説明

鉄−炭水化物錯体化合物

本発明は、鉄(II)の含有量によって特徴づけられる鉄−炭水化物錯体化合物を提供する。また、本発明は、鉄−炭水化物錯体化合物の製造方法及び鉄欠乏症貧血治療のためのそれらの使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、鉄(III)に加えて鉄(II)を含む鉄−炭水化物錯体化合物、それらの調製方法、それらを含む医薬、鉄欠乏性貧血治療へのそれらの使用に関する。
【0002】
従来技術によれば、鉄の欠乏によって生じる貧血は、セラピーにより治療されるか、または、特に鉄(III)を含む医薬の非経口投与により、そして特に鉄(II)若しくは鉄(III)を含む医薬の経口投与により、予防治療される。従って、鉄(II)の非経口投与は、行われない。
【0003】
実際に頻繁に使用される製剤は、非経口投与に特に適している水溶性水酸化鉄(III)−スクロース錯体(Danielson, Salomonson, Derendorf, Geisser, Drug Res., vol. 46: 615-621, 1996)である。
【0004】
国際公開第2004/037865(A1)号パンフレットは、主に非経口的に使用し経口的にも使用することができる、水溶性水酸化鉄(III)−スクロース錯体を開示する。その錯体は、デキストロース当量5〜20を有するマルトデキストリンを伴う鉄(III)の錯体であり、錯体の分子量は80〜400kDaである。
【0005】
経口投与することができる更に成功裏に使用した製剤は、約50kDaの分子量を有する水酸化鉄(III)−ポリマルトース錯体を主成分とし、マルトファー(Maltofer)(登録商標)として市販品が入手可能である。
【0006】
市場で入手できる経口鉄(II)製剤は、特に、フマル酸鉄(II)、サルフェート及びグリコレートである。
【0007】
臨床研究により、一般の鉄(II)化合物がより急速に吸収されることが分かった。経口摂取(oral intake)[Hentze, M. W., Muckenthaler, M. U. and Andrews N. C. (2004) Balancing acts: Molecular Control of Mammalian Iron Metabolism, Cell, 117, 285-297]で述べられたように、鉄(III)が二価の中間体を介して吸収されるという理論が存在する。しかし、毒性が高いので、鉄(II)を非経口的に投与することはできない。それにより、経口投与に対する副作用が増加することとなる。従って、鉄(II)の経口投与は、好ましくない。
【0008】
従って、本発明は、特に経口投与おいて鉄が体に非常に良好に吸収されることを用いて、改良した医薬を提供することの目的に基づいている。特に、鉄は、可能な限り速く吸収することがあり、そして、純粋な鉄(II)製剤よりも良好な耐性を有することがある。
【0009】
本発明による目的は、許容可能な低い毒性に加えて高い鉄含有量を有する、鉄−炭水化物錯体化合物を提供することにより実現される。
【0010】
従って、本発明は、鉄(II)の含有量(錯体化合物中における鉄の合計量に基づく)が少なくとも2重量%であることを特徴とする、鉄−炭水化物錯体化合物を提供する。
【0011】
本発明による鉄−炭水化物錯体化合物は、特に酸素原子及び/又は水酸基を介して鉄原子が互いに結合している特にオリゴ又は多核の鉄化合物であり、錯体として及び/又は水素橋かけ結合を介して部分的に結合される炭水化物が存在する。さらに、後述するように、カルボキシレート基を介して錯体として結合される、酸化された炭水化物分子が存在することが可能である。さらに、鉄−炭水化物錯体化合物も、錯体として又は水素橋かけ結合を介して結合される水を含むことができる。
【0012】
本発明による鉄−炭水化物錯体化合物は、鉄(II)の含有量により特徴付けられる。本発明による鉄−炭水化物錯体化合物において、いくつかの鉄が、酸化レベル2+で存在することを、これは意味している。残りの鉄は、本発明による鉄−炭水化物錯体化合物においては、実際に酸化レベル3+(すなわち、鉄(III))だけが存在している。従って、これらは、いわゆる「混合原子価(mixed valence)」化合物であり、この化合物において、金属がいくつかの酸化レベルで共存在している。
【0013】
本発明によれば、鉄の合計含有量のうちの鉄(II)の含有量(錯体化合物中における鉄の合計量に基づく)は、少なくとも2重量%であり、好ましくは3重量%を超える。鉄の合計含有量のうちの鉄(II)の含有量(各々の場合において、錯体化合物中における鉄の合計量に基づく)は、好ましくは3〜50重量%、より好ましくは5〜40重量%、最も好ましくは7〜35重量%である。特に滴定(例えば:Jander Jahr, Masanalyse [Volumetric Analysis] 15th edition, Verlag Walter de Gruyter, 1989を参照)により、鉄(II)の含有量を決定することができる。この分析において、最初に、Hを使用して鉄の合計量を決定し、次に、Hを使用しないで鉄(III)を決定し、鉄(II)の含有量を、その差を得ることにより決定する。
【0014】
鉄−炭水化物錯体化合物の重量のうちの鉄の合計含有量は、好ましくは5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%である。
【0015】
好適な実施態様では、錯体化合物の重量のうちの1つの炭水化物(又は、複数の炭水化物)の含有量は、10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、最も好ましくは35〜65重量%である。
【0016】
本発明の明細書においては、多量のデータ(鉄−炭水化物錯体化合物の重量に基づく)は、後述するように、例えば、調製が原因で生ずることがある水分の含有量を含んでいる本発明による鉄−炭水化物錯体化合物についての合計重量に常に関係している。
【0017】
鉄(III)、鉄(II)及び1以上の炭水化物に加えて、本発明による鉄−炭水化物錯体化合物は、水酸基(一般に、OHと示される)、オキソ基(一般に、O2−と示される)、場合により更にアニオン及び水を含む。本明細書におけるOH又はO2−として書かれるイオノゲンの形式は、もちろん、これらの基が鉄カチオンへの結合において多少の共有結合を含有することができることを除外していない。これは、当業者において周知である。
【0018】
炭水化物に加えて、本発明による鉄−炭水化物錯体化合物も、他のリガンド、例えば、グルコン酸、乳酸等のカルボン酸を含むことができる。
【0019】
本明細書における、本発明による鉄−炭水化物錯体化合物中の水の含有量は、乾燥条件に応じて、10重量%まで便宜上可能である。好ましくは、水の含有量は、2〜8重量%である。
【0020】
本発明による鉄−炭水化物錯体化合物は、下記の組成:
− 鉄(II)の状態で存在する、5〜40重量%、好ましくは3〜50重量%、より好ましくは5〜40重量%(鉄の合計量に基づく)の鉄、
− 10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、最も好ましくは35〜65重量%である1以上の炭水化物、
− 残部:結合した状態の酸素及び水素(炭水化物内の酸素及び水素は別とする)及び場合により更なる元素
を有する。
【0021】
上述したように、酸素及び水素の元素は、特に、水酸基、オキソ基及び場合により水として存在する。鉄、炭素、酸素、水素及び窒素に加えて、更なる元素が、例えば、調製中に使用される鉄(III)塩、必要に応じて、調製中に使用される酸及び/又は塩基から、初めから、もたらされる可能性がある。従って、それらは、例えば、(例えばClからの)塩素、(例えば硫酸塩(SO2−)からの)硫黄、(例えば硝酸塩(NO)からの)窒素、(アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩又は炭酸水素塩等の使用される塩基からの)アルカリ金属及びアルカリ土類金属である。更なる元素の含有量は、一般に15重量%未満、より好ましくは10重量%未満(本発明による鉄−炭水化物錯体化合物の重量に基づく)である。
【0022】
下記の組成:
− 鉄(II)の状態で存在する、10〜30重量%の鉄、好ましくは5〜40重量%の鉄(鉄の合計量に基づく)、
− 20〜70重量%である1以上の炭水化物、
− 残部:結合した状態の酸素及び水素(炭水化物内の酸素及び水素は別とする)及び上で説明した通りの場合により更なる元素
が、好ましい。
【0023】
本発明の特定の実施態様では、本発明による鉄−炭水化物錯体化合物の重量平均分子量は、10〜80kDa、好ましくは12〜65kDa、最も好ましくは15〜60kDaである。本明細書において、標準としてのプルランに対するゲル透過クロマトグラフィーにより、重量平均分子量を決定する(例えば、GeisserらによりArzneim. Forsch./Drug Res. 42(II), 12, 1439-1452 (1992), paragraph 2.2.5において記載)。
【0024】
本発明による鉄−炭水化物錯体化合物は、例えば、錯体として及び/又は鉄若しくは鉄を含有する部分的な構造への水素橋かけ結合を介して結合される本発明による化合物に存在する、1以上の炭水化物を含む。鉄−炭水化物錯体化合物は、天然炭水化物又は合成炭水化物誘導体、例えば、澱粉、加水分解澱粉、例えば、デキストリン(特に、マルトデキストリン、マルトースシロップ、グルコースシロップ)、シクロデキストリン、デキストラン、サッカリドから例えば選択される、少なくとも1つの炭水化物を含む。
【0025】
本発明によれば、用語「炭水化物」又は「炭水化物リガンド」は、すべての天然炭水化物、すべての合成又は半合成炭水化物誘導体及び糖類を含む。
【0026】
本発明によれば、更に、用語「炭水化物」は、本発明において好ましい調製プロセス(炭水化物の酸化と鉄(III)の還元を伴いながら鉄(III)塩と炭水化物とが反応し、酸化還元反応という観点から鉄(II)を形成する)から形成される炭水化物リガンドも含む。この酸化還元反応において、一般に、(アルカリ媒体中での転移後)炭水化物のアルデヒド及び/又はケト基の酸化が起こり、例えば、炭水化物用の周知の検出方法にも基づくカルボキシル基を与える。本明細書において或る程度インサイチューで形成しカルボキシル基を含む、酸化された炭水化物−リガンド分子も、もちろん、本発明の範囲に含まれる。水素橋かけ結合又はアニオン性カルボキシレート基を介して、鉄若しくは鉄を含有する部分的な構造へ結合される(一般には、鉄へ直接結合される)カルボキシル基が存在することが可能である。
【0027】
従って、特に、酸化された炭水化物分子も、炭水化物リガンドの鉄へのしっかりした結合ももたらすカルボキシル基を含む。
【0028】
さらに、鉄−炭水化物錯体化合物の調製中に本発明によって使用される炭水化物は、好ましくは、鉄(III)を鉄(II)に還元する能力を有する炭水化物である。
【0029】
本発明によって好適に使用される炭水化物または炭水化物誘導体は、デキストリン(例えば、特に、マルトデキストリン及びマルトースシロップ、並びにグルコースシロップ)を含む。
【0030】
それらの炭水化物または炭水化物誘導体は、例えば、Roempp-Lexikon, Biotechnologie und Gentechnik[Roempp's Dictionary, Biotechnology and Genetic Engineering], Georg Thieme Verlag 1999, and in Lehrbuch der Lebensmittelchemie [Textbook of Food Chemistry], H.-D. Belitz and W. Grosch, 4th edition, Springer-Verlag中に記載されている。
【0031】
それらは、当業者が知っているように、特に、ポリヒドロキシカルボニル化合物並びにそれらのオリゴ及び重縮合体の自然物質クラスを含む。非凝縮された代表例、例えば単糖類は、少なくとも3つの炭素原子及び少なくとも一つのキラル中心を有する炭素鎖を有する。本発明は、本発明により記載された炭水化物及びそれらの誘導体の異性体(例えば構造異性体、鏡像異性体またはジアステレオマー)すべてを含む。最も一般的なものは、5個又は6個の炭素原子を有する単糖類である。二糖及び多糖は、グリコシド結合を介して、鎖で結ばれている単糖である。単糖類(単糖)は、例えば、グルコース及びフルクトースを含む。二糖類は、例えば、結晶糖、ラクトース及びマルトースを含む。オリゴ糖類は、例えば、ラフィノースを含む。多糖類は、特に、澱粉とその誘導体とデキストラン(細菌からのエキソ多糖類)を含む。デキストリン等の澱粉誘導体が、特に好ましい。Roempp-Lexikon, Biotechnologie und Gentechnik[Roempp's Dictionary, Biotechnology and Genetic Engineering] (ibid.)に記載の用語「デキストリン」は、例えば希酸を有する澱粉の不完全な加水分解によるか、熱の作用によるか、又は酵素の作用によって形成される、一般式(C10xHOで表されるD−グルコースユニットの種々の低ポリマー及び高ポリマーの総合的な名称である。本発明において好適な炭水化物は、好ましくは、DE値0〜100を有する不完全な加水分解澱粉である。
【0032】
本発明によれば、それは、デキストリン、例えば、マルトデキストリン及びマルトースシロップ、並びにグルコースシロップ等を含む。本発明おいて特に好適なマルトデキストリンは、α−アミラーゼを有するトウモロコシ澱粉又はポテトデンプンの酵素切断によって、調整されることが好ましい。加水分解の程度は、いわゆるDE値(デキストロース当量)によって、これらの生成物中で従来から述べられている。この目的のために、加水分解が進行するにつれて増加する還元を行うための澱粉溶液能力が、決定される。天然澱粉はDE値=0を有し、グルコースへ完全に加水分解した後の理論DE値は100であり、そしてマルトースへの完全な開裂はDE値52.6をもたらす。本発明において好適に加水分解された澱粉マルトデキストリン及びマルトースシロップは、約3〜50のDE値を便宜上有する。本明細書において、マルトデキストリンとマルトースシロップとの移行は、一般に円滑である。それらの加水分解度が低い結果、マルトデキストリンは、もちろん、マルトースシロップよりも低いDE値を有する。グルコースシロップは、一般に、マルトースシロップよりも高いDE値を有し(また、特に50を超える)、ここでも、この範囲においては、マルトデキストリンとマルトースシロップとの移行は、一般に円滑である。本発明の明細書において、グルコースシロップは、一般に、50を超えるDE値を有することを述べた。
【0033】
本発明によれば、好適に使用されるマルトデキストリン及びマルトースシロップは、好ましくはDE値5〜45、特に好ましくは7〜40のDE値を有する。
【0034】
本発明によれば、デキストロース当量は、重量測定法で決定される。このために、炭水化物は、フェーリング溶液を有する水溶液において沸騰中に反応する。定量的に(すなわち、フェーリング溶液の更なる脱色が起こらないまで)、反応は起こる。沈殿した酸化銅(I)は、105℃で一定の重量に乾燥し、重量測定法で決定される。グルコース含有量(デキストロース当量)を、得られた値から、重量%/重量として計算する。例えば、下記の溶液を使用することができる:25mlのフェーリング溶液IIと混合した25mlのフェーリング溶液I;10mlの水性炭水化物溶液(10%mol/vol.)(フェーリング溶液I:500mlの水に溶解した34.6gの硫酸銅(II);フェーリング溶液II:400mlの水に溶解した173gの酒石酸カリウムナトリウム及び50gの水酸化ナトリウム)。
【0035】
更に、第1近似値に相当する結果をもたらす、Lane及びEynon(ISO5377−1981(E))の方法によって、DE値を滴定により測定することも可能である。
【0036】
好適に使用される炭水化物の数平均分子量は、便宜上、最高約50,000である。
【0037】
更に、本発明は、下記の段階を含む、鉄−炭水化物錯化合物を調製するための好適な方法も提供する:
(a)炭水化物の水溶液又は懸濁液の調製、
(b)好ましくは7〜13の範囲における一定のpHでの、鉄(III)塩の添加、
(c)水溶液又は懸濁液の加熱、
(d)水溶液又は懸濁液の冷却、及び
(e)形成される鉄−炭水化物錯体化合物の単離。
【0038】
本発明によれば、更に、鉄(II)塩類または鉄(II)及び鉄(III)塩類の混合物を、段階b)において使用することもできる。本明細書において、還元炭水化物の使用を省略することができる。その上、本発明によれば、鉄(II)への鉄(III)の還元をもたらす、ビタミンC、ジヒドロフラボン又は超酸化物等の還元剤を、鉄−炭水化物錯体化合物の調整中に更に添加することも可能である。
【0039】
本発明による方法の好ましい実施態様において、段階(d)における水溶液又は懸濁液の冷却後に、好ましくは約5〜9の生理学的に受け入れられる値に水溶液又は懸濁液のpHを調整する段階(d’)を行う。
【0040】
反応中に形成することがある固体は、特に段階(d’)の後に分けられ、その後、鉄錯体を沈殿又単離することができる。
【0041】
段階(b)における鉄(III)塩(又は、鉄(II)塩、若しくは鉄(III)及び鉄(II)塩類の混合物)の添加は、例えば、溶液又は懸濁液の滴下添加によって、撹拌中に行われる。好適に使用することができる鉄(III)塩類(又は鉄(II)塩類)は、無機酸若しくは有機酸またはそれらの混合物の水溶性塩(塩化物若しくは硫酸塩等のハロゲン化物)である。更に、適切な条件下で、鉄の水酸化物を使用することもできる。生理学的に受け入れられる塩類が、好ましくは用いられる。塩化鉄(III)の水溶液を、好適には還元特性を有する炭水化物と共に、特に好ましくは使用する。更に、Fe(III)硫酸塩溶液および鉄(III)塩溶液の混合物を使用することもできる。
【0042】
鉄(III)塩(又は、鉄(II)塩、若しくは鉄(III)及び鉄(II)塩類の混合物)の添加を、pH値7〜13、好ましくはpH値9〜12で、
本発明において便宜上行う。こうしたpH値を実現し、反応中にそれらを一定に保つために、塩基[例えば、特に、アルカリ金属水酸化物若しくはアルカリ土類金属水酸化物(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよび水酸化マグネシウム、特に好ましくは水酸化ナトリウム)、または、更にアルカリ金属炭酸塩、アルカリ土属金属炭酸塩若しくは重炭酸塩]を便宜上添加する。例えば50〜70℃の所望の温度に水性炭水化物溶液を加熱するように、方法を実行することができ、そして、pHが一定に保たれ(例えば、最高で1、好ましくは0.5のpHユニットのずれ)、場合により、温度も実質的に一定に保たれるように、塩及び鉄(III)塩溶液を滴下により添加する。このpHで、鉄(III)塩(または、鉄(II)塩、若しくは鉄(III)及び鉄(II)塩の混合物)が実質的に反応し、鉄(III)−(または鉄(II))−水酸化物の結合を形成する。
【0043】
鉄(III)塩溶液(または、鉄(II)塩溶液、若しくは鉄(III)及び鉄(II)塩溶液の混合物)と塩基溶液の添加が終了する際に、得られた溶液又は懸濁液を加熱する。使用される炭水化物に含まれるアルデヒド基によって、鉄(III)の一部が鉄(II)に好適に還元する反応が、更に起こる。本明細書において、80℃を超える温度、好ましくは90℃を超える温度、特に好ましくは水の沸点(標準圧力下で100℃)まで、溶液の加熱を行うことが好ましい。段階(c)の加熱処理は、少なくとも30分間便宜上行われる。一般に、加熱処理は、5hを超えて続かない。次に、好ましくは0℃、30℃、特に25℃(室温)に冷却される。
【0044】
反応が起こる際に、得られた溶液または懸濁液を冷却し、場合により希釈する。冷却後、5〜9、好ましくは5.5〜8.5の生理学的に受け入れられる値に、pHを調製することが好ましい。使用することのできる酸は、無機酸若しくは有機酸、またはそれらの混合物[特には、塩化水素又は水性塩酸等のハロゲン化水素酸、または硫酸]である。次に、例えば濾過または遠心分離によって、おそらく存在する不純物及び固体を分離することができる。
【0045】
上述した条件下で、鉄の量に基づいて、少なくとも2重量%の鉄(II)の含有量を有する本発明による鉄−炭水化物錯体化合物を得ることができる。
【0046】
本発明による鉄−炭水化物錯体化合物は、一般に、水に直ちに溶解する。本発明によれば、好ましくは30gを超える、より好ましくは35gを超える、特により好ましくは40gを超える本発明による鉄−炭水化物錯体化合物が、100gの水に25℃で溶解することを意味する。最大の可溶性は、例えば、いずれの場合においても、25℃の水100g当たりで、約100g〜120gである。
【0047】
本発明によって好ましく得られる鉄−炭水化物錯体化合物の溶液を、医薬の調製のために直接使用することができる。このために、逆浸透又は透析によって、溶液を精製する。精製は、塩類を除去するために特に利用することができる。例えばアルカノール(例えば、エタノール又はプロパノール)等のアルコールを用いる沈殿によって、溶液から鉄(III)(II)−炭水化物錯体化合物を最初に単離することも可能である。この方法において得られる本発明による鉄の錯体を、例えば、それとエタノールを混ぜ合わせ、その混合物を濾過し、その固体を真空乾燥することによって、更なる精製をするために、更に後処理することができる。更に、鉄−炭水化物錯体化合物を含有する溶液の逆浸透又は透析の後、噴霧乾燥によって、単離を行うこともできる。
【0048】
本発明は、更に、本発明による鉄−炭水化物錯体化合物を含有する医薬を提供する。滅菌水溶液を、特に、本発明による鉄−炭水化物錯体化合物から調製することができる。
【0049】
本発明による溶液は、特に経口投与に適しているが、更に、注射剤又は浸剤(例えば、静注若しくは筋注)のために、それらを非経口的に使用することもできる。
【0050】
非経口的に投与することができる溶液を、従来の方法(場合により、任意に非経口溶液用の従来の添加物と一緒に使用する)で、調製することができる。例えば生理的食塩水中のそれらを、注射剤によるようなものとして、又は浸剤として投与することができるように、溶液を配合することができる。
【0051】
経口投与のために、本発明による錯体は、従来の賦形剤を伴う従来方式で、カプセルに満たされるか、又は錠剤に押圧することができる。
【0052】
例えば、製剤中に鉄の(III)(II)錯体が存在する比較的長時間にわたって安定である製剤(例えば、錠剤(噛める錠剤、フィルムで被覆している錠剤、発泡性の錠剤)、発泡性の顆粒剤、粉末混合物、香粉)も、適切である。
【0053】
経口投与用の固形単位投与形態は、例えば、40mg〜120mg、より好ましくは、60mg〜100mgの鉄を含む。
【0054】
しかしながら、飲める製剤(例えばシロップ、エリキシル、溶液、又は懸濁液)の形で、水溶液を経口投与することが好ましい。
【0055】
本発明による医薬は、場合により、結合剤若しくは潤滑油、希釈剤、崩壊剤、充填材等の、例えば、従来の医薬担体又は補助物質の成分を更に含有することができる。従来の被膜形成剤で、錠剤を被覆することができる。必要に応じて、芳香物質、フレーバー及び染料を更に加えることができる。
【0056】
場合により、更に、本発明による医薬は、ビタミン(例えば、アスコルビン酸、微量元素、ミネラル物質、栄養分および補助因子)からなる群から選択される、薬理学的活性成分も含有することができる。好ましくは、薬理学的活性成分(1種又は複数)は、更に、(場合により、生理学的に許容可能な塩類の形である)、ビタミン類のβ−カロチン、チアミン(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ピリドキシン(ビタミンB6)、シアノコバラミン(ビタミンB12)、コレカルシフェロール(ビタミンD3)、α−トコフェロール(ビタミンE)、及びビオチン(ビタミンH)、補助因子のパントテン酸、ニコチンアミド及び葉酸、微量元素/ミネラル銅、マンガン、亜鉛、カルシウム、リン及び/又はマグネシウム及び栄養分アミノ酸、オリゴペプチド、炭水化物および脂肪である。可能な生理学的に許容可能な塩類は、すべて従来の生理学的に許容可能な塩類であり、無機酸又は塩基の塩類(例えば、塩酸塩、硫酸塩、塩化物、リン酸塩、水素リン酸塩、二水素リン酸塩または水酸化物)、または有機酸(例えば、アセテート、フマレート、マレアート、シトラート等)である。薬理学的活性成分は、更に、水和物または溶媒和物として存在することもできる。好ましくは、リンは、リン酸塩又は水素リン酸塩の形で好ましくは添加される。
【0057】
本発明による「混合原子価化合物(mixed valence compound)」は、安定であり、そして、制御された方法で、鉄(II)又は鉄(III)を生理的環境に放出することができる。1つの理論に限定しないで、多核水酸化鉄(炭水化物は、錯体として及び/又は水素橋かけ結合を介して、多核水酸化鉄に結合される)は、化学マトリックスのタイプとして、本発明による化合物中に存在する。鉄(III)に加えて、本発明による鉄−炭水化物錯体化合物中に鉄(II)も存在することがあるが、驚くべきことに、鉄(II)は、この形においては毒性が低減している。
【0058】
本発明による大多数の水酸化物−炭水化物錯化合物は、約200mgのFe/体重(kg)から600mgのFe/体重(kg)までのLD50値を有する。このLD50値は、マウスへの静脈注射で決定される。これと比較すると、例えば、硫酸鉄(II)のLD50値は、11mgのFe/体重(kg)だけであり、同様にマウスへの静脈注射で決定される(Berenbaum et al. 1960 cited in P. Geisser, M. Baer, E. Schraub: ArzneimittelforschungDrug Research 42 (II), 12, 1439-1452 (1992))。
【0059】
更に、本発明は、鉄欠乏症貧血の治療及び予防するための、そして、鉄欠乏症貧血の治療のための医薬を調製するための本発明による鉄(III)−鉄(II)−炭水化物の錯体の使用を提供する。医薬は、人間及び獣医学の使用に適している。
【0060】
従って、本発明による鉄−炭水化物錯体化合物は、鉄欠乏症貧血の症状を有する患者(例えば、疲労、運転力の欠如、集中力の欠如、認識効率の低下、正しい言葉を見つけることの困難性、健忘症、不自然な青白さ、過敏性、心拍数の加速(心搏急速)、痛むか若しくは腫れた舌、拡大した脾臓、妊娠の切望(異食症)、頭痛、食欲不振、感染に対するかかりやすさの増加および憂うつ気分)の治療のための医薬の調整にも適している。
【0061】
更に、本発明による鉄−炭水化物錯体化合物は、妊婦の鉄欠乏症貧血、児童及び若年者の潜在的な鉄欠乏症貧血、胃腸異常の結果としての鉄欠乏症貧血、[例えば、(潰瘍、癌腫、痔、炎症性障害、アセチルサルチル酸の摂取等の結果としての)胃腸出血、月経又は損傷による]失血の結果としての鉄欠乏症貧血、脱毛(スプルー)の結果としての鉄欠乏症貧血、(特に、選択的に食事をする児童及び若年者における)ダイエットに伴い鉄の摂取量が減少する結果としての鉄欠乏症貧血、鉄欠乏症貧血によって生じる免疫不全、鉄欠乏症貧血によって生じる脳の働きの障害及び下肢静止不能症候群の治療のための医薬の調製に適している。
【0062】
本発明によって使用される鉄−炭水化物錯体化合物は、特に、経口的に又は非経口的に投与される。1日投与量は、1日の使用当たり10〜500mgの鉄(III)/(II)である。鉄欠乏症又は鉄欠乏症貧血の患者は、例えば、各々の場合において、毎日2〜3回の100mgの鉄(III)/(II)を飲み、そして、妊婦は、毎日1〜2回の60mgの鉄(III)/(II)を飲む(各々の場合において、錯体ではなく、鉄(III)/(II)として計算する)。
【0063】
鉄の状況が、例えば、患者のヘモグロビン値、トランスフェリン飽和及びフェリチン値によって反映され改善されるまでか、又は、鉄欠乏症貧血により引き起こされる脳機能の障害、免疫応答若しくは下肢静止不能症候群の所望の改善があるまで、数カ月間にわたって異論なく投与を行うことができる。
【0064】
本発明による製剤は、児童、青年及び成人が飲むことができる。
【0065】
本発明による使用は、特に鉄、ヘモグロビン、フェリチン及びトランスフェリン値の改良によって進み、そして、本発明による使用は、特に若年者及び児童においてばかりでなく、成人においても、短期記憶検査(STM)、長期記憶検査(LTM)、Raven progressive matrices test、ウェクスラー成人知能検査(WAIS)及び/又は感情係数(Baron EQ−i)、YV検査(青年版)の改善、又は好中球のレベル、抗体及び/又はリンパ球機能のレベルの改善を伴う。
【0066】
調製の実施例
実施例1〜4の結果を、表1にまとめている。
%についてのデータは、重量%に関する。
【0067】
《実施例1》
300gのデキストリン(DE値33)を、750mlの水に60℃で溶解する。
341gの12%FeCl及び444gの30%NaOHを、60℃、一定のpH(11±0.5)で、30分間のうちに計量器によって測定する。反応溶液を100℃まで加熱し、この温度を30分間保つ。反応溶液を、25℃まで冷却し、pHを7.9から8.0に20%HClで調整する。7,000回転数/分で30分間溶液を遠心分離し、次にAF−50フィルターで濾過した。92%エタノールの添加によって、体積比1:2.4(反応溶液:エタノール)で生成物を沈殿し、1時間静置後、単離する。固体となるまで油性粗生成物を92%エタノール(2×200ml)と混合し、これをろ過して取り出し、次に50℃、125mbar下で16時間乾燥する。126gの黒いアモルファス粉が得られる。
【0068】
《実施例2》
194gのデキストリン(DE値33)を、387mlの水に60℃で溶解する。
176gの12%FeCl及び229gの30%NaOHを、60℃、一定のpH(11±0.5)で、30分間のうちに計量器によって測定する。反応溶液を100℃まで加熱し、この温度を30分間保つ。反応溶液を、25℃まで冷却し、pHを7.2から8.0に30%NaOHで調整する。溶液を、AF−50フィルターで濾過した。92%エタノールの添加によって、体積比1:2.4(反応溶液:エタノール)で生成物を沈殿し、1時間静置後、単離する。固体となるまで油性粗生成物を92%エタノール(2×200ml)と混合し、これをろ過して取り出し、次に50℃、125mbar下で16時間乾燥する。75gの黒いアモルファス粉が得られる。
【0069】
《実施例3》
300gのデキストリン(DE値11)を、1200mlの水に60℃で溶解する。
660gの6.2%FeCl及び440gの30%NaOHを、60℃、一定のpH(11±0.5)で、30分間のうちに計量器によって測定する。反応溶液を100℃まで加熱し、この温度を30分間保つ。反応溶液を、25℃まで冷却し、pHを9.4から8.0に20%HClで調整する。7,000回転数/分で30分間溶液を遠心分離し、次にAF−50フィルターで濾過した。92%エタノールの添加によって、体積比1:2.4(反応溶液:エタノール)で1400mlの反応溶液を沈殿し、1時間の静置後、単離する。固体となるまで油性粗生成物を92%エタノール(300ml)と混合し、ろ過して取り出し、次に50℃、125mbar下で16時間乾燥する。50gの黒いアモルファス粉が得られる。
【0070】
《実施例4》
251gのマルトースシロップ(水溶液80%−DE値39)を、1200mlの水に60℃で溶解する。溶液のpHを、16mlの30%NaOHで11.0に調整する。600gの6.2%FeCl及び372gの30%NaOHを、60℃、一定のpH(11±0.2)で、60分間のうちに計量器によって測定する。反応溶液を100℃まで加熱し、この温度を30分間保つ。反応溶液を25℃まで冷却し、pHを7.9から6.0に20%HClで調整する。AF−50フィルターで溶液を濾過した。92%エタノールの添加によって、体積比1:2.4(反応溶液:エタノール)で半分の反応溶液を沈殿し、1時間の静置後、粗生成物を単離する。固体となるまで油性粗生成物を、92%エタノール(300ml)と混合し、ろ過して取り出し、次に50℃、125mbar下で16時間乾燥する。37gの黒いアモルファス粉が得られる。
【0071】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄(II)の含有量(鉄−炭水化物錯体化合物中の鉄の合計量に基づく)が、少なくとも2重量%であることを特徴とする、鉄−炭水化物錯体化合物。
【請求項2】
鉄(II)の含有量(鉄−炭水化物錯体化合物中の鉄の合計量に基づく)が、3〜50重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の鉄−炭水化物錯体化合物。
【請求項3】
炭水化物の含有量(鉄−炭水化物錯体化合物に基づく)が、10〜80重量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の鉄−炭水化物錯体化合物。
【請求項4】
鉄の含有量(鉄−炭水化物錯体化合物に基づく)が、5〜40重量%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の鉄−炭水化物錯体化合物。
【請求項5】
鉄−炭水化物錯体化合物が、
− 鉄(II)の状態で存在する、5〜40重量%、3〜50重量%の鉄(鉄の合計量に基づく)、
− 10〜80重量%である1以上の炭水化物、
− 残部:結合した形の酸素及び水素(炭水化物中の酸素及び水素は除く)、及び場合により更なる元素
を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の鉄−炭水化物錯体化合物。
【請求項6】
鉄−炭水化物錯体化合物が、
− 鉄(II)の状態で存在する、10〜30重量%、5〜40重量%の鉄(鉄の合計量に基づく)、
− 20〜70重量%である1以上の炭水化物、
− 残部:結合した形の酸素及び水素(炭水化物中の酸素及び水素は除く)、及び場合により更なる元素
を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の鉄−炭水化物錯体化合物。
【請求項7】
鉄−炭水化物錯体化合物の重量平均分子量が、10〜80kDaであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の鉄−炭水化物錯体化合物。
【請求項8】
炭水化物が、天然炭水化物又は合成炭水化物誘導体、例えば、澱粉、加水分解澱粉、デキストリン(特に、マルトデキストリン、マルトースシロップ、グルコースシロップ)、シクロデキストリン、デキストラン及び糖類からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の鉄−炭水化物錯体化合物。
【請求項9】
炭水化物が、加水分解澱粉であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の鉄−炭水化物錯体化合物。
【請求項10】
下記の段階:
(a)炭水化物の水溶液又は懸濁液の調製、
(b)好ましくは7〜13の範囲における一定のpHでの、鉄(III)塩の添加、
(c)前記水溶液又は懸濁液の加熱、
(d)水溶液又は懸濁液の冷却、及び
(e)形成された鉄−炭水化物錯体化合物の単離
を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の鉄−炭水化物錯体化合物の製造方法。
【請求項11】
段階(d)における水溶液又は懸濁液の冷却後、水溶液又は懸濁液のpHを5〜9の値に調整する段階(d’)を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
鉄(III)塩が、塩化鉄(III)及び硫酸鉄(III)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
段階(c)において、水溶液又は懸濁液を、少なくとも30分間、80℃を超えて加熱することを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
段階(b)における鉄(III)塩の添加中及び/又は段階(c)における加熱中において、pHを一定に保つことを特徴とする、請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
段階(d’)の後に存在することがある固体を分離し、その後、得られる溶液中から鉄−炭水化物錯体化合物を沈殿させ、鉄−炭水化物錯体化合物を分離することを特徴とする、請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
濾過又は遠心分離によって、固体の分離を実施することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
1以上のアルコール類、例えば、エタノール又はプロパノールを用いて、鉄−炭水化物錯化合物の分離を実施することを特徴とする、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
単離された鉄−炭水化物錯化合物をその後エタノールと混合し、その混合物を濾過し、そして固体を真空乾燥することを特徴とする、請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
鉄−炭水化物錯体化合物、特に、請求項10〜18のいずれか一項に記載の方法によって得ることが可能である、鉄−炭水化物錯体化合物。
【請求項20】
請求項1〜9又は19のいずれか一項に記載の鉄−炭水化物錯体化合物を含有する医薬。
【請求項21】
鉄欠乏症貧血治療用の請求項1〜9又は19のいずれか一項に記載の鉄−炭水化物錯体化合物の使用。
【請求項22】
鉄欠乏症貧血治療用の医薬を製造するための請求項1〜9又は19のいずれか一項に記載の鉄−炭水化物錯体化合物の使用。
【請求項23】
経口投与又は非経口投与のための請求項21又は22に記載の鉄−炭水化物錯体化合物の使用。
【請求項24】
使用される投与形態が、飲むことが可能な製剤、例えば、シロップ、エリキシル、溶液、懸濁液又はジュースを含む液体製剤である、請求項21〜23のいずれか一項に記載の鉄−炭水化物錯体化合物の使用。
【請求項25】
鉄欠乏症貧血の症状を有する患者の治療用の医薬を製造するための、請求項21〜24のいずれか一項に記載の鉄−炭水化物錯体化合物の使用。
【請求項26】
前記症状が、疲労、運転力の欠如、集中力の欠如、認識効率の低下、正しい言葉を見つけることの困難性、健忘症、不自然な青白さ、過敏性、心拍数の加速(心搏急速)、痛むか若しくは腫れた舌、拡大した脾臓、妊娠の切望(異食症)、頭痛、食欲不振、感染に対するかかりやすさの増加および憂うつ気分を含む、請求項25に記載の鉄−炭水化物錯体化合物の使用。
【請求項27】
妊婦の鉄欠乏症貧血、児童及び若年者の潜在的な鉄欠乏症貧血、胃腸異常の結果としての鉄欠乏症貧血、[例えば、(潰瘍、癌腫、痔、炎症性障害、アセチルサルチル酸の摂取等の結果としての)胃腸出血、月経又は損傷による]失血の結果としての鉄欠乏症貧血、脱毛(スプルー)の結果としての鉄欠乏症貧血、(特に、選択的に食事をする児童及び若年者における)ダイエットに伴い鉄摂取量が減少する結果としての鉄欠乏症貧血、鉄欠乏症貧血によって生じる免疫不全、鉄欠乏症貧血によって生じる脳の働きの障害及び下肢静止不能症候群の治療用の医薬を製造するための、請求項21〜26のいずれか一項に記載の使用。

【公表番号】特表2010−516828(P2010−516828A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545912(P2009−545912)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【国際出願番号】PCT/EP2008/050387
【国際公開番号】WO2008/087135
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(509203050)ヴィフォール (インターナショナル) アクチェンゲゼルシャフト (8)
【氏名又は名称原語表記】Vifor (International) AG
【Fターム(参考)】