイドの外観構成を示す図である。図10は、第3の実施形態における釣糸ガイドの断面構造を説明するための図である。図11(a),(b),(c)は、第3の実施形態における補強部材の製造方法について説明するための図である。図12(a)は、第3の実施形態における釣糸ガイドを含む硬化されたプリプレグ成形品の外観構成を示す図、図12(b)は、プリプレグ成形品の断面構造を示す図である。本実施形態において、前述した第1の実施形態と同等の部位には、同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の釣糸ガイド28は、強化繊維がリング保持部(釣糸案内部)8aの環形状に沿って巻回されたリング形補強部材31を用いた構成である。
【0036】
図9及び図10に示すように、本実施形態のリング保持部8aは、前述した積層シート11と積層シード12に加えて、積層シート11の面上に、リング形補強部材31及びカバーシート32が形成されている。従って、図9に示すように、リング保持部8aが主脚部8d側にリング形補強部材31及びカバーシート32の厚み分が突出する。尚、カバーシート32は、構成部材として必須ではなく省いてもよい。また、積層シート11と積層シード12における多数の強化繊維は、同一方向に配列された引き揃えでもよいし、平織り等に編み込まれたプリプレグでも適用することができるが、好ましくは、強化繊維が平織りされたシートの方がよい。
【0037】
図11(a)乃至(c)を参照して、リング形補強部材31の形成手順について説明する。
まず、図11(a)に示すように、石英硝子等の透明耐熱部材からなる直管形状の透明管部材33の周囲上に、熱硬化樹脂を含浸した薄いプリプレグ34を所定の厚さになるまで、密になるようにきつく巻回する。この所定の厚さは、リング形補強部材31の幅寸法となる。この時、プリプレグ34は、強化繊維例えば、炭素繊維が同一方向に配列され、熱加工により硬化するマトリックス樹脂に含浸されたシート部材である。本実施形態では、プリプレグ34は、強化繊維が透明管部材33の周回方向となるように管部材33に巻き付ける。
【0038】
次に、プレ硬化処理を行う。具体的には、ランプヒータから巻回されたプリプレグ34の外表面に光を照射して、表面近傍のプリプレグ34を溶解して熱硬化させる。それと共に、直管状のランプヒータを透明管部材33に差し込み、発光させて、透明管部材33を介して、プリプレグ34に光を照射する。透明管部材33に当接した部分の近傍のプリプレグ34を熱硬化させる。ランプヒータとしては、ハングステンハロゲンランプやキセノンアークランプ等の高輝度ランプを用いることができる。
【0039】
このような熱硬化により、管状プリプレグ34の表面部分と内面部分が溶解されて硬化している。これらの硬化された表面部分及び内面部分は、後述するプリプレグ成形品35からフレーム8として切り出された際に、リング形補強部材31から排除される。尚、熱可塑樹脂を採用した場合には、巻回されたプリプレグの内部まで硬化処理してもよい。
【0040】
次に、図11(b)に示すように、部分硬化させたプリプレグ31を透明管部材33から引き抜く。次に、この管状プリプレグ31を薄く所望厚にスライスして、リング形補強部材31を形成する。尚、リング形補強部材の厚さに比例して、強度を変えることが可能である。この時のリング形補強部材31の内部は、プリプレグ31が巻回されたのみの状態(非硬化)である。
【0041】
次に、図4に示したと同じように、金型に設けられた凹部に積層シート11、12,13をそれぞれ装着する。この時、積層シート11を装着する前に金型21には、カバーシート32及びリング形補強部材31を装着し、積層シート11に宛がっている。
そして第1の実施形態と同様に、金型21,22,23を加圧しつつ、加熱して、熱硬化処理を行い、冷却された金型21,22,23から、図12(a)に示すようなプリプレグ成形品35が取り出される。プリプレグ成形品35は、それぞれのシートの樹脂が溶解して、互いに密着するように形成されている。
【0042】
この時、リング形補強部材31の外周は、切り出されるフレーム8の外周よりも大きく、リング形補強部材31の内周は、切り出されるフレーム8の内周よりも小さい。リング形補強部材31のはみ出す部分は、図12(b)に示すように、前述したプレ硬化処理において、硬化された表面部分及び内面部分(点線Bの両外側部分)に相当する。前述した切り出す手法により、プリプレグ成形品35からフレーム8を切り出す。
以上説明したように、本実施形態によれば、リング保持部の環形状に沿って配列された強化繊維を有するプリプレグからなるリング形補強部材31をリング保持部に設けることにより、フレーム8における強化繊維が短くなる部分に対して、十分に補強することができる。また、リング形補強部材31の形状は、巻き付ける透明管部材33の外形状に従った形状に形成することができ、円形だけではなく、長丸、楕円、俵形等、リング保持部の形状に合わせて適宜作製することができる。更に、リング形補強部材31を形成するにあたり、使用する強化繊維の径や本数(周回数)及び材料を適宜選択することにより、所望する強度の補助を実現することができる。
【0043】
本実施形態では、切り出した後に、リング保持部8aのリング形補強部材31となる部分は、未熱硬化であるため、積層シート11とは確実に溶着されて一体化され、側面からの剥離等を防止することができる。
【0044】
また、ガイドリングを装着せずに、釣糸が接する案内面を研磨加工して形成する場合に、加工面に強化繊維の端面が露呈しないため、より滑らかな面が形成できる。更に、強化繊維がリング保持部8aの周囲方向に巻回配列されているため、強化繊維の端面が露呈する面より衝撃に強くなり、面のカケがより防止できる。
【0045】
[変形例]
前述した第1乃至第3の実施形態及び変形例は、2脚の支脚(ダブルフット)を有する釣糸ガイドであったが、1脚の支脚(シングルフット)を有する釣糸ガイドにも同様に適用することができる。ここでは、第3の実施形態のリング形補強部材31を適用した例について説明する。
図13に示すように、1脚の支脚を有する釣糸ガイド41のリング保持部42は、脚部及び竿取り付け用の固定部を含むフレーム43として、前述した積層シートにより一体的に形成される。
【0046】
リング保持部42を形成する箇所には、強化繊維がリング保持部42の環状に沿うように配列されて硬化されたプリプレグからなるリング形補強部材31を配置し、一体的に硬化処理されている。このリング形補強部材31を含むリング保持部42には、ガイドリング45が嵌装されて固定されている。このガイドリング45は、必須ではなく、リング形補強部材31及びフレーム43に鏡面研磨処理を施してもよい。
【0047】
本変形例によれば、1脚の支脚を有する釣糸ガイドに対しても、前述した第1乃至第3の実施形態を適用して同等の作用効果を得ることができる。尚、釣竿の先端に設けられているトップガイドに対しても同様に各実施形態を実施することも容易である。
【符号の説明】
【0048】
1…釣竿、2…バット、3…リールシート、4…竿本体、5,31,41…釣糸ガイド、6…トップガイド、7…ガイドリング、8,43…フレーム、8a,8b,42…リング保持部、8c…補助脚部,8d…主脚部、8e,8f…固定部、11,12,13…積層シート、14…補強シート(補強部材)、16…分岐間隙部材、17,18,34…プリプレグ、19…中心部分、20,35…プリプレグ成形品、21,22,23…金型、31…リング形補強部材、32…カバーシート、33…透明管部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維を含む複数のシート状の合成樹脂が積層された繊維強化樹脂層により形成されて釣糸を案内する環状の釣糸案内部と、該釣糸案内部の端部から一方に延伸し先端に固定部が設けられた第1の脚部と、前記釣糸案内部の端部又は前記第1の脚部のいずれかから分岐して他方に延伸し先端に固定部が設けられた第2の脚部と、が一体的に構成される釣糸ガイドであって、
前記釣糸案内部及び前記第1の脚部を形成する前記繊維強化樹脂層に形成される第1の繊維強化樹脂層と、
前記分岐する箇所まで前記第1の繊維強化樹脂層と固着し、前記釣糸案内部及び前記第2の脚部を前記繊維強化樹脂層で形成される第2の繊維強化樹脂層と、
前記第1の脚部から前記分岐する箇所を経て前記第2の脚部に至り、前記第1の繊維強化樹脂層と第2の繊維強化樹脂層とに固着される前記繊維強化樹脂層により形成される第3の繊維強化樹脂層と、で形成され、
前記釣糸案内部の頂部側から分岐部までを部分形成する前記第1の繊維強化樹脂層の第1の断面積と第2の繊維強化樹脂層の第2の断面積との和が、前記第1の断面積又は前記第2の断面積のいずれかと前記第3の断面積との和よりも大きく形成されていることを特徴とする釣糸ガイド。
【請求項2】
前記釣糸ガイドにおいて、
重ねられて、前記釣糸案内部の頂部側から分岐部までを部分形成する前記第1の繊維強化樹脂層と前記第2の繊維強化樹脂層の該第2の繊維強化樹脂層上に、前記繊維強化樹脂層により形成される補強シートが宛がわれて一体的に固着することを特徴とする請求項1に記載の釣糸ガイド。
【請求項3】
前記釣糸ガイドにおいて、
前記第1の繊維強化樹脂層と前記第2の繊維強化樹脂層は、多数の直線的に伸びる強化繊維が同一方向に配列するように引き揃えられた複数のプリプレグが積み重ねられた積層シートに形成され、
前記プリプレグ毎に強化繊維が配列する方向が前記釣糸案内部の中央を中心として交差するように積み重ねられて形成される積層シートであることを特徴とする請求項1に記載の釣糸ガイド。
【請求項4】
強化繊維を含む複数のシート状の合成樹脂が積層された繊維強化樹脂層により形成され、釣糸を案内する釣糸案内部と、
前記釣糸案内部の端部から一方に延伸し先端に固定部が設けられた第1の脚部と、前記釣糸案内部の端部又は前記第1の脚部のいずれかから分岐して他方に延伸し先端に固定部が設けられた第2の脚部と、が一体的に構成される釣糸ガイドであって、
前記釣糸案内部及び前記第1の脚部を形成する、強化繊維を含む複数のシート状の合成樹脂が積層された第1の繊維強化樹脂層と、
前記分岐する箇所まで前記第1の繊維強化樹脂層と固着し、前記釣糸案内部及び前記第2の脚部を形成する前記合成樹脂が積層された第2の繊維強化樹脂層と、
前記第1の脚部から前記分岐する箇所を経て前記第2の脚部に至り、前記第1の繊維強化樹脂層と第2の繊維強化樹脂層とに固着される前記合成樹脂が積層された第3の繊維強化樹脂層と、
前記強化繊維が釣糸案内部の環形状に沿って巻回され、前記第1の繊維強化樹脂層上に宛がわれて一体的に固着されたリング形補強部材と、
を具備することを特徴とする釣糸ガイド。
【請求項5】
強化繊維を含む複数のシート状の合成樹脂が積層された繊維強化樹脂層により形成されて釣糸を案内する環状の釣糸案内部と、該釣糸案内部の端部から一方に延伸し先端に固定部が設けられた第1の脚部と、前記釣糸案内部の端部又は前記第1の脚部のいずれかから分岐して他方に延伸し先端に固定部が設けられた第2の脚部と、が一体的に構成される複数の釣糸ガイドが設けられた魚釣用釣竿であって、
前記釣糸案内部及び前記第1の脚部を形成する前記繊維強化樹脂層により形成される第1の繊維強化樹脂層と、
前記分岐する箇所まで前記第1の繊維強化樹脂層と固着し、前記釣糸案内部及び前記第2の脚部を前記繊維強化樹脂層により形成する第2の繊維強化樹脂層と、
前記第1の脚部から前記分岐する箇所を経て前記第2の脚部に至り、前記第1の繊維強化樹脂層と第2の繊維強化樹脂層とに固着される前記繊維強化樹脂層により形成される第3の繊維強化樹脂層と、で構成され、
前記釣糸案内部の頂部側から分岐部までを部分形成する前記第1の繊維強化樹脂層の第1の断面積と第2の繊維強化樹脂層の第2の断面積との和が、前記第1の断面積又は前記第2の断面積のいずれかと前記第3の断面積との和よりも大きく形成されていることを特徴とする釣糸ガイドを備える魚釣用釣竿。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2013−110978(P2013−110978A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257667(P2011−257667)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】